説明

振動型駆動装置の駆動方法、振動型駆動装置および撮像装置

【課題】装置の大型化、製造コストの増大化を抑制することができ、安定した起動が可能となる振動型駆動装置の駆動方法等を提供する。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置の駆動方法であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係を検知し、
前記検知された出力分布の関係を元にして、前記相対位置が所定の出力を有する関係となる位置に設定し、前記設定された位置を駆動開始位置として駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動を利用した振動型駆動装置(振動波モータ)の駆動方法、振動型駆動装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型駆動装置(振動波モータ)は、電気−機械エネルギー変換素子により振動体に振動を励起し、振動体に励起される振動によってロータ(移動体)を駆動するモータである。
このような振動型駆動装置として、棒状型振動波モータ、円環型振動波モータなどがある。
また、振動型駆動装置はカメラレンズの駆動用などへの製品適用がなされている。
【0003】
図2は、以上の振動型駆動装置に供給される駆動電圧の周波数(f)と振動型駆動装置の回転速度(N)との関係を示すグラフである。
振動型駆動装置は上記図2のグラフに示されるような特性を有するので、この特性を利用して振動型駆動装置の回転数が制御される。
すなわち、振動型駆動装置を起動させる場合、通常、起動時の駆動電圧周波数を共振周波数より十分高い周波数f0に設定する。
そして、その周波数f0から徐々に周波数を下げていくと、周波数f1で振動型駆動装置が動き出す。そしてさらに周波数を下げていくと、その周波数に対応する回転速度に成るまで徐々に回転速度が上がっていく。
回転速度が目標値Nconに達したとき、対応する周波数fconで周波数低下を停止することによって、目標回転速度での駆動が実現される。
振動型駆動装置を停止させるには、逆に周波数を徐々に上げていって回転速度を下げ、なめらかに停止させる。
【0004】
一方、このような振動型駆動装置において、ロータが1回転する間に発生するモータの内の摩擦抵抗力や、出力するトルクに差異を発生し、速度むらが発生する場合があり、これらに対処してモータの起動を確実に行うために、つぎのような提案がなされている。
例えば、特許文献1では、駆動周波数を周波数f0から徐々に下げていくのではなく、以下のような駆動方法が提案されている。
すなわち、ここでは周波数f1よりも小さい所定の周波数f2から高い方ヘスィープしていき、振動型駆動装置が起動したことを確認した後に、その周波数から上記従来装置と同じ様に駆動周波数を徐々に下げていくという起動手法が採られている。
また、特許文献2では、振動型駆動装置の起動時に、振動体に定在波を発生させた後に通常の起動動作を行う。そして、これによっても振動型駆動装置の起動が確認できないときには、振動体に発生させる定在波の最大振幅位置を変えた上で新たに定在波を発生させるという起動手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−206156号公報
【特許文献2】特開2000−245177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、振動型駆動装置は、ともに平滑加工されたロータと振動体の摩擦面が摩擦接触することによって回転力を取り出すものである。
しかしながら、機械加工によって行われる両者の平滑加工では、摩擦面を完全な平面とすることは困難であり、製品性能に影響を及ぼさない範囲での凹凸を残した範囲とするにとどまっている。
例えば、ロータの摩擦面と振動体の摩擦面が、ともに2つに曲がった形状(いわゆる2つ折れ)となっている場合、ロータと振動体の相対角によってその凸部同士が接触する場合と、凸部と凹部が接触する場合が発生する。
この二つの場合では接触部の局所面圧や、摩擦抵抗の差異が大きく、結果としてロータが1回転する間に発生するモータの内の摩擦抵抗力や、出力するトルクに差異を発生する原因となっている。
【0007】
図3に駆動周波数一定で駆動したときの回転速度を表すグラフを示す。
縦軸は回転速度(N)、横軸は時間(t)である。
上記したように、駆動周波数及び外部負荷が一定の場合、モータの内部負荷や摩擦トルクが大きい相対角度位置において出力トルクが小さくなるので回転速度が小さくなる。
また、反対に内部負荷や摩擦トルクが小さい位置は、出力トルクが大きくなるので、回転速度が大きくなる。
このようにして振動型駆動装置1回転中で回転速度が変動する、速度むらが生じる。
さらには、長期作動によって摩擦面が摩耗し接触状態が変化したり、高湿環境中への放置によって振動体とロータの摩擦力が変化する場合がある。
例えば、高湿の環境中に振動型駆動装置を長時間放置し、振動体とロータの摩擦界面に水分が付着したときに、水分による摩擦力の低下のためより大きな振動振幅が必要となる場合がある。
このような場合、上述したロータ接触面と振動体接触面との凹凸の組合せに対して接触界面への水分凝縮(付着)に差異が発生するため、放置時のロータと振動体との位相角によってその発生トルクに大きな差異が発生する場合がある。
【0008】
一方、上記した特許文献1、2における起動手法を採ることによって、このようなモータの内の摩擦抵抗力や、出力するトルクの差異による速度むらの発生の改善を図ることが可能であるが、つぎのような点で必ずしも満足の得られるものではない。
振動体とロータの位相角によって振動型駆動装置の駆動力が変動する。そのため、振動型駆動装置を安定して起動させるには、その変化分を見込んだ、より出力に余裕のある設計をする必要があるが、装置の大型化や製造コストの増大化を抑制する上で、必ずしも満足の得られるものではない。
あるいは、駆動電圧を増加させて十分に余裕のある駆動力を持たせるために、電源回路の大型化や消費電力を抑制する上で、必ずしも満足の得られるものではない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、装置の大型化、製造コストの増大化を抑制することができ、安定した起動が可能となる振動型駆動装置の駆動方法、振動型駆動装置および撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の振動型駆動装置の駆動方法は、電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置の駆動方法であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係を検知し、
前記検知された出力分布の関係を元にして、前記相対位置が所定の出力を有する関係となる位置に設定し、前記設定された位置を駆動開始位置として駆動することを特徴とする。
また、本発明の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置が、前記相対位置に対する出力分布の関係において、所定の出力となる位置に設定されており、
前記設定された位置にマークが付けられていることを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、上記した設定された位置が、レンズ鏡筒の駆動開始位置であるホームポジションに設定されている振動型駆動装置を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置と、
前記振動型駆動装置によって駆動されるレンズ鏡筒と、
を有する撮像装置であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係を検知する検知手段と、
前記検知された出力分布の関係を元に、前記相対位置を所定の出力を有する関係となる位置に設定し、前記設定した位置を前記振動型駆動装置の駆動開始位置とする制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の大型化、製造コストの増大化を抑制することができ、安定した起動が可能となる振動型駆動装置の駆動方法、振動型駆動装置および撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における駆動方法に用いられる振動型駆動装置の構成を説明する断面図。
【図2】振動型駆動装置に供給される駆動電圧の周波数(f)と振動型駆動装置の回転速度(N)との関係を示すグラフ。
【図3】時間(t)と振動型駆動装置の回転速度(N)との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の実施形態1における振動型駆動装置の位相角決定のための測定系の構成を説明する模式図。
【図5】本発明の実施形態1における振動型駆動装置によって駆動されるカメラのレンズ鏡筒の位置(X)と、振動型駆動装置を一定周波数で駆動したときの回転数(N)との関係を示すグラフ。
【図6】本発明の実施形態2における振動型駆動装置の駆動回路の構成を説明する模式図。
【図7】本発明の実施形態2における振動型駆動装置の駆動方法手順を説明するフローチャート。
【図8】本発明の実施形態2における振動型駆動装置よって駆動されるカメラのレンズ鏡筒の位置(X)と、振動型駆動装置を一定周波数で駆動したときの回転数(N)との関係を示すグラフ。
【図9】本発明の実施形態1における位相角記録手段によってロータと弾性体とに最も速度の大きい位置を示すマークが付けられた状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、以下の実施形態により説明する。
[実施形態1]
実施形態1として、本発明を適用した振動型駆動装置(振動波モータ)の駆動方法の一例について説明する。
本実施形態の振動型駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、該振動子と接触するロータ(移動体)とを備える。
そして、電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により振動子のロータ(移動体)との接触部に生じる楕円運動によってロータ(移動体)を摩擦駆動するように構成されている。
具体的には、図1に示されている棒状型振動波モータにより説明する。
本実施形態の棒状型振動波モータは、シャフト6は中央部の段部と、その両側に設けた大径部と小径部とで形成されている。
大径部側に第1の弾性体1、電気−機械エネルギー変換素子を構成する積層圧電素子3、フレキシブル基板9、第2の弾性体2のそれぞれの中央部を貫通し、ナット7、10に施されたネジ部により狭持する。
そして、これらの部材に適切な軸力が付与されるように締め付けることによって、振動子を構成している。
一方、ロータ(移動体)4は、ロータリング部4−1にステンレスの板材をプレス成型した接触部材4−2を結合して構成されている。
そして、該ロータ4と係合して回転力を伝達するギア5との間に設けられた加圧バネ(圧縮コイルバネ)8によって該接触部材の一面が前記振動子の弾性体に圧接されている。
また、該ギア5はシャフト6の一端から挿入されスラスト方向に位置決めされて固定されたフランジと嵌合している。
また、積層圧電素子3は、電極が2つの電極群にグループ化されており、電源からフレキシブル基板9を通して、それぞれの電極群に位相の異なる交流電圧を印加するように構成されている。
【0014】
上記した交流電圧印加によって、振動子には第一の曲げ振動(紙面に平行方向)と、この振動に直交する方向(紙面に垂直方向)の第二の曲げ振動が同時に励振される。
そして、これら2つの振動の合成によって、第1の弾性体1の曲げ変形方向がシャフト軸を中心として回転する合成振動が振動子に励起される。
この結果、第1の弾性体1の円板部は振動の回転軸に対し傾きながら旋回運動するため、ロータ4との接触面には楕円運動が発生する。
そのため、この弾性体に接触しているロータ4は、この楕円運動による摩擦力で、ギア5、加圧バネ8一体となって軸周りに回転する。
このとき、駆動周波数一定状態で振動型駆動装置を駆動すると、前記第1の弾性体1と前記ロータ4との位相角によって、振動型駆動装置の駆動力や、振動型駆動装置の構成部品の持つ負荷が異なるために、速度変動が生じる。
【0015】
図4に、振動子とロータの相対位置に対する出力分布の関係を検出するための測定系を示す。
まず、電源としての駆動信号発生装置11、及び制御手段12によって振動型駆動装置13に周波数一定で電圧が印加され、振動型駆動装置13が駆動する。
そして、速度検出手段に14よって振動型駆動装置13のロータの回転速度と、弾性体とロータの位相角と、が測定される。
この速度検出手段14によって測定された、位相角と回転速度の関係を検出速度記録手段15によって記録し、制御手段12によって最も速度の大きい位置またはその近傍で停止させる。本発明において、最も速度(回転速度)の大きい位置の近傍としては、最大速度の位置から位相が±90°以内の位置とする。好ましくは、最大速度の位置、又は、最大速度の位置から位相が±45°以内の位置で停止させる。
この位置で、位相角記録手段16によって図9のようにロータ32と弾性体31にマーク33を付ける。
これにより、組立作業中に位相角にズレが生じても、出力が最大の位相角またはその近傍に再調整することが可能である。
最後に、振動型駆動装置を被駆動体である、カメラ(撮像装置)のレンズ鏡筒26(図6参照)に取り付ける。その際振動型駆動装置の出力が最大となる弾性体とロータの位相角またはその近傍の状態で、振動型駆動装置をレンズ鏡筒26の駆動開始位置であるホームポジションに取り付ける。
このように、上記のように検知された出力分布の関係を元にして、振動子とロータの相対位置が所定の出力を有する関係となる位置に設定し、該設定された位置を駆動開始位置として駆動するように構成することができる。
【0016】
図5は、振動型駆動装置によって駆動されるレンズ鏡筒の位置(X)と、振動型駆動装置を一定周波数で駆動したときの回転速度(N)との関係を示すグラフである。
レンズ鏡筒は、振動型駆動装置が回転することによってXiniからXendの範囲で駆動される。
このとき、XiniからXendまでの距離は振動型駆動装置の約5回転分となっている。
また、Xiniはレンズ鏡筒がユーザーによる装置の不使用時(電源オフ時)に戻る、ホームポジションとなっている。
【0017】
上記したように、振動型駆動装置は、弾性体とロータの位相角によって速度分布を持っている。最も出力の高い位相角とレンズ鏡筒のホームポジションXiniを一致させるように、レンズ鏡筒に振動型駆動装置を取り付けてあるので、Xiniで回転速度が最大となるNmaxとなる。
長期の使用や、周囲の環境条件の変化によって生ずる振動型駆動装置の第1の弾性体1とロータ4との摺動面の摩擦力の変化や、被駆動装置の必要トルクの増加が生じて、より大きな起動トルクが必要となる場合がある。
つまり、レンズ鏡筒の通常の定位置であるホームポジションで、最も大きなトルクを必要とする場合がある。
本実施形態では、振動型駆動装置の一回転中で最も出力の大きい位相角と、ホームポジションとが一致している。
そのため、上記したような場合にあってもモータの大型化や駆動電圧の増大、および製造コストの増大を招くことなく、安定して駆動できる振動型駆動装置を提供することができる。
【0018】
[実施形態2]
実施形態2として、実施形態1と異なる形態の振動型駆動装置の駆動方法の構成例について、図6、図7を用いて説明する。
図6に、本実施形態における振動型駆動装置の駆動回路の構成を示す。
振動型駆動装置の構成は、図1に示す振動型駆動装置の構成と同じである。
また、図7は本実施形態における振動型駆動装置の駆動方法の手順を示すフローチャートである。
本実施形態は、カメラのレンズ鏡筒に振動型駆動装置を取り付けた後に振動型駆動装置の出力分布が変化した場合に対応するための構成例である。
本実施形態では、振動型駆動装置の取り付け後に、振動型駆動装置の出力分布を検知し、レンズ鏡筒26の本来のホームポジションXiniに最も近い、振動型駆動装置1回転中で出力が最も大きい位相角を新たなホームポジションとするものである。
【0019】
その手順について説明すると、まず、図7に示すようにステップS1において、駆動信号発生装置21により周波数一定の駆動信号を振動型駆動装置22に印加する。
これによって振動型駆動装置22のギア5が回転し、それによって駆動されるレンズ鏡筒が既知の方法によって光軸方向に並進運動する。
ここで、前述したように一定周波数で駆動した場合でも振動型駆動装置の回転速度に変動が生じる。
次に、ステップS2において、速度検出手段23によって振動型駆動装置22の位相角と回転速度を測定し、検出速度記録手段24によって位相角と回転速度の関係を記録する。
次に、ステップS3において、それまでに設定されていたホームポジションXini付近の回転速度が、モータ1回転中で最大速度になっているかどうかの判定を、ホームポジション決定手段25によって行う。
ここで、ホームポジションXiniと回転速度がモータ1回転中で最大となるNmaxとが一致していれば、ホームポジションXiniは変更しない。
一方、図8に示すように、XiniとNmaxが一致していなければ、ステップS4において、Nmaxと一致する新たなホームポジションXini(new)に変更する。
次に、ステップS5において、ユーザーによって電源がオフされたら、レンズ鏡筒26はXiniまたはXini(new)に移動し、停止する。
これにより、振動型駆動装置の取り付け後に、出力分布が変化した場合において、最も出力の高い位相角を随時、新たなホームポジションXini(new)に変更することができる。
例えば、長期の使用や、周囲の環境条件の変化によって位相角と回転速度の分布が変化する場合、もしくは弾性体とロータの滑りによってレンズ鏡筒が駆動されることなく、出力が最大となる弾性体とロータ位相角が変化した場合でも、上記のように随時変更できる。
これにより、駆動電圧を増大させることなく、安定して振動型駆動装置を駆動することができる。
【0020】
上記した実施形態では、出力が最大またはその近傍となる弾性体とロータの位相角に対する出力分布の検知を、振動型駆動装置を周波数一定で駆動させた際の速度を測定し、振動子とロータの相対位置に対する速度分布を検知することにより行っているが、このような検知方法に限られるものではない。
このような検知方法以外に、つぎのような方法で検知することができる。
例えば、振動型駆動装置を周波数制御によって速度一定で駆動させた時の周波数を測定し、振動子とロータの相対位置に対する周波数分布を検知することにより行うようにしてもよい。
また、振動型駆動装置を速度一定で駆動させた時の駆動電圧と振動検知電圧を測定し、振動子とロータの相対位置に対する駆動電圧と振動検知電圧の位相差分布を検知することにより行うようにしてもよい。
また、振動型駆動装置を速度一定で駆動させた時の駆動電圧と電流を測定し、振動子とロータの相対位置に対する駆動電圧と電流の位相差分布を検知することにより行うようにしてもよい。
また、振動型駆動装置を電圧制御によって速度一定で駆動させた時の駆動電圧を測定し、振動子とロータの相対位置に対する駆動電圧分布を検知することにより行うようにしてもよい。
【0021】
これらは図2に示すように、共振周波数よりも高い周波数領域では、駆動周波数(f)を上げる(共振から離れる)と回転速度(N)が低下する。
つまり、速度一定制御を行っているときに、相対的に高い周波数で駆動している位相角は、出力の高い位相角であると言えるからである。
このとき、回転速度駆動電圧と振動検知電圧の位相差は、共振周波数に近づくにしたがって大きくなるので、この位相差が小さい位相角は出力の大きい位相角となる。
また、駆動電圧と電流との位相差は駆動周波数が共振周波数に近づくにしたがって小さくなるので、この位相差が大きい位相角は出力の大きい位相角となる。
また、電圧制御によって速度一定で駆動している場合では、電圧の低い位相角が出力の大きい位相角となる。周波数が一定のとき、電圧を大きくすると、回転速度はより大きくなるからである。
以上では、棒状型振動波モータを例に挙げて説明したが、円環型振動波モータについてもこれらの駆動方法を適用し、安定して振動型駆動装置を駆動することができる。
【符号の説明】
【0022】
1:第1の弾性体
2:第2の弾性体
3:積層圧電素子
4:ロータ
4−1:ロータリング部
4−2:ロータ接触部材
5:ギア
6:シャフト
7:ナット
8:加圧バネ(圧縮コイルバネ)
9:フレキシブル基板
10:ナット
11:駆動信号発生装置
12:制御手段
13:振動型駆動装置
14:速度検出手段
15:検出速度記録手段
16:位相角記録手段
21:駆動信号発生装置
22:振動型駆動装置
23:速度検出手段
24:検出速度記録手段
25:ホームポジション決定手段
26:レンズ鏡筒
31:振動子
32:ロータ
33:位相角のマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置の駆動方法であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係を検知し、
前記検知された出力分布の関係を元にして、前記相対位置が所定の出力を有する関係となる位置に設定し、前記設定された位置を駆動開始位置として駆動することを特徴とする振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項2】
前記設定された位置が、前記振動型駆動装置に取り付けられて該振動型駆動装置によって駆動される被駆動体の駆動開始位置であるホームポジションに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項3】
前記設定された位置を、前記振動型駆動装置に取り付けられて該振動型駆動装置によって駆動される被駆動体の駆動開始位置であるホームポジションに設定した後、
前記設定された位置を変更して新たなホームポジションとすることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項4】
前記設定された位置が、前記振動型駆動装置の出力が最大となる位置またはその近傍であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項5】
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係の検知が、
前記振動型駆動装置を周波数一定で駆動させた際の速度を測定し、前記振動子と前記移動体の相対位置に対する速度分布を検知することにより行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項6】
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係の検知が、
前記振動型駆動装置を周波数制御によって速度一定で駆動させた時の周波数を測定し、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する周波数分布を検知することにより行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項7】
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係の検知が、
前記振動型駆動装置を速度一定で駆動させた時の駆動電圧と振動検知電圧を測定し、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する駆動電圧と振動検知電圧の位相差分布を検知することにより行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項8】
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係の検知が、
前記振動型駆動装置を速度一定で駆動させた時の駆動電圧と電流を測定し、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する駆動電圧と電流の位相差分布を検知することにより行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項9】
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係の検知が、
前記振動型駆動装置を電圧制御によって速度一定で駆動させた時の駆動電圧を測定し、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する駆動電圧分布を検知することにより行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の駆動方法。
【請求項10】
電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置が、前記相対位置に対する出力分布の関係において、所定の出力となる位置に設定されており、
前記設定された位置にマークが付けられていることを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項11】
前記設定された位置が、レンズ鏡筒の駆動開始位置であるホームポジションに設定されていることを特徴とする請求項10に記載の振動型駆動装置を有する撮像装置。
【請求項12】
電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子の前記移動体との接触部に生じる楕円運動によって前記移動体を摩擦駆動する振動型駆動装置と、
前記振動型駆動装置によって駆動されるレンズ鏡筒と、
を有する撮像装置であって、
前記振動子と前記移動体の相対位置に対する出力分布の関係を検知する検知手段と、
前記検知された出力分布の関係を元に、前記相対位置を所定の出力を有する関係となる位置に設定し、前記設定した位置を前記振動型駆動装置の駆動開始位置とする制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
前記設定した位置が、前記レンズ鏡筒の駆動開始位置であるホームポジションに設定されていることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−90437(P2012−90437A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235147(P2010−235147)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】