説明

捺染剤及び該捺染剤で捺染された合成繊維布帛

【課題】 合成繊維布帛の表面に、該布帛の基布を露出させずに凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色可能な捺染剤を提供すること。
【解決手段】 合成繊維布帛の表面に凹部を形成すると同時に該凹部を着色する捺染剤であって、
(A)ポリエチレングリコール及び
(B)ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシルジグリコール及びベンジルジグリコールからなる群から選ばれるグリコール類
を含有することを特徴とする捺染剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維布帛の表面に、該布帛の基布を露出させずに凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色可能な捺染剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系繊維布帛の表面に、凹部を形成すると同時に凹部を着色する方法として、染料と苛性アルカリを共存させてなる組成物からなる捺染剤を印捺ないし塗布し、湿潤状態で大部分の苛性アルカリを反応させた後、加熱発色させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、十分な着色濃度が得られなかった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、凹部を形成する材料として、苛性アルカリに代えて炭酸グアニジンを含有する抜蝕剤を用いた捺染剤が提案されているが、この捺染剤も十分な着色濃度が得られなかった(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、分散染料、カルボキシル基を有する樹脂及びアルカリ性物質を含有する樹脂組成物からなる捺染剤が提案されているが、この捺染剤を用いた場合も十分な着色濃度が得られなかった(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭56−123487号公報
【特許文献2】特開2000−96439号公報
【特許文献3】特開2002−69318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、合成繊維布帛の表面に、該布帛の基布を露出させずに凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色可能な捺染剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、捺染剤にポリエチレングリコールとブチルジグリコール等のグリコール類とを併用して配合することにより、合成繊維布帛の表面に、該布帛の基布を露出させずに十分な深さで凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色が可能な捺染剤が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、合成繊維布帛の表面に凹部を形成すると同時に該凹部を着色する捺染剤であって、
(A)ポリエチレングリコール及び
(B)ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシルジグリコール及びベンジルジグリコールからなる群から選ばれるグリコール類
を含有することを特徴とする捺染剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の捺染剤を用いることで、合成繊維布帛の表面に、該布帛の基布を露出させずに十分な深さで凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色する加工が可能になる。しかも、加工された凹部の着色部は耐光堅牢性に優れ、さらに、繊維素材としての風合いを維持することができる。したがって、本発明の捺染剤によって加工された合成繊維布帛は、衣料、家具、車両内装材等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるポリエチレングリコール(A)の平均分子量は、200〜500のものが好ましい。この範囲であれば、十分な着色濃度を得られる。
【0010】
本発明で用いられるグリコール類(B)は、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシルジグリコール及びベンジルジグリコールからなる群から選ばれるグリコール類である。これらの中でも、ブチルジグリコール又はブチルトリグリコールは、十分な着色濃度を得られるので好ましい。
【0011】
前記ポリエチレングリコール(A)と前記グリコール類(B)との配合比率は、(A):(B)=80:20〜20:80の範囲が好ましく、さらに好ましくは、(A):(B)=65:35〜35:65の範囲である。この範囲であれば、十分な着色濃度を得られるので好ましい。
【0012】
本発明の捺染剤に含有される前記ポリエチレングリコール(A)と前記グリコール類(B)以外の成分としては、合成繊維布帛の表面に凹部を形成すると同時に該凹部を着色することができれば、公知のものを用いることができる。そのような成分として、糊剤、分散染料、アルカリ性物質、水溶性樹脂、添加剤等が挙げられる。
【0013】
前記糊剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、プロピオキシセルロース、アルギン酸エステル、グアガムエチレンオキサイド付加物、エチルセルロース、メチルセルロース、ブリティッシュガム等の加工糊剤;ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸誘導体、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリマレイン酸共重合体塩、非イオン界面活性剤等の合成糊剤;珪藻土、ケイ酸コロイド等の無機系糊剤などの各種糊剤が挙げられる。
【0014】
前記糊剤の中でも、カルボキシルメチルセルロースナトリウムは、アルカリ性物質の水溶液を添加しても捺染剤の粘度低下が小さい点、捺染した布帛から糊剤を洗浄により除去しやすい点などから好ましい。これらの糊剤は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。また、糊剤の捺染剤中の配合比率は目的とする粘度によって異なるが、1〜5質量%が適当である。さらに、糊剤にカルボキシルメチルセルロースナトリウムを用いる場合、捺染剤中の配合比率は1.5〜2.5質量%が好ましい。
【0015】
前記分散染料は、合成繊維布帛を着色できれば、特に限定されるものではないが、高い耐光性と耐アルカリ堅牢性を有するアンスラキノン系染料が特に好ましい。アンスラキノン系染料としては、例えば、C.I.ディスパース・イエロー 51、C.I.ディスパース・レッド 91、C.I.ディスパース・レッド 92、C.I.ディスパース・ブルー 60、C.I.ディスパース・ブルー 158等が挙げられる。これら分散染料は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。また、分散染料を本発明の捺染剤に配合する際には、水中で分散させ水分散液の状態で用いると好ましい。さらに、分散染料の捺染剤中の配合比率は目的とする色によって異なるが、0.1〜7.0質量%が適当である。
【0016】
前記アルカリ性物質は、合成繊維布帛に凹部を形成する成分として用いる。このアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらアルカリ性物質の中でも、水酸化ナトリウムは凹部を形成する効果が高く、安価であるため好ましい。
【0017】
本発明の捺染剤にアルカリ性物質として、水酸化ナトリウムを用いる場合は、水溶液にして配合する。その濃度は、特に限定されるものではないが、通常は30〜50質量%の範囲が好ましい。また、水酸化ナトリウムの固形分での配合比率は、捺染剤中の分散染料を除いた固形分中で50〜70質量%が好ましく、57〜63質量%が特に好ましい。この範囲であれば、合成繊維布帛の表面に十分な深さで凹部を形成することができ、かつ高い着色濃度が得られるので好ましい。なお、前記固形分とは、乾燥後に固体となるものをいう。
【0018】
前記水溶性樹脂としては、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂が挙げられる。このカルボキシル基を有するアクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等である。これらの共重合体は、通常、乳化重合により合成され、水中に樹脂を分散させたエマルジョンの形態で用いる。
【0019】
前記カルボキシル基を有するアクリル系樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0020】
前記カルボキシル基を有するアクリル系樹脂の分子量としては、重量平均分子量が1000〜50万の範囲のものが好ましく、1万〜20万の範囲のものがさらに好ましく、5万〜10万の範囲にあるものが特に好ましい。また、酸価は5〜500の範囲のものが好ましい。
【0021】
前記カルボキシル基を有するアクリル系樹脂は、アルカリ性物質による分散染料の退色を防止する効果があるため、本発明の捺染剤に配合することが好ましい。また、分散染料に対するカルボキシル基を有するアクリル系樹脂の配合割合は、分散染料100質量部に対して、30〜300質量部の範囲が好ましい。この範囲であれば、分散染料を十分に保護できるため高い着色濃度が得られ、捺染剤の粘度が作業に適したものとなるので好ましい。
【0022】
前記添加剤は、本発明の捺染剤に必要に応じて配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ベントナイト系の体質顔料、多糖類系の糊剤等の浸透防止剤、界面活性剤、還元防止剤、金属イオン封鎖剤、蛍光増白剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。また、前記浸透防止剤の中でも、ベントナイトは浸透防止効果が大きいので好ましい。
【0023】
本発明の捺染剤の調製方法としては、例えば、(1)各成分を一度に均一に混合する方法、(2)分散染料及びアルカリ性物質以外の成分を均一に混合して、「元糊」を調製した後、得られた元糊に分散染料及びアルカリ性物質を加えて均一に混合する方法等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の捺染剤を用いた捺染方法としては、例えば、下記の1〜5の工程による方法が挙げられる。
【0025】
(1.印捺工程)
本発明の捺染剤を耐アルカリ性に劣る合成繊維からなる布帛上に、例えば、ローラー捺染、オート捺染、手捺染等で印捺する。
【0026】
(2.乾燥工程)
印捺した合成繊維布帛を、100℃〜130℃で、2〜3分間乾燥する。
【0027】
(3.染料発色工程)
乾燥した合成繊維布帛に、HTスチーマを用いて、温度160℃〜180℃、蒸気量50〜100%の条件で5〜10分間の熱蒸気処理を行い、染料を発色させる。
【0028】
(4.還元洗浄工程)
熱蒸気処理を行った合成繊維布帛を、ハイドロサルファイトナトリウム、合成洗剤及び水酸化ナトリウムの水溶液を用いて、80〜90℃に保ちながら洗浄する。
【0029】
(5.洗浄乾燥工程)
還元洗浄した合成繊維布帛を、水で洗浄後、室温で風乾させるか、布帛を構成する繊維が溶融しない程度の温度で加熱乾燥する。
【0030】
上記の1〜5の工程を経て、合成繊維布帛の表面に、凹部を形成すると同時に該凹部を高い色濃度で着色することが可能である。
【0031】
前記の耐アルカリ性に劣る合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、カチオンダイアブルポリエステル繊維等が挙げられる。また、本発明の捺染剤は、ポリエステル繊維の中でも、ポリエチレンテレフタレート繊維に好適である。
【0032】
さらに、本発明で用いられる合成繊維布帛は、本発明の捺染剤による凹部の形成及び該凹部の着色が効果的に行えるため、起毛されたものが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、質量基準である。
【0034】
(実施例1)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)17部、ポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)11部及びブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)7部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊50部に、38%水酸化ナトリウム水溶液30部及びC.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0035】
(実施例2)
実施例1で用いたブチルジグリコールをブチルトリグリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0036】
(実施例3)
実施例1で用いたブチルジグリコールをヘキシルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0037】
(実施例4)
実施例1で用いたブチルジグリコールをベンジルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0038】
(実施例5)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)14部、ポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)14部及びブチルトリグリコール(日本乳化剤株式会社製)4部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊50部に38%水酸化ナトリウム水溶液30部及びC.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0039】
(実施例6)
実施例5で用いたポリエチレングリコールを7部、ブチルトリグリコールを11部に変更した以外は実施例5と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0040】
(実施例7)
実施例5で用いたポリエチレングリコールを4部、ブチルトリグリコールを14部に変更した以外は実施例5と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0041】
(実施例8)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)17部、ポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)11部及びブチルトリグリコール(日本乳化剤株式会社製)7部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊50部に38%水酸化ナトリウム水溶液23部及びC.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0042】
(実施例9)
実施例8で用いた38%水酸化ナトリウム水溶液を36部に変更した以外は実施例8と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0043】
(比較例1)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)17部及びポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)18部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊80部に、C.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0044】
(比較例2)
実施例1で用いたブチルジグリコールをプロピレングリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0045】
(比較例3)
実施例1で用いたブチルジグリコールをフェニルグリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0046】
(比較例4)
実施例1で用いたブチルジグリコールをトリプロピレングリコール(日本乳化剤株式会社製)に代えた以外は実施例1と同様にして青色の捺染剤を得た。
【0047】
(比較例5)
アルギン酸ソーダ(株式会社紀文フードケミファ製「ダックアルギンNSP−M」)3部をイオン交換水57部に溶解した水溶液に、炭酸グアニジン15部、C.I.ディスパース・ブルー60(青色系の分散染料)5部及び水20部を混合したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0048】
(比較例6)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)17部及びポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)18部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊50部に、38%水酸化ナトリウム水溶液30部及びC.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0049】
(比較例7)
カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムSA−H」)4部をイオン交換水55部に溶解した水溶液59部に、ベントナイト(水澤化学株式会社製「ベンクレイMK−101」)6部、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂のエマルジョン溶液(大日本インキ化学工業株式会社製「PA−4」、固形分25%)17部及びブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)18部を加え、均一に混合して元糊を得た。次いで、得られた元糊50部に、38%水酸化ナトリウム水溶液30部、C.I.ディスパース・ブルー60(日本化薬株式会社製「TURQ.BLUE GLS−200」)5部をイオン交換水15部中に分散したものを加え、均一に混合して青色の捺染剤を得た。
【0050】
(評価用布帛の作製)
地染めされたポリエチレンテレフタレート繊維からなる起毛布の表面に、上記の実施例及び比較例で得られた捺染剤を、オートスクリーン捺染機(辻井染機工業株式会社製「SP−300SR」)を用いて印捺し、室温で乾燥させた後、さらに130℃で2分間乾燥した。次いで、これに、HTスチーマー(昭和機械工業株式会社製「HTS−71」)を用いて、170℃で8分間の熱蒸気処理を行った。この熱蒸気処理した起毛布を、イオン交換水1リットルにハイドロサルファイトナトリウム2g、合成洗剤2g及び水酸化ナトリウム2gを加えて調製した水溶液を用いて80℃で還元洗浄し、水洗した後、乾燥させて、評価用布帛を得た。
【0051】
(エッチング性評価)
上記で作製した評価用布帛の表面に形成された凹部の深さを目視で確認し、以下の基準によってエッチング性を評価した。
○:エッチングが十分に深く、かつ基布が露出しない。
△:エッチングされるが凹部の深さが浅い。
×:エッチングされない。又は、エッチングが深すぎて、基布が露出する。
【0052】
(着色性評価)
上記で作製した評価用布帛の表面に形成された凹部の着色部を顕微色彩色差計(ミノルタ株式会社製「CR−241」、測定範囲:1.8mmφ)を用いて色度を測定した。次いで、エッチング剤(水酸化ナトリウム)を配合していない比較例1の明度を基準として、その明度と実施例1〜7及び比較例2〜8の捺染剤を用いて作製した評価用布帛の明度との差(ΔL)を算出した。この算出したΔLの値から、以下の基準によって着色性を評価した。なお、ΔLの値は、小さいほど着色濃度が高い。
◎:ΔLが18未満である。
○:ΔLが18以上、20未満である。
△:ΔLが20以上、22未満である。
×:ΔLが22以上である。
【0053】
実施例及び比較例の評価結果を表1〜3に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
表1に示した結果から、実施例1〜9で得た本発明の捺染剤は、良好なエッチング性及び着色性を有することが分かった。
【0058】
比較例2は、本発明のグリコール類(B)に代え、プロピレングリコールを用いた例である。この捺染剤のエッチング性は問題なかったが、着色性は不十分であることが分かった。
【0059】
比較例3は、本発明のグリコール類(B)に代え、フェニルグリコールを用いた例である。この捺染剤のエッチング性は問題なかったが、着色性は不十分であることが分かった。
【0060】
比較例4は、本発明のグリコール類(B)に代え、トリプロピレングリコールを用いた例である。この捺染剤のエッチング性及び着色性は不十分であることが分かった。
【0061】
比較例5は、凹部を形成する成分として水酸化ナトリウムに代え、炭酸グアニジンを用いた例である。この捺染剤のエッチング性は問題なかったが、着色性は不十分であることが分かった。
【0062】
比較例6は、本発明のグリコール類(B)を用いなかった例である。この捺染剤のエッチング性は問題なかったが、着色性は不十分であることが分かった。
【0063】
比較例7は、本発明のポリエチレングリコール(A)を用いなかった例である。この捺染剤のエッチング性は問題なかったが、着色性は不十分であることが分かった。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維布帛の表面に凹部を形成すると同時に該凹部を着色する捺染剤であって、
(A)ポリエチレングリコール及び
(B)ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシルジグリコール及びベンジルジグリコールからなる群から選ばれるグリコール類
を含有することを特徴とする捺染剤。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコール(A)と前記グリコール類(B)との配合比が、(A):(B)=80:20〜20:80である請求項1記載の捺染剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の捺染剤で捺染されたことを特徴とする合成繊維布帛。


【公開番号】特開2006−219519(P2006−219519A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31634(P2005−31634)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】