説明

排気ガス処理装置及びその製造方法

【課題】表面処理を受けた連続した無機質の繊維を使用して、触媒コンバータ及びその他の排気ガス処理装置のための、実質的に非膨張性である取付マットを含む排気ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排気ガス処理装置は、ハウジングと、ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、ハウジングと脆弱な構造物との間の隙間に配置された非膨張性の取付マットとから構成される。取付マットは、取付マットの保持力性能を高めるための表面処理を施された複数の無機質繊維を含む。排気ガス処理装置のための取付マットを製造する方法、及び取付マットを組み込まれた排気ガス処理装置を製造する方法についても開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
触媒コンバータ又はディーゼル微粒子トラップなどの排気ガス処理装置であって、ハウジングの内部に取り付けられた脆弱な構造物が、ハウジングと脆弱な構造物との間に配設された取付マットによって支持されるような排気ガス処理装置が提供される。
【背景技術】
【0002】
自動車やディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための触媒コンバータ組立体は、触媒を支持する構造物などの脆弱な構造物を含んでおり、これにより保持された触媒を用いて、排気ガス中に存在する、一酸化炭素及び炭化水素の酸化と、窒素酸化物の還元とを行っている。脆弱な触媒支持構造物は、金属製のハウジングの内部に取り付けられ、好ましくは、脆弱な材料、例えば、金属で形成されたモノリシックな構造物や、例えば、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、ジルコニア、菫青石、シリコンカーバイド、その他の砕け易い耐火セラミック材料などから作られる。これらの材料は、複数の小さい流路を備えたスケルトンタイプの構造を提供する。しかしながら、上述したように、これらの構造物は、しばしば、極めて脆弱である。実際、これらのモノリシック構造は、あまりに脆弱であるために、小さな衝撃荷重や応力によって、しばしば、ひび割れたり、つぶれたりする。
【0003】
脆弱な構造物は、金属製のハウジングの内部に収容され、脆弱な構造物の外面とハウジングの内面との間には空間ないし隙間が設けられる。脆弱な構造物を熱的及び機械的な衝撃やその他の上述した応力から保護すると共に、断熱及びガスシールを提供するため、脆弱な触媒支持構造物をハウジングの内部の所定位置に保持するに際しては、脆弱な構造物とハウジングとの間の隙間内に少なくとも1枚又は1層の取付材料ないし支持材料を配置することが知られている。
【0004】
今日、触媒コンバータ及びその他の排気ガス処理装置における取付マットとして使用されている材料には、Sガラスなどのアモルファスガラス繊維のような比較的安価なものから、アルミナ高含有酸化セラミック繊維などのより高価なものまである。膨張性の材料も、非膨張性の材料も、取付マットが使用される用途及び条件に応じて、これまで取付マットとして使用されて来たし、これからも使用され続けるだろう。
【0005】
取付マットの材料を選択する前に、使用されるモノリシック構造のタイプや、取付マットが使用される用途及び条件について決めなければならない。例えば、代表的には触媒コンバータに見受けられるような高温用途のためには、広い温度範囲にわたって適合可能な、耐久温度の高い取付マット材料が用いられる一方、ディーゼル触媒構造やディーゼル微粒子トラップに見受けられるような重い基板を用いた高い加速度荷重に適合するには、耐久温度が低くても弾性的でフレキシブルな材料が使用されるだろう。
とにかく、使用される取付マットの材料は、脆弱な構造物の製造者又は触媒コンバータの製造者によって定められた、あらゆる数の設計条件や物理的条件を満足できるべきである。例えば、現在の最新の技術水準による層状の取付マットの材料は、触媒コンバータが、触媒支持構造とも称するべき脆弱な構造物に対して金属製のハウジングを著しく膨張及び収縮させ、もって、取付マットに著しい圧縮及び解放のサイクルを長期にわたり引き起こすような、広い温度変動を受けたときであっても、好ましくは、脆弱な構造物に対して有効な残留保持圧力を働かせるべきである。高温用途で使用される、現在の最新の技術水準において最良の取付マットは、900℃を越える温度に達し、しばしば室温との間の温度サイクルを絶えず受けるような、最も厳しい用途にあっても、脆弱な構造物を充分に保持することが見い出されている。
【0006】
その他の取付マットは、高温環境における使用を要求されない場合でも、脆弱な構造物を充分な力や強度で有効に保持するが、不断の熱サイクルの下でも脆弱な構造物を破損させないような、充分な弾性及び可撓性を提供しなければならない。触媒コンバータの正常な運転条件の下では、脆弱な構造物が不用意に動いたり破損したりするの防ぐために、取付マットには、少なくとも5kPaの最小剪断強度が必要である。マットの剪断強度は、マットの保持圧力に、マットと脆弱な構造物との境界面における摩擦係数を掛けた値として定義される。触媒コンバータの代表的なマット製品における摩擦係数は、使用状態において、およそ0.45である。従って、高温用途のための取付マット、すなわち、触媒コンバータの温度が約900℃以上になる用途においては、高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、有効残留最小保持圧力が、少なくとも約10kPaあるべきである。
【0007】
ディーゼル微粒子トラップやディーゼル触媒構造など、その他の排気ガス処理装置にあっては、これらの装置は、触媒コンバータに見られる高温ほどの温度には達しないけれども、脆弱な構造物の重量と使用される装着技術とが異なるために、使用される取付マットには、上述とは異なる有効残留最小保持圧力を有することが求められる。これらの用途においては、脆弱な構造物が不用意に動いたり破損したりするのを防ぐため、取付マットには、少なくとも約25kPaという、より高い最小剪断強度が得られることが好ましい。これらのマット製品における摩擦係数は、重たい基板を用いた高い加速度荷重の用途にあっても、使用状態において、およそ0.45のままである。従って、このタイプの用途における取付マットにおいては、温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、有効残留最小保持圧力が、少なくとも約50kPaあるべきである。
【0008】
これまでの多くの取付マットは、高アルミナやムライトのセラミック繊維を用いることによって、高温用途に関連した熱サイクルを克服しようと試みて来た。ひとつの公知の実施形態においては、「オルガノゾル」とか「ゾルゲル」と通称される水溶液やコロイド分散液を用いて、セラミックの繊維を製造している。ゾルゲル過程によって形成されたセラミックの繊維によれば、モノリシック構造を取り付けるのに必要とされる高度の弾性が得られるけれども、繊維のコストが高いため、製造者は、他のより安価な解決策を探求せざるを得ない。さらに、これらのセラミック繊維は、繊維の代表的な平均直径が5ミクロン未満であり、場合によっては、3.5ミクロン未満である。従って、これらの繊維は呼吸され、つまり、肺に吸入されることができる。
【0009】
他の例としては、繊維質の取付マットを、膨張材料及び裏打ち層などの他の材料と組み合わせて使用することで、取扱い可能性や弾性のための充分な強度をもたせたり、適切な保持圧力を獲得させたりしている。
ゾルゲル由来のセラミック繊維の使用に代わる他の代替例として、溶融処理技術を用いて耐火性のセラミックを形成することが試みられている。ここわずか10年余の間に、耐火性のセラミック繊維、すなわち、約45〜60%のアルミナと約40〜55%のシリカを含有する繊維は、高温の触媒コンバータの製造者を満足させられる、製造者の要求に見合った充分な弾性値を有する取付マットを提供してきた。そうした耐火性のセラミック繊維を含有する取付マットは、高価であるだけでなく、その製造は、特にそれらが受けるプロセス処理に関して困難である。それらが実質的にショットフリーになるように注意しなければならない。
【0010】
低温触媒コンバータの用途、例えばディーゼルエンジン車両におけるターボチャージャー・ダイレクト・インジェクション(TDI)にあっては、排気ガスの温度は代表的には約150℃程度で、決して300℃を越えることは無い。これらの用途やその他のわずかに高温の用途においては、様々なタイプの取付マットを使用できる。多くの触媒コンバータの用途において、膨張性のマット、すなわち、グラファイトや蛭石などの膨張性材料から作られた取付マットが使用されて来た。膨張性材料から作られた取付マットが、これらの低温用途においても不都合であることが観察されたのは、つい最近のことである。
この不都合が生じる理由のひとつは、排気温度が低すぎるために、代表的には蛭石である、膨張性粒子を充分に膨張できないことである。従って、マットは脆弱な構造物に対して充分な圧力を提供することが出来ずに、故障する傾向がある。こうした失敗の第2の理由は、膨張性のマット製品に使用されている有機バインダ組織が劣化して、保持圧力に損失を引き起こすことである。
【0011】
このために、非膨張性の取付マットが開発されて、現在では産業界で一般的になっている。これらの材料は、従来技術の膨張性マットに比べて、はるかに広い温度範囲にわたる使用に適している。
非膨張性のマット組織は、グラファイトや蛭石などの膨張性材料を実質的に含有せず、従って、実質的に非膨張性である。「実質的に非膨張性」であるとは、熱を適用させたとき、膨張性のマットにおいて予想されるほどには、マットが容易に膨張しないことを意味している。もちろん、熱膨張係数に応じたいくらかの膨張はマットに生じるが、膨張の量は、実用的な分量の膨張性材料を使用したマットの膨張に比べれば、微弱で些細である。これまで、こうした非膨張性のマットは、高温に耐えられる無機質の繊維と、任意的事項としての、バインダとから構成されて来た。高温に耐えられるとは、約900℃を越える温度にて、繊維を使用可能であることを意味する。用途、マットが使用される温度領域、および、使用されるモノリスのタイプに応じて、これまでに知られている、非膨張性のマットは、アルミナ/シリカの繊維(ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市にある、Unifrax社から入手可能なFIBERFRAX(登録商標))及びSaffil社から入手可能な高アルミナ繊維マットから選択される1又は複数のタイプの繊維を含有している。
【0012】
現在、より高い温度の用途のための、最新の技術水準による非膨張性の取付マットにおいて使用されている繊維は、一般に、高いアルミナ含有量のものである。例えば、耐火性のセラミック繊維は、実質的にアルミナとシリカとから組成されていて、代表的には、約45〜約60重量%のアルミナと、約40〜約55重量%のシリカとを含有しており、一方、その他のアルミナ/シリカのセラミック繊維、例えばゾルゲル過程によって作られるアルミナ又はムライトのセラミック繊維は通例、50%以上のアルミナを含有している。S2ガラス繊維は代表的に、約64〜約66%のシリカと、約24〜約25%のアルミナと、約9〜約10%のマグネシアとを含有している。一般的に、繊維に使用されるアルミナの量が多くなるほど、より高温の用途で繊維を使用できると考えられてきた。従って、こうした目的のためには、実質的にアルミナからなる繊維を使用することが提案されていた。
【0013】
その他の非膨張性の取付マットは、一般的に、極めて厚く、排気ガス処理装置の用途に求められる構造的な完全性を欠いており、取付マットがぼろぼろに崩れるのを防ぐためには袋に入れて取り扱うことを求めるものさえある。これらの取付マットは、据え付けのためのサイズに切断することも困難であり、さらには、触媒支持構造とハウジングとの間の隙間内に、取付支持に必要な充分な材料を満たすには実質的に圧縮しなければならない。
触媒コンバータ用の非膨張性の取付マットの製造や、その他の高温用途の排気ガス処理装置のために、さらに別のタイプの材料を使用する試みも行われており、例えば、ショットフリーの酸化セラミック繊維からなる、可撓性の不織の取付マットが、約60〜約85重量%のアルミナと、約40〜約15重量%のシリカとを含有するアルミノ珪酸塩繊維、結晶石英繊維、又は双方がある。これらのアルミノ珪酸塩の繊維は、耐火性のセラミック繊維よりも高いアルミナ含有量を有しているけれども、上述したゾルゲル技術を用いて製造される。
【0014】
他方において、結晶石英繊維は、本質的に純粋なシリカ(すなわち、99.9%のシリカ)から作られる。これらの繊維は、結晶質の石英に由来する原料を使用した、溶融引き出しプロセスによって作られ、いかなる方法においても浸出されることはない。そうした繊維は、ニューヨークにある、J.P. Stevens, Slater社による商品名ASTROQUARTZや、ケンタッキー州ルーイヴィルにある、Saint Gobain社による商品名QUARTZELとして入手可能である。しかしながら、これらの石英繊維は、コストが高いため、商業的には取付マットに使用することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,290,522号
【特許文献2】独国特許公報第19858025号
【特許文献3】米国特許第2,624,658号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0973697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
同様に、米国特許第5,290,522号が開示している、触媒コンバータ用の不織の取付マットは、当業者に公知であり、オハイオ州トリードにある、Owens Corning社からS2ガラスとして商業的に入手可能な、マグネシア/アルミナ/珪酸塩の繊維、及び上に引用した特許で議論されているASTROQUARTZの石英繊維を含有している。この特許においては、比較例Iと称する、シリカを含有する商業的に入手可能な浸出ガラス繊維を含む取付マットは、特許権者が高温の触媒コンバータ用の取付マットとしての適性を判断するために採用した高温振動試験に合格しなかったと明白に記載されている。
【0017】
例えば、独国特許公報第19858025号においては、シリカを含有する取付マットを非膨張性の材料と組み合わせて、触媒コンバータの用途に用いる試験が行われている。
【0018】
米国特許第2,624,658号には、高いシリカ含有量をもった浸出ガラス繊維の製造方法が詳細に述べられており、同文献の全体をここで参照によって引用する。高いシリカ含有量をもった浸出ガラス繊維の別の製造方法は、欧州特許出願公開第0973697号に開示されている。米国特許と欧州特許出願公開とはいずれも、結果物たる繊維から高温耐久製品を形成するための、浸出シリカ繊維の製造について開示しているけれども、繊維がいったい何の用途に適しているのかについては、また、触媒コンバータなどの排気ガス処理装置のための取付マットとして使用可能であるとは、まったく言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
広義には、表面処理を受けた連続した無機質の繊維を使用して、触媒コンバータ及びその他の排気ガス処理装置のための、実質的に非膨張性である取付マットを形成する。ある種の実施形態においては、高いシリカ含有量をもった、溶融形成された浸出ガラス繊維に表面処理を施して、触媒コンバータやその他の排気ガス処理装置のための、非膨張性の取付マットを形成するために使用する。「実質的に非膨張性」であるとは、熱を適用させたとき、充分な分量の膨張性材料を含有する取付マットにおいて予想されるほどには、マットが容易に膨張しないことを意味している。熱を適用すれば、熱膨張係数に応じたいくらかの膨張は取付マットに生じるが、膨張の量は、充分な分量の膨張性材料を使用した取付マットの膨張に比べれば、微弱である。
【0020】
他のある種の実施形態においては、シリカを含有する、浸出されて表面処理されたガラス繊維、または、かかるガラス繊維からなる取付マットを、触媒コンバータの内部に配置する前に熱処理することによって、取付マットの保持圧力性能をさらに高めている。
本発明によって提供される、排気ガスの処理装置は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、前記ハウジングと前記脆弱な構造物との間の隙間に配置された、実質的に非膨張性である取付マットであって、前記取付マットは、保持圧力性能向上表面処理を施された無機質の繊維を含んでいるような上記取付マットと、を備えていることを特徴とする。
【0021】
ある種の実施形態による、排気ガスの処理装置は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、前記ハウジングと前記脆弱な構造物との間の隙間に配置された、実質的に非膨張性である取付マットであって、前記取付マットは、少なくとも67重量%のシリカを含有する、溶融形成された浸出ガラス繊維から構成され、前記浸出ガラス繊維の外面の少なくとも一部分には保持圧力性能向上表面処理が施されていることを特徴とする。
【0022】
また、排気ガスの処理装置を製造する方法も提供され、この方法は、無機質の繊維を備えた取付マットであって、保持圧力性能向上表面処理を施されてなる取付マットを提供する段階と、排気ガスの処理に適合した脆弱な構造物の少なくとも一部分のまわりに、取付マットを巻き付ける段階と、ハウジングの内部に脆弱な構造物と取付マットとを配置して、脆弱な構造物を取付マットによってハウジングの内部に弾性的に保持させる段階と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
他の実施形態による排気ガスの処理装置を製造する方法は、取付マットは、シリカを含有する溶融形成されたガラス繊維からなり、溶融形成されたガラス繊維を形成するために、溶融形成されたガラス繊維を処理する段階であって、処理されたガラス繊維は、処理前のガラス繊維のシリカ含有量に比べて大きなシリカ含有量を有し、処理されたガラス繊維は、少なくとも67重量%のシリカを含有し、前記処理されたガラス繊維の外面の少なくとも一部分に処理を施す、上記処理する段階と、排気ガスの処理に適合した脆弱な構造物の少なくとも一部分のまわりに、取付マットを巻き付ける段階と、ハウジングの内部に脆弱な構造物と取付マットとを配置して、脆弱な構造物を取付マットによってハウジングの内部に弾性的に保持させる段階と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
排気ガスの処理装置におけるハウジングの内部に、脆弱な構造物を保持するための取付マットを製造する方法も提供され、この方法は、無機質の繊維を提供する段階と、無機質の繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力向上表面処理を適用する段階と、表面処理された無機質の繊維をマットの構造に組み入れる段階と、を備えている。表面処理された無機質の繊維を含有する取付マットがハウジングの内部に脆弱な構造物を保持する保持圧力性能は、保持圧力性能向上表面処理を受けていない同一の無機質の繊維を含有する取付マットに比べて大きくなる。
【0025】
他の実施形態による、無機質の繊維を含有する取付マットを製造する方法も提供され、この方法は、少なくとも67重量%のシリカを含有する浸出ガラス繊維の外面に、保持圧力性能向上表面処理を適用する段階と、表面処理された浸出ガラス繊維をマットの構造に組み入れる段階と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明による取付マットを含む触媒コンバータを示した一部破断斜視図である。
【図2A】図2Aは、繊維の外面に表面処理を施された無機質繊維を示した顕微鏡写真である。
【図2B】図2Bは、繊維の外面に表面処理を施された無機質繊維を示した顕微鏡写真である。
【図2C】図2Cは、繊維の外面に表面処理を施された無機質繊維を示した顕微鏡写真である。
【図2D】図2Dは、繊維の外面に表面処理を施された無機質繊維を示した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によって提供される、排気ガス処理装置は、脆弱な構造物を有し、脆弱な構造物は、ハウジングと脆弱な構造物との間に配設された取付マットによって、ハウジングの内部に取り付けられて支持される。取付マットは、図1に示した触媒コンバータにおいて使用されなければならないと制限する意図はなく、そのため、例示的な実施形態においては形状だけを示していることを理解されたい。実際、取付マットは、ディーゼル触媒構造や、ディーゼル微粒子トラップ、又はその他の類似物など、排気ガスの処理に適したあらゆる脆弱な構造物を取り付けないし支持するために使用することができる。触媒構造は一般的に、1又は複数の多孔質の管状又はハニカム状の構造物を、耐熱材料によってハウジングの内部に取り付けられて具備している。それぞれの構造物は、排気ガス処理装置のタイプによるが、概して1平方インチあたり約200〜約900又はそれ以上の数の通路ないしセルを備えている。ディーゼル微粒子トラップは、微粒子トラップの内部のそれぞれの通路ないしセルが、片方又は他方の端部において閉じている点において、触媒構造とは異なっている。排気ガス中の微粒子は、多孔質の構造物の内部に集められてから、高温のバーンアウトプロセスによって再生処理される。自動車の用途以外に、取付マットの用途には、化学産業における排出物質(排気ガス)の排気筒用の触媒コンバータが含まれる。「脆弱な構造物」という用語は、金属又はセラミックのモノリス又はその他の類似物であって、脆弱ないし壊れ易い性質を有し、本願に開示されたような取付マットによって利益が得られる構造物を意味し含むことを意図している。
【0028】
排気ガスを処理するため装置のひとつの代表的な形態は、図1において参照符号10にて示したような、触媒コンバータである。触媒コンバータ10は、略管状のハウジング12を具備し、ハウジングは、例えば高温に耐えられる鋼などの金属からなる2つの部品を、フランジによって互いに保持して形成されている。変形例としては、ハウジングは事前に形成されたキャニスターを含み、その中に、取付マットを巻き付けられた触媒支持構造物が挿入される。ハウジング12は、片端には入口14を具備し、他端には出口(図示せず)を具備している。入口14と出口とは、その外側端部が適切に形成されることで、内燃機関の排気系統における導管に結合される。装置10は、脆弱なセラミックのモノリス18などの、脆弱な触媒支持構造物を含み、後述する取付マット20によって、ハウジング12の内部に支持及び拘束されている。モノリス18は、片端の入口端面から他端の出口端面にわたって軸線方向に延在してなる、複数のガス浸透通路を具備している。モノリス18は、任意の公知のやり方及び形態によって、任意の適当な耐火性の金属又はセラミック材料から構成されている。モノリスは代表的には、楕円形や円形の断面形状を有するが、その他の形状とすることも可能である。
【0029】
モノリスは、ハウジングから所定の距離ないし隙間を隔てられるが、かかる距離は、触媒コンバータや、ディーゼル触媒構造、又はディーゼル微粒子トラップなど、使用される装置のタイプやデザインに応じて変えられる。この隙間は取付マット20で充填されて、セラミックのモノリス18に弾性的な支持を提供する。弾性的な取付マット20は、触媒支持構造物に、外部環境に対する断熱と、機械的な支持との両方を提供し、広範囲の排気ガス処理装置の運転温度にわたって、脆弱な構造物を機械的な衝撃から保護する。
【0030】
一般的に、取付マットは連続した無機質の繊維を含み、繊維に表面処理を施すことによって、排気ガス処理装置10のハウジング12の内部に脆弱な構造物18を弾性的に保持するための、取付マット20の保持圧力能力を高めている。制限がないならば、無機質の繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力性能向上剤を適用して、取付マットの保持圧力性能を高める。繊維が、表面処理工程に耐えられると共に、排気ガス処理装置の高い運転温度に耐えられ、かつ、触媒コンバータのハウジングの内部に脆弱なモノリスを保持するための最小保持圧力性能を提供する限り、取付マットには、結晶質及び多結晶質の無機質繊維が使用される。制限がないならば、取付マット及び排気ガス処理装置の準備に使用するのに適した無機質繊維として、アルミナの繊維、アルミノ珪酸塩の繊維、アルミナ/マグネシア/シリカの繊維、カルシア/マグネシア/シリカの繊維、マグネシア/シリカの繊維、Sガラスの繊維、Eガラスの繊維、石英の繊維、及びシリカの繊維が含まれる。
【0031】
ある種の実施形態においては、取付マット20を構成する1又は複数の非膨張性の層は、溶融形成された、アモルファスの、高温に耐えられる浸出ガラス繊維であって、高いシリカ含有量を有し、マットの保持圧力性能を高めるために表面処理を受けた繊維から構成される。取付マット20は、任意的事項としては、バインダー又はバインダーとして機能するのに適した他の繊維を含む。「高いシリカ含有量」という用語は、繊維に含有されるシリカが、繊維のあらゆるその他の組成成分よりも多量であることを意味する。実際には、後述の如く、浸出後におけるこれらの繊維のシリカ含有量は、結晶質の石英に由来する繊維や、純粋なシリカの繊維を除けば、Sガラス繊維を包含する、シリカを含有するその他のあらゆるガラス繊維に比べて、多量になっている。
【0032】
取付マット、排気ガス処理装置、及びその製造方法について、例示的な実施形態を参照してさらに説明するが、かかる実施形態において使用される繊維は、高い含有量のシリカを含む浸出ガラス繊維であって、高いシリカ含有量のガラス繊維の外面の少なくとも一部分には表面処理が施されたものである。
【0033】
取付マットは一般的に、一体的な実質的に非膨張性である複合シートであって、表面処理を受けた、シリカを含有する溶融形成された浸出ガラス繊維から作られ、繊維は、任意的事項としては少量のアルミナ及びその他の非シリカ系の酸化物を含有する。「溶融形成」という用語は、繊維が溶融プロセス技術を用いて作られており、ゾルゲル又はその他の化学的分散技術によっては形成されていないことを意味する。「一体的」という用語は、製造されて焼きしまりを受けた後の取付マットが、自己支持構造を有し、繊維や、プラスチック、又は紙などの補強層ないし保持層(マットにスティッチ結合されるものを含む。)を必要とすることなく、崩壊させずに取扱い又は操作できることを意味している。「実質的に非膨張性」という用語については、上に定義した通りである。従って、ある種の実施形態においては、取付マットは、膨張性の材料、ゾルゲル由来のシリカ繊維、及び/又は、裏打ち層ないし補強層を全く含まないことを認識されたい。
【0034】
上述したように、ガラス繊維は、繊維のシリカ含有量を高めるための処理を受けることが好ましい。すなわち、繊維を溶融引き出しするなどして、最初に溶融処理されて繊維に形成されたとき、これらの繊維は代表的に、多くの非シリカ系の酸化物及びその他の成分を含有している。すなわち、それらは例えば、グラスファイバーの特性を有する。それらは、当初には、米国特許第5,290,522号や米国特許第5,380,580号に開示された結晶質の石英に由来する繊維のようには、純粋なシリカ繊維から形成されるものではない。代わりに、これらの「不純な」ガラス繊維は、酸化ナトリウムや酸化硼素などの非シリカ系の酸化物、及びその他のあらゆる水分や酸溶解性の成分を取り除くために処理しなければならず、それにより、高いシリカ含有量の繊維を製造し、もって、シリカ含有量を、処理前のガラス繊維のシリカ含有量よりも大きくする。処理された結果物としてのガラス繊維におけるシリカ含有量は、当初に存在していた非シリカ系の酸化物及びその他の成分の量に依存すると共に、これらの材料が繊維から抽出された度合いにも依存する。
【0035】
浸出(溶脱)は、繊維のシリカ含有量を高めるための、ガラス繊維に対する好ましい処理のひとつである。ガラス繊維は、任意のやり方にて、当業者に公知のあらゆる技術を用いて、浸出させることができる。一般的に、浸出を行うためには、溶融形成されたガラス繊維を、酸の溶液、または、非シリカ系の酸化物やその他の成分を繊維から抽出するのに適したその他の適当な溶液に曝している。前述したように、様々な公知の浸出技術の詳細については、米国特許第2,624,658号及び欧州特許出願公開第0973697号に開示されているが、使用できる浸出技術はこれらに限られるものではない。
【0036】
これらのガラス繊維に浸出を施した後におけるシリカの純度は、浸出前に比べて、はるかに高くなる。一般的に、浸出されたガラス繊維は、少なくとも約67重量%のシリカ含有量を有する。これは、Sガラスのシリカ含有量よりも大きな値である。ある種の実施形態においては、浸出されたガラス繊維は、少なくとも90重量%を含有する。実際、浸出ガラス繊維におけるシリカ含有量は、約90〜約99重量%の範囲にわたる。これらの繊維のシリカ含有量は、99.9%を越えるシリカを含有する石英繊維や純粋なシリカ繊維を除くならば、Sガラス繊維を包含する、シリカを含有するその他のあらゆる公知のガラス繊維に比べて、多量になっていることを理解されたい。
【0037】
ある種の実施形態においては、ガラス繊維は、約93〜約95重量%のシリカを含有し、繊維が含む残留物は、アルミナや、酸化ナトリウム、及びその他のアルカリ又はアルカリ土類金属などの、非シリカ系の酸化物になっている。アルミナの量は好ましくは、約4〜約6重量%であり、酸化ナトリウムを含む、その他の酸化セラミック及び成分は、浸出ガラス繊維の約1重量%未満である。浸出ガラス繊維は、1重量%未満のアルカリ又はアルカリ土類金属を含んでいる。浸出ガラス繊維から、すべての非シリカ系の酸化物を取り除く必要はないことを理解されたい。また、繊維は、実質的にショットフリーである。高いシリカ含有量をもった浸出ガラス繊維は、一般的に、10重量%以下のショット含有量を有している。ある種の実施形態においては、高いシリカ含有量をもった浸出ガラス繊維は、一般的に、5重量%以下のショット含有量を有している。
【0038】
これらの浸出ガラス繊維は、高アルミナ繊維などのセラミック繊維や、特に上述した結晶質石英に由来する繊維と比べると、比較的安価である。これらの浸出ガラス繊維の平均繊維直径は、少なくとも約3.5ミクロンよりも大きく、ある種の例においては、少なくとも約5ミクロンよりも大きい。平均的に、ガラス繊維は代表的に、約9ミクロンの直径を有する。適当な浸出ガラス繊維は一般に、平均繊維直径が約5〜約14ミクロンである。従って、排気ガス処理装置の取付マットを作るのに使用される浸出ガラス繊維は、呼吸で吸い込まれることがない。
【0039】
浸出ガラス繊維は、取付マットの生産に一般的に使用される任意の形態にて提供される。ある種の実施形態においては、これらの繊維は、ぶつ切りにされたくず繊維である。浸出前の繊維は、当業者に公知の任意の方法によって生産されるが、代表的には、繊維の生産において費用効率が良いアプローチを提供する、溶融スピン又は溶融引き出しのいずれかの公知の溶融プロセス技術を使用して形成されることを理解されたい。ある種の実施形態においては、ガラス繊維は、溶融引き出しされる。
【0040】
高いシリカ含有量を有し、触媒コンバータ又はその他の公知のガス処理装置における取付マットの生産に用いるのに適した浸出ガラス繊維の例としては、独国のBelChem Fiber Materials GmbH社から、BELCOTEXの登録商標にて入手可能な浸出ガラス繊維、カリフォルニア州ガーディーナにある、Hitco Carbon Composites社から、REFRASILの登録商標にて入手可能な浸出ガラス繊維、及び、ベラルーシ共和国にあるPolotsk-Steklovolokno社から、PS-23の登録商標にて入手可能な浸出ガラス繊維がある。
【0041】
BELCOTEXの繊維は、標準的なタイプの、プリヤーンのステープル繊維である。この繊維は、およそ550テックスの平均繊度を有し、一般に、アルミナで改質された珪酸から作られる。BELCOTEXの繊維は、アモルファスであって、一般に、約94.5%のシリカと、約4.5%のアルミナと、0.5%未満の酸化ナトリウムと、0.5%未満のその他の成分を含有している。この繊維は、約9ミクロンの平均繊維直径を有し、融点は、1500℃〜1550℃の範囲である。この繊維は、1100℃までの温度に対する耐熱性を有し、代表的にはショットフリーかつバインダフリーである。
【0042】
REFRASILの繊維は、BELCOTEXと同様に、高いシリカ含有量を有するアモルファスの浸出ガラス繊維であって、1000℃〜1100℃の温度範囲における断熱用途に使用される。この繊維は、直径が約6〜約13ミクロンの間で、融点は約1700℃である。この繊維は、浸出の後には、代表的に、約95重量%のシリカ含有量を有する。約4重量%の量のアルミナが存在すると共に、1%以下の量のその他の成分が存在する。
【0043】
Polotsk-Steklovolokno社から入手可能なPS-23(登録商標)の繊維は、高いシリカ含有量を有するアモルファスのガラス繊維であって、少なくとも約1000℃の耐熱性を要求される断熱用途に使用される。この繊維は、長さが約5〜約20mmの範囲であり、繊維の直径は約9ミクロンである。この繊維は、REFRASILの繊維と同様に、約1700℃の融点をもつ。
【0044】
浸出ガラス繊維をマットの形態に作製したものについては、代表的に、マットの保持圧力が不適切であることが見い出された。シリカを含有する浸出ガラス繊維からなる取付マットに、触媒コンバータのハウジングの内部において脆弱な構造物を保持するために適した最小保持圧力をもたせることは、当初には可能であろうが、マットが受ける機械的又は熱的なサイクルによって、かかる最小保持圧力を維持する能力は急速に破壊される。従って、触媒コンバータの取付マットの製造に、高いシリカ含有量の浸出ガラス繊維を用いることを、当業者は断念するだろう。この事実は、米国特許第5,290,522号に報告されている、高温振動試験の失敗によっても確認される。
【0045】
高いシリカ含有量を有する溶融形成された浸出ガラス繊維に対して表面処理を施すことで、複数の浸出された高いシリカ含有量のガラス繊維を含む、取付マットの保持圧力性能は高まる結果となる。特定の理論に縛られている分けではないが、浸出ガラス繊維に表面処理を適用することによって、繊維表面の摩擦が高まる結果になると信じられている。繊維の外面の摩擦が高まることによって、取付マット自体における繊維同士の間、取付マットの繊維と排気ガス処理装置のハウジング内面との間、及び取付マットの繊維と取付マットに接触している脆弱な構造物の外面との間、のそれぞれにおけるスリップの量は実質的に減少する。
【0046】
ひとつの実施形態においては、浸出ガラス繊維の外面は、繊維の表面の少なくとも一部分に無機質の微粒子材料を適用することによって、処理される。浸出ガラス繊維の繊維外面を処理するのに利用できる、効果的な無機質の微粒子材料としては、限定はしないが、コロイド状のアルミナ分散液、コロイド状のシリカ分散液、コロイド状のジルコニア分散液、及びこれらの混合物、が含まれる。ひとつの実施形態においては、浸出ガラス繊維の外面を処理するのに使用する無機質材料として、コロイド状のアルミナ分散液を用いることで、取付マットの全体的な保持圧力性能を高めている。
【0047】
取付マットにおける少なくとも一部分の浸出ガラス繊維の少なくとも一部分の外面は、連続した又は不連続な、コロイド状のアルミナのコーティングを具備する。コロイド状のアルミナは、限定はしないが、コーティング、ディッピング、スプレー、スプラッシなどの適当な手段によって、浸出ガラス繊維の外面に適用される。コロイド状のアルミナは、連続的なパターン又は不連続なパターンのいずれかによって、浸出ガラス繊維の外面に適用される。さらに、コロイド状のアルミナを浸出ガラス繊維の外面に適用する工程は、ガラス繊維の製造中又は製造後に実行される。
【0048】
排気ガス処理装置のための取付マット構造が、コロイド状のアルミナ、コロイド状のシリカ、及び/又は、コロイド状のジルコニアによる表面処理を施された、複数のガラス繊維の表面を含むことで、脆弱なモノリス構造物の外面と、排気ガス処理装置のハウジングの内面との両方について、より大きな摩擦力を働かせると信じられている。従って、表面処理されたガラス繊維を含む取付マットは、排気ガス処理装置のハウジングの内部に脆弱なモノリスを弾性的に保持するための、より高い剪断強度を有する。
【0049】
ある種の実施形態においては、取付マットを形成する前における浸出され表面処理されたガラス繊維、又は、これらの繊維から作られた取付マットの形成後に、熱処理を施すことによって、取付マットの保持圧力性能をさらに向上させる。
ひとつの特定の実施形態においては、これらの浸出ガラス繊維(または、それらを含む取付マット)を、少なくとも約900℃を越える範囲の温度にて熱処理する。また、高いシリカ含有量を有し、コロイド状のアルミナ分散液などのコロイド状の無機酸化物の分散液による表面処理を受けた浸出ガラス繊維を、約900℃〜約1100℃の範囲の温度で熱処理することによって、取付マットの保持圧力性能がさらに高まることが見い出されており、これらの繊維を採用した取付マットは、膨張及び収縮を1000サイクル繰り返した後においてさえ、排気ガス処理装置の内部において必要な最小保持圧力を働かせる。
熱処理され浸出され表面処理を施された、高いシリカ含有量のガラス繊維においては、繊維のクリープ抵抗が改善されると信じられている。また、繊維を処理する熱は、追加的な水成分を繊維から取り除くと信じられている。熱処理され、表面処理され、浸出された、高いシリカ含有量のガラス繊維を使用するならば、グラスファイバーの融点をかなり越える、高温の用途に適した取付マットを生産することができる。
【0050】
浸出ガラス繊維に対する熱処理は、取付マットの形成前に、または、取付マットの形成後に、行われる。取付マットの形成後に熱処理する場合には、取付マットは少なくとも約900℃の温度にて有効時間にわたって熱処理されて、用途に応じたハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための、取付マットの最小保持圧力性能を向上させる。同様に、取付マットの形成前に熱処理する場合には、浸出され表面処理されたガラス繊維は、少なくとも約900℃の温度にて有効時間にわたって加熱されて、取付マットに形成されたときには、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための最小保持圧力性能がさらに向上している。熱処理のための特定の時間長さは、マットの厚みや、加熱の均一性、使用する熱源のタイプ、及び、熱源の予熱時間や温度などに応じて、広範囲に変わる。これらの変数のすべては当業者に良く理解されるので、少なくとも約900℃の温度にて加熱する場合における有効時間については、過度の実験をせずとも、容易に決められる。
【0051】
一般的に、熱処理については、比較的小さくて薄いマットに、優秀な均一熱源を用いた場合における15分間以下から、大きくて厚いマットを使用した場合における1時間以上(予熱及び放熱時間を含まない。)にまでわたることが認められた。ある種の実施形態においては、取付マット又は浸出されたガラス繊維は、約900〜約1100℃の間の温度にて、1時間以上にわたって加熱される。繊維の失透をまねく温度及び/又は時間を下回る、あらゆる時間及び温度の熱処理によって、上に概説したのと同じ効果が得られ、これは、本発明の範囲に包含される。一般的に、繊維又はマットは、意図した使用温度以上の温度にて、熱処理される。より低温での熱処理は、熱処理温度を実質的に上回る温度域における熱サイクルが求められる用途において、取付マットの有用性に影響する。
【0052】
ある種の実施形態においては、高いシリカ含有量を有し、コロイド状のアルミナによる表面処理を施された浸出ガラス繊維は、約900〜約1100℃の温度にて約2時間にわたって熱処理される。複数のそうした繊維を取り入れられた結果物としての取付マットは、触媒コンバータのハウジングの内部に脆弱なモノリスを保持するための、必要な最小保持圧力を所有する。図2A乃至図2Dに示すように、高いシリカ含有量の熱処理された浸出ガラス繊維は、コロイド状のアルミナの表面処理を施されると、繊維の表面に均一で(連続又は不連続な)コーティングを提供する。電子顕微鏡によって観察しても、コロイド状のアルミナが追加された表面は、アモルファスの性質を有し、ムライトの結晶などのいかなる結晶の形成も含んでいない。
【0053】
ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持する最小保持圧力をさらに向上及び維持するための、取付マットに用いられる浸出され表面処理されたガラス繊維の処理に使用されるその他の方法には、例えば、繊維のクリープ抵抗を高めるための、イオン交換工程や拡散工程がある。しかしながら、熱サイクルの後にハウジングの内部に脆弱な構造物を保持する、マットに対する最小保持圧力を向上及び維持させるには、浸出ガラス繊維や取付マットを処理できる本質的にあらゆる方法を使用できることを理解されたい。
【0054】
取付マットには好ましくは、100重量%までの、シリカを含有する浸出され表面処理されたガラス繊維が使用される。しかしながら、他の実施形態においては、マットは任意的事項として、その他の公知の繊維、例えば、アルミナ/シリカの繊維や、特定の所望の温度用途のための取付マットの生産に用いるのに適した、その他のセラミック繊維又はガラス繊維を含んでも良い。従って、耐火性のセラミック繊維などのアルミナ/シリカの繊維は、任意的事項としては、高温用途や広範囲の温度用途に使用することもできる。その他のセラミック繊維又はガラス繊維、例えばSガラスは、同様又は低温の用途において、浸出ガラスシリカ繊維と併用することができる。しかしながら、そうした例においては、取付マットは、シリカを含有する浸出され表面処理されたガラス繊維を、少なくとも50重量%は含むことが好ましい。言い換えれば、マットの生産に利用される繊維の大部分は、シリカを含有する浸出され表面処理されたガラス繊維であって、ある種の実施形態においては、少なくとも80重量%の繊維は、シリカを含有する浸出され表面処理されたガラス繊維である。
【0055】
ある種の代替例による実施形態においては、マット全体の100重量%のうち、0〜約50重量%の分量の、S2ガラス又はその他類似の繊維を、取付マットに加えても良い。これらのガラス繊維は、その溶融温度などに起因して、主として低温用途に使用されることが予想される。
他の代替的な実施形態においては、取付マットは、浸出ガラス繊維に加えて、耐火性のセラミック繊維を含む。耐火性のセラミック繊維、すなわち、アルミナ/シリカの繊維又はその他の類似物が利用される場合には、それらの繊維は、マット全体の100重量%のうち、0〜約50重量%未満の範囲の量だけ含まれる。
【0056】
前述したように、取付マットは、バインダーを含み、または、含まない。バインダーが使用される場合には、成分は、混合物又はスラリーを形成するように混合される。繊維のスラリーとバインダーとをマット構造に形成してから、バインダーを取り除くことによって、実質的に熱処理された繊維(及び、任意的事項として追加的な繊維)だけを含有する取付マットが提供される。代表的に、犠牲となるバインダーは、当初に繊維を一緒に結合するために使用される。使用されるバインダーは、代表的に有機物のバインダーである。「犠牲となる」という用語は、バインダーは最終的には取付マットから焼失して、脆弱な構造物を支持する取付マットとしては、浸出ガラス繊維だけが残される(及びその他のセラミック繊維又はガラス繊維を用いた場合にはそれらを含む。)ことを意味している。
適当なバインダーには、水性及び非水性のバインダーが含まれるが、好ましくは、利用されるバインダーは反応性の熱硬化型のラテックスであって、硬化後には、可撓性の素材となって、前述の如く、据え付けられた取付マットから焼失する。適当なバインダーないし樹脂の例には、限定はしないが、水性ベースのアクリルのラテックスや、スチレンブタジエン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリウレタンなどが含まれる。その他の樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びポリビニルエステルなどの、低温で可撓性の熱硬化性樹脂が含まれる。好ましくは、約5〜約10%のラテックスが採用されるが、約8%が最も好ましい。バインダーのための溶媒には、水や、アセトンなどの使用するバインダーに適した有機溶媒が含まれる。溶媒中におけるバインダーの溶液強度は、所望のバインダー荷重及びバインダ組織の作業性(粘性、固体含有量など)に基づいて、在来の方法によって定められる。
【0057】
バインダーに代えて、マットは、マットを互いに保持するために、浸出ガラス繊維に加えて、その他の繊維を含むこともできる。そうした繊維は、バインダー繊維として、当業者に知られている。これらの繊維は、浸出ガラス繊維が互いに結合されるのを助けるために、全体成分の100重量%のうち、0〜約20重量%の範囲の分量だけ使用される。
シリカを含有する浸出され表面処理された繊維を含む取付マットは、取付マットを準備するために一般的に使用される、あらゆる公知の技術によって準備される。例えば、紙漉き工程を用いて、浸出され表面処理されたガラス繊維を、バインダーと混合し、又は、混合物やスラリーを形成するためのバインダーとして機能し得るその他の繊維と混合するあらゆる混合手段を使用できるけれども、好ましくは、バインダーが使用される場合には、繊維の成分は、約0.25%〜5%の粘稠度又は固体含有量(0.25〜5の固体に対して99.75〜95の水分)に混合される。次に、スラリーを水で希釈して形成を高め、最終的には、凝集剤と排出保持助長薬剤を用いて凝集させる。次に、凝集した混合物ないしスラリーを、紙漉き機械に配置して、繊維含有紙の層に形成する。変形例としては、層を形成するには、スラリーを真空鋳造しても良い。いずれの場合にも、それらを代表的にはオーブンの中で乾燥させる。採用される標準的な製紙技術についての詳しい説明は、米国特許第3,458,329号に開示されているので、同文献をここで参照によって引用する。バインダーが使用され、浸出され表面処理されたガラス繊維を熱処理する場合には、繊維を熱処理する段階は、浸出ガラス繊維にバインダー又はバインダー用繊維を加える前に行うべきであることを認識されたい。
【0058】
他の実施形態においては、浸出され表面処理されたガラス繊維は、従来の手段、例えば空気乾燥成層法によってマットに加工される。この段階におけるマットは、構造的な完全性に極めて乏しく、従来の触媒コンバータ及びディーゼルトラップの取付マットに比べて、極めて厚い。従って、結果物たるマットは、当業者に一般的に知られているように、マットの密度を高めて、その強度を高めるために、ドライニードル処理される。繊維の熱処理は、マットの形成前に、又は、マットをニードル処理した後に行われる。
【0059】
空気乾燥成層法の技術が使用される場合には、不連続な繊維複合品を形成するため、含浸を用いてマットにバインダーを添加することによって、代替的にマットを処理しても良い。この技術では、バインダーは、在来の製紙技術に関連して上述したようなプリプレグマットを形成するよりもむしろ、マットの形成後に添加される。マットを準備するための、この方法は、折損を抑えて、繊維の長さを維持することを助ける。しかしながら、熱処理は、あらゆるバインダーを添加する前に、行われることを認識されたい。
【0060】
マットにバインダーを含浸させる方法としては、マットを液体バインダー系に完全に沈めるか、又は、代替的には、マットにスプレー噴霧しても良い。連続的な手順においては、ロールの形態にて輸送される繊維マットを、コンベアやスクリムなどの上において、巻き解いて移動させて、マットにバインダーを適用するスプレーノズルに通過させる。これに代えて、マットを重力で供給して、スプレーノズルを通過させることもできる。次に、マット/バインダーのプリプレグをプレスロールの間に通過させて、余分な液体を取り除き、プリプレグの密度を高めて、概ねその望ましい厚みとする。密度を高めたプリプレグは、オーブンに通過させて、あらゆる残留溶媒を取り除くと共に、必要ならば、バインダーを部分的に硬化させて複合物を形成する。乾燥及び硬化を行う温度は、主として、使用されているバインダーと溶媒(あるならば)に依存する。それから、保管や輸送のために、複合物を切断するか、あるいは、巻き取る。
【0061】
取付マットは、バッチモードにおいて作ることもでき、液体バインダーの中にマットを沈め、プリプレグを取り出したら、余分な液体を取り除くためにプレスし、その後に、乾燥させて複合物を形成し、保管し又は所定のサイズに切断する。
これらの浸出され表面処理されたガラス繊維から生産された取付マットは、触媒コンバータの用途において容易に使用するには、密度が低すぎる。従って、それらのマットは、高い密度になるように、当業者に公知な任意のやり方によって、さらに高密度化させる必要がある。そうした高密度化のひとつの方法は、繊維をからみ合わせ及びもつれさせるために、繊維を針で穿刺することである。追加的に又は変形例として、水圧式にもつれさせる方法を使用することもできる。別の代替例としては、プレスローラーを通すことによって、繊維をマットの形状に押圧しても良い。マットを高密度化するこれらのあらゆる方法、又は、これらの方法の組み合わせを容易に用いて、正確な望ましい形状の取付マットを得ることができる。
【0062】
上述したいずれの技術を採用するかにかかわらず、複合物を、例えば打ち抜き型によって切断して、再現性の高い公差にて正確な形状及びサイズをもった取付マットを形成する。取付マット20は、針による穿刺などの高密度化を行うことで、適当な取扱い特性を呈し、つまり、容易に取り扱えて、多くの他の繊維ブランケットやマットのように、手の中でぼろぼろに崩れるほどにはもろくなくなる。マットは、触媒支持構造物18又はその他の脆弱な構造物のまわりに、ひび割れを生じさせることなく、容易かつ可撓的に取り付けないし巻き付けることができ、触媒コンバータのハウジング12の内部に配置される。一般的に、取付マットを巻き付けられた脆弱な構造物をハウジングの中に挿入するか、あるいは、取付マットを巻き付けられた脆弱な構造物のまわりにハウジングを組み立て、又は別な手段で製作する。
【0063】
取付マットは、高温面温度を約300℃とする標準的な隙間膨張試験を機械的に1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaの最小保持圧力を維持することができ、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%である。この試験は特に、低温用途で高い加速度荷重の用途に使用される、重たい基板を保持するのに用いる取付マットに適していることを認識されたい。そうした用途のための排気ガス処理装置には、ディーゼル触媒構造やディーゼル微粒子トラップが含まれる。触媒コンバータに一般的であるような高温用途のためには、取付マットは、高温面温度を約900℃とする標準的な隙間膨張試験を機械的に1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaの最小保持圧力を維持することができることが見い出され、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%である。
【0064】
「サイクル」という用語は、モノリス(すなわち脆弱な構造物)とハウジングとの間の隙間が、特定の距離及び所定の速度にて、開いたり閉じたりすることを意味する。現実的な状態をシミュレートするために、ハウジングと所定の直径をもつ脆弱な構造物との間の隙間の膨張は、例えば、約900℃の温度における、従来のハウジングの熱膨張係数を計算することによって判断される。最終的なマット基準の重量は、試験の規準を満足すると共に、1000サイクルの後に、約10kPaよりも大きい最小保持力(Pmin)を提供するように選択される。目標は、低コストにて適切な支持を提供することであり、約10kPaよりも大きいという要求条件を満足するように最小基準重量が選択される。ある種の従来技術による非膨張性の取付マットは、高温面温度を少なくとも約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、「高い」最小圧力を維持する能力を有するけれども、そうしたマットは、極めて高価な、少なくとも30%以上の高いアルミナ含有量を有するゾルゲル由来のセラミック繊維や、結晶質石英に由来する繊維、又はこれらの双方を、均一に含有する。
【0065】
運転時には、触媒コンバータは、著しい温度変化を経験する。熱膨張係数の相違に起因して、ハウジングは、支持構造18に比べて大きく膨張し、これらの要素の間の隙間は若干大きくなる。代表的な事例においては、コンバータの熱サイクル中に、隙間は、約0.25〜約0.5mmのオーダーにて膨張及び収縮する。取付マットの厚みと取付密度は、脆弱な構造物が振動して緩むのを防ぐため、あらゆる条件の下で、少なくとも約10kPaの最小保持圧力が維持されるように選択される。取付マット20によって働く取付圧力は、これらの条件の下で、組立体の熱的な特性に適応することができ、構成要素の物理的な完全性を劣化させることもない。
【0066】
低温の用途に使用される取付マットについては、試験は、約300℃にて実行される。
しかし、試験は、上述した高温の試験と同じやり方によって行われる。しかしながら、荷重用途が異なり、より重たい触媒構造物がしばしば使用されるため、最小保持圧力は、より高いことが必要とされる。従って、上述したように、マットは、高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、脆弱な構造物に対して、少なくとも50kPaの保持圧力を提供しなければならない。
【0067】
[実験]
以下の実施例は、単に、無機質繊維の外面を無機酸化物材料のコロイド状の分散液で処理することの効果を例証するためだけに記載するものである。例示的な実施例は、取付マットや、取付マットを組み込まれた排気ガス処理装置、または、取付マット又は排気ガス処理装置の製造方法を限定するものと解釈されるべきではない。
4種類の繊維マットのサンプルについて、マットのシリカ繊維の外面にコロイド状のアルミナを追加したとき、保持圧力性能に及ぼされる影響を試験した。
【0068】
[実施例C1]
実施例C1は、高いシリカ含有量を有する浸出され熱処理されたガラス繊維を含む繊維マットであった。繊維マットは、湿式形成プロセスによって準備した。簡潔に言えば、約1100℃の温度にて約2時間にわたって熱処理された、高いシリカ含有量を有する浸出ガラス繊維と、バインダーと、水とを含有するスラリーを準備した。スラリーから水分を取り除いて、マット構造を形成した。繊維マットから2インチ四方のサンプルを切り取った。繊維マットのサンプルを、隙間の見かけ密度が、約0.35g/cm3になるように、2台の加熱器の間に配置した。片方の加熱器を900℃の温度に設定して、自動車の触媒コンバータの運転温度をシミュレートした。温度が900℃に昇温したとき、繊維マットの保持圧力を記録した。
【0069】
[実施例C2]
実施例C2は、浸出され熱処理されたシリカ繊維を含む繊維マットであって、実施例C1に従って処理された。繊維マットから2インチ四方のサンプルを切り取った。2インチ四方の繊維マットのサンプルを、有機スクリム材料の層の間に配置した。両面に有機スクリムを有する繊維マットのサンプルを、隙間の見かけ密度が、約0.35g/cm3になるように、2台の加熱器の間に配置した。片方の加熱器を900℃の温度に設定して、自動車の触媒コンバータの運転温度をシミュレートした。温度が900℃に昇温したとき、繊維マットの保持圧力を記録した。
【0070】
[実施例3]
実施例3は、浸出され熱処理されたシリカ繊維を含む繊維マットであった。浸出ガラス繊維と、コロイド状のアルミナと、水とを含むスラリーを準備した。混合物のpHをNaOHの添加によって調整することで、コロイド状のアルミナを浸出ガラス繊維の表面上に沈澱させた。スラリーから水分を取り除いて、緩いマット構造を形成した。そして、マット構造を乾燥させた。乾燥に続いて、約1100℃の温度にて約2時間にわたってマットを熱処理した。熱処理された緩い繊維マットを、再び、有機バインダー及び水と共に、スラリー状に分散させた。スラリーから水分を取り除いて、マット構造を形成した。そして、マット構造を乾燥させた。コロイド状のアルミナは、シリカ繊維のマットの重量を基礎として、4重量%、繊維の外面に沈澱した。
【0071】
繊維マットから2インチ四方のサンプルを切り取って、有機スクリム材料の層の間に配置した。両面に有機スクリムを有する繊維マットのサンプルを、隙間の見かけ密度が、約0.35g/cm3になるように、2台の加熱器の間に配置した。片方の加熱器を900℃の温度に設定して、自動車の触媒コンバータの運転温度をシミュレートした。温度が900℃に昇温したとき、繊維マットの保持圧力を記録した。
【0072】
[実施例4]
実施例4は、実施例3に従って準備された、浸出され熱処理されたシリカ繊維を含む繊維マットであったが、実施例3との違いは、繊維の外面に沈澱したコロイド状のアルミナが、シリカ繊維のマットの重量を基礎として、10重量%であった。繊維マットから2インチ四方のサンプルを切り取って、有機スクリム材料の層の間に配置した。両面に有機スクリムを有する繊維マットのサンプルを、隙間の見かけ密度が、約0.35g/cm3になるように、2台の加熱器の間に配置した。片方の加熱器を900℃の温度に設定して、自動車の触媒コンバータの運転温度をシミュレートした。温度が900℃に昇温したとき、繊維マットの保持圧力を記録した。
繊維マットの保持圧力データは、以下の表1に示す通りであった。
【0073】
[表1]
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|温度(℃)| 圧力(kPa) |
+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+
| | C1 | C2 | 3 | 4 |
+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+
| 65 | 265 | 300 | 362 | 379 |
| 100 | 246 | 254 | 308 | 378 |
| 150 | 205 | 202 | 262 | 338 |
| 200 | 190 | 177 | 243 | 299 |
| 250 | 160 | 133 | 206 | 281 |
| 300 | 111 | 101 | 178 | 246 |
| 350 | 94 | 91 | 169 | 216 |
| 400 | 88 | 84 | 161 | 202 |
| 450 | 86 | 80 | 157 | 193 |
| 500 | 85 | 73 | 136 | 182 |
| 550 | 83 | 70 | 131 | 172 |
| 600 | 83 | 69 | 127 | 170 |
| 650 | 82 | 68 | 124 | 168 |
| 700 | 85 | 69 | 125 | 168 |
| 750 | 87 | 70 | 126 | 168 |
| 800 | 88 | 70 | 128 | 169 |
| 850 | 88 | 70 | 129 | 169 |
| 900 | 90 | 69 | 130 | 169 |
+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+
| %損失 | 66% | 77% | 64% | 55% |
+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−−+
【0074】
実施例C1のシリカ繊維マットにおいては、65℃〜900℃の温度範囲にわたる加熱によって、マットの保持圧力は、265kPaから90kPaに減少している。従って、コロイド状のアルミナによる処理を受けていないシリカ繊維のマットでは、脆弱なモノリスを保持する圧力が、約66%損失している。
実施例C2のシリカ繊維マットにおいては、65℃〜900℃の温度範囲にわたる加熱によって、マットの保持圧力は、300kPaから69kPaに減少している。従って、アルミナを追加していないシリカ繊維のマットでは、脆弱なモノリスを保持する圧力が、約77%損失している。これらの結果は、シリカ繊維のマットの表面に有機スクリムの層を取り付けると、シリカ繊維のマットにおける保持圧力性能の損失がさらに増えて、マットの保持圧力性能が減少することを示している。
【0075】
実施例3のシリカ繊維マットにおいては、65℃〜900℃の温度範囲にわたる加熱によって、マットの保持圧力は、362kPaから130kPaまでにしか減少していない。
従って、シリカ繊維の外面に4%のコロイド状のアルミナを添加した、シリカ繊維のマットは、コロイド状のアルミナを添加しないシリカ繊維のマットに比べて、保持圧力性能が改善されていることが示されている。
【0076】
実施例4のシリカ繊維マットにおいては、65℃〜900℃の温度範囲にわたる加熱によって、マットの保持圧力は、379kPaから170kPaまでにしか減少していない。従って、10%のアルミナを添加したシリカ繊維のマットでは、脆弱なモノリスを保持する圧力が、約55%だけ損失している。これは、コロイド状のアルミナを添加しシリカ繊維に比べて、保持圧力性能の著しい改善である。
【0077】
[実施例5]
排気ガス処理装置用の取付マットを、湿式形成プロセスによって、高いシリカ含有量の浸出ガラス繊維から準備した。浸出ガラス繊維と、バインダーと、水とを含有するスラリーを準備した。スラリーから水分を取り除いて、マット構造を形成した。そして、マット構造を乾燥させた。乾燥に続いて、約1100℃の温度にて約2時間にわたってマットを熱処理した。熱処理されたマットを脆弱なセラミックモノリスの部分のまわりに巻き付けて、巻き付けられたモノリスを鋼製のハウジングに挿入することで、触媒コンバータを形成した。
【0078】
触媒コンバータを約2時間にわたって約700℃の温度にさらし、続いて、約6.5時間にわたって約500℃の温度にさらし、続いて、約6.5時間にわたって約750℃の温度にさらした。触媒コンバータを上述した条件にさらした後に、機械的なラムによって、モノリスを触媒コンバータのハウジングから押し出した。触媒コンバータのハウジングからモノリスを押し出すのに必要な力は、204Nであった。
【0079】
[実施例6]
排気ガス処理装置用の取付マットを、湿式形成プロセスによって、高いシリカ含有量の浸出ガラス繊維から準備した。浸出ガラス繊維と、コロイド状のアルミナと、水とを含有するスラリーを準備した。混合物のpHをNaOHの添加によって調整することで、コロイド状のアルミナを浸出ガラス繊維の表面上に沈澱させた。スラリーから水分を取り除いて、緩いマット構造を形成した。そして、マット構造を乾燥させた。乾燥に続いて、約1100℃の温度にて約2時間にわたってマットを熱処理した。熱処理された緩い繊維マットを、再び、水及びバインダーの中に、スラリー状に分散させた。スラリーから水分を取り除いて、マット構造を形成した。そして、マット構造を乾燥させた。
【0080】
マットを脆弱なセラミックモノリスの部分のまわりに巻き付けて、巻き付けられたモノリスを鋼製のハウジングに挿入することで、触媒コンバータを形成した。触媒コンバータを約2時間にわたって約700℃の温度にさらし、続いて、約6.5時間にわたって約500℃の温度にさらし、続いて、約6.5時間にわたって約750℃の温度にさらした。触媒コンバータを上述した条件にさらした後に、機械的なラムによって、モノリスを触媒コンバータのハウジングから押し出した。触媒コンバータのハウジングからモノリスを押し出すのに必要な力は、732Nであった。従って、実施例6による取付マットにおいては、脆弱なモノリスを保持する保持圧力が高められ、触媒コンバータのハウジングからモノリスを押し出すのに必要な力は、4倍近くに増加した。
【0081】
従って、高いシリカ含有量を有する浸出ガラス繊維の外面に、コロイド状のアルミナの分散液などのコロイド状の無機酸化物の分散液を用いた処理を施すことによって、排気ガス処理装置が経験する広範囲の運転温度にわたって、取付マットの保持圧力性能の損失が減少することになる。
【0082】
取付マットは、打ち抜いて切断して、輪郭が薄い弾性的な支持体として操作可能であって、容易な取扱いを提供し、可撓性の形態にて、ひび割れを生じさせずに、必要ならば、触媒支持構造に全体的な巻き付けを提供することができる。変形例としては、取付マットは、触媒支持構造の少なくとも一部分の全周ないし外周のまわりに一体的に巻き付けても良い。取付マットを部分的に巻き付けて、必要ならば、ガスバイパスを防ぐため、現在使用されているある種の従来のコンバータ装置に見られるように、端部シールを含んでも良い。
【0083】
上述した取付マットは、例えば在来の自動車の触媒コンバータなどの様々な用途、オートバイやその他の小型エンジン、自動車のプリコンバータなどと共に、高温スペーサ、ガスケット、及び、次世代の自動車における車体下の触媒コンバータ装置にも有用である。一般的に、取付マットは、室温において保持圧力を働かせ、より重要なことには、熱サイクル中を含み、20℃から少なくとも約1100℃にまで昇温した温度において、保持圧力を維持する能力を提供する、マットやガスケットを必要とするような、あらゆる用途に使用可能である。
【0084】
上述した取付マットは、保護して取り付ける必要がある脆弱なハニカムタイプの構造物を含むような、化学産業における排気筒や排出筒のための触媒コンバータが含まれる。
本発明は、上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に対する、変形例、改変例、及び、均等物の実施形態が含まれる。上述した実施形態は必ずしも、代替的なものではなく、所望の特性を得るために、様々な実施形態を組み合わせることができる。
【0085】
本発明に関連する好ましい態様として、以下のものをあげることができる。
[1]
排気ガスの処理装置であって、この装置が、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、
前記ハウジングと前記脆弱な構造物との間の隙間に配置された、実質的に非膨張性である取付マットであって、前記取付マットは、保持圧力性能向上表面処理を施された無機質の繊維を含んでいるような上記取付マットと、
を備えていることを特徴とする装置。
[2]
前記繊維は、アルミナの繊維、アルミノ珪酸塩の繊維、アルミナ/マグネシア/シリカの繊維、カルシア/マグネシア/シリカの繊維、マグネシア/シリカの繊維、Sガラスの繊維、Eガラスの繊維、石英の繊維、及びシリカの繊維から選択されていることを特徴とする上記1に記載の装置。
[3]
前記取付マットは、少なくとも67重量%のシリカを含有する、溶融形成された浸出ガラス繊維からなる、少なくともひとつの一体的な実質的に非膨張性の層を備えていることを特徴とする上記2に記載の装置。
[4]
前記実質的に非膨張性の取付マットが、前記ハウジングの内部に前記脆弱な構造物を保持するために働かせる最小保持圧力は、高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であることを特徴とする上記3に記載の装置。
[5]
前記非膨張性の取付マットが、前記ハウジングの内部に前記脆弱な構造物を保持するために働かせる最小保持圧力は、高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であることを特徴とする上記3に記載の装置。
[6]
前記浸出ガラス繊維は、少なくとも約90重量%のシリカを含有していることを特徴とする上記3に記載の装置。
[7]
前記浸出ガラス繊維は、約93〜約95重量%のシリカと、約4〜約6重量%のアルミナとを含有していることを特徴とする上記6に記載の装置。
[8]
前記取付マットは、以下のうち少なくともひとつによって特徴付けられ、それらの特徴が、
i) 取付マットにおける前記繊維が、約1重量%未満のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有していること、
ii) 取付マットにおける浸出ガラス繊維が、約3.5ミクロンよりも大きい直径を有していること、
iii) 取付マットにおける浸出ガラス繊維が、実質的にショットフリーであること、及び、
iv) 取付マットは、実質的にバインダを含まないこと、
であることを特徴とする上記1に記載の装置。
[9]
前記取付マットは、約50〜100重量%の前記浸出ガラス繊維から構成されていることを特徴とする上記1に記載の装置。
[10]
前記保持圧力性能向上表面処理は、保持圧力向上剤のコーティングからなることを特徴とする上記1に記載の装置。
[11]
前記保持圧力性能向上剤は、コロイド状のアルミナ分散液、コロイド状のシリカ分散液、コロイド状のジルコニア分散液、及びこれらの混合物、からなるグループから選択された無機物粒子材料であることを特徴とする上記10に記載の装置。
[12]
取付マットは、有効時間にわたって少なくとも約900℃の温度にて熱処理され、これにより、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための最小保持圧力は、(i)高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であるか、(ii)高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であるか、のいずれかになっていることを特徴とする上記1に記載の装置。
[13]
装置は、触媒コンバータ、または、ディーゼル微粒子トラップであることを特徴とする上記1に記載の装置。
[14]
上記1に記載した、排気ガスの処理装置を製造する方法であって、この方法が、
無機質の繊維を備えた取付マットであって、繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力性能向上表面処理を施されてなる取付マットを提供する段階と、
排気ガスの処理に適合した脆弱な構造物の部分のまわりに、取付マットを巻き付ける段階と、
ハウジングの内部に脆弱な構造物と取付マットとを配置して、脆弱な構造物を取付マットによってハウジングの内部に弾性的に保持させる段階と、
を備えていることを特徴とする方法。
[15]
前記方法において、
取付マットの無機質の繊維は、シリカを含有する溶融形成されたガラス繊維からなり、溶融形成されたガラス繊維を形成するために、
溶融形成されたガラス繊維を処理する段階であって、処理されたガラス繊維は、処理前のガラス繊維のシリカ含有量に比べて大きなシリカ含有量を有し、処理されたガラス繊維は、少なくとも67重量%のシリカを含有し、無機質の繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力性能向上表面処理を適用するような、上記処理する段階、
を備えていることを特徴とする上記14に記載の方法。
[16]
溶融形成されたガラス繊維を処理する段階は、ガラス繊維を酸性溶液中に浸出させる段階を備えていることを特徴とする上記14に記載の方法。
[17]
熱処理する段階は、繊維又は取付マットを、有効時間にわたって少なくとも約900℃の温度に加熱し、これにより、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための有効最小保持圧力は、(i)高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であるか、(ii)高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であるか、のいずれかになっていることを特徴とする上記14に記載の方法。
[18]
前記保持圧力向上剤は、コロイド状のアルミナ分散液、コロイド状のシリカ分散液、コロイド状のジルコニア分散液、及びこれらの混合物、からなるグループから選択されていることを特徴とする上記14に記載の方法。
[19]
上記1に記載した、排気ガスの処理装置において、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための取付マットを製造する方法であって、この方法が、
無機質の繊維を提供する段階と、
少なくとも一部分の無機質の繊維の少なくとも一部分の外面に、保持圧力性能向上表面処理を適用する段階と、
表面処理された無機質の繊維をマットの構造に組み入れる段階であって、表面処理された無機質の繊維を含有する取付マットの保持圧力性能は、表面処理されていない同一の無機質の繊維を含有する取付マットに比べて大きくなっているような、上記組み入れる段階と、
を備えていることを特徴とする方法。
[20]
前記繊維は、アルミノ珪酸塩の繊維、アルミナ/マグネシア/シリカの繊維、カルシア/マグネシア/シリカの繊維、マグネシア/シリカの繊維、Sガラスの繊維、Eガラスの繊維、石英の繊維、及びシリカの繊維から選択されていることを特徴とする上記19に記載の方法。
[21]
前記保持圧力向上剤は、コロイド状のアルミナ分散液、コロイド状のシリカ分散液、コロイド状のジルコニア分散液、及びこれらの混合物、からなるグループから選択されていることを特徴とする上記19に記載の方法。
[22]
熱処理する段階は、浸出ガラス繊維を、有効時間にわたって少なくとも約300℃又は少なくとも約900℃の温度に加熱し、これにより、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための最小保持圧力は、(i)高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であるか、(ii)高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であるか、のいずれかになっていることを特徴とする上記19に記載の方法。
【0086】
本発明に関連する好ましい態様として、更に、以下のものをあげることができる。
[1']
排気ガスの処理装置であって、この装置が、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、
前記ハウジングと前記脆弱な構造物との間の隙間に配置された、実質的に非膨張性である取付マットであって、前記取付マットは、保持圧力性能向上表面処理を施された無機質の繊維を含んでいるような上記取付マットと、
を備えていることを特徴とする装置。
[2']
前記繊維は、アルミナの繊維、アルミノ珪酸塩の繊維、アルミナ/マグネシア/シリカの繊維、カルシア/マグネシア/シリカの繊維、マグネシア/シリカの繊維、Sガラスの繊維、Eガラスの繊維、石英の繊維、及びシリカの繊維から選択されていることを特徴とする上記1’に記載の装置。
[3']
前記取付マットは、少なくとも67重量%のシリカを含有する、溶融形成された浸出ガラス繊維からなる、少なくともひとつの一体的な実質的に非膨張性の層を備えていることを特徴とする上記1’に記載の装置。
[4']
前記実質的に非膨張性の取付マットが、前記ハウジングの内部に前記脆弱な構造物を保持するために働かせる最小保持圧力は、
(i)高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であるか、または、
(ii)高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であることを特徴とする上記3’に記載の装置。
[5']
前記浸出ガラス繊維は、
(i)少なくとも約90重量%のシリカを含有しているか、または、
(ii)約93〜約95重量%のシリカと、約4〜約6重量%のアルミナとを含有していることを特徴とする上記3’に記載の装置。
[6']
前記取付マットは、以下のうち少なくともひとつによって特徴付けられ、それらの特徴が、
i) 取付マットにおける前記繊維が、約1重量%未満のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有していること、
ii) 取付マットにおける浸出ガラス繊維が、約3.5ミクロンよりも大きい直径を有していること、
iii) 取付マットにおける浸出ガラス繊維が、実質的にショットフリーであること、及び、
iv) 取付マットは、実質的にバインダを含まないこと、
であることを特徴とする上記1’に記載の装置。
[7']
前記取付マットは、マット全体の100重量%を基礎にして、約50〜100重量%の前記浸出ガラス繊維と、0〜約50重量%のS2ガラス繊維或いは耐火性セラミック繊維とから構成されていることを特徴とする上記1’に記載の装置。
[8']
前記保持圧力性能向上表面処理は、保持圧力向上剤の連続的或いは非連続的なコーティングを有することを特徴とする上記1’に記載の装置。
[9']
前記保持圧力性能向上剤は、コロイド状のアルミナ分散液、コロイド状のシリカ分散液、コロイド状のジルコニア分散液、及びこれらの混合物、からなるグループから選択された無機物粒子材料であることを特徴とする上記8’に記載の装置。
[10']
浸出ガラス繊維または取付マットは、有効時間にわたって少なくとも約900℃の温度にて熱処理され、これにより、ハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための最小保持圧力は、
(i)高温面温度を約300℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約50kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約2%であるか、または、
(ii)高温面温度を約900℃とする試験を1000サイクル行った後に、少なくとも約10kPaであり、隙間の見かけ密度は、約0.3〜約0.5g/cm3であり、隙間の膨張百分率は、約5%であるか、のいずれかになっていることを特徴とする上記4’に記載の装置。
[11']
装置は、触媒コンバータ、または、ディーゼル微粒子トラップであることを特徴とする上記1’に記載の装置。
[12']
上記1’ないし11’のいずれか1に記載した、排気ガスの処理装置を製造する方法であって、この方法が、
無機質の繊維を備えた取付マットであって、繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力性能向上表面処理を施されてなる取付マットを提供する段階を有し、
取付マットの無機質の繊維は、シリカを含有する溶融形成されたガラス繊維を有し、溶融形成されたガラス繊維を形成するために、
溶融形成されたガラス繊維を処理する段階であって、処理されたガラス繊維は、処理前のガラス繊維のシリカ含有量に比べて大きなシリカ含有量を有し、処理されたガラス繊維は、少なくとも67重量%のシリカを含有し、無機質の繊維の外面の少なくとも一部分に、保持圧力性能向上表面処理を適用するような、上記処理する段階、
を備え、
さらに、排気ガスの処理に適合した脆弱な構造物の部分のまわりに、取付マットを巻き付ける段階と、
ハウジングの内部に脆弱な構造物と取付マットとを配置して、脆弱な構造物を取付マットによってハウジングの内部に弾性的に保持させる段階と、
を備えていることを特徴とする方法。
[13']
上記1’に記載した排気ガスの処理装置のハウジングの内部に脆弱な構造物を保持するための、排気ガスの処理装置の取付マットを製造する方法であって、この方法が、
無機質の繊維を提供する段階と、
少なくとも一部分の無機質の繊維の少なくとも一部分の外面に、保持圧力性能向上表面処理を適用する段階と、
表面処理された無機質の繊維をマットの構造に組み入れる段階であって、表面処理された無機質の繊維を含有する取付マットの保持圧力性能は、表面処理されていない同一の無機質の繊維を含有する取付マットに比べて大きくなっているような、上記組み入れる段階と、
を備えていることを特徴とする方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの処理装置であって、この装置が、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に弾性的に取り付けられた脆弱な構造物と、
前記ハウジングと前記脆弱な構造物との間の隙間に配置された、実質的に非膨張性である取付マットであって、前記取付マットは、保持圧力性能向上表面処理を施された無機質の繊維を含んでいるような上記取付マットと、
を備えていることを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate


【公開番号】特開2011−38529(P2011−38529A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254177(P2010−254177)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【分割の表示】特願2007−519456(P2007−519456)の分割
【原出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(500421462)ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】