説明

振動制御システム

【課題】 建物及び建物内に設置された設備に対して、相互の状況に応じた適切な制振制御を行う振動制御システムを提供する。
【解決手段】 振動制御システムは、地面Lに建てられた建物Bと、建物Bの振動を制振する建物用制振装置B1と、建物Bに設置された設備Fと、設備Fの振動を制振する設備用制振装置F1と、建物用制振装置B1と設備用制振装置F1とは、相互通信可能であり、建物用制振装置B1は、建物Bの振動応答値を設備用制振装置F1に送信し、設備用制振装置F1は、設備Fの振動応答値を建物用制振装置B1に送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物及び建物内に設置された設備に対する振動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震等によって振動する建物を制振する技術が開示されている(特許文献1参照)。また、建物が揺れることで生じる建物内の設備としてのエレベータロープの揺れに応じてエレベータを管制運転する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−84817号公報
【特許文献2】特開2008−74536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、建物の振動を制振するための技術であって、建物内に設置された設備の制振については、何ら考えられていない。また、特許文献2に記載された技術は、エレベータロープの揺れに応じてエレベータを管制運転する技術であって、建物の制振については、何ら考えられていない。すなわち、建物は建物の制御装置によって制御され、建物内の設備は設備の制御装置によって制御されている。
【0005】
したがって、建物の制御装置及び設備の制御装置は、相互の制御によって応答が変化することについて考えられていないので、一方のシステムを制御することによって他方のシステムの応答が悪化する場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、建物及び建物内に設置された設備に対して、相互の状況に応じた適切な制振制御を行う振動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明の振動制御システムは、地面に建てられた建物と、前記建物の振動を制振する建物用制振装置と、前記建物に設置された設備と、前記設備の振動を制振する設備用制振装置と、前記建物用制振装置と前記設備用制振装置とは、相互通信可能であり、前記建物用制振装置は、前記建物の振動応答値を前記設備用制振装置に送信し、前記設備用制振装置は、前記設備の振動応答値を前記建物用制振装置に送信することを特徴とする。
【0008】
また、前記設備用制振装置は、前記建物の振動特性を記憶していることを特徴とする。
【0009】
また、前記建物用制振装置は、前記設備の振動特性を記憶していることを特徴とする。
【0010】
また、前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1)の評価関数が最小となるように制御し、

評価関数Jb={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rb
より計算される関数} (1)

前記設備用制振装置は、以下の式(2)の評価関数が最小となるように制御し、

評価関数Jr={設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rr
より計算される関数} (2)

前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3)の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする。

評価関数Jbr={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rbと、
設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rrと、
制御対象間のバランスを決定する係数α
より計算される関数} (3)

ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【0011】
また、前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1')の評価関数が最小となるように制御し、
【数1】


前記設備用制振装置は、以下の式(2')の評価関数が最小となるように制御し、
【数2】


前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3')の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする。

【数3】


ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【0012】
さらに、前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1")の評価関数が最小となるように制御し、
【数4】


前記設備用制振装置は、以下の式(2")の評価関数が最小となるように制御し、
【数5】


前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3")の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする。

【数6】


ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の振動制御システムでは,建物及び建物内に設置された設備に対して、相互の状況に応じた適切な制振制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】振動制御システムの一実施形態のモデルを示す図である。
【図2】振動制御システムの一実施形態のブロック図である。
【図3】振動制御装置の一実施形態を示す図である。
【図4】振動制御システムのモデルの一実施例を示す図である。
【図5】ビル用制御装置の制御フローチャートを示す図である。
【図6】エレベータロープ用制御装置の制御フローチャートを示す図である。
【図7】ビルの層間変形角の最大値の比較を示す図である。
【図8】ビル−エレベータロープ間距離の最大値の比較を示す図である。
【図9】ビルの層間変形角の最大応答の時刻歴変化を示す図である。
【図10】ビル−エレベータロープ間距離の最大応答の時刻歴変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、振動制御システムの一実施形態のモデルを示す図である。
【0017】
本実施形態の振動システム1のモデルは、地面Lに建つ建物Bと、建物B内に設置された設備Fと、を有する。建物Bは、地震等の地面Lからの振動Eの入力に対して制振制御するための建物用制振装置B1を有する。また、設備Fは、建物からの振動Vの入力に対して制振制御するための設備用制振装置F1を有する。
【0018】
図2は、振動制御システムの一実施形態のブロック図である。
【0019】
振動制御システムでは、まず、地震動Eが建物Bに入力される。建物Bの振動は、建物用制振装置B1に入力されて制御されると共に、設備Fを振動させる。また、建物Bの振動は、設備用制振装置F1にも入力されて設備Fを制御するためにも使用される。設備Fの振動は、設備用制振装置F1に入力されて制御されると共に、建物用制振装置B1に入力されて建物Bを制御するためにも使用される。
【0020】
図3は、振動制御装置の一実施形態を示す図である。
【0021】
建物用振動制御装置B1は、建物の加速度を検出する加速度センサ等からなる建物用センサBSと、建物用センサBSの検出した検出値が入力される建物用コントローラBCと、建物用コントローラBCによって制御されて建物を制振するアクティブマスダンパー等の建物用アクチュエータBAと、を有する。
【0022】
設備用振動制御装置F1は、設備にあわせた所定のパラメータを検出する設備用センサFSと、設備用センサFSの検出した検出値が入力される設備用コントローラFCと、設備用コントローラFCによって制御されて設備を制振する設備用アクチュエータFAと、を有する。
【0023】
また、建物用コントローラBCと設備用コントローラFCとは相互に通信可能である。例えば、建物用コントローラBCは、建物の振動応答値を設備用コントローラFCに送信する。また、設備用コントローラFCは、設備の振動応答値を建物用コントローラBCに送信する。
【0024】
さらに、非制御時の建物Bの振動特性と設備Fの振動特性をそれぞれ共有して記憶しておくことが好ましい。例えば、建物B及び設備Fの固有振動数又は固有周期、及び減衰係数等である。
【0025】
図4は、振動制御システムのモデルの一実施例を示す図である。
【0026】
モデルは、地面Lに建てられた建物としてのビル1と、建物用制振装置としてのビル用制振装置2と、ビル1内をガイドに沿って昇降する設備としてのエレベータ11と、エレベータ11を吊す設備としてのエレベータロープ12と、設備用制振装置としてのエレベータロープ用制振装置13と、を有する。
【0027】
ビル用制振装置2は、おもり3と、おもり3を移動させるビル用アクチュエータ4と、を有し、おもり3をアクチュエータ4で動かした際の反動によってビル1を制振するアクティブマスダンパーである。
【0028】
エレベータロープ用制振装置13は、エレベータロープ12をドラム等に巻いてエレベータを上げ下げする巻き上げ機14と、巻き上げ機14を載せた台車等を移動させる巻き上げ機用アクチュエータ15と、を有し、巻き上げ機用アクチュエータ15によって巻き上げ機14を載せた台車等を移動させることで、エレベータロープ12を制振する。
【0029】
図4に示した振動制御システムのモデルに対するシミュレーションについて説明する。
【0030】
建物に関するパラメータは、質点数Nm=60、1次固有周期Tm1=5.8s、1次減衰定数ζm1=0.01、階高Δh=4m、各層の質量mi=1×106kgである。また、エレベータロープに関するパラメータは、分割数Nr=59、線密度ρA=1.7kg/m、減衰定数ζr=0.008、本数nr=5本である。
【0031】
モデル化は、建物をせん断質点系、エレベータロープを有限要素で行う。運動方程式は、以下の式(A)となる。
【数7】


ここで、
Mは質量行列、
Cは減衰行列、
Kは剛性行列、
xは変位ベクトル、
・・zは地動加速度、
fは制御力の分配ベクトル、
uは制御力ベクトル
である。
【0032】
地面Lからビル1への入力地震動Eは、2004年新潟県中越地震K−NET新宿観測記録EW成分を用いる。制御力は、線形2次形式レギュレータ理論を用いて決定する。
【0033】
本実施例は、ビル1の振動が所定の閾値以上の時には、ビル用制振装置2はビル1の制振に専念して行うように以下の式(1)の評価関数が最小となるように制御する。

評価関数Jb={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rb
より計算される関数} (1)
【0034】
ここでは、具体例として、以下の式(1')の評価関数が最小となるように制御を行う。
【数8】

【0035】
なお、他の例として、以下の式(1")の評価関数が最小となるように制御してもよい。
【数9】

【0036】
ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bはビル用制御力ベクトル、
bはビル用制御力の重み係数行列、
である。
【0037】
また、同様に、ビル1の振動が所定の閾値以上の時には、エレベータロープ用制振装置13はエレベータロープ12の制振に専念して行うように以下の式(2)の評価関数が最小となるように制御する。

評価関数Jr={設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rr
より計算される関数} (2)
【0038】
ここでは、具体例として、以下の式(2')の評価関数が最小となるように制御を行う。
【数10】

【0039】
なお、他の例として、以下の式(2")の評価関数が最小となるように制御してもよい。
【数11】

【0040】
ここで、
rは低減させたいエレベータの応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rはエレベータロープ用制御力ベクトル、
rはエレベータロープ用制御力の重み係数行列、
である。
【0041】
振動が所定の閾値より小さい時には、ビル1とエレベータロープ13の相互の振動を考慮して、それぞれビル用制振装置2及びエレベータロープ用制振装置13は、以下の式(3)の評価関数が最小となるように制御する。

評価関数Jbr={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rbと、
設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rrと、
制御対象間のバランスを決定する係数α
より計算される関数} (3)
【0042】
ここでは、具体例として、以下の式(3')の評価関数が最小となるように制御を行う。
【数12】

【0043】
なお、他の例として、以下の式(3")の評価関数が最小となるように制御してもよい。
【数13】

【0044】
ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【0045】
次に、本実施例の制御フローチャートについて説明する。
【0046】
図5はビル用制振装置2による制御フローチャートを示す図である。
【0047】
まず、ステップ1で、地震動が入力される(ST1)。次に、ステップ2で、ビル1の振動レベルが所定の閾値以上か否かを判断する(ST2)。
【0048】
ステップ2において、ビル1の振動レベルが所定の閾値以上の場合、ステップ3で、ビル1の振動を制御する(ST3)。
【0049】
ステップ2において、ビル1の振動レベルが所定の閾値より小さい場合、ステップ4で、ビル1の振動が悪化しないように考慮しつつ、エレベータロープ用制振装置13と協調してエレベータロープ12の振動を制御する(ST4)。
【0050】
図6はエレベータロープ用制振装置13の制御フローチャートを示す図である。
【0051】
まず、ステップ11で、地震動が入力される(ST11)。次に、ステップ12で、ビル1の振動レベルが所定の閾値以上か否かを判断する(ST12)。
【0052】
ステップ12において、ビル1の振動レベルが所定の閾値以上の場合、ステップ13で、エレベータロープ12の振動を制御する(ST13)。
【0053】
ステップ12において、ビル1の振動レベルが所定の閾値より小さい場合、ステップ14で、ビル用制振装置2と協調してエレベータロープ12の振動を制御する(ST14)。
【0054】
図7は、ビルの層間変形角の最大値の比較を示す図である。横軸はビルの1つ上の階における床の相対変位を階の高さで割った層間変形角であり、縦軸は高さを示す。
【0055】
図中、破線は、非制御時の応答である。また、点線は、ビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御した時の応答である。さらに、実線は、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御した時の応答である。以下、図8〜図10まで同様である。
【0056】
図7に示すように、非制御の応答及びビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御した時の応答と比較して、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御した時の応答は、層間変形角が小さくなっていることが確認できる。
【0057】
図8は、ビル−エレベータロープ間距離の最大値の比較を示す図である。横軸はビルとエレベータロープ間の距離であり、縦軸は高さを示す。
【0058】
図8に示すように、非制御の応答及びビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御した時の応答と比較して、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御した時の応答は、ビルとエレベータロープ間の距離が小さくなっていることが確認できる。
【0059】
図9は、ビルの層間変形角の最大応答の時刻歴変化を示す図である。
【0060】
図9に示すように、非制御の応答及びビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御した時の応答と比較して、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御した時の応答は、地震動が建物に入力している約100秒〜125秒で低減し、応答の収束を早めている。
【0061】
図10は、ビル−エレベータロープ間距離の最大応答の時刻歴変化を示す図である。
【0062】
図10に示すように、非制御の応答及びビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御した時の応答と比較して、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御した時の応答は、地震動がビル1に入力している約100秒〜125秒で低減するだけでなく、地震動が収まった150秒後でも低減している。
【0063】
このように、振動制御システムは、地面に建てられたビル1と、ビル1の振動を制振するビル用制振装置2と、ビル1に設置されたエレベータロープ12と、エレベータロープ12の振動を制振するエレベータロープ用制振装置13と、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13とは、相互通信可能であり、ビル用制振装置2は、ビル1の振動応答値をエレベータロープ用制振装置13に送信し、エレベータロープ用制振装置13は、エレベータロープ12の振動応答値をビル用制振装置2に送信するので、ビル1及びビル1内に設置されたエレベータロープ12に対して、相互の状況に応じた適切な制振制御を行うことが可能となる。また、既存のビル1およびビル用制振装置2に対して、エレベータロープ用制振装置13を通信可能に設けることで、簡単に適用することが可能となる。
【0064】
また、エレベータロープ用制振装置13がビル1の振動特性を記憶していると、さらに適切な制振制御を行うことが可能となる。
【0065】
また、ビル用制振装置2がエレベータロープ12の振動特性を記憶していると、さらに適切な制振制御を行うことが可能となる。
【0066】
また、ビル1の振動が所定の閾値以上の場合、ビル用制振装置2は、式(1)の評価関数が最小となるように制御し、エレベータロープ用制振装置13は、式(2)の評価関数が最小となるように制御し、ビル1の振動が所定の閾値よりも小さい場合、ビル用制振装置2及びエレベータロープ用制振装置13は、式(3)の評価関数が最小となるように制御するので、ビル1に入力している地震動が大きい振動の場合には、ビル用制振装置2がビル1の振動のみを考慮して制御し、エレベータロープ用制振装置13がエレベータロープ12の振動のみを考慮して制御して、ビル1とエレベータロープ12のそれぞれの制振を適切に行うことが可能であり、地震動が収まり振動が小さくなった後は、ビル用制振装置2とエレベータロープ用制振装置13が互いの応答値を通信し、協調して制御して、ビル1とエレベータロープ12が互いの振動を考慮して適切に効率よく制振することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…ビル(建物)
2…ビル用制振装置(建物用制振装置)
3…おもり(建物用制振装置)
11…エレベータ(設備)
12…エレベータロープ(設備)
13…エレベータロープ用制振装置(設備用制振装置)
14…巻き上げ機(設備用制振装置)
15…巻き上げ機用アクチュエータ(設備用制振装置)
L…地面
B…建物
B1…建物用制振装置
F…設備
F1…設備用制振装置
E…入力地震波
V…建物の振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に建てられた建物と、
前記建物の振動を制振する建物用制振装置と、
前記建物に設置された設備と、
前記設備の振動を制振する設備用制振装置と、
前記建物用制振装置と前記設備用制振装置とは、相互通信可能であり、
前記建物用制振装置は、前記建物の振動応答値を前記設備用制振装置に送信し、
前記設備用制振装置は、前記設備の振動応答値を前記建物用制振装置に送信する
ことを特徴とする振動制御システム。
【請求項2】
前記設備用制振装置は、前記建物の振動特性を記憶している
ことを特徴とする請求項1に記載の振動制御システム。
【請求項3】
前記建物用制振装置は、前記設備の振動特性を記憶している
ことを特徴とする請求項2に記載の振動制御システム。
【請求項4】
前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1)の評価関数が最小となるように制御し、

評価関数Jb={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rb
より計算される関数} (1)

前記設備用制振装置は、以下の式(2)の評価関数が最小となるように制御し、

評価関数Jr={設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rr
より計算される関数} (2)

前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3)の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする請求項3に記載の振動制御システム。

評価関数Jbr={建物の応答ベクトルybと、建物応答の重み係数行列Qbと、
建物用制御力ベクトルubと、建物用制御力の重み係数行列Rbと、
設備の応答ベクトルyrと、設備応答の重み係数行列Qrと、
設備用制御力ベクトルurと、設備用制御力の重み係数行列Rrと、
制御対象間のバランスを決定する係数α
より計算される関数} (3)

ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【請求項5】
前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1')の評価関数が最小となるように制御し、
【数14】


前記設備用制振装置は、以下の式(2')の評価関数が最小となるように制御し、
【数15】


前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3')の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の振動制御システム。
【数16】


ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。
【請求項6】
前記建物の振動が所定の閾値以上の場合、
前記建物用制振装置は、以下の式(1")の評価関数が最小となるように制御し、
【数17】


前記設備用制振装置は、以下の式(2")の評価関数が最小となるように制御し、
【数18】


前記建物の振動が所定の閾値よりも小さい場合、
前記建物用制振装置及び前記設備用制振装置は、以下の式(3")の評価関数が最小となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の振動制御システム。
【数19】


ここで、
bは低減させたい建物の応答ベクトル、
bは建物応答の重み係数行列、
bは建物用制御力ベクトル、
bは建物用制御力の重み係数行列、
rは低減させたい設備の応答ベクトル、
rは設備応答の重み係数行列、
rは設備用制御力ベクトル、
rは設備用制御力の重み係数行列、
αは制御対象間のバランスを決定する係数、
である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23844(P2013−23844A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157501(P2011−157501)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】