説明

振動型モータの制御方法および振動型モータの駆動装置

【課題】温度変化や駆動負荷の変化による電流の増加に対して電流の供給量を越えないようにすると共に、その供給量の制限内で大きい出力を出せるように、周波数及びパルス幅が制御可能な振動型モータの制御方法を提供する。
【解決手段】楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、駆動信号のパルス幅を変更するスイッチング手段と、スイッチング手段を介して電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、各手段の制御を司ると共に、被駆動体の速度を設定する制御部と、を備え、制御部は、目標速度に対し、電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、駆動信号の周波数とパルス幅を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子に振動波を生じさせ、この超音波振動子に接触する移動体を摩擦力により相対移動させる振動型モータの制御方法および振動型モータの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気−機械エネルギー変換素子に交流信号を印加し、超音波振動子に振動波を生じさせ、この超音波振動子に接触する移動体を摩擦力により相対移動させる振動型モータを用いたカメラ、ビデオなどの装置においては、電池が電力の供給源となっている。
最近では、上記したカメラ、ビデオなどの装置の小型化が進み、電池も小さくなり電源供給容量が小さくなっており、それらに対する種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1では図8に示すように、異音が発生しないようにするため、電池電圧に応じて駆動パルスのパルス幅を変え 電池電圧が十分高いときには、パルス幅を絞り余計なエネルギーが入らないようにした超音波モータ駆動回路が提案されている。
また、電池電圧に応じてモータの駆動方法を変え一定入力電力になるようにコントロールする振動型モータの駆動回路が知られている。
また、特許文献2では、駆動電流を検出しその値が許容電流を超えないようにパルス幅を制御する振動波アクチュエータの制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第03140236号公報
【特許文献2】特開平09−271174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来例のものにおいては、つぎのような課題を有している。
上記特許文献1では、電池電圧に応じてパルス幅および駆動方法を変えることは可能であるが、検出対象が電池電圧であるため実際のモータが消費している電流を検出することはできない。
そのため、温度変化や駆動負荷の変化により電流が増加してしまっても対応することができず、電流が電池の供給できる所定量を越えてしまった場合、それ以上供給できず、電池電圧が低下して装置のシステム全体が動かなくなってしまうという問題が発生する。
【0005】
また、上記特許文献2のような電流値を検出し電流が所定値を越えないようにパルス幅制御する手段を用いた場合には、つぎのような問題が生じる。
周波数変更による入力電力増加に対しモータ出力も増加する「第一の周波数領域」ではパルス幅制御と速度制御が同時に実施される。
そのため、速度を上げるために周波数を下げる動作と、電流を減らすためにパルス幅を小さくする動作が混在し、安定した駆動ができない。
また、共振周波数を超えた周波数になってしまい、モータが停止してしまうという問題が生じる。
また、共振周波数から離れた駆動回路のインピーダンス回路との増幅効果により電圧は増加する。
しかし、振動型モータの容量成分側に電流が流れてしまう周波数領域 すなわち周波数変更による入力電力増加に対しモータ出力が増加しない「第二の周波数領域」では、常に出力できるギリギリまでの電流を流そうと動作する。
そのため、容量成分側に流れる無効な電流を常に流し続けて回路効率を低下させてしまうこととなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、温度変化や駆動負荷の変化による電流の増加に対して該電流の供給量を越えないようにすると共に、
その供給量の制限内で大きい出力を出せるように、周波数及びパルス幅を制御することが可能となる振動型モータの制御方法および振動型モータの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動型モータの制御方法は、少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの制御方法であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、該駆動信号のパルス幅を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス幅および駆動電圧を制御することを特徴とする。
また、本発明の振動型モータの駆動装置は、少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの駆動装置であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、該駆動信号のパルス幅を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス幅とを制御することが可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度変化や駆動負荷の変化による電流の増加に対して該電流の供給量を越えないようにすると共に、
その供給量の制限内で大きい出力を出せるように、周波数及びパルス幅を制御することが可能となる振動型モータの制御方法および振動型モータの駆動装置を実現することができる。
特に、電流の供給量に制限のある電源を用いる際に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における振動型モータの制御方法に用いる振動型モータの制御回路の構成を説明するブロック図。
【図2】本発明の実施例1における振動型モータの分解斜視図。
【図3】本発明の実施例1における図2に示された振動型モータの組立て後の斜視図。
【図4】(a)は本発明の実施例1における図1のブロック図のドライバ部の回路構成図、(b)は図1のブロック図における回路ブロックの電流検出回路の周辺回路構成図。
【図5】(a)は本発明の実施例1における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図、(b)はアルゴリズムを表わすフローチャート図。
【図6】(a)は本発明の実施例2における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図、(b)はアルゴリズムを表わすフローチャート図。
【図7】(a)は本発明の実施例3における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図、(b)はアルゴリズムを表わすフローチャート図。
【図8】(a)は本発明の実施例4における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図、(b)はアルゴリズムを表わすフローチャート図。
【図9】従来技術におけるパルス幅と電源電圧の関係を示す図。
【図10】本発明の実施例4における回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した振動型モータの制御方法の構成を、図1のブロック図を用いて説明する。
本実施例の振動型モータは、電気−機械エネルギー変換素子と、この電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
該電気−機械エネルギー変換素子に対する供給量に制限のある電源からの駆動電圧の印加により、該弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備えている。
そして、この弾性体の接触部と接触する被駆動体を上記楕円運動によって振動体に対して相対移動させるように構成されている。
図1において、200は振動型モータであり、32はマイクロコンピュータなどのコント−ロールを司るマイコン部分によって構成される制御部である。以下においてこの制御部をマイコン部と略して記す。
34は上記した楕円運動を生成するため、マイコン部の指令値に応じて第一のモード(Aモード)と第二のモード(Bモード)の駆動信号を発生させる発振器部(駆動信号発生手段)である。
33はAモードの信号を電源電圧でスイッチングする増幅回路(スイッチング手段)で、この増幅回路33ではインピーダンス素子41との組み合わせにてより多くの駆動力を与える回路が構成されている。
33’はBモードの信号を電源電圧でスイッチングする増幅回路(スイッチング手段)で、この増幅回路33’ではインピーダンス素子42との組み合わせにより多くの駆動力を与える回路が構成されている。
36は増幅回路33、33’の増幅回路に電圧を供給する電池などの電源部であり、37は電源からの供給電流を検出する電流検出回路(電流検出手段)である。
電流検出回路37で検出された電流値は上記マイコン部に入力され本実施例の電流制限アルゴリズムの情報として使用される。
35は移動体(被駆動体)の位置および速度を検出する位置検出手段である。この位置検出手段35で得られた結果により、移動体の位置および速度情報がマイコン部32に渡されマイコン部はそれに応じてモータをコントロールする。
【0012】
つぎに、振動型モータの構成の一例を、図2および図3を用いて説明する。
これらの図において、201は金属等の振動減衰損失の小さい材料で構成された板(円板)状の第1の弾性体、202は電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子である。
また、203は不図示の電源より圧電素子202に交番信号を印加するためのフレキシブル基板、204はシャフト206の下端に形成されたネジ部と嵌合する下ナット、205は第2の弾性体である。
第1の弾性体201、圧電素子202、フレキシブル基板203、および第2の弾性体205の中心部に設けられた貫通孔に、シャフト206が挿入されている。
シャフト206の途中には段差が設けられており、この段差が第2の弾性体205の内壁に設けられた段差に突き当たるように構成されている。
シャフト206の先端(下端)部にはネジが形成され、このネジに締結部材である下ナット204を嵌合させて締め付けることで、第2の弾性体205、第1の弾性体201、圧電素子202、および、フレキシブル基板203を固定することができる。
【0013】
第1の弾性体201の圧電素子202と接触していない側の表面には、移動体であるロータ207に固定された接触バネ208が加圧接触する。
この接触バネ208は弾性を有しており、ロータ207に固定されて一体となって回転する。
209は出力手段であるギアであり、ロータ207の回転軸方向の移動を許容し、ロータ207の回転運動の移動を追従するようにロータ207と嵌合している。
210はバネ等の加圧手段であり、ロータ207のバネ受け部とギア209との間に配置され、ロータ207を第1の弾性体201の方向に押し下げるように加圧している。
ギア209はシャフト206と結合した固定部材211に軸支されており、その軸方向における位置は固定部材211によって規制されている。
シャフト206の下ナット204と嵌合しない側の先端(上端)部にもネジが形成されており、このネジに上ナット212を嵌合させて、固定部材211にシャフト206が固定されている。
固定部材211にはネジ穴が設けてあり、この固定部材211を所望の個所にネジを用いて固定することで、振動型モータを所望の個所に取り付けることができる。
【0014】
圧電素子202は、例えば1つの圧電体の両面に電極膜が形成されており、片面の電極膜を2つの電極膜に分割し、電極膜が形成された2つの領域には、互いに逆向きとなるように圧電素子202の厚み方向に分極が施されている。
この2つの電極膜に同一の交番信号を印加すると、圧電素子202の一方の領域は厚み方向に膨張し、他方の領域は厚み方向に収縮する。
この圧電体にさらに電極膜の位相が90度ずれるように、もう1枚の圧電体を重ね合わせ、この2つの圧電体に時間的に90度位相のずれた交番信号を印加する。
すると、振動子には第1の弾性体201を左右に振るような2つの曲げ振動(1つは振幅方向がシャフト206の軸方向と垂直な方向、もう1つは振幅方向がシャフト206の軸方向と垂直な方向)が発生する。
これらの振動が合成されると、第1の弾性体201の表面には、楕円運動が励起される。この楕円運動が励起された第1の弾性体201の表面に接触バネ208を加圧接触させれば、接触バネ208およびロータ207がこの楕円運動に押し出されるようにして移動する。
【0015】
振動型モータの構成は上記の構成に限定されるものではなく、つぎのように構成されたモータであってもよい。
例えば、圧電素子等の電気−機械エネルギー変換素子、振動体、移動体等から構成されており、電気−機械エネルギー変換素子に2相以上の交流電圧を印加することにより振動体に進行性の振動波を発生させる。
そして、この振動エネルギーが、振動体に加圧接触されたロータ等の移動体に伝達されるように構成されたモータであってもよい。
【0016】
つぎに、本実施例におけるドライバ部(増幅回路33,33’)の回路構成について、図4(a)を用いて説明する。
図4(a)に示す回路構成において、スイッチング回路はスイッチング素子にFET51〜58を用いている。
ここで、図4(a)に示すようにA相パルスがHiになるとFET51、54がオンとなりA相から/A相に向かって電流が流れる。
逆に/AパルスがHiになるとFET53、52がオンとなり/A相からA相に向かって電流が流れる。B相に対しても同様に与えられたパルス信号に応じてFET55〜58がオンして振動子に電圧を印加する構成となっている。
ここで、Aと/AおよびBと/Bはそれぞれ180°位相がずれておりパルス幅は等しいパルス信号となっている。
41、42はモータとのインピーダンスを整合させるインピーダンス素子である。
本実施例では41、42はインダクタンス素子であり、ここでは不図示ではあるがインピーダンスを整合させるために容量素子を、振動子と並列に設けるケースもある。
このようにインピーダンス素子を41、42の位置に付加することで、より低電圧で、かつ高効率でモータを駆動することができる。
【0017】
つぎに、本実施例の振動型モータの制御方法に用いる電流検出回路37の周辺回路構成について、図4(b)を用いて説明する。
図4(b)において38は電流検出用抵抗であり39は差動増幅器であり、電流検出回路37は電源36とモータドライバ部33、33’の間に設けられている。
具体的には電流検出用抵抗38の端子間電圧を差動増幅器39により差動増幅し、その電圧をマイコン32に設けられたAD変換器などによりデジタルデータとして変換し電流検出結果として、マイコン32に取り込まれる。
図5(a)は本実施例の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図である。
上記特性図の中のN_0は負荷トルクゼロのときのモータ回転数で、I_0はそのときの電流特性である。電流は図1の37の電流検出回路にて検出された電流値でマイコン32へ伝達される。
N_100は例えば負荷100gfcmのときのモータ回転数で、I_100はそのときの電力特性である。
図5(a)からわかるように、負荷トルクゼロのときは全周波数領域において電流はリミット値LimAを越えない。
【0018】
つぎに、本実施例の振動型モータの制御方法について、図5(b)のフローチャートを用いて説明する。
まず、モータオンする(F−11)。
その際、モータ起動時にマイコン32は十分速度の低い駆動周波数として、図5(a)に示すように周波数fsを設定し、駆動をオンさせる(F−12)。
次に、周波数fsでは速度が目標速度Nconstに対し、検出速度が速いか低いかを判断する(F−13)。
次に、検出電流がLimA(リミット値)よりも低いときに、駆動周波数をX1Hz下げる(F−14、F−17)。
この周波数変化量のX1Hzの大きさは、所定の速度変化が得られる大きさである。
一方、目標速度に対し検出速度が遅く、かつ検出電流がLimA(所定のリミット値)を越えたとき、F−15のフローにおいて、周波数がどの領域にあるかが、上記したマイコン部32によって構成される制御部の判断手段によって判断される。
この判断手段は、駆動信号の周波数の領域について、目標速度に対し検出速度が遅く、かつ検出電流がLimAを越えたとき、そのときに周波数を下げたことによる電流変化によって判断することが可能に構成されている。
その際、上記周波数の領域は、検出電流の電流値がLimAを越えたとき、そのときの周波数を下げることで、検出電流が減少する領域が領域area_A(第1の周波数領域)とされ、増加する領域が領域area_B(第2の周波数領域)とされている。
これらは、目標速度に対し検出速度が遅くかつ検出電流がリミット値を越えたとき、周波数を下げたときの電流変化を予め計算し、周波数を下げたときに電流も減少するか増加するかによって決められている。
そして、この電流変化は、電流変化率がゼロより小さい場合には領域area_Aと判断され、電流変化率がゼロより大きい場合には領域area_Bと判断される。
領域area_Aのときは、周波数を下げても電流は増加していかないので、検出電流がリミット値を越えた分について、パルス幅を小さくしてLimAの範囲内とした後に、該LimAを越えない範囲内で周波数を下げて速度を上げることが可能である。
また、領域area_Bの場合は、駆動周波数をそのときの周波数のままに固定し、周波数を下げることによる電流増加が発生しないようにする。
また、その状態でまだ検出電流の電流値がLimAを越えている場合には、パルス幅を小さくして電流が増加しないようにする(F−18)。またその状態でまだ電流がオーバーしているか判断し(F−18a)オーバーしているときはパルス幅を絞って電流が増加しないようにする(F−18b)。
【0019】
次に、検出速度が目標速度Nconstの設定範囲上限の目標速度Nconst+αと比較する(F−19)。
検出速度が目標速度Nconst+αよりも小さくないときは 速度が速すぎる状態になっているので、周波数を高い側にX2Hz戻し速度を抑える(F−20)。
検出速度が目標速度Nconst+αよりも小さいときはそのままで目標位置に到達したときなどの停止動作に入るか否かを判断する(F−21)。
停止動作するときはモータオフして停止させる(F−22)が、継続して駆動するときは、F−12のフローの後に戻り上記速度制御動作を繰り返す。
このように速度制御動作を繰り返しながら検出速度が目標速度Nconstになるまで駆動周波数を下げ続ける。
そして、目標速度Nconstを越えてしまったときには駆動周波数を高い方へ戻すようにして所定の速度範囲になるように周波数が制御される。
【0020】
つぎに、負荷状態に応じた上記動作の変化を、図5(a)を参照しながら説明する。
負荷トルクゼロのときは、電流値がLimAを超えることは無いので上記速度制御で目標速度範囲内にモータ速度が制御された状態で駆動される。
それを、上記アルゴリズムを用いて説明すると、周波数fsでは速度が目標速度Nconstに対し検出速度が速いか遅いかを判断する(F−13)。
検出速度が遅いと判断された際、そのときの電流もLimAよりも低いので駆動周波数を下げる(F−14、F−17)。
一方、検出速度が速いと判断された際、検出速度が目標速度Nconstの設定範囲上限の目標速度Nconst+αと比較する(F−19)。
目標速度Nconstに達するまでは検出速度が目標速度Nconst+αよりも小さいのでモータ停止か否かの判断をする(F−21)。
駆動状態を継続するのでF−12のフローの後ろに戻り、周波数スィープ(周波数を下げていく)動作を継続する。
その間で電流はLimAを越えることがないので、最終的には目標速度の範囲内で動作し、目標速度で停止する位置に達するまで動作する。
【0021】
次に、負荷トルクが、例えば100gfcmになった場合、負荷トルクがゼロと同様の周波数fsに設定され、検出速度が目標速度Nconstに対し、周波数を低い方へ制御する(F−14、F−17)。
また 速度制御する動作の中で電流値も検出しており、LimAよりも高いか低いかを判断する。
周波数が十分高い周波数では検出速度が目標速度Nconstより遅く、電流もLimAより小さいので駆動周波数を下げ続ける。
図5(a)からわかるように、負荷100gfcmでは目標速度Nconstに達する前に、LimAを越えてしまっている。
ここで、電流を検出しながら周波数を下げることで、検出電流が増加する領域area_Bか、減少する領域area_Aかを判断する(F−15)。
図5(a)の、領域area_Bの領域ではLimAを越えた周波数でそれ以上周波数を下げないように動作する。
また、周波数を下げないように固定した後でも電流がLimAを越えてしまうときは、駆動電圧のパルス幅を小さくして電流を減らすように動作する(F−18)。
【0022】
次に、起動周波数が図5(a)に示すfs0で負荷100gfcmであった場合、周波数fs0に設定され検出速度が目標速度Nconstに対し速いかを判断した後に電流を検出する(F−13、14)。
起動周波数fs0のときLimAを超えた場合、LimAを越えたときの周波数を下げることで、検出電流が増加する領域area_Bか、減少する領域area_Aかを判断する(F−15)。
周波数fs0はarea_Aなのでパルス幅を下げ、LimAを越えない状態にしたのちに駆動周波数を下げる(F−16)。
その後は、上記起動周波数がfsの場合と同じ挙動になる。
本実施例では、このようにLimAを越えたときの周波数がどの領域にあるかで、周波数のコントロールが異なる。
すなわち、LimAを越えたときの周波数を下げることで、検出電流が増加する領域area_Bか、減少する領域area_Aかで、周波数のコントロールを異ならせ、制御するように構成されている。
【0023】
図5(a)および図5(b)のフローに示してきたように、仮にF−15のフローを用いず、速度がNconstに達していないために駆動周波数をより低い方に設定してしまうと、電流値はLimAを越えてしまい電池電圧の低下も引き起こす。これにより、他のアクチュエータや表示装置と共に構成された装置を電池を電源として使用するような場合、他のアクチュエータや表示装置などの動作に影響を与えてしまう。
そのため、本実施例では図5(a)のように、電流値がLimA値を越えるときの周波数領域を判断し、電流値がLimAを越えないようにしつつ最大限の出力特性が出せるように、周波数を制御するように構成されている。
このような構成によれば、速度はNconstよりは遅い状態になってしまうが、電流オーバーして他のアクチュエータや表示装置などの動作が故障してしまうことを防ぐことが可能となる。
また、本実施例では電流値が設定値をオーバーしたときに、スイッチング手段によってパルス幅を変更することで、電流値をコントロールしているが、このような構成に限られるものではない。
後述する実施例4のように、スイッチング手段におけるパルス電圧の大小をコントロールすることでも、同様な結果を得ることができる。
【0024】
[実施例2]
実施例2として、実施例1と異なる形態における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを、図6(a)、(b)を用いて説明する。
実施例1の図5(a)では負荷がゼロと100gfcmの状態を示したが、本実施例では図6(a)に示されるように、より負荷が大きい100gfcmと200gfcmの状態が示されている。
本実施例では、電流検出して制限値を越えたときのアルゴリズムが実施例1とは異なる。本実施例の振動型モータの制御回路の動作について、図6(b)のフローチャートを用いて説明する。
図6(b)において、F−14のフローまでは 実施例1と同様な動作である。F−14のフローで、検出電流がLimAを越え、電流変化率がゼロより小さく領域area_Bと判断されたとき、予め設定された速度N_Lowに対し、検出速度が速いか遅いかが、判断手段により判断される(F−23)。
そのときの速度が、予め設定された速度N_Lowに対し遅い場合、図6(a)のN_200のように、制限電力以下で動作できる動作範囲が狭いことがわかる。
この場合には、その周波数で固定し(F−24)、それでも電流が制限を越える場合(F−24a)パルス幅も小さくするなどして電流オーバーしないようにコントロールする(F−24b)。
【0025】
一方、検出速度が予め設定されたN_Lowよりも速い場合、図6(a)のN_100のように周波数の高い側にまだ動作可能な領域があることがわかる。
この場合には、駆動周波数をある値(β)だけ高くして速度を遅くし、検出電流がLimAを越えないように制御する(F−25)。
【0026】
以上のようにすることにより、電流が制限値を越えず通常の効率の良い周波数を使用して駆動することができる。
上記周波数を駆動周波数に対しβだけ高い側にシフトさせずに動作させた場合、駆動される周波数は電流オーバーしている周波数付近なので、F−24のフローのようにパルス幅を下げたりする動作が頻繁に必要となる。
そうすると、速度特性が逐次変化していくために不安定な動作となり速度ムラや場合によっては停止してしまったりするケースもある。
F−25のフローのように、上記特性変化を受けにくい駆動周波数に設定することで、モータ特性が安定した状態で最大出力が出せるように駆動することが可能となる。
【0027】
[実施例3]
実施例3として、実施例1、実施例2と異なる形態における振動型モータの制御方法の制御アルゴリズムを、図7(a)、(b)を用いて説明する。
図7(a)はある環境条件下で負荷が100のときの駆動電圧パルス幅がデューテイ50%の状態とデューテイ40%の状態を示している。
通常駆動するときは低い電圧で最大出力が出せるようにデューテイ50%で駆動される。以下において、パルス幅デューティ50%をパルス幅50%と記す。
図7(a)で示している環境下では図からわかるように、パルス幅50%で駆動した場合リミット電流LimAを越える領域が起動周波数fsからになっている。
実施例1もしくは実施例2のアルゴリズムを使うと、起動周波数付近でパルス幅を下げて動作することは可能であるが、最初の電圧オンしたときにはLimAを越えてしまっている。
そうすると、LimAの電流を越えない値までパルス幅を下げている間は電流オーバー状態が続き、状況によっては他のアクチュエータや表示装置に影響を与えてしまう可能性がある。
【0028】
図7(b)は実施例3のアルゴリズムであり、起動時の駆動方法が実施例1、実施例2とは異なっている。
以下図7(a)と図7(b)を用いて実施例3の振動型モータの制御方法を説明する。
まず、起動周波数でモータオンする。
ここで、従来はある決められたパルス幅であったのに対し本実施例ではパルス幅をゼロからスタートさせる。
そして、このときの該電流を検出し、制限値LimAを超えているかを判断する(F−26)。
次に、パルス幅ゼロのときは電流ゼロすなわち制限値LimAを超えていないのでパルス幅を上記ゼロから除々に上げるようにする(F−27)。
次に、パルス幅を上げた結果が50%を越えているかを判断する(F−28)。ここで、パルス幅が50%を越えていればこれ以上パルス幅を上げても出力が出せないのでF−13のフロー以降の速度制御動作に移動する。
【0029】
図7(a)の場合には、パルス幅が40%以下の間は電流制限値LimAにならないのでパルス幅UP動作を繰り返す。
そして、パルス幅40%になったときに電流オーバーとなりF−13のフロー以降の速度制御動作に移動する。
F−13のフロー以降のアルゴリズムに関しては、実施例1、実施例2と同様で速度制御をしながら、電流制限値LimAを越えたときに周波数をそれ以上下げない動作をさせる。
図7(a)からもわかるように、パルス幅50%の場合電流制限LimA以下になる周波数領域はあるが使用可能領域がかなり狭くなっている。
起動周波数を上記狭い使用可能領域に設定できたとしても周波数を下げていったときの電流制限LimAを越える周波数が速度が出せる周波数領域でないため、モータはほとんど動かない状態に設定されてしまう。
しかし、本実施例のように起動周波数にてパルス幅を40%に最適化しその状態で速度制御されるため周波数の低い側で電流制限LimAを越えた周波数で周波数を固定しても十分なトルクが得られた状態でモータを駆動することが可能となっている。
【0030】
[実施例4]
図10は実施例4の制御を実施するために用いる回路構成図である。
実施例1ではスイッチング電圧のパルス幅を変えることでモータ電流(電力)をコントロールしていたが、本実施例ではスイッチング電圧の電圧値を変えることでモータに与える電力をコントロールするものである。
図10において、40は可変電圧源であり、マイコン32の指令値に従いスイッチング部33、33’に与える電圧を変更する。
本実施例においては他の実施例と同様に電流値取得手段である、AD変換器にて検出された電圧からモータ電流値に換算してモータ電流値を求める。次いで換算したモータ電流値に基づいて該スイッチング部に与えた電圧指令値との積から消費電力を計算する。しかし、電流値の求め方(取得の仕方)はこれに限らず、例えば電流計等により求めても良い。本発明において電流値又は電圧値は、回路等に設けた検出手段から直接求めても良いし、電流値又は電圧値に相関のある別の信号を検出して、演算等によって算出(間接的に求める)しても良い。いずれにしろ、最終的に電流値又は電力値を求めることができれば良い。本発明においては、このように最終的に電流値又は電力値を求めることができる手段を電流値取得手段(電流(値)検出手段)、又は電力値取得手段(電力(値)検知手段)という。
図8(a)は実施例4の制御アルゴリズムを説明するための周波数vs速度、電流を示す図である。
図8(a)はある環境条件下で負荷が100のときのパルス電圧が100の状態とパルス電圧が80の状態を示している。通常駆動するときは振動が発生しやすい高い電圧で駆動される。
図8(a)に示している環境下では図からわかるようにパルス電圧が100で駆動した場合、予め設定した値である、リミット電流LimA(リミット値)を越える領域が起動周波数fsからになっており、最初の電圧オンしたときからLimAを越えてしまっている。
そうすると実施例3同様にLimAの電流を越えない値までパルス電圧を下げている間は電流オーバー状態が続き、状況によっては他のアクチュエータや表示装置に影響を与えてしまう可能性がある。
【0031】
図8(b)は実施例4のアルゴリズムであり、ここでは電力の大小をコントロールするパラメータがスイッチング手段のパルス電圧とされている。
まず、起動周波数にてモータオンする。本実施例ではパルス電圧をゼロからスタートさせる。
そしてこのときのAD変換器にて検出された電圧からモータ電流値に換算してモータ電流値を求める。次いで換算したモータ電流値に基づいて該スイッチング部に与えた電圧指令値との積から消費電力を計算する。このようにして求めた消費電力値が制限値LimA(リミット値)を超えているかを判断する(F−26’)。
電源電圧ゼロのときは電力ゼロすなわち制限値LimAを超えていないのでパルス電圧を10上げるように動作する(F−27’)。
次に、パルス電圧を上げた結果が100を越えているかを判断する(F−28’)。
図8(a)の場合だと駆動電圧が80以下の間は電力制限値LimAにならないのでパルス電圧UP動作を繰り返す。
そして、パルス電圧80になったときに電力オーバーとなりF−13以降の速度制御動作に移動するように設定する。
(F−13)以降のアルゴリズムに関しては実施例1、2と同様で速度制御をしながら、電力制限値LimAを越えたときに周波数をそれ以上下げない動作をさせかつパルス電圧をコントロールすることで電流制限値LimAの範囲内でモータを駆動することができる。
【0032】
図8(a)からもわかるように駆動電圧100の場合電力制限LimA以下になる周波数領域はあるが使用可能領域がかなり狭くなっている。
起動周波数を上記狭い使用可能領域に設定できたとしても周波数を下げていったときの電力制限LimAを越える周波数が速度が出せる周波数領域でないためモータはほとんど動かない状態に設定されてしまう。
しかし、本実施例のように起動周波数にてパルス電圧を80に最適化しその状態で速度制御されるため周波数の低い側で電力制限LimAを越えた周波数で周波数を固定しても十分なトルクが得られた状態でモータを駆動することが可能となっている。
このように上記実施例のように電力を見ながら所定の電力を超えないようにパルス電圧をコントロールすることで、目標消費電力を超えずに最大トルクを発生させることが可能となる。
振動型モータはカメラ、ビデオなど電池を電源とした携帯できる装置に展開されつつある。
そのような振動型モータにおいて電流オーバーせずに最大パフォーマンスが出せる駆動制御方を提案することでより多くの用途の製品へ展開することが可能となる。即ち、リミット値を越えない範囲内で最大トルク又は最大出力まで含めて所定の出力特性が出せるように、前記駆動信号の周波数とパルス電圧とを制御することができる。
【0033】
以上に説明した本発明の各実施例の構成によれば、温度変化や駆動負荷が変化したことによる電力の増加に対し、目標電力を越えないように周波数およびパルス幅もしくはパルス電圧の大きさをコントロールする手段が設けられている。
そのため、これらの振動型モータの制御方法によれば、全ての駆動条件下において、電流オーバーして電池電圧が落ち、他のアクチュエータや表示装置などが動作不能になってしまうことを回避することが可能となる。
また、上記実施例では、求めた電力値がリミット値を超えないように制御する方法について説明した。しかし、予め前記パルス電圧値の変動幅が小さいことがわかっている場合、制御する精度がある程度低くても許容できる場合等には、必ずしも電力値まで求めることは必要としない。そして求めた電流値がリミット値を超えないように制御することもできる。このようにすることで、電力値を求めるための演算処理回路を省略することができる。
【符号の説明】
【0034】
32:マイコン部(制御部)
33、33’:増幅回路
34:発振器部
35:位置検出手段
36:電源
37:電流検出回路
38:電流検出用抵抗
39:差動増幅器
41、42:インピーダンス素子
200:振動型モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの制御方法であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、該駆動信号のパルス幅を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス幅とを制御することを特徴とする振動型モータの制御方法。
【請求項2】
前記制御部は、
前記目標速度に対し検出手段による検出速度が遅く、かつ前記電流検出手段による検出電流が前記所定のリミット値を越えたときに周波数を下げたことによる電流変化によって、前記駆動信号の周波数がどの領域にあるかを判断する判断手段を備え、
前記判断手段は、前記駆動信号の周波数の領域について、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域と、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域と、を判断することが可能に構成され、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域であると判断されたとき、
前記検出電流が前記所定のリミット値を越えた分について、前記パルス幅を小さくして該所定のリミット値の範囲内とした後に、該所定のリミット値を越えない範囲内で周波数を下げて速度を上げる制御を行い、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域であると判断されたとき、
前記駆動信号の周波数をそのときの周波数に固定し、その状態でまだ前記検出電流が該所定のリミット値を越えている場合には、前記パルス幅を小さくして該所定のリミット値を越えない範囲内となるように制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2の周波数領域での前記検出速度が予め設定された速度に対して速いか遅いかを判断する判断手段を含み構成され、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より遅いと判断されたとき、パルス幅を小さくして検出電流がリミット値を越えないように制御する一方、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より速いと判断されたとき、前記駆動信号の周波数を高くして速度を遅くし、検出電流がリミット値を越えないように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項4】
前記制御部は、パルス幅をゼロから除々に上げ、該パルス幅による前記電流検出手段から得られた電流値が所定の値を超えたときに、パルス幅を上げる動作を停止し、
前記電流値が所定の値を超えたときのパルス幅に固定するように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項5】
少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの制御方法であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、前記駆動信号のパルス電圧を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流値又は前記電流値に基づいて求めた電力値が所定のリミット値を越えない範囲内で所定の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス電圧とを制御することを特徴とする振動型モータの制御方法。
【請求項6】
前記制御部は、
前記目標速度に対し前記検出手段による検出速度が遅く、かつ前記電流検出手段による検出電流が前記所定のリミット値を越えたときに周波数を下げたことによる電流の変化によって、前記駆動信号の周波数がどの領域にあるかを判断する判断手段を備え、
前記判断手段は、前記駆動信号の周波数の領域について、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域と、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域と、を判断することが可能に構成され、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域であると判断されたとき、
前記検出電流が前記所定のリミット値を越えた分について、前記パルス電圧を小さくして該所定のリミット値の範囲内とした後に、該所定のリミット値を越えない範囲内で周波数を下げて速度を上げる制御を行い、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域であると判断されたとき、
前記駆動信号の周波数をそのときの周波数に固定し、その状態でまだ前記検出電流が該所定のリミット値を越えている場合には、前記パルス電圧を小さくして該所定のリミット値を越えない範囲内となるように制御を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第2の周波数領域での前記検出速度が予め設定された速度に対して速いか遅いかを判断する判断手段を含み構成され、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より遅いと判断されたとき、前記パルス電圧を小さくして検出電流が所定のリミット値を越えないように制御する一方、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より速いと判断されたとき、前記駆動信号の周波数を高くして速度を遅くし、検出電流が所定のリミット値を越えないように制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項8】
前記制御部は、前記パルス電圧をゼロから除々に上げ、該パルス電圧による前記電流検出手段から得られた電流値が所定の値を超えたときに、前記パルス電圧を上げる動作を停止し、
前記電流値が所定の値を超えたときの前記パルス電圧に固定するように制御することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の振動型モータの制御方法。
【請求項9】
少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの駆動装置であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、該駆動信号のパルス幅を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス幅とを制御することが可能に構成されていることを特徴とする振動型モータの駆動装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記目標速度に対し検出手段による検出速度が遅く、かつ前記電流検出手段による検出電流が前記所定のリミット値を越えたときに周波数を下げたことによる電流変化によって、前記駆動信号の周波数がどの領域にあるかを判断する判断手段を備え、
前記判断手段は、前記駆動信号の周波数の領域について、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域と、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域と、を判断することが可能に構成され、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域であると判断されたとき、
前記検出電流が前記所定のリミット値を越えた分について、前記パルス幅を小さくして該所定のリミット値の範囲内とした後に、該所定のリミット値を越えない範囲内で周波数を下げて速度を上げる制御を行い、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域であると判断されたとき、
前記駆動信号の周波数をそのときの周波数に固定し、その状態でまだ前記検出電流が該所定のリミット値を越えている場合には、前記パルス幅を小さくして該所定のリミット値を越えない範囲内となるように制御を行う、
ことが可能に構成されていることを特徴とする請求項9に記載の振動型モータの駆動装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第2の周波数領域での前記検出速度が予め設定された速度に対して速いか遅いかを判断する判断手段を含み構成され、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より遅いと判断されたとき、パルス幅を小さくして検出電流がリミット値を越えないように制御する一方、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より速いと判断されたとき、前記駆動信号の周波数を高くして速度を遅くし、検出電流がリミット値を越えないように制御する、
ことが可能に構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の振動型モータの駆動装置。
【請求項12】
前記制御部は、パルス幅をゼロから除々に上げ、該パルス幅による前記電流検出手段から得られた電流値が所定の値を超えたときに、パルス幅を上げる動作を停止し、
前記電流値が所定の値を超えたときのパルス幅に固定するように制御することが可能に構成されていることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の振動型モータの駆動装置。
【請求項13】
少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子が接合され接触部が形成された弾性体とを有し、
前記電気−機械エネルギー変換素子に対する電源からの駆動電圧の印加により、前記弾性体の接触部に楕円運動が生成可能に構成された振動体を備え、
前記弾性体の接触部と接触する被駆動体を前記楕円運動によって前記振動体に対して相対移動させるように構成された振動型モータの制御方法であって、
前記楕円運動を生成するための駆動信号を発生させる駆動信号発生手段と、
前記駆動信号を前記電源の電圧でスイッチングし、前記駆動信号のパルス電圧を変更するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を介して前記電気−機械エネルギー変換素子に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記被駆動体の位置および速度を検出する検出手段と、
前記各手段の制御を司ると共に、前記被駆動体の速度を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、該制御部により設定された被駆動体の目標速度に対し、前記電流検出手段による検出電流が所定のリミット値を越えない範囲内で最大限の出力特性が出せるように、
前記駆動信号の周波数とパルス電圧とを制御することが可能に構成されていることを特徴とする振動型モータの駆動装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記目標速度に対し検出手段による検出速度が遅く、かつ前記電流検出手段による検出電流が前記所定のリミット値を越えたときに周波数を下げたことによる電流変化によって、前記駆動信号の周波数がどの領域にあるかを判断する判断手段を備え、
前記判断手段は、前記駆動信号の周波数の領域について、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域と、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域と、を判断することが可能に構成され、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が減少する第1の周波数領域であると判断されたとき、
前記検出電流が前記所定のリミット値を越えた分について、前記パルス電圧を小さくして該所定のリミット値の範囲内とした後に、該所定のリミット値を越えない範囲内で周波数を下げて速度を上げる制御を行い、
前記判断手段によって、前記周波数を下げることにより前記検出電流が増加する第2の周波数領域であると判断されたとき、
前記駆動信号の周波数をそのときの周波数に固定し、その状態でまだ前記検出電流が該所定のリミット値を越えている場合には、前記パルス電圧を小さくして該所定のリミット値を越えない範囲内となるように制御を行う、
ことが可能に構成されていることを特徴とする請求項13に記載の振動型モータの駆動装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記第2の周波数領域での前記検出速度が予め設定された速度に対して速いか遅いかを判断する判断手段を含み構成され、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より遅いと判断されたとき、前記パルス電圧を小さくして検出電流が所定のリミット値を越えないように制御する一方、
前記判断手段によって、前記検出速度が予め設定された速度より速いと判断されたとき、前記駆動信号の周波数を高くして速度を遅くし、検出電流が所定のリミット値を越えないように制御する、
ことが可能に構成されていることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の振動型モータの駆動装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記パルス電圧をゼロから除々に上げ、該パルス電圧による前記電流検出手段から得られた電流値が所定の値を超えたときに、前記パルス電圧を上げる動作を停止し、
前記電流値が所定の値を超えたときの前記パルス電圧に固定するように制御することが可能に構成されていることを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の振動型モータの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−16262(P2012−16262A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91077(P2011−91077)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】