説明

振れ補正装置及び光学機器

【課題】振れ補正光学系を備えた可動部材を確実に保持することができる振れ補正装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る振れ補正装置6は、ロック部材(30)がロック位置に駆動されたときには、可動部材(20)の第1係合部(21b)と前記ロック部材の第2係合部(32)とが係合して、前記可動部材が光軸と交差する面と平行な交差面方向へ移動するのを制限し、且つ前記ロック部材の付勢部材(34)が前記可動部材の前記段差部(22)と当接して、前記ロック部材のロック解除位置への移動を規制する。また、前記ロック部材がロック解除位置に駆動されたときには、前記可動部材の前記第1係合部と前記ロック部材の第2係合部との係合を解除して、前記可動部材の前記交差面方向への移動を許容し、且つ前記ロック部材の前記付勢部材が前記可動部材の前記段差部を乗り越えて、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動を許容することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ補正装置及びこれを備えた光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振れ補正光学系を光軸と略直交する方向に移動することにより像振れを補正する振れ補正装置が知られている。この振れ補正装置は、振れ補正を行わない場合に、可動部材が光軸と略直交する方向へ移動するのを制限するロック機構を備える。このようなロック機構に関する従来例として、ロックリングに付勢ばねを設け、この付勢ばねで可動部材の突起部を光軸方向に加圧することにより、可動部材の微小な振動を防止するようにした振れ補正装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−233097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したロック機構では、輸送時等の振動によりロックリングがロック位置からロック解除位置の方向にずれることがある。ロックリングがロック解除位置の方向にずれると、付勢ばねによる可動部材への加圧が弱まる。このため、シャッタレリーズ時にミラーショック等の振動が発生すると、可動部材が光軸と略直交する方向に振動する。従って、ロック状態において、可動部材を確実に保持することが求められている。
【0005】
本発明の課題は、振れ補正光学系を備えた可動部材を確実に保持することができる振れ補正装置及び光学機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、軸と交差する面と平行な交差面方向に移動して像の振れを補正する振れ補正光学系(L3)と、前記振れ補正光学系を保持し、当該振れ補正光学系とともに前記交差面方向に移動する部材であって、前記交差面方向に突出する第1係合部(21a,21b)及び当該第1係合部の一方の面に形成された段差部(22)を有する可動部材(20)と、前記可動部材の前記交差面方向への移動を制限するロック位置及び前記可動部材の前記交差面方向への移動を許容するロック解除位置にそれぞれ駆動可能に支持され、前記可動部材の前記第1係合部と係合可能な第2係合部(32)及び前記可動部材の前記段差部と当接可能な付勢部材を有するロック部材(30)と、を備えた振れ補正装置(6)であって、前記ロック部材が前記ロック位置に駆動されたときには、前記可動部材の前記第1係合部と前記ロック部材の前記第2係合部とが係合して、前記可動部材の前記交差面方向への移動を制限し、且つ、当該制限中に前記ロック部材をロック解除位置に移動させる力が働いたときには、前記ロック部材の前記付勢部材と前記可動部材の前記段差部とが当接することにより、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動を規制し、前記ロック部材が前記ロック解除位置に駆動されたときには、前記可動部材の前記第1係合部と前記ロック部材の第2係合部との係合を解除して、前記可動部材の前記交差面方向への移動を許容し、且つ、前記ロック部材の前記付勢部材が前記可動部材の前記段差部を乗り越えることにより、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動を許容することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1係合部(21b)の一方の面には、前記段差部(22)と、前記付勢部材(34)が摺動する平坦部(23)とが形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記付勢部材(34)は、前記ロック部材(30)が前記ロック位置から前記ロック解除位置に駆動されたときに、前記第1係合部(21b)の前記平坦部(23)を摺動した後、前記第1係合部の前記段差部(22)を乗り越えて前記ロック解除位置の方向へ移動することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記可動部材(20)は、光軸回りの回転が規制されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記付勢部材(34)は、前記可動部材(20)の前記段差部(22)と係合したときに、当該段差部の延出方向と平行に係合する屈曲部(35)を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記段差部(22)は、前記第1係合部(21b)の一方の面において、前記ロック部材(30)が前記ロック解除位置に移動する方向の端部に形成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記段差部(22)が前記付勢部材(34)と係合する部分の接線と、前記第1係合部(21b)の一方の面と直交する垂線とのなす角度をθ1とし、前記付勢部材が前記段差部と係合する部分の接線と前記垂線とのなす角度をθ2としたときに、θ2>θ1となることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、光学系(L)と、請求項1〜7のいずれか一項に記載の振れ補正装置(6)と、を備える光学機器(3)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振れ補正光学系を備えた可動部材を確実に保持することができる振れ補正装置及び光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のカメラシステム1の概略構成を示す断面図である。
【図2】可動枠20をロック解除状態としたときの正面図である。
【図3】可動枠20をロック状態としたときの正面図である。
【図4】図2の矢視Aにおける部分側面図である。
【図5】第1係合部21b及び付勢ばね34の形状と位置関係を示す概念図である。
【図6】図3の矢視Bにおける部分側面図である。
【図7】第1係合部21bと付勢ばね34との係合状態を示す部分側面図である。
【図8】第1係合部21bと付勢ばね34との係合状態を示す部分側面図である。
【図9】段差部22の他の構成例(第1段差部22A,第2段差部22B)を示す部分側面図である。
【図10】屈曲部35の他の構成例(屈曲部35A)を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る振れ補正装置及びこれを備えた光学機器の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る振れ補正装置を備えた光学機器として、デジタルカメラに装着されるレンズ鏡筒を例に挙げて説明する。
【0010】
なお、以下に示す図1には、説明と理解とを容易にするために、適宜にXYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Aを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。更に、正位置において被写体に向かう方向をZ方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態のカメラシステム1の概略構成を示す断面図である。本実施形態のカメラシステム1は、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラである。カメラシステム1は、カメラ本体2と、レンズ鏡筒3と、を備える。レンズ鏡筒3は、マウント部4を介してカメラ本体2に装着されている。マウント部4は、カメラ本体2に設けられたカメラ側マウント(符号略)と、レンズ鏡筒3に設けられたレンズ側マウント(符号略)と、から構成される。マウント部4は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3との間でデータを送受信するための電極(不図示)や、カメラ本体2からレンズ鏡筒3へ電力を送信するための電極(不図示)を備える。
【0012】
レンズ鏡筒3は、レンズ光学系Lと、フォーカス用モータ5と、振れ補正装置6と、絞りユニット7と、を備える。
【0013】
レンズ光学系Lは、複数のレンズ群L1〜L3により構成される。図示しない被写体からの光は、レンズ群L1〜L3及び絞りユニット7を経て、カメラ本体2へ被写体光として入射する。なお、図1では、レンズ光学系Lの構成を模式的に示している。
【0014】
レンズ光学系Lのうち、レンズ群L2は、フォーカス用モータ5により光軸OAに沿って移動するフォーカス調整用光学系である。また、レンズ群L3は、振れ補正装置6により光軸OAと略直交する方向、すなわち光軸OAと交差する面と平行な交差面方向に移動する振れ補正光学系である。振れ補正装置6については、後述する。フォーカス用モータ5及び振れ補正装置6の動作は、レンズ鏡筒3の内部に設けられたレンズCPU(不図示)により制御される。レンズCPUは、カメラ本体2に設けられたカメラCPU(不図示)との間でデータを送受信する。レンズCPUは、カメラCPUの指示に従って、フォーカス用モータ5及び振れ補正装置6の動作を制御する。
【0015】
絞りユニット7は、複数の絞り羽根(不図示)を備える。絞りユニット7は、絞り羽根を光軸OA方向に駆動して、被写体光の通過する開口の面積を変化させることにより、被写体光の光量を調整する。
【0016】
一方、カメラ本体2は、メインミラー8と、サブミラー9と、測距ユニット10と、シャッタユニット11と、光学フィルタ12と、撮像素子13と、液晶モニタ14と、ペンタプリズム15と、接眼光学系16と、を備える。
【0017】
図1に示すように、メインミラー8は、撮像前においては光軸OA上に位置する(ポジションA)。この場合、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に入射した被写体光は、メインミラー8により上方へ導かれ、拡散スクリーン(不図示)に被写体像として結像する。メインミラー8は、その一部にハーフミラーが形成されている。このため、被写体光の一部は、メインミラー8においてサブミラー9で下方に反射され、測距ユニット10にも結像する。また、拡散スクリーンに結像した被写体光は、ペンタプリズム15へ入射する。ペンタプリズム15は、入射した被写体光を接眼光学系16へ導く。撮影者は、接眼光学系16を目視することにより、撮影前の被写体像を観察することができる。
【0018】
また、ペンタプリズム15は、入射した被写体光の一部を測光ユニット(不図示)へ導く。測光ユニットは、被写体光の輝度情報を検出する。測光制御演算部(不図示)は、測光ユニットで検出された輝度情報に基づいて被写体輝度を算出する。また、測光制御演算部は、設定された撮像感度、レンズ情報、及び算出した被写体輝度等を用いて演算を行い、露出値(絞り値、シャッタースピード)を決定する。
【0019】
一方、メインミラー8は、撮像時には上方へ回動して、図1に破線で示すように、光軸OAの外へ退避する(ポジションB)。レンズ鏡筒3からカメラ本体2に入射した被写体光は、シャッタユニット11、光学フィルタ12を介して撮影用の撮像素子13へ導かれる。光学フィルタ12は、撮像素子13の撮像面において、不要な空間周波数成分を除去する部材である。撮像素子13は、取り込んだ被写体光を信号電荷として蓄積し、画像情報に変換する。この画像情報は、画像制御部(不図示)により画像補正や補間処理等の画像処理が施された後、メモリ(不図示)に記憶される。
【0020】
液晶モニタ14は、撮影された静止画像や動画像を表示する。また、液晶モニタ14は、撮影条件やカメラ操作に関する情報、並びに各種のメッセージ等を表示する。
【0021】
次に、本実施形態における振れ補正装置6の構成について説明する。図2及び図3は、振れ補正装置6を光軸(OA)方向から見たときの正面図である。このうち、図2は、可動枠20をロック解除状態としたときの正面図であり、図3は、可動枠20をロック状態としたときの正面図である。図4は、図2の矢視Aにおける部分側面図である。図5は、第1係合部21b及び付勢ばね34の形状と位置関係を示す概念図である。図6は、図3の矢視Bにおける部分側面図である。図7及び図8は、第1係合部21bと付勢ばね34との係合状態を示す部分側面図である。このうち、図8は、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とを、θ2=θ1とした場合の係合状態を示している。
【0022】
図2及び図3に示すように、振れ補正装置6は、可動部材としての可動枠20と、ロック部材としてのロックリング30と、固定枠40と、を備える。また、振れ補正装置6は、一対のボイスコイルモータ50(50X,50Y)と、一対の位置検出装置60(60X,60Y)と、ロック機構駆動ユニット70と、を備える。なお、ボイスコイルモータを、以下「VCM」と略称する。
【0023】
まず、可動枠20について説明する。可動枠20は、振れ補正光学系であるレンズ群L3を保持する略筒状のレンズ保持枠である。可動枠20は、外周部に複数の第1係合部21(21a,21b)を備える。第1係合部21は、ロックリング30の第2係合部32(後述)と係合する略半円状の突起である。第1係合部21は、光軸OAを中心としてラジアル方向に均等な間隔で配置されている。第1係合部21は、第1係合部21a及び21bにより構成される。
【0024】
第1係合部21aは、ロックリング30の第2係合部(後述)のみと係合する。第1係合部21aは、6箇所に設けられている。第1係合部21aは、両面ともに平坦部(不図示)が形成されている。
【0025】
一方、第1係合部21bは、ロックリング30の第2係合部と係合するとともに、ロックリング30に設けられた付勢ばね34(後述)にも係合する。第1係合部21bは、2箇所に設けられている。第1係合部21bは、光軸OAを間に挟んで180°離れた位置に配置されている。また、第1係合部21bは、付勢ばね34と対向する側の面(以下、適宜に「裏面」という)に、図4に示すように、段差部22と、平坦部23と、が形成されている。
【0026】
第1係合部21bの段差部22は、図4に示すように、第1係合部21bの裏面からロックリング30の側に向けて突出した、断面が略半円状の部位である。また、段差部22は、図5に示すように、第1係合部21bの裏面において、ロックリング30が駆動されるロック解除方向(矢印R方向)の端部に形成されている。また、段差部22は、図5に示すように、第1係合部21bと可動枠20との付け根部分から外側の端部まで延びている。
【0027】
上記構成によれば、図4において、ロックリング30がロック方向(矢印L方向)に駆動されたときに、付勢ばね34の屈曲部35が段差部22を完全に乗り越えた状態で平坦部23と当接する(図6参照)。すなわち、第1係合部21bの段差部22を図4に示す位置に形成した場合は、付勢ばね34の屈曲部35と第1係合部21bの段差部22との間に寸法誤差が生じていても、付勢ばね34の屈曲部35は、段差部22を完全に乗り越えた状態で平坦部23と当接する。従って、ロックリング30をより確実にロック状態とすることができる。
【0028】
次に、ロックリング30について説明する。ロックリング30は、可動枠20をロック状態又はロック解除状態とするための部材である。ロックリング30は、固定枠40に回転自在に支持されている。ロックリング30は、図2及び図3に示すように、ロックアーム31と、第2係合部32と、ラックギア33と、付勢部材としての付勢ばね34と、を備える。
【0029】
ロックアーム31は、ロックリング30と一体に形成された部材である。ロックアーム31は、ロックリング30とともに光軸OAを中心として時計回り又は反時計回りに回転する。ロックアーム31は、図2に示すように、ロックリング30がロック解除位置(ロック解除状態)まで駆動されたときには、固定枠40に設けられた回転規制部42(後述)と当接する。また、ロックアーム31は、図3に示すように、ロックリング30がロック位置(ロック状態)まで駆動されたときには、固定枠40に設けられた回転規制部43(後述)と当接する。このように、ロックリング30は、ロックアーム31が回転規制部42及び43と当接することにより駆動(移動)範囲が制限される。
【0030】
第2係合部32は、ロックリング30の内周側に設けられた略円弧状の突起である。第2係合部32は、ロックリング30の内周側に等間隔に8箇所設けられている。第2係合部32は、図2に示すように、ロックリング30がロック解除位置まで駆動されたときには、可動枠20に設けられた第1係合部21から離れている。また、第2係合部32は、図3に示すように、ロックリング30がロック位置まで駆動されたときには、可動枠20に設けられた第1係合部21と係合する。なお、第1係合部21と第2係合部32との「係合」とは、ロック状態において、可動枠20の可動範囲を振れ補正の制御範囲よりも狭い範囲に制限することをいう。
【0031】
ラックギア33は、ロック機構駆動ユニット70のピニオンギア72(後述)と係合する歯車である。ラックギア33は、ロックリング30に固定されている。
【0032】
付勢ばね34は、可動枠20の第1係合部21bと当接可能な板状の部材である。付勢ばね34は、図2に示すように、可動枠20の第1係合部21bと略対向する位置に設けられている。また、付勢ばね34は、図4に示すように、先端側に略へ字形の屈曲部35を有する。屈曲部35は、ロックリング30がロック位置まで駆動されたときに、可動枠20の第1係合部21bと接触して、可動枠20を光軸OAに沿った方向に加圧する。この加圧により、可動枠20の第1係合部21bと屈曲部35との間に摩擦力が生じる。このため、シャッタレリーズ時のミラーショック等の振動による可動枠20の振動を抑えることができる。
【0033】
また、付勢ばね34の屈曲部35は、図5に示すように、可動枠20の第1係合部21bに設けられた段差部22と係合する際に、段差部22の形成方向と平行に係合する。すなわち、付勢ばね34の屈曲部35は、第1係合部21bの段差部22と係合する部分の稜線Aが、段差部22の形成方向を示す線Bと平行となるように形成されている。
【0034】
このように、本実施形態において、付勢ばね34の屈曲部35は、可動枠20の第1係合部21bに設けられた段差部22と係合する際に、段差部22の形成方向と平行に係合する。このため、付勢ばね34のばね力量(ばねの復元力)を安定させることができる。すなわち、付勢ばね34の屈曲部35が段差部22と係合した際に、付勢ばね34のばね力量をほぼ一定とすることができる。従って、付勢ばね34におけるばねの強さを適切に設定することができる。これによれば、ロック状態及びロック解除状態の切り換えをより確実に且つ安定して行うことができる。
【0035】
一方、付勢ばね34の屈曲部35が段差部22の形成方向と平行に係合しない場合は、付勢ばね34のばね力量が不安定となる。すなわち、付勢ばね34のばね力量が、段差部22と係合する位置により変化する。このため、付勢ばね34におけるばねの強さを適切に設定することが難しくなる。従って、ロック状態及びロック解除状態の切り換えを確実に且つ安定して行うことが難しくなる。
【0036】
次に、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2について説明する。図4に示すように、第1係合部21bの段差部22において、第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、段差部22が付勢ばね34と係合する傾斜面の接線bとのなす角度をθ1とする。また、付勢ばね34の屈曲部35において、第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの段差部22と係合する部分の接線cとのなす角度をθ2とする。本実施形態では、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とが、θ2>θ1となるように設定している。このような設定とすることにより、後述するように、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えた際に、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの段差部22を容易に乗り越えることができる。
【0037】
一方、図8に示すように、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とが、θ2>θ1とならない場合には、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えた際に、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの段差部22を乗り越えることが難しくなる。図8は、θ2=θ1とした場合の例を示している。図8に示す状態から、更にロックリング30がロック解除方向(矢印R方向)に駆動されると、付勢ばね34の屈曲部35は、段差部22に押し付けられて座屈変形することが考えられる。この場合、可動枠20をロック状態からロック解除状態にスムーズに切り換えることができなくなる。また、付勢ばね34を交換しても、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えるたびに付勢ばね34の座屈変形を招くことになるため、信頼性が低下する。
【0038】
従って、本実施形態のように、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とが、θ2>θ1となるように設定することにより、可動枠20をロック状態からロック解除状態にスムーズに切り換えることができる。また、付勢ばね34の屈曲部35が、段差部22に押し付けられて座屈変形することがないので、付勢ばね34の寿命を延ばすことができる。このため、振れ補正装置6の信頼性を向上させることができる。
【0039】
次に、固定枠40について説明する。固定枠40は、図2及び図3に示すように、中央に開口部41が形成された略円盤状の部材である。固定枠40の開口部41には、可動枠20が挿入されている。また、固定枠40には、ロックリング30が回転自在に支持されている。固定枠40の外周部には、回転規制部42及び43が設けられている。回転規制部42及び43は、上述したように、ロックリング30のロックアーム31の回転範囲を制限する部位である。
【0040】
また、固定枠40には、図2及び図3に示すように、可動枠20を移動させるVCM50(50X,50Y)、一対の位置検出装置60(60X,60Y)、及びロック機構駆動ユニット70が取り付けられている。可動枠20は、VCM50(50X,50Y)に連結されている。VCM50(50X,50Y)は、可動枠20を光軸OAと略直交する方向に移動させるためのアクチュエータである。可動枠20は、光軸OAと略直交する方向には移動可能であるが、光軸OA回りの回転は規制されている。位置検出装置60(60X,60Y)は、可動枠20のXY方向の位置を位置情報として検出する装置である。
【0041】
上記構成において、カメラシステム1を統括的に制御するカメラCPU(不図示)は、加速度センサ(不図示)により検出した被写体像の像振れ情報と、位置検出装置60(60X,60Y)により検出された位置情報とに基づいて、可動枠20を移動させる目標位置を演算する。カメラCPUは、演算した目標位置に基づいてVCM50(50X,50Y)を駆動し、可動枠20を光軸OAと略直交する方向に移動させる。これにより、可動枠20に保持されたレンズ群L3は、被写体像の振れを打ち消す方向に移動するため、振れが補正される。なお、上述したVCM50(50X,50Y)の駆動は、レンズCPU(不図示)を介して制御される。
【0042】
ロック機構駆動ユニット70は、駆動モータ71と、ピニオンギア72と、を備える。駆動モータ71は、上述したレンズCPUにより駆動されるアクチュエータである。駆動モータ71は、固定枠40にネジ(符号省略)により固定されている。ピニオンギア72は、駆動モータ71の回転軸71aに取り付けられている。ピニオンギア72は、ロックリング30に固定されたラックギア33と係合している。駆動モータ71は、レンズCPUから供給される駆動信号により回転方向が制御される。
【0043】
次に、本実施形態の振れ補正装置6において、可動枠20をロック状態及びロック解除状態としたときの各部の動作について説明する。
【0044】
まず、可動枠20をロック解除状態(図2)からロック状態(図3)に切り換えた場合について説明する。可動枠20がロック解除状態にあるときには、図2に示すように、可動枠20に設けられた第1係合部21(21a,21b)と、ロックリング30に設けられた第2係合部32とは係合していない。また、可動枠20がロック解除状態にあるときには、図4に示すように、可動枠20の第1係合部21bと、付勢ばね34とは係合していない。このため、振れ補正装置6は、可動枠20を光軸OAと略直交する方向に移動させることにより、振れ補正の制御を行うことができる。
【0045】
カメラCPUは、ロック解除状態において、可動枠20をロック状態とする指示がカメラ本体2から入力されると、レンズCPUを制御して、駆動モータ71の回転軸71aを、図2の平面視において反時計回りに回転させる。駆動モータ71の回転軸71aが反時計回りに回転すると、係合するラックギア33は時計回りに回転する。これにより、ロックリング30は、図2の平面視において光軸OAを中心として時計回り(ロック方向)に駆動される。そして、ロックリング30は、図3に示すロック位置で停止する。このとき、ロックリング30のロックアーム31は、回転規制部43と当接する。
【0046】
このように、ロックリング30が図3に示すロック位置まで駆動される、可動枠20に設けられた第1係合部21(21a,21b)と、ロックリング30に設けられた第2係合部32とが係合する。これにより、可動枠20は、光軸OAと略直交する方向への移動が制限される。このため、振れ補正を行わない場合において、可動枠20の保持するレンズ群L3(振れ補正光学系)の不要な動きを抑えることができる。
【0047】
なお、可動枠20をロック状態とした場合でも、可動枠20の第1係合部21(21a,21b)とロックリング30の第2係合部32との間には、わずかな隙間がある。この隙間は、可動枠20及びロックリング30の寸法公差を許容するために設けられている。また、この隙間は、駆動モータ71の通常のトルクでロックリング30の回転を可能とするために設けられている。
【0048】
一方、可動枠20の第1係合部21(21a,21b)とロックリング30の第2係合部32との間に上記のような隙間が存在すると、可動枠20がロック状態であっても、シャッタレリーズ時のミラーショック等の振動により、可動枠20が振動してしまう場合がある。
【0049】
そのため、可動枠20がロック状態になると、図6に示すように、付勢ばね34の屈曲部35が、第1係合部21bの段差部22を乗り越えて、第1係合部21bの平坦部23に移動する。そして、付勢ばね34の屈曲部35は、第1係合部21bの平坦部23と当接する。この状態で、付勢ばね34の屈曲部35は、可動枠20の第1係合部21bを光軸OAに沿った方向に加圧する。この加圧により、可動枠20の第1係合部21bと付勢ばね34の屈曲部35との間に摩擦力が生じる。このため、シャッタレリーズ時のミラーショック等の振動による可動枠20の振動を抑えることができる。
【0050】
ところで、付勢ばね34の屈曲部35と可動枠20との間に上記のような摩擦力が働いていても、輸送時等における振動により、ロックリング30がロック位置からロック解除方向にずれてしまうことがある。このようなロックリング30のずれを防止するため、付勢ばね34の付勢力を大きくすることが考えられる。しかし、付勢ばね34の付勢力を大きくすると、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えた際に、付勢ばね34の大きな付勢力を上回るトルクでロックリング30を駆動する必要がある。このため、大型の駆動モータ71が必要となり、レンズ鏡筒3の大型化が避けられない。
【0051】
また、駆動モータ71により、ロックリング30をロック方向へ回転させる駆動力を与え続けることによっても、ロックリング30をロック位置に保つことはできる。しかし、その場合には、駆動モータ71を常に通電する必要がある。このため、カメラシステム1の消費電力が大きくなる。また、レンズ鏡筒3は、カメラ本体2から電力が供給されている。このため、カメラ本体2の電源がオフ状態になると、駆動モータ71を通電することができなくなる。従って、駆動モータ71への通電によりロックリング30をロック位置に保つことは困難である。
【0052】
これに対し、本実施形態の振れ補正装置6では、輸送時等の振動によりロックリング30がロック解除方向に回転しようとしても、図7に示すように、付勢ばね34の屈曲部35と、第1係合部21bの段差部22とが当接するため、ロックリング30のロック解除方向(矢印R方向)への回転が規制される。このため、ロックリング30は、図7の位置から更にロック解除方向に回転することがない。従って、輸送時等の振動により、ロックリング30がロック位置からロック解除方向にずれるのを防止することができる。
【0053】
このように、本実施形態の振れ補正装置6では、ロックリング30がロック解除方向にずれないため、付勢ばね34による可動枠20への加圧が保たれる。従って、可動枠20をロック状態とした場合には、輸送時等において振動が与えられても、シャッタレリーズ時のミラーショック等の振動により可動枠20が振動してしまうことがない。このため、画質の低下を防ぐことができる。
【0054】
なお、輸送時等において与えられる振動では、ロックリング30が段差部22を乗り越えて、ロック解除方向へ移動するほどの慣性力は生じない。このため、駆動モータ71へ通電し続けることなしに、ロックリング30をロック位置に保つことができる。
【0055】
次に、可動枠20をロック状態(図3)からロック解除状態(図2)に切り換えた場合について説明する。
【0056】
カメラCPUは、ロック状態において、可動枠20をロック解除状態とする指示がカメラ本体2から入力されると、レンズCPUを制御して、駆動モータ71の回転軸71aを、図3の平面視において時計回りに回転させる。駆動モータ71の回転軸71aが時計回りに回転すると、係合するラックギア33は反時計回りに回転する。これにより、ロックリング30は、光軸OAを中心として反時計回り(ロック解除方向)に駆動される。そして、ロックリング30は、図2に示すロック解除位置で停止する。このとき、ロックリング30のロックアーム31は、回転規制部42と当接する。
【0057】
このように、ロックリング30が図2に示すロック解除位置まで駆動されると、可動枠20に設けられた第1係合部21(21a,21b)と、ロックリング30に設けられた第2係合部32との係合が解除される。これにより、可動枠20は、光軸OAと略直交する方向への移動が可能となる。また、可動枠20に設けられた第1係合部21bと、ロックリング30に設けられた付勢ばね34との接触が解除される。これにより、可動枠20に設けられた第1係合部21bは、付勢ばね34により光軸OAに沿った方向に加圧されなくなる。このため、レンズCPUは、振れ補正装置6の機能として、可動枠20を光軸OAと略直交する方向に移動させることができる。
【0058】
また、付勢ばね34の屈曲部35は、駆動モータ71の駆動力によりロックリング30がロック解除方向、すなわち光軸OAを中心として反時計回りに回転したときには、図6に示す位置から第1係合部21bの平坦部23を摺動した後、図7に示すように、第1係合部21bの段差部22と当接する。更に、付勢ばね34の屈曲部35は、当接した第1係合部21bの段差部22を乗り越えて、ロック解除方向へ移動する。
【0059】
上述したように、第1係合部21bの段差部22における角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とは、θ2>θ1となるように設定されている。このため、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えた際に、付勢ばね34の屈曲部35は座屈変形することなしに、第1係合部21bの段差部22を容易に乗り越えることができる。そして、付勢ばね34の屈曲部35は、図2及び図4に示すように、第1係合部21bの段差部22と係合しない位置まで移動することができる。
【0060】
上述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)可動枠20をロック状態とした場合は、付勢ばね34の屈曲部35と第1係合部21bの段差部22とが当接することにより、ロックリング30のロック解除方向への回転が規制される。従って、輸送時等の振動によりロックリング30がロック位置からロック解除方向にずれるのを防止することができる。このように、ロックリング30がロック解除方向にずれないため、付勢ばね34による可動枠20への加圧が保たれる。従って、シャッタレリーズ時にミラーショック等の振動が発生しても、可動枠20が振動してしまうことがない。従って、本実施形態の振れ補正装置6によれば、振れ補正光学系のレンズ群L3を備えた可動枠20を確実に保持することができる。
【0061】
(2)ロックリング30のずれを防止するために、付勢ばね34の付勢力を大きくする必要がないため、駆動モータ71において、付勢ばね34の大きな付勢力を上回るトルクは不要となる。このため、駆動モータ71を大型化することなしに、可動枠20を確実に保持することができる。また、大型の駆動モータ71が不要となるため、レンズ鏡筒3の大型化や重量の増加を回避することができる。
【0062】
(3)付勢ばね34は、ロックリング30がロック位置まで駆動されたときに、可動枠20を光軸OAに沿った方向に加圧するとともに、輸送時等の振動によりロックリング30がロック位置からロック解除方向へ移動するのを防止することができる。これによれば、ロックリング30がロック位置からロック解除方向へ移動するのを防止するための専用の部材を設ける必要がないため、コスト増を抑えることができる。
【0063】
(4)駆動モータ71により、ロックリング30をロック方向へ回転させる駆動力を与え続ける必要がない。このため、カメラシステム1における消費電力の増加を抑えることができる。また、可動枠20を機械的にロック状態とすることができる。このため、カメラ本体2の電源がオフ状態になっても、可動枠20のロック状態を維持することができる。
【0064】
(5)付勢ばね34の屈曲部35は、駆動モータ71の駆動力によりロックリング30がロック解除方向まで駆動されたときには、第1係合部21bの平坦部23を摺動した後、第1係合部21bの段差部22を乗り越えて、ロック解除方向へ移動する。輸送時等において与えられる振動では、屈曲部35が段差部22を乗り越えて、ロック解除方向へ移動するほどの慣性力が生じない。このため、輸送時等において、可動枠20のロック状態を確実に保持することができる。
【0065】
(6)付勢ばね34の屈曲部35は、可動枠20の第1係合部21bに設けられた段差部22と係合する際に、段差部22の形成方向と平行に係合する。このため、付勢ばね34のばね力量を安定させることができる。すなわち、付勢ばね34の屈曲部35が段差部22と係合した際に、付勢ばね34のばね力量をほぼ一定とすることができる。従って、付勢ばね34におけるばねの強さを適切に設定することができる。これによれば、ロック状態及びロック解除状態の切り換えをより確実に且つ安定して行うことができる。
【0066】
(7)第1係合部21bの段差部22は、第1係合部21bの裏面において、ロックリング30がロック解除位置に駆動される方向の端部に形成されている。これによれば、付勢ばね34の屈曲部35や第1係合部21bの段差部22に寸法誤差が生じていても、付勢ばね34の屈曲部35が完全に段差部22を乗り越えた状態で平坦部23と当接させることができる。従って、ロックリング30をより確実にロック位置に移動させることができる。
【0067】
(8)第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、段差部22が付勢ばね34と係合する傾斜面の接線bとのなす角度をθ1とし、第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの段差部22と係合する部分の接線cとのなす角度をθ2としたときに、θ2>θ1となるように設定されている。このため、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えたときに、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの段差部22を容易に乗り越えることができる。従って、可動枠20をロック状態からロック解除状態にスムーズに切り換えることができる。また、付勢ばね34の屈曲部35が、段差部22に押し付けられて座屈変形することがないので、付勢ばね34の寿命を延ばすことができる。このため、振れ補正装置6の信頼性を向上させることができる。
(変形形態)
【0068】
以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、段差部22を略半円状の突起とした例について説明した。しかし、この例に限らず、段差部22を2つ設けた形状としてもよい。図9は、段差部22の他の構成例(第1段差部22A,第2段差部22B)を示す部分側面図である。図9に示すように、第1係合部21bの裏面には、2つの第1段差部22A及び第2段差部22Bと、平坦部23とが形成されている。第1段差部22A及び第2段差部22Bは、第1係合部21bの裏面から表面の側に向けて傾斜した部位である。すなわち、第1段差部22A及び第2段差部22Bは、逆凹形状となる溝部を形成している。平坦部23は、その溝部の底辺に位置する。
【0069】
また、図9に示すように、第1段差部22Aにおいて、第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、第1段差部22Aが付勢ばね34と係合する傾斜面の接線bとのなす角度をθ1とする。また、付勢ばね34の屈曲部35において、第1係合部21bの裏面と直交する垂線aと、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの第1段差部22Aと当接する部分の接線cとのなす角度をθ2とする。
【0070】
図9に示す構成において、第1係合部21bの第1段差部22Aにおける角度θ1と、付勢ばね34の屈曲部35における角度θ2とがθ2>θ1となるように設定する。このような構成とすることにより、可動枠20をロック状態からロック解除状態に切り換えた際に、付勢ばね34の屈曲部35が第1係合部21bの第1段差部22Aを容易に乗り越えることができる。
【0071】
また、図9に示す構成によれば、ロックリング30がロック位置の方向となる矢印L方向に駆動されたときに、付勢ばね34の屈曲部35が第2段差部22Bと係合する。このため、ロックリング30の矢印L方向(図2の平面視で時計回り)への回転が規制される。従って、固定枠40に設けられた回転規制部43を省略することができる。
【0072】
(2)本実施形態では、付勢ばね34の屈曲部35を略へ字形とした例について説明した。しかし、この例に限らず、付勢ばね34の屈曲部35を他の形状としてもよい。図10は、屈曲部35の他の構成例(屈曲部35A)を示す部分側面図である。本構成例における屈曲部35Aは、断面が略半球状に形成されている。第1係合部21bの段差部22の構成は、本実施形態と同じである。
【0073】
本実施形態では、図5に示すように、付勢ばね34の屈曲部35において、第1係合部21bの段差部22と係合する部分の稜線Aが、段差部22の形成方向を示す線Bと平行となるように形成した。しかしながら、本構成例では、付勢ばね34の屈曲部35Aを、段差部22の形成方向と平行にする必要はない。本構成例によれば、付勢ばね34の屈曲部35Aと段差部22との接触面積が小さくなる。このため、付勢ばね34の動きがよりスムーズになる。
【0074】
また、付勢ばね34の屈曲部35Aと可動枠20の第1係合部21bとの間に働く摩擦力はほとんど変わらない。このため、可動枠20をロック状態とした場合において、振動によるずれを抑えることができる。更に、輸送時等における振動により、ロックリング30がロック状態からずれた場合でも、付勢ばね34の屈曲部35Aと、第1係合部21bの段差部22とが当接するため、付勢ばね34の反時計回りへの回転を規制することができる。これによれば、付勢ばね34と連動するロックリング30は、図10の位置から更にロック解除方向(図中、矢印R方向)に回転することがない。このように、付勢ばね34の屈曲部35Aを半球状とした場合についても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(3)本実施形態では、付勢ばね34を2箇所に配置している。しかし、この例に限らず、付勢ばね34を3箇所以上配置してもよい。また、本実施形態における付勢ばね34は、金属を弾性変形させることにより可動枠20の第1係合部21bに付勢している。しかし、この例に限らず、屈曲部35をスプリングの復元力により付勢するように構成してもよい。
【0076】
(4)本実施形態では、本発明に係る振れ補正装置をデジタルカメラに適用した例について説明した。しかし、これに限らず、本発明に係る振れ補正装置は、フィルム式の銀塩カメラ、ビデオカメラ、振れ補正機能付きの双眼鏡、カメラ付き携帯電話等にも適用することができる。
【0077】
また、上記実施形態及び変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示と説明により明らかであるため、組み合わせの詳細な説明を省略する。更に、本発明は上記実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0078】
1:カメラシステム、2:カメラ本体、6:振れ補正装置、13:撮像素子、20:可動枠、21(21a,21b):第1係合部、22:段差部、30:ロックリング、32:第2係合部、34:付勢ばね、35:屈曲部、40:固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸と交差する面と平行な交差面方向に移動して像の振れを補正する振れ補正光学系と、
前記振れ補正光学系を保持し、当該振れ補正光学系とともに前記交差面方向に移動する部材であって、前記交差面方向に突出する第1係合部及び当該第1係合部の一方の面に形成された段差部を有する可動部材と、
前記可動部材の前記交差面方向への移動を制限するロック位置及び前記可動部材の前記交差面方向への移動を許容するロック解除位置にそれぞれ駆動可能に支持され、前記可動部材の前記第1係合部と係合可能な第2係合部及び前記可動部材の前記段差部と当接可能な付勢部材を有するロック部材と、
を備えた振れ補正装置であって、
前記ロック部材が前記ロック位置に駆動されたときには、前記可動部材の前記第1係合部と前記ロック部材の前記第2係合部とが係合して、前記可動部材の前記交差面方向への移動を制限し、且つ、当該制限中に前記ロック部材をロック解除位置に移動させる力が働いたときには、前記ロック部材の前記付勢部材と前記可動部材の前記段差部とが当接することにより、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動を規制し、
前記ロック部材が前記ロック解除位置に駆動されたときには、前記可動部材の前記第1係合部と前記ロック部材の第2係合部との係合を解除して、前記可動部材の前記交差面方向への移動を許容し、且つ、前記ロック部材の前記付勢部材が前記可動部材の前記段差部を乗り越えることにより、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動を許容すること、
を特徴とする振れ補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振れ補正装置であって、
前記第1係合部の一方の面には、前記段差部と、前記付勢部材が摺動する平坦部とが形成されていることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振れ補正装置であって、
前記付勢部材は、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置に駆動されたときに、前記第1係合部の前記平坦部を摺動した後、前記第1係合部の前記段差部を乗り越えて前記ロック解除位置の方向へ移動することを特徴とする振れ補正装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の振れ補正装置であって、
前記可動部材は、光軸回りの回転が規制されていることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の振れ補正装置であって、
前記付勢部材は、前記可動部材の前記段差部と係合したときに、当該段差部の延出方向と平行に係合する屈曲部を備えることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の振れ補正装置であって、
前記段差部は、前記第1係合部の一方の面において、前記ロック部材が前記ロック解除位置に移動する方向の端部に形成されていることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の振れ補正装置であって、
前記段差部が前記付勢部材と係合する部分の接線と、前記第1係合部の一方の面と直交する垂線とのなす角度をθ1とし、前記付勢部材が前記段差部と係合する部分の接線と前記垂線とのなす角度をθ2としたときに、θ2>θ1となることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項8】
光学系と、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の振れ補正装置と、
を備える光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47891(P2012−47891A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188534(P2010−188534)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】