説明

振動機、振動機の製造方法

【課題】シート材に張力を付与する支持部材をパンチングメタルに固定する処理を簡単且つ適切に行うことができるとともに、交換時やメンテナンス時には固定状態を解除してパンチングメタル及び支持部材をそれぞれ個々に取り扱うことが可能な振動式コンベアを提供する。
【解決手段】支持部材9に形成したボルト挿通孔924及びパンチングメタル8の孔81を高さ方向に一致させ、これらボルト挿通孔924及びパンチングメタル8の孔81に挿通したボルトBをナットNに螺合することによって、パンチングメタル8に支持部材9を固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を振動によって所定方向に搬送しながら篩い分けることが可能な振動機、及びこのような振動機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送方向に延びる樋状(溝状)のトラフと、このトラフに振動を与える振動付与手段とを備え、振動付与手段によってトラフを振動させることでトラフ内に投入された搬送対象物を所定の搬送方向に向けて搬送しながらサイズで篩い分けできるように構成された振動機が知られている。振動機の一例としては、トラフの内部に配置したシート材(スクリーンとも称される)と、このシート材を下方から押圧して適切な張力を付与する支持壁とを備え、振動付与手段による振動に伴ってシート材を揺動させながら、シート材上の搬送対象物を所定方向に搬送可能に構成された振動式コンベアが挙げられる(特許文献1参照)。また、特許文献1には、シート材の目詰まりを防止すべく、シート材を下方からボールなどのタッピング部材で叩くように構成する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タッピング部材を収容する収容室の底壁をパンチングメタルで構成し、シート材上から篩い落とされた搬送対象物をパンチングメタルの孔を通じてさらに下方へ落下させることにより、収容室内に搬送対象物が滞留する事態を防止できるようにした構成も考えられる。
【0005】
このような構成において、パンチングメタル及び支持壁を相互に固定する手段として、支持壁の下端部(底壁を有するものであれば底壁)をパンチングメタルの面上に接触させた状態で溶接処理を施す態様を考えることができる。
【0006】
しかしながら、溶接処理を施そうとする位置にパンチングメタルの孔が存在すれば、その分、溶接可能な領域が限定されてしまったり、搬送対象物の搬送中は振動付与手段によって常に振動するトラフを構成するパンチングメタルと支持壁との溶接部分にひび割れが生じたり、剥がれ易い状態に陥り、溶接部分の亀裂や剥がれに起因して異物が混入してしまう事態が生じ得る。
【0007】
さらに、パンチングメタル及び支持壁を溶接によって相互に固定する場合、その溶接処理如何によってはスパッタの除去作業が必要となったり、一旦溶接した後はパンチングメタルと支持壁の相対位置を一切変更することができないことや、パンチングメタル又は支持壁の一方だけが破損して交換や修理が必要となった場合には、破損した一方だけ(例えばパンチングメタルだけ)を交換することができず、結局、破損していない他方の部材も一緒に新しいものに交換しなければならないといった種々の不具合が想定される。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、シート材に張力を付与する支持部材をパンチングメタルに固定する処理を簡単且つ適切に行うことができるとともに、交換時やメンテナンス時には固定状態を解除してパンチングメタル及び支持部材をそれぞれ個々に取り扱うことが可能な振動機、及びそのような振動機の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、搬送対象物の搬送方向に向けて延びるトラフと、トラフに振動を与える振動付与手段とを備えた振動機に関するものである。ここで、振動機としては、振動式コンベア(振動スクリーン)、振動フィーダ、振動乾燥機などを挙げることができる。また、搬送対象物としては、薬品や食品、砕石などを挙げることができる。
【0010】
そして、本発明の振動機は、トラフとして、搬送対象物をサイズで篩い分け可能な篩用孔を有するシート材と、シート材に張力を付与しつつ下方から支持する支持部材と、支持部材を固定し且つシート材に高さ方向に対面するパンチングメタルと、パンチングメタルを底壁とする収容室に収容され且つシート材を下方から叩くタッピング部材とを備えたものを適用し、支持部材に形成したボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔を高さ方向に一致させ、これらボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔に挿通したボルトをナットに螺合することによって、パンチングメタルに支持部材を固定していることを特徴としている。
【0011】
このような本発明の振動機であれば、相互に連通させた支持部材のボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔に挿通したボルトをナットに螺合して締め付けることによって支持部材をパンチングメタルに固定しているため、溶接による固定処理と比較して、パンチングメタルに対する支持部材の固定処理を簡単且つスムーズに行うことができるとともに、パンチングメタル自体に形成されている孔を利用してボルト締めを行うように構成しているので、ボルト挿通孔を形成する加工は支持部材に対してのみ行えばよく、大幅な加工工数の増加を招来することもない。さらに、溶接処理であれば生じ得る不具合、すなわち、溶接処理を施そうとする位置にパンチングメタルの孔が存在すれば、その分だけ溶接領域が減少して、搬送処理中は常に振動するトラフの一部である溶接部分にひび割れが生じたり、剥がれ易い状態に陥り、溶接部分の亀裂や剥がれによって異物が混入してしまうという不具合を防止することができる。
【0012】
さらに、ボルト締めによって支持部材をパンチングメタルに固定する構成を採用した本発明に係る振動機の利点として、溶接処理であれば要求されるスパッタ除去作業が不要である点、ボルト締め処理後においても必要に応じてボルトの締結状態を解除することができ、パンチングメタルと支持部材の相対位置を変更することができる点、パンチングメタル又は支持部材の一方だけが破損して交換や修理が必要となった場合には、ボルトの締結状態を解除して、破損した一方だけ(例えばパンチングメタルだけ)を交換することが可能な点を挙げることができる。
【0013】
本発明では、支持部材として、シート材を下方から直接押圧して張力を付与する部分とパンチングメタルに固定する部分とを一体に有するものを適用することも可能であるが、それら各部分を別々の部材を用いて構成して、各部分に要求される機能を十分に発揮するように設定した支持部材を適用することもできる。つまり、本発明の振動機では、支持部材として、シート材を下方から押圧することでシート材に張力を付与するテンションバーと、テンションバーを支持するフレーム材とを備え、フレーム材にボルト挿通孔を形成したものを適用することができる。
【0014】
さらに、本発明において、支持部材をテンションバー及びフレーム材で構成する場合、テンションバーを搬送方向に延出する姿勢で且つ搬送方向に直交する方向に複数離間して設けるとともに、フレーム材を搬送方向に直交する方向に延出する姿勢で且つ搬送方向に複数離間して設け、これら複数のテンションバー及び複数のフレーム材によって区分けした複数の収容室を形成するように構成してもよい。このような構成であれば、複数のテンションバー及び複数のフレーム材を格子状に配置することになり、搬送方向及び搬送方向に直交する方向に相互に隔てられた複数の収容室を、例えば専用の隔壁を用いることなく簡単に形成することができる。
【0015】
また、本発明は、振動機の製造方法に関するものであり、搬送対象物をサイズで篩い分け可能な篩用孔を有するシート材と、シート材に張力を付与しつつ下方から支持する支持部材と、支持部材を固定し且つシート材に高さ方向に対面するパンチングメタルと、パンチングメタルを底壁とする収容室に収容され且つシート材を下方から叩くタッピング部材とを備えたトラフを構成する際に、支持部材に形成したボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔を高さ方向に一致させ、これらボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔に挿通したボルトをナットに螺合することによって、パンチングメタルに支持部材を固定する工程を含むことを特徴としている。
【0016】
このような振動機の製造方法であれば、上述した作用効果と同様の作用効果を得ることができ、パンチングメタルに対する支持部材の固定処理を簡単且つ適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の振動機及び振動機におけるトラフの製造方法によれば、シート材にテンションを付与する支持部材をパンチングメタルに固定する処理として、支持部材の一部に形成したボルト挿通孔及びパンチングメタルの孔に挿入したボルトをナットに締め付ける処理を採用しているため、支持部材をパンチングメタルに簡単に固定することができるとともに、交換時やメンテナンス時にはボルトとナットとの締結状態を解除することで、パンチングメタル及び支持部材をそれぞれ個々に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動機の側面模式図。
【図2】同実施形態におけるトラフを水平姿勢で配置した状態を搬送方向正面側から見た模式図。
【図3】同実施形態におけるタッピング部材受けの平面図。
【図4】図3のB方向矢視図。
【図5】図4の一部拡大図。
【図6】図3のC方向矢視図。
【図7】図6の一部拡大図。
【図8】同実施形態におけるパンチングメタルの平面図。
【図9】同実施形態における枠体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る振動機Xは、図1に示すように、搬送方向Aに向けて延びる樋状(上向きコ字状)をなすトラフ1と、トラフ1の上方開口部を被覆するカバー2と、トラフ1に対して振動を与える振動付与手段3とを備えている。このような振動機としては、振動式コンベア(振動スクリーン)、振動フィーダ、振動乾燥機などを挙げることができる。
【0021】
本実施形態では、トラフ1を支持するカウンタウェイト31と、フレーム30に載置されているモータ32と、モータ32にベルトを介して接続されたクランクプーリ33と、クランクプーリ33に一端側を接続し、他端側をトラフ1の側面(後述のトラフ本体4の側壁41)に固定した振動伝達部材34とを用いて振動付与手段3を構成している。なお、フレーム30は、基台35の上に制振バネ36を介して設置されている。
【0022】
また、カウンタウェイト31及びトラフ1は、複数の平板状をなす連結部材37によって相互に連結されており、連結部材37の一端側をトラフ1に回転可能に連結し、連結部材37の他端側をカウンタウェイト31に回転可能に連結している。また、連結部材37の長手方向中央部は、フレーム30の上面に設けられた回転支軸371によって回転可能に支持されている。本実施形態では、連結部材37及びカウンタウェイト31を傾斜バネ38によって連結している。
【0023】
トラフ1は、図2に示すように、上方に開口した溝状(上向きコ字状)をなすトラフ本体4と、上面が搬送対象物の搬送路として機能するシート材5と、シート材5を下方から叩くタッピング部材6と、タッピング部材6を収容する収容室Sを形成したタッピング部材受け7とを備えたものである。
【0024】
トラフ本体4は、左右一対の側壁41と側壁41の下端部同士を接続する底壁42とを少なくとも備えたものである。本実施形態では、トラフ本体4として、例えば金属製の板状体(板金)を上向きコ字状に折り曲げ成形した一体品を適用している。なお、側壁41及び底壁42を一体的に組み付けたトラフ本体4を適用することもできる。本実施形態では、トラフ本体4の搬送方向A下流側に、搬送対象物をトラフ1外へ排出するための第1排出口43及び第2排出口44を形成している。第1排出口43はシート材5上を搬送された搬送対象物を排出するためのものものであり、第2排出口44は、シート材5上から篩い落とされ、後述するパンチング8の孔81を通じてトラフ本体の底壁42上に落下して、この底壁42上を搬送された搬送対象物を排出するためのものである。
【0025】
トラフ本体の上方開口部を被覆するカバー2のうち、搬送方向A上流側には搬送対象物を投入するための投入口21を形成している。なお、搬送対象物は、食品、薬品、鉄鋼、砕石など、種々のものを適用することができる。
【0026】
シート材5は、例えば金網やゴム板等によって形成したものであり、搬送対象物を篩い分ける多数の篩用孔(網目または厚み方向に貫通する孔などであり、各図では省略している)を有する。本実施形態の振動機Xは、シート材5の両サイドをトラフ本体4の側壁41に設けたフックHに留めた状態でトラフ本体4内に配置し、このシート材5とトラフ本体4の底壁41との間に、次に説明するタッピング部材6及びタッピング部材受け7を配置するための空間を形成している(図2参照)。
【0027】
タッピング部材受け7は、図3乃至図7に示すように、タッピング部材6を収容可能な収容室Sの底壁921として機能するとともにタッピング部材受け7の底壁として機能するパンチングメタル8と、パンチングメタル8に下端部を固定した状態でシート材5を下方から押圧してシート材5に張力を付与する支持部材9とを備えたものである。
【0028】
パンチングメタル8は、図8に示すように、鋼材等の素材からなり、外縁部及びその近傍を除くほぼ全領域に形成した多数の孔81を有する平板状のものである。本実施形態では、円形の孔81を所定パターンで形成している。図8には一部の孔81のみを示しているが、実際には、同図に2点鎖線で囲むパンチング形成領域全体82に孔81が形成されている。ここで、パンチングメタル8の孔81は、搬送対象物が通過可能な大きさである。なお、図3では孔81を省略している。また、トラフ1全体からすれば、このパンチングメタル8を、トラフ本体4の底壁42よりも上方に配置した中底として捉えることもできる。すなわち、本実施形態の振動機Xは、タッピング部材受け7の底壁として機能するパンチングメタル8及びトラフ本体4の底壁42を有する二重底のトラフ1を備えている。
【0029】
支持部材9は、シート材5を下方から押圧してシート材5にテンションを付与するテンションバー91と、パンチングメタル8に固定され且つテンションバー91を支持するフレーム材92とを備えたものである。
【0030】
テンションバー91は、搬送方向Aに沿って延出した棒状のものである。本実施形態では、延出方向に直交する断面形状が概略矩形状のテンションバー91を、断面視縦長となる姿勢で配置している(図4及び図5参照)。また、本実施形態のタッピング部材受け7は、テンションバー91の搬送方向Aの寸法(長手寸法)を、パンチングメタル8の搬送方向Aの寸法(長手寸法)よりも大きく設定している(図3、図6及び図7参照)。テンションバー91の上端部にはゴム材911(テンションゴム)を設け、ゴム材911がシート材5の下向き面に直接当たるように設定している(図2参照)。このようなテンションバー91を搬送方向Aに直交する方向に所定寸法離間させて複数(図示例では2本)配置している。
【0031】
フレーム材92は、搬送方向Aに直交する方向に延出する金属製のものである。本実施形態では、フレーム材92として、底壁921と、底壁921の縁部から起立する起立壁922とを一体に有するL型状のアングルを適用している。起立壁922には、テンションバー91の下端部が嵌合可能な切欠部923を形成している(図5参照)。本実施形態では、このようなフレーム材92を搬送方向Aに所定ピッチで複数(図示例では9本)配置している。なお、搬送方向Aに隣り合うフレーム材92同士のピッチ間隔は全て同一であってもよいし、図3に示すように一部のフレーム材92同士のピッチ間隔を他のフレーム材92同士のピッチ間隔よりも狭く設定することもできる。搬送方向Aに隣り合うフレーム材92同士のピッチ間隔は、パンチングメタル8の孔81の配列ピッチに準じて適宜決定している。また、本実施形態のフレーム材92は、搬送方向Aに直交する方向の寸法である長手寸法を、パンチングメタル8の短手寸法(搬送方向Aに直交する方向の寸法)よりも大きく設定している。そして、本実施形態のフレーム材92は、パンチングメタル8の上向き面に接触する底壁921に、厚み方向(上下方向)に貫通するボルト挿通孔924を形成し、このボルト挿通孔924をパンチングメタル8の孔81に一致させた状態でボルトBを締め付けることにより、パンチングメタル8に支持部材9を固定している(図5参照)。なお、図3ではボルトBを省略するとともに、図2、図4乃至7ではボルトBを簡略化して示している。
【0032】
以下に、ボルト締付処理を含めたトラフ1の製造手順(組立手順)について説明する。
【0033】
先ず、搬送方向Aに延出するテンションバー91の下端部を、搬送方向Aに複数並べた各フレーム材92の切欠部923に差し込んだ状態で溶接処理により、テンションバー91とフレーム材92とを相互に固定する(テンションバー固定工程)。これによって、搬送方向Aに延出する複数のテンションバー91及び搬送方向Aに直交する方向に延出する複数のフレーム材92を格子状に組み付けた支持部材9を得ることができる。引き続いて、さらに支持部材9のうち搬送方向Aに沿った両側縁部にそれぞれ側板W1を固定する(側板固定工程)。これによって、図9に示すように、テンションバー91、フレーム材92及び側板W1により平面視において閉じられた空間を多数有する枠体Wを得ることができる。支持部材9の両側縁部に側板W1を固定する処理は、支持部材9のうち各フレーム材92の端部を側板W1の内向き面に接触させて溶接することによって行う。ここで、支持部材9の最下端部はフレーム材92の底壁921であり、枠体Wの最下端部はフレーム材92の底壁921よりも低位にある側板W1の下端部である(例えば図5参照)。
【0034】
次いで、この枠体Wをパンチングメタル8に固定する(枠体固定工程)。具体的には、支持部材9の下端部、すなわちフレーム材92の底壁921をパンチングメタル8の上向き面に載置し、フレーム材92の底壁921に形成したボルト挿通孔924とパンチングメタル8の孔81とを連通させ、ボルト挿通孔924及びパンチングメタル8の孔81に挿入したボルトBを、パンチングメタル8の下方に設けたナットNに締め付けることによって行う(ボルト締結処理)。なお、図4乃至図7では、パンチングメタル8に形成されている孔81のうち、ボルトBが挿入される孔81のみを符号を付して(図4及び図5)または符号を付さず(図6及び図7)に示している。また、本実施形態では、このボルト締付処理を行う前に、パンチングメタル8の下向き面に押さえ板Pを下方から添え当て、この押さえ板Pに形成したボルト貫通孔P1をパンチングメタル8の孔81に連通し、この押さえ板Pの下向き面側に用意したナットNにボルトBを締め付けるようにしている。ナットNは、押さえ板Pに一体的に固定して押さえ板Pと一体に取り扱い可能なものであってもよいし、押さえ板Pには固定されておらずナットN単体として取り扱い可能なものであってもよく、後者の場合にはナットNと押さえ板Pとの間にばね座金Zを介在させることもできる(図5参照)。ここで、押さえ板Pの下向き面は、側板W1の下端部よりも低位にある(同図参照)。また、押さえ板Pはフレーム材92の底壁921との間でパンチングメタル8を高さ方向に挟む位置に配置され、押さえ板Pのボルト貫通孔P1は、フレーム材92の底壁921に形成したボルト挿通孔924に一致するように対応付けた所定箇所に形成されている。
【0035】
本実施形態では、パンチングメタル8の短手寸法(搬送方向Aに直交する方向)よりも大きい長手寸法に設定したフレーム材92の両端部に側板W1を固定しているため、側板W1同士の離間距離がパンチングメタル8の短手寸法よりも大きくなっていることを利用し、パンチングメタル8に枠体Wを固定するにあたってこれら両者の相対位置を決める場合に、側板W1によってパンチングメタル8をその短手方向(搬送方向Aに直交する方向)に挟むようにすれば枠体Wとパンチングメタル8との相対位置を容易に仮決めすることができる。この際、側板W1の下端部がパンチングメタル8よりも低位に位置付けられることから、側板W1同士の間にパンチングメタル8を短手方向に挟むようにして枠体Wのフレーム材92をパンチングメタル8の上向き面に載置した仮決め状態において、パンチングメタル8が短手方向へ所定距離以上移動してしまう事態を側板W1によって規制することができる。つまり、側板W1が、仮決め状態におけるパンチングメタル8と枠体Wとの相対位置がパンチングメタル8の短手方向に所定距離以上にずれてしまうことを防止するストッパとして機能する。
【0036】
また、ボルト締結処理は、フレーム材92とパンチングメタル8との固定強度を所定レベル以上に保つことができれば、フレーム材92の底壁921に形成した全てのボルト挿通孔924を利用して行う必要はなく必要最小限の数のボルト挿通孔924を利用して行えばよい。なお、フレーム材92におけるボルト挿通孔924の形成箇所は、全てのボルト挿通孔924がそれぞれパンチングメタル8の孔81に連通し得るようにパンチングメタル8の孔81の開口パターン(配列パターン)を考慮した上で設定してもよいし、パンチングメタル8には多数の孔81が形成されていることに着目して、何れかのボルト挿通孔924がパンチングメタル8の孔81に一致すればよいという設計思想に基づいて設定しても構わない。
【0037】
以上の手順を経て、枠体W及びパンチングメタル8を相互に一体的に組み付けることによって、パンチングメタル8を共通の底壁921とするとともに、複数のフレーム材92を搬送方向Aに直交する方向に延びる横仕切り壁とし、テンションバー91及び側板W1を搬送方向Aに延びる縦仕切り壁とする収容室Sが複数形成されたタッピング部材受け7を得ることができる。
【0038】
収容室Sは、タッピング部材受け7の底壁(具体的にはパンチングメタル8)の上向き面ほぼ全体、言い換えれば後述するシート材5の下向き面全体にわたって形成されている。
【0039】
そして、本実施形態では、図2に示すように、各収容室S内に複数(図示例では5個であるが、何個であってもよい)タッピング部材6を複数収容する(タッピング部材収容工程)。本実施形態では、タッピング部材6として、パンチングメタル8の上向き面からテンションバー91の下端部までの高さ寸法よりも大きい直径を有するタッピングボールを適用し、一旦収容室S内に収容したタッピングボールがパンチングメタル8とテンションバー91の下端部との隙間から他の収容室S内への移動する事態を防止している。また、タッピング部材6は、パンチングメタル8の孔81から下方に落下しない大きさを有するものである。
【0040】
次に、各収容室S内にタッピング部材6を収容したタッピング部材受け7をトラフ本体4の内部空間に入れてトラフ本体4に固定する(タッピング部材受け固定工程)。この固定処理は、トラフ本体4の側壁41に形成したボルト挿通孔及びタッピング部材受け7の側壁(側板W1)に形成したボルト挿通孔W1aに通したボルトB1をナットN1に締め付けることによって行う(図2参照)。
【0041】
引き続いて、各収容室Sを上方から被覆するようにシート材5をトラフ本体4に張設する(シート材張設工程)。シート材5は、図2に示すように、テンションバー91の上端部に設けたテンションゴム911が下向き面に直接接触した状態でテンションが付与され、搬送方向Aに直交する断面において中央部分が両端部分よりも上側に凸となるアーチ状に張架される。本実施形態では、シート材5のうち搬送方向Aに直交する断面における両端部を、トラフ本体4の側壁41の内向き面に配置した掛止フックHに留めて固定している。また、掛止フックHに通したボルトB2の締付量を調節することによってシート材5の張力を調整することができる。
【0042】
以上の手順によってトラフ本体4内にタッピング部材受け7、タッピング部材6及びシート材5を適宜箇所に配置したトラフ1を組み立てることができる。本実施形態の振動機Xの製造には、このようなトラフ1の組立工程が含まれることになる。
【0043】
次に、このようなトラフ1を備えた振動機Xの動作及び作用について説明する。
【0044】
本実施形態に係る振動機Xでは、モータ32を回転させることにより、ベルトを介してモータ32に接続しているクランクプーリ33が回転し、このクランクプーリ33の回転に伴ってクランクプーリ33に接続している振動伝達部材34が揺動する。この揺動がトラフ1に伝達され、トラフ1は振動する。ここで、傾斜バネ38及び連結部材37は、トラフ1の動きを規制しつつトラフ1を共振させる機能を発揮する。また、カウンタウェイト31もトラフ1からの反力により振動することになるが、基台35とカウンタウェイト31との間に設けられた制振バネ36によってカウンタウェイト31の振動が基台35へ伝わることを防止・抑制することができる。
【0045】
そして、振動が付与されたトラフ1内に、カバー2の一端側に設けた投入口21から搬送対象物が投入されると、本実施形態の振動機Xは、トラフ1の振動により搬送対象物をシート材5上において搬送方向Aに向けて搬送する。この搬送処理では、シート材5の篩用孔によって搬送対象物をサイズで篩い分けることができ、篩い落とされることなくシート材5上を搬送された搬送対象物を第1排出口43からトラフ1外へ排出することができる。特に、本実施形態に係る振動機Xでは、シート材5の搬送方向Aに直交する断面における中央部分が両端部分よりも上側に凸となるようにアーチ状に張架しているため、振動によってシート材5が上方に向けて過度に移動することを防止することができるとともに、支持部材9(具体的にはテンションバー91)によってシート材5を下側から支持しているため、振動によってシート材5が下方に向けて過度に移動することを防止することができる。その結果、シート材5が無用にばたつくことがなくなり、シート材5の長寿命化を図ることができる。なお、調整ボルトB2によってシート材5の張力を調整してシート材5の上方への移動量を調整できる。
【0046】
さらに、シート材5の下方側領域に形成した複数の収容室S内にそれぞれ複数のタッピング部材6を収容しているため、振動付与手段3による振動によってタッピング部材6が収容室S内で跳動し、シート材5を下側から叩くことになる。したがって、シート材5の上に載置された搬送対象物がシートに強固に付着することを防止したり、シート材5に付着した搬送対象物を効率良く剥離することができ、搬送対象物の搬送を効率的に行うことが可能である。また、搬送対象物の付着によるトラフ1の重量増加を防止でき、振動付与する際に必要な動力を少なくすることができる。加えて、タッピング部材6は振動付与手段3による振動によって、収容室S内を跳動してシート材5を叩くことになるため、シート材5を叩くための駆動手段等を別途設ける必要がなく、この振動機Xを簡単な構成とすることができる。また、搬送方向Aに直交する方向において収容室S同士の境界(隔壁)として機能するフレーム材92によって、例えばトラフ1を傾斜させて配置した場合においても、タッピング部材6が相対的に低位となる搬送方向下流側に全て移動してしまうことを防止し、各収容室S内で跳ねるタッピング部材6によってシート材5全体を下方から叩くことができる。
【0047】
このように、本実施形態の振動機Xは、搬送対象物をサイズで篩い分けしながら搬送することができるとともに、シート材5に対する搬送対象物の付着を防止することにより、シート材5を頻繁に清掃する必要がなく、メンテナンス作業に掛かる労力及び時間を大幅に削減することができる。
【0048】
一方、シート材5上において篩用孔により篩い落とされた搬送対象物は各収容室S内に落下する。この場合、パンチングメタル8上において搬送方向Aへ搬送される搬送対象物は、搬送方向Aに直交する方向に延出するフレーム材92により搬送方向Aへの移動が規制されて各収容室S内に滞留し得るが、本実施形態では、各収容室Sの底壁921をパンチングメタル8で構成しているため、このパンチングメタル8の孔81を通じて搬送対象物をトラフ本体4の底壁42に落下させることができ、トラフ本体4の底壁42上において搬送しながら第2排出口44からトラフ1外へ排出することができる。このようにして、本実施形態の振動機Xは、サイズで篩い分けた搬送対象物を第1排出口43及び第2排出口44からそれぞれトラフ1外へ排出することができる。
【0049】
そして、本実施形態に係る振動機Xは、シート材5を下方から支持する支持部材9をパンチングメタル8に固定する処理として、支持部材9(フレーム材92の底壁921)に形成したボルト挿通孔924及びパンチングメタル8の孔81を高さ方向に一致させ、これらボルト挿通孔924及びパンチングメタル8の孔81に挿通したボルトBをナットNに螺合して締め付ける態様を採用しているため、溶接処理と比較して簡単且つスムーズに固定することができるとともに、パンチングメタル8自体にもともと形成されている孔81を利用してボルト締めを行うように構成しているため、ボルト挿通孔924を形成する加工は支持部材9に対してのみ行えばよく、加工工数が大幅に増加することもない。さらに、溶接処理であれば生じ得る不具合、すなわち、溶接処理を施そうとする位置にパンチングメタル8の孔81が存在すれば、その分だけ溶接部分が減少して、振動によって溶接部分にひび割れが生じたり、剥がれ易い状態に陥り、溶接部分の亀裂や剥がれによって異物が混入する事態を防止することができる。また、パンチングメタル8の孔81のうちボルトBを挿し通す孔81は、パンチングメタル8においてフレーム材92の底壁921を載置する領域に形成されている孔81であり、このような領域(フレーム材92の底壁が重なる領域)に形成された孔81を利用してボルト締めを行うことは、パンチングメタル8全体に占める開口率(開口している孔81の総和)を大幅に低下させるものではなく、溶接処理と比較して不利ではない。
【0050】
さらに、支持部材9をパンチングメタル8に溶接で固定する場合であれば、その溶接処理如何によってはスパッタの除去作業が必要となる場合もあるが、本実施形態ではボルト締め処理によって支持部材9をパンチングメタル8に固定しているため、スパッタ除去作業が不要であり、ボルト締め処理後においても、ボルトBの締結状態を弱めたり、ボルトBを取り外すことによって、パンチングメタル8と支持部材9の相対位置を変更することができ、例えばパンチングメタル8上において収容室Sを形成する箇所を変更することができる。なお、本実施形態では、収容室Sの隔壁として機能するテンションバー91、フレーム材92及び側板W1を溶接処理で相互に固定しているため、収容室Sの平面積を変更することは困難であるが、これら隔壁として機能する各部(テンションバー91、フレーム材92及び側板W1)をボルト締めなど、必要に応じて固定状態を解除することが可能な固定方法で相互に固定すれば、フレーム材92をパンチングメタル8にボルト締めしていることと相俟って、収容室Sの大きさ(平面積)も自在に変更することが可能になる。
【0051】
さらには、パンチングメタル8又は支持部材9の一方だけが破損して交換や修理が必要となった場合には、ボルトBによるパンチングメタル8と支持部材9との固定状態を解除して、破損した一方だけ(例えばパンチングメタル8だけ)を交換することができ、交換時のコスト低減化を図ることができ、実用性に富む。また、本実施形態では、テンションバー91及びフレーム材92を格子状に組み付けて支持部材9を得る工程(テンションバー固定工程)や支持部材9のうち搬送方向Aに沿った両側縁部にそれぞれ側板W1を固定してテンションバー91、フレーム材92及び側板W1により平面視において閉じられた空間を多数有する枠体を得る工程(側板固定工程)を、パンチングメタル8自体の製作工程と並行して行うことができる。一方、パンチングメタルに支持部材を溶接して固定する態様であれば、溶接処理時にはパンチングメタルの製作が完了していることが大前提であり、パンチングメタルの製作と、支持部材を構成する要素(テンションバーやフレーム材)を格子状に組み付ける作業や、支持部材に側板を固定して枠体を製作する作業を同時に並行して行うは不可能である。したがって、本実施形態に係る振動機X及び振動機Xの製造方法であれば、振動機Xの製造スパン短縮化を実現することができ、振動機Xを製造するメーカーサイドの視点からすれば、振動機X納入先からの早い納期設定にも応じることができ、大きなメリットを得ることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えばパンチングメタルの孔の配列パターンは、ランダムであってもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、シート材を下方から支持する支持部材をテンションバーとフレーム材とを用いて構成し、フレーム材の底壁にボルト挿通孔を形成した態様を例示したが、シート材を下方から支持してシート材にテンションを付与する部分と、パンチングメタルに固定する部分とを一体に有する支持部材を採用してもよい。
【0054】
また、テンションバー及びフレーム材を用いて支持部材を構成する場合、フレーム材はL型状のアングルに限られず、⊥型(逆T型)や口型、或いは上向きコ字状や下向きコ字状のアングル、またはアングル以外の適宜の部材をフレーム材として適用することができる。
【0055】
また、タッピング部材として、タッピングボールに代えて、球状ではない形状、例えば立方体形状や板状のものを適用することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、二重底のトラフにおいてパンチングメタルを中底として機能させる態様を例示したが、パンチングメタルがトラフの底壁として機能する態様であってもよい。
【0057】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…トラフ
3…振動付与手段
5…シート材
6…タッピング部材
8…パンチングメタル
81…パンチングメタルの孔
9…支持部材
91…テンションバー
92…フレーム材
924…ボルト挿通孔
B…ボルト
N…ナット
S…収容室
X…振動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物の搬送方向に向けて延びるトラフと、前記トラフに振動を与える振動付与手段とを備えた振動機であって、
前記トラフが、
搬送対象物をサイズで篩い分け可能な篩用孔を有するシート材と、
前記シート材に張力を付与しつつ下方から支持する支持部材と、
前記支持部材を固定し且つ前記シート材に高さ方向に対面するパンチングメタルと、
前記パンチングメタルを底壁とする収容室に収容され且つ前記シート材を下方から叩くタッピング部材とを備え、
前記支持部材に形成したボルト挿通孔及び前記パンチングメタルの孔を高さ方向に一致させ、これら前記ボルト挿通孔及び前記パンチングメタルの孔に挿通したボルトをナットに螺合することによって、前記パンチングメタルに前記支持部材を固定していることを特徴とする振動機。
【請求項2】
前記支持部材が、前記シート材を下方から押圧することで前記シート材に張力を付与するテンションバーと、前記テンションバーを支持するフレーム材とを備えたものであり、前記フレーム材に前記ボルト挿通孔を形成している請求項1に記載の振動機。
【請求項3】
前記テンションバーを前記搬送方向に延出する姿勢で且つ前記搬送方向に直交する方向に複数離間して設けるとともに、前記フレーム材を前記搬送方向に直交する方向に延出する姿勢で且つ前記搬送方向に複数離間して設け、これら複数のテンションバー及び複数のフレーム材によって区分けした複数の前記収容室を有する請求項2に記載の振動機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の振動機を製造する方法であって、
トラフが、
搬送対象物をサイズで篩い分け可能な篩用孔を有するシート材と、
前記シート材に張力を付与しつつ下方から支持する支持部材と、
前記支持部材を固定し且つ前記シート材に高さ方向に対面するパンチングメタルと、
前記パンチングメタルを底壁とする収容室に収容され且つ前記シート材を下方から叩くタッピング部材とを備えたものであり、
前記支持部材に形成したボルト挿通孔及び前記パンチングメタルの孔を高さ方向に一致させ、これら前記ボルト挿通孔及び前記パンチングメタルの孔に挿通したボルトをナットに螺合することによって前記パンチングメタルに前記支持部材を固定する工程を含むことを特徴とする振動機の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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