排水内の重金属イオンの吸着除去方法
【課題】本発明者等は、重金属イオンの吸着剤として、これまで廃材をとして処分されてきた廃紙に含有されている微量の残留リグニンに着目し、設備費用やランニングコストを極力低減し、簡便で効率的な重金属イオンの除去手段であり、オフィス等から燃えるごみとして大量に排出され、容易に入手できる紙を用いる除去装置である。
【解決手段】重金属イオン(例えば、亜鉛イオン)を含んだ排水を流す排水槽の流路18とこの排水を供給し、かつ紙片部材20を収納した沈降槽4,5と、この沈降槽4,5から排水を供給し、かつ紙片部材20を収納するバブリング槽6と、このバブリング槽6から排水を供給し、かつバブリング20を収納する滞留槽とから成る。各槽内の紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンに亜鉛イオン等の重金属イオンを吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした除去装置である。
【解決手段】重金属イオン(例えば、亜鉛イオン)を含んだ排水を流す排水槽の流路18とこの排水を供給し、かつ紙片部材20を収納した沈降槽4,5と、この沈降槽4,5から排水を供給し、かつ紙片部材20を収納するバブリング槽6と、このバブリング槽6から排水を供給し、かつバブリング20を収納する滞留槽とから成る。各槽内の紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンに亜鉛イオン等の重金属イオンを吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした除去装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛等の重金属イオンを廃紙等の紙で吸着する吸着紙とこの紙を用いて重金属イオンを除去する方法と装置であって、詳しくは、例えば、オフィスで使用した廃紙や紙ごみ又はシュレッダーダスト等の紙片部材を用い、この紙片部材に含有している残留リグニンで重金属イオンを吸着させて亜鉛等の重金属イオンを除去する吸着紙とその除去方法とその除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属イオンによる水質汚染は、現在においても様々な環境問題や公的問題として残っている。重金属イオンの排出に関する厳しい環境規制を遵守するため、重金属イオンを除去するための効率的な技術を開発する必要がある。
【0003】
ところで、通常、工場廃水などから重金属イオンを除去する方法としては、擬集沈殿法やイオン交換法、キレート樹脂への吸着、活性炭への吸着、メンブラン吸着法、電気的吸着法、磁気吸着法などが知られている。
【0004】
これらの方法は、設備費用やランニングコストが高く、維持することが難しいことや、化学的に生成した大量の沈殿(キレート沈殿や活性炭などの吸着剤)を日常的にメンテナンスすることが煩雑であるなどの理由から利用が制限されている。
【0005】
そのため、さらに効率的で安価な吸着剤の開発が求められている。これまでに、飛散灰や泥炭、バイオマスとして微生物、農業副産物を使用する方法など多くの研究報告がある。特に、バイオソーベントとして、大豆やピーナッツ、アーモンドの外皮やトウモロコシの穂軸、動物飼料としての甜菜の利用が知られている。
【0006】
その他、重金属の除去方法として、具体的に提案されている特許文献には、次のものを挙げることができる。
まず、重金属イオンを含有する排水をアルカリ性とし、次いで、セルロース系フィルターを用いて濾過する重金属イオンの除去方法である(特許文献1参照)。
【0007】
また、針葉樹バークを熱アルカリ処理して、アルカリ抽出液を得る工程とアルカリ抽出液のPHを調整し、炭素系材料を加えて攪拌した後、分離して炭素系材料と樹皮フェノール酸との複合体でなる重金属イオン吸着材を得る工程とを備えた重金属イオン吸着材の製造方法である(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、松類の樹皮を硝酸処理して海水中のウランや工業廃水中の重金属イオンなどを捕集する捕集剤の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
また、カカオ豆またはカカオハスクを爆砕し、この爆砕物を水または含水溶媒で抽出し、得られる抽出残渣を有効成分とした重金属イオン吸着材の製造方法などが提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平9−117776号公報
【特許文献2】特開2008−37925号公報
【特許文献3】特開昭60−172348号公報
【特許文献4】特開2003−71278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように農業副産物を使用する方法など多くの研究報告があるが、農業副産物の使用は、収穫量の変動や、また作物の価格が環境問題とともに連動するという難点があり、そのため、さらに扱いやすい吸着材の開発が求められている。
【0012】
一方、特許文献1における重金属イオン除去方法は、前述の問題点と同様に、水酸化物沈殿による沈殿捕集法であるから、沈殿を日常的にメンテナンスする必要があるとともに、PH調整を必要とし、手間のかかる作業を要する等の課題を有している。
【0013】
特許文献2は、タンニン酸によって重金属イオンを吸着させる方法であるから、PH2〜3の酸性条件にPHを調整する必要があると共に、タンニン酸を含む特別な樹皮を必要とする等の欠点があり、効率的で安価な吸着材とはいえない。
【0014】
特許文献3も、樹皮をその都度、硝酸処理の工程を必要とするため、簡便で効率的で安価な捕集剤ではない。
【0015】
また、特許文献4は、カカオ豆を爆砕し繊維化する必要があり、しかも、爆砕後に有機溶媒を使用して油脂分を除去しなければならず、そのため、扱いやすく、簡便な吸着材の製造方法として実施できるものではない。
【0016】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したもので、本発明者等は、重金属イオンの吸着材として、これまで廃材として処分されてきた廃紙に含有されている残留リグニンに着目し、粒子状から成る表面積が極めて大きい紙を吸着剤として用いることにより、設備費用やランニングコストを極力低減し、簡便で効率的な重金属イオンの除去手段であり、しかも、極めて扱いやすい重金属イオンの除去方法とその除去装置を提供することを目的とし、特に、オフィス等から燃えるごみとして大量に排出され、容易に入手できる紙を用いるところに使用価値の高い技術である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材とし、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで重金属イオンを吸着して、当該紙片部材を重金属イオンの吸着剤とした重金属イオンの吸着紙である。
【0018】
請求項2に係る発明は、紙は、廃紙であり、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙である重金属イオンの吸着紙である。
【0019】
請求項3に係る発明は、紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して得た紙片であり、この紙片は、微量の残留リグニンを含有している重金属イオンの吸着紙である。
【0020】
請求項4に係る発明は、前記重金属イオンは、排水中に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなどである。
【0021】
請求項5に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を収容槽内に入れ、この収容槽内に投入した紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで前記重金属イオン吸着して排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0022】
請求項6に係る発明は、前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽であり、このバブリング槽内に紙片部材を投入し、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンにより、前記バブリング槽内の排水に含まれている重金属イオンを吸着させて、重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0023】
請求項7に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を紙片部材が投入されている沈降槽に供給し、次いで、紙片部材が投入されているバブリング槽に供給しながら、重金属イオンを紙片部材に含有されている残留リグニンに吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0024】
請求項8に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を供給した収容槽と、この収容槽内に投入され、かつ、非水溶性の残留リグニンが含有されている紙片部材とからなり、この収容槽内の適宜量の紙片部材で排水内の重金属イオンを除去する重金属イオンの除去装置である。
【0025】
請求項9に係る発明は、前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽である重金属イオンの除去装置である。
【0026】
請求項10に係る発明は、前記紙片部材を投入した収容槽やバブリング槽を用いて、少なくとも3回の吸着工程を経て排水内に含まれている重金属イオンを除去するように構成した重金属イオンの除去装置である。
【発明の効果】
【0027】
したがって、請求項1の発明によると、廃紙として処分されてきた紙を使用し、特に、オフィス等から燃えるごみとして大量に排出され、容易に入手できる紙を用いて重金属イオンを吸着できるので、極めて簡便で、かつ、効率的であり、しかも安価で経済的効果のきわめて良好な吸着剤を提供できると共に、環境にもやさしい吸着剤を提案することができる。特に、この残留リグニンは、非水溶性リグニンであるから、重金属イオンは紙片部材に含有されている残留リグニンに吸着するので、重金属イオンが吸着されている紙片部材を通常の廃棄方法で廃棄することが可能であり、特別な廃棄処分を要することがないため、経済性に優れているばかりでなく、環境対応にもきわめて優れている。
【0028】
請求項2の発明によると、処分されてきた廃紙や新聞紙、まんが紙等の紙片部材は、残留リグニンが含有されているので、より効率的に亜鉛イオン等の重金属イオンを除去することができる。
【0029】
請求項3の発明によると、木材をパルプ化して紙を製造する過程において、最終的に残留するリグニンを用いることが可能となり、経済効果の高い吸着剤を簡便に得ることができる。また、請求項4の発明によると、排水に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなど重金属イオンを除去できるので、紙を排水内に投入するのみでよく、排水はそのまま放流することが可能となる。
【0030】
請求項5又は8の発明によると、排水が入っている収容槽内に紙片部材を投入するのみで、亜鉛等の重金属イオンを排水基準以下にすることができるため、設備費用を極力低減して処理コストと手間を要せず、廃紙等の紙片部材によって亜鉛等の重金属イオンを除去することができる。
【0031】
請求項6と請求項9の発明によると、収容槽をバブリング槽とし、このバブリング槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするようにしたから、排水(原水)と紙片部材との接触機会が増大して重金属イオンを残留リグニンで効率的に吸着し、排水内の重金属イオンを確実に除去することが可能となる。
【0032】
請求項10の発明によると、少なくとも3回の吸着工程を経ることにより、固相吸着剤と重金属イオンとのキレート形成反応に基づく化学吸着現象により排水内の重金属イオンをほぼ完全に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明における重金属イオンの吸着紙と重金属イオンの除去方法とその装置についての好ましい実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0034】
本発明における重金属イオンの吸着剤は、紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材20とし、この紙片部材20は、一般のオフィスから大量に排出され、極めて入手が容易な廃紙であり、最終的には、燃えるごみとして一般に廃棄処分されるものである。本例では、これを重金属イオンの吸着剤として用いているので、効率的で極めて安価な吸着剤として利用することができる。
【0035】
上述の紙片部材20は、廃紙であり、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙であり、これらの紙には、残留リグニンが重金属イオンの吸着機能を有効に発揮する程度に含まれており、特に、この廃紙や新聞紙やまんが紙は、上質の紙と比較して重金属イオンの吸着率が高い。この残留リグニンは、非水溶性であるから、吸着した亜鉛等の重金属イオンは、廃紙側に吸着して排水側に溶出することがないので、吸着した紙片部材20は、紙ごみの廃棄処分と同様の処分方法により実施できる利点を有している。
【0036】
通常、紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して製造したものである。この紙片は、微量の残留リグニンを含有しており、この残留リグニンが重金属イオン(例えば、亜鉛イオン)を効率的に吸着するので、紙自体を重金属イオンの吸着剤として用いることが可能となる。
【0037】
本実施形態における重金属イオンの除去の一例は、排水に含まれている亜鉛イオンであり、この亜鉛イオンを上述の非水溶性の残留リグニンと吸着することによって、排水中に含まれている亜鉛イオンの除去を実施している。なお、亜鉛イオン以外の重金属イオンも同様の方法により除去できることは勿論である。
【0038】
図1は、本発明における重金属イオンの除去装置を示した概略説明図である。同図において、排水溝(雨水側溝)などの流路18に砂利等の沈降槽1と防油堤(油分離槽)2が設けられており、この沈降槽1内に設置したポンプ3により順次、排水を除去装置の各槽に送給するようにしている。
【0039】
本例では、この紙片部材20を網状のシュレッダー袋に入れ、適宜数のシュレッダー袋を各槽に投入することにより、各槽内に収納するようにしている。その他、シュレッダー袋に入れることなく、そのまま紙片部材20を各槽に投入するようにしてもよい。この場合は、紙片部材20が後工程に流れていかないような構造にしておく必要がある。この紙片部材20は、所定経過後、使用後の紙片部材20を各槽から取り出して、新しい紙片部材20に交換すれば良く、使用後のものは、通常の紙くずやシュレッダーダストと同様の廃棄処分を行えば良い。
【0040】
図1において、符号4,5は沈降槽であり、沈降槽4には、小石やごみ等を濾過するためのメッシュかご5を設けている。この中にも適宜量の紙片部材20が入っている。また、沈降槽5にも同様に紙片部材20が入れられており、沈降槽5内の排水は、次工程のバブリング槽6に送給される。この上述の沈降槽4,5においては、不純物の濾過と廃紙に含有されている残留リグニンより亜鉛イオン等の重金属イオンが吸着される。
【0041】
紙片部材20を入れたバブリング槽6内には、ブロワー(ポンプ)7より多数の噴出孔を有するノズル8にエアを吹き込んで、バブリング槽6内の排水と紙片部材20をバブリングさせ、排水と紙片部材20との接触機会を増やして、亜鉛イオン等の吸着効率を高めている。
【0042】
図1において、前述のバブリング槽6より送給されたポンプアップ槽9を介してポンプ10により、紙片部材20を入れた濾過装置14に送給している。この濾過装置14には、散水機構や紙片部材20を交換するための交換扉を設けている。この濾過装置14にも紙片部材20を投入し、この紙片部材20により排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンを紙片部材20の残留リグニンで吸着させ、排水内の亜鉛イオン等を低減させるようにしている。
【0043】
同図において、15,15は紙片部材20を入れた滞留槽であり、濾過装置14から送給されてきた排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンは、滞留槽15,15内で、紙片部材20に含有されている残留リグニンにより吸着され、排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンがさらに低減されて、排水槽等の流路18に送給される。そして、亜鉛イオン等の重金属イオンが低減されて、排水基準となった排水は、放流地17より放流される。図1における除去装置は、紙片部材20を投入した各槽を少なくとも3回程度の吸着工程を経ているので、ほぼ完全に近い状態で亜鉛イオンを排水内より除去している。なお、排水槽18に戻すことなく、そのまま排水基準となった排水はそんまま放流するようにしても良い。
【0044】
なお、図中11は、流量調整弁、12,12はバケット型ストレーナ、13は流量計、16は流量調整弁である。
【実施例1】
【0045】
本発明における重金属イオンの除去装置の実験の一例を説明する。
本例では、バブリング槽6による亜鉛除去の効果を確認するための実験を行った。このバブリング槽6内には、前述したようにブロワー(ポンプ)7よりノズル8にエアを吹き込んでバブリング槽6内をバブリングさせている。これにより、バブリング槽6内の水と紙片部材20を入れた複数個のシュレッダー袋をバブリングさせ、排水と紙片部材20の接触機会を増大させて、紙片部材20の残留リグニンで排水内の亜鉛イオンを吸着させるようにしている。
【0046】
次いで、実験概要は、使用水量が40L(槽内に約半分位)、紙片部材は、シュレッダー袋(18mm×25mm)のネットに120g充填した。エアの吹き出し部分は、φ13mmの塩化ビニール管に5cm間隔にφ2mmの穴をあけた。その実験方法は、40Lを入れたバブリング槽6にシュレッダー袋を5個(0.6kg)、10個(1.2kg)、15個(1.8kg)を入れ、バブリング時間を0秒、10秒、30秒、3分、5分、10分、20分の亜鉛イオン濃度を分析した。
【0047】
実験結果は、表1と図2に示す紙片部材量とバブリング時間の変化に伴う亜鉛イオン濃度の推移のグラフに示すとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の実験結果からすると、本例における試験水中の亜鉛イオン濃度は3mg/1程度であり、これは排水基準(2mg/1)の1.5倍である。また、本例におけるバブリング槽における実験では、亜鉛イオン除去の効果が見られ、紙片部材量を多く、かつ、バブリング時間(接触時間)を長くするほど亜鉛イオンの除去効果が見られた。この場合、水量に対して4.5%の紙片部材量では、3分で20%、5分で30%、20分では60%の亜鉛イオン濃度の低下が見られた。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明における重金属イオンの除去装置の実験の他例を説明する。
図3は、バブリング槽の滞留時間増加の効果確認実験のブロック図であり、同図において、ポンプ3から0.5m3/hの流量である原水(排水)を送給パイプ23を介して送給して、紙片部材20を投入した沈降槽5と紙片部材を入れていない沈降槽21,22に原水を送給し、ついで、紙片部材20を投入したバブリング槽6に原水を送給した例であり、沈降槽5とバブリング槽6には、120gの紙片部材20を入れたシュレッダー袋23を18個投入して槽内には、合計で2.2kgの紙片部材20を投入している。同図において、Xは原水(排水)の測定ポイント、Yはバブリング有りの場合と無しの場合の測定ポイントをそれぞれ示している。
【0051】
バブリング槽6の概略説明図を図4と図5に示す。同図において、バブリング槽6の入口24と出口25を設けて原水を送給している。バブリング槽6には、紙片部材20を入れたシュレッダー袋26を収納しており、バブリング槽6内には、図5に示すように、邪魔板27、28を設けてバブリング槽6内に原水が流れる水路を設けている。
【0052】
この実験結果からすると、図6において、バブリング槽6内でバブリングが無い場合は、点線で表され、時間経過とともに約5%程度の減衰率があったのに対して、同槽6内でバブリングを行うと、同図のグラフから明らかなように、立ち上がりの初期段階(約30秒)から約50%減衰させることができ、それ以降も高い減衰率の維持が可能となる。また、図5に示すように、水路を設けたバブリング槽6を用いることにより、原水と紙片部材20との接触機会が増え、初期段階から高い減衰率を実現できる。
【0053】
また、これまで、いわゆる攪拌装置には、棒・板・プロペラ状の攪拌子を槽内で一定速度・一方向に回転させるメカニカルスターラーがある。また、攪拌子へ磁石を封入することで容器の外部から回転するマグネチックスターラーなども知られている。その一方で、小型観賞用水槽のエアレーション装置や工業用スプレードライ装置、発酵槽内で必要な酸素交換を促進するためのバブリング装置などは、槽の流体や外気を槽外に設置したポンプで加圧して槽内に気体を吹き込むことで槽内を攪拌する装置として知られているが、これは一般的に溶液循環に対する攪拌装置として考えられてきた。そのため本発明のような金属イオンの除去装置では、これまでは使用できないと考えられてきた。すなわち、吸着のメカニズムは、固相吸着剤と金属イオンとの固/液分配とキレート形成反応に基づく化学吸着現象であるために、気体をバブリングすることで固相と液相の間に気体が存在することとなり、吸着が阻害される原因としての思い込みがあった。
【0054】
一方、本発明者らは、本発明において実際に検討を行った結果、移動する流れ(層流)に対して下方から気体をバブリングすることで、バブリングを行わなかった場合よりも吸着率が増加することを確認した。これは、バブリングをしなかった場合は、原水(排水)の流れが速いために、重金属イオンと吸着剤との接触時間が短かったが、バブリングを行うことで、原水の流れが乱流となり固相吸着剤と重金属イオンとの接触確率が増加してバブリングを行わなかった場合よりも吸着率が向上したと考えられる。
【実施例3】
【0055】
(試験例)
以下に、重金属イオンの吸着特性における試験例について述べる。
【0056】
金属イオンの標準原液は、和光純薬製の1000ppm原子吸光用標準液を使用した。この溶液を、蒸留水にて10ppmに希釈したものを標準溶液として使用した。PH緩衝溶液は、0.1molL-1リン酸緩衝液を使用した。その他の試薬については、特に断りのない限り、和光純薬製特級試薬を使用した。また、濾過には、アドバンテック製定量濾紙No.2を使用した。シュレッダーダスト(紙片部材)は、裁断機によって裁断された廃紙を使用した。
【0057】
その試験方法は、50mLスクリューバイアル管に、重金属イオンを含む水溶液20mlを入れ、その後、シュレッダーダスト0.5gを入れて、室温で15min間振とうする。その後、濾過して上澄みを分取する。Znイオンの測定には、日立ハイテク製Z−2000ダンデム型ゼーマン偏光原子吸光光度計を使用した。また、Zn以外の金属イオンの測定には、パーキンエルマー社製オプティマ2100ICP発光分光分析装置で測定した。
【0058】
PH調整には、ホリバ製F−52PHメータを使用し、振とうには、ヤマト科学製を使用した。本試験における吸着量と吸着率は、吸着剤を投入する前と吸着剤を投入した後の濃度の差から算出した。
【0059】
図7は、上記の試験方法によって得た吸着率を示している。同図において、亜鉛イオン(Zn)は93%の吸着率であり、その他の重金属イオンは、Al:81.4%、Mn:87%、Cu:86.4%、Cd:81.7%、Sn:79.1%、Hg92.4%の吸着率であった。
【0060】
本発明は、収納槽、沈降槽、バブリング槽等を多段に構成しているので、図7において、1回の吸着工程あたり79%以上(図7の一点鎖線参照)の吸着することで、3回目の吸着工程では、99%以上の重金属イオンが原理的に除去されたことになる。さらに、一般的な分析機器の精度は±1%以上であることを考慮すると、ほぼ完全に除去できるものと判断できる。これらの結果を踏まえると、本発明では、図7のグラフに示した一点鎖線より上の吸着率を有する重金属イオン(Al,Mn,Cu,Zn,Cd,Sn,Hg)は完全に除去することができる。なお、温度変化によって吸着率に変化はなく、したがって、本例における除去装置は、夏期、冬期においても、亜鉛イオン等の重金属イオンの吸着率は略同様であることを確認した。
【0061】
図4は、0.1gおよび0.5gにおける吸着容量の差を示したグラフであり、同図から明らかなように、吸着容量の大きい廃紙の方が、吸着量が大きく、0.5gの廃紙の場合は、20%程度までの亜鉛添加量は、理想の吸着量であり、亜鉛の添加量を増しても90%程度の吸着量が確認されている。
【0062】
図10は、廃紙とセルロースをラマン分光法によって測定したラマンスペクトルを示すグラフである。同図から明らかなように、廃紙とセルロースは同じ波長を示しているが、廃紙には、ベンゼン環のラマンスペクトルが示され、セルロースには、このベンゼン環が示されていない。このことは、ベンゼン環はリグニンのみに表われるスペクトルであるから、廃紙には、微量の残留リグニンが含有されており、セルロースには、リグニンが含有されていないことがわかる。よって、廃紙には、非水溶性の残留リグニンが含まれていることが実証されている。また、図11に示すグラフにおいて、紙片部材に含有されているリグニン量が9.4%と6.6%と4.5%である紙片部材の吸着率について実験した結果、吸着率はそれぞれ87.0%と85.4%と83.6%であった。したがって、リグニン量が多ければ、重金属イオンの吸着率が高いことが確認できたので、紙片部材に含有されている残留リグニンにより重金属イオンが吸着されていることが実証された。
【0063】
次に、各種のシュレッダーダスト(0.5g)を2ppmのZn含有の水溶液に入れて、前述の試験方法により、亜鉛の吸着率を測定した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2において、和紙、新聞紙、マンガ紙、トイレットペーパ、廃紙は、亜鉛の吸着率が高く、これらの紙には、前述のように、微量の残留リグニンが含まれており、このリグニンが亜鉛イオンを吸着して、水溶液内の亜鉛の低減化を図っている。特に、粒子から成る紙は表面積が極めて大きく、しかも、シュレッダーによって紙を細片化しているので、水溶液と紙片との接触面積が大きく、効率的に水溶液内の亜鉛を吸着できる。
【0066】
図5は、PHにおける廃紙の亜鉛の吸着率と吸着量のピーク値を示したグラフであり、同図から明らかなように、ピーク値はPH7であるから、重金属イオンを除去する際には、PH調整を要しないことが確認できる。したがって、本発明における除去方法は、通常の重金属イオンの除去方法に比較してこの点においても手間を要せず、簡便に実施できる特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は紙片部材により重金属イオンを除去する重金属イオンの除去装置を示した概略説明図である。
【図2】図2は紙片部材とバブリング時間の変化に伴う亜鉛濃度の推移を示したグラフである。
【図3】本発明における除去装置の実験例を示した概略説明ブロック図である。
【図4】バブリング槽の正面説明図である。
【図5】同上の平面説明図である。
【図6】亜鉛濃度を100%とした時の減衰率を示すグラフである。
【図7】図7は重金属イオンを含む水溶液にシュレッダーダストを入れて吸着した重金属イオンの吸着率を示したグラフである。
【図8】図8は廃紙の吸着容量の差を示したグラフである。
【図9】図9はPHにおける廃紙のZnの吸着率と吸着量のピーク値を示したグラフである。
【図10】図10は、廃紙とセルロースをラマン分光法によって測定したラマンスペクトルを示すグラフである。
【図11】リグニン量と吸着率との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 沈降槽
5 沈降槽
6 バブリング槽
7 ブロワー
15 滞留槽
17 放流地
18 流路
20 紙片部材
26 シュレッダー槽
27 邪魔板
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛等の重金属イオンを廃紙等の紙で吸着する吸着紙とこの紙を用いて重金属イオンを除去する方法と装置であって、詳しくは、例えば、オフィスで使用した廃紙や紙ごみ又はシュレッダーダスト等の紙片部材を用い、この紙片部材に含有している残留リグニンで重金属イオンを吸着させて亜鉛等の重金属イオンを除去する吸着紙とその除去方法とその除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属イオンによる水質汚染は、現在においても様々な環境問題や公的問題として残っている。重金属イオンの排出に関する厳しい環境規制を遵守するため、重金属イオンを除去するための効率的な技術を開発する必要がある。
【0003】
ところで、通常、工場廃水などから重金属イオンを除去する方法としては、擬集沈殿法やイオン交換法、キレート樹脂への吸着、活性炭への吸着、メンブラン吸着法、電気的吸着法、磁気吸着法などが知られている。
【0004】
これらの方法は、設備費用やランニングコストが高く、維持することが難しいことや、化学的に生成した大量の沈殿(キレート沈殿や活性炭などの吸着剤)を日常的にメンテナンスすることが煩雑であるなどの理由から利用が制限されている。
【0005】
そのため、さらに効率的で安価な吸着剤の開発が求められている。これまでに、飛散灰や泥炭、バイオマスとして微生物、農業副産物を使用する方法など多くの研究報告がある。特に、バイオソーベントとして、大豆やピーナッツ、アーモンドの外皮やトウモロコシの穂軸、動物飼料としての甜菜の利用が知られている。
【0006】
その他、重金属の除去方法として、具体的に提案されている特許文献には、次のものを挙げることができる。
まず、重金属イオンを含有する排水をアルカリ性とし、次いで、セルロース系フィルターを用いて濾過する重金属イオンの除去方法である(特許文献1参照)。
【0007】
また、針葉樹バークを熱アルカリ処理して、アルカリ抽出液を得る工程とアルカリ抽出液のPHを調整し、炭素系材料を加えて攪拌した後、分離して炭素系材料と樹皮フェノール酸との複合体でなる重金属イオン吸着材を得る工程とを備えた重金属イオン吸着材の製造方法である(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、松類の樹皮を硝酸処理して海水中のウランや工業廃水中の重金属イオンなどを捕集する捕集剤の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
また、カカオ豆またはカカオハスクを爆砕し、この爆砕物を水または含水溶媒で抽出し、得られる抽出残渣を有効成分とした重金属イオン吸着材の製造方法などが提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平9−117776号公報
【特許文献2】特開2008−37925号公報
【特許文献3】特開昭60−172348号公報
【特許文献4】特開2003−71278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように農業副産物を使用する方法など多くの研究報告があるが、農業副産物の使用は、収穫量の変動や、また作物の価格が環境問題とともに連動するという難点があり、そのため、さらに扱いやすい吸着材の開発が求められている。
【0012】
一方、特許文献1における重金属イオン除去方法は、前述の問題点と同様に、水酸化物沈殿による沈殿捕集法であるから、沈殿を日常的にメンテナンスする必要があるとともに、PH調整を必要とし、手間のかかる作業を要する等の課題を有している。
【0013】
特許文献2は、タンニン酸によって重金属イオンを吸着させる方法であるから、PH2〜3の酸性条件にPHを調整する必要があると共に、タンニン酸を含む特別な樹皮を必要とする等の欠点があり、効率的で安価な吸着材とはいえない。
【0014】
特許文献3も、樹皮をその都度、硝酸処理の工程を必要とするため、簡便で効率的で安価な捕集剤ではない。
【0015】
また、特許文献4は、カカオ豆を爆砕し繊維化する必要があり、しかも、爆砕後に有機溶媒を使用して油脂分を除去しなければならず、そのため、扱いやすく、簡便な吸着材の製造方法として実施できるものではない。
【0016】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したもので、本発明者等は、重金属イオンの吸着材として、これまで廃材として処分されてきた廃紙に含有されている残留リグニンに着目し、粒子状から成る表面積が極めて大きい紙を吸着剤として用いることにより、設備費用やランニングコストを極力低減し、簡便で効率的な重金属イオンの除去手段であり、しかも、極めて扱いやすい重金属イオンの除去方法とその除去装置を提供することを目的とし、特に、オフィス等から燃えるごみとして大量に排出され、容易に入手できる紙を用いるところに使用価値の高い技術である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材とし、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで重金属イオンを吸着して、当該紙片部材を重金属イオンの吸着剤とした重金属イオンの吸着紙である。
【0018】
請求項2に係る発明は、紙は、廃紙であり、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙である重金属イオンの吸着紙である。
【0019】
請求項3に係る発明は、紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して得た紙片であり、この紙片は、微量の残留リグニンを含有している重金属イオンの吸着紙である。
【0020】
請求項4に係る発明は、前記重金属イオンは、排水中に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなどである。
【0021】
請求項5に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を収容槽内に入れ、この収容槽内に投入した紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで前記重金属イオン吸着して排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0022】
請求項6に係る発明は、前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽であり、このバブリング槽内に紙片部材を投入し、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンにより、前記バブリング槽内の排水に含まれている重金属イオンを吸着させて、重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0023】
請求項7に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を紙片部材が投入されている沈降槽に供給し、次いで、紙片部材が投入されているバブリング槽に供給しながら、重金属イオンを紙片部材に含有されている残留リグニンに吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法である。
【0024】
請求項8に係る発明は、重金属イオンを含んだ排水を供給した収容槽と、この収容槽内に投入され、かつ、非水溶性の残留リグニンが含有されている紙片部材とからなり、この収容槽内の適宜量の紙片部材で排水内の重金属イオンを除去する重金属イオンの除去装置である。
【0025】
請求項9に係る発明は、前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽である重金属イオンの除去装置である。
【0026】
請求項10に係る発明は、前記紙片部材を投入した収容槽やバブリング槽を用いて、少なくとも3回の吸着工程を経て排水内に含まれている重金属イオンを除去するように構成した重金属イオンの除去装置である。
【発明の効果】
【0027】
したがって、請求項1の発明によると、廃紙として処分されてきた紙を使用し、特に、オフィス等から燃えるごみとして大量に排出され、容易に入手できる紙を用いて重金属イオンを吸着できるので、極めて簡便で、かつ、効率的であり、しかも安価で経済的効果のきわめて良好な吸着剤を提供できると共に、環境にもやさしい吸着剤を提案することができる。特に、この残留リグニンは、非水溶性リグニンであるから、重金属イオンは紙片部材に含有されている残留リグニンに吸着するので、重金属イオンが吸着されている紙片部材を通常の廃棄方法で廃棄することが可能であり、特別な廃棄処分を要することがないため、経済性に優れているばかりでなく、環境対応にもきわめて優れている。
【0028】
請求項2の発明によると、処分されてきた廃紙や新聞紙、まんが紙等の紙片部材は、残留リグニンが含有されているので、より効率的に亜鉛イオン等の重金属イオンを除去することができる。
【0029】
請求項3の発明によると、木材をパルプ化して紙を製造する過程において、最終的に残留するリグニンを用いることが可能となり、経済効果の高い吸着剤を簡便に得ることができる。また、請求項4の発明によると、排水に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなど重金属イオンを除去できるので、紙を排水内に投入するのみでよく、排水はそのまま放流することが可能となる。
【0030】
請求項5又は8の発明によると、排水が入っている収容槽内に紙片部材を投入するのみで、亜鉛等の重金属イオンを排水基準以下にすることができるため、設備費用を極力低減して処理コストと手間を要せず、廃紙等の紙片部材によって亜鉛等の重金属イオンを除去することができる。
【0031】
請求項6と請求項9の発明によると、収容槽をバブリング槽とし、このバブリング槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするようにしたから、排水(原水)と紙片部材との接触機会が増大して重金属イオンを残留リグニンで効率的に吸着し、排水内の重金属イオンを確実に除去することが可能となる。
【0032】
請求項10の発明によると、少なくとも3回の吸着工程を経ることにより、固相吸着剤と重金属イオンとのキレート形成反応に基づく化学吸着現象により排水内の重金属イオンをほぼ完全に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明における重金属イオンの吸着紙と重金属イオンの除去方法とその装置についての好ましい実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0034】
本発明における重金属イオンの吸着剤は、紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材20とし、この紙片部材20は、一般のオフィスから大量に排出され、極めて入手が容易な廃紙であり、最終的には、燃えるごみとして一般に廃棄処分されるものである。本例では、これを重金属イオンの吸着剤として用いているので、効率的で極めて安価な吸着剤として利用することができる。
【0035】
上述の紙片部材20は、廃紙であり、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙であり、これらの紙には、残留リグニンが重金属イオンの吸着機能を有効に発揮する程度に含まれており、特に、この廃紙や新聞紙やまんが紙は、上質の紙と比較して重金属イオンの吸着率が高い。この残留リグニンは、非水溶性であるから、吸着した亜鉛等の重金属イオンは、廃紙側に吸着して排水側に溶出することがないので、吸着した紙片部材20は、紙ごみの廃棄処分と同様の処分方法により実施できる利点を有している。
【0036】
通常、紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して製造したものである。この紙片は、微量の残留リグニンを含有しており、この残留リグニンが重金属イオン(例えば、亜鉛イオン)を効率的に吸着するので、紙自体を重金属イオンの吸着剤として用いることが可能となる。
【0037】
本実施形態における重金属イオンの除去の一例は、排水に含まれている亜鉛イオンであり、この亜鉛イオンを上述の非水溶性の残留リグニンと吸着することによって、排水中に含まれている亜鉛イオンの除去を実施している。なお、亜鉛イオン以外の重金属イオンも同様の方法により除去できることは勿論である。
【0038】
図1は、本発明における重金属イオンの除去装置を示した概略説明図である。同図において、排水溝(雨水側溝)などの流路18に砂利等の沈降槽1と防油堤(油分離槽)2が設けられており、この沈降槽1内に設置したポンプ3により順次、排水を除去装置の各槽に送給するようにしている。
【0039】
本例では、この紙片部材20を網状のシュレッダー袋に入れ、適宜数のシュレッダー袋を各槽に投入することにより、各槽内に収納するようにしている。その他、シュレッダー袋に入れることなく、そのまま紙片部材20を各槽に投入するようにしてもよい。この場合は、紙片部材20が後工程に流れていかないような構造にしておく必要がある。この紙片部材20は、所定経過後、使用後の紙片部材20を各槽から取り出して、新しい紙片部材20に交換すれば良く、使用後のものは、通常の紙くずやシュレッダーダストと同様の廃棄処分を行えば良い。
【0040】
図1において、符号4,5は沈降槽であり、沈降槽4には、小石やごみ等を濾過するためのメッシュかご5を設けている。この中にも適宜量の紙片部材20が入っている。また、沈降槽5にも同様に紙片部材20が入れられており、沈降槽5内の排水は、次工程のバブリング槽6に送給される。この上述の沈降槽4,5においては、不純物の濾過と廃紙に含有されている残留リグニンより亜鉛イオン等の重金属イオンが吸着される。
【0041】
紙片部材20を入れたバブリング槽6内には、ブロワー(ポンプ)7より多数の噴出孔を有するノズル8にエアを吹き込んで、バブリング槽6内の排水と紙片部材20をバブリングさせ、排水と紙片部材20との接触機会を増やして、亜鉛イオン等の吸着効率を高めている。
【0042】
図1において、前述のバブリング槽6より送給されたポンプアップ槽9を介してポンプ10により、紙片部材20を入れた濾過装置14に送給している。この濾過装置14には、散水機構や紙片部材20を交換するための交換扉を設けている。この濾過装置14にも紙片部材20を投入し、この紙片部材20により排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンを紙片部材20の残留リグニンで吸着させ、排水内の亜鉛イオン等を低減させるようにしている。
【0043】
同図において、15,15は紙片部材20を入れた滞留槽であり、濾過装置14から送給されてきた排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンは、滞留槽15,15内で、紙片部材20に含有されている残留リグニンにより吸着され、排水内の亜鉛イオン等の重金属イオンがさらに低減されて、排水槽等の流路18に送給される。そして、亜鉛イオン等の重金属イオンが低減されて、排水基準となった排水は、放流地17より放流される。図1における除去装置は、紙片部材20を投入した各槽を少なくとも3回程度の吸着工程を経ているので、ほぼ完全に近い状態で亜鉛イオンを排水内より除去している。なお、排水槽18に戻すことなく、そのまま排水基準となった排水はそんまま放流するようにしても良い。
【0044】
なお、図中11は、流量調整弁、12,12はバケット型ストレーナ、13は流量計、16は流量調整弁である。
【実施例1】
【0045】
本発明における重金属イオンの除去装置の実験の一例を説明する。
本例では、バブリング槽6による亜鉛除去の効果を確認するための実験を行った。このバブリング槽6内には、前述したようにブロワー(ポンプ)7よりノズル8にエアを吹き込んでバブリング槽6内をバブリングさせている。これにより、バブリング槽6内の水と紙片部材20を入れた複数個のシュレッダー袋をバブリングさせ、排水と紙片部材20の接触機会を増大させて、紙片部材20の残留リグニンで排水内の亜鉛イオンを吸着させるようにしている。
【0046】
次いで、実験概要は、使用水量が40L(槽内に約半分位)、紙片部材は、シュレッダー袋(18mm×25mm)のネットに120g充填した。エアの吹き出し部分は、φ13mmの塩化ビニール管に5cm間隔にφ2mmの穴をあけた。その実験方法は、40Lを入れたバブリング槽6にシュレッダー袋を5個(0.6kg)、10個(1.2kg)、15個(1.8kg)を入れ、バブリング時間を0秒、10秒、30秒、3分、5分、10分、20分の亜鉛イオン濃度を分析した。
【0047】
実験結果は、表1と図2に示す紙片部材量とバブリング時間の変化に伴う亜鉛イオン濃度の推移のグラフに示すとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の実験結果からすると、本例における試験水中の亜鉛イオン濃度は3mg/1程度であり、これは排水基準(2mg/1)の1.5倍である。また、本例におけるバブリング槽における実験では、亜鉛イオン除去の効果が見られ、紙片部材量を多く、かつ、バブリング時間(接触時間)を長くするほど亜鉛イオンの除去効果が見られた。この場合、水量に対して4.5%の紙片部材量では、3分で20%、5分で30%、20分では60%の亜鉛イオン濃度の低下が見られた。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明における重金属イオンの除去装置の実験の他例を説明する。
図3は、バブリング槽の滞留時間増加の効果確認実験のブロック図であり、同図において、ポンプ3から0.5m3/hの流量である原水(排水)を送給パイプ23を介して送給して、紙片部材20を投入した沈降槽5と紙片部材を入れていない沈降槽21,22に原水を送給し、ついで、紙片部材20を投入したバブリング槽6に原水を送給した例であり、沈降槽5とバブリング槽6には、120gの紙片部材20を入れたシュレッダー袋23を18個投入して槽内には、合計で2.2kgの紙片部材20を投入している。同図において、Xは原水(排水)の測定ポイント、Yはバブリング有りの場合と無しの場合の測定ポイントをそれぞれ示している。
【0051】
バブリング槽6の概略説明図を図4と図5に示す。同図において、バブリング槽6の入口24と出口25を設けて原水を送給している。バブリング槽6には、紙片部材20を入れたシュレッダー袋26を収納しており、バブリング槽6内には、図5に示すように、邪魔板27、28を設けてバブリング槽6内に原水が流れる水路を設けている。
【0052】
この実験結果からすると、図6において、バブリング槽6内でバブリングが無い場合は、点線で表され、時間経過とともに約5%程度の減衰率があったのに対して、同槽6内でバブリングを行うと、同図のグラフから明らかなように、立ち上がりの初期段階(約30秒)から約50%減衰させることができ、それ以降も高い減衰率の維持が可能となる。また、図5に示すように、水路を設けたバブリング槽6を用いることにより、原水と紙片部材20との接触機会が増え、初期段階から高い減衰率を実現できる。
【0053】
また、これまで、いわゆる攪拌装置には、棒・板・プロペラ状の攪拌子を槽内で一定速度・一方向に回転させるメカニカルスターラーがある。また、攪拌子へ磁石を封入することで容器の外部から回転するマグネチックスターラーなども知られている。その一方で、小型観賞用水槽のエアレーション装置や工業用スプレードライ装置、発酵槽内で必要な酸素交換を促進するためのバブリング装置などは、槽の流体や外気を槽外に設置したポンプで加圧して槽内に気体を吹き込むことで槽内を攪拌する装置として知られているが、これは一般的に溶液循環に対する攪拌装置として考えられてきた。そのため本発明のような金属イオンの除去装置では、これまでは使用できないと考えられてきた。すなわち、吸着のメカニズムは、固相吸着剤と金属イオンとの固/液分配とキレート形成反応に基づく化学吸着現象であるために、気体をバブリングすることで固相と液相の間に気体が存在することとなり、吸着が阻害される原因としての思い込みがあった。
【0054】
一方、本発明者らは、本発明において実際に検討を行った結果、移動する流れ(層流)に対して下方から気体をバブリングすることで、バブリングを行わなかった場合よりも吸着率が増加することを確認した。これは、バブリングをしなかった場合は、原水(排水)の流れが速いために、重金属イオンと吸着剤との接触時間が短かったが、バブリングを行うことで、原水の流れが乱流となり固相吸着剤と重金属イオンとの接触確率が増加してバブリングを行わなかった場合よりも吸着率が向上したと考えられる。
【実施例3】
【0055】
(試験例)
以下に、重金属イオンの吸着特性における試験例について述べる。
【0056】
金属イオンの標準原液は、和光純薬製の1000ppm原子吸光用標準液を使用した。この溶液を、蒸留水にて10ppmに希釈したものを標準溶液として使用した。PH緩衝溶液は、0.1molL-1リン酸緩衝液を使用した。その他の試薬については、特に断りのない限り、和光純薬製特級試薬を使用した。また、濾過には、アドバンテック製定量濾紙No.2を使用した。シュレッダーダスト(紙片部材)は、裁断機によって裁断された廃紙を使用した。
【0057】
その試験方法は、50mLスクリューバイアル管に、重金属イオンを含む水溶液20mlを入れ、その後、シュレッダーダスト0.5gを入れて、室温で15min間振とうする。その後、濾過して上澄みを分取する。Znイオンの測定には、日立ハイテク製Z−2000ダンデム型ゼーマン偏光原子吸光光度計を使用した。また、Zn以外の金属イオンの測定には、パーキンエルマー社製オプティマ2100ICP発光分光分析装置で測定した。
【0058】
PH調整には、ホリバ製F−52PHメータを使用し、振とうには、ヤマト科学製を使用した。本試験における吸着量と吸着率は、吸着剤を投入する前と吸着剤を投入した後の濃度の差から算出した。
【0059】
図7は、上記の試験方法によって得た吸着率を示している。同図において、亜鉛イオン(Zn)は93%の吸着率であり、その他の重金属イオンは、Al:81.4%、Mn:87%、Cu:86.4%、Cd:81.7%、Sn:79.1%、Hg92.4%の吸着率であった。
【0060】
本発明は、収納槽、沈降槽、バブリング槽等を多段に構成しているので、図7において、1回の吸着工程あたり79%以上(図7の一点鎖線参照)の吸着することで、3回目の吸着工程では、99%以上の重金属イオンが原理的に除去されたことになる。さらに、一般的な分析機器の精度は±1%以上であることを考慮すると、ほぼ完全に除去できるものと判断できる。これらの結果を踏まえると、本発明では、図7のグラフに示した一点鎖線より上の吸着率を有する重金属イオン(Al,Mn,Cu,Zn,Cd,Sn,Hg)は完全に除去することができる。なお、温度変化によって吸着率に変化はなく、したがって、本例における除去装置は、夏期、冬期においても、亜鉛イオン等の重金属イオンの吸着率は略同様であることを確認した。
【0061】
図4は、0.1gおよび0.5gにおける吸着容量の差を示したグラフであり、同図から明らかなように、吸着容量の大きい廃紙の方が、吸着量が大きく、0.5gの廃紙の場合は、20%程度までの亜鉛添加量は、理想の吸着量であり、亜鉛の添加量を増しても90%程度の吸着量が確認されている。
【0062】
図10は、廃紙とセルロースをラマン分光法によって測定したラマンスペクトルを示すグラフである。同図から明らかなように、廃紙とセルロースは同じ波長を示しているが、廃紙には、ベンゼン環のラマンスペクトルが示され、セルロースには、このベンゼン環が示されていない。このことは、ベンゼン環はリグニンのみに表われるスペクトルであるから、廃紙には、微量の残留リグニンが含有されており、セルロースには、リグニンが含有されていないことがわかる。よって、廃紙には、非水溶性の残留リグニンが含まれていることが実証されている。また、図11に示すグラフにおいて、紙片部材に含有されているリグニン量が9.4%と6.6%と4.5%である紙片部材の吸着率について実験した結果、吸着率はそれぞれ87.0%と85.4%と83.6%であった。したがって、リグニン量が多ければ、重金属イオンの吸着率が高いことが確認できたので、紙片部材に含有されている残留リグニンにより重金属イオンが吸着されていることが実証された。
【0063】
次に、各種のシュレッダーダスト(0.5g)を2ppmのZn含有の水溶液に入れて、前述の試験方法により、亜鉛の吸着率を測定した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2において、和紙、新聞紙、マンガ紙、トイレットペーパ、廃紙は、亜鉛の吸着率が高く、これらの紙には、前述のように、微量の残留リグニンが含まれており、このリグニンが亜鉛イオンを吸着して、水溶液内の亜鉛の低減化を図っている。特に、粒子から成る紙は表面積が極めて大きく、しかも、シュレッダーによって紙を細片化しているので、水溶液と紙片との接触面積が大きく、効率的に水溶液内の亜鉛を吸着できる。
【0066】
図5は、PHにおける廃紙の亜鉛の吸着率と吸着量のピーク値を示したグラフであり、同図から明らかなように、ピーク値はPH7であるから、重金属イオンを除去する際には、PH調整を要しないことが確認できる。したがって、本発明における除去方法は、通常の重金属イオンの除去方法に比較してこの点においても手間を要せず、簡便に実施できる特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は紙片部材により重金属イオンを除去する重金属イオンの除去装置を示した概略説明図である。
【図2】図2は紙片部材とバブリング時間の変化に伴う亜鉛濃度の推移を示したグラフである。
【図3】本発明における除去装置の実験例を示した概略説明ブロック図である。
【図4】バブリング槽の正面説明図である。
【図5】同上の平面説明図である。
【図6】亜鉛濃度を100%とした時の減衰率を示すグラフである。
【図7】図7は重金属イオンを含む水溶液にシュレッダーダストを入れて吸着した重金属イオンの吸着率を示したグラフである。
【図8】図8は廃紙の吸着容量の差を示したグラフである。
【図9】図9はPHにおける廃紙のZnの吸着率と吸着量のピーク値を示したグラフである。
【図10】図10は、廃紙とセルロースをラマン分光法によって測定したラマンスペクトルを示すグラフである。
【図11】リグニン量と吸着率との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 沈降槽
5 沈降槽
6 バブリング槽
7 ブロワー
15 滞留槽
17 放流地
18 流路
20 紙片部材
26 シュレッダー槽
27 邪魔板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材とし、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで重金属イオンを吸着して、当該紙片部材を重金属イオンの吸着剤としたことを特徴とする重金属イオンの吸着紙。
【請求項2】
前記紙は、廃紙、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙である請求項1記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項3】
前記紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して得た紙片部材であり、この紙片部材は、微量の残留リグニンを含有している請求項1又は2記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項4】
前記重金属イオンは、排水中に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなどである請求項1乃至3の何れか1項記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項5】
重金属イオンを含んだ排水を収容槽内に入れ、この収容槽内に投入した紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで前記重金属イオン吸着して排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法。
【請求項6】
前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽であり、このバブリング槽内に紙片部材を投入し、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンにより、前記バブリング槽内の排水に含まれている重金属イオンを吸着させて、重金属イオンを除去するようにした請求項5記載の重金属の除去方法。
【請求項7】
重金属イオンを含んだ排水を紙片部材が投入された沈降槽に供給し、次いで、紙片部材が投入されたバブリング槽に供給しながら、重金属イオンを紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンに吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした請求項5又6記載の重金属イオンの除去方法。
【請求項8】
重金属イオンを含んだ排水を供給した収容槽と、この収容槽内に投入され、かつ、非水溶性の残留リグニンが含有されている紙片部材とからなり、収容槽内の適宜量の紙片部材で排水内の重金属イオンを除去することを特徴とする重金属イオンの除去装置。
【請求項9】
前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽である請求項8記載の重金属イオンの除去装置。
【請求項10】
前記紙片部材を投入した収容槽やバブリング槽を用いて、少なくとも3回の吸着工程を経て排水内に含まれている重金属イオンを除去するように構成した請求項8又は9記載の重金属イオンの除去装置。
【請求項1】
紙を細片、紐状片、糸状片、粉末状などに裁断又は加工して紙片部材とし、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで重金属イオンを吸着して、当該紙片部材を重金属イオンの吸着剤としたことを特徴とする重金属イオンの吸着紙。
【請求項2】
前記紙は、廃紙、シュレッダーダストや紙ごみ又は新聞紙、まんが紙である請求項1記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項3】
前記紙は、木材をパルプ化するパルプ化工程中にパルプに含有されているリグニンを抽出除去して得た紙片部材であり、この紙片部材は、微量の残留リグニンを含有している請求項1又は2記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項4】
前記重金属イオンは、排水中に含まれている亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、水銀イオンなどである請求項1乃至3の何れか1項記載の重金属イオンの吸着紙。
【請求項5】
重金属イオンを含んだ排水を収容槽内に入れ、この収容槽内に投入した紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンで前記重金属イオン吸着して排水内の重金属イオンを除去するようにした重金属イオンの除去方法。
【請求項6】
前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽であり、このバブリング槽内に紙片部材を投入し、この紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンにより、前記バブリング槽内の排水に含まれている重金属イオンを吸着させて、重金属イオンを除去するようにした請求項5記載の重金属の除去方法。
【請求項7】
重金属イオンを含んだ排水を紙片部材が投入された沈降槽に供給し、次いで、紙片部材が投入されたバブリング槽に供給しながら、重金属イオンを紙片部材に含有されている非水溶性の残留リグニンに吸着させて排水内の重金属イオンを除去するようにした請求項5又6記載の重金属イオンの除去方法。
【請求項8】
重金属イオンを含んだ排水を供給した収容槽と、この収容槽内に投入され、かつ、非水溶性の残留リグニンが含有されている紙片部材とからなり、収容槽内の適宜量の紙片部材で排水内の重金属イオンを除去することを特徴とする重金属イオンの除去装置。
【請求項9】
前記収容槽は、収容槽内の排水を対流させて排水と紙片部材とをバブリングするバブリング槽である請求項8記載の重金属イオンの除去装置。
【請求項10】
前記紙片部材を投入した収容槽やバブリング槽を用いて、少なくとも3回の吸着工程を経て排水内に含まれている重金属イオンを除去するように構成した請求項8又は9記載の重金属イオンの除去装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−22932(P2010−22932A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186970(P2008−186970)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【特許番号】特許第4316653号(P4316653)
【特許公報発行日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(505089614)国立大学法人福島大学 (34)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【特許番号】特許第4316653号(P4316653)
【特許公報発行日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(505089614)国立大学法人福島大学 (34)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]