説明

捺染用転写紙、捺染処理装置および捺染方法

【課題】 捺染処理を簡略化または小形化し、かつ捺染処理に要する時間を短縮することができる捺染用転写紙、捺染処理装置および捺染方法を提供する。
【解決手段】 転写紙rは、水溶紙から成る基材71と、接着層74とを含んで構成される。接着層74は、染料73と、染料73を受容する染料受容層72とを含む。基材71は、シート状に形成され、接着層74を布帛Rに接着する接着処理と、布帛Rに接着層74の染料73を定着させる定着処理とにおいては、定形性を維持し、洗浄液42を用いて布帛Rを洗浄する洗浄処理においては、洗浄液42中に分散または溶解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の布帛に、染料を含む接着層を有する捺染用転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって布帛を捺染する捺染用転写紙、捺染処理装置および捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、布帛に図柄を堅牢・精細に描く方法として、コンピュータを用いて電子データで前記図柄を作成し、インクジェットプリント方式で染料を布帛に付与する無製版プリント法が注目されている。
【0003】
無製版プリント法は、直描式の捺染法(たとえば、特許文献1参照)と、転写捺染法とに大別される。直描式の捺染法では、インクジェットプリンタを用いて布帛へ図柄を直接描画する。
【0004】
転写捺染法では、染料を受容するための糊剤などを含む染料受容層を基材上に積層して形成された転写用紙に対して、インクジェットプリンタを用いて染料を噴射して図柄を描画することによって、染料受容層と染料とから成る転写層を有する転写紙を先ず作製し、この転写紙の転写層を布帛に転写して布帛を捺染する。
【0005】
転写捺染法としては、水で湿らせた布帛に転写紙を積重して加圧・圧着処理することによって転写層を転写する湿式転写捺染法と、布帛に転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって転写層を転写する乾式転写捺染法(たとえば、特許文献2参照)とが知られている。
【0006】
直描式の捺染法は、
・インクジェットプリンタから噴射される染料が布帛に滲むことを防止するために、布帛には予め糊剤などの滲み防止剤を塗布しておく必要があるが、布帛は伸縮性を有するため、搬送ローラによって搬送される際に、塗布された滲み防止剤にひび割れが生じてしまい、高精度で描画することができない、
・布帛がたとえばレース地などのような空隙が大きい組織である場合、インクジェットプリンタによる描画は実際上困難である、
・グラデーションを綺麗に描画することができない、
・インクジェットプリンタを用いて布帛に対して直接描画されるので、適正に描画できなかった場合には廃棄しなければならず、布帛の損失が大きい、
などといった短所がある。また湿式転写捺染法は、図柄の繊細性と再現性に劣るといった短所がある。
【0007】
これに対し、乾式転写捺染法は、
・布帛に対して高画質・高精細に図柄を転写することができる、
・インクジェットプリンタを用いた描画は、染料を受容するための受容層を有する転写用紙に対して行われるため、適正に描画できなかった場合であっても、布帛を廃棄する必要がない、
などといった長所がある。
【0008】
この乾式転写捺染法での捺染処理は捺染処理装置によって実行され、大きく分類すると、布帛に転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、転写紙の転写層を布帛に転写する転写工程、転写紙の基材を布帛から剥離する剥離工程、転写層が転写された布帛を蒸気などで加熱処理することによって、転写層の染料を布帛に定着させる定着工程、定着工程後の布帛を洗浄液で洗浄することによって、染料受容層に含まれていた糊剤などを取り除く洗浄工程、および、洗浄工程後の布帛を乾燥させる乾燥工程が順次処理される。
【0009】
乾式転写捺染法では、転写紙には、剥離工程で転写層と基材とが容易に剥離するために、転写層と基材との間に剥離層が設けられている。この剥離層は、定着工程での蒸気の透過を阻害し、転写層の染料が布帛に定着することを妨げるので、定着工程の前の剥離工程において、基材とともに布帛から剥離しておく必要がある。
【0010】
乾式転写捺染法において、剥離層を設けない転写紙を用いると、定着工程で蒸気の透過を阻害することは無いけれども、定着工程の後に布帛から転写紙を剥離することが困難になるので、転写紙には剥離層を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−311782号公報
【特許文献2】WO2007/111302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載の乾式転写捺染法では、転写工程での布帛への転写層の付着状態が不十分であると、剥離不良、すなわち剥離工程で布帛から剥離された基材に転写層の一部分が残存し、布帛の一部分に染料が定着しない染めむらなどの不良を発生させるという問題がある。したがって、剥離不良を防ぐために、転写工程で転写層と布帛とを十分に密着させて、転写層を布帛に確実に転写させる必要があるので、転写工程での処理時間を短くするには限界があり、捺染処理に要する時間を短縮することができない。
【0013】
また、乾式転写捺染法では、剥離工程を要するので捺染処理を簡略化することができないという問題があり、さらに剥離工程を行うための機械構成によって捺染処理装置が大形化するという問題もある。
【0014】
本発明の目的は、捺染処理を簡略化または小形化し、かつ捺染処理に要する時間を短縮することができる捺染用転写紙、捺染処理装置および捺染方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、接着層が基材の表面に設けられる捺染用転写紙を、前記接着層が対向するように布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、接着層を布帛に接着する接着処理と、接着処理後の布帛に加熱処理によって接着層の少なくとも一部を定着させる定着処理と、洗浄液を用いて定着処理後の布帛を洗浄する洗浄処理とを含む捺染処理に用いる捺染用転写紙であって、
前記基材は、シート状に形成され、前記接着処理および前記定着処理においては、定形性を維持し、前記洗浄処理においては、洗浄液中に分散または溶解することを特徴とする捺染用転写紙である。
【0016】
また本発明は、前記接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成され、
前記染料受容層は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とが混合されて成る層が基材の表面に設けられることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成され、
前記染料受容層は、親水性合成樹脂から成る第1の層と、親水性糊剤から成る第2の層とが積層され、基材の表面に設けられることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記捺染用転写紙を用いる捺染処理装置であって、
前記捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、前記接着層を布帛に接着する接着部と、
前記接着部の搬送方向下流側に設けられ、前記捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を布帛に定着させる定着部と、
前記定着部の搬送方向下流側に設けられ、前記捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する洗浄部とを含むことを特徴とする捺染処理装置である。
【0019】
また本発明は、前記基材は、互いに結合する複数の繊維を含んで形成され、
前記洗浄部は、
洗浄液を貯留する1または複数の洗浄槽と、
前記各洗浄槽に貯留された洗浄液中に分散する前記繊維を濾過によって回収する少なくとも1つの回収部とを含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記洗浄槽は、
洗浄液を貯留し、搬送方向に並ぶ複数の洗浄槽と、
前記各洗浄槽に設けられ、貯留された洗浄液を各洗浄槽外へ移動させる洗浄液移動部とを含み、
前記複数の洗浄槽のうち、最も搬送方向上流側の洗浄槽を除く一の洗浄槽の洗浄液は、前記一の洗浄槽に対して搬送方向上流側に隣接する他の洗浄槽へ前記洗浄液移動部によって移動し、最も搬送方向上流側の洗浄槽の洗浄液は、前記複数の洗浄槽外へ前記洗浄液移動部によって移動することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記捺染用転写紙を用いる捺染方法であって、
前記捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、前記接着層を布帛に接着する接着工程と、
前記接着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を前記布帛に定着させる定着工程と、
前記定着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する洗浄工程とを含むことを特徴とする捺染方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、捺染用転写紙は、接着処理と、定着処理と、洗浄処理とを含む捺染処理に用いられる。接着処理では、接着層が基材の表面に設けられる捺染用転写紙を、接着層が対向するように布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、接着層を布帛に接着する。定着処理では、接着処理後の布帛に加熱処理によって接着層の少なくとも一部を定着させる。洗浄処理では、洗浄液を用いて定着処理後の布帛を洗浄する。基材は、シート状に形成される。基材は、接着処理および定着処理においては、定形性を維持し、洗浄処理においては、洗浄液中に接着層と共に分散または溶解する。
【0023】
これによって、基材が洗浄液中に分散または溶解し布帛から捺染用転写紙が分離するので、捺染用転写紙を布帛から剥離する剥離処理を省略し、捺染処理を簡略化することができる。また、基材を蒸気の透過を妨げない材料、たとえば互いに結合する複数の繊維を含む材料などによって形成することによって、捺染用転写紙は、定着処理における蒸気などを用いた加熱処理を妨げることがない。したがって、捺染用転写紙の剥離に必要な機械構成を省略することができる。これによって、捺染用転写紙を用いることによって、転写捺染に用いられる装置を小形化することが可能となる。
【0024】
また、転写層が含まれる従来の捺染用転写紙を用いる捺染処理では、加圧処理を行って転写層を布帛に転写させる転写処理が必要である。これに対して本発明の捺染用転写紙は、従来の捺染用転写紙の転写層に代えて接着層を含む構成であるので、従来の転写処理における加圧処理での圧力よりも小さな圧力で、接着処理において接着層を布帛に容易に接着させることができる。これによって、捺染用転写紙は、加圧処理に必要な機械構成を簡略化または小形化させることができる。
【0025】
また、本発明の捺染用転写紙を用いる捺染処理では、剥離処理が不要なので、剥離処理で布帛から接着層の一部が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、剥離処理が原因の染めむらが発生しないので、接着処理での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染処理における接着処理の開始から洗浄処理の終了までの所要時間を短縮することができる。
【0026】
また本発明によれば、接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成される。染料受容層は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とが混合されて成る層が基材の表面に設けられる。
【0027】
これによって、親水性合成樹脂および親水性糊剤は、水溶性高分子を含むので、洗浄液として水を用いることによって、布帛から染料受容層を除去することができる。捺染用転写紙を用いることによって、捺染用転写紙を剥離する処理を省略することができる。また、捺染用転写紙は、親水性合成樹脂と親水性糊剤との混合比率によって、染料と染料受容層との親和性、および染料受容層の厚みを調整し、捺染用転写紙に対する染料の定着性能を調整することができる。
【0028】
また本発明によれば、接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成される。染料受容層は、親水性合成樹脂から成る第1の層と、親水性糊剤から成る第2の層とが積層され、基材の表面に設けられる。
【0029】
これによって、親水性合成樹脂および親水性糊剤は、水溶性高分子を含むので、洗浄液として水を用いることによって、布帛から染料受容層を除去することができる。捺染用転写紙を用いることによって、捺染用転写紙を剥離する処理を省略することができる。また、捺染用転写紙は、第1および第2の層の各層の厚みを変更することによって、染料と染料受容層との親和性、および染料受容層の厚みを調整し、捺染用転写紙に対する染料の定着性能を調整することができる。
【0030】
また本発明によれば、捺染処理装置は、前記捺染用転写紙を用いる。捺染処理装置は、接着部と、定着部と、洗浄部とを含む。接着部は、捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、接着層を布帛に接着する。定着部は、接着部の搬送方向下流側に設けられ、捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を布帛に定着させる。洗浄部は、定着部の搬送方向下流側に設けられ、捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する。
【0031】
これによって、捺染処理装置では、捺染用転写紙を布帛から剥離する構成を用いることなく、定着部によって接着層の一部、たとえば染料を布帛に定着させ、布帛に定着した接着層の一部を除く捺染用転写紙を洗浄部によって布帛から除去することができる。したがって、捺染処理装置は、捺染用転写紙の剥離に必要な機械構成を省略することができる。これによって、捺染処理装置を小形化することが可能となる。
【0032】
また、捺染処理装置は、剥離処理が不要なので、剥離処理で布帛から接着層の一部分が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、捺染処理装置は、剥離処理が原因の染めむらが発生しないので、接着処理での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染処理装置は、捺染処理における接着処理の開始から洗浄処理の終了までの所要時間を短縮することができる。
【0033】
また本発明によれば、基材は、互いに結合する複数の繊維を含んで形成される。洗浄部は、1または複数の洗浄槽と、少なくとも1つの回収部とを含む。1または複数の洗浄槽は、洗浄液を貯留する。少なくとも1つの回収部は、各洗浄槽に貯留された洗浄液中に分散する繊維を濾過によって回収する。
【0034】
これによって、捺染処理装置は、洗浄液中に分散した基材の繊維を回収することができる。したがって、捺染処理装置は、洗浄槽内において布帛から分離した捺染用転写紙が、布帛に再び付着することを抑制することができる。捺染処理装置は、捺染用転写紙由来の繊維が分散したままの状態で洗浄液が排水されることを防止することができる。捺染処理装置は、回収された繊維を捺染用転写紙の再生に利用することが可能となる。
【0035】
また本発明によれば、洗浄部は、複数の洗浄槽と、洗浄液移動部とを含む。洗浄槽は、洗浄液を貯留する。複数の洗浄槽は、搬送方向に並んで設けられる。洗浄液移動部は、各洗浄槽に設けられ、貯留された洗浄液を各洗浄槽外へ移動させる。複数の洗浄槽のうち、最も搬送方向上流側の洗浄槽を除く一の洗浄槽の洗浄液は、一の洗浄槽に対して搬送方向上流側に隣接する他の洗浄槽へ洗浄液移動部によって移動し、最も搬送方向上流側の洗浄槽の洗浄液は、複数の洗浄槽外へ洗浄液移動部によって移動する。
【0036】
これによって、捺染処理装置では、複数の洗浄槽によって、布帛から捺染用転写紙を確実に除去することができる。したがって、捺染処理装置は、布帛から分離した捺染用転写紙が、布帛に再び付着することを確実に抑制することができる。捺染処理装置は、搬送方向下流側から搬送方向上流側へ各洗浄槽の洗浄液を順次移動させることによって、搬送方向上流側の洗浄槽の洗浄液よりも搬送方向下流側の洗浄槽の洗浄液を、分散した基材などの汚れが少ない状態に保つことができる。これによって、捺染処理装置は、布帛の洗浄度合いに応じた洗浄液を用いて、布帛を効率よく洗浄することができる。また、捺染処理装置では、洗浄槽が複数設けられるので、洗浄槽を1つのみ設ける構成に比べて、少量の洗浄液を用いて布帛を確実に洗浄することができる。これによって、洗浄液のコストを低下させることができる。
【0037】
また本発明によれば、捺染方法では、前記捺染用転写紙を用いる。捺染方法は、接着工程と、定着工程と、洗浄工程とを含む。接着工程では、捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、接着層を布帛に接着する。定着工程では、接着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を布帛に定着させる。洗浄工程では、定着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する。
【0038】
これによって、捺染方法では、捺染用転写紙を布帛から剥離する工程を行うことなく、定着工程で接着層の一部、たとえば染料を布帛に定着させ、布帛に定着した接着層の一部を除く捺染用転写紙を洗浄工程で布帛から除去することができる。したがって、捺染方法では、捺染用転写紙の剥離に必要な剥離工程を省略し、捺染方法における全体の工程を簡略化することができる。
【0039】
また、捺染方法では、剥離工程が不要なので、剥離工程で布帛から接着層の一部分が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、捺染方法では、剥離工程が原因の染めむらが発生しないので、接着工程での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染方法における接着工程の開始から洗浄工程の終了までの所要時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る捺染処理装置100の概略的な構成を示す系統図であり、捺染処理装置100の稼動時の状態を示す図である。
【図2】捺染処理装置100で用いる転写紙rの断面を示す図である。
【図3】捺染処理装置100の洗浄部4の洗浄槽411を拡大して示す図である。
【図4】捺染処理装置100が行う捺染方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Aの洗浄部4を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の実施形態に係る捺染処理装置100の概略的な構成を示す系統図であり、捺染処理装置100の稼動時の状態を示す図である。図2は、捺染処理装置100で用いる捺染転写紙rの断面を示す図である。以下、捺染転写紙rを単に転写紙rとも称す。
【0042】
捺染処理装置100は、乾式転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置であって、接着工程を行う接着部2と、定着工程を行う定着部3と、洗浄工程を行う洗浄部4と、乾燥工程を行う乾燥部5とを含んで構成される。接着工程は、従来の転写捺染法における転写工程に代わる工程である。
【0043】
接着部2は、染料73を含む接着層74を有する転写紙rを布帛Rに積重して、転写紙rと布帛Rとの積層体Lを加熱処理または加圧・加熱処理し、転写紙rの接着層74を布帛Rに接着する接着処理を行う。定着部3は、転写紙rを布帛Rに積重した状態で、接着層74が接着された後の布帛(以下、「接着後布帛」と称する)R1を蒸気によって加熱処理し、接着層74に含まれる染料73を布帛Rに定着させる定着処理を行う。
【0044】
洗浄部4は、転写紙rを布帛Rに積重した状態で、定着処理が施された後の布帛(以下、「定着後布帛」と称する)R2を、洗浄液42を用いて洗浄する洗浄処理を行う。乾燥部5は、洗浄処理が施された後の布帛(以下、「洗浄後布帛」と称する)R3を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0045】
捺染処理装置100は、各処理部2〜5を、前記した順番で一直線上に連設することによって構成されている。つまり、捺染処理装置100は、接着工程、定着工程、洗浄工程および乾燥工程を、連続的に処理するように構成された装置である。各工程を含む捺染方法は、捺染処理装置100によって実行される。
【0046】
まず、捺染処理装置100による処理対象の転写紙rおよび布帛Rについて説明する。
図2(a)に示した転写紙r1は、基材71と、接着層74とから構成される。接着層74は、染料73と、染料73を受容する染料受容層72とから構成される。転写紙r1は、基材71上に染料受容層72を積層し、この染料受容層72に対して、インクジェットプリンタを用いて染料73を塗布して図柄を描画することによって作製される。
【0047】
基材71は、シート状に形成され、厚み寸法が50〜200マイクロメートル(略号:μm)に形成される。染料受容層72は、厚み寸法が20〜100μmに形成される。染料受容層72の厚み寸法は、好ましくは40μm以上に形成され、これによって、染料73が染料受容層72を通過して基材71に浸透し、基材71が分散または溶解することを防止することができる。
【0048】
基材71は、接着処理および定着処理においては、定形性を維持し、洗浄処理においては、洗浄液42中に分散または溶解する。基材71は、接着工程での接着処理前では、基材71がシート状の形状を維持し、接着工程での接着処理後および定着工程では、基材71がシート状の形状を維持し、かつ基材71が布帛Rに付着している状態となる。基材71は、互いに結合する複数の繊維を含んで形成される。
【0049】
基材71は、水溶紙から成り、水溶紙とは、水に入れると分散または溶解する性質を有する紙である。基材71の成分は、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ビニロン、デンプンなどの繊維状物質を挙げることができる。これら繊維状物質に、必要に応じて木材パルプ、非木材繊維、レーヨンなどの各種繊維類と、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの各種填料とを混合し、基材71を作成することができる。
【0050】
基材71は、たとえば日本製紙パピリア株式会社製の商品名:30MDP、60MDP、120MDP、30CD−2、60CD−2、120CD−2などを用いてもよい。また、基材71は、セルロース誘導体などから成る水溶性のフィルムであってもよい。
【0051】
染料受容層72は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とが混合されて成る層が基材71の表面に設けられる。染料受容層72は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とを主体として含み、さらに各種助剤が含まれてもよい。親水性合成樹脂は、加熱によって軟化または溶融する樹脂であり、たとえば水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性ウレタン変性エーテル樹脂および水溶性ポリエチレンオキサイド樹脂から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の混合物である。
【0052】
また親水性糊剤は、天然素材、半合成素材または水溶性合成高分子から成る糊剤であり、たとえば海藻類、繊維素誘導糊、加工デンプン糊、水溶性合成高分子および天然ガム類から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の混合物である。また各種助剤は、たとえば酸性物質もしくはアルカリ剤、表面張力低下剤、増粘剤、箔転写バインダー糊、鉱物および保湿剤から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の薬剤である。
【0053】
また布帛Rを捺染するための染料73は、布帛Rの繊維材料との組み合わせなどを考慮して、反応染料、分散染料、酸性染料、金属錯塩型染料および直接染料の中から適宜選択される。
【0054】
染料73を染料受容層72に塗付して形成される接着層74において、染料73と染料受容層72との混合物が酸性である場合には、基材71にアルカリ可溶性樹脂を用い、染料73と染料受容層72との混合物がアルカリ性である場合には、基材71に酸可溶性樹脂を用いてもよい。染料73と染料受容層72との混合物が中性である場合には、基材71にアルカリ可溶性樹脂または酸可溶性樹脂を用いてもよい。これによって、接着層74が基材71を分散または溶解させることを防止することができる。
【0055】
図2(b)に示した転写紙r2は、基材71と、接着層74とから構成される。接着層74は、染料73と、染料73を受容する染料受容層72とから構成され、染料受容層72は、第1の層である樹脂層721と、第2の層である糊剤層722とが積層され、基材71の表面に設けられる。以下、転写紙r1と転写紙r2とを、単に転写紙rともいう。
【0056】
樹脂層721は、親水性合成樹脂から成り、糊剤層722は、親水性糊剤から成る。樹脂層721は、厚み寸法が15〜70μmに形成され、糊剤層722は、厚み寸法が5〜30μmに形成される。
【0057】
本実施形態の転写紙r2では、基材71の表面上に樹脂層721を積層し、この樹脂層721上に糊剤層722を積層した構成である。他の実施形態の転写紙では、基材71の表面上に糊剤層722を積層し、この糊剤層722上に樹脂層721を積層した構成であってもよい。
【0058】
布帛Rは、天然繊維材料または/および合成繊維材料から成り、より詳細には、セルロース系繊維材料、蛋白質系繊維材料および合成繊維材料選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の繊維材料から成る織物、編物、または不織布である。ここで、セルロース系繊維材料としては、綿、麻、リヨセルおよびレーヨン(たとえば、ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨンなど)などを挙げることができ、蛋白質系繊維材料としては、絹、羊毛および獣毛などを挙げることができ、合成繊維材料としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート、乳酸ポリエステルなど)、トリアセテート、ジアセテート、ポリアミド、ポリアクリルなどを挙げることができる。
【0059】
以下、図1に示した捺染処理装置100について詳細に説明する。捺染処理装置100は、転写紙rに含まれる染料73を布帛Rに転写して、布帛Rに捺染処理を行う。捺染処理装置100は、平坦かつ水平または略水平な床面8に設置されているものとし、接着部2から乾燥部5へ向かう、床面8に平行な方向X1を、以下では搬送方向と称する。また、床面8に垂直な方向Zを上下方向と称し、搬送方向X1および上下方向Zのいずれにも直交する方向Yを幅方向と称する。
【0060】
捺染処理装置100は、接着工程、定着工程、洗浄工程および乾燥工程を、連続的に処理するために、前記各処理部2〜5ごとに、布帛Rを搬送するための一または複数の搬送用ローラが備えられている。本実施形態では、各搬送用ローラは、その軸線方向と前記幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、捺染処理装置100において、布帛Rは、前記幅方向Yと布帛Rの幅方向とが一致した状態で、搬送方向X1に沿って搬送される。また捺染処理装置100は、装置全体を制御する図示しない制御装置を備え、前記各搬送用ローラは、制御装置によって、布帛Rを所定の送り速度vで搬送するように駆動される。所定の送り速度については後述する。なお、本明細書では、布帛Rが上下方向Zに複数回方向転換しながら搬送されているときの搬送経路の状態を蛇行と称する。
【0061】
処理対象の布帛Rは、接着部2の搬送方向X1上流側(以下、単に「上流側」と記す)に設けられる布帛設置部1に設置される。布帛設置部1は、布帛Rが装着される回転軸部11と、回転軸部11を所定の回転方向(図1では、反時計回り)に回転駆動する図示しない電動機とを備える。本実施形態では、該回転軸部11に対して、ロール状に巻回された状態の布帛(以下、「原反ロール」と称する)R0が、回転軸部11の軸線と原反ロールR0の軸線とが一致するように装着される。このとき、原反ロールR0は、原反ロールR0と回転軸部11とが一体となって回転するように取り付けられる。すなわち、布帛Rは、電動機が駆動されることにより、回転軸部11の回転に伴って原反ロールR0から巻き出される。
【0062】
なお、回転軸部11に装着された原反ロールR0は、原反ロールR0から巻き出された布帛Rの量が増加するにつれて、その巻径が減少していく。したがって、変化する巻径に対して原反ロールR0から布帛Rを一定の速度および一定のテンション(張力)で巻き出していくためにも、電動機としては、印加電圧を変更することによってトルク特性を変化させることが可能なトルクモータが好適に用いられる。すなわち、このトルクモータは、制御装置によって、前記所定の送り速度vで搬送される布帛Rを一定のテンションで巻き出し続けるように制御される。
【0063】
接着部2は、接着層74が基材71の表面に設けられる転写紙rを、接着層74が対向するように布帛Rに積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、接着層74を布帛Rに接着する接着処理を行う。
【0064】
接着部2は、転写紙r0が設置される転写紙設置部21と、転写紙rと布帛Rとの積層体Lに対して加圧・加熱処理を施す加圧・加熱ローラ22と、積層体Lを搬送するための搬送用ローラ24とを備える。接着部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路は、後述する搬送経路形成位置に配置されたときの加圧・加熱ローラ22および搬送用ローラ24によって、床面8に平行または略平行となるように規定されている。
【0065】
転写紙設置部21は、布帛設置部1よりも上下方向Zの上方に設けられる。転写紙設置部21は、転写紙r0が装着される回転軸部211と、回転軸部211を所定の回転方向(図1では、時計回り)に回転駆動する図示しない電動機と、ローラ212とを備える。本実施形態では、該回転軸部211に対して、ロール状に巻回された状態の転写紙(以下、「紙ロール」と称する)r0が、回転軸部211の軸線と紙ロールr0の軸線とが一致するように装着される。
【0066】
このとき、紙ロールr0は、紙ロールr0と回転軸部211とが一体となって回転するように回転軸部211に取り付けられ、さらに、電動機を駆動することによって紙ロールr0から転写紙rが下方へ巻き出されたとき、転写紙rの接着層74が下方に臨むように取り付けられる。なお、回転軸部211を駆動する電動機としては、布帛設置部1と同様にトルクモータが好適に用いられ、制御手段によって、布帛Rの送り速度vに一致する送り速度で搬送される転写紙rを、一定のテンションで巻き出し続けるように制御される。
【0067】
ローラ212は、加圧・加熱ローラ22の上流側に設けられており、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されている。またローラ212は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置(図1に示す位置)と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、ローラ212の搬送経路形成位置とは、接着部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路に上方から隣接する位置である。またローラ212の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0068】
紙ロールr0から巻き出された転写紙rは、搬送経路形成位置に配置されたローラ212によって、布帛Rの搬送経路に沿うように送り方向が転換される。すなわち、ローラ212は、ローラ212の下流側において転写紙rが布帛Rに積重されるように、転写紙rの送り方向を転換する。これにより、ローラ212の下流側に設けられる加圧・加熱ローラ22へは、転写紙rと布帛Rの積層体Lが搬送される。
【0069】
加圧・加熱ローラ22は、内部に熱源を有する加熱ローラ221と、加熱ローラ221表面に対して圧接される加圧ローラ222と、加圧ローラ222を支持する2本の支持ローラ223とを備える。
【0070】
加熱ローラ221は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって所定の回転方向(図1では、時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。また加熱ローラ221は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、加熱ローラ221の搬送経路形成位置とは、接着部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路に上方から隣接する位置である。また加熱ローラ221の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0071】
加熱ローラ221は、たとえばアルミニウムなどの金属性中空芯金の表面に弾性層を設けることによって形成され、この芯金の内部に、熱源として、たとえばハロゲンランプが設置される。加熱ローラ221の温度は、制御手段によって制御され、たとえば加熱ローラ221表面の温度を検出する温度センサから出力される信号に基づいて、制御装置がハロゲンランプのオン/オフを切り換えることによって制御される。
【0072】
加圧ローラ222は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転自在に支持されている。また加圧ローラ222は、搬送経路形成位置に配置された加熱ローラ221表面に対して下方から所定の圧力で圧接できるように、上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、圧接時には、加熱ローラ221の回転に従動して回転する。
【0073】
加圧ローラ222は、芯金上に、被覆層としてたとえばシリコーンゴムなどの耐熱性弾性層を設けることによって形成されている。したがって、圧接時には、加圧ローラ222を加熱ローラ221表面に対して圧接することにより生ずる、加圧ローラ222の弾性層の弾性変形によって、加熱ローラ221と加圧ローラ222との間にニップ部と呼ばれる圧接領域が形成される。
【0074】
ローラ212から搬送されてきた積層体Lは、このニップ部を通過する際に加圧・加熱処理が施され、これにより、転写紙rの接着層74が布帛Rへ接着される。このとき、転写紙rの接着層74を布帛Rに対して確実に接着するためには、加熱ローラ221の回転速度および温度ならびにニップ部における圧力などの各条件が適切に設定される必要がある。
【0075】
前記各条件は、布帛Rを構成する繊維材料の種類、布帛Rの厚さおよび織り方または編み方、ならびに染料受容層72の成分などに従って決定される。すなわち、加熱ローラ221の最適な回転速度は、転写捺染処理に用いる布帛Rおよび転写紙rを決定することにより決定される。捺染処理装置100では、この加熱ローラ221の適切な回転速度に合致するように、布帛Rの送り速度vが決定される。
【0076】
搬送用ローラ24は、接着部2における最も下流側に設けられ、駆動側ローラ241と、従動側ローラ242とを備える。駆動側ローラ241は、ローラ状部材であって、接着部2における装置稼動時の接着後布帛R1の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ241は、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、接着後布帛R1を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ241を回転駆動する。
【0077】
従動側ローラ242は、ローラ状部材であって、駆動側ローラ241の上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ242は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ242は、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ241の回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ242の搬送経路形成位置とは、接着部2における装置稼動時の接着後布帛R1の搬送経路に上方から隣接する位置である。また従動側ローラ242の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0078】
したがって、装置稼動時には、駆動側ローラ241および従動側ローラ242は、それぞれ接着部2における接着後布帛R1の搬送経路を挟むように配置される。前記のように、搬送用ローラ24が接着後布帛R1を所定の送り速度vで搬送するように駆動されることにより、接着後布帛R1は、駆動側ローラ241と従動側ローラ242の間を所定の送り速度vで通過する。
【0079】
定着部3は、加熱処理によって接着処理後の布帛Rに接着層74の少なくとも一部を定着させる定着処理を行う。定着部3は、前記接着部2の下流側に隣接して設けられ、接着部2から所定の送り速度vで搬送されてくる接着後布帛R1を水蒸気によって加熱処理し、接着層74に含まれる染料73を布帛Rに定着させる。
【0080】
定着部3は、加熱用の水蒸気が充満されるチャンバ31と、水蒸気を発生し、チャンバ31内の空間Sに水蒸気を噴出する蒸気発生手段32と、接着部2から搬送されてくる接着後布帛R1を、チャンバ31内の空間Sへ搬入するための搬入口33と、チャンバ31内に設けられ、所定の送り速度vに応じて、チャンバ31内、より詳細には、チャンバ31内の有効定着温度領域S1における接着後布帛R1の搬送経路の経路長を調整する調整手段34と、チャンバ31内の空間Sから接着後布帛R1を搬出するための搬出口35とを備える。ここで、有効定着温度領域S1とは、チャンバ31内の空間Sにおける一部の領域であり、染料73を布帛Rに定着させるために必要な所定の温度以上に設定される領域のことである。
【0081】
チャンバ31は、中空の構造体であり、互いに連なる側壁部および頂部によって、チャンバ31の内部には空間Sが形成されている。頂部には、ファン311が設置され、さらに、水蒸気を排出するための蒸気排出口がファン311に隣接して形成されている。この蒸気排出口には、蒸気排出口から排出された水蒸気が導入される図示しない排気ダクトが連設されている。
【0082】
蒸気発生手段32は、水蒸気を発生する蒸気発生部321と、蒸気発生部321を包囲する構造体322と、上方に向かって開口するように構造体322に穿設された蒸気噴出口323とを備える。蒸気発生手段32は、蒸気噴出口323がチャンバ31の内部空間に配置されるように、定着部3に設置される。したがって、蒸気発生部321で発生した水蒸気は、上方に立上り、蒸気噴出口323を介して構造体322の内部から外部に向かって噴出される。このとき、蒸気噴出口323が、チャンバ31の内部空間Sに配置されているので、発生した蒸気は、チャンバ31内の空間Sへ噴出される。また、チャンバ31内の空間Sに充満する水蒸気を適量に維持するために、蒸気噴出口323からの水蒸気の噴出に伴って蒸気排出口から水蒸気が適宜排出される。本実施形態では、蒸気発生手段32は、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられている。
【0083】
またチャンバ31の内壁には、チャンバ31の内部空間Sに充満した水蒸気のうち、蒸気噴出口323の上方に設定される有効定着温度領域S1における水蒸気が前記所定の温度以上を維持するように、内部空間Sを加熱するための図示しない加熱手段が設置されている。チャンバ31の内部にはさらに温度センサが備えられ、加熱手段は、温度センサから出力される信号に基づいて、制御装置によって制御される。このようにして、蒸気噴出口323の上方の有効定着温度領域S1が所定の温度以上となるように制御される。
【0084】
なお、この所定の温度は、布帛Rを構成する繊維材料の種類、布帛Rの厚さおよび織り方または編み方、ならびに染料73の種類などに応じて決定されるものである。すなわち、前記所定の温度は、転写捺染処理に用いる布帛Rおよび転写紙rを決定することにより決定される。
【0085】
搬入口33は、接着部2に臨むチャンバ31の側壁部に設けられ、具体的には、該側壁部に穿設された開口312と、チャンバ31の内部であって該開口312に隣接して設けられる可動式のシャッタ部材331とによって形成される。
【0086】
開口312は、搬送方向X1に見て矩形状に形成され、幅方向Yには、処理対象の布帛Rの幅よりも大きく、上下方向Zには、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の位置から該搬送経路よりも下方の位置に亘って開放するように形成されている。
【0087】
シャッタ部材331は、前記開口312の全領域を開放可能な退避位置P1と、退避位置P1よりも下方の位置であり、前記開口312の一部の領域を開放する搬送経路形成位置P2とに亘って、上下方向Zに変位可能に設けられ、たとえばエアシリンダなどの図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。搬入口33は、シャッタ部材331を搬送経路形成位置P2に配置したときに開放している領域に相当する。本実施形態に係る捺染処理装置100は、この搬入口33が、蒸気噴出口323よりも下方、すなわちチャンバ31内における有効定着温度領域S1よりも下方に設けられるように構成されている。
【0088】
調整手段34は、チャンバ31内の空間Sに設けられ、搬入口33から搬入された接着後布帛R1が巻き掛けられる複数(本実施形態では2)の搬送用ローラ341と、各搬送用ローラ341間の間隔を変化させるように、各搬送用ローラ341を少なくとも上下方向Zに沿って、好ましくは、上下方向Zおよび搬送方向X1に沿う方向に沿って、変位駆動する図示しない間隔調整手段とを備える。なお、定着部3における装置稼動時の接着後布帛R1の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各搬送用ローラ341、シャッタ部材331および後述するシャッタ部材351によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0089】
搬送用ローラ341は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、接着後布帛R1を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で搬送用ローラ341を回転駆動する。
【0090】
また搬送用ローラ341は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない間隔調整手段によって上下方向Zに変位駆動される。なお、搬送用ローラ341の搬送経路形成位置とは、有効定着温度領域S1における所定の位置であり、搬送用ローラ341の退避位置は、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の所定の位置である。
【0091】
装置稼動時には、接着部2の搬送用ローラ24を通過した接着後布帛R1は、搬送用ローラ24よりも下方に設けられる搬入口33に向かって垂下し、ループ状の搬送経路に沿って搬入口33からチャンバ31の内部へ搬入された後、搬入口33よりも上方に設定される有効定着温度領域S1に向けて搬送される。そして、有効定着温度領域S1内に侵入した接着後布帛R1は、間隔調整手段によって搬送経路形成位置に配置された各搬送用ローラ341に巻き掛けられながら、上下方向Zに蛇行した搬送経路に沿って有効定着温度領域S1内を搬送される。そして、有効定着温度領域S1内を通過した接着後布帛R1は、搬送用ローラ24よりも下方に設けられる搬出口35に向かって垂下し、ループ状の搬送経路に沿って搬出口35から搬出される。
【0092】
本実施形態に係る捺染処理装置100では、間隔調整手段によって、染料73を定着させるために必要な所定の処理時間だけ有効定着温度領域S1内に接着後布帛R1が滞留するように、有効定着温度領域S1における接着後布帛R1の搬送経路の経路長を調整することができる。具体的には、各搬送用ローラ341の上下方向Zの位置および搬送方向X1に沿う方向の位置を調整することによって、有効定着温度領域S1における接着後布帛R1の搬送経路の経路長が調整される。
【0093】
搬出口35は、洗浄部4に臨むチャンバ31の側壁部に設けられ、具体的には、該側壁部に穿設された開口313と、チャンバ31の内部であって該開口313に隣接して設けられる可動式のシャッタ部材351とによって形成される。
【0094】
開口313は、前記開口312と同一の大きさで、該開口312に対向する位置に形成される。シャッタ部材331は、該開口313の全領域を開放可能な退避位置Q1と、退避位置Q1よりも下方の位置であり、該開口313の一部の領域を開放する搬送経路形成位置Q2とに亘って、上下方向Zに変位可能に設けられ、たとえばエアシリンダなどの変位駆動手段によって変位駆動される。搬出口35は、シャッタ部材351を搬送経路形成位置Q2に配置したときに開放している領域に相当する。本実施形態に係る捺染処理装置100は、この搬出口35が、蒸気噴出口323よりも下方、すなわちチャンバ31内における有効定着温度領域S1よりも下方に設けられるように構成されている。
【0095】
なお、本実施形態に係る捺染処理装置100には、搬入口33および搬出口35付近において、搬入口33および搬出口35を通過するときに形成される接着後布帛R1のループを検出するためのループ検出手段36,37が設けられている。
【0096】
前記のように、本実施形態に係る捺染処理装置100は、接着工程に最適な送り速度で接着後布帛R1が搬送されている場合であっても、定着処理に必要な所定の処理時間だけ接着後布帛R1に対して蒸気加熱処理を施すことができる。布帛Rの種類や染料73の種類などの諸条件によって、接着工程における最適な送り速度と蒸気加熱処理に要する時間の組合せは様々であるが、本実施形態に係る捺染処理装置100では、布帛Rおよび染料73の種類によらず、接着工程における最適な送り速度に対して、定着処理に必要な所定の時間だけ接着後布帛R1に対して蒸気加熱処理を施すことができる。すなわち、捺染処理装置100は、蒸気加熱処理時間の不足による定着不良を生じさせることなく、接着工程と定着工程とを連続的に処理することができる。
【0097】
洗浄部4は、1または複数(本実施形態では5)の洗浄槽411が設けられたタンク41と、定着後布帛R2を洗浄するために洗浄槽411に注入される洗浄液42と、定着後布帛R2を搬送するための複数の搬送用ローラ43と、洗浄液42に浸漬されることにより洗浄液42を吸収している状態の定着後布帛R2から、洗浄液42を搾り出すための複数(本実施形態では2)のスクイズローラ44とを備える。
【0098】
洗浄部4は、洗浄液42を用いて定着処理後の布帛Rを洗浄する洗浄処理を行う。洗浄部4は、定着後布帛R2を洗浄液42で洗浄することによって、布帛Rに付着する染料受容部および基材71を、布帛Rから除去する。洗浄部4での処理によって、基材71は、洗浄液42中に分散または溶解し、染料受容層72は、洗浄液42中に溶解する。
【0099】
タンク41は、上方に向かって開放した5つの洗浄槽411を列設して構成され、搬送方向X1に沿って5つの洗浄槽411が並ぶように、さらに、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられる。本実施形態では、5つの洗浄槽411のうち4つの洗浄槽411に対して、定着後布帛R2を洗浄するための洗浄液42が注入されている。洗浄液42としては、水または水にソーピング液を追加したものが用いられる。ソーピング液には、分散した基材71が洗浄液42中で布帛Rに再度付着することを防止するために、界面活性剤が含まれることが好ましい。
【0100】
搬送用ローラ43は、複数(本実施形態では6)のローラ対431と、洗浄槽411ごとに設けられる複数(本実施形態では5)のローラ432とを含む。ローラ対431は、装置稼動時において、接着部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ431aと従動側ローラ431bとによって構成される。なお、洗浄部4における装置稼動時の布帛R(定着後布帛R2)の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各ローラ対431、各ローラ432および後述する各スクイズローラ44によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0101】
駆動側ローラ431aは、ローラ状部材であって、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ431aは、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ431aを回転駆動する。
【0102】
従動側ローラ431bは、ローラ状部材であって、駆動側ローラ431aの上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ431bは、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ431bは、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ431aの回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ431bの搬送経路形成位置とは、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に上方から隣接する位置であり、従動側ローラ431bの退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0103】
ローラ432は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度でローラ432を回転駆動する。
【0104】
またローラ432は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって上下方向Zに変位駆動される。なお、ローラ432の搬送経路形成位置とは、洗浄槽411内における所定の位置であり、搬送用ローラ341の退避位置は、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の所定の位置である。すなわち、ローラ432は、洗浄槽411に注入された洗浄液42に浸漬可能に設けられている。
【0105】
スクイズローラ44は、洗浄部4における最も下流側に設けられ、装置稼動時において、接着部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ441と従動側ローラ442とによって構成される。
【0106】
駆動側ローラ441は、ローラ状部材であって、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ441は、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ441を回転駆動する。
【0107】
従動側ローラ442は、ローラ状部材であって、駆動側ローラ441の上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ442は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ442は、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ441の回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ442の搬送経路形成位置とは、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に上方から隣接する位置であり、洗浄液42を搾り出すために駆動側ローラ441に圧接された位置である。また従動側ローラ442の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0108】
図3は、捺染処理装置100の洗浄部4の洗浄槽411を拡大して示す図である。図3に示した洗浄槽411は、タンク41の5つの洗浄槽411のうちの1つを示す。洗浄部4は、給水部412と、排水部417と、回収部414とをさらに含んで構成される。
【0109】
給水部412は、洗浄液42を洗浄槽411へ供給する。排水部417は、洗浄槽411に貯留された洗浄液42を洗浄槽411外へ、上下方向Zの下方に向けて排水する。排水部417は、たとえば洗浄槽411の底面に孔を形成し、この孔に円筒状の排水管を接続することによって実現される。排水部417には、排水管内に弁415が設けられ、弁415が開放している状態では排水部417から洗浄液42が排水され、弁415が閉止している状態では洗浄液42が洗浄槽411内に留まる。
【0110】
回収部414は、洗浄槽411に貯留された洗浄液42中に分散する基材71の繊維を、濾過によって回収する。回収部414は、フィルタエレメント421と、フィルタケース422と、蓋423と、エア抜きバルブ424と、往路管425と、復路管426と、ポンプ427とを含んで構成される。
【0111】
フィルタエレメント421は、円筒状に形成される濾過膜などの濾材によって実現される。基材71の繊維が分散している洗浄液42をフィルタエレメント421に通過させることによって、繊維と洗浄液42とが分離する。濾材は、回収する繊維の寸法に応じて適宜選択される。
【0112】
フィルタケース422は、略円筒状に形成される側面部と、円形に形成される底面部とから成る。底面部には、往路管425と復路管426とが接続される。フィルタケース422内には、フィルタケース422が配置される。蓋423は、円形の板状部材によって形成される。蓋423は、フィルタケース422に累合され、フィルタケース422を上下方向Zの上方から覆う。
【0113】
エア抜きバルブ424は、蓋423の軸線付近に形成され、蓋423を上下方向Zに貫通する孔を有する。エア抜きバルブ424は、フィルタケース422内の圧力が予め定める圧力以上になると、フィルタケース422内の空気をフィルタケース422外へ排出する。
【0114】
往路管425は、パイプなどの管状部材によって形成され、洗浄槽411の底面とフィルタケース422の底面とを接続する。復路管426は、パイプなどの管状部材によって形成され、フィルタケース422の底面と洗浄槽411の側面とを接続する。
【0115】
ポンプ427は、往路管425に設置される。ポンプ427によって、洗浄槽411内の洗浄液42が、往路管425を介してフィルタケース422へ移動し、さらにフィルタケース422内の洗浄液42が、復路管426を介して洗浄槽411へ移動する。
【0116】
洗浄部4は、洗浄液42を循環、すなわち洗浄槽411内の洗浄液42を回収部414に移動させ、さらに回収部414内の洗浄液42を洗浄槽411へ移動させる。ポンプ427が循環させる洗浄液42の流量は、給水部412からの洗浄液42の流量よりも多く設定することが好ましい。これによって、回収部414での濾過効果を高めること、すなわち洗浄槽槽411に貯留される洗浄液42から基材71の繊維を効率よく回収することができる。
【0117】
洗浄部4は、回収部414によって洗浄液42中から繊維を除去しつつ、洗浄液42を循環させる。これによって、捺染処理装置100は、洗浄槽411内の洗浄液が繊維などによって汚れた場合であっても、この汚れた洗浄液42を、定着後布帛R2を洗浄するための洗浄液42として再利用することができ、洗浄処理のコストを低減させることができる。
【0118】
乾燥部5は、前記洗浄部4の下流側に隣接して設けられ、洗浄部4から所定の送り速度vで搬送されてくる洗浄後布帛R3に対して、たとえば風、好ましくは温風を吹き当てることによって乾燥処理を施す。
【0119】
乾燥部5は、風または温風を送風する複数(本実施形態では2)の乾燥手段51と、洗浄後布帛R3を搬送するための複数(本実施形態では5)の搬送用ローラ52とを備える。2つの乾燥手段51は、搬送方向X1に沿って互いに対向するように、さらに、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられる。各乾燥手段51は、対向する乾燥手段51に向かって送風するように設けられている。
【0120】
搬送用ローラ52は、複数(本実施形態では3)の第1ローラ対521と、複数(本実施形態では2)の第2ローラ対522とを含む。第1ローラ対521は、装置稼動時において、接着部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ521aと従動側ローラ521bとによって構成される。なお、乾燥部5における装置稼動時の布帛R(洗浄後布帛R3)の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各第1ローラ対521および第2ローラ対522によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0121】
第1ローラ対521は、搬送方向X1における設置位置が異なる以外は、洗浄部4の前記ローラ対431と同様に構成される。したがって、重複する説明を省略する。第2ローラ対522は、対向する2つの乾燥手段51の中央部に設けられ、装置稼動時において、乾燥手段51よりも下方の位置で洗浄後布帛R3を挟むように配置される駆動側ローラ522aと従動側ローラ522bとによって構成される。
【0122】
駆動側ローラ522aは、ローラ状部材であって、乾燥部5における洗浄後布帛R3の搬送経路に上方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ522aは、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、洗浄後布帛R3を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ522aを回転駆動する。
【0123】
また駆動側ローラ522aは、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、駆動側ローラ522aの搬送経路形成位置とは、従動側ローラ522bに上方から隣接する位置であり、駆動側ローラ522aの退避位置は、接着部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の所定の位置である。
【0124】
従動側ローラ522bは、ローラ状部材であって、駆動側ローラ522aの下方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ442は、搬送経路形成位置に配置された駆動側ローラ441の回転に従動して回転する。
【0125】
各処理部2〜5において所定の処理が施された布帛R4は、乾燥部5の下流側に設けられる布帛回収部6において、回転軸部61まわりに巻き取られながら回収される。
【0126】
また、乾燥部5は、図示しない振動手段、送風手段、および吸引手段のうち、少なくともいずれか1つを含んで構成されてもよい。振動手段は、搬送用ローラ52を振動させることによって、乾燥処理において風が吹き付けられている状態の布帛Rを振動させる。送風手段は、乾燥処理後の布帛Rに対して、乾燥処理における風圧よりも高い風圧で、空気などの気体を噴射する。吸引手段は、乾燥処理後の布帛Rに対して、布帛Rの表面に付着する繊維などの異物を吸引する。これによって、乾燥部5は、仮に洗浄後布帛R3の表面に、基材71が分散した繊維などの異物が付着している場合であっても、布帛Rから異物を確実に除去することができる。
【0127】
図4は、捺染処理装置100が行う捺染方法を示すフローチャートである。捺染処理装置100が、転写紙rと布帛Rとを用いて捺染を行うときに、ステップA0に進んで処理が開始される。
【0128】
ステップA1である接着工程では、接着部2は、布帛Rに対して接着処理を行う。具体的には、接着部2は、転写紙rを布帛Rに積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、接着層74を布帛Rに接着する。
【0129】
ステップA2である定着工程では、定着部3は、接着後布帛R1に対して定着処理を行う。具体的には、定着部3は、接着工程が行われた後に、転写紙rを布帛Rに積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層74の少なくとも一部、たとえば染料73を布帛Rに定着させる。
【0130】
ステップA3である洗浄工程では、洗浄部4は、定着後布帛R2に対して洗浄処理を行う。具体的には、洗浄部4は、定着工程が行われた後に、転写紙rを布帛Rに積重した状態で、洗浄液42を用いて布帛Rを洗浄処理する。
【0131】
ステップA4である乾燥工程では、乾燥部5は、洗浄後布帛R3に対して乾燥処理を行う。布帛回収部6は、乾燥処理が行われた布帛R4を回収して、ステップA5に進んで処理が終了する。
【0132】
以上では、乾式転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置、すなわち染料73を含む接着層74を有する転写紙rを該布帛Rに積重して加圧・加熱処理することによって転写捺染する装置100について説明したが、これに限らず、乾式昇華転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置、すなわち染料73を含む接着層74を有する転写紙rを該布帛Rに積重して加熱処理することによって転写捺染する装置において実現されてもよい。
【0133】
このように、転写紙rは、接着処理と、定着処理と、洗浄処理とを含む捺染処理に用いられる。接着処理では、接着層74が基材71の表面に設けられる転写紙rを、接着層74が対向するように布帛Rに積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、接着層74を布帛Rに接着する。定着処理では、接着処理後の布帛Rに加熱処理によって接着層74の少なくとも一部、たとえば染料73を定着させる。洗浄処理では、洗浄液42を用いて定着処理後の布帛Rを洗浄する。基材71は、シート状に形成される。基材71は、接着処理および定着処理においては、定形性を維持し、洗浄処理においては、洗浄液42中に接着層74と共に分散または溶解する。
【0134】
これによって、基材71が洗浄液42中に分散または溶解し布帛Rから転写紙rが分離するので、転写紙rを布帛Rから剥離する剥離処理を省略し、捺染処理を簡略化することができる。基材71を蒸気の透過を妨げない材料、たとえば互いに結合する複数の繊維を含む材料などによって形成することによって、転写紙rは、定着処理における蒸気などを用いた加熱処理を妨げることがない。したがって、転写紙rの剥離に必要な機械構成を省略することができる。これによって、転写紙rを用いることによって、転写捺染に用いられる装置を小形化することが可能となる。
【0135】
また、転写層が含まれる従来の転写紙を用いる捺染処理では、加圧処理を行って転写層を布帛Rに転写させる転写処理が必要である。これに対して本発明の転写紙rは、従来の転写紙の転写層に代えて接着層74を含む構成であるので、従来の転写処理における加圧処理での圧力よりも小さな圧力で、接着処理において接着層74を布帛Rに容易に接着させることができる。これによって、転写紙rは、加圧処理に必要な機械構成を簡略化または小形化させることができる。
【0136】
また、転写紙rを用いる捺染処理では、剥離処理が不要なので、剥離処理で布帛Rから接着層74の一部が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、剥離処理が原因の染めむらが発生しないので、接着処理での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染処理における接着処理の開始から洗浄処理の終了までの所要時間を短縮することができる。
【0137】
さらに、接着層74は、染料73を受容する染料受容層72を含んで構成される。染料受容層72は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とが混合されて成る層が基材71の表面に設けられる。
【0138】
これによって、親水性合成樹脂および親水性糊剤は、水溶性高分子を含むので、洗浄液42として水を用いることによって、布帛Rから染料受容層72を除去することができる。転写紙rを用いることによって、転写紙rを剥離する処理を省略することができる。また、転写紙rは、親水性合成樹脂と親水性糊剤との混合比率によって、染料73と染料受容層72との親和性、および染料受容層72の厚みを調整し、転写紙rに対する染料73の定着性能を調整することができる。
【0139】
さらに、接着層74は、染料73を受容する染料受容層72を含んで構成される。染料受容層72は、親水性合成樹脂から成る樹脂層721と、親水性糊剤から成る糊剤層722とが積層され、基材71の表面に設けられる。
【0140】
これによって、親水性合成樹脂および親水性糊剤は、水溶性高分子を含むので、洗浄液42として水を用いることによって、布帛Rから染料受容層72を除去することができる。転写紙rを用いることによって、転写紙rを剥離する処理を省略することができる。また、転写紙rは、樹脂層721および糊剤層722の各層の厚みを変更することによって、染料73と染料受容層72との親和性、および染料受容層72の厚みを調整し、転写紙rに対する染料73の定着性能を調整することができる。
【0141】
さらに、捺染処理装置100は、転写紙rを用いる。捺染処理装置100は、接着部2と、定着部3と、洗浄部4とを含む。接着部2は、転写紙rを布帛Rに積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、接着層74を布帛Rに接着する。定着部3は、接着部2の下流側に設けられ、転写紙rを布帛Rに積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層74の少なくとも一部、たとえば染料73を布帛Rに定着させる。洗浄部4は、定着部3の下流側に設けられ、転写紙rを布帛Rに積重した状態で、洗浄液42を用いて布帛Rを洗浄処理する。
【0142】
これによって、捺染処理装置100では、転写紙rを布帛Rから剥離する構成を用いることなく、定着部3によって接着層74の一部、たとえば染料73を布帛Rに定着させ、布帛Rに定着した接着層74の一部を除く転写紙rを洗浄部4によって布帛Rから除去することができる。したがって、捺染処理装置100は、転写紙rの剥離に必要な機械構成を省略することができる。これによって、捺染処理装置100を小形化することが可能となる。
【0143】
また、捺染処理装置100は、剥離処理が不要なので、剥離処理で布帛Rから接着層74の一部分が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、捺染処理装置100は、剥離処理が原因の染めむらが発生しないので、接着処理での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染処理装置100は、捺染処理における接着処理の開始から洗浄処理の終了までの所要時間を短縮することができる。
【0144】
さらに、基材71は、互いに結合する複数の繊維を含んで形成される。洗浄部4は、1または複数の洗浄槽411と、少なくとも1つの回収部414とを含む。1または複数の洗浄槽411は、洗浄液42を貯留する。少なくとも1つの回収部414は、各洗浄槽411に貯留された洗浄液42中に分散する繊維を濾過によって回収する。
【0145】
これによって、捺染処理装置100は、洗浄液42中に分散した基材71の繊維を回収することができる。したがって、捺染処理装置100は、洗浄槽411内において布帛Rから分離した転写紙rが、布帛Rに再び付着することを抑制することができる。捺染処理装置100は、転写紙r由来の繊維が分散したままの状態で洗浄液42が排水されることを防止することができる。捺染処理装置100は、回収された繊維を転写紙rの再生に利用することが可能となる。
【0146】
さらに、捺染方法では、転写紙rを用いる。捺染方法は、ステップA1である接着工程と、ステップA2である定着工程と、ステップA3である洗浄工程とを含む。接着工程では、転写紙rを布帛Rに積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、接着層74を布帛Rに接着する。定着工程では、接着工程が行われた後に、転写紙rを布帛Rに積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層74の少なくとも一部、たとえば染料73を布帛Rに定着させる。洗浄工程では、定着工程が行われた後に、転写紙rを布帛Rに積重した状態で、洗浄液42を用いて布帛Rを洗浄処理する。
【0147】
これによって、捺染方法では、転写紙rを布帛Rから剥離する工程を行うことなく、定着工程で接着層74の一部、たとえば染料73を布帛Rに定着させ、布帛Rに定着した接着層74の一部を除く転写紙rを洗浄工程で布帛Rから除去することができる。したがって、捺染方法では、転写紙rの剥離に必要な剥離工程を省略し、捺染方法における全体の工程を簡略化することができる。
【0148】
また、捺染方法では、剥離工程が不要なので、剥離工程で布帛Rから接着層74の一部分が剥離することによる染めむらの発生を抑制することができる。これによって、捺染方法では、剥離工程が原因の染めむらが発生しないので、接着工程での加熱処理または加圧・加熱処理を短時間化することができる。したがって、捺染方法における接着工程の開始から洗浄工程の終了までの所要時間を短縮することができる。
【0149】
図5は、本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Aの洗浄部4を拡大して示す図である。捺染処理装置100Aは、洗浄部4のタンク41を除いて、前記捺染処理装置100と同様に構成される。したがって、同一の構成については、捺染処理装置100における参照符と同様の参照符を付し、重複する説明については省略する。
【0150】
タンク41には、搬送方向X1に一列に並ぶ複数の洗浄槽411、すなわち第1洗浄槽411aと、第2洗浄槽411bと、第3洗浄槽411cと、第4洗浄槽411dと、第5洗浄槽411eとが設置される。
【0151】
第1洗浄槽411aは、底面に第1洗浄液移動部413が形成され、第1洗浄液移動部413には、回収部414の往路管425が接続される。第1洗浄槽411aは、側面に回収部414の復路管426が接続される。第2洗浄槽411bには、側面に第2洗浄液移動部413bが形成され、第3洗浄槽411cには、側面に第3洗浄液移動部413bが形成され、第4洗浄槽411dには、側面に第4洗浄液移動部413bが形成される。第5洗浄槽411eは、給水部412を有し、側面に第5洗浄液移動部413bが形成される。第2〜第5洗浄液移動部413b〜413eは、第2〜第5洗浄槽411b〜411eにおいて、搬送方向X1の下流側に臨む側面部の上端に形成される。第1〜第5洗浄槽411a〜411eは、排水部417および弁415を有する。
【0152】
他の実施形態においては、第1〜第5洗浄槽411a〜411eが、排水部417および弁415を有さない構成であってもよく、さらに、第1〜第5洗浄槽411a〜411eのうちの少なくとも1つの洗浄槽411が、排水部417および弁415を有する構成であってもよい。
【0153】
第1洗浄液移動部413aは、第1洗浄槽411a内の洗浄液42を、第1洗浄槽411aの外部へ移動させる。第2洗浄液移動部413bは、第2洗浄槽411b内の洗浄液42を、第1洗浄槽411aへ移動させる。第3洗浄液移動部413cは、第3洗浄槽411c内の洗浄液42を、第2洗浄槽411bへ移動させる。第4洗浄液移動部413dは、第4洗浄槽411d内の洗浄液42を、第3洗浄槽411cへ移動させる。第5洗浄液移動部413eは、第5洗浄槽411e内の洗浄液42を、第4洗浄槽411dへ移動させる。
【0154】
第5洗浄液移動部413eは、第4洗浄液移動部413dよりも上下方向Zの上方に形成され、第4洗浄液移動部413dは、第3洗浄液移動部413cよりも上方に形成され、第3洗浄液移動部413cは、第2洗浄液移動部413bよりも上方に形成され、第2洗浄液移動部413bは、第1洗浄液移動部413aよりも上方に形成される。これによって、各洗浄槽411a〜411e内に貯留される洗浄液42の水面は、第5洗浄槽411eが最も高く、第4洗浄槽411d、第3洗浄槽411c、第2洗浄槽411b、第1洗浄槽411aへと順次低くなる。洗浄液42は、第2〜第5洗浄液移動部413b〜413eからオーバーフロー、すなわち第2〜第5洗浄槽411b〜411eの側面部の上端から溢れ出ることによって、搬送方向Xの上流側へそれぞれ移動する。
【0155】
複数の洗浄槽411a〜411eのうち、最も上流側の第1洗浄槽411aを除く洗浄槽411b〜411eの洗浄液42は、洗浄槽411b〜411eに対して上流側に隣接する他の洗浄槽411a〜411dへ、洗浄液移動部413によって移動する。最も搬送方向X1の上流側の洗浄槽411aの洗浄液42は、複数の洗浄槽411a〜411e外へ第1洗浄液移動部413aによって移動する。
【0156】
捺染処理装置100Aでは、複数の洗浄槽411a〜411eによって、布帛Rから転写紙rを確実に除去することができる。したがって、捺染処理装置100Aは、布帛Rから分離した基材71の繊維が、布帛Rに再び付着することを確実に抑制することができる。捺染処理装置100Aは、複数の洗浄槽411a〜411eを設ける構成であっても、回収部414を最も上流側の第1洗浄槽411aに1つ設ける構成であるので、装置を複雑化させることなく、分散した繊維を効率よく回収することができる。
【0157】
第1〜第5洗浄槽411a〜411eにおいて定着後布帛R2が順次洗浄されるので、上流側の第1洗浄槽411aは、他の洗浄槽411b〜411eよりも、基材71、糊剤などによる洗浄液42の汚れが多く発生し、下流側の第5洗浄槽411eは、洗浄液42の汚れが最も少ない。また、第1〜第5洗浄槽411a〜411eにおいて、洗浄液42は、搬送方向X1の上流側に向かって移動する。したがって、捺染処理装置100Aは、汚れが少ない布帛Rに対して汚れが少ない洗浄液42を用いるなど、布帛Rの洗浄度合いに応じた洗浄液42を用いて、各洗浄槽411a〜411eで布帛Rを適切に洗浄することができる。
【0158】
本実施形態では、洗浄部4に洗浄槽411が5つ設けられる構成であるけれども、他の実施形態では、洗浄部4に2以上の任意の数の洗浄槽411を設ける構成であってもよい。洗浄槽411の数を増加させることによって、布帛Rを洗浄する回数を増やして、布帛Rから繊維などの付着物を、確実に除去することができる。
【0159】
このように、洗浄部4は、複数の洗浄槽411a〜411eと、洗浄液移動部413を含む。複数の洗浄槽411a〜411eは、洗浄液42を貯留する。複数の洗浄槽411a〜411eは、搬送方向X1に並んで設けられる。洗浄液移動部413a〜413eは、各洗浄槽411a〜411eに設けられ、貯留された洗浄液42を各洗浄槽外411へ移動させる。複数の洗浄槽411a〜411eのうち、最も上流側の洗浄槽411aを除く一の洗浄槽411b〜411eの洗浄液42は、一の洗浄槽411b〜411eに対して上流側に隣接する他の洗浄槽411a〜411dへ洗浄液移動部413b〜413eによって移動し、最も上流側の洗浄槽411aの洗浄液42は、複数の洗浄槽411a〜411e外へ洗浄液移動部413によって移動する。
【0160】
これによって、捺染処理装置100Aでは、複数の洗浄槽411a〜411eによって、布帛Rから転写紙rを確実に除去することができる。したがって、捺染処理装置100Aは、布帛Rから分離した転写紙rが、布帛Rに再び付着することを確実に抑制することができる。捺染処理装置100Aは、下流側から上流側へ各洗浄槽411の洗浄液42を順次移動させることによって、上流側の洗浄槽411の洗浄液42よりも下流側の洗浄槽411の洗浄液42を、分散した基材71などの汚れが少ない状態に保つことができる。これによって、捺染処理装置100Aは、布帛Rの洗浄度合いに応じた洗浄液42を用いて、布帛Rを効率よく洗浄することができる。また、捺染処理装置100Aでは、洗浄槽411が複数設けられるので、洗浄槽411を1つのみ設ける構成に比べて、少量の洗浄液42を用いて布帛Rを確実に洗浄することができる。これによって、洗浄液42のコストを低下させることができる。
【符号の説明】
【0161】
1 布帛設置部
2 接着部
3 定着部
4 洗浄部
5 乾燥部
6 布帛回収部
71 基材
72 染料受容部
73 染料
74 接着層
100,100A 捺染処理装置
R 布帛
r 転写紙
L 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層が基材の表面に設けられる捺染用転写紙を、前記接着層が対向するように布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、接着層を布帛に接着する接着処理と、接着処理後の布帛に加熱処理によって接着層の少なくとも一部を定着させる定着処理と、洗浄液を用いて定着処理後の布帛を洗浄する洗浄処理とを含む捺染処理に用いる捺染用転写紙であって、
前記基材は、シート状に形成され、前記接着処理および前記定着処理においては、定形性を維持し、前記洗浄処理においては、洗浄液中に分散または溶解することを特徴とする捺染用転写紙。
【請求項2】
前記接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成され、
前記染料受容層は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とが混合されて成る層が基材の表面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の捺染用転写紙。
【請求項3】
前記接着層は、染料を受容する染料受容層を含んで構成され、
前記染料受容層は、親水性合成樹脂から成る第1の層と、親水性糊剤から成る第2の層とが積層され、基材の表面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の捺染用転写紙。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の捺染用転写紙を用いる捺染処理装置であって、
前記捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、前記接着層を布帛に接着する接着部と、
前記接着部の搬送方向下流側に設けられ、前記捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を布帛に定着させる定着部と、
前記定着部の搬送方向下流側に設けられ、前記捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する洗浄部とを含むことを特徴とする捺染処理装置。
【請求項5】
前記基材は、互いに結合する複数の繊維を含んで形成され、
前記洗浄部は、
洗浄液を貯留する1または複数の洗浄槽と、
前記各洗浄槽に貯留された洗浄液中に分散する前記繊維を濾過によって回収する少なくとも1つの回収部とを含むことを特徴とする請求項4に記載の捺染処理装置。
【請求項6】
前記洗浄部は、
洗浄液を貯留し、搬送方向に並ぶ複数の洗浄槽と、
前記各洗浄槽に設けられ、貯留された洗浄液を各洗浄槽外へ移動させる洗浄液移動部とを含み、
前記複数の洗浄槽のうち、最も搬送方向上流側の洗浄槽を除く一の洗浄槽の洗浄液は、前記一の洗浄槽に対して搬送方向上流側に隣接する他の洗浄槽へ前記洗浄液移動部によって移動し、最も搬送方向上流側の洗浄槽の洗浄液は、前記複数の洗浄槽外へ前記洗浄液移動部によって移動することを特徴とする請求項4に記載の捺染処理装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の捺染用転写紙を用いる捺染方法であって、
前記捺染用転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、前記接着層を布帛に接着する接着工程と、
前記接着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態での蒸気による加熱処理によって、接着層の少なくとも一部を前記布帛に定着させる定着工程と、
前記定着工程が行われた後に、捺染用転写紙を布帛に積重した状態で、洗浄液を用いて布帛を洗浄処理する洗浄工程とを含むことを特徴とする捺染方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−179131(P2011−179131A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43435(P2010−43435)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】