説明

排気浄化装置及びその使用方法

【課題】ハニカム構造体の微小空間内に均一な放電プラズマを形成することができる排気浄化装置及びその使用方法を提供する。
【解決手段】1つ又は複数のハニカム構造体と、高電圧電極と接地電極を含む複数のプラズマ発生手段と、前記プラズマ発生手段に高電圧を印加するための1つ又は複数の高電圧電源とを備えた排気浄化装置であって、前記ハニカム構造体が前記プラズマ発生手段によって挟まれて配置されるように、前記プラズマ発生手段と前記ハニカム構造体が、排ガスの流れ方向に沿って前記プラズマ発生手段から順に交互に配置され、かつ前記複数のプラズマ発生手段に含まれる前記高電圧電極と前記接地電極が、排ガスの流れ方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする排気浄化装置及びその使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置、より詳しくは放電プラズマを利用して排気中に含まれる有害物質を浄化するための装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流又は交流の高電圧を印加することで発生する放電プラズマは、空気浄化をはじめとして様々な技術分野において応用されている。自動車の分野においても、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の有害物質、例えば、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM:Particulate Matter)等を浄化する技術として、放電プラズマ及び/又はそれによって起こる化学反応等を利用した装置や方法が従来から提案されている(例えば、特許文献1〜5等を参照)。
【0003】
一方で、自動車の排ガス浄化用触媒として広く知られる三元触媒は、コージェライト等の耐熱性セラミックスから形成され多数のセル通路を有するハニカム構造体と、当該セル通路の表面に形成されアルミナ(Al23)等の多孔質酸化物からなるコート層と、当該コート層に担持された白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属とから一般に構成されている。また、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるPMについても、それを捕集及び燃焼除去するために、多数のセル通路を有するハニカム構造体から構成されたディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)が一般に用いられている。
【0004】
ここで、上記のようなハニカム構造体を用いた三元触媒やDPFにおいて放電プラズマを利用する場合には、ハニカム構造体における多数のセル通路から構成される各微小空間内に放電プラズマを均一に形成することが極めて重要である。このような均一な放電プラズマを形成することで、排ガスや、あるいはハニカム構造体に担持された触媒金属に放電プラズマを効率よく作用させることができるので、排ガス中に含まれるNOxやPM等の有害物質の浄化をより促進させることが可能である。
【0005】
しかしながら、従来のコロナ放電やバリア放電などの放電方法では、1つの空間を放電させるためには一対の放電電極と接地電極が必要とされる。したがって、非常に多くの微小空間を有するハニカム構造体について、そのすべての微小空間に均一な放電プラズマを形成することは極めて困難である。
【0006】
特許文献6では、プラズマ発生部と、該プラズマ発生部内で発生したプラズマを電界によってプラズマ発生部外に引き出す電極および、プラズマ発生部と電極との間にハニカムを有し、ハニカム内の中空管を通る排ガス流れ方向とプラズマ発生部および電極を結ぶ方向とが同一方向となるように配置してなる排ガス浄化装置が記載されている。また、特許文献6では、このような排ガス浄化装置によれば、簡便な電極構造でハニカムの多くの微小空間の内部に均一にプラズマ放電を発生させることが可能であり、ハニカムによる浄化機能と放電プラズマとを併用することにより浄化効果を高めることが可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−019534号公報
【特許文献2】特開2004−027982号公報
【特許文献3】特開2004−239257号公報
【特許文献4】特開2004−181418号公報
【特許文献5】特開2005−264778号公報
【特許文献6】特開2008−248852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献6に記載の排ガス浄化装置では、プラズマ発生部と当該プラズマ発生部外にプラズマを引き出すための電極とが電圧の印加に関してそれぞれ独立に制御されており、それゆえ2つの高電圧電源を必要とする(特許文献6の図1等を参照)。また、特許文献6では、プラズマ発生部として、中心電極と外部電極の間に球状の誘電体ペレットが充填された、いわゆるパックドベッド放電の構成が具体的に開示されている。しかしながら、このような放電によって発生したプラズマは、必ずしもそのすべてがハニカム構造体の内部に導入されない場合がある。したがって、特許文献6に記載の排ガス浄化装置では、ハニカム構造体の微小空間内における均一で効率的な放電プラズマの形成に関して依然として改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、新規でより簡単な構成により、ハニカム構造体の微小空間内に均一な放電プラズマを形成することができる排気浄化装置及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)隔壁で区画された複数のセル通路を有する1つ又は複数のハニカム構造体と、
高電圧電極と接地電極を含む複数のプラズマ発生手段と、
前記プラズマ発生手段に高電圧を印加するための1つ又は複数の高電圧電源と
を備えた排気浄化装置であって、
前記ハニカム構造体が前記プラズマ発生手段によって挟まれて配置されるように、前記プラズマ発生手段と前記ハニカム構造体が、排ガスの流れ方向に沿って前記プラズマ発生手段から順に交互に配置され、かつ
前記複数のプラズマ発生手段に含まれる前記高電圧電極と前記接地電極が、排ガスの流れ方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする、排気浄化装置。
(2)1つの高電圧電源を備え、該1つの高電圧電源に各高電圧電極が電気的に接続されていることを特徴とする、上記(1)に記載の排気浄化装置。
(3)前記ハニカム構造体におけるセルの隔壁に、触媒金属を担持してなるコート層が形成されたことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の排気浄化装置。
(4)前記プラズマ発生手段が、絶縁体と、前記高電圧電極及び前記接地電極をそれぞれ構成する2枚の導電層とを含み、前記絶縁体中に前記2枚の導電層が間隔を置いて配置され、さらに前記ハニカム構造体における前記セル通路の個々の開口に対応する位置に開口が設けられた構造を有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の排気浄化装置。
(5)複数のハニカム構造体を備えたことを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の排気浄化装置。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の排気浄化装置を用いたハニカム構造体内部へのプラズマ導入方法であって、
前記1つ又は複数の高電圧電源から前記複数のプラズマ発生手段に高電圧を印加することでプラズマを発生させ、発生したプラズマを前記ハニカム構造体の排ガス上流側のプラズマ発生手段と排ガス下流側のプラズマ発生手段との間に生じた電位差を利用して前記ハニカム構造体の内部に引き込むことを特徴とする、ハニカム構造体内部へのプラズマ導入方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排気浄化装置によれば、1つの高電圧電源のみを用いて放電プラズマを発生させかつそれをハニカム構造体の内部に引き込むことが可能である。したがって、本発明の排気浄化装置によれば、2つ以上の高電圧電源を別々に独立して制御する等の必要なしに、より安価でかつより簡単な方法においてハニカム構造体の微小空間内に均一な放電プラズマを形成することが可能である。さらに、本発明によれば、2つ以上の複数のハニカム構造体を排ガスの流れ方向に沿って直列に配置した多段構成の排気浄化装置を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】放電プラズマを利用した従来技術の排気浄化装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の排気浄化装置の1つの実施態様を模式的に示した図である。
【図3】本発明の好ましい実施態様において用いられるプラズマ発生手段を模式的に示した図である。
【図4】本発明による多段構成の排気浄化装置の一例を模式的に示した図である。
【図5】実施例において使用した装置を模式的に示した図である。
【図6】図5に示す装置においてプラズマを発生させた場合の放電プラズマの様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の有害物質を浄化するための排気浄化装置について詳しく説明されるが、本発明の排気浄化装置は、このような特定の用途に何ら限定されるものではなく、室内空気の浄化や工場排ガスの浄化等、幅広い用途において適用できることは言うまでもない。
【0014】
本発明の排気浄化装置は、隔壁で区画された複数のセル通路を有する1つ又は複数のハニカム構造体と、高電圧電極と接地電極を含む複数のプラズマ発生手段と、前記プラズマ発生手段に高電圧を印加するための1つ又は複数の高電圧電源とを備え、前記ハニカム構造体が前記プラズマ発生手段によって挟まれて配置されるように、前記プラズマ発生手段と前記ハニカム構造体が、排ガスの流れ方向に沿って前記プラズマ発生手段から順に交互に配置され、かつ前記複数のプラズマ発生手段に含まれる前記高電圧電極と前記接地電極が、排ガスの流れ方向に沿って交互に配置されていることを特徴としている。
【0015】
先に述べたとおり、ハニカム構造体を用いた三元触媒やDPFにおいて放電プラズマを利用する場合には、排ガスやハニカム構造体に担持された触媒金属に放電プラズマを効率よく作用させるために、ハニカム構造体における多数のセル通路から構成される各微小空間内に放電プラズマを均一に形成することが極めて重要である。
【0016】
特開2008−248852号公報では、排ガスの流れ方向におけるハニカム構造体の両端にプラズマ発生手段と電界発生用電極とをそれぞれ配置した排気浄化装置が開示されている。そして、特開2008−248852号公報では、プラズマ発生手段において発生したプラズマを電界発生用電極で発生させた電界(又は電位差)によってハニカム構造体全体にスライドさせ、それによってハニカム構造体の多数の微小空間内に均一な放電プラズマを形成することが記載されている。
【0017】
図1は、特開2008−248852号公報において開示されているような放電プラズマを利用した従来技術の排気浄化装置を模式的に示した図である。図1を参照すると、排気浄化装置10は、隔壁で区画された複数のセル通路を有するハニカム構造体11と、高電圧電極と接地電極を含むプラズマ発生手段12と、当該プラズマ発生手段12に高電圧を印加するための高電圧電源13と、電界を発生させるための別個の高電圧電源14とを備えている。このように、従来技術の排気浄化装置では、プラズマ発生手段と電界発生用電極とが電圧の印加に関してそれぞれ独立して制御される必要があり、したがって2つ別個の高電圧電源が必要とされる。
【0018】
本発明者らは、高電圧電極と接地電極を含むプラズマ発生手段をハニカム構造体の排ガス上流側と排ガス下流側のそれぞれに配置し、そしてこれらの高電圧電極と接地電極を排ガスの流れ方向に沿って交互に配置した排気浄化装置を使用することで、1つの高電圧電源のみを用いた場合においても、一方のプラズマ発生手段で発生したプラズマを2つのプラズマ発生手段の間に生じる電位差によってハニカム構造体の内部に引き込むことができることを見出した。
【0019】
図2は、本発明の排気浄化装置の1つの実施態様を模式的に示した図である。図2を参照すると、排気浄化装置20は、隔壁で区画された複数のセル通路を有するハニカム構造体21と、高電圧電極と接地電極を含む前段プラズマ発生手段22と、同様に高電圧電極と接地電極を含む後段プラズマ発生手段23と、これらのプラズマ発生手段に高電圧を印加するための高電圧電源24とを備えており、さらに前段プラズマ発生手段22と後段プラズマ発生手段23に含まれる高電圧電極と接地電極が排ガスの流れ方向に沿って交互に配置され、そして各高電圧電極が高電圧電源24に電気的に接続されている。
【0020】
上記のような構成を有する排気浄化装置によれば、ハニカム構造体21の一方の端部には高電圧電極が配置されそしてもう一方の端部には接地電極が配置されているため、高電圧電源24から前段プラズマ発生手段22と後段プラズマ発生手段23のそれぞれに電圧を印加した場合にはハニカム構造体21の両端に電位差を生じさせることができる。したがって、この電位差を利用することで、前段プラズマ発生手段22又は後段プラズマ発生手段23において発生したプラズマをハニカム構造体21の内部に引き込むことが可能となる。
【0021】
本発明によれば、隔壁で区画された複数のセル通路を有するハニカム構造体としては、排ガス浄化用触媒やDPF等において一般的に用いられる任意の絶縁性材料を使用することができる。例えば、このようなハニカム構造体としては、コージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料を使用することができる。なお、本発明において「ハニカム構造体」とは、隔壁で区画された複数のセル通路を有する任意の構造体を言うものであり、排ガス浄化用触媒が担持される基材やDPF等の構造体を包含するものである。また、当該ハニカム構造体の各セル通路の断面形状は、特には限定されず、四角形、六角形、その他の多角形、あるいは円形等、任意の形状のものを適宜選択すればよい。
【0022】
本発明によれば、プラズマ発生手段としては、高電圧電極と接地電極とを含み、安定にプラズマを発生させることができ、かつハニカム構造体の排ガス上流側と排ガス下流側にそれぞれ配置した場合に当該ハニカム構造体の両端に電位差を生じさせることができる任意のプラズマ発生手段を使用することができる。
【0023】
また、上記のプラズマ発生手段において用いられる高電圧電極及び接地電極としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス、銅、タングステン、鉄、アルミニウムなどの導電性材料を使用することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様によれば、プラズマ発生手段は、絶縁体と、高電圧電極及び接地電極をそれぞれ構成する2枚の導電層とを含み、当該絶縁体中に当該2枚の導電層が間隔を置いて配置され、さらにハニカム構造体におけるセル通路の個々の開口に対応する位置に開口が設けられた構造を有する。
【0025】
先に記載したとおり、特開2008−248852号公報では、ハニカム構造体の一方の端部に配置されるプラズマ発生手段として、中心電極と外部電極の間に球状絶縁体が充填された、いわゆるパックドベッド放電の構成が具体的に開示されている。このような放電方法の場合、中心電極と外部電極の間に高電圧を印加すると、それらの間に充填された球状絶縁体同士がぶつかり合っているところで主として放電プラズマが発生する。しかしながら、このような放電プラズマの発生箇所は必ずしもハニカム構造体の開口位置とは一致していない。したがって、ハニカム構造体の他方の端部に電界発生用電極を配置してハニカム構造体の両端に電位差を生じさせたとしても、発生したプラズマのすべてを確実にハニカム構造体の内部に導入することができない場合があった。
【0026】
図3は、本発明の好ましい実施態様において用いられるプラズマ発生手段を模式的に示した図である。なお、図3(a)はプラズマ発生手段の正面図を示し、図3(b)はプラズマ発生手段の断面図を示している。より詳しく説明すると、プラズマ発生手段30は、図3(b)に示すように、二酸化ケイ素(SiO2)等の材料からなる絶縁体31中に高電圧電極及び接地電極をそれぞれ構成する2枚の導電層32及び33が間隔を置いて配置され、そして図3(a)に示すように、ハニカム構造体におけるセル通路の個々の開口に対応する位置にハニカム構造体の開口と同じか又はそれよりも小さい寸法の開口34が設けられた構造を有する。
【0027】
このような構造を有するプラズマ発生手段を使用することで、高電圧電極32と接地電極33の間に高電圧を印加した場合に開口34において放電プラズマを発生させることができる。この開口34は上記のとおりハニカム構造体の開口に対応する位置に設けられているため、ハニカム構造体の両端に電位差を生じさせた場合には、発生したプラズマのすべてを確実にハニカム構造体の内部に導入することが可能となる。したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、発生したプラズマを何ら損失させることなく、ハニカム構造体の微小空間内に均一でかつ効率よく放電プラズマを形成することが可能である。
【0028】
本発明によれば、上記のプラズマ発生手段に高電圧を印加するための高電圧電源としては、当該プラズマ発生手段においてプラズマ、特には電子がイオンに対して高いエネルギーを有する非平衡プラズマを発生させることができる任意の高電圧電源を使用することができる。例えば、高電圧電源としては、一般的に5〜20kV(周波数50Hz〜10kHz)程度のパルス電圧又は交流電圧をプラズマ発生手段に印加することができる電源を使用することが好ましい。
【0029】
本発明の他の好ましい実施態様では、触媒金属を担持したコート層がハニカム構造体におけるセルの隔壁に形成される。このような触媒金属としては、特に限定されないが、三元触媒やDPFにおいて一般的に用いられる貴金属、例えば、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。あるいはまた、触媒金属としては、このような貴金属とともに又はそれに代えて排ガス中の有害物質の浄化に活性を示す他の金属を使用することもできる。
【0030】
また、上記の触媒金属が担持されるコート層を構成する触媒担体としては、特に限定されないが、一般に触媒担体として用いられる任意の金属酸化物を使用することができる。このような触媒担体としては、例えば、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0031】
放電プラズマを利用した排気浄化装置では、放電によって放出された電子が排ガス中の成分に衝突して、例えば、オゾンや酸素ラジカル等の活性種が生成することが一般的に知られている。このような活性種は非常に反応性が高く、それゆえ排ガス中の有害物質、例えば、NOxやPMに作用してそれらをより無害な形態又はより反応しやすい形態に転化することができる。本発明の排気浄化装置によれば、ハニカム構造体の各微小空間全体に均一なプラズマを効率よく形成することができるので、上記のようなプラズマの作用をより促進させることができると考えられる。また、さらに触媒金属が存在する場合には、放電によって放出された電子で触媒金属自体の電子状態も改質することができると考えられる。したがって、ハニカム構造体におけるセルの隔壁に触媒金属を担持したコート層を形成した場合には、プラズマ単独の場合に比べてNOxの浄化やPMの酸化等の反応をより顕著に改善することが可能である。
【0032】
また、触媒金属として、例えば、貴金属以外の幾らか触媒性能が劣る金属を使用した場合においても、本発明の排気浄化装置によって得られる均一なプラズマを排ガスや触媒金属に作用させることで、上記のとおり、排ガス中の有害物質をより反応性の高い形態に改質し及び/又は触媒金属自体の電子状態を改質することができるので、高い排ガス浄化性能を達成することができると考えられる。三元触媒等の触媒成分として一般的に用いられる貴金属、特にPt、Rh、Pd等の白金族元素は、自動車の排ガス規制の強化とともに使用量が増加しており、それゆえ資源の枯渇が懸念されている。したがって、これらの白金族元素以外の触媒金属を本発明の排気浄化装置によって得られる均一なプラズマと組み合わせて使用することで、白金族元素の使用量を減らすことができるか又はそれを使用する必要なしに高い排ガス浄化性能を達成することが可能である。
【0033】
本発明の他の実施態様によれば、2つ以上の複数のハニカム構造体を排ガスの流れ方向に沿って直列に配置した多段構成の排気浄化装置を使用することができる。より詳しくは、本発明による多段構成の排気浄化装置は、2つ以上の複数のハニカム構造体を備え、各ハニカム構造体がプラズマ発生手段によって挟まれて配置されるように、プラズマ発生手段とハニカム構造体が、排ガスの流れ方向に沿ってプラズマ発生手段から順に交互に配置されている。
【0034】
図4は、本発明による多段構成の排気浄化装置の一例を模式的に示した図である。図4を参照すると、排気浄化装置40は、隔壁で区画された複数のセル通路を有する3つのハニカム構造体41と、それぞれが高電圧電極と接地電極を含む4つのプラズマ発生手段42と、これらのプラズマ発生手段に高電圧を印加するための1つの高電圧電源43とを備えており、さらにこれらのプラズマ発生手段に含まれる高電圧電極と接地電極が排ガスの流れ方向に沿って交互に配置され、そして各高電圧電極が1つの高電圧電源43に電気的に接続されている。
【0035】
上記の多段構成の排気浄化装置においては、3つのハニカム構造体41のそれぞれについて一方の端部には高電圧電極が配置されそしてもう一方の端部には接地電極が配置されている。それゆえ、高電圧電源43から4つのプラズマ発生手段42のそれぞれに電圧を印加した場合には3つのハニカム構造体41のそれぞれの両端に電位差を生じさせることができる。したがって、これらの電位差を利用することで、各プラズマ発生手段42において発生したプラズマを3つのすべてのハニカム構造体41の内部に引き込むことが可能である。
【0036】
また、このような多段構成の排気浄化装置によれば、放電プラズマを十分に排ガス及び/又は触媒金属に作用させることができるので、1段構成の排気浄化装置に比べてより高い排ガス浄化性能を達成することが可能である。しかも、本発明による多段構成の排気浄化装置では、このような排ガスの浄化を1つの高電圧電源のみを用いて達成することができるので、放電プラズマを利用した従来技術の排気浄化装置に比べてプロセスが簡単なだけでなくコスト的にも非常に有利である。
【0037】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
図5は、本実施例において使用した装置を模式的に示した図である。なお、この装置では、放電プラズマの様子を観察するために、コージェライト等の不透明なセラミックス材料に代えて、長さが20mmそして直径が2mmの透明なガラス管を多数束ねたものを擬似ハニカム構造体として使用した。
【0039】
また、プラズマ発生手段としては、図3に示すように、二酸化ケイ素からなる絶縁体中に高電圧電極及び接地電極をそれぞれ構成する2枚の導電層が間隔を置いて配置され、さらに擬似ハニカム構造体の開口に対応するよう多数の開口が設けられた構造を有する厚さが約1mmの材料を使用した。このプラズマ発生手段を2つ用意し、それらを擬似ハニカム構造体の上部と下部において高電圧電極と接地電極が交互に配置されるように取り付けた。なお、高電圧電源としては、AC電源(10kV、周波数1kHz)を使用した。この高電圧電源からプラズマ発生手段の各高電圧電極に電圧を印加した場合の結果を図6に示す。
【0040】
図6は、図5に示す装置においてプラズマを発生させた場合の放電プラズマの様子を示す写真である。図6の結果から明らかなように、ハニカム構造体の前後に2つのプラズマ発生手段を高電圧電極と接地電極が交互になるよう配置することで、プラズマ発生手段において発生したプラズマをハニカム構造体の内部まで引き込むことができ、ハニカム構造体全体に均一なプラズマを形成することができた。
【符号の説明】
【0041】
20 排気浄化装置
21 ハニカム構造体
22 前段プラズマ発生手段
23 後段プラズマ発生手段
24 高電圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で区画された複数のセル通路を有する1つ又は複数のハニカム構造体と、
高電圧電極と接地電極を含む複数のプラズマ発生手段と、
前記プラズマ発生手段に高電圧を印加するための1つ又は複数の高電圧電源と
を備えた排気浄化装置であって、
前記ハニカム構造体が前記プラズマ発生手段によって挟まれて配置されるように、前記プラズマ発生手段と前記ハニカム構造体が、排ガスの流れ方向に沿って前記プラズマ発生手段から順に交互に配置され、かつ
前記複数のプラズマ発生手段に含まれる前記高電圧電極と前記接地電極が、排ガスの流れ方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
1つの高電圧電源を備え、該1つの高電圧電源に各高電圧電極が電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記ハニカム構造体におけるセルの隔壁に、触媒金属を担持してなるコート層が形成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生手段が、絶縁体と、前記高電圧電極及び前記接地電極をそれぞれ構成する2枚の導電層とを含み、前記絶縁体中に前記2枚の導電層が間隔を置いて配置され、さらに前記ハニカム構造体における前記セル通路の個々の開口に対応する位置に開口が設けられた構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
複数のハニカム構造体を備えたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気浄化装置を用いたハニカム構造体内部へのプラズマ導入方法であって、
前記1つ又は複数の高電圧電源から前記複数のプラズマ発生手段に高電圧を印加することでプラズマを発生させ、発生したプラズマを前記ハニカム構造体の排ガス上流側のプラズマ発生手段と排ガス下流側のプラズマ発生手段との間に生じた電位差を利用して前記ハニカム構造体の内部に引き込むことを特徴とする、ハニカム構造体内部へのプラズマ導入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246776(P2012−246776A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116839(P2011−116839)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】