説明

振動検出器

【課題】 振動ではなく音を検出してしまう誤動作がなく、回路基板の一部にコンパクトに装着でき、小型化およびコストの低減に有利性がある振動検出器を提供すること
【解決手段】 チップ状の磁石2を弾性板体3の先端へ固着させて支持し、その弾性板体3の他端を回路基板4へ固定させる。磁場の検知を行う磁気センサ1を回路基板4に組み付けるが、これは磁石2の近辺に位置させる。磁気センサ1には例えばホール素子を使用する。弾性板体3は薄い板部材から形成し、例えばフィルム状のフレキシブル基板から形成する。磁石2は弾性板体3に支持するので、弾性板体3の一端を固定した回路基板4の振動に伴って振動し、このため磁石2による磁場が振動に応じて変化する。磁石2の近辺には磁気センサ1を配置するので、磁気センサ1の出力が磁場の変化に応じて変動を示し、振動の大きさを定量的に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動検出器に関するもので、より具体的には、回路基板等へ装着させて振動の検出を行う構成の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的微少な振動を検出する振動検出器には、例えば圧電素子(ピエゾ素子)を利用することが行われている。これは圧電素子を振動センサとし、圧電効果によって振動圧力に応じた分極(表面電荷)が現れることから振動を電気的に検出している。
【0003】
また、例えば特許文献1などに見られるように、磁石を板バネ等で支持し、当該磁石の近辺に配置したコイルにより磁場の変化を検出する構成を採ることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−74024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子を振動センサとする構成では、微少な振動を検出するため、後段の増幅回路の利得を上げる等によりセンサ感度を上げると、周囲の騒音に反応してしまい、振動ではなく音を検出してしまう誤動作を起こす問題がある。これは圧電素子の周波数特性が可聴音の帯域にも感度特性を有することに起因し、センサ感度を上げることで誤動作は避けようがないと言える。
【0006】
例えば、車載機器のあるものでは振動検出器を装備し、振動の有無に応じて電源をオン,オフ制御する構成を採り、いわゆるオートパワーオフ機能を構成するようにしている。すなわち、走行中はもちろん一時停止などのアイドリング時においても、少なくともエンジンの振動が車室内に伝わる。一方、駐停車時には、エンジンを停止することから振動は生じない。そこで、車載機器が乗車中に動作し、駐停車中には動作させなくて良いものの場合、振動検出器により振動を検知した場合に車載機器の電源をONし、振動がない場合には電源をOFFする機能を備えたものがある。係る機能を備えた車載機器において、実装した振動検出器(振動センサ)が周囲の騒音に反応してしまうと、車両の振動がない非使用時でも周囲の騒音等により電源をONにしてしまい(OFFにしない)、バッテリの消耗を抑える自動制御が不能になる問題が起きる。
【0007】
その点、特許文献1などに見られるコイルを使ったものは、磁場の変化を検出する構成なので音を検出してしまう誤動作は防止できる。しかしこの場合、コイルを小型化することが難しいという問題がある。例えば上記したようなオートパワーオフ機能の構成へ適用するには、振動検出器は回路基板の一部にコンパクトに装着させたい要求があり、コイルを使ったものは占有領域が大きくなってしまう欠点がある。また、コイルは専用部品を作ることになるため、コストが高くなる問題がある。
【0008】
この発明は上述した課題を解決するもので、その目的は、音に基づいて振動ありと誤検出してしまうことがなく、回路基板の一部にコンパクトに装着でき、小型化およびコストの低減に有利性がある振動検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る振動検出器は、(1)回路基板へ装着させて振動の検出を行う振動検出器であって、チップ状の磁石と、磁石を支持して一端を回路基板へ固定する弾性板体と、磁石に接近させて配置する磁気センサを備えた構成にする。
【0010】
(2)磁気センサは、ホール素子からなる構成したり、(3)弾性板体は、フィルム状のフレキシブル基板から構成したりすることができる。
【0011】
本発明では、磁石は弾性板体に支持するので、弾性板体の一端を固定した回路基板の振動に伴って振動し、このため磁石による磁場が振動に応じて変化する。磁石の近辺には磁気センサを配置するので、磁気センサの出力が磁場の変化に応じて変動を示し、振動の大きさを定量的に検出することができる。
(4)磁気センサの出力信号を解析する処理を行うためのマイコンを備え、磁気センサと前記マイコンの間にはアンプを設けない構成とするとよい。
【0012】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の振動検出器を複数備え、各々の前記弾性板体の取り付け位置を隣接位置とし、各々の前記弾性板体を異なる構成とし、各々の磁気センサの出力に基づいて振動状況を検出する構成としてもよい。
【0013】
(6)(1)〜(5)のいずかれに記載の振動検出器と、圧電素子による振動検出器とを備え、(1)〜(5)のいずかれに記載の振動検出器の出力と圧電素子による振動検出器の出力とに基づいて車両の振動と音による振動とを判別する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る振動検出器では、弾性板体に支持した磁石が回路基板の振動に伴って振動するので、磁気センサの出力が磁場の変化に応じて変動を示し、振動の大きさを定量的に検出できる。
【0015】
この場合、振動の検出は磁場のゆらぎとして検出しているので、従来の圧電素子のように振動ではなく音を検出してしまう誤動作がなく、振動の検出を高い信頼性で行うことができる。磁気センサにはホール素子などを使用でき、これは一般的な汎用部品でよく安価であり、小型化した汎用部品を容易に調達することができる。したがって、磁気センサ,磁石,弾性板体からなる構成は回路基板の一部にコンパクトに装着することができ、小型化およびコストの低減に有利性がある。その結果、車載機器のオートパワーオフ機能などの構成へ好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る振動検出器の好適な一実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施形態において、振動検出器は、磁場の検知を行う磁気センサ1と、チップ状の磁石2と、磁石2を支持させる弾性板体3を備えて、回路基板4等へ装着させて振動の検出を行う構成になっている。
【0018】
磁気センサ1には例えばホール素子を使用し、磁石2に接近させて配置する。本実施形態では磁気センサ1は回路基板4に組み付けており、その上方に磁石2が位置するようになっている。
【0019】
磁石2は、弾性板体3の先端へ固着させ、その弾性板体3の他端を回路基板4へ固定させることで、回路基板4上に支持される。弾性板体3の取付位置並びに寸法形状により、磁石2を回路基板4上の所望の位置に位置させることができる。
【0020】
弾性板体3は、薄い板部材から形成する。この板部材は、弾性を有する部材であれば材料は何でもよく、例えば金属材料やプラスチック材料など特に制限はない。本実施形態では、弾性板体3はフィルム状のフレキシブル基板から形成している。
【0021】
このように、磁石2は弾性板体3に支持されて一体化されるので、弾性板体3の一端を固定した回路基板4の振動に伴って振動する。このため磁石2による磁場は、振動に応じて変化する。磁石2の近辺には磁気センサ1を配置するので、磁気センサ1の出力が磁場の変化に応じて変動を示し、振動の大きさを定量的に検出することができる。
【0022】
この場合、振動の検出は磁場のゆらぎとして検出しているので、従来の圧電素子のように振動ではなく音を検出してしまう誤動作がなく、振動の検出を高い信頼性で行うことができる。磁気センサ1には、ホール素子などを使用できる。これは一般的な汎用部品でよく安価であり、小型化した汎用部品を容易に調達することができる。したがって、磁気センサ1,磁石2,弾性板体3からなる構成は回路基板4の一部にコンパクトに装着することができ、小型化およびコストの低減に有利性がある。その結果、車載機器のオートパワーオフ機能などの構成へ好ましく適用することができる。また、従来利用していた圧電素子によって振動を検出する構成の場合、圧電素子の出力信号はマイコンの許容する入力信号に比べその振幅が小さく、圧電素子の出力信号をアンプにて増幅してからマイコンへ入力する必要があった。しかし、ホール素子を用いる場合には、マイコンの許容する入力信号に対応する振幅を得ることができ、アンプは不要となって、ホール素子の出力信号を直接マイコンへ入力する構成とすることができる。
【0023】
なお、磁気センサの一つに地磁気の検出を行うための地磁気センサがあり、よく知られるように高感度であるため本発明に係る磁気センサ1に利用したいところではあるが、3軸の構成を一体化したケーシングになっており価格が高く、本発明の構成へ利用するメリットは見あたらない。
なお、本実施例の振動検出器は、1の機器に1つだけ設けるようにしてもよいが、安価であるため、複数備えることも容易にできる。
【0024】
また、圧電素子のように、既製品の部品を使用するのでは、その部品仕様に縛られてしまうが、本実施例の振動検出器は、弾性板体の素材や寸法形状などを容易に調整できる。例えば、各々の前記弾性板体の取り付け位置を隣接位置とし、各々の前記弾性板体の寸法形状を異なる構成とし、各々の磁気センサの出力に基づいて異なる振動状況を検出するようにするとよい。
【0025】
また、従来の圧電素子による振動検出器を設け、従来の圧電素子による振動検出器の出力とに基づいて車両の振動と音による振動とを判別するようにしてもよい。例えば、圧電素子による振動検出器の出力が振動ありの状態で、本実施例のホール素子からの出力が振動なしの状態である場合には、車両のエンジンは動作していないが、車両周辺で音が発生していると検知することができる。
【0026】
なお、本実施例の振動検出器は、例えば、レーダー探知機、ナビゲーション装置、ドライブレコーダ、車両用セキュリティ装置、遠隔式エンジンスタータ等に好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 磁気センサ
2 磁石
3 弾性板体
4 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板へ装着させて振動の検出を行う振動検出器であって、
チップ状の磁石と、前記磁石を支持して一端を前記回路基板へ固定する弾性板体と、前記磁石に接近させて配置する磁気センサを備えることを特徴とする振動検出器。
【請求項2】
前記磁気センサがホール素子からなることを特徴とする請求項1に記載の振動検出器。
【請求項3】
前記弾性板体がフィルム状のフレキシブル基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の振動検出器。
【請求項4】
前記磁気センサの出力信号を解析する処理を行うためのマイコンを備え、
前記磁気センサと前記マイコンの間にはアンプを設けないこと
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の振動検出器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の振動検出器を複数備え、各々の前記弾性板体の取り付け位置を隣接位置とし、各々の前記弾性板体を異なる構成とし、各々の磁気センサの出力に基づいて振動状況を検出すること
を特徴とする振動検出器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずかれに記載の振動検出器と、
圧電素子による振動検出器とを備え、
請求項1〜5のいずかれに記載の振動検出器の出力と前記圧電素子による振動検出器の出力とに基づいて車両の振動と音による振動とを判別すること
を特徴とする振動検出器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−27585(P2011−27585A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174360(P2009−174360)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】