説明

排ワラ処理構造

【課題】 細断処理装置を開放姿勢にロックする構造に簡単な改造を施して、ロック忘れを抑制することが可能な排ワラ処理構造を提供する。
【解決手段】 脱穀済み茎稈を細断処理する細断処理装置を、排ワラを受ける作用姿勢と、脱穀装置から離間する開放姿勢とに切り換え可能に構成する。開放姿勢に維持するロック機構R1を、係合レバー17と係合凹部15a、及び、係合レバー17を係合凹部15aとの係合方向に付勢するトーションスプリング18とを設けて構成する。細断処理装置9の開放姿勢への切り換わり作動に連動して係合レバー17と係合凹部15aとが接近し係合レバー17が被係合凹部15aに係合すべく構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置から搬送される脱穀済み茎稈を処理する排ワラ処理装置を、脱穀装置からの排ワラを受ける作用姿勢と、前記脱穀装置から離間する開放姿勢とに切り換え可能に構成するとともに、前記開放姿勢に維持するロック機構を設けてある排ワラ処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
細断処理装置を開放姿勢に維持するロック機構として、後記する特許文献1の図6には、丸棒状のロック具を使用するものが示されている。特許文献1の図6に示すように、細断処理装置5の右側壁と脱穀装置Zの右側壁とに、細断処理装置5を揺動開閉すべく支点部を形成するとともに、その支点部の上方に脱穀装置Zの右側壁と脱穀装置Zの右側壁とに亘って架け渡される丸棒状のロック具を設けていた。
【特許文献1】特開2001−238536号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1で示された従来構造では、ロック具によって細断処理装置Zを開放姿勢に維持することができるので、細断処理装置自体或いは脱穀装置内のメインテナンス作業を行い易いものである。しかし、細断処理装置Zを開放姿勢に切り換えるには、一旦開放姿勢に切り換えた後に、ロック具を脱穀装置Zの右側壁と脱穀装置Zの右側壁とに亘って掛け渡して、開放姿勢に切り換える操作を必要としていた。
しかし、ロック具を人為的に係合操作する必要が有るために、操作忘れを起こす虞が考えられ、操作性の面で改善する余地が残されていた。
【0004】
本発明の目的は、細断処理装置を開放姿勢にロックする構造に簡単な改造を施して、ロック忘れを抑制することが可能な排ワラ処理構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔構成〕
本第1発明の特徴構成は、前記ロック機構を、係合部と被係合部、及び、前記係合部を前記被係合部との係合方向に付勢する付勢手段を設けて構成し、前記排ワラ処理装置の前記開放姿勢への切り換わり作動に連動して前記係合部と前記被係合部とが接近し前記係合部が前記被係合部に係合すべく構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】
〔作用〕
付勢手段で係合部を被係合部に向けて付勢しているので、細断処理装置を開放姿勢に向けて作動させると、係合部が被係合部に接近し、更に細断処理装置を開き操作すると、細断処理装置が開放姿勢に切り換わり、係合部が被係合部に自動的に係合し、開放姿勢が維持される。
【0007】
〔効果〕
細断処理装置を開放姿勢に切り換える際に、必ず必要となる細断処理装置の移動を利用して係合部を被係合部に係合させることができるので、ロック機構自体に対する操作を必要とせず、操作忘れを合理的に抑制できるのである。
【0008】
〔構成〕
本第2発明の特徴構成は、前記係合部を係合レバーで構成し、前記被係合部を係合凹部で構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
ロック機構を構成する係合部を係合レバー、被係合部を係合凹部で構成してあるので、簡単な構造のものでロック機構を構成できる。
【0010】
〔構成〕
本第3発明の特徴構成は、前記排ワラ処理装置を横一側方に設けた揺動軸芯回りで揺動開放自在に構成するとともに、前記ロック機構を前記揺動軸芯近傍に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
排ワラ処理装置を作用姿勢と開放姿勢とに切り換えるのに、排ワラ処理装置を揺動させることによって切り換えを行う形態を採用した。そして、この排ワラ処理装置の揺動する形態を採用する点を有効に利用して、揺動軸芯近傍にロック機構を配置したので、ロック機構をロックする状態とロック解除する状態とに切り換えるストロークを小さくて済み、ロック機構自体の構造をコンパクトなものにでき、ロック機構自体の構造を複雑な構造のもとする必要はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、コンバインAは、クローラ型走行装置1を備えた走行機体2の前端に昇降自在に刈取前処理装置3を装備するとともに、刈取前処理装置3の右横側方で走行機体2の前端位置に運転部4を配置し、刈取前処理装置3から搬送される刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置5と脱穀装置5からの穀粒を受ける穀粒貯留部6を走行機体2に搭載し、脱穀装置5の左横側方に刈取前処理装置3から搬送される刈取穀稈を受けとってその受け取った穀稈の株元を挾持して脱穀装置5内を移動させる脱穀フィードチェーン7と脱穀フィードチェーン7から脱穀済み茎稈を受取り搬送する排ワラ搬送装置8とを備え、脱穀装置5からの脱穀済み茎稈を受取り細断処理する細断処理装置(排ワラ処理装置の一例)9を備えて、構成してある。
【0013】
図1及び図2に示すように、脱穀装置5の後端に枠組みフレーム10を配置するとともに、枠組みフレーム10の上端横向きフレーム部10Aから後方側に向けてパイプフレーム11を延出し、パイプフレーム11の中間屈曲部11Aにブラケット12を固設してある。ブラケット12に駆動軸13が架設してあり、この駆動軸13に排ワラ搬送装置8の株元挾持搬送チェーン8Aと穂先側係止搬送チェーン8Bとの駆動部8a、8bに連係し、穂先側係止搬送チェーン8Bと平行に配置された伝動チェーン14の出力部14Aに連係してある。
【0014】
図2及び図3に示すように、枠組みフレーム10の右側上下向きフレーム部10Bより横外向きに支持ブラケット15を延出するとともに、支持ブラケット15の後端部に揺動軸芯形成用の貫通孔を形成してある。
【0015】
細断処理装置9について説明する。図2及び図3に示すように、横長矩形フレーム9C内に二本の駆動軸9A、9Bを前後に配置し、前側駆動軸9Aに複数個の前排ワラカッター9aを装着するとともに、後側駆動軸9Bに複数個の後排ワラカッター9bを配置し、個々の前排ワラカッター9aと後排ワラカッター9bとが一対となって、横向き状態で落下供給される排ワラを細断する。
【0016】
図2及び図3、図5に示すように、横長矩形フレーム9Cの右側フレーム部9cからブラケット9dを延出し、ブラケット9dを、前記した枠組みフレーム10の右側上下向きフレーム部10Bより横外向きに延出された支持ブラケット15に対して上下方向で重なるように配置し、前記ブラケット9dに、支持ブラケット15に形成した貫通孔に繋がる貫通孔を形成する。
【0017】
図示してはいないが、前記ブラケット9dと支持ブラケット15とは、一組のものとして、上下方向二箇所に二組配置する。図2及び図3、図5に示すように、前記したブラケット9dと支持ブラケット15とに形成した貫通孔に支点ピン16を差し込んで、支点ピン16回りにブラケット9dを揺動可能に、つまり、ブラケット9dを取り付けた細断処理装置9を脱穀装置5に対して揺動開放可能に構成してある。
以上のような構成によって、図5(イ)に示すように、細断処理装置9を脱穀装置5の枠組みフレーム10に当接して脱穀装置5からの排ワラを受け入れる作用姿勢と、図5(ロ)に示すように、枠組みフレーム10から離れる開放姿勢とに切り換え可能に構成する。
【0018】
図2及び図3、図5に示すように、支点ピン16の近傍には、細断処理装置9の開放姿勢を維持する開放ロック機構R1が設けられている。開放ロック機構R1は、係合部としての係合レバー17と、被係合部としての後記する係合凹部15aと、係合レバー17を係合凹部15aとの係合方向に付勢する付勢手段としてのトーションスプリング18とを設けて構成してある。
【0019】
図4及び図6に示すように、係合レバー17は、横向き長辺部分17Aより屈曲形成した基端部を、支点ピン16の近傍に設けた上下向き軸芯位置Xにおいて取り付け、その上下向き軸芯位置Xを中心として左右揺動自在に支持されている。
【0020】
係合レバー17は、横向き長辺部分17Aの先端側に形成した円弧状部分17Bを、脱穀装置5に属する支持ブラケット15の横外側辺15bに当接する状態に配置して、構成してある。
【0021】
図2及び図3、図5に示すように、支持ブラケット15の横側面には、係合凹部15aを形成してあり、係合凹部15aの係合レバー17側の入口角部に誘導用傾斜面15cを形成してあり、係合レバー17の先端部分17Bが係合凹部15aに容易に入り込める形状としてある。
【0022】
トーションスプリング18の取付形態について説明する。図5に示すように、トーションスプリング18は、中心のコイル部分を係合レバー17の基端部分とともに上下向き軸芯位置Xにおいて支持されるとともに、その中心のコイル部分より延出された一方の延出端18aを、細断処理装置9の横長矩形フレーム9Cから延出されたブラケット9dの横外側辺9eにあて付けて、位置決めされている。一方、トーションスプリング18の中心のコイル部分より延出された他方の延出端18bを、係合レバー17の横向き長辺部分17Aに当接して、位置決めしている。
このような構成によって、係合レバー17の先端部分17Bを支持ブラケット15の横外側辺15bに当接させて、トーションスプリング18の位置決めを行っている。
【0023】
以上のような構成により、図2及び図5(イ)に示すように、細断処理装置9を作用姿勢に設定した状態では、係合レバー17は、その先端部分17Bを支持ブラケット15の横外側辺15bに当接した状態にあり、支持ブラケット15に形成した係合凹部15aからは離間している。したがって、開放ロック機構R1はロック状態にはない。
【0024】
この状態より、細断処理装置9を支点ピン16の軸芯Yを揺動軸芯として横外向きに回転させると、係合レバー17の先端部分17Bが横外側辺15bに当接した状態で係合凹部15aに近づいていく。
図3、図5(ロ)に示すように、細断処理装置9が更に揺動開放作動を続けると、係合レバー17の上下向き長辺部分17Bが係合凹部15aに係合し、細断処理装置8が位置決めされる。
【0025】
次ぎに、細断処理装置9を脱穀装置5に取り付け、作用姿勢に維持する閉塞ロック機構R2の構造について説明する。図2、図3、図7に示すように、細断処理装置9における支点ピン16の装着位置とは左右の反対側において、脱穀装置5の枠組みフレーム10の上端横向きフレーム部10Aに、閉塞ロック機構R2の一方の部材を形成する係合片19を取り付け固定する。
【0026】
一方、図7に示すように、係合片19と係合する係合孔9fは、細断処理装置9の横長矩形フレーム9Cに対して、その横長矩形フレーム9Cの上端近傍に貫通孔を形成して前記した係合孔9fとしてある。ここに、この係合孔9fと係合片19とで閉塞ロック機構R2を構成する。
【0027】
図7に示すように、係合片19は、略三角形状の基端部19A及び一定上下幅の中間部19Bを上端横向きフレーム部10Aに取り付け固定してあり、中間部19Bの先端に上向き突出部分19aとその突出部分19aへ誘導する傾斜面部分19bとを形成した先端部19Cを備えている。
【0028】
以上のような構成により、図3に示す、細断処理装置9の開放姿勢に対応した状態から、細断処理装置9を作用姿勢に揺動切り換えする場合に、細断処理装置9の前壁部に形成した係合孔9fが、係合片19の先端部19Cに外嵌するとともに、傾斜面部分19bに誘導されて突出部分19aを乗り越え、中間部19Bに達して、図8に示すように係合が終了し、細断処理装置9が作用姿勢に維持される。この係合状態では、係止片19の突出部分19aが係合孔9fの上端縁に係合して、細断処理装置9が作用姿勢にロックされる。
【0029】
また、図2及び図4に示すように、細断処理装置9の左横側面には伝動用プーリ20が取り付けてあり、この伝動用プーリ20より前後排ワラカッター9a、9bに動力が伝達される。この動力伝達のために、伝動用プーリ20に対しては、脱穀装置5の図示していない唐箕軸から動力伝達を受けるべく、伝動ベルト21が架設されている。
【0030】
伝動ベルト21は細断処理装置9を開放姿勢に切り換える場合には、伝動用プーリ21から外される。開放姿勢より作用姿勢に戻された場合には、伝動ベルト21は伝動用プーリ20に巻回される。
伝動用プーリ20に巻回された伝動ベルト21が、細断処理装置9が開放姿勢側に切り換わり移動することに対して抑制する機能を発揮する。
したがって、閉塞ロック機構R2と伝動ベルト21とが協働して、細断処理装置9の作用姿勢を維持する。
【0031】
〔他の実施形態〕
(1)上記した実施形態としては、排ワラ処理装置の一例として細断処理装置9のみについて説明したが、他に、細断処理装置9とともに、ドロッパー装置、結束装置、立体放出装置等を併設してもよく、または、これらの装置を細断処理装置9に代えて使用してもよい。
(2)開放ロック機構R1としては、係合凹部に係合するものとして、ロッド形式又はピン形式のものを使用してもよい。
(3)付勢手段18としては、コイルスプリング、板バネ等が使用できる。
(4)閉塞ロック機構R2としては、係合孔ではなく、係合ピンと、その係合ピンと係合する凹部を形成したロックレバーとで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】細断処理装置を作用姿勢に設定した状態を示す平面図
【図3】細断処理装置を開放姿勢に設定した状態を示す平面図
【図4】細断処理装置を作用姿勢に設定した状態を示す縦断側面図
【図5】(イ)細断処理装置を作用姿勢に設定した状態での開放ロック機構のロック解除姿勢を示す平面図、(ロ)細断処理装置を開放姿勢に設定した状態での開放ロック機構のロック姿勢を示す平面図
【図6】細断処理装置を作用姿勢に設定した状態での閉塞ロック機構をロック解除姿勢に設定した状態を示す側面図
【図7】細断処理装置を開放姿勢から作用姿勢に切り換える途中の状態での閉塞ロック機構の係合片を係合孔に差し込む前の状態を示す側面図
【図8】細断処理装置を作用姿勢に設定した状態での閉塞ロック機構のロック姿勢を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0033】
5 脱穀装置
9 細断処理装置(排ワラ処理装置)
15a 係合凹部(被係合部)
17 係合レバー(係合部)
18 トーションスプリング(付勢手段)
R1 開放ロック機構(ロック機構)
Y 支点ピンの軸芯(揺動軸芯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置から搬送される脱穀済み茎稈を処理する排ワラ処理装置を、脱穀装置からの排ワラを受ける作用姿勢と、前記脱穀装置から離間する開放姿勢とに切り換え可能に構成するとともに、前記開放姿勢に維持するロック機構を設けてある排ワラ処理構造であって、
前記ロック機構を、係合部と被係合部、及び、前記係合部を前記被係合部との係合方向に付勢する付勢手段を設けて構成し、前記排ワラ処理装置の前記開放姿勢への切り換わり作動に連動して前記係合部と前記被係合部とが接近し前記係合部が前記被係合部に係合すべく構成してある排ワラ処理構造。
【請求項2】
前記係合部を係合レバーで構成し、前記被係合部を係合凹部で構成してある請求項1記載の排ワラ処理構造。
【請求項3】
前記排ワラ処理装置を横一側方に設けた揺動軸芯回りで揺動開放自在に構成するとともに、前記ロック機構を前記揺動軸芯近傍に配置してある請求項1又は2記載の排ワラ処理構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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