説明

排気浄化用担体の保持構造

【課題】排気浄化用担体の保持力を向上できる排気浄化用担体の保持構造を提供すること。
【解決手段】略半筒状の一対の分割ケースを接合してなる略筒状のケース15内に、保持材13を介して円柱状の担体11を保持する触媒コンバータ1であって、担体11は、その外周面に、中心軸Xに対して対称となる位置に軸方向に沿って延びる一対の凸部115,115を有し、ケース15は、接合部近傍が外方に突出した一対の分割ケースを接合することにより形成され且つ凸部115,115の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部155,155を有し、一対の突出部155,155において保持材13を介して凸部115,115が挟圧された状態で、担体11がケース15内に保持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化用担体の保持構造に関する。詳しくは、触媒コンバータや排気浄化フィルタに用いられる排気浄化用担体の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排気系には、排気を浄化するための触媒コンバータや排気浄化フィルタが配置されている。これらの触媒コンバータおよび排気浄化フィルタは、排気浄化用担体と、この排気浄化用担体を収容して保持するケースと、を含んで構成される。
【0003】
例えば、半筒状の一対の分割ケースを接合してなる筒状のケース内に、保持材を介して、ハニカム構造の排気浄化用担体を保持する触媒コンバータが開示されている。この触媒コンバータでは、排気浄化用担体は保持材で被覆された状態で、ケース内に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−7454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排気浄化用担体を大型化した場合や、例えばSiCのような密度が大きい材質で排気浄化用担体を形成した場合に、ケース内における排気浄化用担体の保持力が不足するときは、保持力を向上できる保持構造が望まれる。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気浄化用担体の保持力を向上できる排気浄化用担体の保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、略半筒状の一対の分割ケース(例えば、後述の第1分割ケース151,第2分割ケース152)を接合してなる略筒状のケース(例えば、後述のケース15)内に、保持材(例えば、後述の保持材13)を介して柱状の排気浄化用担体(例えば、後述の担体11)を保持する排気浄化用担体の保持構造(例えば、後述の触媒コンバータ1)を提供する。この排気浄化用担体の保持構造では、前記排気浄化用担体は、その外周面に、中心軸(例えば、後述の中心軸X)に対して対称となる位置に軸方向に沿って延びる一対の凸部(例えば、後述の凸部115,115)を有し、前記ケースは、接合部近傍が外方に突出した前記一対の分割ケースを接合することにより形成され且つ前記凸部の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部(例えば、後述の突出部155,155)を有し、当該一対の突出部において前記保持材を介して前記凸部が挟圧された状態で、前記排気浄化用担体が前記ケース内に保持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、排気浄化用担体の外周面に、中心軸に対して対称となる位置に軸方向に沿って延びる一対の凸部を設けるとともに、接合部近傍が外方に突出した一対の分割ケースを接合することにより、凸部の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部をケースに設けた。また、突出部において、保持材を介して凸部を挟圧した状態で、排気浄化用担体をケース内に保持する構成とした。
これにより、分割ケースを接合することにより形成される突出部において、剛性が高い凸部を強く挟圧した状態で、排気浄化用担体をケース内に保持できる。従って、本発明によれば、従来に比して排気浄化用担体の保持力を向上できる。
【0009】
この場合、前記一対の突出部は、前記ケースの軸方向において、前記排気浄化用担体が保持されている部分にのみ設けられていることが好ましい。
【0010】
この発明では、ケースの軸方向において、排気浄化用担体が保持されている部分にのみ、突出部を設ける構成とした。
これにより、凸部を覆う保持材の軸方向の上流側端部に、排気が直接流れ込むことを回避できる。このため、かかる上流側端部において、粒子状物質などが堆積したり、保持材が風蝕されるのを抑制でき、排気浄化用担体の保持力の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排気浄化用担体の保持力を向上できる排気浄化用担体の保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る触媒コンバータの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】上記実施形態に係る触媒コンバータの製造方法を説明するための図であり、(a)は担体の形成に用いるハニカム構造体の横断面図であり、(b)は担体の横断面図であり、(c)は担体の外周面に保持材を被覆したときの横断面図であり、(d)は保持材を介して担体をケース内に収容するときの様子を示す横断面図であり、(e)は分割ケースを接合して完成した触媒コンバータの横断面図である。
【図4】上記実施形態の変形例1に係る触媒コンバータの部分拡大断面図である。
【図5】上記実施形態の変形例2に係る触媒コンバータの部分拡大断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例3に係る触媒コンバータの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る排気浄化用担体の保持構造を適用した触媒コンバータ1の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す触媒コンバータ1の中心軸Xに直交するA−A線断面図である。触媒コンバータ1は、図示しない内燃機関の排気管9の途中に配置され、この内燃機関から排出される排気を浄化する装置である。
【0014】
図1に示すように、触媒コンバータ1は、担体11と、保持材13と、ケース15と、を備える。ケース15の上流側端部には、上流側から下流側に向かって拡径する排気導入コーン17が接続されており、ケース15の下流側端部には、上流側から下流側に向かって縮径する排気導出コーン19が接続されている。
本実施形態の触媒コンバータ1は、担体11を水平方向に沿って保持する横置き型の触媒コンバータであるが、担体11を鉛直方向に沿って保持する縦置き型の触媒コンバータであってもよい。
【0015】
図2に示すように、担体11は、円柱状のハニカム構造体111と、このハニカム構造体111の外周を覆うように設けられた外皮113と、を備える。ハニカム構造体111は、円柱状に限定されず、楕円状であってもよい。
【0016】
ハニカム構造体111は、複数の略正方形状のセルを備える。ハニカム構造体111は、それぞれに複数のセルが形成された複数の柱状セグメントの側面同士を互いに接合して円柱状の集合体とすることで形成される。あるいは、押出成形などの一体成形によって形成される。
【0017】
外皮113は、その外周面に、一対の凸部115,115を有する。これら一対の凸部115,115は、中心軸Xに対して対称となる位置に、軸方向に沿って延びるように設けられている。
【0018】
図2に示すように、一対の凸部115,115の高さHの寸法は、略同一であり、ハニカム構造体111の直径の1〜20%であることが好ましい。また、一対の凸部115,115の幅Wの寸法は、略同一であり、ハニカム構造体111の直径の3.5〜30%であることが好ましい。なお、ハニカム構造体111の軸方向に垂直な断面が楕円状である場合には、楕円の短径を基準とする。
また、一対の凸部115,115の軸方向の長さ寸法は、略同一であり、ハニカム構造体111の軸方向の長さの30〜90%であることが好ましい。
【0019】
凸部115,115の高さH、幅W、および長さの各寸法が、上記の範囲より小さい場合には、凸部115,115が小さ過ぎる結果、担体11の保持力の向上効果が得られない。一方、上記の各寸法が、上記の範囲より大きい場合には、凸部115,115が大き過ぎる結果、担体11の外周に保持材13をうまく巻回することができず、触媒コンバータ1の寸法に影響を及ぼし、ひいては排気系のレイアウト上の問題が生ずる。
【0020】
担体11を構成するハニカム構造体111および外皮113は、アルミナ、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素、アルミナチタネート(AT)およびコーディエライトからなる群より選ばれる1種または2種以上の材料で構成されることが好ましい。ハニカム構造体111と外皮113は、同一の材料から構成されてもよく、異なる材料から構成されてもよい。
【0021】
外皮113は、ハニカム構造体111の外周に成形型を設置し、ハニカム構造体111と成形型との隙間に、外皮113を構成する上記で列挙した材料を充填することで形成される。あるいは、ハニカム構造体111と外皮113とを同時に押出成形することで形成される。
【0022】
担体11には、従来公知の三元触媒、酸化触媒、NOx浄化触媒などの各種排気浄化触媒が所定量、担持される。これらの排気浄化触媒が担持された担体11内を排気が流通することにより、排気中に含まれるHC、CO、およびNOxなどが浄化される。
【0023】
排気浄化触媒の担体11への担持方法は特に限定されず、従来公知のウォッシュコート法などが採用される。具体的には、排気浄化触媒の構成材料を含むスラリーを調製し、このスラリー中に担体11を浸漬させた後、引き上げて乾燥させることで、担体11に排気浄化触媒が担持される。
【0024】
図1に戻って、保持材13は、担体11の外周の全部を覆うように、担体11の外周に巻回されている。保持材13は、担体11の軸方向の中央部分にのみ設けられており、担体11の軸方向の上流側端部と下流側端部には、保持材13は設けられていない。
この保持材13は、担体11の外周面とケース15の内周面との隙間で圧縮された状態でケース15内に収容され、これにより、担体11をケース15内に保持する。
【0025】
保持材13は、SUSなどの金属線材料、ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維、およびポリアミド繊維などからなる群より選ばれる1種または2種以上の材料から構成される。
【0026】
なお、保持材13には、担体11の外形に沿った折れ線を予め入れておくことが好ましい。これにより、保持材13を担体11の外周に巻回する際に、保持材13を担体11の外周面にフィットさせることができる。具体的には、担体11の外周面に設けられた一対の凸部115,115の形状に対応させて折れ線を入れておくことにより、担体11の外形に追従して保持材13を巻回できる。
また、保持材13を担体11に巻回する際には、保持材13の位置ずれを防止するために、保持材13の軸方向の両端部をテープなどで固定しておくのが好ましい。
【0027】
図1および図2に示すように、ケース15は、略半筒状の一対の分割ケースを接合してなる略筒状のケースである。より具体的には、本実施形態のケース15は、中心軸Xを含み、後述する突出部155,155を通る平面で2分割された第1分割ケース151および第2分割ケース152を接合することで形成される。
【0028】
図1に示すように、ケース15は、凸部115,115の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部155,155を有する。これら一対の突出部155,155は、ケース15の軸方向において、担体11が保持されている部分にのみ、設けられている。
これら一対の突出部155,155は、接合部近傍が外方に突出して形成された第1分割ケース151および第2分割ケース152を接合することにより形成される。
【0029】
これら一対の突出部155,155は、担体11の外周面に形成された一対の凸部115,115の形状および位置に対応して設けられている。担体11は、これらの突出部155,155において、凸部115,115が保持材13を介して挟圧された状態で、ケース15内に保持されている。
【0030】
ケース15を構成する第1分割ケース151および第2分割ケース152は、同一の材料で構成され、具体的には、SUSやNi−Cr合金などの材料で構成される。このため、第1分割ケース151と第2分割ケース152との接合は、溶接により行われている。具体的には、第1分割ケース151と第2分割ケース152との接合部157は、両分割ケースの接合部に設けられたフランジ159,159同士を突き合わせ溶接することで形成されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る触媒コンバータ1の製造方法について説明する。
先ず、図3の(a)に示すように、担体11の形成に用いるハニカム構造体111を準備する。ハニカム構造体111は、それぞれに複数のセルが形成された複数の柱状セグメントの側面同士を、互いに接合して円柱状の集合体とすることにより形成する。
【0032】
次いで、図3の(b)に示すように、ハニカム構造体111の外周面を覆い、一対の凸部115,115を外周に有する外皮113が設けられた担体11を形成する。具体的には、ハニカム構造体111の外周に成形型を設置し、ハニカム構造体111と成形型との隙間に、外皮113を構成する材料を充填することにより形成する。
【0033】
次いで、図3の(c)に示すように、担体11の外周面上を覆うように、保持材13を巻回する。このとき、保持材13を押圧しながら担体11の凸部115,115の形状に追従させて、保持材13が担体11の外表面にフィットするように巻回する。
【0034】
次いで、図3の(d)に示すように、保持材13が外周面に巻回された担体11を、第1分割ケース151と第2分割ケース152とで挟み込むことにより、担体11をケース15内に収容する。このとき、第1分割ケース151と第2分割ケース152の接合部近傍に設けられた外方に突出した部分(接合により一対の突出部155,155を形成する部分)が、担体11の凸部115,115の位置となるようにして、両分割ケースの対向するフランジ159,159同士を突き合わせる。
【0035】
最後に、図3の(e)に示すように、第1分割ケース151と第2分割ケース152とを、フランジ159,159同士を突き合わせ溶接することで、ケース15を形成する。これにより、一対の突出部155,155において、保持材13を介して担体11の凸部115,115が強く挟圧された状態で、担体11がケース15内に保持された触媒コンバータ1が製造される。
【0036】
本実施形態に係る触媒コンバータ1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、担体11の外周面に、中心軸Xに対して対称となる位置に軸方向に沿って延びる一対の凸部115,115を設けた。また、接合部近傍が外方に突出した一対の第1分割ケース151および第2分割ケース152を接合することにより、凸部115,115の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部155,155をケース15に設けた。さらに、突出部155,155において、保持材13を介して凸部115,115を挟圧した状態で、担体11をケース15内に保持する構成とした。
これにより、第1分割ケース151および第2分割ケース152を接合することにより形成される突出部155,155において、剛性が高い凸部115,115を強く挟圧した状態で、担体11をケース15内に保持できる。従って、本実施形態によれば、従来に比して担体11の保持力を向上できる。
【0037】
また、本実施形態では、ケース15の軸方向において、担体11が保持されている部分にのみ、突出部155,155を設ける構成とした。
これにより、凸部115,115を覆う保持材13の軸方向の上流側端部に、排気が直接流れ込むことを回避できる。このため、かかる上流側端部において、排気中の粒子状物質などが堆積したり、保持材13が風蝕されるのを抑制でき、担体11の保持力の低下を抑制できる。
【0038】
[変形例1]
図4は、上記実施形態の変形例1に係る触媒コンバータ2の部分拡大断面図である。図4に示されるように、変形例1に係る触媒コンバータ2は、凸部215の形状を、横断面視で略等脚台形状に変更し、それに伴って突出部255の形状などを変更した以外は、上記実施形態と同様の構成である。
この変形例1によれば、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0039】
[変形例2]
図5は、上記実施形態の変形例2に係る触媒コンバータ3の部分拡大断面図である。図5に示されるように、変形例2に係る触媒コンバータ3は、凸部315の形状を、横断面視で半円形状に変更し、それに伴って突出部355の形状などを変更した以外は、上記実施形態と同様の構成である。
この変形例2によれば、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0040】
[変形例3]
図6は、上記実施形態の変形例3に係る触媒コンバータ4の部分拡大断面図である。図6に示されるように、変形例3に係る触媒コンバータ4は、第1分割ケース451および第2分割ケース452の端部を互いにラップさせた状態で接合することにより、突出部455を形成した以外は、上記実施形態と同様の構成である。
この変形例3によれば、上記実施形態と同様の効果が奏される他、第1分割ケース451および第2分割ケース452の端部のラップ度合を調整することにより、凸部415の挟圧荷重を調整できるため、担体の保持力を自在に調整できる。また、突出部455から外方に延在するフランジが不要であるため、省スペース化が可能である。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
上記実施形態では、本発明に係る排気浄化用担体の保持構造を触媒コンバータに適用した例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば排気浄化フィルタとしてのDPFに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,2,3,4…触媒コンバータ(排気浄化用担体の保持構造)
11…担体(排気浄化用担体)
13…保持材
15,25,35,45…ケース
111…ハニカム構造体
113…外皮
115,215,315,415…凸部
151,251,351,451…第1分割ケース(一対の分割ケース)
152,252,352,452…第2分割ケース(一対の分割ケース)
155,255,355,455…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半筒状の一対の分割ケースを接合してなる略筒状のケース内に、保持材を介して柱状の排気浄化用担体を保持する排気浄化用担体の保持構造であって、
前記排気浄化用担体は、その外周面に、中心軸に対して対称となる位置に軸方向に沿って延びる一対の凸部を有し、
前記ケースは、接合部近傍が外方に突出した前記一対の分割ケースを接合することにより形成され且つ前記凸部の幅よりも大きな幅で軸方向に沿って延びる一対の突出部を有し、
当該一対の突出部において前記保持材を介して前記凸部が挟圧された状態で、前記排気浄化用担体が前記ケース内に保持されていることを特徴とする排気浄化用担体の保持構造。
【請求項2】
前記一対の突出部は、前記ケースの軸方向において、前記排気浄化用担体が保持されている部分にのみ設けられていることを特徴とする請求項1記載の排気浄化用担体の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5954(P2012−5954A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143892(P2010−143892)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】