説明

排ガス浄化装置

【課題】プラズマ放電がハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の電極と接する壁に当たって跳ね返ることを防止できて、ハニカム構造体内の中空間へのプラズマの導入率を向上し得る排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】ハニカム構造体2の中空間3を通る排ガス4と接する内壁面5に触媒が担持され、該ハニカム構造体2の排ガス4流れ方向の上流側の開口部6にプラズマを発生させるための第1の電極7が備えられ、該ハニカム構造体2の排ガス4流れ方向の下流側の開口部8にプラズマを引き込むための第2の電極が備えられ、第1の電極7に、該ハニカム構造体2の上流側の開口部6における個々の開口11に対応する位置にハニカム構造体2の前記個々の開口11の大きさ以下の大きさを有する排ガス流入用の開口12が設けられてなる排ガス浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な排ガス浄化装置に関し、さらに詳しくはハニカム構造体内の中空間への発生したプラズマの導入率を向上し得る排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素による地球温暖化現象が問題となり、自動車の排ガスによる二酸化炭素の排出量を低減するために燃料を酸素過剰雰囲気で希薄燃焼させるリーンバーンエンジンが開発された。
また、自動車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるCO、NO、未燃焼の炭化水素(HC)などをCO、N、HOに変換することにより排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒として、貴金属系触媒を金属酸化物担体に担持させた三元触媒などの種々の担持触媒が知られている。
【0003】
そして、排ガス浄化装置は、通常、前記の触媒をコージェライトなどの耐熱性材料で作製されたハニカム構造体に担持して構成される。
このハニカム構造体は、通常電気絶縁性であり、平均細孔径が約10〜25μm程度の細孔を有する多孔質基材であり、内壁面に触媒が担持され、エンジン部から出た排ガスがハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部から入り、中空間を通過して下流側の開口部から出る構造を有している。
【0004】
このハニカム構造体の排ガス浄化のための触媒性能を向上させるため、ハニカム構造体の構成材料の改良が種々試みられている。
例えば、コージェライトハニカムなどの基材と触媒を担持する担体層との間に、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどの緻密層を設けることによって、排ガス浄化用触媒の浄化性能が向上することが知られている。
しかし、地球温暖化防止の観点から燃費向上の要求および環境基準は益々厳しくなる傾向にあり、内燃機関の排ガス浄化性能について更なる改良が求められている。
その例として、ハニカム触媒あるいはディーゼルパーティキュレートフィルター(以下、単にDPFと略記することもある。)などの排ガス浄化装置にプラズマ技術を適用する試みがなされ、またプラズマ発生電極についても様々な検討がされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、排気流路中に一対の電極を配置してなり、前記一対の電極の少なくとも一方がメッシュ状電極であり、電極の間の放電によって生じるプラズマの密度が部分的に異なるようにされている排気浄化用リアクターが記載されている。しかし、前記公報には排気通路の形状とメッシュ電極の形状との関係がハニカム構造体内中空間へのプラズマ導入率に及ぼす影響についての記載はない。
【0006】
また、特許文献2には、互いに対向する二つ以上の単位電極を備え、電圧を印加することによってプラズマを発生させ得て、単位電極の少なくとも一方が板状のセラミック誘電体と内部に膜厚方向に所定の間隔を隔てた状態で配設された複数の導電膜とを有し、前記単位電極を構成する複数の導電膜のうちの少なくとも一枚に膜厚方向に貫通した複数の貫通孔が形成されてなるプラズマ発生電極が記載されている。そして、具体例として一方の単位電極に貫通孔が形成され他方の単位電極には貫通孔が形成されていないか、あるいはより小さい貫通孔を形成したプラズマ発生電極が示され、前者の片方に貫通孔が形成されていないプラズマ発生電極の後流に排ガス用触媒を担持した直径1インチ(約2.54cm)で400セルを有するセラミックハニカム構造体を配設した装置により、排ガスが浄化された例が示されている。しかし、前記公報には貫通孔がハニカム構造体内中空間へのプラズマ導入率に及ぼす影響についての記載はない。
【0007】
さらに、特許文献3には、プラズマ発生部と、該プラズマ発生部内で発生したプラズマを電界によってプラズマ発生部外に引き出す電極および、プラズマ発生部と電極との間にハニカムを有し、ハニカム構造体内の中空管を通る排ガス流れ方向とプラズマ発生部および電極を結ぶ方向とが同一方向となるように配置してなる排ガス浄化装置が記載されている。そして、具体例として、γ−Alペレットを充填しステンレスロッドを電極とするパックドベット放電が示されている。しかし、前記公報には中空管の形状と電極の構造との関係が中空間へのプラズマ導入率に及ぼす影響についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−346768号公報
【特許文献2】特開2005−203362号公報
【特許文献3】特開2008−248852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の各公報に記載のように、触媒が担持されたハニカム構造体とプラズマを発生させるための電極放電とを組み合わせることによる排ガス浄化装置の性能向上の試みはなされているが、充分満足のいくものではなかった。
これは、前記の従来公知の技術によれば、電極で発生したプラズマが、ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の電極と接する壁に当たって跳ね返るため、ハニカム構造体内中空間への発生したプラズマの導入率が低下することによる。
従って、本発明の目的は、プラズマ放電がハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の電極と接する壁に当たって跳ね返ることを防止できて、ハニカム構造体内中空間への発生したプラズマの導入率を向上し得る排ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ハニカム構造体の中空間を通る排ガスと接する内壁面に触媒が担持され、該ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部にプラズマを発生させるための第1の電極が備えられ、該ハニカム構造体の排ガス流れ方向の下流側の開口部にプラズマを引き込むための第2の電極が備えられ、第1の電極に、該ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口の大きさ以下の大きさを有する排ガス流入用の開口が設けられてなる排ガス浄化装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラズマ放電がハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の電極と接する壁に当たって跳ね返ることを防止できて、ハニカム構造体内中空間への発生したプラズマの導入率を向上し得る排ガス浄化装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施態様の排ガス浄化装置の部分断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施態様の排ガス浄化装置を用いたハニカム構造体放電例を示す全体模式図である。
【図3】図3は、従来の排ガス浄化装置の1例の部分模式図である。
【図4】図4は、従来の排ガス浄化装置の他の1例の部分模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施態様の排ガス浄化装置のハニカム構造体に代えて透明ガラス管を用いた装置の模式図である。
【図6】図6は、図5の装置を用いたプラズマ放電の状態を示す写真の写しである。
【図7】図7は、従来の排ガス浄化装置のハニカム構造体に代えて透明ガラス管を用いた装置の模式図である。
【図8】図8は、図7の装置を用いたプラズマ放電の状態を示す写真の写しである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の排ガス浄化装置においては、内壁面に触媒が担持されたハニカム構造体(以下、単にハニカム触媒と略記することもある。)の排ガス流れ方向の上流側と下流側の両方の開口部に、プラズマを発生させるための第1の電極およびプラズマを引き込むための第2の電極がそれぞれ備えられ、前記第1の電極に、該ハニカムの上流側の開口部における個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口の大きさ以下の大きさを有する排ガス流入用の開口が設けられてなることが必要であり、これによってプラズマ放電がハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の電極と接する壁に当たって跳ね返ることを防止できて、ハニカム構造体内中空間への発生したプラズマの導入率を向上し得る。
【0014】
特に、本発明において、以下の実施態様を挙げることができる。
1)前記第1の電極に、ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に対応する位置に形状が一致した開口が設けられている前記排ガス浄化装置。
1)前記第1の電極が、セラミック中に導電体が配設されてなる前記排ガス浄化装置。
2)前記第2の電極が、負極性の電圧を印加するためのものである前記排ガス浄化装置。
3)前記触媒が、三元触媒である前記排ガス浄化装置。
4)前記導電体が、互いに平行な2層の網目状導電体が間隔を隔てて配設された構造である前記排ガス浄化装置。
5)前記導電体が、金属線からなる前記排ガス浄化装置。
6)前記第1の電極が、交流を流すための電極である前記排ガス浄化装置。
【0015】
以下、図1〜8を参照して本発明の実施の形態を詳説する。
図1において、本発明の排ガス浄化装置1は、ハニカム構造体2の中空間3を通る排ガス4と接する内壁面5に触媒が担持され、該ハニカム構造体2の排ガス流れ方向の上流側の開口部6にプラズマを発生させるための第1の電極7が備えられ、該ハニカム構造体2の排ガス流れ方向の下流側の開口部8にプラズマを引き込むための第2の電極(図示せず)が備えられ、前記第1の電極7に、該ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口11に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口11の大きさ以下の大きさを有する排ガス流入用の開口12が設けられてなり、排ガスは第1の電極に設けた開口11から入ってハニカム構造体の開口部6の開口11を経てハニカム構造体内の中空管を通り排ガス流れ方向の下流側の開口部8、次いで第2の電極(図示せず)に設けた開口(図示せず)から出る。
【0016】
本発明の排ガス浄化装置においては、ハニカム構造体のそれぞれ上流側に備えた種放電発生部となる第1の電極に高電圧、例えば3〜10kVが加えられてプラズマ放電が発生し、このプラズマがハニカム構造体の上流側の開口部の開口に入ってハニカム構造体の中空間を通り、下流側に備えた第2の電極に加えられた電圧によって第1の電極と第2の電極との間に生じる電界(電位差による)により、プラズマ中の活性種、例えば電子e、イオン、ラジカルが中空間内で存在することによりハニカム構造体内壁面に担持された触媒による排ガスの浄化活性を高め得る。
【0017】
そして、本発明の排ガス浄化装置によれば、ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流部に備えた第1の電極の個々の開口とハニカム構造体の個々の開口とが対応する位置に設けられて整合されることにより、発生したプラズマ放電はハニカム構造体の開口部端面の壁に当たって跳ね返ることなく全てハニカム構造体の開口に入り第2の電極に引き込まれることが可能となり、発生したプラズマのハニカム構造体内の中空間への導入率が向上し、中空間内で存在する活性種の量が従来の排ガス浄化装置に比べて相対的に多くなり、排ガス浄化効率が向上し得る。
【0018】
そして、本発明の実施態様の排ガス浄化装置1は、図2に示すように、ハニカム構造体2の排ガス流れ方向の上流側の開口部6に、セラミック中に埋めた互いに平行な2層の網目状導電体12が間隔を隔てて配設された構造である第1の電極7が備えられ、該ハニカム構造体2の排ガス流れ方向の下流側の開口部にプラズマを引き込むための第2の電極9が備えられてなる。
前記本発明の実施態様の排ガス浄化装置によれば、発生したプラズマのハニカム構造体内中空間への導入率を向上し得るとともに、均一な状態で発生したプラズマがハニカム構造体の中空管を通ってハニカムの排ガス流れ方向の下流部の開口部に到達し、ハニカム構造体の中空管内に均一な放電プラズマが形成されるため、さらに排ガス浄化効率を高め得る。
【0019】
これに対して、従来技術の排ガス浄化装置10は、図3に示すように、ハニカム構造体2の排ガス流れ方向の上流部の開口部に備えられた線状の電極21により円筒中心から同軸円状にプラズマが広がる「同軸円筒型放電」型のものであるか、あるいは図4に示すように、ハニカム構造体2の開口部排ガス流れ方向の上流部の開口部に球状絶縁体22を詰め込んだパックドベッド(packed bed)による「パックドベッド」放電型である。
そして、これら従来の排ガス浄化装置では、プラズマ放電をさせたくない部分であるハニカム構造体の壁部分の延長上でもプラズマが発生し開口部端面の壁に当たって跳ね返ることになり、発生したプラズマのハニカム構造体内の中空間への導入率が低下する、すなわち放電ロスが生じるため、本発明の排ガス浄化装置に比べて排ガス浄化効率が低いものとなる。
【0020】
本発明におけるハニカム構造体としては、一般的に自動車の排ガス浄化用に用いられ得るハニカム触媒あるいはDPF(ディーゼルパーティキュレートフィルター)が挙げられ、通常電気絶縁性であり平均細孔径が約10〜25μm程度の細孔を有する多孔質基材の内壁面に触媒を担持したコート層が形成され、エンジン部から出た排ガスがハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部から入り、中空間を通過して下流側の開口部から出る構造を有するものである。
【0021】
前記ハニカム構造体は、排ガスが通る中空間、触媒が担持される内壁および耐熱性多孔質基材からなる隔壁から構成され、隔壁の厚さは通常0.1〜0.3mm程度である。またハニカム構造体は、開口部端面の開口の形状が四角形(例えば、正方形)、六角形あるいは円形であり得る。この場合、電極の開口部の個々の開口の形状は、通常ハニカム構造体における開口部の開口の形状と一致した、四角形(例えば、正方形)、六角形あるいは円形であり得る。
また、前記ハニカム構造体は、上流側の開口部に排ガス導入用の開口が設けられるており、この開口部端面にプラズマを発生させるための第1の電極が備えられるため、平坦な面を有していることが望ましい。
【0022】
また、前記コート層は、TiO、Al、ZrO、CeO、SiO、コージェライトなどの多孔質酸化物粉末からウォッシュコート法などにより形成されたものであり得て、ハニカム構造体の内壁面に形成される。
また、前記触媒としては、Pt、Rh、Pd、Irなどの貴金属が挙げられ、DPFの場合はさらにNO吸蔵材がさらに担持され得る。NO吸蔵材としては、アルカリ土類金属および希土類元素が挙げられる。
前記貴金属の担持量は、ハニカム構造体の容量1L当たり0.1〜10g程度であり得て、NOの担持量はハニカム構造体の容量1L当たり0.1〜1モル程度であり得る。
【0023】
本発明においては、前記ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部にプラズマを発生させるための第1の電極が備えられている。
本発明における前記第1の電極には、ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口の大きさ以下の大きさを有する、好適には形状が一致する排ガス流入用の開口が設けられてなることが必要である。これにより、第1の電極により発生されたプラズマは、全てがハニカム構造体の開口部の開口を通って中空間に進み、さらに第2の電極によって引き込まれて下流側の開口部に到達し得る。
このため、前記第1の電極は、ハニカム構造体の開口部端面に備えられるようにハニカム構造体側の面が平坦な面を有していることが望ましい。
【0024】
前記の第1の電極としては、排ガスが、通常500〜800℃程度の高温の腐食性ガスであるため、耐熱性で且つ不活性なセラミック中に導電体が配設された構造であるものが適している。
本発明における前記第1の電極は、好適にはセラミック中に互いに平行な2層の網目状導電体、例えば金属線あるいは金属膜、好適には金属線が間隔を隔てて配設された構造であり得る。
特に、前記第1の電極はセラミック中に埋めた2つの網目状の金属線からなりハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口の大きさ以下の大きさを有する、好適には形状が一致する排ガス流入用の開口が設けられてなるものであり得る。
本発明の第1の電極には、通常高電圧、例えば3〜10kVの直流電圧、パルス電圧、交流電圧、好適には交流電圧が外部の電源から加えられ得る。
【0025】
そして、前記のセラミックとしては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、ムライト、コージェライト、マグネシウムーカルシウムーチタン系酸化物、バリウムーチタンー亜鉛系酸化物、バリウム−チタン系酸化物などを含む材料が挙げられる。
また、前記導電体としては、タングステン(W)、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、鉄、金、銅などの金属、好適にはAu/Wが挙げられる。
前記第1の電極は、例えば2枚の焼結助剤を含むセラミックグリーンシートにハニカム構造体の個々の開口に対応するそれぞれ所定の位置にハニカム構造体の個々の開口の大きさ以下の大きさ、好適には個々の開口に形状が一致した形状の開口(貫通口)を形成し、セラミミックグリーンシート上に網目状金属線を設置し、2枚のシートの間に必要であればセラミックグリーンシートを挟み、これらを積層後、セラミックグリーンシートを焼結・一体化することによって得ることができる。
【0026】
本発明の実施態様の排ガス浄化装置における第2の電極としては、浄化された排ガスの流れが均一になるように、第1の電極と同様にハニカム構造体の下流側の開口部における排ガス流出用の開口に対応する位置に形状が一致する開口が設けられてなるものが挙げられ、通常セラミック中に1層の導電体が配設された構造を有するものであり得る。
前記第2の電極におけるセラミックおよび導電体としては、第1の電極に関して述べたものが挙げられる。
前記第2の電極も、1層の網目状金属線を用いる他は第1の電極と同様にして得ることができる。
本発明の第2の電極には、通常高電圧、例えば3〜10kVの直流電圧が外部の電源から加えられ得る。
本発明の排ガス浄化装置においては、第2の電極が負極性の電圧を印加されることが望ましく、これにより活性種のうち、多く存在する電子e、およびマイナスのイオンを活用し得る。
【0027】
本発明の排ガス浄化装置は、前記のハニカム構造体と第1の電極および第2の電極とを、ハニカム構造体の排ガス流れの上流側の開口部の個々の開口と第1の電極の個々の開口とを位置合わせして固定し、ハニカム構造体の排ガス流れ方向の下流側の開口部の個々の開口と第2の電極の個々の開口とを位置合わせして固定することによって得られる。前記のハニカム構造体と電極との固定は機械的な固定器具によってなし得る。
【0028】
本発明の排ガス浄化装置の適用例としては、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンなどからの排ガスを通過させる方法が考えられる。
本発明の排ガス浄化装置によって、排ガスとともに同伴される活性種、例えば電子、イオン、例えばマイナスイオン、あるいは酸素が活性化されて活性酸素となり(OがOに変化)、排ガス中のNO(Nに)、PM(COに)、一酸化炭素(COに)および未燃焼の炭化水素(COおよびHOに)の少なくとも1つを浄化することが可能となる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を、具体例に基いてさらに詳しく説明する。
本発明の排ガス浄化装置において、放電状態を観察するために、不透明なハニカム触媒に代えて透明ガラス管を用いて図5に示す装置を使用してプラズマ放電を観察し、評価を行った。
【0030】
図5において、ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部にプラズマを発生させるための、セラミックの開口部における排ガス流入用の開口[開口の形状:1.27mmx1.27mmの正方形]に対応する位置に形状が一致する開口が設けられていて、セラミック(組成:Al)中にAu/Wからなる2層の網目状金属線が配設され外部電源に接続された第1の電極であるセラミック電極が、ハニカム触媒の開口と電極の開口とを位置合わせして固定されている。ここではハニカム構造体の微細空間として細いガラス管を束ねたものを用いた。使用したガラス管は内径(直径)1.8mm、長さ20mmにて行った。ガラス管の上部に、第1の電極と同じ材料の1層の網目状金属線がセラミック中に配設され外部電源に接続された第2の電極であるプラズマ引出し用電極を設置した。
この装置に8kVの交流高電圧第1の電極に、4kVの負高電圧を第2の電極にそれぞれ印加してプラズマ放電させた。
【0031】
図6は放電の様子を示す写真である。ハニカム構造体に均一な放電が発生していることが確認された。
【0032】
図7に示すように、従来技術により、パックトベット放電部で16kVの交流高電圧第1の電極に、24kVの負高電圧を金属メッショからなる第2の電極にそれぞれ印加してプラズマ放電させた。
【0033】
図8は放電の様子を示す写真である。ハニカム構造体に局所的に強い放電が発生し、プラズマ放電が不均一であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、簡便な電極構造でハニカム構造体の多くの微小空間の内部に均一にプラズマ放電を高い導入率でハニカム内に導入することが可能であり、ハニカム構造体による浄化機能と放電プラズマとを併用することにより浄化効果を高めることが可能である排ガス浄化装置を得ることができる。これにより、本発明の排ガス浄化装置は自動車のガソリンエンジンジンなどの内燃機関から排出される排ガスの浄化装置に好適に用いられ、排ガス浄化性能の改良に貢献する。
【符号の説明】
【0035】
1 排ガス浄化装置
2 ハニカム構造体
3 中空間
4 排ガス
5 内壁面
6 上流側の開口部
7 第1の電極
8 下流側の開口部
9 第2の電極
10 従来技術の排ガス浄化装置
11 ハニカムの上流側の開口部における開口
12 第1の電極に設けた開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体の中空間を通る排ガスと接する内壁面に触媒が担持され、該ハニカム構造体の排ガス流れ方向の上流側の開口部にプラズマを発生させるための第1の電極が備えられ、該ハニカム構造体の排ガス流れ方向の下流側の開口部にプラズマを引き込むための第2の電極が備えられ、第1の電極に、該ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の前記個々の開口の大きさ以下の大きさを有する排ガス流入用の開口が設けられてなる排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第1の電極に、ハニカム構造体の上流側の開口部における個々の開口に形状が一致した開口が設けられている請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第1の電極が、セラミック中に導電体が配設されてなる請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第2の電極が、負極性の電圧を印加するためのものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記触媒が、三元触媒である請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記導電体が、互いに平行な2層の網目状導電体が間隔を隔てて配設された構造である請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記導電体が、金属線からなる請求項6に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記第1の電極が、交流を流すための電極である請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−180808(P2012−180808A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45406(P2011−45406)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】