説明

排ガス処理装置

脆弱構造を取り付ける際に使用する柔軟かつ実質的に耐亀裂性の、膨張、非膨張、又はハイブリッド取付マット材料が、無機繊維を含む少なくとも1つの膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層と、この層に施された補強層とを含む。ハウジングと、ハウジング内に取り付けられた脆弱な触媒担体構造と、ハウジングと脆弱な触媒担体構造の間の間隙に配置された耐亀裂性取付マットとを含む排ガス処理装置も提供する。排ガス処理装置のための取付マットを作製する方法、及びこの取付マットを組み込んだ排ガス処理装置を作製する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車用触媒コンバータ又はディーゼル微粒子トラップなどの排ガスを処理するための装置を提供し、この装置は脆弱な触媒担体構造を有し、この脆弱構造は、ハウジングと脆弱構造の間に配置された柔軟かつ実質的に耐亀裂性の取付マットによってハウジング内に取り付けられる。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンの排ガスを処理するための排ガス処理装置は、排ガス中に存在する一酸化炭素及び炭化水素の酸化及び窒素の酸化物の還元を行うために使用される。
【0003】
一般に、自動車用触媒コンバータは、外側金属ハウジングと、この外側金属ハウジング内に取付マットによって保持された脆弱な触媒担体構造とを含む。取付マットは、外側金属ハウジングの内面と脆弱な触媒担体構造の外面の間に位置する。当業では、この脆弱な触媒担体構造を一般に「モノリス」と呼ぶ。モノリスは、セラミック又は金属材料で作製することができる。取付マットは、断熱性と、触媒コンバータの動作中に脆弱な触媒担体構造を正しい位置に保持するのに十分な保持圧力とを提供する。
【0004】
ディーゼル微粒子トラップは、ディーゼル燃料を利用する自動車で使用される。ディーゼル微粒子トラップは、一般に外側金属ハウジングと、この外側金属ハウジング内に取付マットによって保持された脆弱な微粒子フィルタ構造とを含む。取付マットは、外側金属ハウジングの内面と微粒子フィルタの外面の間に位置する。触媒コンバータと同様に、このマットも、断熱と、ディーゼル微粒子フィルタの動作中に微粒子フィルタを正しい位置に保持するのに十分な保持圧力とを提供する。
【0005】
上述したように、触媒担体構造及びディーゼル微粒子フィルタは、非常に脆弱であることが多い。事実、これらの構造は非常に脆弱であるため、多くの場合、たとえ小さな衝撃負荷又は応力であっても、構造に亀裂が入ったり又は潰れたりするのに十分なほどである。この脆弱構造を、上述した熱的及び機械的衝撃及びその他の応力から保護するだけでなく、断熱性及びガスシールを実現するとともに脆弱構造をハウジング内の適所に保持するために、脆弱構造とハウジングの間の間隙内に少なくとも1つのプライ又は層の取付材料又は支持材料を配置することが知られている。このように、自動車用排ガス処理装置の外側ハウジングと脆弱な触媒担体構造又は微粒子フィルタとの間に位置する取付マットは、耐熱性を示すとともに、装置の動作中に触媒担体構造又は微粒子フィルタを正しい位置に保持するために必要な保持圧力を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,953,757号明細書
【特許文献2】米国特許第6,030,910号明細書
【特許文献3】米国特許第6,025,288号明細書
【特許文献4】米国特許第5,874,375号明細書
【特許文献5】米国特許第5,585,312号明細書
【特許文献6】米国特許第5,332,699号明細書
【特許文献7】米国特許第5,714,421号明細書
【特許文献8】米国特許第7,259,118号明細書
【特許文献9】米国特許第7,153,796号明細書
【特許文献10】米国特許第6,861,381号明細書
【特許文献11】米国特許第5,955,389号明細書
【特許文献12】米国特許第5,928,075号明細書
【特許文献13】米国特許第5,821,183号明細書
【特許文献14】米国特許第5,811,360号明細書
【特許文献15】米国特許第5,384,188号明細書
【特許文献16】米国特許第3,458,329号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガス処理装置は、脆弱な触媒担体構造又はディーゼル微粒子フィルタの周囲の少なくとも一部に取付マットを巻き付け、この巻かれた構造をハウジング内に配置することにより作製される。触媒担体構造又はディーゼル微粒子フィルタに巻き付けを行う際には、脆弱な触媒担体構造の周囲で取付マットを曲げなければならない。取付マットに引張応力が加わり、これによって取付マットに亀裂が入ったり又は破れたりすることがある。膨張マットの場合、マット内のバーミキュライトが剥がれることもある。理解できるであろうが、この問題は、脆弱構造の巻き付けに坪量の重い取付マットを使用する場合、或いは長円形構造などの小さな半径の周囲に巻き付けを行う場合に悪化する。このため、柔軟かつ実質的に耐亀裂性であると同時に所望の断熱及び保持圧力性能を提供する取付マットが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層と、前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強コーティングなどの補強層とを含む、排ガス処理装置のための実質的に耐亀裂性の取付マットを提供する。
【0009】
排ガス処理装置も提供し、この装置は、ハウジングと、前記ハウジング内に取り付けられた脆弱な触媒担体構造と、前記ハウジングと前記脆弱な触媒担体構造との間の間隙内に配置された取付マットとを含み、前記取付マットは、対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層と、前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強コーティングなどの補強層とを含む。
【0010】
脆弱な触媒担体構造を排ガス処理装置のハウジング内に保持する取付マットを作製する方法をさらに提供し、この方法は、対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層を提供又は準備するステップと、前記膨張シート層又は非膨張シート層の前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に補強コーティングなどの補強層を施すステップとを含む。
【0011】
排ガスを処理するための装置を作製する方法をさらに提供し、この方法は、排ガスを処理するための脆弱な触媒担体構造の少なくとも一部の周囲に、対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層と、前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強コーティングなどの補強層とを含む取付マットを巻き付けるステップと、この巻かれた脆弱な触媒担体構造をハウジング内に配置することにより、取付マットが脆弱構造をハウジング内に弾性的に保持するようにするステップとを含む。
【0012】
排ガス処理装置のためのエンドコーンをさらに提供し、このエンドコーンは、外側金属エンドコーンと、内側金属エンドコーンと、前記外側金属エンドコーンと前記内側エンドコーンの間に配置されたエンドコーン絶縁体とを含み、該エンドコーン絶縁体は、対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層、及び前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強コーティングなどの補強層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による、取付マットを含む触媒コンバータの部分立面図である。
【図2】無機繊維取付マットに施した補強コーティングの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
排ガス処理装置用途のための取付マットを開示する。この取付マットは、耐熱性無機繊維で構成された少なくとも1つのプライ又はシートを含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、取付マットは、任意に膨張材料を含むことができる。取付マットは対向する主表面を含み、これらの表面の少なくとも一方の上に補強コーティングが施される。補強コーティングは、取付マットに耐亀裂性を与える。補強コーティングは、取付マットに耐亀裂性を与える一方で、広い温度範囲にわたって所望の断熱特性、摩擦、及び保持圧力性能をさらに提供する量で施される。すなわち、補強コーティングは、取付マットの特性の性能特性を実質的に変更せずに又はこれに影響を与えずに耐亀裂性を与える。
【0015】
排ガスを処理するための装置も提供する。この装置は、外側金属ハウジングと、少なくとも1つの脆弱構造とを含み、この脆弱構造は、脆弱構造の外面とハウジングの内面との間に配置された取付マットによってハウジング内に取り付けられる。「脆弱構造」という用語は、本質的に脆弱な又は壊れやすい可能性があり、本明細書で説明するような取付マットから恩恵を受けると思われる金属又はセラミックモノリスなどの構造を意味するとともにこれを含むことを意図するものである。
【0016】
一般に、触媒構造は、耐熱材料によってハウジング内に取り付けられた1又はそれ以上の多孔管又はハニカム様構造を含む。個々の構造は、排気処理装置の種類によって、平方インチ当たり約200個〜約900個の範囲又はそれ以上のチャネル又はセルを含む。ディーゼル微粒子トラップは、微粒子トラップ内の個々のチャネル又はセルが一端又は他端で閉じている点で触媒構造とは異なる。高温燃焼処理によって再生されるまで、排ガスからこの多孔性構造内に微粒子が収集される。取付マットの非自動車用途としては、化学プラントで使用されるような産業排出物(排気物)の煙突用の触媒コンバータを挙げることができる。
【0017】
1つの例示的な形の排ガスを処理するための装置を、図1に数字10によって示している。なお、取付マットを図1に示す装置で使用することに限定する意図は無く、従ってこの形状は例示的な実施形態として示すものにすぎない。実際には、この取付マットを使用して、ディーゼル触媒構造、ディーゼル微粒子トラップなどの、排ガスを処理するのに適したあらゆる脆弱構造を取り付け又は支持することができる。
【0018】
触媒コンバータ10は、フランジ16によって互いに結合された耐熱スチールなどの2片の金属で形成された概ね管状のハウジング12を含むことができる。或いは、ハウジングが予備成形キャニスタを含み、この中に取付マットを巻き付けた脆弱構造を挿入することができる。ハウジング12は、一端に入口14を含み、他端に出口(図示せず)を含む。入口14及び出口の外端を好適に形成することにより、これらを内燃エンジンの排気システム内の導管に固定することができる。装置10は、取付マット20によってハウジング12内に支持及び保持された壊れやすいセラミックモノリス18などの脆弱構造を含む。モノリス18は、一端にある入口端面から他端にある出口端面まで軸方向に延びる複数のガス透過性通路を含む。モノリス18は、いずれかの好適な耐熱金属又はセラミック材料により、いずれかの公知の方法及び構成で構築することができる。通常、モノリスは断面形状が長円形又は円形であるが、その他の形状も可能である。
【0019】
モノリスは、ハウジングの内面からある距離又は間隙を置いて離れ、これらの距離又は間隙は、触媒コンバータ、ディーゼル触媒構造、又はディーゼル微粒子トラップなどの利用する装置の種類及び設計によって変化することができる。この間隙を取付マット20で埋めて、セラミックモノリス18を弾性的に支持する。弾性取付マット20は、外部環境に対する断熱性及び脆弱構造に対する機械的支持の両方を提供し、これにより排ガス処理装置の幅広い動作温度にわたる機械的衝撃から脆弱構造を保護する。
【0020】
一般に、取付マットは、任意に膨張材料である無機繊維及びバインダを含む。取付マット20の組成は、広い温度範囲にわたって排ガス処理装置10のハウジング12内に脆弱な触媒担体構造18を弾性的に保持することができる保持圧力を提供するのに十分なものである。
【0021】
繊維が取付マット形成プロセスに耐えることができ、排ガス処理装置の動作温度に耐えることができ、この動作温度で排ガス処理装置内に脆弱構造を保持するための最小限の保持圧力性能を提供する限り、あらゆる耐熱性無機繊維を利用することができる。限定ではないが、取付マット及び排ガス処理装置を準備するために使用できる好適な無機繊維として、高アルミナ質多結晶繊維、アルミノシリケート繊維、アルミナマグネシアシリカ繊維、カオリン繊維などの耐熱性セラミック繊維、カルシアマグネシアシリカ繊維及びマグネシアシリカ繊維などのアルカリ土類シリケート繊維、Sガラス繊維、S2ガラス繊維、Eガラス繊維、クォーツ繊維、シリカ繊維及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、取付マットを準備するために使用する耐熱性無機繊維がセラミック繊維を含む。限定ではないが、好適なセラミック繊維として、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、アルミナジルコニアシリカ繊維、ジルコニアシリカ繊維、ジルコニア繊維及び同様の繊維が挙げられる。有用なアルミナシリカセラミック繊維が、Unifrax I LLC社(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)からFIBERFRAXという登録商標で市販されている。FIBERFRAXセラミック繊維は、約45〜約75重量パーセントのアルミナ及び約25〜約55重量パーセントのシリカからなる繊維化生成物を含む。FIBERFRAX繊維は、最高約1540℃の動作温度及び最高約1870℃の融点を示す。FIBERFRAX繊維は、耐熱シート及び耐熱紙に容易に形成される。
【0023】
アルミナ/シリカ繊維は、約40重量パーセント〜約60重量パーセントのAl23及び約60重量パーセント〜約40重量パーセントのSiO2を含むことができる。この繊維は、約50重量パーセントのAl23及び約50重量パーセントのSiO2を含むことができる。通常、アルミナ/シリカ/マグネシアガラス繊維は、約64重量パーセント〜約66重量パーセントのSiO2、約24重量パーセント〜約25重量パーセントのAl23、及び約9重量パーセント〜約10重量パーセントのMgOを含む。通常、Eガラス繊維は、約52重量パーセント〜約56重量パーセントのSiO2、約16重量パーセント〜約25重量パーセントのCaO、約12重量パーセント〜約16重量パーセントのAl23、約5重量パーセント〜約16重量パーセントのB23、最大約5重量パーセント以下のMgO、最大約2重量パーセントの酸化ナトリウム及び酸化カリウム並びに微量の酸化鉄及びフッ化物を含み、典型的な組成は、55重量パーセントのSiO2、15重量パーセントのAl23、7重量パーセントのB23、3重量パーセントのMgO、19重量パーセントのCaO及び微量の上述した物質である。
【0024】
限定ではないが、排ガス処理装置用の取付マットを準備するために使用できる生体溶解性アルカリ土類シリケート繊維の好適な例として、米国特許第6,953,757号、第6,030,910号、第6,025,288号、第5,874,375号、第5,585,312号、第5,332,699号、第5,714,421号、第7,259,118号、第7,153,796号、第6,861,381号、第5,955,389号、第5,928,075号、第5,821,183号、及び5,811,360号に記載される繊維が挙げられ、これらの特許は引用により本明細書に組み入れられる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、生体溶解性アルカリ土類シリケート繊維が、マグネシウムの酸化物とシリカの混合物からなる繊維化生成物を含むことができる。通常、これらの繊維はマグネシウムシリケート繊維と呼ばれる。一般に、マグネシウムシリケート繊維は、約60〜約90重量パーセントのシリカ、0よりも多く約35重量パーセントまでのマグネシア、及び5重量パーセント以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。いくつかの実施形態によれば、熱処理したアルカリ土類シリケート繊維が、約65〜約86重量パーセントのシリカ、約14〜約30重量パーセントのマグネシア、及び5重量パーセント以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。他の実施形態によれば、熱処理したアルカリ土類シリケート繊維が、約70〜約86重量パーセントのシリカ、約14〜約35重量パーセントのマグネシア、及び5重量パーセント以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。好適なマグネシウムシリケート繊維が、Unifrax I LLC社(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)からISOFRAXという登録商標で市販されている。一般に、市販のISOFRAX繊維は、約70〜約80重量パーセントのシリカ、約18〜約27重量パーセントのマグネシア、及び4重量パーセント以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、生体溶解性アルカリ土類シリケート繊維が、カルシウム、マグネシウムの酸化物とシリカの混合物からなる繊維化生成物を含むことができる。通常、これらの繊維はカルシアマグネシアシリカ繊維と呼ばれる。いくつかの実施形態によれば、カルシアマグネシアシリカ繊維が、約45〜約90重量パーセントのシリカ、0よりも多く約45重量パーセントまでのカルシア、0よりも多く約35重量パーセントまでのマグネシア、及び10重量パーセント以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。有用なカルシアマグネシアシリカ繊維が、Unifrax I LLC社(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)からINSULFRAXという登録商標で市販されている。一般に、INSULFRAX繊維は、約61〜約67重量パーセントのシリカ、約27〜約33重量パーセントのカルシア、及び約2〜約7重量パーセントマグネシアからなる繊維化生成物を含む。他の好適なカルシアマグネシアシリカ繊維が、Thermal Ceramic社(ジョージア州オーガスタ)からSUPERWOOL607、SUPERWOOL607 MAX、及びSUPERWOOL HTという商品名で市販されている。SUPERWOOL607繊維は、約60〜約70重量パーセントのシリカ、約25〜約35重量パーセントのカルシア、約4〜約7重量パーセントのマグネシア、及び微量のアルミナを含む。SUPERWOOL607 MAX繊維は、約60〜約70重量パーセントのシリカ、約16〜約22重量パーセントのカルシア、約12〜約19重量パーセントのマグネシア、及び微量のアルミナを含む。SUPERWOOL HT繊維は、約74重量パーセントのシリカ、約24重量パーセントのカルシア、及び微量のマグネシア、アルミナ及び酸化鉄を含む。
【0027】
排ガス処理装置用の取付マットを製造する上で有用な好適なシリカ繊維として、BelChem Fiber Materials GmbH社(ドイツ)からBELCOTEXという商標で、Hitco Carbon Composites社(カリフォルニア州ガーディナ)からREFRASILという登録商標で、及びPolotsk−Steklovolokno社(ベラルーシュ共和国)からPS−23(R)という品名で販売されている浸出ガラス繊維が挙げられる。
【0028】
BELCOTEX繊維は、標準タイプのステープルファイバープレヤーンである。これらの繊維は、約550テックスの平均繊度を有し、一般にアルミナによって改質されたケイ酸で作製される。BELCOTEX繊維は非晶質であり、一般に約94.5パーセントのシリカ、約4.5パーセントのアルミナ、0.5パーセント未満の酸化ナトリウム、及び0.5パーセント未満のその他の成分を含む。この繊維は、平均繊維直径が約9ミクロンであり、融点が1500〜1550℃の範囲である。これらの繊維は最高1100℃の温度に耐え、通常は非繊維粒子及びバインダを含まない。
【0029】
REFRASIL繊維は、BELCOTEX繊維のように、1000〜1100℃の温度範囲の用途に対して断熱性を示すシリカ含量の高い非晶質の浸出ガラス繊維である。この繊維は、直径が約6〜約13ミクロンであり、融点が約1700℃である。通常、この繊維は、浸出後に約95重量パーセントのシリカ含量を有する。アルミナは約4重量%の量で存在することができ、他の成分は1%以下の量で存在する。
【0030】
Polotsk−Steklovolokno社から市販されているRS−23(R)は、シリカ含量の高い非晶質のガラス繊維であり、少なくとも約1000℃までの抵抗性を必要とする用途に対する断熱に適している。この繊維は、繊維長が約5〜約20mmの範囲であり、繊維直径が約9ミクロンである。この繊維は、REFRASIL繊維と同様に融点が約1700℃である。
【0031】
取付マットに組み込むことができる膨張材料として、限定ではないが、未膨張バーミキュライト、イオン交換バーミキュライト、加熱処理バーミキュライト、膨張性グラファイト、ハイドロバイオタイト、水膨潤性四ケイ素フッ素マイカ、アルカリ金属シリケート、又はこれらの混合物が挙げられる。取付マットは、1よりも多くの種類の膨張材料の混合物を含むことができる。米国特許第5,384,188号に記載されるように、膨張材料は、バーミキュライト:グラファイトの相対量が約9:1〜約1:2の未膨張バーミキュライトと膨張性グラファイトの混合物を含むことができる。
【0032】
取付マットは、バインダ又は1よりも多くの種類のバインダの混合物も含む。好適なバインダとして、有機バインダ、無機バインダ、及びこれらの2種類のバインダの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、膨張性取付マットが、1又はそれ以上の有機バインダを含む。有機バインダは、固体、液体、溶液、分散液、ラテックス、乳濁液、又は同様の形として提供することができる。有機バインダは、熱可塑性又は熱硬化性バインダを含むことができ、これらは硬化処理後に、設置した取付マットから燃え尽きることができる可撓性材料である。好適な有機バインダの例として、以下に限定されるわけではないが、アクリルラテックス、(メタ)アクリルラテックス、スチレン及びブタジエンのコポリマー、ビニルピリジン、アクリロニトリル、アクリロニトリル及びスチレンのコポリマー、塩化ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニル及びエチレンのコポリマー、ポリアミド、シリコーンなどが挙げられる。他の樹脂として、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びポリビニルエステルなどの低温で可撓性の熱硬化樹脂が挙げられる。
【0033】
取付マットには、取付マットの全体重量に基づいて、0よりも多く約20重量パーセントまでの量、約2.5〜約15重量パーセントの量、約5〜約20重量パーセントの量、又は約7.5〜約10重量パーセントの量の有機バインダを含めることができる。
【0034】
取付マットは、樹脂又は液体バインダの代わりに、或いはこれに加えて高分子バインダ繊維を含むことができる。これらの高分子バインダ繊維を、耐熱性無機繊維の結合を促進する量で使用することができる。バインダ繊維の好適な例として、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、エチルビニルアセテート繊維、ナイロン繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
通常、有機バインダは、最初に繊維を結合するために使用する犠性バインダである。「犠性」という用語は、最終的に有機バインダが取付マットから燃え尽き、任意に膨張材料であり任意にクレーである無機繊維のみが、脆弱構造を金属ハウジング内に支持するための取付マットとして残ることを意味する。
【0036】
取付マットは、有機バインダに加えて無機バインダを含むこともできる。限定ではないが、好適な無機バインダ材料として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、及びこれらの混合物のコロイド分散物が挙げられる。
【0037】
取付マットは、シート様材料を形成するための当業で公知のあらゆる方法で製造することができる。例えば、手漉き又は機械漉きのいずれかの従来の製紙工程を使用して膨張シート材料を準備することができる。手すき紙成形型、長網抄紙機、又はロトフォーマ抄紙機を使用して膨張シート材料を作製することができる。
【0038】
例えば、製紙工程を使用して、無機繊維、膨張材料、及び酸化防止剤を、バインダ又はバインダとして機能できる他の繊維と混合して混合物又はスラリを形成することができる。スラリに凝集剤を添加することにより、成分のスラリを凝集することができる。凝集した混合物又はスラリを製紙機上に置いて、繊維含有紙のプライ又はシートに形成する。空気乾燥又はオーブン乾燥によりシートを乾燥させる。使用する標準的な製紙技術のより詳細な説明については米国特許第3,458,329号を参照されたく、該特許の開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0039】
或いは、スラリを真空鋳造することにより、プライ又はシートを形成することもできる。この方法によれば、透水性ウェブ上に成分のスラリを濡れたまま置く。ウェブに真空を印加してスラリから水分の大部分を除くことにより、湿潤シートを形成する。次に、湿潤プライ又は湿潤シートを、通常はオーブン内で乾燥させる。乾燥の前に、シートをローラーの組の間に通して圧縮することができる。
【0040】
他の実施形態では、乾燥空気レイヤリングなどの従来の手段によって繊維を取付マットに加工することができる。この段階のマットは、構造的完全性がほとんど無く、従来の触媒コンバータ及びディーゼルトラップ取付マットに比べて非常に厚い。従って、結果として得られたマットを当業で公知のようにドライニードル加工して、マットの密度を高めるとともに強度を上げることができる。
【0041】
乾式空気レイヤリング技術を使用する場合、代わりに含浸によってマットにバインダを添加することによりマットを処理して不連続繊維複合体を形成することができる。この技術では、従来の製紙技術に関して上述したようなマットのプリプレグを形成した後ではなく、マットを形成した後にバインダを添加する。このマット準備方法は、破断を減少させることにより、繊維長を維持する役に立つ。
【0042】
取付マットの表面には、補強コーティングが施される。いくつかの実施形態によれば、取付マットの主表面の一方に補強コーティングが施される。他の実施形態によれば、両方の主表面に補強コーティングを施すことができる。補強コーティングは、連続パターン又は不連続パターンのいずれかで施すことができる。いくつかの例示的な実施形態によれば、補強コーティングが、取付マットの一方又は両方の主表面上に連続して施される。この連続コーティングは、取付マットの表面に、取付マットの表面全体にわたって実質的に均一に施される。
【0043】
取付マットの一方又は両方の主表面に施される補強コーティングは、一般に有機材料を含む。補強コーティングの有機材料は、取付マット内に含まれる犠性有機バインダ材料とは別個のものである。いくつかの例示的な実施形態によれば、補強コーティングが有機ラテックスを含む。補強層として使用できる有機ラテックスは、アクリルラテックスを含む。限定ではないが、補強コーティングとして使用できる好適なアクリルラテックスが、Lubrizol Advanced Materials社(米国オハイオ州クリーブランド)からHYCAR26083という商品名で市販されている。
【0044】
補強コーティングは、補強コーティングを行っていない同じ取付マットよりも取付マットの耐亀裂性を高めるのに十分な量で取付マットに施される。補強コーティングは、マットの耐亀裂性を高めるのに十分な量で取付マットに施されるが、補強コーティングの存在により、取付マットの性能特性(すなわち保持圧力性能、低温摩擦、低温圧縮、など)が目立って変化したり、又はこれに影響が及んだりすることはない。アクリルラテックスを含む補強コーティングを、取付マットの乾燥重量に基づいて約0.01〜約2重量パーセントの量で取付マットに施す。限定ではなく単なる例示として、取付マットの全乾燥重量に基づいて、アクリルラテックスを取付マットに約0.25重量パーセントの量で施す。
【0045】
補強コーティングは、好適な酸化防止添加剤を含むこともできる。酸化防止材料の好適な例として、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、多機能酸化防止剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。限定ではないが、一次酸化防止剤の非限定的な例として、立体障害フェノール及び二次芳香族アミンが挙げられる。好適な立体障害フェノールは、Elikochem社(フランス国ヴィルジュスト)からWingstayという商品名で、RT Vanderbilt社(コネチカット州ノーウォーク)からAgerite Resinという商品名で、及びCiba Specialty Chemicals社(ノースカロライナ州ハイポイント)からIrganoxという商品名で市販されている。
【0046】
二次酸化防止剤の好適な例としては、パーオキサイド及びハイドロパーオキサイドを安定した非ラジカル生成物に分解する有機リン化合物、及び長期にわたる熱エージング用途に非常に有効なチオシナジストが挙げられる。多機能酸化防止剤は、1つの抗酸化化合物内で一次及び二次酸化防止剤の機能を最適に組み合わせる。いくつかの実施形態によれば、立体障害フェノール及びチオシナジストという酸化防止剤のブレンドを、排ガス処理装置の取付マットのための酸化防止材料として使用することができる。
【0047】
酸化防止材料は、一次酸化防止剤の、又は一次酸化防止剤と二次酸化防止剤の混合物の分散液又は乳濁液の形で提供することができる。好適な酸化防止剤分散液は、Akron Dispersions社(オハイオ州アクロン)からBostexという商品名で、Aquaspersions社(英国ウェストヨークシャ)からAquanoxという商品名で、Tirco Chemical社(ジョージア州ダルトン)からOctoliteという商品名で、及びGreat Lakes Chemical社(インディアナ州インディアナポリス)からLowinx、Durad及びAnoxという商品名で市販されている。
【0048】
酸化防止剤分散液の説明例として、Wingstay Lの分散液であるBostex24、及びWingstay L/DTDTDPシナジスト(チオシナジスト/二次酸化防止剤)が50%ずつのBostex362Aが挙げられる。Wingstay L(Bostex362A分散液に含まれる酸化防止剤)の熱分解温度は約300℃よりも高く、自然発火温度は約440℃である。
【0049】
特に好適な酸化防止剤は、Akron Dispersions社(オハイオ州アクロン)からBostex362Aという商品名で市販されている。いくつかの例示的な実施形態によれば、酸化防止材料が、取付マットの残留成分に添加される前に有機バインダ材料と予め錯体を形成する。
【0050】
補強コーティング材料は、コーティング検出添加剤を含むこともできる。限定ではないが、コーティング検出添加剤は紫外光検出可能色素を含む。取付マットの乾燥重量に基づいて、紫外光検出可能色素を約0.01〜約0.5重量パーセントの量で補強コーティング組成物に含めることができる。いくつかの例示的な実施形態では、紫外光検出可能色素が、前記取付マットの総重量に基づいて約0.03重量パーセントの量で存在する。
【0051】
取付マットの1又はそれ以上の主表面に、刷毛塗り、浸漬、液浸、又は噴射のうちの1つによって可撓性補強コーティングを施すことができる。優先又は限定するわけではないが、取付マットの1又はそれ以上の主表面に噴射コーティング処理によって可撓性補強コーティングを施すことができる。噴射コーティング処理は、複数の噴射ノズルを使用して、取付マットの(単複の)表面全体に薄いけれども均一な補強コーティングを提供するものである。噴射コーティング処理では、取付マットの表面にアクリルラテックスなどの非常に薄い補強コーティングの塗膜を施すことができる。補強コーティングの層は、取付マットの断熱性、保持圧力性能、低温圧縮性能、及び低温摩擦性能を目立って変化させず、又はこれらを悪化させない量で施される。しかしながら、補強コーティングは、取付マットに実質的な耐亀裂性を与えるようなレベルで施される。従って、総バインダ含有量、又は取付マットの厚みは、いずれも実質的に増加しない。
【0052】
取付マットは、1又はそれ以上の層を含むことができる。取付マットは、1つの非膨張層又は1つの膨張層を含むことができる。或いは、取付マットは、1つよりも多くの非膨張層又は1つよりも多くの膨張層を含む複数の層を含むことができる。また、取付マットは、少なくとも1つの非膨張層と少なくとも1つの膨張層との組み合わせを含む複数の層を含むこともできる。取付マットのさらなる実施形態は、少なくとも2つの非膨張層間に挟まれた少なくとも1つの膨張層を含む複数の層を含むことができる。取付マットのさらなる実施形態は、少なくとも2つの膨張層間に挟まれた少なくとも1つの非膨張層を含む複数の層を含むことができる。複数の層で構成される取付マットの場合、取付マットの層の1つのみの主表面の1又はそれ以上に補強コーティング層を施すことができる。或いは、取付マット複合体の1つよりも多くの層の主表面の1又はそれ以上に補強コーティング層を施すこともできる。いくつかの実施形態によれば、複合取付マットの層の各々の主表面の1又はそれ以上に補強コーティング層を施すことができる。
【0053】
コーティングした取付マットをダイスタンピングなどによって切断し、再現可能な公差を有する正確な形状及びサイズの取付マットを形成することができる。取付マット20は、ニードリングなどによって緻密化されると好適な取扱特性を示し、すなわち取り扱いが容易になるとともに、他の多くの繊維ブランケット又はマットのように人の手で砕けるほど脆くはなくなる。取付マットを、脆弱構造18又は同様の脆弱構造の周囲に亀裂を生じずに容易かつ柔軟に固定又は巻き付け、その後触媒コンバータハウジング12内に配置することができる。一般的には、取付マットを巻いた脆弱構造をハウジング内に挿入することができ、或いは取付マットを巻いた脆弱構造の周囲にハウジングを構築又は別様に作製することができる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、補強コーティングを施した取付マットによる処理の効果をさらに例示するためにのみ示すものである。決してこの説明例が、取付マット、取付マットを組み込んだ排ガス処理装置、或いは取付マット又は排ガス処理装置を作製する方法を限定すると解釈すべきではない。
【0055】
95%の水、4.5%のHYCAR26083アクリルラテックス、及び0.5%のBOSTEX362A酸化防止剤を含むサンプル補強コーティングを準備した。耐亀裂性を実質的に高めるために、この補強コーティング(マット重量の0.25%)をマット上に噴射コーティングした。コーティングした量をUV検出器を使用して測定できるように、アクリルラテックス中には0.03%レベルのUV色素を含めた。試験に使用したマットは、Unifrax I LLC社(米国ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)からISOMAT(登録商標)AV5という登録商標で市販されている膨張排ガス処理装置用取付マットのサンプルであった。このサンプルマットは、生体溶解性繊維、バーミキュライト及び犠性有機バインダで構成され、約2900g/m2の坪量を有する。
【0056】
評価では、最大250Nの力を加えることができる負荷を使用した。以下、コーティングした取付マット及びコーティングしていない取付マットに亀裂が入るのに要した(ニュートンでの)力を表Iに示す。
表I

【0057】
上記表Iに示すように、コーティングしていないマットに亀裂が入った(ニュートンでの)力は2〜17Nであった。しかしながら、取付マットにアクリルラテックスベースの補強コーティングを施した場合、この取付マットに亀裂が入るのに要した力の量は少なくとも250Nであった。従って、補強コーティング層は、同一組成のコーティングしていないマットと比較して実質的な耐亀裂性を与えたことになる。
【0058】
上部に補強コーティングを施した膨張取付マットの保持圧力、低温圧縮及び低温摩擦の性能を評価し、このようなコーティングを施していない取付マットと比較した。
【0059】
取付マットの保持圧力性能を評価するために、補強コーティングを施した膨張取付マットと施していない膨張取付マットに機械的繰返し処理を行った。試験マットを2つの加熱したブロック間に設置した。表IIに示すように、2つのブロックは異なる温度に加熱している。上側の加熱ブロックを、最初の間隙幅の1%又は3%だけ間隙を開くように動かし、次に所定の期間にわたって閉じ、ここで間隙を開いた(1「サイクル」)。1000サイクル後、取付マットによって加わる残留最小保持圧力を計算した。機械的繰返し試験の結果を以下の表IIに示す。
表II

【0060】
このように、上部に耐亀裂性コーティングを施した取付マットは、試験時に50kPaを越えるPminを達成する。上部に補強コーティングを施した取付マットの保持圧力性能は、補強コーティングを施していない取付マットの性能と実質的に同じであった。これらの結果は、補強コーティングを含めることにより、保持圧力性能を犠牲にすることなく耐亀裂性が向上することを示している。
【0061】
取付マットの保持圧力性能のもう1つの優れた指標に押し出し力がある。押し出し力は、排ガス処理装置の外側ハウジングから脆弱な触媒担体構造又は基材(すなわちモノリス)を押し出すのに必要な力の量の測定値である。試験を行うために、脆弱な触媒担体構造の周囲に取付マットを配置し、脆弱な触媒担体構造と外側スチールハウジングの間の間隙内に取付マットを配置した状態で脆弱な触媒担体構造をハウジング内に配置することにより、排ガス処理装置を組み立てる。この試験では、一般的に行われているターニケット装着と呼ばれる被覆技術を使用して脆弱な触媒担体構造に取付マットを巻き付け、外側スチールハウジング内に設置した。この試験に使用したハウジングは、ステンレススチールSS409ハウジングであった。その後、インストロン又はMTSなどの機械試験装置を使用して、脆弱な触媒担体構造をハウジングから押し出した。脆弱な触媒担体構造を外側スチールハウジングから押し出すのに要した力の量を記録した。この試験は、排ガス処理装置の内部シェル又はハウジング側を補強コーティングで処理した取付マット、脆弱構造の基材側を補強コーティングで処理した取付マット、及び補強コーティングで処理していない取付マットに対して行った。この試験の結果を以下のIIIに示す。
表III

【0062】
上記表IIIに示すように、内部シェル側又は基材側を補強コーティングでコーティングした取付マットは、補強コーティングでコーティングしなかった取付マットの押し出し力値に匹敵する押し出し力値を示した。従って、保持圧力性能に関して、補強コーティングで処理した取付マットは、補強コーティングで処理しなかった取付マットと同様の値を有する。これらの結果は、補強コーティングを含めることにより、保持圧力性能を犠牲にすることなく耐亀裂性が向上することをさらに示している。
【0063】
取付マットの低温圧縮性能を評価するために、補強コーティングを施した膨張取付マットと補強コーティングを施していない膨張取付マットを2インチ×2インチのサンプルに切断した。サンプルの坪量を測定して記録した。2つのプレート間にマットのサンプルを置いて室温で保持した。試験中のマットの目標間隙嵩密度に基づいて、目標間隙を計算した。試験装置の上側プレートを、目標間隙に達するまで25.4mm/分で下げた。目標間隙に達するとすぐにピーク圧力を測定した。マットを目標間隙で300秒保持して、残留圧力を測定した。
【0064】
低温圧縮試験の結果を以下の表IVに示す。
表IV

【0065】
表IVに示すように、上部に補強コーティングを施した取付マットの低温圧力性能は、補強コーティングを施していない取付マットの低温圧力性能と非常に類似していた。これらの結果は、補強コーティングを含めることにより、低温圧力性能を犠牲にすることなく耐亀裂性が向上することを示している。
【0066】
取付マットの低温摩擦性能を評価するために、補強コーティングを施した膨張取付マットと補強コーティングを施していない膨張取付マットを2インチ×2インチのサンプルに切断した。マットサンプルの重量を測定し記録した。一対のマットサンプルを、これらの間に配置したステンレススチールプレート片と位置合わせし、このアセンブリを万力の中に置いた。目標間隙嵩密度に達するのに十分な力で万力を閉じ、ピーク負荷を記録した。5分後、残留負荷を測定して記録した。ステンレススチールプレートをマットサンプル間に押し下げ、この変位中に加わった力を記録した。低温摩擦試験の結果を以下の表Vに示す。
表V

【0067】
表Vに示すように、上部に補強コーティングを施した取付マットの低温摩擦性能は、補強コーティングを施していない取付マットの低温摩擦性能と非常に類似していた。これらの結果は、補強コーティングを含めることにより、低温摩擦性能を犠牲にすることなく耐亀裂性が向上することを示している。
【0068】
表I〜表Vに示す結果から、取付マットの表面上に補強コーティングを含めることにより、取付マットの性能特性に実質的な影響又は変更を与えることなく非常に可撓性の高い取付マットが実現し、取付マットの耐亀裂性が向上する。
【0069】
無機繊維取付マットの表面上の補強コーティングの分布を評価した。約15インチの長さ×約60インチの幅という寸法のトレイを、複数の実質的に等しいサイズの区画に分割した。Unifrax I LLC社(米国ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)によりCC−MAX8HPという商品名で市販されている有機バインダを含まない無機繊維を含む市販の排ガス処理装置用取付マットの約2インチ×2インチの断片を計量し、トレイの個々の区画内に置いた。このトレイを、コーティング機の、通常の量産中に取付マットが占めると思われる位置に置いた。コーティングシステムを作動し、トレイ内に配置した取付マット断片の表面に、有機ラテックスを含む補強コーティングを既知の期間にわたって施した。取付マット断片に施した補強ラテックスコーティングの量及び分布を測定した。補強ラテックスコーティングの量を、図2に添加LOIとして報告し、トレイ内の取付マット断片全てにわたる補強ラテックスコーティングの分布を平均添加LOIとして報告する。
【0070】
取付マットはダイス切断することができ、また断面が薄く、取り扱いが容易で、柔軟な形の弾性支持体として使用して、必要に応じて触媒担体構造全体に亀裂を生じずに巻き付けることができる。或いは、取付マットを、触媒担体構造の少なくとも一部の外周又は周囲全体のまわりに完全に巻き付けることもできる。取付マットを部分的に巻き付け、必要に応じてガスの迂回を防ぐために、一部の従来のコンバータ装置に現在使用されているようなエンドシールを含めることもできる。
【0071】
上述した取付マットは、とりわけオートバイ及びその他の小型エンジン機械のための従来の自動車用触媒コンバータ、自動車用プレコンバータ、並びに高温スペーサ、ガスケット、さらには次世代自動車のアンダーボディ用触媒コンバータシステムなどの様々な用途でも有用である。
【0072】
上述した取付マットを、化学工業で使用される、排気又は排出煙突内に配置された、保護的に取り付ける必要がある脆弱なハニカム型構造を含む触媒コンバータで使用することもできる。
【0073】
様々な例示的な実施形態に関連して取付マット及び排ガス処理装置について説明したが、説明した実施形態と同様の他の実施形態を使用し、又はこれらの実施形態に修正及び追加を行って、本明細書に開示した同じ機能を本発明から逸脱することなく実施することができる。様々な実施形態を組み合わせて所望の特性を提供することができるので、上述した実施形態が必ずしも選択肢ではない。従って、取付マット及び排ガス処理装置をいずれかの1つの実施形態に限定すべきではなく、これらの幅及び範囲は、列挙する添付の特許請求の範囲に基づいて解釈すべきである。
【符号の説明】
【0074】
10 排ガス処理装置
12 ハウジング
14 入口
16 フランジ
18 触媒担体構造
20 取付マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス処理装置のための実質的に耐亀裂性の取付マットであって、
対向する主表面を有する少なくとも1つの層と、
前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強層と、
を含み、前記補強層が前記取付マットの性能特性に実質的に影響を与えない、
ことを特徴とする取付マット。
【請求項2】
前記層が無機繊維を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項3】
前記無機繊維が、高アルミナ多結晶繊維、セラミック繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、生体溶解性繊維、クォーツ繊維、シリカ繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項2に記載の取付マット。
【請求項4】
前記高アルミナ多結晶繊維が、約72〜約100重量パーセントのアルミナ及び約0〜約28重量パーセントのシリカからなる繊維化生成物を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の取付マット。
【請求項5】
前記セラミック繊維が、約45〜約72重量パーセントのアルミナ及び約28〜約55重量パーセントのシリカからなる繊維化生成物を含むアルミノシリケート繊維を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の取付マット。
【請求項6】
前記生体溶解性繊維が、約65〜約86重量パーセントのシリカと、約14〜約35重量パーセントのマグネシアと、約5重量パーセント以下の不純物とからなる繊維化生成物を含むマグネシアシリカ繊維を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の取付マット。
【請求項7】
前記生体溶解性繊維が、約45〜約90重量パーセントのシリカと、0よりも多く約45重量パーセントまでのカルシアと、0よりも多く約35重量パーセントまでのマグネシアとからなる繊維化生成物を含むカルシアマグネシアシリカ繊維を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の取付マット。
【請求項8】
前記層が、未膨張バーミキュライト、イオン交換バーミキュライト、熱処理バーミキュライト、膨張性グラファイト、ハイドロバイオタイト、水膨潤性四ケイ素フッ素マイカ、アルカリ金属シリケート、又はこれらの混合物から選択された膨張材料を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項9】
前記膨張材料が、未膨張バーミキュライトを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の取付マット。
【請求項10】
前記補強コーティングが、有機ラテックスを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項11】
前記有機ラテックスが、アクリルラテックスを含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の取付マット。
【請求項12】
前記アクリルラテックスが、前記取付マットの乾燥重量に基づいて、前記取付マットに約0.01〜約2重量パーセントの量で施される、
ことを特徴とする請求項11に記載の取付マット。
【請求項13】
前記アクリルラテックスが、前記取付マットの総乾燥重量に基づいて、前記取付マットに約0.025重量パーセントの量で施される、
ことを特徴とする請求項11に記載の取付マット。
【請求項14】
前記補強コーティングが、前記取付マットの少なくとも一方の主表面に連続コーティングとして施される、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項15】
前記連続コーティングが、前記取付マットの前記主表面全体にわたって実質的に均一である、
ことを特徴とする請求項14に記載の取付マット。
【請求項16】
前記コーティングが、前記取付マットの重量に基づいて、約0.01〜約0.5重量パーセントの量の紫外光検出可能色素を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項17】
前記補強コーティングが、酸化防止剤をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項18】
前記酸化防止剤が、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、多機能酸化防止剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項17に記載の取付マット。
【請求項19】
前記層が、少なくとも2つの層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付マット。
【請求項20】
前記層が、(a)少なくとも1つの非膨張層と少なくとも1つの膨張層、又は(b)少なくとも2つの膨張層、又は(c)少なくとも2つの非膨張層、又は(d)2つの非膨張層間に挟まれた膨張層、又は(e)2つの膨張層間に挟まれた非膨張層を含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の取付マット。
【請求項21】
ハウジングと、
前記ハウジング内に取り付けられた脆弱な触媒担体構造と、
前記ハウジングと前記脆弱な触媒担体構造の間の間隙内に配置された、請求項1から請求項20の1項に記載の取付マットと、
を含むことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項22】
前記装置が、触媒コンバータ又はディーゼル微粒子トラップを含む、
ことを特徴とする請求項21に記載の排ガス処理装置。
【請求項23】
脆弱な触媒担体構造を排ガス処理装置のハウジング内に保持するための、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の取付マットを作製する方法であって、
対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層を提供又は準備するステップと、
前記層の前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に可撓性補強層を施すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記可撓性補強コーティングが、刷毛塗り、浸漬、液浸、又は噴射のうちの1つによって前記取付マットに施される、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
排ガスを処理するための装置を作製する方法であって、
排ガスを処理するための脆弱な触媒担体構造の一部の周囲に請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の取付マットを巻き付けるステップと、
前記巻かれた脆弱な触媒担体構造をハウジング内に配置することにより、前記取付マットが前記脆弱構造をハウジング内に弾性的に保持するようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
排ガス処理装置のためのエンドコーンであって、
外側金属コーンと、
内側金属コーンと、
前記外側金属エンドコーンと内側金属エンドコーンの間に配置されたコーン絶縁体と、
を含み、前記コーン絶縁体が、対向する主表面を有する膨張層、非膨張層、又はハイブリッド層と、前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強層とを含み、前記補強層が前記取付マットの性能特性に実質的に影響を与えない、
ことを特徴とする排ガス処理装置のためのエンドコーン。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524206(P2012−524206A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505893(P2012−505893)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/001149
【国際公開番号】WO2010/120380
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(500421462)ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】