説明

排ガス浄化用触媒

【課題】浄化性能に優れ、かつ、リーン雰囲気で使用した場合であっても活性低下が生じ難い排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】ここに開示される排ガス浄化用触媒1は、アルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物20と、ロジウムと、を備える排ガス浄化用触媒であって、空燃比(A/F)が15.1であって少なくとも1000℃以上1200℃以下の温度域にある排ガス中において、上記担体上に粒子径1nm以上のロジウム粒子10が存在しない状態を形成し、空燃比(A/F)が14.1であって少なくとも800℃以上1000℃未満の温度域にある排ガス中において、上記担体上に平均粒子径1nm以上のロジウム粒子10が存在する状態を形成し、上記ロジウム粒子10が存在しない状態と上記ロジウム粒子10が存在する状態との間で、空燃比に応じて上記担体上のロジウム粒子量が可逆的に変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、ロジウムを触媒金属とする排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関から排出される排ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を効率よく浄化する目的に、いわゆる三元触媒が広く用いられている。三元触媒の一般的な構成は、高耐熱性の多孔質担体上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、又はロジウム(Rh)などの貴金属触媒から選ばれる1種または複数種の貴金属粒子を担持させたものである。上記貴金属触媒の中でRhは、高いNOx還元活性を有することから、NOx浄化の観点より欠かすことができない貴金属触媒である。
一般に、貴金属粒子を担持させた排ガス浄化用触媒は、耐久使用後に使用前と比較して浄化性能が低下する傾向がある。これは、触媒の高温使用時に貴金属粒子が粒成長(シンタリング)する、又は貴金属粒子が担体内部に固溶するなどにより、担体表面に担持させた貴金属粒子の比表面積が減少することが一因である。そこで従来、三元触媒の浄化性能を向上させるため、貴金属粒子の粒成長抑制、貴金属粒子の多孔質担体への固溶の抑制、酸素吸蔵放出(OSC)材料の併用などの観点から開発が行われてきた。
例えば特許文献1には、Rhの担体への固溶抑制の目的で、セリア系酸化物の表面にセリアより塩基度が高い塩基性酸化物からなる担持部を形成し、担持部にRhを担持させた排ガス浄化用触媒が記載されている。また、特許文献2には、貴金属触媒のシンタリングを抑制する目的で、遷移金属と卑金属とを含む複合酸化物と、粒子径が1〜10nmである貴金属からなる触媒及び該触媒を逆ミセル法により製造する方法について記載されている。さらに特許文献3には、貴金属粒子のシンタリング抑制の目的で、粒径1〜20nmの貴金属成分粒子と該貴金属成分粒子を被覆している助触媒成分被膜とからなる排ガス浄化用三元触媒について記載されている。
【0003】
また、特許文献4には、アルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物とPtとの固溶体を一部に含有する排ガス浄化用触媒とその製造方法が記載されている。具体的には、アルカリ土類金属を含んだ酸化物(好ましくは酸化マグネシウム)にPtを担持させた粒子と、アルミニウム化合物と、を混合して焼成することにより、あらかじめPtの一部を上記複合酸化物中に固溶させたことを特徴とする排ガス浄化用触媒である。特許文献4の記載によると、上記排ガス浄化用触媒は、雰囲気中の酸素濃度に応じて可逆的に状態変化を起こすことにより、高温かつ酸素濃度が高い雰囲気(リーン雰囲気)中で使用した場合においても触媒活性の低下が抑制されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−58006号公報
【特許文献2】特開2005−270738号公報
【特許文献3】特開2006−51431号公報
【特許文献4】特許第4435750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の排ガス浄化用触媒は、耐久後の浄化性能に関し十分なものとはいえない。特にRhを触媒金属として採用した排ガス浄化用触媒について、上述したような従来の触媒構成(例えば特許文献1〜3に記載の排ガス浄化用触媒)では、触媒の高温使用時におけるRh粒子の粒成長(シンタリング)を十分に防止することができなかった。これは、基本的にRh粒子の粒成長が不可逆的に進行するためである。
また、上述した特許文献4に記載された排ガス浄化用触媒では、あらかじめ貴金属原子であるPtを複合酸化物に固溶させているため、Ptは該複合酸化物の表層から内部にかけて均一に存在している。しかしながら、内部に固溶している貴金属原子を析出させるためには十分な還元処理が必要であり、実際のエンジンの使用環境下においては、排ガスを長時間において還元雰囲気(即ちリッチ雰囲気)で維持することは、CO、又はHCの排出量増加や、燃費低下を引き起こすため困難である。また、還元雰囲気下においても析出せずに内部に残留する貴金属原子は触媒反応に関与することができないため、触媒のコストが高くなるという問題があった。
本発明は、かかる課題を解決すべく創出されたものであり、Rh粒子の粒成長を防止することにより、浄化性能に優れ、かつ、リーン雰囲気で使用した場合であっても活性低下が生じ難い排ガス浄化用触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、様々な角度から検討を加え、上記目的を実現することのできる本発明を創出するに至った。
即ち、ここに開示される排ガス浄化用触媒は、担体と該担体に担持された触媒金属とを備える。上記担体としてアルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物を有しており、上記触媒金属としてロジウムを有している。
またここに開示される排ガス浄化用触媒は、空燃比(A/F)が15.1であって少なくとも1000℃以上1200℃以下の温度域にある排ガス中において、上記担体上にTEM観察に基づく粒子径1nm以上のロジウム粒子が存在しない状態を形成し、また、空燃比(A/F)が14.1であって少なくとも800℃以上1000℃未満の温度域にある排ガス中において、上記担体上にTEM観察に基づく平均粒子径1nm以上のロジウム粒子が存在する状態を形成する。さらに、上記ロジウム粒子が存在しない状態と上記ロジウム粒子が存在する状態との間で、空燃比に応じて上記担体上のロジウム粒子量が可逆的に変化することを特徴とする。
【0007】
かかる構成の排ガス浄化用触媒によると、排ガスの空燃比が15.1(即ちリーン雰囲気)であって、温度が少なくとも1000℃以上1200℃以下である場合において、触媒金属であるロジウム(Rh)のほとんど(典型的には上記排ガス浄化用触媒中の全Rh原子量の80mol%以上)は上記担体に固溶する。その結果、担体上に粒子径1nm以上のRh粒子が存在しない状態が形成される。また一方で、排ガスの空燃比が14.1(即ちリッチ雰囲気)であって、温度が少なくとも800℃以上1000℃未満である場合において、Rhの大部分(典型的には排ガス浄化用触媒中の全Rh原子量の50mol%以上)は上記担体上に析出する。この結果、担体上に粒子径1nm以上のRh粒子が存在する状態が形成される。
【0008】
さらに上記Rh粒子は排ガス中の酸素濃度に応じて、上述した担体への固溶および析出を可逆的に繰り返すことができる。ここで、担体へ固溶したRh粒子が次に担体上に析出する際、粒子径が典型的には1nm以上15nm以下程度(好ましくは1nm以上5nm以下)の比較的小さいRh粒子が析出する傾向がある。よって、たとえ上記担体上に担持された上記Rh粒子が、触媒の使用過程において例えば20〜50nm程度に粒子径が増大した場合であっても、上述する固溶/析出の繰り返し過程において粒子径が十分に小さい(例えば1nm以上5nm以下程度の)Rh粒子へと再生され得る。
【0009】
このような構成によると、上記排ガス浄化用触媒は酸素濃度が高い雰囲気(リーン雰囲気)中で使用された場合であっても、触媒金属であるRh粒子の粒成長が抑制され、耐久後の触媒活性低下が抑制される。よってここに開示される排ガス浄化用触媒は、リーン雰囲気の頻度が多いハイブリッド車に用いられると触媒活性低下抑制に関して高い効果を発揮し得る。また、上記排ガス浄化用触媒は、リッチ雰囲気の頻度が少ないディーゼル車に用いられると触媒活性低下抑制に関して高い効果を発揮し得る。
【0010】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記担体に担持されたRh粒子の平均粒子径(即ち、担体上に析出した状態での平均粒子径をいう。)が5nm以上15nm以下(好ましくは6nm以上11nm以下)であることを特徴とする。ここで、本明細書においてRh粒子に関する「平均粒子径」とはTEM(透過型電子顕微鏡)観察に基づいて測定された粒子径の平均値を意味する。
かかる平均粒子径を有するRh粒子が上記担体上に担持された排ガス浄化用触媒は、排ガス中の酸素濃度を制御することによりRh粒子が担体へ固溶したあと再び析出する際、触媒使用初期の粒子径と同等程度、もしくはそれ以下の粒子径を有するRh粒子が析出する傾向がある。このため、長期間の触媒使用においてもRh粒子の粒径増大が抑制され、かかる排ガス浄化用触媒は浄化性能が向上し、かつ長寿命化し得る。
【0011】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記担体における上記複合酸化物の結晶構造がスピネル構造であることを特徴とする。
かかるスピネル構造を有する複合酸化物を上記担体に用いると、触媒金属であるRh粒子が好適に該複合酸化物に固溶することができ、固溶状態が安定化される。よって、かかる複合酸化物を用いるとRh粒子の粒成長が一層抑制され、触媒活性の低下を抑制することができる。
【0012】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記担体における上記複合酸化物がマグネシウムとアルミニウムとの複合酸化物であることを特徴とする。
かかる複合酸化物は熱安定性が高いため、耐久後であっても表面積低下が小さく、触媒活性の低下を起こしにくい。また触媒金属であるRh粒子は、塩基性が高い担体中に固溶すると安定化される傾向があるため、塩基性が高いマグネシウム系複合酸化物を担体に用いると、Rh粒子の粒成長がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ここに開示される排ガス浄化用触媒の一態様、及び該排ガス浄化用触媒の状態変化について模式的に説明した図である。
【図2】例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒におけるRh比表面積(縦軸:m/g)と、加熱温度(横軸:℃)との関係を示す図である。
【図3】例1〜5に係る排ガス浄化用触媒における初期及び耐久・再生処理後のRh比表面積(縦軸:m/g)と、複合酸化物に担持させたRh粒子の平均粒子径(横軸:nm)との関係を示す図である。
【図4】初期における例1に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図5】促進耐久処理後における例1に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図6】再生処理後における例1に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図7】初期における例3に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図8】促進耐久処理後における例3に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図9】再生処理後における例3に係る排ガス浄化用触媒のTEM写真である。
【図10】総炭化水素(T.HC)の50%浄化温度(縦軸:℃)と、複合酸化物に担持させたRh粒子の平均粒子径(横軸:nm)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、排ガス浄化用触媒の自動車における配置に関するような一般的事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
図1に、ここに開示される排ガス浄化用触媒の一態様、及び該排ガス浄化用触媒の状態変化について模式的に示した図を示す。即ち、ここに開示される排ガス浄化用触媒1は、担体としてアルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物20と、触媒金属としてRh粒子10を備えている。
【0016】
まず、触媒使用初期における排ガス浄化用触媒1の状態について説明する。使用初期の排ガス浄化用触媒1では、担体である上記複合酸化物20上にRh粒子10が担持されている。この状態は後に説明する「状態B」に近似した状態である。
次に、排ガス浄化用触媒1が比較的高温の温度域(例えば1000℃以上1200℃以下)の酸素過剰雰囲気(リーン雰囲気;典型的には空燃比が15.1付近。以下同じ)に十分に曝された場合における排ガス浄化用触媒1の状態について説明する。上記リーン雰囲気に曝された排ガス浄化用触媒1では、複合酸化物20の表面に担持されていたRh粒子10のほとんど(典型的には排ガス浄化用触媒1中の全Rh原子量の80mol%以上)が、上記複合酸化物20に固溶し、固溶Rh粒子30へと変化する。ここで固溶Rh粒子30とは、上記複合酸化物20に固溶しているRh成分であり、複合酸化物20内に存在するRh原子(又は酸化物)、又はRhクラスタを包含する概念である。上記固溶Rh粒子30が生成する結果、複合酸化物20の表面からTEM観察に基づく粒子径1nm以上のRh粒子10は消失する。このときの排ガス浄化用触媒1の状態を本明細書では「状態A」と呼ぶ。
【0017】
続いて排ガス浄化用触媒1が比較的高温の温度域(例えば800℃以上1000℃未満)の酸素不足雰囲気(リッチ雰囲気;典型的には空燃比が14.1付近。以下同じ)に十分に曝された場合における排ガス浄化用触媒1の状態について説明する。上記リッチ雰囲気に曝された排ガス浄化用触媒1では、複合酸化物20に固溶していた固溶Rh粒子30の大部分(典型的には排ガス浄化用触媒1中の全Rh原子量の50mol%以上)が、十分に粒子径が小さい(例えば、TEM観察に基づく平均粒子径が1nm以上30nm以下、好ましくは1nm以上15nm以下、より好ましくは5nm以下、さらには4nm以下、さらには3nm以下の)Rh粒子10となって、再び複合酸化物20の表面に析出する。このときの排ガス浄化用触媒1の状態を本明細書では「状態B」と呼ぶ。
【0018】
その後、排ガス浄化用触媒1の使用過程において、排ガスの雰囲気が上記リーン雰囲気及び上記リッチ雰囲気の間を繰り返し変動した場合、排ガス浄化用触媒1は上記状態Aと上記状態Bの間を可逆的に変化することができる。即ち、一旦、上記複合酸化物20に固溶した固溶Rh粒子30が、排ガス中の酸素濃度の変化に起因して、再び上記複合酸化物20の表面にRh粒子10として析出する(状態A→状態B)、あるいは、上記複合酸化物20の表面に担持されたRh粒子10が、排ガス中の酸素濃度の変化に起因して、担体である上記複合酸化物20に固溶し、固溶Rh粒子30となる(状態B→状態A)ことができ、担体上のRh粒子量についても可逆的に変化する。
よって、主にリッチ雰囲気下における使用により徐々に粒成長が進行してきたRh粒子10は、一旦、リーン雰囲気下に置かれることにより複合酸化物20に固溶し、さらに再び排ガスがリッチ雰囲気となることにより、小さな粒子径を有するRh粒子10が再析出する。排ガス浄化用触媒1は上記状態Aと上記状態Bの間を往復することにより、複合酸化物20に担持されたRh粒子10の粒成長が抑制され、耐久後であっても触媒の浄化性能低下が抑制される。
【0019】
ここで、排ガスが酸素過剰雰囲気(リーン雰囲気)である場合、上述したとおり、上記排ガス浄化用触媒1の状態は状態Aに近似する。即ち、ほとんど(典型的には排ガス浄化用触媒1中の全Rh原子量の80mol%以上)のRh粒子10は複合酸化物20に固溶し、固溶Rh粒子30となる。上記複合酸化物20に固溶した固溶Rh粒子30は上記複合酸化物の表層付近(典型的には複合酸化物表面から0.5〜10nm程度)において典型的には原子状態、あるいは酸化物状態で分散している。このためリーン雰囲気下で上記排ガス浄化用触媒1を使用した場合、担体上に担持されているRh粒子量が少ないため、該触媒からのRh蒸発が低減する。
また上記の場合、複合酸化物20に固溶した固溶Rh粒子30は排ガスとの接触性が低下するため、リーン雰囲気下における上記排ガス浄化用触媒の浄化性能は、リッチ雰囲気下における浄化性能と比較し低下する傾向がある。しかしながら一般的に、リーン雰囲気では排ガス中の有害成分(例えば、NOx、CO、HCなど)の濃度は比較的低く、リーン雰囲気下における排ガス浄化性能についてはあまり重要視しなくてもよい。
【0020】
一方、排ガスが酸素不足雰囲気(リッチ雰囲気)になった場合、上記排ガス浄化用触媒1の状態は状態Bに近似する。即ち、大部分(典型的には排ガス浄化用触媒1中の全Rh原子量の50mol%以上)のRh粒子10が複合酸化物20上に析出する。このときの析出したRh粒子10の粒子径は十分に小さく(例えば1〜30nm程度)、一部のRh粒子10は初期に複合酸化物に担持されていたRh粒子10と同等の、もしくはそれよりも小さい粒子径を持つ。上記Rh粒子10は複合酸化物20の表面で高分散な状態で存在するため、状態Bを呈する排ガス浄化用触媒1は高い触媒活性を示す。
一般的に排ガスがリッチ雰囲気である場合、排ガス中の有害成分(例えば、NOx、CO、HCなど)の濃度は比較的高いため、リッチ雰囲気下で浄化性能が高い本発明に係る排ガス浄化用触媒1は効果的に浄化性能を発揮することができ非常に有用である。また、リッチ雰囲気下はNOxがHC、COなどの還元ガスにより還元され易い環境であるため、リッチ雰囲気下においてNOx還元活性が高いRh粒子10が高分散している本発明に係る排ガス浄化用触媒1は、特に効率よくNOxを浄化することができる。
【0021】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1を構成する上記複合酸化物20は、アルカリ土類金属とアルミニウムとを含有する。上記複合酸化物20を構成するアルカリ土類金属としては高耐熱性、高比表面積、及びRh粒子10の固溶し易さの観点からマグネシウムが好適に用いられる。
上記複合酸化物20は、触媒金属であるRh粒子10を高分散させるため、比表面積の大きい粉末状のものが好適に用いられる。上記複合酸化物20の平均粒子径は5nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上250nm以下がより好ましい。ここで本明細書における複合酸化物20に関する「平均粒子径」とはレーザ回折・散乱法により求めた積算値50%での値をいう。また、上記複合酸化物20のBET比表面積(BET法により求められた比表面積、以下同じ。)は30〜700m/gが好ましく、50〜300m/gがより好ましい。
上記複合酸化物20の粒子径が500nmよりも大きすぎる、またはBET比表面積が30m/gより小さすぎる場合は、触媒種であるRh粒子10の分散性が低下する傾向があり、触媒の浄化性能が低下しがちであるため好ましくない。また、上記複合酸化物20の粒子径が5nmよりも小さすぎる、またはBET比表面積が700m/gより大きすぎる場合は、上記複合酸化物20自体の耐熱性が低下する傾向があり好ましくない。
【0022】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1に用いられる上記複合酸化物20の作製法としては、特に制限されることなく、例えば、共沈法、ゾルゲル法、水熱合成法などを用いることができる。典型的な共沈法による作製法では、例えば、アルカリ土類金属元素、及びアルミニウム、の塩を所定の化学量論比で含む混合水溶液を調製し、該混合水溶液に中和剤を徐々に加えることにより、共沈物を得る。得られた共沈物を乾燥後、例えば500〜1000℃の加熱温度で焼成することにより上記複合酸化物20が得られる。
上記アルカリ土類金属元素、及びアルミニウム、の塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、ケイ酸塩などの無機塩や、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。
上記中和剤としては、例えば、アンモニアや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどの無機塩基を用いることができる。また、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基を用いることもできる。
【0023】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1に用いられる上記複合酸化物20の結晶構造は、スピネル構造であることが好ましい。スピネル構造を有する複合酸化物20を担体として用いると、Rh粒子10が該複合酸化物20に固溶した状態で安定化され易い。
アルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物であって、スピネル構造を有する酸化物は、下記一般式(1)で表される。
MAl (1)
上記一般式(1)において、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の元素を示している。これらの元素は単独でもよく、また二種類以上を組み合わせて用いることもできる。上記一般式(1)において、Mは、好ましくはマグネシウム(Mg)である。Mがマグネシウムである上記一般式(1)で示される上記複合酸化物は、耐熱性が高く、高比表面積のものが得やすい。また、このような複合酸化物は塩基性が高く、該複合酸化物にRh粒子10が固溶した場合、その固溶状態が安定化されるため好適である。
【0024】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1に用いられるRh粒子10は、排ガスとの接触面積を高める観点から十分に小さい粒子径を有することが好ましい。典型的には、Rh粒子10の平均粒子径は1nm以上30nm以下程度が好ましいが、触媒の耐久後の浄化性能向上の観点から5nm以上15nm以下であることがより好ましく、6nm以上11nm以下であることがさらに好ましい。
上記の粒子径範囲を有するRh粒子10を調製する方法としては、コロイド法、逆ミセル法、沈殿法、共沈法等があり特に制限されないが、粒子径を制御し易い観点からコロイド法が好ましく用いられる。典型的なコロイド法では、適当な溶媒に貴金属塩であるロジウム塩と有機分子を投入して撹拌し、分散媒中にロジウムイオンと有機分子とが存在する混合溶液を調製する。その後、該混合溶液を加熱還流する、又は還元剤を加えることによりロジウムイオンを還元し、Rh粒子の周囲に有機分子が配位したRhコロイドの分散液を調製する。このとき、加熱還流の条件や還元剤を適当に制御することにより、粒子径を制御したRh粒子10を作製することができる。
上記有機分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミド、ポリアクリル酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸などの安定度の高い化合物、又はこれらの混合物を用いることができる。上記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、又はこれらの混合物を用いることができる。上記ロジウム塩としては、ジニトロジアミン塩、トリアンミン塩、テトラアンミン塩、ヘキサアンミン塩などの貴金属錯体、硝酸塩、塩化物、硫酸塩などの無機塩が使用可能である。上記還元剤としては、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素ガスなどが好適に使用できる。
【0025】
上記複合酸化物20に担持させるRh粒子10の担持量は特に制限されないが、担体である上記複合酸化物20に対して0.05〜2質量%の範囲(例えば0.5〜1.5質量%)とすることが適当である。Rh粒子10の担持量が上記範囲より少なすぎると十分な触媒活性が得られ難いため好ましくない。また、上記範囲より多すぎても触媒の浄化性能が飽和する虞があるうえに、高温使用時にRh粒子10の粒成長が生じる虞があり、さらにコスト面でも不利である。
上記複合酸化物20にRh粒子10を担持させる方法としては、特に制限されず、例えば含浸法や吸着法を用いることができる。典型的な含浸法では、ロジウム塩を含有する水溶液やRh粒子分散液に複合酸化物粉末を含浸させた後、乾燥させ、焼成することにより調製することができる。このときの焼成温度は300℃〜700℃が適当である。焼成温度が700℃より高すぎると、複合酸化物20に担持されたRh粒子10の粒成長が進行する虞があるため好ましくない。
【0026】
ここに開示される排ガス浄化用触媒1は、ハニカム形状、ペレット形状、フォーム形状、又はフィルタ形状など、従来この種の触媒に用いられるのと同様の形状のものに成形されて用いることができる、例えばハニカム形状に成形する場合、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等の高耐熱衝撃性を有するセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成されたハニカム構造を備えるハニカム基材の表面に、上記Rh粒子10が担持された上記複合酸化物20をコートすることにより作製される。また、ペレット形状に成形する場合は、上記Rh粒子10が担持された上記複合酸化物20を、プレス機などを用いた常法によりペレット状に成形することにより作製される。
【0027】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示
すものに限定することを意図したものではない。
【0028】
<Rh微粒子の製造>
まず、平均粒子径の異なるRh微粒子をコロイド法により調製した。Rh総量が4.5×10−3molである硝酸ロジウム(III)溶液にイオン交換水を加え300gのRh希釈溶液を調製した。また、モノマーユニット換算で2.25×10−2mol(即ち上記Rh希釈溶液におけるRh総量の5倍)となるPVP(ポリビニルピロリドン)2.52gにイオン交換水300gを加え撹拌し、完全に溶解させた均一なPVP溶液を調製した。次に、調製したPVP溶液にRh希釈溶液をゆっくり滴下しながら混合し、室温で1時間撹拌し、さらに該混合液にエタノールを加え30分間撹拌した。このとき上記混合液に含まれるイオン交換水とエタノールの質量混合比率(イオン交換水:エタノール)が20:80となるようにした。
続いて、得られた溶液を加熱還流しRhイオンを還元することにより、Rh微粒子溶液を得た。その際、上記加熱還流における加熱時間を1時間〜8時間まで変化させることにより、得られるRh微粒子の平均粒子径を制御した。具体的には、加熱時間が1時間、2時間、4時間、8時間の場合は、得られたRh微粒子の平均粒子径はそれぞれ2nm、5nm、8nm、15nmであった。ここでRh微粒子の平均粒子径はTEM(透過型電子顕微鏡)による観察により求めた。
【0029】
<排ガス浄化用触媒の製造>
(例1)
スピネル(MgAl)粉末(大日精化工業(株)社製)30gを蒸留水180gに分散させた溶液に、硝酸ロジウム(III)溶液を適当量添加し、1時間撹拌した。このとき添加した硝酸ロジウム(III)溶液におけるRh原子換算量が、上記スピネル粉末に対して1質量%となるようにした。得られた溶液を120℃で加熱することにより乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成した。得られた粉末は乳鉢で粉砕し、プレス機によりペレット状に成形し、例1に係る排ガス浄化用触媒とした。例1に係る排ガス浄化用触媒をTEMにより観察した結果、平均粒子径が1nmのRh粒子が上記スピネル担体に担持されていることが確認された。
(例2)
スピネル(MgAl)粉末(大日精化工業(株)社製)30gを蒸留水180gに分散させた溶液に、上記製法により製造した平均粒子径2nmのRh微粒子溶液を適当量添加し、1時間撹拌した。このとき添加したRh微粒子量は、上記スピネル粉末に対して1質量%となるようにした。次に得られた溶液を120℃で加熱することにより乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成した。得られた粉末は上記例1に係るペレット成形方法と同様の手法によりペレット状に成形し、例2に係る排ガス浄化用触媒とした。
(例3)
上記例2に係る製造プロセスにおいて、平均粒子径2nmのRh微粒子溶液の代わりに平均粒子径5nmのRh微粒子溶液を用いること以外は同様の製造プロセスにより、例3に係る排ガス浄化用触媒を製造した。
(例4)
上記例2に係る製造プロセスにおいて、平均粒子径2nmのRh微粒子溶液の代わりに平均粒子径8nmのRh微粒子溶液を用いること以外は同様の製造プロセスにより、例4に係る排ガス浄化用触媒を製造した。
(例5)
上記例2に係る製造プロセスにおいて、平均粒子径2nmのRh微粒子溶液の代わりに平均粒子径15nmのRh微粒子溶液を用いること以外は同様の製造プロセスにより、例5に係る排ガス浄化用触媒を製造した。
【0030】
<固溶挙動の観測;Rh比表面積測定>
Rh粒子を担持させた複合酸化物について、酸素存在下(酸化雰囲気下)におけるRh粒子の複合酸化物への固溶挙動を観察するため、上記排ガス浄化用触媒を所定の加熱温度で加熱したときの触媒上のRh活性点数(比表面積)を測定した。具体的には、上記例1(Rh粒子径1nm)、及び例3(Rh粒子径5nm)に係る排ガス浄化用触媒を空気中で10時間、500〜1000℃の温度範囲に設定した電気炉で加熱し、その後、COパルス吸着法を用いて該排ガス浄化用触媒におけるRh比表面積を測定した。図2に例1及び例3に係るRh比表面積と加熱温度との相関を示す(縦軸:Rh比表面積(m/g)、横軸:加熱温度(℃))。
図2より明らかなように、例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒のRh比表面積は、ともに加熱温度が600℃以下の場合、ほぼ一定の値を示した。一方、加熱温度を700℃以上に設定すると例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒のRh比表面積は大幅に減少することが確認できた。これは、700℃以上の加熱温度において、複合酸化物に担持されたRh粒子の多くが該複合酸化物に固溶し、Rh粒子が複合酸化物表面から消失したことを示している。
【0031】
<促進耐久処理及び再生処理>
上記排ガス浄化用触媒の耐久使用前後の特性の変化を調べるために、上記の排ガス浄化用触媒(例1〜5)について、促進耐久処理を施した。促進耐久処理は上記排ガス浄化用触媒を酸素存在下、即ち酸化雰囲気下において1000℃で10時間保持することにより行った。
その後、上記促進耐久処理後の排ガス浄化用触媒(例1〜5)を、リッチ雰囲気(還元雰囲気)ガス及びリーン雰囲気(酸化雰囲気)ガスに交互に曝すことにより、該排ガス浄化用触媒の再生処理を行った。具体的には、促進耐久処理後の排ガス浄化用触媒を800℃で保持し、そこに空燃比(A/F)が14.1のリッチ雰囲気ガスと、空燃比(A/F)が15.1のリーン雰囲気ガスを2分間のサイクルで1時間、交互に繰り返し流すことにより、排ガス浄化用触媒(例1〜5)の再生処理を行った。
【0032】
<Rh比表面積測定>
上記例1〜例5に係る排ガス浄化用触媒について、上記促進耐久処理及び再生処理に係る一連の処理の前後におけるRh比表面積を、COパルス吸着法により測定した。結果を図3に示す(縦軸:Rh比表面積(m/g)、横軸:Rh粒子平均粒子径(nm))。
図3より明らかなように、上記排ガス浄化用触媒(例1〜5)に対し、促進耐久処理及び再生処理を施す前、即ち該触媒の使用初期における、複合酸化物に担持されたRh比表面積は、Rh粒子の平均粒子径が大きくなるほど減少する傾向があることが確認された。これに対し、促進耐久処理及び再生処理に係る一連の処理を施した後のRh比表面積については、初期のRh粒子平均粒子径が比較的小さい(概ね粒子径1nm以上3nm以下の)排ガス浄化用触媒(即ち例1、2)では、処理後のRh比表面積が大幅に減少した。一方、初期のRh粒子平均粒子径が比較的大きい(概ね粒子径5nm以上15nm以下の)排ガス浄化用触媒(即ち例3〜5)では、上記処理後のRh比表面積は使用初期とほとんど変化しない、又は若干増加した。即ち、Rh粒子の平均粒子径が5nm以上15nm以下の排ガス浄化用触媒に係るRh粒子は、上記再生処理により、該触媒の使用初期と同等か、またはさらに高分散な状態になっていることが明らかとなった。
【0033】
<TEMによる排ガス浄化用触媒の状態変化の観察>
例1、及び例3に係る排ガス浄化用触媒について、1)初期、2)上記促進耐久処理を行った後、及び3)上記促進耐久処理に続けて上記再生処理を行った後、における該排ガス浄化用触媒の状態変化を観測するために、上記1)〜3)の各段階における各排ガス浄化用触媒(例1、3)についてTEMによる観察を行った。
図4及び図7に、例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒の1)初期のTEM像を示す。図5及び図8に、例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒の2)上記促進耐久処理を行った後のTEM像を示す。図6及び図9に例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒の3)上記再生処理を行った後のTEM像を示す。
【0034】
例1に係る排ガス浄化用触媒の場合、図4に示すように、初期段階では複合酸化物の表面に粒子径1nm程度のRh粒子が担持されていることが確認された。
また、図5に示すように、上記促進耐久処理後、即ち酸化雰囲気下において1000℃で加熱した後のTEM観察では、Rh粒子は確認されなかった。このときTEM−EDS(エネルギー分散型X線分光分析)による元素分析を行ったが、上記排ガス浄化用触媒においてはRh成分は検出されなかった。これは、複合酸化物内にRhが固溶・拡散することにより、Rh濃度がTEM−EDSの検出限界以下となったためである。また、上記促進耐久処理後の例1に係る排ガス浄化用触媒について、XPS(X線光電子分光)測定を行ったところ、酸化状態であるRhに由来するピークが観測された。よって、表層付近(典型的には表面から10nm以下)にRh成分が存在していることが確認された。
一方、図6に示すように、再生処理後のTEM観察では、粒子径が1nm程度のRh粒子が再び複合酸化物上に分散して担持されている様子が確認された。
【0035】
例3に係る排ガス浄化用触媒の場合、図7より明らかなように、初期段階では粒子径が3〜5nm程度のRh粒子が複合酸化物に担持していることが確認された。
一方、図8に示すように、上記促進耐久処理後、即ち酸化雰囲気下において1000℃で加熱した後のTEM観察では、Rh粒子は確認されなかった。また、このときTEM−EDSにより複合酸化物の表面部分の元素分析をした結果、上記排ガス浄化用触媒においてはRhが検出されなかった。これは上記例1の場合と同様に、複合酸化物内にRhが固溶・拡散することによりRh濃度が検出限界以下となったためである。また、上記促進耐久処理後の例3に係る排ガス浄化用触媒について、XPS(X線光電子分光)測定を行ったところ、酸化状態であるRhに由来するピークが観測されたことから、表層付近(典型的には表面から10nm以下)にRh成分が存在していることが確認された。
図9に示すように、再生処理を施した後のTEM像では、再び粒子径が4〜5nm程度のRh粒子が複合酸化物の表面に析出していることが確認された。このときの複合酸化物上に担持されたRh粒子の数はTEM観察の限りにおいて、例3に係る排ガス浄化用触媒の使用初期(図7)とほぼ同等であることが確認された。
【0036】
以上のTEM観察の結果により、例1及び例3に係る排ガス浄化用触媒を構成するRh粒子は、ともに、上記促進耐久処理、即ち酸化雰囲気下における加熱により、一旦、複合酸化物に固溶し、続いて再生処理を施すことにより平均粒子径が1〜5nm程度の十分に小さいRh粒子が複合酸化物表面に析出することが確認された。特に、例3(Rh粒子径5nm程度)に係る排ガス浄化用触媒では、再生処理により再析出するRh粒子の粒子径は十分に小さく(4〜5nm程度)、かつ該Rh粒子の数が初期段階と同等程度に多いため良好であった。
【0037】
<浄化性能評価試験>
上記再生処理後の各排ガス浄化用触媒(例1〜例5)について浄化性能を評価した。具体的にはまず上記排ガス浄化用触媒3.0gを秤量し浄化性能評価装置に配置した。その後、評価装置内温度を600℃から100℃まで20℃/minの降温速度により降温しながらストイキ雰囲気である表1に示す組成のガスを評価装置内に流通させ、触媒通過後のガス中に含まれる総炭化水素(T.HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)の含有量を測定し、ガス投入時の各成分の50mol%が浄化により減少した時の温度(50%浄化温度(℃))を求めた。測定条件(ガス組成(容量比)、ガス流量、降温条件)は表1に示す通りである。
【0038】
【表1】

【0039】
上記浄化性能評価試験の結果を表2に示す。また該結果のうち、総炭化水素(T.HC)に係る50%浄化温度とRh粒子の平均粒子径との相関について、図10に示す(縦軸:T.HC50%浄化温度(℃)、横軸:Rh平均粒子径(nm)。)
【0040】
【表2】

【0041】
表2および図10より明らかなように、例1〜例5に係る排ガス浄化用触媒の再生処理後のT.HC50%浄化温度は概ね310℃以下であり、良好であった。特に、例3〜5(Rh平均粒子径が5〜15nm)に係る排ガス浄化用触媒のT.HC50%浄化温度は概ね300℃以下であり、より良好な浄化性能を発揮した。また表2に示す結果より総炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物に対するいずれの浄化性能についても、例1〜例5に係る排ガス浄化用触媒は良好な結果を示し、特に例3〜例5(Rh平均粒子径が5〜15nm)に係る排ガス浄化用触媒はより良好な浄化性能を発揮することが確認された。
【符号の説明】
【0042】
1 排ガス浄化用触媒
10 Rh粒子
20 複合酸化物
30 固溶Rh粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と該担体に担持された触媒金属とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記担体としてアルカリ土類金属とアルミニウムとの複合酸化物を有しており、
前記触媒金属としてロジウムを有しており、
空燃比(A/F)が15.1であって少なくとも1000℃以上1200℃以下の温度域にある排ガス中において、前記担体上にTEM観察に基づく粒子径1nm以上のロジウム粒子が存在しない状態を形成し、
空燃比(A/F)が14.1であって少なくとも800℃以上1000℃未満の温度域にある排ガス中において、前記担体上にTEM観察に基づく平均粒子径1nm以上のロジウム粒子が存在する状態を形成し、
前記ロジウム粒子が存在しない状態と前記ロジウム粒子が存在する状態との間で、空燃比に応じて前記担体上のロジウム粒子量が可逆的に変化することを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記担体に担持されたロジウム粒子の平均粒子径が5nm以上15nm以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記担体における前記複合酸化物の結晶構造がスピネル構造であることを特徴とする、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記担体における前記複合酸化物がマグネシウムとアルミニウムとの複合酸化物である、請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239942(P2012−239942A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109799(P2011−109799)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】