説明

挟み込みスラグ破砕機

【課題】容器の外部から稼働状況の把握が困難な容器内に設置されたスラグクラッシャー位置の検出について、容器外部からの位置検出を可能にした挟み込みスラグ破砕機を提供する。
【解決手段】容器1A内に設置されている歯板12L,12Rが動作し、容器内部のスラグ大塊を挟み込んで粉砕する挟み込みスラグ破砕機10Aにおいて、容器1Aの壁面に超音波の送受波を行う音響センサ20を設け、該音響センサ20の送受波状況から歯板12L,12Rの位置を検出するクラッシャー位置検出装置30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば石炭ガス化炉に適用される挟み込みスラグ破砕機に係り、特に、スラグクラッシャーの位置検出装置を備えた挟み込みスラグ破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化炉は、圧力容器内でガス化反応を進行させて可燃性ガス(CO,H2 )を製造する装置である。このような可燃性ガスの製造過程において、石炭中の灰分は炉壁に付着するか、あるいはコンバスタの炉底部に落下することとなる。
コンバスタの炉底部に落下したスラグは、コンバスタの高温によって溶融した状態でスラグ排出口から下方に排出される。この溶融スラグは、冷却水を張ったスラグホッパに落下して冷却・固化するので、固化したスラグの大塊を粉砕処理するため、石炭ガス化炉内に挟み込みスラグ破砕機を設けることが知られている。(たとえば、特許文献1参照)
【0003】
図6は、石炭ガス化炉内に設置された挟み込みスラグ破砕機の概要を示している。
図示の挟み込みスラグ破砕機(以下、「破砕機」と呼ぶ)10は、石炭ガス化炉1の冷却水2内で固化したスラグの大塊を水平方向の両側から挟み込んで粉砕する装置である。この破砕機10は、石炭ガス化炉1の内部下方に設置されており、油圧シリンダ11によって水平方向に動作する左右一対の歯板(スラグクラッシャー)12を備えている。
破砕機10で粉砕するスラグ塊(不図示)は、溶融スラグが固化してメッシュ3上に堆積したものであり、歯板12により左右から挟み込まれて粉砕された後、メッシュ3より細かく粉砕されたスラグがガス化炉下部の破砕スラグ排出口4から炉外へ排出される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−247484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の破砕機10は、圧力容器である石炭ガス化炉の内部に設置されているので、下記のような課題が指摘されている。
1)破砕機10が圧力容器内に入り込んでいるため、歯板12等の稼働状況を外部から目視で確認することはできない。
2)圧力容器内の冷却水2は混濁することが多いので、歯板12等の稼働状況を光学的に監視することは困難である。
3)破砕機10が圧力容器内に入り込んでいるため、破砕機10の稼働状況を外部から確認できるのは油圧シリンダ11への油圧状況のみとなるが、油圧状況では破砕機10の位置情報を読み取ることは困難である。
4)破砕機10のスティックやトリップは、スラグの安定排出に大きく影響するので、プラントの運用に対する影響も大きい。
【0006】
このような背景から、石炭ガス化炉のような圧力容器内や内部を目視できない容器内に設置され、容器の外部から稼働状況の把握が困難な状況にある挟み込みスラグ破砕機については、スラグクラッシャー位置等の作動状態を容器外部から検出できる位置検出装置を備えた挟み込みスラグ破砕機の開発が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする所は、圧力容器等のように容器の外部から稼働状況の把握が困難な容器内に設置された挟み込みスラグ破砕機において、容器外部からのスラグクラッシャー位置検出を可能にした挟み込みスラグ破砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る挟み込みスラグ破砕機は、容器内に設置されているスラグクラッシャーが動作し、容器内部の被破砕対象物を挟み込んで粉砕する挟み込みスラグ破砕機において、前記容器の壁面に超音波の送受波を行う音響センサを設け、該音響センサの送受波状況から前記スラグクラッシャーの位置を検出するクラッシャー位置検出手段を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このような挟み込みスラグ破砕機によれば、容器の壁面に超音波の送受波を行う音響センサを設け、該音響センサの送受波状況からスラグクラッシャーの位置を検出するクラッシャー位置検出手段を備えているので、容器外から目視できない容器内部のスラグクラッシャー位置(作動状況)を容易に把握することができる。
【0009】
上記の発明において、前記クラッシャー位置検出手段は、前記容器の対向壁面間で超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む前記スラグクラッシャー毎に、前記音響センサによる送受波の有無から作動位置の検出を行うことが好ましく、これにより、送信波の受信があるときはスラグクラッシャーの待機位置にあると判断し、送信波の受信がないときはスラグクラッシャーの作動位置にあると判断することができる。なお、スラグクラッシャーは、左右のクラッシャーが水平方向に最も開いた待機位置と、左右のクラッシャーが水平方向に接近して被破砕対象物を挟み込む破砕位置との間を移動するので、上述したスラグクラッシャーの作動位置は、待機位置及び破砕位置となる。
【0010】
上記の発明において、前記クラッシャー位置検出手段は、前記容器の対向壁面または前記スラグクラッシャーに反射させて超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む左右一対の前記スラグクラッシャー毎に、受波時間の変動から作動位置の検出を行うことが好ましく、これにより、受波が確認できる又は受波時間が長い場合はスラグクラッシャーの待機位置にあると判断し、受波が確認できない又は受波時間が短い場合はスラグクラッシャーの作動位置にあると判断することができる。
【0011】
上記の発明において、前記クラッシャー位置検出手段は、前記スラグクラッシャーの作動方向面に反射させて超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む左右一対の前記スラグクラッシャー毎に、受波時間の変動から作動位置の検出を行うことが好ましく、これにより、受波時間が短い場合はスラグクラッシャーの待機位置にあると判断し、受波時間が長い場合はスラグクラッシャーの作動位置にあると判断することができる。
【0012】
上記の発明において、前記スラグクラッシャー位置検出手段は、所定の待機位置から所定の破砕位置に到達するまでに要する作動時間を検出し、該作動時間が所定値以上の場合に装置異常と判断することが好ましく、これにより、スラグクラッシャーの動作状況や装置のメンテナンス時期等を把握することができる。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、たとえば石炭ガス化炉内に設置されている挟み込みスラグ破砕機のように、外部から目視できない容器内部のスラグクラッシャー位置について、すなわち、待機位置と破砕位置との間を移動するスラグクラッシャーの作動状況について、超音波を送受波した状況により確実に把握することができる。
また、挟み込みスラグ破砕機の動作状況や稼働状況から、メンテナンス時期を把握してスティックやトリップの発生を防止または抑制できるので、装置の安定した運用が可能になるという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る挟み込みスラグ破砕機の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
図1に示す挟み込みスラグ破砕機(以下、「破砕機」と呼ぶ)10Aは、容器内に設置され、被破砕対象物を水平方向の両側から挟み込んで粉砕する装置である。すなわち、この破砕機10Aは、たとえば石炭ガス化炉等のような圧力容器内のように、外部から目視できない容器(内部を目視できない鋼製容器等の非圧力容器も含む)1A内に設置されている左右一対の歯板(スラグクラッシャー)12L、12Rが動作することにより、容器内部の冷却水内等で固化したスラグの大塊を左右両側から挟み込んで細かく粉砕するための装置である。
【0015】
左右一対の歯板12L,12Rは、図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータを備えており、左右の歯板12L,12Rが水平方向に最も開いた待機位置と、左右の歯板12L,12Rが水平方向に接近してスラグの大塊を挟み込む破砕位置との間を移動する。従って、歯板12L,12Rは、待機位置及び破砕位置の間に設定された作動位置を往復することとなる。
【0016】
このような破砕機10Aは、容器1Aの壁面に超音波の送受波を行う音響センサ20を備えており、該音響センサ20における超音波の送受波状況から、歯板12L,12Rの動作位置を検出するクラッシャー位置検出装置(以下、「位置検出装置」と呼ぶ)30を備えている。
本実施形態の位置検出装置30は、容器1Aの対向壁面1a,1b間で超音波の送受波を行う音響センサ20を備え、容器1Aの内部を水平移動してスラグの大塊を挟み込む歯板12L,12R毎に、音響センサ20による送受波の有無から作動位置の検出を行うように構成されている。
【0017】
図示の構成例では、歯板12L,12Rの作動方向に合計4組の音響センサ20が設置されている。各音響センサ20は信号処理装置31に接続されており、送信部Tから送出した超音波を受信部Rが受信して信号処理装置31へ入力するように構成されている。この場合の送信部T及び受信部Rは、歯板12L,12Rの往復動作する作動方向と鉛直方向に、すなわち、水平方向の左右に開平動作する作動方向と直交する方向において対向する容器1Aの対向壁面1a,1bに取り付けられている。
【0018】
以下の説明では、歯板12L側から歯板12R側へ順に、信号処理装置31に接続された送信部R1,R2,R3,R4及び受信部T1,T2,T3,T4が設置され、たとえば送信部R1から送出された超音波を受信部R1が受信したか否かを判断することにより、信号処理装置31が送信部R1及び受信部T1によって構成された音響センサ20の送受波状況を検出することができる。
同様に、送信部R2から送出された超音波を受信部R2が受信したか否かを判断し、送信部R3から送出された超音波を受信部R3が受信したか否かを判断し、さらに、判断送信部R4から送出された超音波を受信部R4が受信したか否かを判断して、信号処理装置31が各音響センサ20の送受波状況を検出することができる。
【0019】
上述した送信部R1及び受信部T1は、歯板12Lの待機位置より若干作動方向側となる位置に配置されている。従って、歯板12Lが所定の待機位置にある場合、送信部R1から送出された超音波は、歯板12Lに妨げられることなく受信部T1まで到達して受信される。
また、上述した送信部R2及び受信部T2は、歯板12Lの破砕位置より作動方向の反対側へ若干後退した位置に配置されている。従って、歯板12Lが所定の破砕位置にある場合、送信部R2から送出された超音波は、歯板12Lに当たって妨げられるため、受信部T2まで到達することはない。
【0020】
同様に、上述した送信部R3及び受信部T3は、歯板12Rの破砕位置より作動方向の反対側へ若干後退した位置に配置されている。従って、歯板12Rが所定の破砕位置にある場合、送信部R3から送出された超音波は、歯板12Rに当たって妨げられるため、受信部T3まで到達することはない。
また、上述した送信部R4及び受信部T4は、歯板12Rの待機位置より若干作動方向側となる位置に配置されている。従って、歯板12Rが所定の待機位置にある場合、送信部R4から送出された超音波は、歯板12Rに妨げられることなく受信部T4まで到達して受信される。
【0021】
このように、本実施形態の位置検出30は、容器1Aの対向壁面1a,1b間で超音波の送受波を行う音響センサ20を備え、容器内部を水平移動してスラグの大塊を挟み込む歯板12L,12R毎に、音響センサ20による送受波の有無から作動位置の検出を行うようにしたので、図1(a)に示すように、信号処理装置30が全ての音響センサ20で送信波の受信があることを検出した場合には、歯板12L,12Rが正常な待機位置にあると判断できる。
そして、図1(b)に示すように、信号処理装置30が全ての音響センサ20で送信波の受信がないことを検出した場合には、歯板12L,12Rが正常に動作して破砕位置に到達していると判断することができる。
【0022】
このような超音波の送受波は、内部が目視できない鋼板容器等においても、容器内部に音響センサ20を設置することにより可能となる。そして、音響センサ20により歯板12L,12R位置を検出して作動状況を把握することは、容器内の液体(冷却水等)が混濁した状態にあるため、容器内部の光学的な監視が困難な状況においても充分に適用可能である。
【0023】
ところで、上述した位置検出装置30は、所定の待機位置から所定の破砕位置に到達するまでに要する到達時間(作動時間)tを検出し、この到達時間tが所定値以上の場合に装置異常と判断することが望ましい。
具体的に説明すると、待機位置にある歯板12L,12Rが動作を開始して破砕位置に到達するまでの到達時間tを検出し、すなわち、動作開始から受信部T2,T3の超音波受信が破砕位置に到達した歯板12L,12Rに遮断されてなくなるまでの到達時間tを検出し、この到達時間tが所定値(異常検知閾値)t1を超えた場合には、破砕機10Aの動作状況やメンテナンス時期等を把握することができる。
なお、待機位置から所定の破砕位置に到達までの到達時間tについては、歯板12L,12Rの動作開始を基準にしてもよいし、受信部T1,T4の超音波受信が動作を開始した歯板12L,12Rに遮断されてなくなった時点を基準としてもよい。
【0024】
たとえば図2に示すように、破砕機10Aの作動回数Nが増加した状況で到達時間tが所定値t1を徐々に超えるようになると、破砕機10Aがスティック傾向にあると判断できる。このような状況では、破砕機10Aのメンテナンスを早急に実施することが望ましい。
また、破砕機10Aの作動回数Nに係わらず、到達時間tが所定値より異常に大きい場合、あるいは、到達時間tが検出できない場合には、破砕機10Aがトリップまたはトリップ寸前の状態にあると判断できるため、すぐに運転を停止して点検・修理を実施することが望ましい。
なお、待機位置から所定の破砕位置に到達までの到達時間tについては、歯板12L,12Rの動作開始を基準にしてもよいし、受信部T1,T4の超音波受信が動作を開始した歯板12L,12Rに遮断されてなくなった時点を基準としてもよい。
【0025】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る挟み込みスラグ破砕機について、第2の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態において、破砕機10Bの位置検出装置30Aは、容器1Aの対向壁面または歯板12L,12Rに反射させて超音波の送受波を行う音響センサ20Aを備えている。この場合の音響センサ20Aは、上述した実施形態の音響センサ20とは異なり、送信部T及び受信部Rが一体化された構成となっている。なお、この場合の一体化は、送信部及び受信部Rが隣接する構成も包含する。
【0026】
このような音響センサ20Aは、対向壁面1a,1bのいずれか一方の壁面(図示の例では対向壁面1b)に対し、歯板12L,12Rが往復動作する作動方向において上述した実施形態と同様の位置に4個配置されている。各音響センサ20Aは、上述した実施形態と同様に、信号処理装置31に接続されている。
このように配置された音響センサ20Aは、容器1Aの内部を水平移動してスラグの大塊を挟み込む左右一対の歯板12L,12R毎に、受波時間の変動から作動位置を検出することが可能である。すなわち、歯板12L,12Rが待機位置にある場合、図3(a)に示すように、音響センサ20Aは、対向壁面1aに反射した超音波を受信することになるため、距離に応じて受信時間が長くなる。
また、歯板12L,12Rが粉砕位置にある場合、図3(b)に示すように、音響センサ20Aは、歯板12L,12Rの側面に反射した超音波を受信することになるため、距離に応じて受信時間が短くなる。
【0027】
また、受信時間を監視する方式では、歯板12L,12R以外の異物による誤検知を防ぎ、検出精度を向上させることができる。すなわち、歯板12L,12Rが正常な待機位置または破砕位置にある場合、超音波が反射する面までの距離は予め分かっているので、受信時間についても事前に算出することができる。
従って、たとえば図4に示すように、横軸の受信時間Tにおいて、時間T1〜T2の領域が異物に反射した超音波と判断することができる。ここで、時間TがT1以下となる領域は、歯板12L,12Rが破砕位置にある状態の受信波を確認できる時間領域であり、また、時間TがT2以上となる領域は、歯板12L,12Rが待機位置にある状態の受信波を確認できる時間領域である。
なお、この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、音響センサ20Aにおける受信時間の変化に基づいて、所定の待機位置から所定の破砕位置に到達するまでに要する到達時間(作動時間)tを検出し、この到達時間tが所定値以上の場合に装置異常と判断することができる。
【0028】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る挟み込みスラグ破砕機について、第3の実施形態を図5に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態において、破砕機10Cの位置検出装置30Bは、容器1Aの内部を水平移動してスラグの大塊を挟み込む歯板12L,12R毎に、左右一対の音響センサ20Bを備えている。この音響センサ20Bは、上述した音響センサ20Aと実質的に同じものであり、歯板12L,12Rの作動方向面に反射させて超音波の送受波を行うように設置されている。すなわち、第2の実施形態とは音響センサ20Bの設置位置や受信時間検出に違いがあり、図示の構成例では、音響センサ20Bが歯板12L,12Rの作動方向面において、破砕面とは反対側の後面12aに向けて超音波を送出し、その反射波を受信して受信時間を検出するようになっている。なお、この実施形態では、左右一対とより少ない音響センサ20Bでの検出が可能となる。
【0029】
ちなみに、容器1Aの内部に冷却水がある場合、事前に水の音速を把握しておけば、信号処理装置31内の演算処理により反射した超音波の受波時間から歯板12L,12Rの作動距離を得ることができる。この場合、反射する超音波は、後面12aまでの距離を往復するので、演算時の受波時間Ta(s)は1/2として用い、歯板12L,12Rの位置は、すなわち後面12aまでの距離L(m)は、下記の距離算出式により算出される。
距離算出式:L=1500×Ta/2
ここで、1500は水中の音速(m/s)である。
【0030】
このような構成としても、待機位置及び破砕位置において音響センサ20Bから離間する後面12aまでの距離が異なるため、歯板12L,12Rの作動位置に応じて反射した超音波の受波時間も変動する。従って、このような受信時間の変動から歯板12L,12Rの作動位置を検出することができ、具体的には、受波時間が短い場合は歯板12L,12Rが待機位置にあると判断し、受波時間が長い場合は歯板12L,12Rが作動位置にあると判断することができる。
なお、この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、音響センサ20Bにおける受信時間の変化に基づいて、所定の待機位置から所定の破砕位置に到達するまでに要する到達時間(作動時間)tを検出し、この到達時間tが所定値以上の場合に装置異常と判断することができる。
【0031】
このように、上述した本発明によれば、たとえば石炭ガス化炉1内に設置されている場合のように、外部から目視できない容器内部の破砕機10A,10B,10Cのクラッシャー位置について、すなわち、待機位置と破砕位置との間を移動する歯板12L,12Rの作動状況について、超音波を送受波した状況(送受波の有無や受波時間の変動)により確実に把握することができる。
また、破砕機10A,10B,10Cの動作状況や稼働状況から、メンテナンス時期を把握してスティックやトリップの発生を防止または抑制できるので、装置の安定した運用が可能になる。
【0032】
上述した本発明の破砕機10A,10B,10Cは、特に石炭ガス化炉1の内部に設置されて冷却水2の内部で固化したスラグの大塊を破砕する装置として好適である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の挟み込みスラグ装置に係る第1の実施形態を示す図で、(a)は歯板が待機位置にある状態を示す平面図、(b)は歯板が破砕位置にある状態を示す平面図である。
【図2】挟み込みスラグ破砕機作動回数(N)と到達時間(t)との関係を示す図である。
【図3】本発明の挟み込みスラグ装置に係る第2の実施形態を示す図で、(a)は歯板が待機位置にある状態を示す平面図、(b)は歯板が破砕位置にある状態を示す平面図である。
【図4】受信時間(T)と振幅との関係を示す異物検出時の説明図である。
【図5】本発明の挟み込みスラグ装置に係る第3の実施形態を示す平面図である。
【図6】石炭ガス化炉に設置された挟み込みスラグ破砕機の従来構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1A 容器
10A,10B,10C 挟み込みスラグ破砕機
12L,12R 歯板(スラグクラッシャー)
20,20A,20B 音響センサ
30,30A,30B クラッシャー位置検出装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に設置されているスラグクラッシャーが動作し、容器内部の被破砕対象物を挟み込んで粉砕する挟み込みスラグ破砕機において、
前記容器の壁面に超音波の送受波を行う音響センサを設け、該音響センサの送受波状況から前記スラグクラッシャーの位置を検出するクラッシャー位置検出手段を備えていることを特徴とする挟み込みスラグ破砕機。
【請求項2】
前記クラッシャー位置検出手段は、前記容器の対向壁面間で超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む前記スラグクラッシャー毎に、前記音響センサによる送受波の有無から作動位置の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の挟み込みスラグ破砕機。
【請求項3】
前記クラッシャー位置検出手段は、前記容器の対向壁面または前記スラグクラッシャーに反射させて超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む左右一対の前記スラグクラッシャー毎に、受波時間の変動から作動位置の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の挟み込みスラグ破砕機。
【請求項4】
前記クラッシャー位置検出手段は、前記スラグクラッシャーの作動方向面に反射させて超音波の送受波を行う音響センサを備え、容器内部を水平移動して前記被破砕対象物を挟み込む左右一対の前記スラグクラッシャー毎に、受波時間の変動から作動位置の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の挟み込みスラグ破砕機。
【請求項5】
前記クラッシャー位置検出手段は、所定の待機位置から所定の破砕位置に到達するまでに要する作動時間を検出し、該作動時間が所定値以上の場合に装置異常と判断することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の挟み込みスラグ破砕機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142682(P2010−142682A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319535(P2008−319535)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】