説明

振動発生器

【課題】耐衝撃性が高く、容易に組立て可能であって製造コストが低い振動発生器を提供する。
【解決手段】振動発生器1は、フレーム20、コイル40、及びホルダ50を有する。ホルダ50は、フレーム20の係合部21の爪部22,23により把持されてフレーム20に固定された4つの柱状体51(51a,51b,51c,51d)と、4つのアーム部53(53a,53b,53c,53d)と、1つの振動子保持部55とを有している。保持部55には、マグネット60及びヨーク70で構成された板状の振動子80が保持されている。各アーム部53は、各柱状体51と振動子保持部55とを接続しており、振動子80は、柱状体51に対して変位可能に支持されている。ホルダ50は、弾性体を用いて一体成形されており、ホルダ50はフレーム20に容易に取り付け可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動発生器に関し、特に、コイルに電流を流して振動子を所定の方向に往復運動させることで振動を発生させるリニアタイプの振動発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアタイプの振動発生器としては、マグネットやウエイトを含む振動子を、バネ部を介して、筐体で支持した構造を有するものが種々用いられている。この種の振動発生器は、マグネットの近くに配置されたコイルに通電して磁場を発生させることで、振動子を往復直線運動させる。
【0003】
下記特許文献1には、マグネットを有する振動部を板ばねを介して支持した構造を有する振動発生器が開示されている。この振動発生器では、マグネットは平板状のコイルに対面するようにして配置されている。板ばねの一端は、筐体にねじを用いて固定されており、板ばねの他端は、振動部の重りに、かしめによって固定されている。
【0004】
下記特許文献2には、可動子ブロックを支持するバネ部とフレームの枠部などとを樹脂材により一体成形した振動発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−24871号公報
【特許文献2】特開2010−94567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1に記載されているような振動発生器では、筐体に取り付けられた板ばねを使用して振動子を支持するものであるところ、板ばねの筐体側への取り付け部分の構造が複雑になるという問題がある。具体的には、特許文献1に記載されているような振動発生器では、板ばねは筐体にねじを用いて取り付けられている。そのため、振動発生器の組立て工数が複雑化し、部品点数も多くなり、振動発生器の製造コストが増大する。
【0007】
このような問題は、振動発生器の小型化、薄型化の要求が高まるのに伴い、より顕著なものになっている。すなわち、振動発生器の小型化に伴い、構成部品も小型化されるため、ねじ留めやかしめに代えてスポット溶接などの取り付け方法を用いる必要があり、部品間の取り付け部の構造が複雑化する。例えば、板ばねと筐体との取り付け部などにスポット溶接を施す場合には、振動発生器の信頼性を高く保つために、多くの箇所を溶接する必要があり、製造に手間がかかる場合がある。スポット溶接を行った部位は、比較的衝撃力に対して脆くなるからである。
【0008】
このような問題に対して、特許文献2に記載されているような振動発生装置のように、バネ部とフレームの枠部とを一体成形した構造では、上記のようなバネ部と筐体の接合方法についての問題はそもそも発生しない。しかしながら、この場合、筐体に用いられる素材は、バネ部と一体成形することが可能なものに限られるという問題がある。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、耐衝撃性が高く、容易に組立て可能であって製造コストが低い振動発生器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、振動発生器は、マグネットとヨークになる磁性板とで構成された振動子と、振動子を保持し、筐体に取り付けられたホルダと、振動子を筐体に対して往復運動させるための磁場を発生させるコイルとを備え、ホルダは、振動子を保持する振動子保持部と、筐体に固定される固定部と、固定部と振動子保持部とを接続し、振動子保持部を固定部に対して変位可能に支持するアーム部とを有し、ホルダは、固定部、アーム部、及び振動子保持部が樹脂を用いて一体成形された構造を有する。
【0011】
好ましくはホルダは、固定部、アーム部、及び振動子保持部が弾性体を用いて一体成形された構造を有する。
【0012】
好ましくは振動子は、水平面に平行な板形状を有し、コイルは、巻回軸方向の寸法が巻回軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい薄型コイルであり、振動子に対して面対向に配置されており、アーム部は、コイルの励磁に伴って振動子が水平面に平行な方向に往復運動するように形成されている。
【0013】
好ましくは固定部は、柱状体であり、筐体は、柱状体に係合する係合部を有し、係合部は、複数の爪部を有し、柱状体の側周面を複数の爪部で把持する。
【0014】
好ましくはアーム部は、一対に設けられており、一対のアーム部のそれぞれと振動子保持部との接続部は、互いに、平面視で振動子の重心部を挟む位置に設けられている。
【0015】
好ましくは振動子は、ウエイトをさらに有し、ウエイトは、振動子保持部に取り付けられている。
【0016】
好ましくは振動子は、ホルダと共にインサート成形されていることで、振動子保持部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0017】
これらの発明に従うと、ホルダは、固定部と、アーム部と、振動子保持部とが、樹脂を用いて一体成形された構造を有し、筐体に固定部が固定されて、筐体に取り付けられている。したがって、耐衝撃性が高く、容易に組立て可能であって製造コストが低い振動発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態における振動発生器を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】ホルダを示す斜視図である。
【図4】図1のB−B線におけるフレームの断面図である。
【図5】図4のC−C線におけるフレームの断面図である。
【図6】第2の実施の形態における振動発生器のホルダを示す斜視図である。
【図7】振動発生器を示す平面図である。
【図8】図7のD−D線断面図である。
【図9】第3の実施の形態における振動発生器を示す平面図である。
【図10】図9のE−E線断面図である。
【図11】ホルダを示す斜視図である。
【図12】ホルダを示す平面図である。
【図13】基板を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態における振動発生器について説明する。
【0020】
振動発生器は、マグネットを保持する振動子が筐体に対して変位可能に、筐体に支持されている構造を有している。振動子の近くには、コイルが配置されている。振動発生器は、コイルの励磁に応じて振動子を往復運動させることで振動力を発生する、いわゆるリニアタイプのものである。
【0021】
[第1の実施の形態]
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態における振動発生器を示す平面図である。図2は、図1のA−A線断面図である。
【0023】
図1においては、振動発生器1の部品レイアウトが容易に理解できるように、本来フレーム20の上面によって隠れているホルダ50などが、部分的に実線で表示されている。
【0024】
以下の説明において、振動発生器1について、図1で示される座標のX軸方向を左右方向(原点から見てX軸で正となる方向が右方向)、Y軸方向を前後方向(原点から見てY軸で正となる方向が後方向)ということがある。また、図2のZ軸方向(図1のXY平面に垂直な方向)を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上方向)ということがある。
【0025】
図1に示されるように、振動発生器1は、大まかに、両面基板10と、フレーム(筐体の一例)20と、バックヨーク30と、コイル40と、ホルダ50とを有している。ホルダ50は、本実施の形態において、4つの柱状体(固定部の一例)51(51a,51b,51c,51d)と、4つのアーム部53(53a,53b,53c,53d)と、1つの振動子保持部(以下、単に保持部ということがある。)55とを有している。保持部55には、マグネット60と、ヨーク70とで構成された振動子80が保持されている。
【0026】
振動発生器1は、全体として、上下の寸法が比較的小さい薄型の略直方体形状に形成されている。振動発生器1は、例えば、左右方向、前後方向のそれぞれの外形寸法が10ミリメートル〜20ミリメートル程度しかない、小型のものである。振動発生器1は、前後左右の側面及び上面がフレーム20により構成され、両面基板10により底面が覆われた、箱形の外形を有している。
【0027】
本実施の形態において、フレーム20、バックヨーク30、及びヨーク70は、例えば鉄などの軟磁性体である。
【0028】
両面基板10は、両面にパターンが設けられたプリント配線基板である。両面基板10の上面の中央部には、2つの端子11,12が設けられている。端子11,12は、両面基板10の底面に設けられたパターン(図示せず)に導通する。端子11,12には、コイル40の巻回端部がはんだを用いて接続されており、両面基板10の底面のパターンを介して、コイル40に通電可能に構成されている。
【0029】
バックヨーク30は、両面基板10の上面の略全域を覆うように、長方形の板状に形成されている。バックヨーク30と両面基板10とは、例えば粘着シートや接着剤などを介して、互いに固定されている。バックヨーク30の中央部には、2つの端子11,12が上方に露出するように、開口部31が設けられている。バックヨーク30の4辺には、4つの接合部33(33a,33b,33c,33d)が形成されている。図2に示されるように、各接合部33はバックヨーク30から略90度上方に曲げられて形成され、バックヨーク30の両面基板10上の部位と共にL字形状の断面をなしている。各接合部33は、その外側面がフレーム20の側部内面に接触するように形成されている。
【0030】
フレーム20は、全体として、底面部が開口する直方体形状を有している。フレーム20は、例えば鉄板を絞り加工することにより形成されている。平面視で、フレーム20の角部(各側面間の部位)は、R面状部分を挟んで繋がっている。図2に示されるように、フレーム20は、両面基板10の上方から両面基板10の上面を覆うように配置される。フレーム20は、各側面の内面が、バックヨーク30の各接合部33の側面に接触するようにして、各接合部33に対して接着又は溶接などがされることで、バックヨーク30に固定されている。なお、フレーム20は、接合部33に嵌め込まれたり、その他の方法で、バックヨーク30に固定されていたりしてもよい。
【0031】
このように、振動発生器1では、フレーム20とバックヨーク30とによって、磁気回路が構成されている。振動発生器1は、フレーム20とバックヨーク30とで囲まれた構造を有するので、周囲の磁場等に影響されにくく、また、振動発生器1内の磁束が外部に漏れ、外部の機器や回路などに影響が及ぶことが防止される。
【0032】
コイル40は、例えば導線を巻回してなる、全体として楕円形で平板状の空芯コイルである。すなわち、コイル40は、巻回軸方向の寸法が、巻回軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい薄型コイルである。なお、コイル40は、金属箔を巻回したものをスライスしてなるものであったり、シートコイルを積層したものであったりしてもよい。また、コイル40は、平面視で、円形や、四角形形状などの多角形形状を有していてもよい。
【0033】
図2に示されるように、コイル40は、巻回軸方向が上下方向となるようにして、バックヨーク30の上面に配置されている。図1に示されるように、コイル40は、平面視で、振動発生器1の中央部に、後述するように振動子80に対して面対向に配置されている。コイル40とバックヨーク30とは、絶縁されている。コイル40の2つの巻回端部は、共にコイル40の内側から開口部31を介して両面基板10の上面側に配線され、端子11,12に接続されている。
【0034】
ホルダ50は、マグネット60及びヨーク70と共に、インサート成形により一体成形されている。すなわち、ホルダ50と振動子80とは、一体成形されている。本実施の形態において、柱状体51、アーム部53、及び保持部55は、弾性体(樹脂の一例)を用いて一体成形されている。弾性体としては、例えば、熱に強いフッ素系やシリコン系のゴムを用いることができる。このようなゴムを用いてホルダ50を形成することにより、振動発生器1の耐熱性を向上させることができる。弾性体はこれに限られず、種々のものを用いることができる。
【0035】
図3は、ホルダ50を示す斜視図である。
【0036】
図3において示されているホルダ50は、保持部55にマグネット60及びヨーク70が取り付けられていない状態を示すものである。すなわち、本実施の形態において、ホルダ50は、マグネット60及びヨーク70で構成される振動子80と共に一体成形されているものであるが、図3においては、この部位について、振動子80は示されず、弾性体により構成されているホルダ50部分のみが示されている。
【0037】
各柱状体51は、高さ方向が上下方向となる円柱形状を有している。各柱状体51の高さは、フレーム20の内部の上下方向の寸法よりもやや小さくなっている。
【0038】
図1に示されるように、4つの柱状体51は、それぞれ、平面視でホルダ50の四隅となる位置に配置されている。柱状体51は、フレーム20の側面のR面状部分に、それぞれ配置されている。
【0039】
図1及び図2に示されるように、振動子80は、水平面(図1においてXY平面)に平行となる板形状を有している。振動子80は、平面視で各辺が前後方向又は左右方向に対して平行な略長方形形状に形成されている。
【0040】
図1に示されるように、振動子80は、平面視でホルダ50の中央部、すなわち振動発生器1の中央部に配置されている。図2に示されるように、振動子80は、コイル40と略平行に、コイル40に対して面対向に配置されている。
【0041】
マグネット60は、永久磁石であり、薄型の直方体形状を有している。マグネット60は、例えば、コイル40に対向する底面側部分において、N極とS極とが前後方向に分かれるように2極に着磁されている。ヨーク70は、マグネット60の上面を覆うように取り付けられた、平面視で長方形の磁性板である。ヨーク70は、左右の辺から部分的にそれぞれ左右方向に突出する耳部71,72を有している。ヨーク70とマグネット60とは、例えばスポット溶接や接着により、互いに接合されて、一体の振動子80を構成している。ヨーク70及びマグネット60が接合されている状態で、これら振動子80とホルダ50とがインサート成形により一体に成形されている。
【0042】
図3に示されるように、保持部55は、内部に振動子80が配置される略方形の孔部55aを形成する方形枠形状を有している。ここで、保持部55には、左右方向側方に出っ張る2つの張出部55b,55cが形成されている。図2に示されるように、ヨーク70は、張出部55b,55cのそれぞれに耳部71,72が埋入するようにして、マグネット60と共に配置されている。このような構造を有することにより、振動子80は、保持部55から脱落しにくくなるように構成されている。
【0043】
4つのアーム部53は、それぞれ、保持部55の各角部と、その角部に最も近い柱状体51とを接続するようにして形成されている。各アーム部53は、左右方向に延びる梁状に形成されている。図2に示されるように、アーム部53の幅方向(前後方向)の寸法は、縦方向(上下方向)の寸法よりも小さくなっている。各アーム部53は、弾性体により形成されているため、前後方向にたわみやすくなっている。
【0044】
このように4つのアーム部53がそれぞれ前後方向にたわみやすく形成されていることにより、振動子80は、柱状体51に対して、主に前後方向に変位可能である。すなわち、振動子80は、水平面に略平行な方向に変位可能に、アーム部53によって支持されている。
【0045】
ホルダ50は、4つの柱状体51のそれぞれがフレーム20に固定されていることにより、フレーム20に取り付けられている。これにより、フレーム20とは別に一体成形されたホルダ50によって、振動子80がフレーム20に対して変位可能に支持された、振動発生器1の基本構造が構成されている。
【0046】
振動発生器1において、コイル40は、振動子80をフレーム20に対して往復運動させるための磁場を発生する。すなわち、コイル40に電流が流れると、コイル40が励磁し、上下方向に磁場が生じる。磁場が生じると、マグネット60がこの磁場の影響を受けて反発・吸引の力が生じるため、磁場の方向及びマグネット60の磁極の配置に応じて、振動子80に前方又は後方へ変位させる力が作用する。そのため、振動子80は、各アーム部53をたわませながら、前後方向のいずれかに変位する。したがって、コイル40に交流が流されることにより、その交流に応じて、振動子80は、フレーム20に対して、前後方向に往復直線運動を行う。これにより、振動発生器1が振動力を発生する。
【0047】
交流の電流値が小さくなり、磁場が弱くなったりなくなったりすると、アーム部53の復元力により、振動子80は平面視で振動発生器1の中央部に戻ろうとする。このとき、アーム部53は弾性体であるところ、アーム部53で消費されるエネルギは比較的大きくなる。したがって、振動は速やかに減衰される。
【0048】
ところで、本実施の形態において、柱状体51は、フレーム20に設けられた係合部21(21a,21b,21c,21d)に係合することで、フレーム20に取り付けられている。これにより、ホルダ50は、フレーム20に容易に取り付け可能に構成されている。
【0049】
図4は、図1のB−B線におけるフレーム20の断面図である。図5は、図4のC−C線におけるフレーム20の断面図である。
【0050】
本実施の形態において、図5に示されるように、係合部21は、平面視でフレーム20の隅部にそれぞれ設けられている。4つの係合部21のそれぞれは、第1の爪部22(22a,22b,22c,22d)と、第2の爪部23(23a,23b,23c,23d)との2つの爪部22,23を有している。
【0051】
図4に示されるように、各係合部21において、2つの爪部22,23は、それぞれ、フレーム20の側面の一部にU字状(コ字状)の切欠きが設けられ、切欠きの内部がフレーム20の内側に向けて押し込まれることにより形成されている。したがって、各爪部22,23は、フレーム20と一体に成形されている。各爪部22,23がこのようにして形成されることにより、フレーム20の側面には、部分的に空隙25(25a,25b,25c,25d)が設けられている。
【0052】
本実施の形態において、爪部22,23は、柱状体51の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、柱状体51は円柱状であるところ、爪部22,23は、柱状体51の側周面に沿うような形状に形成されている。図5に示されるように、各係合部21は、平面視で、爪部22,23とフレーム20の側面間のR面状部分とにより、その係合部21に配置される柱状体51の外周面のうち半周以上の部分を囲むように形成されている。
【0053】
フレーム20にホルダ50を配置するとき、まず、4つの柱状体51が、4つの係合部21に嵌め込まれる。これにより、各柱状体51が係合部21の爪部22,23間に挟まれた(係合の一例)格好となる。換言すると、各柱状体51は、側周面が係合部21の爪部22と爪部23とにより把持された(係合の一例)状態となる。このようにして、柱状体51がフレーム20に固定され、ホルダ50がフレーム20に取り付けられる。
【0054】
ここで、本実施の形態においては、各柱状体51がそれぞれ係合部21に嵌め込まれた状態で、各爪部22,23が柱状体51にかしめられる。例えば、図5に矢印で示されるように、例えば係合部21dについて、第1の爪部22dが、前方向(図5において下方向)に押し込まれ、第2の爪部23dが、右方向(図5において右方向)に押し込まれる。このように爪部22,23がかしめられることにより、各柱状体51に爪部22,23が食い込み、柱状体51がより強固にフレーム20に固定される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態では、柱状体51を含むホルダ50が一体成形されており、ホルダ50は、柱状体51が係合部21に嵌め込まれることで、フレーム20に対して取り付けられている。したがって、ホルダ50をフレーム20に容易に取り付けることができ、部品点数も少なく抑えられているので、振動発生器1の製造コストを低減できる。また、ホルダ50とフレーム20との取り付け部が脆くなることはないため、振動発生器1の衝撃に対する信頼性を高めることができる。ホルダ50のフレーム20への取り付けに別の部材を要することがないので、振動発生器1の小型化、薄型化、軽量化を進めることができる。
【0056】
従来のように、振動子を支持するバネ部と筐体とが樹脂により一体成形される場合には、バネ部と筐体とを同素材とせざるを得なくなるという素材選択上の問題がある。しかしながら、本実施の形態では、ホルダ50とフレーム20とは、別部材で構成されているので、部品点数が少なく、容易に組立て可能な簡素な構造としながら、フレーム20の材質を適宜選択できる。したがって、例えば別途磁気回路や磁気シールドとして機能する部材などを設けることなく、フレーム20がその役割を果たすように構成することができる。
【0057】
ホルダ50は、柱状体51と、アーム部53と、振動子保持部55とが弾性体により一体成形されて構成されている。したがって、部品点数を低減し、かつ、ホルダ50を容易に製造することができる。本実施の形態では、マグネット60及びヨーク70がホルダ50と共にインサート成形されているので、振動子80を保持した状態のホルダ50を容易に構成することができ、振動発生器1の製造工程をさらに簡素化できる。
【0058】
係合部21は、フレーム20の側面の一部に切欠きを設けて爪部22,23を形成することで、フレーム20と一体に形成されている。したがって、部品点数をより少なくすることができ、製造コストをさらに低減することができる。
【0059】
ホルダ50のフレーム20への取り付け構造は、円柱状の柱状体51を2つの爪部22,23で把持したものである。したがって、振動発生器1の構造を簡素化しつつ、柱状体51を確実にフレーム20に位置決めし、ホルダ50のフレーム20への取り付け精度を高めることができる。柱状体51に対して、爪部22,23がかしめられている構造を有するので、ホルダ50がフレーム20により強固に取り付けられる。
【0060】
なお、ホルダ50への振動子80の取り付け構造すなわちホルダ50へのマグネット60及びヨーク70の取り付け構造は、インサート成形に限られるものではない。例えば、一体成形されたホルダ50に、互いに溶接などにより接合されたマグネット60及びヨーク70を組み込み、接着などを行った構造を有していてもよい。また、ホルダ50とヨーク70を一体形成し、その後、ヨーク70部分にマグネット60を取り付けるようにしてもよい。
【0061】
[第2の実施の形態]
【0062】
第2の実施の形態における振動発生器の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第2の実施の形態においては、ホルダのアーム部の形状が第1の実施の形態のそれとは若干異なっている。
【0063】
図6は、第2の実施の形態における振動発生器101のホルダ150を示す斜視図である。
【0064】
図6において、ホルダ150は、図3と同様に、マグネット60及びヨーク70の図示を省略して示されている。
【0065】
図6に示されるように、ホルダ150において、4つの柱状体51と、保持部55とは、それぞれ、第1の実施の形態のホルダ50と同様にして設けられている。ホルダ150において、保持部55は、保持部55の左右に配置された一対のアーム部153a,153bを介して、柱状体51に支持されている。
【0066】
図7は、振動発生器101を示す平面図である。図8は、図7のD−D線断面図である。
【0067】
図7においても、図1と同様に、本来フレーム20の上面によって隠れているホルダ150などが、部分的に実線で表示されている。
【0068】
図7に示されるように、アーム部153a,153bは、それぞれ、平面視でT字形状に形成されている。すなわち、ホルダ150のアーム部153aは、振動発生器101の右側に位置する前後2つの柱状体51a,51bと、保持部55とを接続する。アーム部153aは、柱状体51a,51b同士を接続するように前後方向に直線状に形成された梁部と、梁部と保持部55とを接続する連結部154aとを有している。連結部154aは、梁部の中央部と、保持部55の右側部すなわち張出部55bとの間に、左右方向にまっすぐ延びるように形成されている。同様に、アーム部153bは、振動発生器101の左側に位置する前後2つの柱状体51c,51dと、保持部55とを接続する。アーム部153bは、柱状体51c,51d同士を接続するように前後方向に直線状に形成された梁部と、梁部と保持部55とを接続する連結部154bとを有している。連結部154bは、梁部の中央部と、保持部55の左側部すなわち張出部55cとの間に、左右方向にまっすぐ延びるように形成されている。
【0069】
図8に示されるように、アーム部153aにおいて、連結部154aと他の部分とで、上下方向の寸法は略等しくなるように形成されている。また、アーム部153bにおいて、連結部154bと他の部分とで、上下方向の寸法は略等しくなるように形成されている。図7に示されるように、各アーム部153a,153bにおいて、平面視で、連結部154a,154bのそれぞれの幅寸法(前後方向の寸法)は、他の部位の幅寸法よりも比較的小さく形成されている。すなわち、連結部154a,154bは、それぞれ、比較的細く、たわみやすくなるように形成されており、それにより、振動子80が前後方向に変位可能となっている。
【0070】
ここで、連結部154aと張出部55bとの接続部と、連結部154bと張出部55cとの接続部とは、互いに、平面視で振動子80の重心部(図7にCで示す)を挟むようにして、配置されている。すなわち、両接続部同士を繋ぐ線を想定すると、その線は、平面視で、振動子80の中央すなわち重心部を通ることになる。このように接続部が配置されていることで、一対のアーム部153a,153bにより振動子80が支持された構造であっても、振動子80にアーム部153a,153b回りのモーメントが働きにくくなり、振動発生器101を安定して動作させることができる。
【0071】
このように、第2の実施の形態では、基本的な構造は第1の実施の形態のそれと同様であるので、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、1対のアーム部153a,153bにより振動子80が支持されているので、同様の幅及び長さのアーム部を3つ以上用いて振動子80を支持した場合と比較して、より小さな電力で振動子80を振動させることができる。柱状体51の数は、第1の実施の形態と同様の4つであるので、ホルダ150は、フレーム20に確実に取り付けられる。
【0072】
[第3の実施の形態]
【0073】
第3の実施の形態における振動発生器の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第3の実施の形態においては、主に、振動子がウエイトを有している点と、フレキシブルプリント基板を用いている点とが、第1の実施の形態と異なる。
【0074】
図9は、第3の実施の形態における振動発生器201を示す平面図である。図10は、図9のE−E線断面図である。
【0075】
図9においては、図1と同様に、本来フレーム20の上面によって隠れているホルダ250などが、部分的に実線で表示されている。また、図9において、基板210(図10などに示す。)の図示は省略されている。
【0076】
振動発生器201は、主に、ホルダ50に代えてホルダ250を有している点と、両面基板10に代えて、それとは構造が異なる基板210を有している点とにおいて、第1の実施の形態の振動発生器201とは異なる構造を有している。
【0077】
図9に示されるように、ホルダ250は、ホルダ50と同様に、4つの柱状体51と、4つのアーム部53とを有している。また、ホルダ250は、振動子保持部55とは形状が異なる振動子保持部(以下、保持部ということがある。)255を有している。振動子保持部255には、マグネット60と、ウエイト281,282と、ヨーク270とが取り付けられている。すなわち、第3の実施の形態において、マグネット60と、ウエイト281,282と、ヨーク270とで、振動発生器201の振動子280が構成されている。
【0078】
図10に示されるように、基板210は、フレキシブルプリント基板(FPC)であって、バックヨーク230を挟むように配置されている。バックヨーク230は、本実施の形態において、平板形状を有している。バックヨーク230は、フレーム20の底面側に嵌め込まれて、フレーム20に固定されている。バックヨーク230の右側の端縁部には、切欠き部235が設けられている。これにより、バックヨーク230がフレーム20に固定された状態で、切欠き部235が設けられている部分で振動発生器201の内部と外部とが連通している。
【0079】
基板210は、バックヨーク230の上面に沿うように配置される上面部216と、バックヨーク230の底面に沿うように配置される底面部217とを有する。上面部216と底面部217との間は、折り返し部218となる。上面部216は、コイル40のバックヨーク230との間に挟まれるようにして配置されている。基板210は、切り欠き部215に位置する折り返し部218において、底面部217がバックヨーク230の底面に沿うように、折り返されている。基板210は、例えばバックヨーク230などに接着されて固定されている。
【0080】
図11は、ホルダ250を示す斜視図である。図12は、ホルダ250を示す平面図である。
【0081】
図11において、ホルダ250は、図3と同様に、マグネット60、ヨーク270、及びウエイト281,282の図示を省略して示されている。また、図12において、ヨーク270の図示は省略されている。
【0082】
図11に示されるように、ホルダ250の保持部255は、孔部255aと、孔部255b,255cとが設けられている。孔部255aには、マグネット60が取り付けられる。孔部255b,255cは、孔部255aの左右両側部に、孔部255aが設けられている部位から左右に張り出すように設けられている。孔部255b,255cは、それぞれ、平面視で前後方向が長辺となる長方形形状を有している。孔部255aと孔部255bとの間の部位、及び孔部255aと孔部255cとの間の部位には、保持部255の上面から窪むように、弾性体が形成されている。これにより、孔部255a,255b,255cが互いに仕切られている。
【0083】
図12に示されるように、孔部255b,255cのそれぞれには、ウエイト281,282が取り付けられている。ホルダ250は、振動子280の中央部を通る左右方向に垂直な平面について対称な形状を有している。すなわち、ウエイト281,282は、互いに同型状を有している。
【0084】
図11に示されるように、ヨーク270は、振動子280の上面のうち、マグネット60と、ウエイト281,282とが設けられている部分とを覆うように形成された、一枚の磁性板である。本実施の形態において、マグネット60及びヨーク270と、ウエイト281,282とで構成される振動子280は、インサート成形によりホルダ250と共に一体成形されて、ホルダ250の保持部255に保持されている。
【0085】
図13は、基板210を示す展開図である。
【0086】
図13において、基板210は、上面部216、底面部217、及び折り返し部218が平面状に展開されている状態を示す。図13に示されるように、基板210の上面部216には、2つのパッド211,212が設けられており、底面部217には、2つのパッド211a,212aが設けられている、パッド211及びパッド211aと、パッド212及びパッド212aとは、それぞれ、互いに同電位となるように、配線パターンを介して接続されている。上面部216のパッド211,212には、コイル40の巻回端部が接続されている。底面部217のパッド211a,212aは、振動発生器1が回路上などに実装される場合の電極となる。
【0087】
第3の実施の形態において、振動発生器201は、基本的には第1の実施の形態と同様の構成を有しているので、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。第3の実施の形態では、振動子280にウエイト281,282が設けられており、ウエイト281,282が振動子280の往復運動に伴って変位する。そのため、振動力の発生量を大きくすることができる。アーム部53の大きさ、長さや、弾性体の材質にかかわらず、必要とする振動力を容易に調整することができる。
【0088】
また、第3の実施の形態においては、FPCである基板210が用いられている。したがって、両面基板を用いる場合と比較して、製造コストを低減でき、かつ、振動発生器1の上下方向の寸法を削減することができる。また、バックヨーク230の形状も単純なものにすることができ、製造コストを低減することができる。
【0089】
[その他]
【0090】
フレームは鉄に限られず、他の素材を用いて構成されていてもよい。例えば、ホルダとは別体に構成された樹脂製であってもよい。フレームは、上面又は底面が設けられておらず、平面視でホルダの周囲を囲むようなものであってもよい。フレームは、平面視で正方形であってもよい。
【0091】
バックヨークや回路基板は設けられていなくてもよい。バックヨークに代えて、他の素材の部材が設けられていてもよい。
【0092】
柱状体の数やアーム部の数は、それぞれ2つ以上であればよい。柱状体は、円柱形状でなくてもよく、多角柱形状であってもよい。
【0093】
ホルダのフレームへの取り付け構造は、柱状体とそれを挟むような2つずつの爪部が係合するものに限られず、ホルダ側の他の形状の固定部と、フレームに形成された係合部とが係合するものであればよい。例えば、フレームに穴状の係合部が形成されており、その係合部にホルダ側の突起部が嵌装されることで、ホルダがフレームに取り付けられるようにしてもよい。
【0094】
ホルダは、単色成形されるものに限られない。例えば、柱状体及び保持部と、アーム部とを、互いに異なる素材を用いて、二色成形により一体成形したものであってもよい。また、マグネットは、ホルダにインサート成形されたものに限られない。ホルダの成形とは別の工程において、一体成形されたホルダにマグネットが取り付けられることにより、振動子が構成されるようにしてもよい。
【0095】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1,101,201 振動発生器
20 フレーム(筐体の一例)
21(21a,21b,21c,21d) 係合部
22(22a,22b,22c,22d) 第1の爪部
23(23a,23b,23c,23d) 第2の爪部
40 コイル
50,150,250 ホルダ
51(51a,51b,51c,51d) 柱状体(固定部の一例)
53(53a,53b,53c,53d),153a,153b アーム部
55,255 振動子保持部
60 マグネット
70,270 ヨーク(磁性板)
80,280 振動子
281,282 ウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットとヨークになる磁性板とで構成された振動子と、
前記振動子を保持し、筐体に取り付けられたホルダと、
前記振動子を前記筐体に対して往復運動させるための磁場を発生させるコイルとを備え、
前記ホルダは、
前記振動子を保持する振動子保持部と、
前記筐体に固定される固定部と、
前記固定部と前記振動子保持部とを接続し、前記振動子保持部を前記固定部に対して変位可能に支持するアーム部とを有し、
前記ホルダは、前記固定部、前記アーム部、及び前記振動子保持部が樹脂を用いて一体成形された構造を有する、振動発生器。
【請求項2】
前記ホルダは、前記固定部、前記アーム部、及び前記振動子保持部が弾性体を用いて一体成形された構造を有する、請求項1に記載の振動発生器。
【請求項3】
前記振動子は、水平面に平行な板形状を有し、
前記コイルは、巻回軸方向の寸法が巻回軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい薄型コイルであり、前記振動子に対して面対向に配置されており、
前記アーム部は、前記コイルの励磁に伴って前記振動子が前記水平面に平行な方向に往復運動するように形成されている、請求項1又は2に記載の振動発生器。
【請求項4】
前記固定部は、柱状体であり、
前記筐体は、前記柱状体に係合する係合部を有し、
前記係合部は、複数の爪部を有し、前記柱状体の側周面を前記複数の爪部で把持する、請求項1から3のいずれか1項に記載の振動発生器。
【請求項5】
前記アーム部は、一対に設けられており、
前記一対のアーム部のそれぞれと前記振動子保持部との接続部は、互いに、平面視で前記振動子の重心部を挟む位置に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動発生器。
【請求項6】
前記振動子は、ウエイトをさらに有し、
前記ウエイトは、前記振動子保持部に取り付けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載の振動発生器。
【請求項7】
前記振動子は、前記ホルダと共にインサート成形されていることで、前記振動子保持部に取り付けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載の振動発生器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−66846(P2013−66846A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207335(P2011−207335)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】