説明

振動超ミクロトームカッタを有する保持装置

本発明は、カッタホルダ(1)の上に配置され、圧電素子(3)によって振動させることができる振動超ミクロトームカッタ(2)を備える保持装置に関する。前記カッタ(2)は、圧電素子(3)によって支持される。本発明による保持装置は、高い寸法精度で、容易に製造することができ、カッタブレード(21)を高い周波数で振動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の序文に記載の振動超ミクロトームカッタを有する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EP−A−0’924’503では、超ミクロトームカッタをその縁部に平行に振動させて、10から200nmの範囲の超薄サンプル片を獲得し、歪みなく切断することが提案されている。このカッタは、弾力性のある要素を介して基部に接続されたカッタホルダに締め付けられている。同様に基部に接続された第2のホルダ上には圧電素子が配置され、これがカッタホルダに力を加えてカッタブレードを振動させる。
【0003】
このように駆動された超ミクロトームカッタを用いて良い結果が得られる場合もあるが、不充分な切断品質のサンプルもなお発生し続ける。これは特に、冷凍されたサンプルが−160°Cまでの温度範囲で切断される凍結超薄切片法に当てはまる。
【0004】
DE−C−38’20’085では、刃先を持つカッタホルダを基部に有する超ミクロトームが開示されている。カッタ自体はベアリングを介して保持されており、圧電素子を用いてこれらのベアリングを動かすことができる。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の目的は、はじめに述べたタイプの超ミクロトームカッタのための保持装置を改良することである。
【0006】
この目的は、特許請求項1の特徴を有する保持装置によって達成される。
【0007】
本発明による保持装置において、カッタは、このカッタを振動させる圧電素子によって支持される。他の部分は、カッタは自由に吊るされることが好ましい。従って、カッタは圧電素子によってのみ支持される。
【0008】
その結果、圧電素子は比較的小さな質量しか動かす必要がない。従って、比較的高い周波数を達成することができ、より対象を絞って動かすことができる。ずれを最小限に低減することができる。
【0009】
超薄の断片またはサンプル片を得ることができる。得られる断片は一定であり、切断されたサンプル片は圧縮されず、その元の形状を維持する。本発明による保持装置は、限定はしないが、凍結超薄切片法に使用するのに適している。
【0010】
さらなる利点として、本発明による保持装置は非常に単純な設計を有している。従って、この保持装置は、最も高い精度で尚且つ比較的費用効率高く製造することができる。
【0011】
印加電圧に直交する方向に膨張または収縮する、即ち剪断運動を行ういわゆる剪断圧電性結晶または圧電セラミックを用いることが好ましい。これらの圧電素子によって刃先に平行な振動運動を簡単に達成することができる。
【0012】
さらなる有利な実施形態は従属特許請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の主題について添付された図面に示された好ましい代表的な実施形態を用いて以下に説明する。
【0014】
図1aおよび1bは、第1の好ましい実施形態による本発明に係る保持装置を示している。この保持装置は、カッタホルダ1、カッタ2および第1の圧電素子3を有している。
【0015】
カッタホルダ1は金属またはプラスチックから製造されることが好ましく、立方形の基本形状を有することが好ましい。カッタホルダ1は一端面に溝10を有しており、この溝10は側壁11および溝底12を境界としている。各側壁11は互いに平行となることが好ましく、溝底12と少なくともほぼ直角を成すことが好ましい。溝底12は斜面として設計され、即ち側壁11に対して傾斜している。カッタホルダ1は溝底12の一端側で溝10の後ろ側に凹部13を有することができる。カッタが伝統的な超薄切片法で使用される場合、この凹部13は水を保持する働きをする。切断されたサンプル片はこの水に浮かぶ。カッタが凍結超薄切片法で使用される場合、凹部は不必要である。この場合には切断されたサンプル片はカッタ表面上をスライドし、そこから持ち上げられる。
【0016】
圧電素子3は溝底12に締め付けられる。圧電素子3は溝底12の上に固く接着されることが好ましい。この目的に適しているのは、十分に強い接続を促進するすべての既知の接着剤である。特に低温の用途の場合には、接着剤は、確実に180°Cまでになり得る、具体的には−160°Cから室温までの大きな温度差にも耐性がなければならい。
【0017】
圧電素子3は、面平行の第1および第2の支持面30、31を有する平らな直方体として設計されることが好ましい。圧電素子3は第1の支持面30でカッタホルダ1に接着され、カッタ2は第2の支持面31の上に接着されることにより圧電素子3に支持され、他の部分は自由に吊るされる。他のタイプの締め付けを両側に用いることもできる。圧電素子3はここでは剪断圧電素子である。従って、印加電界を与えられると、圧電素子3は力線に直交する剪断運動を行う。剪断圧電素子は単層または多層型とすることができる。コンタクトワイヤが取りつけられる金属層が両方の側面に予め堆積され、これはここでは支持面30、31を形成する。
【0018】
カッタホルダ1において、圧電素子の運動は、少なくともおおよそ、好ましくは正確に溝底12と平行である。この目的のため、溝12は圧電素子3の幅より且つカッタ2の後述のブレードホルダ22の幅よりも大きな幅を有している。典型的な振動数は30kHzから200kHzである。高い周波数は、ずれが比較的少なく、切断されたサンプル片、即ち切片の品質が高いという利点がある。
【0019】
カッタ2は、立方形のブレードホルダ22と、その上に配置され且つ刃先21を持つブレード20とを有することが好ましい。刃先21は圧電素子3の第2の座面31に、従って溝底12にも少なくともほぼ平行である。圧電素子3に交流電圧が印加されると、カッタがその刃先21が延びる方向に少なくともほぼ平行に、好ましくは正確に平行に振動する。これは図中の矢印で示されている。
【0020】
ブレードホルダ22およびブレード20は部分に分かれていない設計とすることができる(一部品とすることができる)。しかし、これらを多くの部分に分かれた設計としてブレード20それ自体を交換することができるようにすることができる。これらを部分に分かれていない設計とした場合、保持装置全体を交換することが好ましい。少なくともブレード20はダイアモンドからなることが好ましい。
【0021】
図2aおよび2bにおいて、切断されるサンプル7に保持装置が動作上接続される様子が示されている。サンプル7は、適切な顕微鏡下の分析のために超薄片を切断することを目的とする所望の材料であればよい。はじめに述べたように、少なくとも10から100nmの切断厚さを達成することが可能であり、本発明による保持装置の補助によって超薄切片の品質を向上させることができる。サンプルは通常、組織または他の何らかの有機物質である。しかし、無機物質をこの方法で切断することも可能である。
【0022】
サンプル7はサンプルホルダブロック4に締め付けられたサンプルホルダ6に保持される。超ミクロトームの同じ基部(ここでは図示せず)の上にサンプルホルダブロック4およびカッタホルダ1を配置することができるが、その必要はない。この方法の一変形例において、切断の間にはサンプル7は静止したままとなり、カッタのみが振動する。他の変形例においては、サンプル7も振動する。この目的で、サンプルホルダ6とサンプルホルダブロック4との間に第2の圧電素子5、好ましくは剪断圧電素子を配置することができる。従って、同様に刃先21に少なくともほぼ平行な方向にサンプル7を簡単に動かすことができる。そして、サンプル7はカッタ2と反対の方向に動くことが好ましい。同じ方向または前記反対方向に時間をオフセットしてサンプル7を振動させることにより、サンプル7をカッタ2の逆の時点で動かし、カッタ2をサンプル7の逆の時点で動かすこともできる。
【0023】
本発明による保持装置の第2の好ましい代表的な実施形態が図3に示されている。この保持装置は、圧電素子3が溝底12とカッタ2との間に平らな直方体の形状で配置されていない点において第1の代表的な実施形態とは異なる。むしろ、圧電素子3は、ブレード20から見てその反対側の端部にあるブレードホルダ22の端部に配置されている。この実施形態には、カッタ2自体を非常に短い設計とすることができるため、動かす質量が最小限となるという利点がある。カッタを予め圧電素子に締め付けておくことができるため、且つカッタおよび圧電素子によって形成されるユニットがカッタホルダに締め付けられる必要があるのは端部においてのみであるため、製造がさらに容易になり、測定精度が向上する。カッタ/圧電素子ユニットだけをカッタホルダ1に設置する前にテストすることができるため、品質保証も向上する。
【0024】
ここに示されていない実施形態において、圧電性結晶または圧電セラミックが溝底12に直接接着される。しかし、圧電素子3は、ここに示されているように、圧電性結晶または圧電セラミック32だけでなく、ピエゾホルダ33も有していることが好ましい。このピエゾホルダ33は立方形の設計であり、好ましくは幅の広い支持面によって溝底12に結合される。これには、比較的小さな圧電性結晶または小さな圧電セラミック32を用いることができるが、それにもかかわらず十分に大きな面積が結合領域となるという利点がある。カッタ2は溝底12を基準として自由振動する。従って、溝底12は対応する段を有することができる(ここでは図示せず)。
【0025】
上述の例において、カッタホルダ1は溝10を有している。この溝10は、圧電素子およびカッタを締め付ける際にガイド補助として働くという利点がある。しかし、溝10は必須ではない。カッタホルダ1は基本的に他の形状を有することもできる。不可欠なことは、圧電素子はカッタのみを動かす必要があり、それ以外の要素については動かす必要がないか、またはそれ以外の要素の可能な限り少数を動かす必要があるということである。
【0026】
第3の実施形態が図4に示されている。ここで、本発明による保持装置はカッタホルダブロック8を有しており、これに対して圧電素子3が締め付けられている。これは接着されてもよいが、ここではねじで締め付けられている。内部に定位置でカッタ2が締め付けられた、特に接着されたカッタホルダ1は圧電素子3に自由に吊るされた状態で配置されている。圧電素子3に交流電圧を印加することによって、矢印で示されているようにカッタブレード20をその縦方向に平行に振動させることができる。この実施形態においては、圧電素子として、印加電界に平行な方向に膨張する結晶またはセラミックを用いることもできる。多層素子を用いることが好ましい。図示された実施形態の有利な特徴は、カッタホルダがネジ頭を形成しており、関連するねじ本体が圧電素子を貫通し、カッタホルダブロック8に固定されたロックナット9によって反対側に保持されていることである。この配置には、圧電素子で要求される圧力増加が達成され、1つの同じ要素によってカッタを保持することができるという利点がある。
【0027】
本発明による保持装置は、簡単に且つ高い寸法精度で製造することができる。また、刃先を高い周波数で振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】図1aは、第1の実施形態における前方からの本発明による保持装置の斜視図である。
【図1b】図1bは、図1aによる保持装置の部分断面図である。
【図2a】図2aは、図1aによる保持装置およびサンプル保持装置の斜視図である。
【図2b】図2bは、図2aの分解図である。
【図3】図3は、第2の実施形態による本発明に係る保持装置の部分断面図である。
【図4】図4は、第3の実施形態による本発明に係る保持装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1:カッタホルダ
10:溝
11:側壁
12:溝底
13:凹部
2:カッタ
20:ブレート
21:刃先
22:ブレードホルダ
3:第1の圧電素子
30:第1の支持面
31:第2の支持面
32:圧電性結晶
33:圧電性ホルダ
4:サンプルホルダブロック
5:第2の圧電素子
6:サンプルホルダ
7:サンプル
8:カッタホルダブロック
9:ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動超ミクロトームカッタ(2)を有する保持装置であって、前記カッタ(2)はカッタホルダ(1)の上に配置され、圧電素子(3)によって前記カッタ(2)を振動させることができ、前記カッタ(2)は前記圧電素子(3)によって支持されることを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
前記カッタは、他の部分は自由に吊るされることを特徴とする、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記圧電素子(3)は、前記カッタホルダ(1)に締め付けられた第1の支持面(30)を有し、前記圧電素子(3)は第2の支持面(31)を有し、前記第2の支持面(31)には前記カッタ(2)が締め付けられることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の保持装置。
【請求項4】
前記カッタ(2)は、部分に分かれていない設計であり、且つダイアモンドからなることが好ましいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の保持装置。
【請求項5】
前記カッタ(2)を、その刃先(21)に少なくともほぼ平行に振動させることができることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の保持装置。
【請求項6】
前記圧電素子(3)は、剪断モードで動作可能な圧電性結晶または圧電セラミック(32)を有することを特徴とする、請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
前記第1および第2の支持面(30、31)は互いに面平行に広がり、前記刃先(21)はこれらの支持面(30、31)に少なくともほぼ平行に延びることを特徴とする、請求項3および5に記載の保持装置。
【請求項8】
前記カッタホルダ(1)は2つの側壁(11)および溝底(12)を持つ溝(10)を有し、前記溝底(12)は斜面として設計され且つ前記圧電素子(3)の締め付け面として働き、前記溝(10)は前記カッタ(2)のブレードホルダ(22)の幅よりも大きな幅を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の保持装置。
【請求項9】
前記圧電素子(3)は圧電性結晶または圧電セラミック(32)とピエゾホルダ(33)とを有し、前記カッタ(2)は前記圧電性結晶または前記圧電セラミック(32)に締め付けられ、前記ピエゾホルダ(33)は前記カッタホルダ(1)の上に配置されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の保持装置。
【請求項10】
前記圧電素子(3)は一方の側でカッタホルダブロック(8)に締め付けられ、前記圧電素子は反対側で前記カッタホルダ(1)を支持し、前記カッタ(2)は前記カッタホルダ(1)の上に定位置で配置されることを特徴とする、請求項1、4、5または6のいずれかに記載の保持装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の振動カッタ(2)を有し、且つサンプルホルダブロック(4)と、前記カッタ(2)によって切断されるサンプル(7)を保持し、前記サンプルホルダブロック(4)の上に締め付けられた振動サンプルホルダ(6)とを有する保持装置を備える超ミクロトームであって、前記サンプルホルダ(6)は自由に吊るされた状態で第2の圧電素子(5)に締め付けられ、前記第2の圧電素子(5)は前記サンプルホルダブロック(4)に接続され、前記第2の圧電素子(5)は剪断モードで動作することができることを特徴とする、超ミクロトーム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525495(P2006−525495A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504183(P2006−504183)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000256
【国際公開番号】WO2004/097374
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(502299616)アントン マイヤー ウント コンパニー アーゲー (2)
【Fターム(参考)】