説明

振動付与装置

【課題】従来の振動付与装置ではその振動ローラの配設位置がベルトコンベアの搬送ベルトに対して固定されていたため、選別ベルトへ一律の振動しか与えることができなかった。そのため、選別対象や搬送ベルトの搬送速度などの選別条件が変化したとき、振動付与装置から選別ベルトへ与えられる振動が上記選別条件に適さなくなるおそれがある。そのため、選別ベルトコンベア装置の選別効率に低下をきたす場合が生じていた。
【解決手段】ベルトコンベアの搬送ベルトへ振動を付与する振動付与装置であって、前記搬送ベルトの下方において該搬送ベルトの幅方向へ配置される回転軸と、該回転軸から突出して配置され前記搬送ベルトへ干渉する振動ローラとを備える振動付与装置において、前記回転軸の軸方向に前記振動ローラを移動可能とする軸方向位置変更部と、前記回転軸の半径方向に前記振動ローラを移動可能とする半径方向位置変更部と、を備える振動付与装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアの搬送ベルトへ振動を付与する振動付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
選別ベルトコンベア装置は、搬送ベルトを有するベルトコンベアと選別装置とを備え、ベルトコンベアの搬送ベルト上に載せて搬送する選別対象を選別装置によって選別する。この選別の効率を上げるために、回転軸と振動ローラを備えた振動付与装置を搬送ベルトの下方に設置し、回転軸の周りを周回する振動ローラによって搬送ベルトに振動を付与して、その振動により選別対象を搬送ベルトから上へ飛び上がらせる。その結果、飛び上がった選別対象は選別装置によって効率よく回収することができる。(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−277448号公報
【特許文献2】特開2002−192080号公報
【特許文献3】特許第3761125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動付与装置ではその振動ローラの配設位置がベルトコンベアの搬送ベルトに対して固定されていたため、選別ベルトへ一律の振動しか与えることができなかった。そのため、選別対象や搬送ベルトの搬送速度などの選別条件が変化したとき、振動付与装置から選別ベルトへ与えられる振動が上記選別条件に適さなくなるおそれがある。そのため、選別ベルトコンベア装置の選別効率に低下をきたす場合が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのこの発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
ベルトコンベアの搬送ベルトへ振動を付与する振動付与装置であって、
前記搬送ベルトの下方において該搬送ベルトの幅方向へ配置される回転軸と、該回転軸から突出して配置され前記搬送ベルトへ干渉する振動ローラとを備える振動付与装置において、
前記回転軸の軸方向に前記振動ローラを移動可能とする軸方向位置変更部と、
前記回転軸の半径方向に前記振動ローラを移動可能とする半径方向位置変更部と、
を備える振動付与装置である。
【0006】
このように構成された第1の局面の振動付与装置によれば回転軸の軸方向に移動ローラを移動可能とする軸方向位置変更部を備えることによって、搬送ベルトへ干渉する振動ローラの位置を搬送ベルトの幅方向に適宜調節可能である。また、回転軸の半径方向に振動ローラを移動可能とする半径方向位置変更部を備えることによって、搬送ベルトに干渉する振動ローラの位置を搬送ベルトの厚さ方向に適宜調節することができる。これにより、振動付与装置の振動ローラは三次元的にその位置調整が可能となる。したがって、搬送ベルトへ任意の態様(幅方向の位置、振動強さ)で振動を付与可能となる。よって、選別条件が変化したときも常に好適な振動を与え、選別効率を高く維持できる。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の振動付与装置において、前記軸方向位置変更部は、前記回転軸をスプライン軸とし、前記振動ローラを前記スプライン軸に嵌合するスプラインナットへ取り付けてなり、
前記半径方向位置変更部は、前記スプラインナットから半径方向へ前記振動ローラを軸支するリテーナを突出させ、該リテーナにおいて前記振動ローラの軸支位置をその突出方向へ変更可能とした。
このように規定される第2の局面の振動付与装置によれば、回転軸としてスプライン軸を採用し、軸方向位置変更部としてスプラインナットを採用したので、装置を構成する要素が汎用的な機械部品となり、製造コストを圧縮できる。また、スプラインナットから突出するリテーナを半径方向位置変更部として採用することにより、その構造が簡素化され、この点においても製造コストの圧縮が可能となる。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1又は第2の局面に規定の振動付与装置において、前記回転軸の軸方向に間隔をおいて複数の前記振動ローラを有する。
半径方向位置変更部により搬送ベルトへ対する干渉の態様が搬送ベルトの厚さ方向に変更されることにより、搬送ベルトへ付与する振動の強弱が調整できる。従って、回転軸の軸方向に間隔をおいて複数の振動ローラを配置させることにより、振動の強弱を搬送ベルトの幅方向に調整できる。例えば、後述の実施例にあるように、搬送ベルトの外側の振動ローラのリテーナを長くし(回転軸から半径方向に離すことにより搬送ベルトに対する振動ローラの干渉が強くなり、搬送ベルトへ強い振動を与えられる)、他方搬送ベルトの内側の振動ローラのリテーナを短くする(回転軸から半径方向に近くすることにより搬送ベルトに対する振動ローラの干渉が弱くなり、搬送ベルトへ与えられる振動は弱くなる)。かかる構成を採用することにより、搬送ベルトへ与えられる振動は外側で強く、内側で弱くなるので、搬送ベルト上の選別対象は搬送ベルトの中心側へ向けて跳ねあげられる。よって、搬送ベルトから脱落する選別対象の量が低減し、この点から選別ベルトコンベア装置の選別効率が向上する。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3の局面に規定の振動付与装置において、前記ベルトコンベアのフレームの任意位置へ着脱自在に取付可能な取り付け部を更に備える。
このように規定される第4の局面の振動付与装置によれば、ベルトコンベアのフレームの任意の位置へ取り付け部を取り付けることにより、振動付与装置により搬送ベルトへ与える振動の位置を搬送ベルトの搬送方向においても調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施の形態を含む選別ベルトコンベア装置の模式図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態を示す断面図である。
【図3】図3は実施例1の断面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態を示す模式図である。
【図5】図5は振動ローラによる搬送ベルトへの振動を占めす模式図である。
【図6】図6は半径方向位置変更部の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一の実施の形態である振動付与装置30を含めた選別ベルトコンベア装置1の全体概略図である。
実施の形態の選別ベルトコンベア装置1は、選別装置10、ベルトコンベア20、振動付与装置30を備える。
【0012】
選別装置10はベルトコンベア20の搬送ベルト21の上の任意の位置に配置され、搬送ベルト21上を搬送される選別対象を選別する。選別の方法は送風、吸引、磁気等の汎用的な方式が選別対象に応じて採用される。
選別対象は破砕された廃棄物、工業製品、農作物、食料品等任意に選択できる。選別装置10はその選別の方式に応じて選別対象をその比重、大きさ、材質などにより選別する。ここに、振動付与装置30により搬送ベルト21へ適当な振動が与えられると、搬送ベルト21上を搬送される選別対象が搬送ベルト21から跳ね上がり、選別装置10による選別の影響をより受けやすくなる。
【0013】
ベルトコンベア20は搬送ベルト21,ローラ23及び24を備え、側方はフレーム25でガードされている。搬送ベルト21の搬送速度、搬送ベルト21と選別装置10との距離等は選別対象に応じて任意に設定することができる。
図2は図1におけるII−II指示線断面図である。
図2にはフラットな搬送ベルト21が示されている。搬送ベルトは図3に示すように、舟底形21aを用いることができる。なお、図3において、同一の部材は同一の符号を付してその説明を省略する。
【0014】
振動付与装置30は、図2に示す通り、振動付与部31、動力部40及び固定部50を備える。
振動付与部31は回転軸33と振動ローラ34とを備える。回転軸33としてスプライン軸を採用し、このスプライ軸に嵌合されるスプラインナット35に振動ローラ34は固定される(図4参照)。スプラインナット35はスプライン軸33に対してその軸方向へ移動可能であり、固定ナット36やピンなどにより任意の位置へ固定できる。また、この固定ナット36を外すことにより、軸方向へ移動できる。
スプライン軸33とスプラインナット35とにより軸方向位置変更部が構成される。
回転軸33としてスプライン軸へ嵌合されるスプラインナット35は軸の周方向にずれることがなく、振動ローラ34を安定に支持できる。円柱形の回転軸に軸方向の凸状若しくは凹溝を形成し、他方ナットへ当該凸状若しくは凹溝にそれぞれ対応する凹溝若しくは凸状を形成し、これらを嵌合する構成を採用することもできる。
【0015】
スプラインナット35には平板状のリテーナ37が180度の間隔をとって、スプラインナット35の半径方向外方へ立設されている。リテーナ37にはその長手方向(即ち、スプラインナット35の半径方向)へ並ぶ複数の貫通孔38が形成されている。この貫通孔38へ振動ローラ34の支軸39が嵌合、固定される。振動ローラ34は支軸39に対して回転自在である。貫通孔38を選択することにより、振動ローラ34の位置(回転軸33からみてその半径方向の位置)が調整できる。
図5(A)に示すように、振動ローラ34が回転軸33に近い位置にあると、搬送ベルト21に対する干渉の度合いが小さく、振動ローラ34による搬送ベルト21の最大変形量も小さい。従って、搬送ベルト21に対して小さな振動が付与される。
他方、図5(B)に示すように、振動ローラ34が回転軸33から遠い位置にあると、搬送ベルト21に対する干渉の度合いが大きく、振動ローラ34による搬送ベルト21の最大変形量が大きくなる。従って、搬送ベルト21に対して大きな振動を付与できる。このように、回転軸33に対する振動ローラ34の半径方向の位置を調節することより、搬送ベルト21へ付与する振動の強弱を調整可能となる。
リテーナ37及び支軸39で半径方向位置変更部が構成される。
【0016】
スプラインナット35に対するリテーナ37の取付け数及び取付け位置は任意に設定可能である。3つのリテーナ37を120度の間隔をとって設ければ、振動ローラ34が搬送ベルト21へ干渉するピッチが小さくなり、より微細な振動を付与可能となる。
図6の例では、スプラインナット35へ円盤状のリテーナ37aを取り付け、その全面に貫通孔38を形成した。これにより、スプラインナット35からみてその半径方向及び周方向における振動ローラ34の位置及びその配設数を任意に設定できる。よって、選別条件に応じてより詳細に振動の態様を調節可能となる。なお、図6において、他の図と同一の部材は同一の符号を付してその説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0018】
1 選別ベルトコンベア装置
10 選別装置
20 ベルトコンベア
21、21a 搬送ベルト
25 フレーム
30 振動付与装置
33 回転軸
34 振動ローラ
35 スプラインナット
37、37a リテーナ
39 支軸
40 動力部
50 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアの搬送ベルトへ振動を付与する振動付与装置であって、
前記搬送ベルトの下方において該搬送ベルトの幅方向へ配置される回転軸と、該回転軸から突出して配置され前記搬送ベルトへ干渉する振動ローラとを備える振動付与装置において、
前記回転軸の軸方向に前記振動ローラを移動可能とする軸方向位置変更部と、
前記回転軸の半径方向に前記振動ローラを移動可能とする半径方向位置変更部と、
を備える振動付与装置。
【請求項2】
前記軸方向位置変更部は、前記回転軸をスプライン軸とし、前記振動ローラを前記スプライン軸に嵌合するスプラインナットへ取り付けてなり、
前記半径方向位置変更部は、前記スプラインナットから半径方向へ前記振動ローラを軸支するリテーナを突出させ、該リテーナにおいて前記振動ローラの軸支位置をその突出方向へ変更可能とした、ことを特徴とする請求項1に記載の振動付与装置。
【請求項3】
前記回転軸の軸方向に間隔をおいて複数の前記振動ローラを有する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動付与装置。
【請求項4】
前記ベルトコンベアのフレームの任意位置へ着脱自在に取付可能な取り付け部を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜3に記載の振動付与装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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