説明

振動感知ロック装置及び被係止装置

【課題】
一つの部品で構成することにより製造の容易化及び低コスト化を実現でき、引き出しの側面への脱着を簡単にした被係止装置及び被係止装置を備えた振動感知ロック装置を提供する。
【解決手段】
振動感知ロック装置Aは、収納装置100に設けられ、振動時に引き出し105の開放を阻止するものであって、係止装置1と被係止装置61を有する。係止装置1は、収納装置本体101に取り付けられ、振動時に突出する係止部材31を有する。被係止装置61は、引き出し105に取り付けられる被係止本体63と、前記係止部材31を係止する係止突起65と、引き出し105の奥側開口108に係合する係合突起67と、引き出し105の手前側開口109の端縁109aに摺接して被係止本体63を奥側に摺動させる傾斜面68aを備えたガイド突起68とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、箪笥、机、食器棚等の引き出し付き収納装置に設けられ、地震等の振動時に係止部材が突出して引き出しを係止し、引き出しの開放を規制する振動感知ロック装置に関し、詳しくは引き出しに着脱可能に取り付けられ、振動感知ロック装置の係止部材に係止される被係止装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、箪笥、机、食器棚等の引き出し付き収納装置では、地震の揺れにより引き出しが開いて、皿、コップ等の収納物が飛び出したりするので、その収納物の飛び出しを防止するため、地震時に引き出しの開放を規制する振動感知ロック装置が設けられている。この従来の振動感知ロック装置は、係止装置と、係止装置によって係止される被係止装置とからなる。係止装置は、笥、机、食器棚等の引き出し付き収納装置の収納装置本体に取り付けられる。また、被係止装置は、収納装置本体に引き出し可能に設けられた引き出しに取り付けられる。
【0003】
従来の振動感知ロック装置の係止装置は、係止部材がケースに突出可能に設けられている。係止部材は、非地震時には被係止位置で保持されており、地震時には係止位置に突出する。この係止部材が係止位置に突出した時に係止する被係止装置は、被係止片と固定部材とからなる。被係止片は、矩形板状の被係止本体と、被係止本体の表面の一方に設けられた係止突起と、被係止本体の裏面の一方に設けられた係止爪と、被係止本体の他方に形成された連結孔で形成されている。固定部材は、軸部と、軸部の一端に形成された操作片と、軸部の他端に形成された係合片とからなる。被係止装置は、引き出しの側面に形成された係止孔に係止爪を係止し、引き出しの側面に形成された挿通孔に連結孔を重ね合わせ、連結孔と挿通孔に固定部材の軸部を挿通後に一方に回動することにより係合片が引き出しの側面に係合して取り付けられるように構成されている。引き出しの側面に取り付けられた被係止装置の係止突起は、地震時に係止位置に移動した係止装置の係止部材に係止して、引き出しの開放を阻止するように構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−270517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の振動感知ロック装置は、本願出願人が出願したものであるが、被係止装置は、被係止片と固定部材とからなる2部品構成となっているので、2つの部品を別々に製造しなければならず、面倒であると共に製造コストが高かった。また、被係止装置は、引き出しの側面に形成された係止孔に被係止片の係止爪を係止し、引き出しの側面に形成された挿通孔に被係止片の連結孔を重ね合わせ、連結孔と挿通孔に固定部材の軸部を挿通させてから固定部材を一方に回動させて係合片を引き出しの側面に係合させ、引き出しに取り付けられる。また、被係止装置は、固定部材を他方に回動させて係合片の引き出しの側面に対する係合を解除して固定部材を連結孔及び挿通孔から引き抜き、引き出しの側面に形成された係止孔から被係止片の係止爪を外すことにより、引き出しから取り外すことができる。このように被係止装置は、引き出しの側面への取り付け及び取り外しが面倒であり、簡単に脱着できる構成ではなかった。
【0006】
本願発明は、上記点に鑑み案出したものであって、一つの部品で構成することにより製造の容易化及び低コスト化を実現でき、引き出しの側面への脱着を簡単にした被係止装置及びこの被係止装置を備えた振動感知ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、引き出しを収容する収容室を備えた収納装置に設けられ、振動時に引き出しの開放を阻止する振動感知ロック装置であって、係止装置と被係止装置を有し、係止装置は、収納装置の収容室の側面に取り付けられるケースと、当該ケースに設けられ、非振動時には引き出しを係止しない非係止位置で保持されており、振動時には非係止位置から引き出しを係止する係止位置に突出し、引き出しを係止して引き出しの開放を阻止する係止部材とからなり、被係止装置は、引き出しの側面に取り付けられる被係止本体と、被係止本体の表面に設けられ、前記係止部材を係止する係止突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合する係合突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁に摺接して被係止本体を奥側に摺動させる傾斜面を備えたガイド突起とを有することを特徴とする。
【0008】
本願請求項2に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、被係止本体の裏面には、前記手前側開口の周縁を係止する係止爪が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項3に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、前記係合突起には、引き出しの奥側開口端縁を係止する係止凹部が形成され、前記係止凹部は、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接して被係止本体の奥側摺動時に奥側開口端縁を係止することを特徴とする。
【0010】
本願請求項4に係る被係止装置は、上記目的を達成するため、引き出しを収容する収容室を備えた収納装置の収容室の側面に取り付けられるケースと、当該ケースに設けられ、非振動時には引き出しを係止しない非係止位置で保持されており、振動時には非係止位置から引き出しを係止する係止位置に突出し、引き出しを係止して引き出しの開放を阻止する係止部材とからなる係止装置が設けられた前記収納装置の引き出しに取り付けられる被係止装置であって、引き出しの側面に取り付けられる被係止本体と、被係止本体の表面に設けられ、前記係止部材を係止する係止突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合する係合突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁に摺接して被係止本体を奥側に摺動させる傾斜面を備えたガイド突起とを有することを特徴とする。
【0011】
本願請求項5に係る被係止装置は、上記目的を達成するため、被係止本体の裏面には、前記手前側開口の周縁を係止する係止爪が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本願請求項6に係る被係止装置は、上記目的を達成するため、前記係合突起には、引き出しの奥側開口端縁を係止する係止凹部が形成され、前記係止凹部は、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接して被係止本体の奥側摺動時に奥側開口端縁を係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係る振動感知ロック装置は、引き出しを収容する収容室を備えた収納装置の引き出しを挟んだ左右方向両側の収容室の一方の側面に係止装置を設け、引き出しの前記一方の側面に対向する側面に、前記係止装置に係止される被係止装置を簡単に取り付けることができる。収容室の一方の側面に設けられた係止装置は、非振動時に、係止部材が引き出しを係止しない非係止位置で保持されており、振動時に、係止部材が非係止位置から係止位置に突出し、引き出しに取り付けられた被係止装置の係止突起を係止し、引き出しの開放を阻止する。
【0014】
本願発明に係る被係止装置は、被係止本体と、被係止本体の表面に設けられ、前記係止部材を係止する係止突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合する係合突起と、被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁に摺接して被係止本体を奥側に摺動させる傾斜面を備えたガイド突起とからなる。本願発明に係る被係止装置は、このように、一つの部品で構成することができるので、製造の容易化及び低コスト化を実現できるという効果がある。
【0015】
また、本願発明に係る被係止装置は、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合突起を係合させ、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁にガイド突起の傾斜面を摺接させると、被係止本体が奥側に摺動して位置決めされ、引き出しの側面への取り付けを簡単に行うことができる。また、本願発明に係る被係止装置は、引き出しの側面に取り付けた状態において、被係止本体を手前側に摺動させると、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接するので、被係止本体が引き出しから離れていき、引き出しの側面から簡単に取り外すことができる。このように、本願発明に係る被係止装置は、引き出しの側面への取り付け及び取り外しを簡単に行うことができるいう効果がある。
【0016】
本願発明に係る被係止装置は、被係止本体の裏面に、前記手前側開口の周縁を係止する係止爪が形成されていると、引き出しの側面への取り付けがより確実となるという効果がある。即ち、本願発明に係る被係止装置は、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合突起を係合させ、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の周縁に係止爪を係止させるようにしながら、ガイド突起の傾斜面を手前側開口の端縁に摺接させると、被係止本体が奥側に摺動して位置決めされ、引き出しの側面への取り付けを簡単且つ強固に行うことができる。また、本願発明に係る被係止装置は、引き出しの側面に取り付けた状態において、被係止本体を手前側に摺動させると、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接するので、被係止本体が引き出しから離れていき、係止爪が手前側開口の周縁から外れ、引き出しの側面から簡単に取り外すことができる。このように、本願発明に係る被係止装置は、係止爪を備えていても、引き出しの側面への脱着を簡単に行うことができるという効果がある。
【0017】
また、本願発明に係る被係止装置は、係合突起に引き出しの奥側開口端縁を係止する係止凹部が形成されていると、ガイド突起の傾斜面を手前側開口の端縁に摺接させて被係止本体が奥側に摺動した場合、係止凹部が奥側開口端縁を係止するので、引き出しの側面への取付をさらに強固にすることができるという効果がある。また、本願発明に係る被係止装置は、引き出し側面に取り付けた状態において、被係止本体を手前側に摺動させると、係止凹部が奥側開口端縁から簡単に外れるので、引き出しの側面から容易に離脱させることができるという効果がある。このように、本願発明に係る被係止装置は、係止爪及び係止凹部を備えていても、引き出しの側面への脱着を簡単に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係る振動感知ロック装置の被係止装置の説明図であって、(a)が表面図、(b)が右側面図、(c)が左側面図、(d)が正面図、(e)が左側面図、(f)が裏面図、(g)がX−X断面図である。
【図2】図1の被係止装置の取付方を説明する説明図であり、(a)が取付前の正面図、(b)が取付中の正面図、(c)が取付後の正面図、(d)が取付後の裏面図である。
【図3】本願発明に係る振動感知ロック装置の係止装置の分解斜視図である。
【図4】図3の係止装置の係止部材の斜視図である。
【図5】振動感知ロック装置を収納装置に取り付けた状態の説明図であって、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が側面図である。
【図6】図5の振動感知ロック装置のロック状態の説明図であって、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図5に示すように、振動感知ロック装置Aは、引き出し105を収容する収容室102を備えた収納装置100に設けられ、振動時に引き出し105の開放を阻止するものであって、係止装置1と被係止装置61を有する。係止装置1は、収納装置100の収容室102の側面103に取り付けられるケース2と、当該ケース2に設けられ、非振動時には引き出し105を係止しない非係止位置X1で保持されており、図6に示すように、振動時には非係止位置X1から引き出し105を係止する係止位置X2に突出し、引き出し105を係止して引き出し105の開放を阻止する係止部材31とからなる。
【0020】
振動感知ロック装置Aは、引き出し105を収容する収容室102を備えた収納装置100の引き出し105を挟んだ左右方向両側の収容室102の一方の側面103に係止装置1を設け、引き出し105の前記一方の側面103に対向する側面107aに、前記係止装置1に係止される被係止装置61を簡単に取り付けることができる。収容室102の一方の側面103に設けられた係止装置1は、非振動時に、係止部材31が引き出し105を係止しない非係止位置X1で保持されており、振動時に、係止部材31が非係止位置X1から係止位置X2に突出し、引き出し105に取り付けられた被係止装置61の係止突起65を係止し、引き出し105の開放を阻止する。
【0021】
図1,2に示すように、被係止装置61は、引き出し105の側面107aに取り付けられる被係止本体63と、被係止本体63の表面63aに設けられ、前記係止部材31を係止する係止突起65と、被係止本体63の裏面63bに形成され、引き出し105の側面107a奥側に設けられた奥側開口108に係合する係合突起67と、被係止本体63の裏面に形成され、引き出し105の側面107a手前側に設けられた手前側開口109の端縁109aに摺接して被係止本体63を奥側に摺動させる傾斜面68aを備えたガイド突起68とからなる。被係止装置61は、このように、一つの部品で構成することができるので、製造の容易化及び低コスト化を実現できる。
【0022】
また、被係止装置61は、引き出し105の側面107a奥側に設けられた奥側開口108に係合突起67を係合させ、引き出し105の側面107a手前側に設けられた手前側開口109の端縁109aにガイド突起68の傾斜面68aを摺接させると、被係止本体63が奥側に摺動して位置決めされ、引き出し105の側面107aへの取り付けを簡単に行うことができる。また、被係止装置61は、引き出し105の側面107aに取り付けた状態において、被係止本体63を手前側に摺動させると、ガイド突起68の傾斜面68aが手前側開口109の端縁109aに摺接するので、被係止本体63が引き出し105から離れていき、引き出し105の側面107aから簡単に取り外すことができる。このように、被係止装置61は、引き出し105の側面107aへの取り付け及び取り外しを簡単に行うことができる。
【0023】
被係止装置61は、被係止本体63の裏面63bに、前記手前側開口109の周縁109bを係止する係止爪66が形成されていると、引き出し105の側面107aへの取り付けがより確実となる。即ち、被係止装置61は、引き出し105の側面107a奥側に設けられた奥側開口108に係合突起67を係合させ、引き出し105の側面107a手前側に設けられた手前側開口109の周縁109bに係止爪66を係止させるようにしながら、ガイド突起68の傾斜面68aを手前側開口109の端縁109aに摺接させると、被係止本体63が奥側に摺動して位置決めされ、引き出し105の側面107aへの取り付けを簡単且つ強固に行うことができる。また、被係止装置61は、引き出し105の側面107aに取り付けた状態において、被係止本体63を手前側に摺動させると、ガイド突起68の傾斜面68aが手前側開口109の端縁109aに摺接するので、被係止本体63が引き出し105から離れていき、係止爪66が手前側開口109の周縁109bから外れ、引き出し105の側面107aから簡単に取り外すことができる。このように、被係止装置61は、係止爪66,66を備えていても、引き出し105の側面107aへの脱着を簡単に行うことができる。
【0024】
被係止装置61は、係合突起67に引き出し105の奥側開口108端縁108aを係止する係止凹部67aが形成されていると、ガイド突起68の傾斜面68aを手前側開口109の端縁109aに摺接させて被係止本体63が奥側に摺動した場合、図2(c)に示すように、係止凹部67aが奥側開口108端縁108aを係止するので、引き出し105の側面107aに対する取り付けをさらに強固にすることができる。また、被係止装置61は、引き出し105の側面107aに取り付けた状態において、被係止本体63を手前側に摺動させると、係止凹部67aが奥側開口108端縁108aから簡単に外れるので、引き出し105の側面107aから容易に離脱させることができる。このように、被係止装置61は、係止爪66,66及び係止凹部67aを備えていても、引き出し105の側面107aへの脱着を簡単に行うことができる。
【0025】
さらに振動感知ロック装置Aについて詳細に説明する。振動感知ロック装置Aは、係止装置1と被係止装置61とを有する。図3、4に示すように、係止装置1は、ケース2と、球体8と、係止部材31とからなる。ケース2は、楕円状のフランジ3と、二つの円を重ねた略8の字状の突出部5とからなり、フランジ3の裏面3bに突出部5が形成されている。ケース2には、略直方体状の収納室11が形成されている。収納室11は、下面12と、上面13と、前面15と、後面16と、一方の側面17とで構成され、他方の側面が開放されて開口18を形成している。即ち、フランジ3の表面3aに開口18が形成され、この開口18は収納室11と連通している。
【0026】
下面12は、略中心に向かって下降傾斜する前傾斜面21と後傾斜面22によって形成されている。さらに前傾斜面21と後傾斜面22は、一方の側面17側に向かって下降傾斜している。前傾斜面21と後傾斜面22は、略中心で接続され、この接続部に接続線(底線)23が形成される。なお、この接続線(底線)23も、一方の側面17側に向かって下降傾斜している。
【0027】
上面13は、この面を下側に位置させると下面12と略同じ形状となるように、下面12と対称に形成されている。前面15と後面16には、収納室11内と突出部5外側を連通する軸受け孔26,27が形成されている。軸受け孔26には、支軸6が挿入して取り付けられ、軸受け孔27には、支軸7が挿入して取り付けられる。フランジ3の上部と下部には、ネジ37,37を挿通する挿通孔28,29が穿設されている。
【0028】
球体8は、係止部材31を回動させることができる程度の重さを有し、下面12に載置
される。下面12に載置された球体8は、自重により一番低い位置の接続線(底線)23上に位置し、傾斜する接続線(底線)23に沿って一方の側面17に当接して静止する。この球体8の静止する位置が初期位置となる。ケース2をひっくり返して上面13を下側に位置させると上面13が下面12となるので、球体8を逆さまにひっくり返した上面13に載せた場合でも前述したように静止する。
【0029】
係止部材31は、前記収納室11内に収納可能な大きさに形成され、表側面板32と、表側面板32と略平行に設けられた裏側面板33と、表側面板32と裏側面板33の前端に設けられた前面板35と、表側面板32と裏側面板33の後端に設けられた後面板36とからなる。裏側面板33には、表側面板32側に向かって凹むように湾曲する湾曲凹部40が形成されている。
【0030】
湾曲凹部40は、前部湾曲面41と後部湾曲面42とからなり、前部湾曲面41と後部湾曲面42が連接される中心部43が一番深くなっている。前部湾曲面41及び後部湾曲面42は、内側から外側に向かって緩やかに浅くなるように形成されている。前部湾曲面41は、前記前傾斜面21と対応しており、後部湾曲面42は、前記後傾斜面22と対応している。なお、前部湾曲面41及び後部湾曲面42は、緩やかな曲線を描くように湾曲して形成されているが、直線的な傾斜面で形成しても構わない。
【0031】
前面板35及び後面板36の略中心には、前記支軸6,7が挿通して取り付けられる取付孔48,49が形成されている。また、前部湾曲面41及び後部湾曲面42には、湾曲凹部40の上下方向の略中心線上、即ち、湾曲凹部40の取付穴48の軸心と取付穴49の軸心を結ぶ連結線上にガイド板45が設けられている。このガイド板45は、湾曲凹部40の上下を仕切るように構成され、下面12上を転動する球体8の上部が当接する程度に突出して形成されている。ガイド板45には、略中央に位置する球体8を挿通可能とする半円状の切り欠き46が設けられている。
【0032】
係止装置1は、球体8をケース2の収納室11の下面12に載置し、係止部材31を裏側面板33側から収納室11内に装設し、支軸6を軸受け孔26及び係止部材31の取付孔48に挿着すると共に、支軸7を軸受け孔27及び係止部材31の取付孔49に挿着することによって組み立てられる。係止部材31は、支軸6,7により収納室11内に回動可能に取り付けられる。
【0033】
次に前記係止装置1に係止される被係止装置61について説明する。図1,2に示すように、被係止装置61は、合成樹脂素材によって一体成形され、矩形薄板状の被係止本体63と、被係止本体63の表面63aの長手方向一方に設けられた係止突起65と、被係止本体63の裏面63bの長手方向一方に設けられた係合突起67と、被係止本体63の裏面63bの長手方向他方に形成された一対の係止爪66,66と、被係止本体63の裏面63bの長手方向他方に形成されたガイド突起68とで形成されている。
【0034】
被係止本体63は、細長板状に形成されている。係止突起65は、被係止本体63の表面63aの一方側先端に形成され、被係止本体63と略直角の係止面65aと、一方側先端に向かって下降傾斜する傾斜面65bとを有する。係合突起67は、被係止本体63の裏面63bの一方側に設けられ、一方側端面に引き出し105の奥側開口108端縁108aを係止する係止凹部67aが形成されている。また、係合突起67は、他方側がリブ67bによって補強されている。
【0035】
一対の係止爪66,66は、被係止本体63の裏面63bの長手方向他方側に設けられ、短手方向側端面に引き出し105の手前側開口109の周縁109bを係止する係止凹部66a,66aが形成されている。ガイド突起68は、被係止本体63の裏面63bの長手方向他方側に設けられ、長手方向他端側に向かって下降傾斜する傾斜面68aを有する。当該傾斜面68aは、引き出し105の側壁107の手前側に形成された手前側開口109の端縁109aと摺接可能である。当該ガイド突起68は、被係止本体63の裏面63bに形成された矩形板状の係合凸部70上に設けられている。また、被係止本体63は、一対の係止爪66,66の近傍であって、短手方向両端に段凹部71,71が形成されている。
【0036】
振動感知ロック装置Aは、上記構成を有し、以下のように使用することができる。係止装置1は、箪笥、机、食器棚等の引き出し付き収納装置100の収納装置本体101に取り付けられる。図5に示すように、係止装置1は、引き出し105を引き出し可能に収容する収容室102の右(又は左)の側壁(側面)103に取り付けられている。側壁103には、嵌合穴104が形成され、係止装置1の突出部5が嵌合穴104に嵌合している。係止装置1のフランジ3は、嵌合穴104の周縁に係合されている。フランジ3の挿通孔28,29には、ネジ37,37が挿通され、ネジ37,37が側壁103にねじ込まれて、係止装置1が側壁103に固定されている。なお、下面12及び上面13は、対称に形成され、球体8がガイド板45の切り欠き46を通過して下側の面に落下するので、どちらの面を下側にしても構わない。
【0037】
図2に示すように、被係止装置61は、引き出し105の右(又は左)の側壁107の外側面107aに取り付けられる。即ち、図2(a)に示すように、被係止装置61の係合突起67を、引き出し105の側壁107の奥側に形成された奥側開口108に係合し、被係止装置61のガイド突起68を引き出し105の側壁107の手前側に形成された手前側開口109に押し込む。被係止装置61は、図2(b)に示すように、ガイド突起68の傾斜面68aが手前側開口109の端縁109aに摺接して奥側(矢印P方向)に摺動し、図2(c)に示すように、係合凸部70が手前側開口109に係合する。なお、ガイド突起68が手前側開口109に係合するようにしても構わない。このようにして、被係止装置61は、引き出し105の右(又は左)の側壁107に取り付けられる。
【0038】
また、被係止装置61は、図2(b)に示すように、奥側(矢印P方向)に摺動しながら、図2(c)に示すように、手前側開口109の周縁109bに一対の係止爪66,66の一方が係止する。また、係合突起67は、図2(b)に示すように、被係止装置61が奥側に摺動すると、これの係止凹部67aが、図2(c)に示すように、奥側開口108の端縁108aを係止する。このように、被係止装置61は、係止爪66と係止凹部67aによって、引き出し105の側壁107に強固に固定して取り付けられる。被係止装置61は、引き出し105に取り付けられると、引き出し105の引き出す方向に伸びるように配置される。
【0039】
被係止装置61は、手前側(矢印Q方向)に摺動させると、ガイド突起68の傾斜面68aが手前側開口109の端縁109aに摺接して被係止装置61の手前側が側壁107から離れ、引き出し105の側壁107から簡単に外すことができる。即ち、図2(c)に示すように、被係止装置61は、手前側(矢印Q方向)に摺動させると、図2(b)に示すように、係合突起67の係止凹部67aが奥側開口108の端縁108aから外れ、ガイド突起68の傾斜面68aが手前側開口109の端縁109aに摺接して被係止装置61の手前側が側壁107から離れ、係止爪66が手前側開口109の周縁109bから外れる。被係止装置61は、手前側(矢印Q方向)に摺動させると、係止爪66と係止凹部67aの係止が解除され、側壁107から取り外すことができる。
【0040】
図5に示すように、係止装置1は、非振動時においては、球体8が一番低い位置である接続線(球体静止部)23上であって、一方の側面17に当接している(初期位置)。係止部材31は、自重により下部31aが下方に付勢されて非係止位置X1にあり、ケース2の収納室11内に収まっている。従って、引き出し105の開閉は、何等阻止されずにスムーズに行うことが出来る。
【0041】
図6に示すように、係止装置1は、振動時においては、球体8が一番低い位置である接続線(球体静止部)23から移動する。例えば、球体8が開口18側(X方向)に移動すると、係止部材31の湾曲凹部40の中心部43が外側に押圧され、係止部材31が支軸6,7を中心として回動し、下部31aが係止位置X2まで突出する。球体8が引き出し105の開く方向(F方向)に移動すると、球体8が前部湾曲面41に摺接しながら移動するので、係止部材31が外側に押圧され、係止部材31が支軸6,7を中心として回動し、下部31aが係止位置X2まで突出する。同様に、球体8が引き出し105の閉じる方向(B方向)に移動すると、球体8が後部湾曲面42に摺接しながら移動するので、係止部材31が外側に押圧され、係止部材31が支軸6,7を中心として回動し、下部31aが係止位置X2まで突出する。また、球体8が上下方向(Z方向)に移動しようとしても、球体8の上部がガイド板45に当接することにより上下方向の移動が規制される。しかし、かなり強い上下方向の振動が発生した場合には、球体8がガイド板45を押し上げ、係止部材31が支軸6,7を中心として回動し、上部31bが係止位置X2まで突出する。
【0042】
このように、係止装置1は、振動時に球体8が転動して、係止部材31が外側に押し出され、係止部材31の下部31a(又は上部31b)が係止位置X2に移動する。引き出し105は、これの右(又は左)の側壁107の外側面107aに被係止装置61が装着されているので、被係止装置61の係止突起65が係止部材31の下部31a(又は上部31b)に係止され、開放が阻止される(開く方向への移動が規制される)。
【0043】
係止装置1は、振動が終了すると、球体8が自重により、前傾斜面21又は後傾斜面22に沿って接続線(球体静止部)23上に復帰し、さらに接続線23の下降傾斜に沿って一方の側面17に当接して初期位置で静止する。振動が終了して球体8が元の静止位置に復帰すると、球体8が係止部材31を押圧しなくなるので、係止部材31の下部31a(又は上部31b)が自重により元の非係止位置X1に戻る。引き出し105は、被係止装置61の係止突起65に対する係止が解除され、引き出し105の開閉方向の移動が再び可能になる。
【0044】
引き出し105は、何らかの原因、例えば球体8が係止部材31と噛み合う等の障害によって自動復帰せず、開かなくなってしまう場合がある。係る場合には、収納装置本体101と引き出し105の隙間からドライバー等の棒状部材を、被係止装置61の段凹部71に差し込んで、係止爪66を手前側開口109の周縁109bから強制的に外すことができ、かかる作業により、被係止装置61を側壁107から取り外すことができる。被係止装置61を引き出し105の側壁107から取り外せば、引き出し105を開放することができるので、前記した障害を解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明は、箪笥、机、食器棚等の引き出し付き収納装置に設けられ、地震等の振動時に引き出しの開放を規制する振動感知ロック装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
A 振動感知ロック装置
X1 非係止位置
X2 係止位置
1 係止装置
2 ケース
3 フランジ
3a 表面
3b 裏面
5 突出部
6 支軸
7 支軸
8 球体
11 収納室
12 下面
13 上面
15 前面
16 後面
17 一方の側面
18 開口(他方の側面)
21 前傾斜面(下降傾斜面)
22 後傾斜面(下降傾斜面)
23 接続線(底線 球体静止部)
26 軸受け孔
27 軸受け孔
28 挿通孔
29 挿通孔
31 係止部材
31a 下部
31b 上部
32 表側面板
33 裏側面板
35 前面板
36 後面板
37 ネジ
40 湾曲凹部(当接部)
41 前部湾曲面(前方傾斜面)
42 後部湾曲面(後方傾斜面)
43 中心部(中間部)
45 ガイド板
46 切り欠き
48 取付孔
49 取付孔
61 被係止装置
63 被係止本体
63a 表面
63b 裏面
65 係止突起
65a 係止面
65b 傾斜面
66 係止爪
66a 係止凹部
67 係合突起
67a 係止凹部
67b リブ
68 ガイド突起
68a 傾斜面
70 係合凸部
71 段凹部
100 引き出し付き収納装置
101 収納装置本体
102 収容室
103 側壁(側面)
104 嵌合穴
105 引き出し
107 側壁
107a 側面
108 奥側開口
108a 端縁
109 手前側開口
109a 端縁
109b 周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出しを収容する収容室を備えた収納装置に設けられ、振動時に引き出しの開放を阻止する振動感知ロック装置であって、
係止装置と被係止装置を有し、
係止装置は、
収納装置の収容室の側面に取り付けられるケースと、
当該ケースに設けられ、非振動時には引き出しを係止しない非係止位置で保持されており、振動時には非係止位置から引き出しを係止する係止位置に突出し、引き出しを係止して引き出しの開放を阻止する係止部材とからなり、
被係止装置は、
引き出しの側面に取り付けられる被係止本体と、
被係止本体の表面に設けられ、前記係止部材を係止する係止突起と、
被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合する係合突起と、
被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁に摺接して被係止本体を奥側に摺動させる傾斜面を備えたガイド突起とを有することを特徴とする振動感知ロック装置。
【請求項2】
被係止本体の裏面には、前記手前側開口の周縁を係止する係止爪が形成されていることを特徴とする請求項1記載の振動感知ロック装置。
【請求項3】
前記係合突起には、引き出しの奥側開口端縁を係止する係止凹部が形成され、
前記係止凹部は、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接して被係止本体の奥側摺動時に奥側開口端縁を係止することを特徴とする請求項1又は2記載の振動感知ロック装置。
【請求項4】
引き出しを収容する収容室を備えた収納装置の収容室の側面に取り付けられるケースと、当該ケースに設けられ、非振動時には引き出しを係止しない非係止位置で保持されており、振動時には非係止位置から引き出しを係止する係止位置に突出し、引き出しを係止して引き出しの開放を阻止する係止部材とからなる係止装置が設けられた前記収納装置の引き出しに取り付けられる被係止装置であって、
引き出しの側面に取り付けられる被係止本体と、
被係止本体の表面に設けられ、前記係止部材を係止する係止突起と、
被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面奥側に設けられた奥側開口に係合する係合突起と、
被係止本体の裏面に形成され、引き出しの側面手前側に設けられた手前側開口の端縁に摺接して被係止本体を奥側に摺動させる傾斜面を備えたガイド突起とを有することを特徴とする被係止装置。
【請求項5】
被係止本体の裏面には、前記手前側開口の周縁を係止する係止爪が形成されていることを特徴とする請求項4記載の被係止装置。
【請求項6】
前記係合突起には、引き出しの奥側開口端縁を係止する係止凹部が形成され、
前記係止凹部は、ガイド突起の傾斜面が手前側開口の端縁に摺接して被係止本体の奥側摺動時に奥側開口端縁を係止することを特徴とする請求項4又は5記載の被係止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2215(P2013−2215A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136649(P2011−136649)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(592062725)株式会社システックキョーワ (19)
【Fターム(参考)】