説明

排気ガス処理装置および排気ガス処理方法

【課題】易重合性物質を燃焼させた後のガスを排気ガスに送るための送風機として耐熱性の高いものを用いなくてもよく、エネルギー効率に優れた排気ガス処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の排気ガス処理装置1は、燃焼触媒が充填され、易重合性物質を含有する排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスが導入されて易重合性物質を燃焼する固定床断熱型燃焼反応器10と、固定床断熱型燃焼反応器10から排出されたガスを冷却する冷却器20と、冷却器20から排出されたガスの少なくとも一部を送風する送風機30と、送風機30により送風されたガスの少なくとも一部を、固定床断熱型燃焼反応器10から排出されたガスと、冷却器20より上流で熱交換して加熱する熱交換器40と、熱交換器40によって加熱したガスを固定床断熱型燃焼反応器10より上流の配管に返送する返送用配管58とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易重合性物質を含有する易重合性物質を燃焼させて処理する排気ガス処理装置および排気ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機物等の可燃性物質を含有する排気ガスは、浄化のために、可燃性物質を燃焼させる処理が施される。そのような排気ガス処理方法としては、例えば、特許文献1に、排気ガスを加熱し、加熱した排気ガスを燃焼触媒に接触させて排気ガスを燃焼させる方法が開示されている。この排気ガス処理方法では、エネルギー効率を高めるために、加熱工程に用いる熱媒体として、燃焼工程により生成したガスを用いている。
しかしながら、特許文献1に記載の排気ガス処理方法では、排気ガスの加熱温度を所望の温度に調整できないという欠点を有していた。
【0003】
また、特許文献2では、排気ガスを触媒燃焼に必要な温度まで加熱する手段として、燃焼後の高温ガスとの熱交換が採用され、その熱交換に用いる熱交換器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−156142号公報
【特許文献2】特開2001−133194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載の処理方法では、排気ガス中に(メタ)アクリル酸等の易重合性物質が含まれると、熱交換器中で易重合性物質が重合して、熱交換器を閉塞させることがあった。熱交換器が閉塞した場合には、排気ガスの処理を停止して清掃しなければならないが、排気ガスの処理を停止させると、排気ガスが発生する上流の工程の操業に支障が生じる。したがって、排気ガス処理は、長期間にわたって安定であることが求められる。
また、触媒による排気ガスの燃焼においては、長期にわたって高い浄化率を保つこと、触媒寿命をできるだけ長くして経済性を向上させることが要求されており、その要求を満たすためには、燃焼反応温度の制御が重要である。しかしながら、特許文献1,2に記載の方法では、燃焼反応温度を容易に制御できるとはいえなかった。特に、特許文献2に記載の方法では、プレート式熱交換器を用いて処理の安定化を図っているが、閉塞までの時間を延長させる効果はあっても、閉塞をなくすことはできなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、長期間にわたって安定に、易重合性物質を含有する排気ガスを処理でき、しかも燃焼反応温度を容易に制御できる排気ガス処理装置および排気ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが調べた結果、燃焼反応温度の制御においては、燃焼反応器に供給する排気ガスの温度と、燃焼反応器での温度上昇幅とを各々独立して制御することが重要であることを見出した。そして、その知見に基づき、燃焼による排気ガス処理方法について検討した結果、以下の排気ガス処理装置および排気ガス処理方法を発明した。
【0007】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 燃焼触媒が充填され、易重合性物質を含有する排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスが導入されて易重合性物質を燃焼する固定床断熱型燃焼反応器と、
該固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスを冷却する冷却器と、
該冷却器から排出されたガスの少なくとも一部を送風する送風機と、
前記送風機により送風されたガスの少なくとも一部を、前記固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスと、冷却器より上流で熱交換して加熱する熱交換器と、
該熱交換器によって加熱した加熱ガスを、前記排気ガスを移送するための配管、前記支燃性ガスを移送するための配管、前記混合ガスを移送するための配管のうちの1つ以上に供給するための返送用配管とを具備することを特徴とする排気ガス処理装置。
[2] 前記熱交換器では、前記送風機により送風されたガスの一部を、前記固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスと熱交換して加熱し、
該排気ガス処理装置が、前記送風機により送風されたガスの残部の少なくとも一部の、前記熱交換器を経由しない非加熱ガスを、前記返送用配管に供給するための配管を具備することを特徴とする[1]に記載の排気ガス処理装置。
[3] 前記排気ガスが、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残ったガス、および/または、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残った液を蒸発させて得たガスであることを特徴とする[1]または[2]に記載の排気ガス処理装置。
[4] 易重合性物質を含有する排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスを燃焼触媒に接触させて、易重合性物質を燃焼させる燃焼工程と、
該燃焼工程で生成したガスを冷却する冷却工程と、
該冷却工程で冷却したガスの少なくとも一部を送風する送風工程と、
該送風工程で送風したガスの少なくとも一部を、冷却工程で冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換して加熱する熱交換工程と、
該熱交換工程で加熱した加熱ガスを、前記排気ガス、前記支燃性ガス、前記混合ガスのうちの1つ以上に混合する混合工程とを有することを特徴とする排気ガス処理方法。
[5] 熱交換工程では、送風工程で送風したガスの一部を、冷却工程で冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換して加熱し、
混合工程では、送風工程で送風したガスの残部の少なくとも一部の、前記熱交換工程を経ない非加熱ガスを、前記加熱ガスと共に前記排気ガス、前記支燃性ガス、前記混合ガスのうちの1つ以上に混合することを特徴とする[4]に記載の排気ガス処理方法。
[6] 混合工程への加熱ガスと非加熱ガスとの供給割合を調節して、前記排気ガスおよび前記支燃性ガスに加えて前記加熱ガスおよび前記非加熱ガスをさらに含んで燃焼工程に供給される混合ガスの温度を調整することを特徴とする[5]に記載の排気ガス処理方法。
[7] 前記排気ガスおよび前記支燃性ガスに加えて前記加熱ガスをさらに含んで燃焼工程に供給される混合ガスの温度を150〜300℃に調整することを特徴とする[4]〜[6]のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
[8] 前記排気ガスが、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残ったガス、および/または、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残った液を蒸発させて得たガスであることを特徴とする[4]〜[7]のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
[9] 燃焼工程から排出されたガスの温度が400〜700℃であることを特徴とする[4]〜[8]のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排気ガス処理装置および排気ガス処理方法は、長期間にわたって安定に、易重合性物質を含有する排気ガスを処理でき、しかも燃焼反応温度を容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の排気ガス処理装置の一実施形態例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(排気ガス処理装置)
本発明の排気ガス処理装置の一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の排気ガス処理装置を示す。本実施形態例の排気ガス処理装置1は、易重合性物質を含む排気ガスを燃焼させる装置であって、固定床断熱型燃焼反応器10(以下、燃焼反応器10と略す。)と冷却器20と送風機30と第1の熱交換器40とを具備するものである。
また、本実施形態例の排気ガス処理装置1は、排気ガスを含む混合ガスを燃焼反応器10に供給するための第1の配管51と、燃焼反応器10から排出されたガスを第1の熱交換器40に供給するための第2の配管52と、第1の熱交換器40にて冷却されたガスを冷却器20に供給するための第3の配管53と、冷却器20から排出されたガスの一部を送風機30に供給するための第4の配管54と、送風機30により送風されたガスの一部を第1の熱交換器40に供給するための第5の配管55および第6の配管56と、第1の熱交換器40にて加熱された加熱ガスを第1の配管51に供給するための第7の配管57および第8の配管(返送用配管)58と、第5の配管55と第8の配管58とを短絡する第9の配管59とを具備する。
第9の配管59は、送風機30により送風されたガスの残部を、第1の熱交換器40に経由させずに第8の配管58に供給する配管である。この第9の配管を介して、第1の熱交換器40により加熱されなかった非加熱ガスを、第8の配管58に供給するようになっている。
また、本実施形態例の排気ガス処理装置1は、第1の配管51に排気ガスを供給するための排気ガス供給用配管11を具備する。
【0011】
また、本実施形態例の排気ガス処理装置1は、第1の配管51に取り付けられた第1のガス温度測定器61と、第9の配管59に取り付けられたガス流量調整弁62と、第1のガス温度測定器61によって測定されたガス温度に応じてガス流量調整弁62の開度を制御する第1の制御部63と、第2の配管52に取り付けられた第2のガス温度測定器64と、第2のガス温度測定器64によって測定されたガス温度に応じて送風機30の送風量を制御する第2の制御部65とを具備する。
【0012】
さらに、本実施形態例の排気ガス処理装置1は、冷却器20から排出されたガスの残部を水との熱交換により加熱する第2の熱交換器71と、第2の熱交換器71にて冷却されたガスを支燃性ガスとの熱交換により更に冷却すると共に支燃性ガスを加熱する第3の熱交換器72と、冷却器20から排出されたガスの残部を第2の熱交換器71に供給するための第10の配管73と、第2の熱交換器71から排出されたガスを第3の熱交換器72に供給するための第11の配管74と、第3の熱交換器72からガスを排出するための排出管75と、第3の熱交換器72により加熱した支燃性ガスを第1の配管51に供給するための支燃性ガス供給用配管81と、第2の熱交換器71に水を供給するための水供給用配管82と、第2の熱交換器71にて水を加熱して得た加熱水を冷却器20に供給するための加熱水供給用配管83と、冷却器20にて水を加熱して得たスチームを移送するためのスチーム用配管84と、第4の配管54に取り付けられた第3のガス温度測定器85と、スチーム用配管84に取り付けられた圧力測定器86と、スチーム用配管84の圧力測定器86より下流側に取り付けられたスチーム圧力調整弁87と、第3のガス温度測定器85により測定されたガス温度に応じてスチーム圧力調整弁87を制御する第3の制御部88とを具備する。
【0013】
上記排気ガス処理装置1における燃焼反応器10は、燃焼触媒が充填され、少なくとも排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスが導入されて、排気ガス中の易重合性物質を燃焼するものである。燃焼反応器10は、外部から加熱または除熱できない断熱型の反応器であり、また、充填された燃焼触媒が触媒層を形成して固定されているものである。
本実施形態例では、混合ガスを燃焼反応器10に導入するための第1の配管51に、送風機30から第1の熱交換器40を経て加熱された加熱ガスと、送風機30から第9の配管59を経て加熱されなかった非加熱ガスとが供給される第8の配管58が接続されている。したがって、燃焼反応器10に導入される混合ガスには、加熱ガスおよび非加熱ガスも含まれる。
【0014】
燃焼反応器10内における混合ガスの空間速度が大きい場合(例えば、数千〜数万[1/時間])には、圧力損失を小さくするために、燃焼反応器10内の触媒層の形状を、混合ガスの通過面積が大きく、厚さ(通過距離)が小さい扁平状にすることが好ましい。
燃焼反応器10内に充填される燃焼触媒としては、例えば、シリカ・アルミナなどの不活性な金属酸化物に白金等の金属を担持させたものが挙げられる。不活性な金属酸化物は、ハニカム状や粒状に成型されていてもよい。
【0015】
冷却器20は、燃焼反応器10から排出されたガスを冷却するものである。本実施形態例では、冷却器20として貫流式ボイラを使用している。貫流式ボイラである冷却器20では、燃焼反応器10から排出されて第1の熱交換器40を通過したガスを熱媒体として、加熱水供給用配管83によって供給された加熱水を加熱する。これにより、燃焼反応器10から排出されて第1の熱交換器40を通過したガスを冷却するようになっている。
【0016】
送風機30は、冷却器20から排出されたガスの一部を送風するものであり、具体的には、ブロワが用いられる。
【0017】
第1の熱交換器40は、送風機30により送風されたガスの一部を、燃焼反応器10から排出されたガスと熱交換して加熱するものである。
【0018】
[作用効果]
上記排気ガス処理装置1では、易重合性物質を燃焼させて生成した高温のガスを排気ガスに直接混合するため、排気ガスを熱交換器に通さずに加熱できる。そのため、長期間にわたって安定に、易重合性物質を含有する排気ガスを処理できる。
また、第1の熱交換器40により加熱された加熱ガスと加熱されなかった非加熱ガスとの割合を調節することによって、燃焼反応器10に供給する排気ガスの温度と、燃焼反応器10での温度上昇幅とを各々独立して制御できる。そのため、燃焼反応温度を容易に制御できる。
【0019】
(排気ガス処理方法)
上記排気ガス処理装置1を用いた排気ガス処理方法の実施形態例について説明する。
本実施形態例の排気ガス処理方法は、燃焼工程と冷却工程と送風工程と熱交換工程と混合工程とを有する。
以下、各工程について説明する。
【0020】
[燃焼工程]
燃焼工程では、少なくとも排気ガスおよび支燃性ガスを第1の配管51により燃焼反応器10に供給し、燃焼反応器10内の燃焼触媒に接触させて易重合性物質を燃焼させる工程である。本実施形態例では、後述するように、混合ガスに加熱ガスおよび非加熱ガスが添加される。したがって、燃焼反応器10に導入される混合ガスは、排気ガス、支燃性ガス、加熱ガスおよび非加熱ガスを含む。
【0021】
排気ガスは、ガス状またはミスト状の易重合性物質を含有するガスである。易重合性物質としては、例えば、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。排気ガスのうちでも、本発明の効果がとりわけ発揮される点では、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残ったガス、および/または、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残った液を蒸発させて得たガスであることが好ましい。易重合性物質は、易重合性物質用原料の気相接触酸化反応により得ることが好ましい。
易重合性物質用原料の気相接触酸化反応により得た易重合性物質を含む混合物から、易重合性物質を分離して残ったガス(または液を蒸発させたガス)としては、例えば、プロピレン、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメチル−tert−ブチルエーテルのうちの少なくとも一つを気相接触酸化させた後に(メタ)アクロレイン、イソブチレン、tert−ブチルアルコールおよびメチル−tert−ブチルエーテルを分離回収して残ったガス(または液を蒸発させたガス)、(メタ)アクロレインを気相接触酸化させた後に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクロレインを分離回収して残ったガス(または液を蒸発させたガス)などが挙げられる。
(メタ)アクロレインを気相接触酸化させた後には、(メタ)アクリル酸が生成する他、副生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、低沸点副生成物、中沸点副生成物(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオナルアルデヒド、アセトン等のカルボニル化合物など)、高沸点副生成物((メタ)アクロレインのオリゴマーまたはポリマー、(メタ)アクリル酸のオリゴマーまたはポリマー)が生成する。したがって、(メタ)アクロレインの気相接触酸化反応により生成したガスから(メタ)アクリル酸が取り除かれた排気ガスは、可燃性物質として、一酸化炭素、低沸点副生成物、中沸点副生成物、高沸点副生成物を含有する。また、回収されずに残った(メタ)アクリル酸も含有する。
なお、高沸点副生成物は常温では液体であるが、その一部は100〜250℃に加熱することにより、排気ガスに含ませることができる。
具体的に、気相接触酸化反応により(メタ)アクリル酸を合成する際に発生する排気ガスには、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、イソブチレン、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、酢酸および水などが含まれる。また、気相接触酸化反応により(メタ)アクリル酸を合成する際に発生する廃液には、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸および水などが含まれる。
【0022】
支燃性ガスは、酸素を含有するガスであり、例えば、分子状酸素、空気、酸素富化空気などが挙げられる。
【0023】
混合ガスは、混合ガス中の易重合性物質の濃度、酸素濃度、他の物質の濃度などに応じて適切な温度に加熱されることが好ましい。具体的には、混合ガスの温度を150〜300℃に調整することが好ましい。混合ガスが150℃以上に調整されていれば、燃焼反応器10にて易重合性物質を容易に燃焼させることができ、300℃以下であれば、易重合性物質の燃焼による燃焼反応器10内の温度上昇を抑制でき、燃焼触媒の熱劣化を防止できる。
【0024】
本実施形態例では、燃焼反応器10に導入する混合ガスの温度を適切な範囲に調整するために、第1のガス温度測定器61により第1の配管51内の混合ガスの温度を測定し、混合ガスの温度が目標値になるように、第1の制御部63によってガス流量調整弁62の開度を制御する。
具体的には、混合ガスの温度が目標値より高い際には、ガス流量調整弁62の開度を大きくして、混合ガスにおける非加熱ガスの割合を増やして混合ガスの温度を下げる。一方、混合ガスの温度が目標値より低い際には、ガス流量調整弁62の開度を小さくして、混合ガスにおける非加熱ガスの割合を減らして混合ガスの温度を上げる。
また、混合ガスの温度は、後述する冷却工程後のガス温度の制御によっても調整されている。
【0025】
燃焼工程では、易重合性物質が燃焼することによってガスの温度が上昇する。
燃焼反応器10から排出されたガスの温度は400〜700℃であることが好ましい。燃焼反応器10から排出されたガスの温度が400℃以上であれば、易重合性物質が充分に燃焼しており、排気ガスの浄化率が高くなり、700℃以下であれば、燃焼触媒の熱劣化を防止できる。
【0026】
本実施形態例では、燃焼反応器10から排出されたガスの温度を適切な範囲に調整するために、第2のガス温度測定器64により第2の配管52内のガスの温度を測定し、第2の配管52内のガスの温度が目標値になるように、第2の制御部65によって送風機30の送風量を制御する。
具体的には、第2の配管52内のガスの温度が目標値より高い際には、送風機30の送風量を多くして、燃焼により不活性化したガスの混合ガスへの混合量を増やし、易重合性物質濃度を下げて、燃焼反応器10内での温度上昇を抑える。第2の配管52内のガスの温度が目標値より低い際には、送風機30の送風量を少なくして、燃焼により不活性化したガスの混合ガスへの混合量を減らし、易重合性物質濃度を上げて、燃焼反応器10内での温度上昇を高める。
【0027】
[冷却工程]
冷却工程では、燃焼工程により生成したガスを、第2の配管52を介して、第1の熱交換器40に供給して熱媒体として利用し、第1の熱交換器40にて冷却したガスを第3の配管53を介して冷却器20に供給して更に冷却する工程である。
本実施形態では、冷却器20として、水を加熱してスチームを生成させる貫流式ボイラを利用している。貫流式ボイラでは、水を加熱するために、第1の熱交換器40にて冷却したガスの熱を更に奪って冷却することができる。
具体的には、冷却器20にて、第2の熱交換器71から供給された冷却媒体である加熱水によって、第1の熱交換器40にて冷却したガスを更に冷却すると共に、加熱水をさらに加熱してスチームを得る。なお、得られたスチームは、スチーム用配管84を介して、スチームを使用する他の設備に供給される。
【0028】
本実施形態例では、冷却工程後のガスの温度を調整する。すなわち、第3のガス温度測定器85によって第4の配管54内の温度を測定し、その温度が目標値になるように、スチーム圧力調整弁87の開度を調節してスチーム圧力を調整し、加熱水が冷却器20にてガスから奪う熱量を調整する。具体的には、第4の配管54内の温度が目標値より高い際には、スチーム圧力調整弁87の開度を大きくする。スチーム圧力調整弁87の開度が大きくなると、スチーム圧力が下がる(すなわちスチームの発生量が多くなる)ようになるから、加熱水がガスから奪う熱量が多くなり、冷却工程後のガスの温度が低下する。第4の配管54内の温度が目標値より低い際には、スチーム圧力調整弁87の開度を小さくする。スチーム圧力調整弁87の開度が小さくなると、スチーム圧力が上がる(すなわちスチームの発生量が少なくなる)ようになるから、加熱水がガスから奪う熱量が少なくなり、冷却工程後のガスの温度が上昇する。
【0029】
[送風工程]
送風工程は、冷却器20により冷却したガスの一部を送風機30によって送風する工程である。送風機30により送風されたガスは第5の配管55、第6の配管56を介して第1の熱交換器40に供給され、また、第9の配管59を介して第8の配管58に供給される。
【0030】
[熱交換工程]
熱交換工程は、送風機30により送風されたガスの一部を、第1の熱交換器40にて、冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換することにより加熱する工程である。
【0031】
[混合工程]
混合工程は、熱交換工程により加熱した加熱ガスおよび送風工程により送風されたガスの残部(非加熱ガス)を、第1の配管51内の混合ガスに混合する工程である。
本実施形態例では、第1の熱交換器40にて加熱されて排出された加熱ガスを、第7の配管57、第8の配管58を介して第1の配管51に供給すると共に、非加熱ガスを、第9の配管59を介して第8の配管58に供給する。これにより、第8の配管58を介して、加熱ガスと非加熱ガスとを含んだガスを第1の配管51内の混合ガスに混合する。
【0032】
[他の工程]
また、排気ガス処理装置1を用いた排気ガス処理方法では、冷却器20により冷却したガスの残部を、第10の配管73を介して第2の熱交換器71に供給する。第2の熱交換器71によって、冷却器20により冷却したガスの残部と、水供給用配管82を介して第2の熱交換器71に供給された水とを熱交換して、冷却器20により冷却したガスの残部を冷却すると共に、水を加熱して加熱水を得る。この加熱水は、加熱水供給用配管83を介して冷却器20に供給される。
【0033】
さらに、本実施形態例では、第2の熱交換器71から排出されたガスを、第11の配管74を介して第3の熱交換器72に供給する。第3の熱交換器72によって、第2の熱交換器71から排出されたガスと支燃性ガスとを熱交換して、第2の熱交換器71から排出されたガスを冷却すると共に、支燃性ガスを加熱する。第3の熱交換器72にて冷却されたガスは排出管75を介して排気ガス処理装置1から排出され、加熱した支燃性ガスは、支燃性ガス供給用配管81を介して第1の配管51に供給される。
【0034】
[作用効果]
上記排気ガス処理方法では、易重合性物質を燃焼させて生成した高温のガスを排気ガスに直接混合するため、排気ガスを熱交換器に通さずに加熱できる。そのため、長期間にわたって安定に、易重合性物質を含有する排気ガスを処理でき、しかも燃焼反応温度を容易に制御できる。
【0035】
(他の実施形態例)
なお、本発明は上記実施形態例に限定されない。例えば、上記実施形態例では、廃熱を有効利用するために冷却器20として貫流式ボイラを用いたが、循環式ボイラを用いてもよい。
また、上記実施形態例では、冷却器20から排出されたガスの残部の熱を利用し、第2の熱交換器71により水を加熱し、第3の熱交換器72により支燃性ガスを加熱したが、これらは本発明の必須要件ではない。
また、返送用配管である第8の配管58を排気ガス供給用配管11または支燃性ガス供給用配管81に接続して、第1の熱交換器40によって加熱した加熱ガスを、排気ガスまたは支燃性ガスに混合してもよい。
また、送風機30により送風されたガスの残部の一部のみが排気ガス、支燃性ガスまたは混合ガスに混合されてもよい。
【実施例】
【0036】
図1に示す排気ガス処理装置1を用いて、気相酸化反応によりメタクロレインを合成する際に発生した排気ガスおよび廃液を蒸発させたガスを以下のように処理した。
まず、排気ガス供給用配管11を用いて排気ガスを供給し、その排気ガスに支燃性ガス供給用配管81から供給された酸素を含むガスを混合した混合ガスを第1の配管51により燃焼反応器10に供給し、燃焼反応器10内の燃焼触媒に接触させて易重合性物質を燃焼させた。
また、燃焼反応器10から排出されたガスを、第2の配管52を介して、第1の熱交換器40に供給して熱媒体として利用し、第1の熱交換器40にて冷却したガスを第3の配管53を介して冷却器20に供給して冷却した。
また、冷却器20により冷却したガスの一部を第4の配管54を送風機30に供給し、送風機30によって送風した。送風機30により送風されたガスは、第5の配管55、第6の配管56を介して第1の熱交換器40に供給し、また、第9の配管59を介して第8の配管58に供給した。
また、送風機30により送風されたガスの一部を、第1の熱交換器40にて、冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換することにより加熱した。
また、第1の熱交換器40から排出された加熱ガスを、第7の配管57、第8の配管58を介して第1の配管51に供給すると共に、非加熱ガスを、第9の配管59を介して第8の配管58に供給した。これにより、第8の配管58を介して、加熱ガスと非加熱ガスとを含んだ温度のガスを第1の配管51に供給した。これにより、混合ガスを加熱した。
上記の工程を連続的に行って、排気ガス中の易重合性物質を燃焼処理した。
上記排気ガスの処理における第1の配管51に供給する排気ガス、第1の配管51、第2の配管52、第8の配管58、第4の配管54および排出管75におけるガスの温度、圧力、流量、ガス組成を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記の排気ガス処理方法では、排気ガスを熱交換器に通さずに加熱したため、長期間にわたって安定に、易重合性物質を含有する排気ガスを処理でき、しかも燃焼反応温度を容易に制御できた。
【符号の説明】
【0039】
1 排気ガス処理装置
10 燃焼反応器
11 排気ガス供給用配管
20 冷却器
30 送風機
40 第1の熱交換器
51 第1の配管
52 第2の配管
53 第3の配管
54 第4の配管
55 第5の配管
56 第6の配管
57 第7の配管
58 第8の配管(返送用配管)
59 第9の配管
61 第1のガス温度測定器
62 ガス流量調整弁
63 第1の制御部
64 第2のガス温度測定器
65 第2の制御部
71 第2の熱交換器
72 第3の熱交換器
73 第10の配管
74 第11の配管
75 排出管
81 支燃性ガス供給用配管
82 水供給用配管
83 加熱水供給用配管
84 スチーム用配管
85 第3のガス温度測定器
86 圧力測定器
87 スチーム圧力調整弁
88 第3の制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼触媒が充填され、易重合性物質を含有する排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスが導入されて易重合性物質を燃焼する固定床断熱型燃焼反応器と、
該固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスを冷却する冷却器と、
該冷却器から排出されたガスの少なくとも一部を送風する送風機と、
前記送風機により送風されたガスの少なくとも一部を、前記固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスと、冷却器より上流で熱交換して加熱する熱交換器と、
該熱交換器によって加熱した加熱ガスを、前記排気ガスを移送するための配管、前記支燃性ガスを移送するための配管、前記混合ガスを移送するための配管のうちの1つ以上に供給するための返送用配管とを具備することを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項2】
前記熱交換器では、前記送風機により送風されたガスの一部を、前記固定床断熱型燃焼反応器から排出されたガスと熱交換して加熱し、
該排気ガス処理装置が、前記送風機により送風されたガスの残部の少なくとも一部の、前記熱交換器を経由しない非加熱ガスを、前記返送用配管に供給するための配管を具備することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記排気ガスが、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残ったガス、および/または、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残った液を蒸発させて得たガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
易重合性物質を含有する排気ガスおよび支燃性ガスを含む混合ガスを燃焼触媒に接触させて、易重合性物質を燃焼させる燃焼工程と、
該燃焼工程で生成したガスを冷却する冷却工程と、
該冷却工程で冷却したガスの少なくとも一部を送風する送風工程と、
該送風工程で送風したガスの少なくとも一部を、冷却工程で冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換して加熱する熱交換工程と、
該熱交換工程で加熱した加熱ガスを、前記排気ガス、前記支燃性ガス、前記混合ガスのうちの1つ以上に混合する混合工程とを有することを特徴とする排気ガス処理方法。
【請求項5】
熱交換工程では、送風工程で送風したガスの一部を、冷却工程で冷却する前の燃焼工程後のガスと熱交換して加熱し、
混合工程では、送風工程で送風したガスの残部の少なくとも一部の、前記熱交換工程を経ない非加熱ガスを、前記加熱ガスと共に前記排気ガス、前記支燃性ガス、前記混合ガスのうちの1つ以上に混合することを特徴とする請求項4に記載の排気ガス処理方法。
【請求項6】
混合工程への加熱ガスと非加熱ガスとの供給割合を調節して、前記排気ガスおよび前記支燃性ガスに加えて前記加熱ガスおよび前記非加熱ガスをさらに含んで燃焼工程に供給される混合ガスの温度を調整することを特徴とする請求項5に記載の排気ガス処理方法。
【請求項7】
前記排気ガスおよび前記支燃性ガスに加えて前記加熱ガスをさらに含んで燃焼工程に供給される混合ガスの温度を150〜300℃に調整することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
【請求項8】
前記排気ガスが、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残ったガス、および/または、易重合性物質を含む混合物から易重合性物質を分離して残った液を蒸発させて得たガスであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
【請求項9】
燃焼工程から排出されたガスの温度が400〜700℃であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の排気ガス処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−185618(P2010−185618A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30069(P2009−30069)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】