説明

排気ガス処理装置及び排気ガス処理方法

【課題】メンテナンス頻度を少なくすることができる排気ガス処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る排気ガス処理装置は、半導体製造装置の排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、排気ガスを吸入する配管30と、配管30が吸入した排気ガスを熱処理するガス処理部50と、配管30の上流側の端部に接続され、内面が排気ガス及び水それぞれに接する水スクラバーユニット20と、水スクラバーユニット20の内面又は水スクラバーユニット20内の水に振動を加える加振機構22とを具備する。加振機構22は、例えば超音波発振機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置から排気された排気ガスを処理する排気ガス処理装置及び排気ガス処理方法に関する。特に本発明は、メンテナンス頻度を少なくすることができる排気ガス処理装置及び排気ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図である。この排気ガス処理装置は、半導体製造装置から排気された排気ガスを処理する装置である。排気ガスには、例えばフッ化タングステン(WF)及びフッ化硫黄(SF)が含まれる。
【0003】
半導体製造装置から排気された排気ガスは、排気管110及びバルブ112を介して水スクラバーユニット120に送られる。その後、排気ガスは配管130、水タンク140の上部空間140a、及び配管144を介して、熱処理部150に移動する。
【0004】
水スクラバーユニット120には貯水部120aが設けられており、配管130の内部では、水がシャワー上に供給されている。水スクラバーユニット120及び配管130では、排気ガスに含まれる粉塵及び水溶成分(例えばフッ化タングステン)が除去される。熱処理部150では、排気ガスに含まれるフッ化硫黄がヒーター152の熱によって分解される。
【0005】
その後、排気ガスは、配管154、水タンク140の上部空間140b、及び排気管160を介して、排気ガス処理装置の外部に排出される。なお、水タンク140の上部空間140a,140bは、仕切り板142によって互いに切り離されている。
なお、排気ガス処理装置の一例が、下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−228135号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来例では、水スクラバーユニットの内面、及び水スクラバーユニットの下流に位置する配管の内面それぞれに、排気ガスに含まれる成分(例えばフッ化タングステン)と水との反応生成物が付着、成長する。このため、水スクラバーユニットを定期的に分解してメンテナンスする必要があった。このメンテナンスを行っている間は、半導体製造装置も停止させなければいけないため、メンテナンス頻度を少なくすることが望まれる。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、メンテナンス頻度を少なくすることができる排気ガス処理装置及び排気ガス処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る排気ガス処理装置は、半導体製造装置の排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、
前記半導体製造装置から排気ガスを排出する排気管と、
前記排気管の下端に取り付けられ、内部に水が供給される水スクラバーユニットと、
前記水スクラバーユニットより下流側に設けられ、前記排気ガスを熱処理するガス処理部と、
前記水スクラバーユニットの内面又は前記水スクラバーユニット内の水に振動を加える加振機構とを具備する。
【0009】
この排気ガス処理装置によれば、前記水スクラバーユニットの内面又は前記水スクラバーユニット内の水には、前記加振機構によって振動が加えられる。このため、前記水スクラバーユニットの内面に、水と前記排気ガスとの反応生成物が付着しても、この反応性生物は落下する。従って、前記水スクラバーユニットの内面で反応生成物が成長することが抑制され、前記排気ガス処理装置のメンテナンス頻度を少なくすることができる。
【0010】
前記加振機構として、前記水スクラバーユニットの外面に取り付けられた超音波発振装置を具備してもよい。また、前記水スクラバーユニットに水を供給する水供給管を更に具備する場合、前記加振機構として、前記水供給管に取り付けられた超音波発振装置を具備してもよい。
【0011】
前記排気ガス処理装置が動作している間に前記水スクラバーユニットに水を供給する水供給管を更に具備する場合、前記加振機構は、前記水供給管内を水が流れている場合に動作してもよい。また、前記ガス処理部より下流に設けられ、前記排気ガス処理装置が動作している間は動作する排気手段と、前記排気管の内部の圧力を測定する圧力計とを更に具備する場合、前記排気管の内部の圧力は、前記排気手段が動作している間は減圧になるため、前記加振機構は、前記圧力計の測定結果と大気圧との差が一定値以上になった場合に動作するようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る排気ガス処理装置は、半導体製造装置の排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、
前記排気ガスを吸入する吸入部と、
前記配管に吸入された前記排気ガスを熱処理するガス処理部と、
前記配管の内部に水を供給する給水部と、
前記配管の内面に振動を加える加振機構とを具備する。
【0013】
この排気ガス処理装置によれば、配管の内面には、前記加振機構によって振動が加えられる。このため、前記配管の内面に、水と前記排気ガスとの反応生成物が付着しても、この反応性生物は落下する。従って、前記配管の内面で反応生成物が成長することが抑制され、前記排気ガス処理装置のメンテナンス頻度を少なくすることができる。
【0014】
本発明に係る排気ガス処理方法は、半導体製造装置の排気ガスを、内部に水が供給される水スクラバーユニットで処理した後、熱処理する排気ガス処理方法であって、
前記水スクラバーユニットの内面又は前記水スクラバーユニット内部の水に振動を加えることにより、前記内面に、前記排気ガスと水との反応物が堆積することを抑制するものである。
【0015】
本発明に係る他の排気ガス処理方法は、半導体製造装置の排気ガスを、配管を介して吸入した後、熱処理する排気ガス処理方法であって、
前記配管の内部に水を供給することにより、前記排気ガスを前処理し、かつ、該配管の内面又は前記水スクラバーユニット内部の水に振動を加えることにより、前記内面に、前記排気ガスと水との反応物が堆積することを抑制するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図である。この排気ガス処理装置は、半導体製造装置(例えばタングステン膜をエッチングする装置)から排気された排気ガスを処理する装置である。排気ガスには、例えばフッ化タングステン(WF)及びフッ化硫黄(SF)が含まれる。
【0017】
半導体製造装置から排気された排気ガスは、排気管10及びバルブ12を介して、水スクラバーユニット20に送られる。その後、排気ガスは配管30、水タンク40の上部空間40a、及び配管44を介して、熱処理部50に移動する。
【0018】
水スクラバーユニット20は貯水部20aを有している。貯水部20aには、給水管72が接続している。給水管72のバルブ72aが開くと、給水管72から貯水部20aに水が供給され、貯水部20aから水がオーバーフローする。オーバーフローした水は、配管30の内面を伝って水タンク40に落ちる。また、配管30の内部では、給水管73の先端部73aから水がシャワー状に供給されている。排気ガスが水スクラバーユニット20及び配管30を通ることにより、排気ガスに含まれる粉塵及び水溶成分(例えばフッ化タングステン)が除去される。なお、給水管72のバルブ72aの開閉は、制御部80によって制御されている。
【0019】
熱処理部50では、排気ガスに含まれるフッ化硫黄が、ヒーター52の熱によって分解される。その後、排気ガスは、配管54、水タンク40の上部空間40b、及び排気管60を介して、排気ガス処理装置の外部に排出される。なお、この排気ガスの流れは、配管60の下流側に取り付けられた排気ポンプ62が動作することにより、生じる。配管54及び排気管60の内部では、それぞれ給水管76,78の先端部76a,78aから水がシャワー状に供給されているため、排気ガスは冷却される。なお、供給された水は、水タンク40に落ちる。なお、水タンク40の上部空間40a,40bは、仕切り板42によって互いに切り離されている。
【0020】
水スクラバーユニット20の内面では、水と排気ガス中のフッ化タングステンとが反応し、タングステン含有物が生成する。これに対し、水スクラバーユニット20の外面には超音波発振装置22が取り付けられている。超音波発振装置22は、例えば水スクラバーユニット20を挟んで互いに対向する位置に複数取り付けられている。超音波発振装置22の動作は、制御部80によって制御されている。
【0021】
制御部80は、給水管72のバルブ72aの開閉と超音波発振装置22の動作を同期させる。すなわち、バルブ72aが開いている場合、排気ガス処理装置が排気ガスを処理していると判断し、超音波発振装置22を動作させる。これにより、水スクラバーユニット20の内面及び貯水部20a内の水が振動し、内面に付着及び成長したタングステン含有物が落下する。また、超音波によってOHが生成し、このOHによってタングステン含有物がエッチングされる。このため、タングステン含有物が水スクラバーユニット20の内面で成長することが抑制される。
【0022】
以上、本実施形態によれば、水スクラバーユニット20の外面に超音波発振装置22を取り付け、水スクラバーユニット20の内面を振動させるようにしている。このため、水スクラバーユニット20の内面でタングステン含有物が生成しても、タングステン含有物が内面で成長することが抑制される。従って、水スクラバーユニット20のメンテナンス頻度を少なくすることができる。
【0023】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図である。本実施形態に係る排気ガス処理装置は、給水管72の外面に超音波発振装置23が取り付けられている点を除いて、第1の実施形態に係る排気ガス処理装置と同一の構成である。超音波発振装置23は、給水管72を挟んで互いに対向する位置に、複数取り付けられている。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0024】
制御部80は、超音波発振装置23を、超音波発振装置22と同様に制御する。超音波発振装置23が動作すると、給水管72及び水を介して、水スクラバーユニット20の内面、及び貯水部20a内の水に振動が伝わる。
【0025】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。なお、本実施形態において、超音波発振装置22を設けなくてもよい。
【0026】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図である。本実施形態に係る排気ガス処理装置は、配管30の上部に超音波発振装置24が取り付けられている点を除いて、第2の実施形態に係る排気ガス処理装置と同一の構成である。超音波発振装置24は、配管30を挟んで互いに対向する位置に、複数取り付けられている。以下、第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0027】
制御部80は、超音波発振装置24を、超音波発振装置22,23と同様に制御する。超音波発振装置24が動作すると、配管30の内面が振動し、この内面に付着したタングステン含有物が落下する。このため、配管30の内面でタングステン含有物が成長することが抑制される。
【0028】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。また、配管30の内面も振動するため、この内面でタングステン含有物が成長することが抑制される。なお、本実施形態において、超音波発振装置22,23の双方を設けなくてもよいし、いずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0029】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図である。本実施形態に係る排気ガス処理装置は、排気管10の内部の圧力を測定する圧力計14を具備している点、及び、制御部80が、排気管10の内部の圧力と大気圧との差圧に基づいて超音波発振装置22を動作させる点が、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
排気管10の内部の圧力は、排気ガス処理装置が動作している間、すなわち排気ポンプ62が動作している間は減圧になる。制御部80は、圧力計14による測定結果と大気圧との差が一定値以上の場合に、排気ガス処理装置が動作していると判断し、超音波発振装置22を動作させる。
【0031】
本実施形態によっても第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。なお、第2及び第3の実施形態において圧力計14を設置し、制御部80が本実施形態と同様の制御を行うようにしてもよい。
【0032】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば第1〜第3の実施形態において、超音波発振装置22,23,24をスイッチでオン−オフさせる構成にしてもよい。また、超音波発振装置を貯水部20aの内面に取り付け、水スクラバーユニット20の貯水部20aに蓄えられている水に直接超音波を印加するようにしてもよい。
【0033】
また、第1〜第3の実施形態において、水スクラバーユニット20に供給する水として、水素が過剰に含まれている水素水を用いてもよい。このようにすると、水素水がタングステン含有物の生成を抑制するため、水スクラバーユニット20のメンテナンス頻度を更に少なくすることができる。なお、この場合、超音波発振装置22,23,24を設けなくても、水スクラバーユニット20のメンテナンス頻度を従来と比べて少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図。
【図2】第2の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図。
【図3】第3の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図。
【図4】第4の実施形態に係る排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図。
【図5】従来の排気ガス処理装置の構成を説明する為の概略図。
【符号の説明】
【0035】
10,60,110,160…排気管、12,112…バルブ、14…圧力計、20,120…水スクラバーユニット、20a,120a…貯水部、22,23,24…超音波発振装置、30,44,54,130,144,154…配管、40,140…水タンク、40a,40b,140a,140b…上部空間、42,142…仕切り板、50,150…熱処理部、52,152…ヒーター、62…排気ポンプ、72,73,76,78…給水管、72a…バルブ、73a,76a,78a…先端部、80…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置の排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、
前記半導体製造装置から排気ガスを排出する排気管と、
前記排気管の下端に取り付けられ、内部に水が供給される水スクラバーユニットと、
前記水スクラバーユニットより下流側に設けられ、前記排気ガスを熱処理するガス処理部と、
前記水スクラバーユニットの内面又は前記水スクラバーユニット内の水に振動を加える加振機構と、
を具備する排気ガス処理装置。
【請求項2】
前記加振機構として、前記水スクラバーユニットの外面に取り付けられた超音波発振装置を具備する請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記水スクラバーユニットに水を供給する水供給管を更に具備し、
前記加振機構として、前記水供給管に取り付けられた超音波発振装置を具備する請求項1又は2に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
前記排気ガス処理装置が動作している間に前記水スクラバーユニットに水を供給する水供給管を更に具備し、
前記加振機構は、前記水供給管内を水が流れている場合に動作する請求項1又は2に記載の排気ガス処理装置。
【請求項5】
前記ガス処理部より下流に設けられ、前記排気ガス処理装置が動作している間は動作する排気手段と、
前記排気管の内部の圧力を測定する圧力計と、
を更に具備し、
前記排気管の内部の圧力は、前記排気手段が動作している間は減圧になり、
前記加振機構は、前記圧力計の測定結果と大気圧との差が一定値以上になった場合に動作する請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス処理装置。
【請求項6】
半導体製造装置の排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、
前記排気ガスを吸入する配管と、
前記配管に吸入された前記排気ガスを熱処理するガス処理部と、
前記配管の内部に水を供給する給水部と、
前記配管の内面に振動を加える加振機構と、
を具備する排気ガス処理装置。
【請求項7】
半導体製造装置の排気ガスを、内部に水が供給される水スクラバーユニットで処理した後、熱処理する排気ガス処理方法であって、
前記水スクラバーユニットの内面又は前記水スクラバーユニット内部の水に振動を加えることにより、前記内面に、前記排気ガスと水との反応物が堆積することを抑制する排気ガス処理方法。
【請求項8】
半導体製造装置の排気ガスを、配管を介して吸入した後、熱処理する排気ガス処理方法であって、
前記配管の内部に水を供給することにより、前記排気ガスを前処理し、かつ、該配管の内面又は前記水スクラバーユニット内部の水に振動を加えることにより、前記内面に、前記排気ガスと水との反応物が堆積することを抑制する排気ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−83139(P2007−83139A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273427(P2005−273427)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】