説明

排水口清浄装置

【課題】 メンテナンスの手間が掛からず、効果の高い排水口清浄装置を提供する。
【解決手段】 排水口11の上部と微生物タンク21とは微生物供給管20によって繋がれており、微生物供給管20にはポンプ22が設けられている。微生物タンク21内には、タンパク質を分解する酵素を生産する微生物が休眠状態で保存されている。微生物タンク21から排水口11内の排水中に供給された微生物は、排水口11のヒーター18で温められて増殖し、酵素を生産して毛髪等を分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室や洗面台、流し台などに設けられた排水口を清浄にするための排水口清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場や洗面台の排水口には毛髪等の動物性の汚れが滞留し易い。そして、排水口に毛髪が滞留すると排水口が塞がり、排水口に汚れが溜まったり排水口が詰まったりする恐れがある。従って、従来は浴室等の使用後に、使用者が適宜毛髪等の汚れを拾い集めて排水口を掃除していた。
【0003】
このような動物性の汚れを自動的に除くための装置としては、特許文献1に開示された排水口の洗浄装置がある。この排水口洗浄装置では、高熱性細菌由来のタンパク質分解酵素を含む酵素剤が洗浄剤供給手段に保持されている。排水口を洗浄する際には、排水口容器の下部に連結された開閉弁を閉じて排水口容器から排水されないようにし、洗浄剤供給手段から排水口容器に酵素剤を供給すると共に約50〜80°の温水を排水口容器に供給する。こうして排水口に温水と洗浄剤が供給される結果、酵素剤に含まれていたタンパク質分解酵素によって毛髪やぬめりが分解され、排水口が洗浄される。
【0004】
この排水口洗浄装置では、タンパク質分解酵素を含む酵素剤が洗浄剤供給手段に保持されているが、酵素剤には使用期限があり、使用期限が経過すると酵素が有効に働かず洗浄能力が低下するという難点がある。そのため、従来の排水口洗浄装置では、酵素剤の使用期限を管理する手間が掛かる。また、酵素剤の使用期限が経過した場合には、古い酵素剤を捨てて洗浄供給手段の容器をきれいに掃除した後、新たな酵素剤を充填しなければならず、メンテナンスが面倒であった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−279856号公報
【特許文献2】特開2005−90011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、メンテナンスの手間が掛からず、効果の高い排水口清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる排水口清浄装置は、排水口に溜まった異物や汚れを分解する排水口清浄装置であって、排水中の異物や汚れを分解する働きを有する微生物を保存する微生物タンクと、微生物タンク内に保存されている微生物を排水口に供給する微生物供給手段とを備えたものである。
【0008】
本発明にかかる排水口清浄装置で排水口の掃除を行なう場合には、微生物供給手段、例えばポンプによって微生物を微生物タンクから排水口に供給する。排水口に供給された微生物は排水口内の排水中で増殖し、排水中の毛髪等の異物や動物性の汚れを分解し、排水口内を清浄にする。しかも、微生物は必要量だけ排水口に供給されるので、微生物の滞留するフィルタを排水口近辺に設置する場合のように細菌が一度に排水に触れることがなく、一度微生物タンクに微生物を充填すれば、長期間にわたって排水口の清浄動作を行なうことができる。また、微生物タンク内の微生物には、酵素剤のように使用期限といったものがなく、メンテナンスの手間が掛からない。
【0009】
本発明の請求項2に記載した実施態様においては、微生物は微生物タンク内で休眠状態で保存されている。従って、微生物は微生物タンク内で増殖し過ぎることがなく、安定した状態で長期間保存できる。
【0010】
本発明の請求項3に記載した実施態様において用いられている微生物は、タンパク質を分解する酵素を生産する働きを有し、当該酵素により排水中の異物や汚れを分解するものである。本発明の排水口清浄装置で用いる微生物は、タンパク質を直接生物分解するものであってもよいが、請求項3の実施態様のように微生物にタンパク質を分解する酵素を生産させ、この酵素を通じてタンパク質を分解させることにより効率的に毛髪等の異物や汚れを分解させることができる。
【0011】
また、請求項3の実施態様のようにタンパク質を分解する酵素により排水中の異物や汚れを分解して排水口を清浄にする場合でも、酵素は微生物タンクから排水口に供給された微生物により排水口内で生産されるので、酵素が従来例の酵素剤のように使用期限切れになることがない。
【0012】
本発明の請求項4にかかる実施態様は、タンパク質を分解する酵素を生産する微生物を用いる場合において、排水口内の排水の温度を測定する温度センサと、排水口内の排水を加熱する加熱手段と、加熱手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、微生物を供給された排水口内の排水の温度を、微生物の繁殖し易い温度に所定時間維持した後、微生物が生産した酵素が活性化される温度に所定時間維持する。
【0013】
請求項4の実施態様によれば、排水口に微生物を供給した後、微生物を供給された排水口内の排水の温度を、微生物の繁殖し易い温度に所定時間維持するので、排水口内で微生物を繁殖させて効率よくタンパク質を分解する酵素を生産させることができる。ついで、排水口内の排水の温度を酵素が活性化される温度に所定時間維持するので、酵素により排水口内の毛髪等の異物や動物性の汚れを効率よく分解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。ただし、本発明は、以下において説明する実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の一実施例による排水口清浄装置31を示す概略構成図である。ここでは、浴室の洗い場に設けられた排水口の場合について説明するが、本実施例の排水口清浄装置31は、浴槽の排水口や洗面台の排水口、流し台の排水口などにも同様に適用することができる。
【0016】
まず、排水口11の構造を説明する。排水口11は、排水口容器12、防臭キャップ13及び排水口蓋14によって構成されている。排水口容器12は、浴室床パン15に埋め込むように設置されている。排水口容器12の底面中央部には配水管16が接続されており、配水管16の上端は排水口容器12の底面よりも上に突出している。防臭キャップ13は、水やガスを通さない素材によって下面開口した逆椀状に形成されており、防臭キャップ13の下には筒状のフィルタ17が設けられている。防臭キャップ13は、配水管16の上端部を覆うようにして排水口容器12内に納められており、防臭キャップ13の下端は配水管16の上端よりも下に位置している。排水口蓋14は目皿とも言われ、排水口容器12の上に着脱自在に取り付けられている。
【0017】
浴室床パン15から排水口11に流れた排水は、防臭キャップ13によって毛髪等の異物を一部除去された後、排水口容器12内に流れ込み、配水管16から下水などに排出される。また、排水口容器12内は、配水管16の上端と同じ高さまで排水が滞留して水封しており、下水道からの臭気が浴室内に流れ込むのを防止している。
【0018】
次に、排水口清浄装置31を説明する。排水口容器12の外周面には、加熱手段すなわちニクロム線やPCTサーミスタ等からなるヒーター18が設けられている。排水口容器12の底部には、排水口容器12内の排水の温度を測定するための温度センサ19が設けられている。また、排水口容器12の側面上部には、微生物供給手段を介して微生物タンク21が接続されている。微生物供給手段は微生物供給管20とポンプ22からなり、微生物供給管20が排水口容器12の上部と微生物タンク21とをつないでいる。微生物供給管20には、ポンプ22と電磁開閉弁23とが設けられている。微生物タンク21には、タンパク質を分解する酵素(タンパク質分解酵素)を生産する働きを有する微生物が、培養液内において休眠状態で保存されている。このような微生物28としては、例えばバチルス属の微生物がある。
【0019】
微生物タンク21は微生物28を密閉できるような構造となっている。微生物28は常温で休眠状態になるものが望ましいが、そうでない場合には微生物タンク21に例えばペルチェ素子などを用いた冷却手段を設けてもよい。また、微生物タンク21内の微生物28は、休眠状態で保存されていて増殖はしないので、排水口容器12内に何度も供給すると消耗する。微生物タンク21は、微生物28が消耗した場合には、新たに微生物28を補給できるようになっている。
【0020】
また、排水口清浄装置31は、リモコン24と制御装置25を備えている。リモコン24は、洗浄スイッチ26と洗浄動作中に点灯する表示ランプ27を備えており、洗浄スイッチ26を押されると、制御装置25に対して排水口洗浄指令を出力する。制御装置25は、排水口洗浄指令を受け取ると、それに応答してポンプ22を運転開始し、電磁開閉弁23を開いて微生物タンク21から排水口容器12へ微生物28を供給する。また、制御装置25は、温度センサ19から排水温度を取得し、必要に応じてヒーター18を発熱させて排水口容器12内の排水温度を微生物28が酵素を発生させるのに最適な温度となるように調整する。なお、制御装置25は、主としてマイクロコンピュータと処理手順を記述したメモリによって構成されている。
【0021】
しかして、排水口容器12内に供給された微生物28は、排水口容器12内で繁殖してタンパク質を分解する酵素を生産する。この酵素は、毛髪29等の動物性の異物や汚れを分解して排水口11を洗浄する。分解された異物や汚れは、フィルタ17を通過して排水とともに下水道へ排出される。同時に、微生物28も排水とともに下水道へ排出される。
【0022】
図2及び図3は上記排水口清浄装置31による排水口11の洗浄動作の手順の一例を説明するフロー図である。排水口11の洗浄を行いたい場合には、リモコン24の洗浄スイッチ26を押す(ステップS11)。洗浄スイッチ26が押されると、リモコン24は表示ランプ27を点灯させ(ステップS12)、制御装置25に対して排水口洗浄指令を出力する。制御装置25は、排水口洗浄指令を受け取ると、温度センサ19によって排水口容器12内の水温(排水温度)を読み取り、排水口容器12内の水温が所定の水温T1以下であるかどうか判断する(ステップS13)。この水温T1は、微生物28が繁殖し易い温度の上限温度であって、例えば約37℃〜39℃となっている。
【0023】
排水口容器12内の水温が上限温度T1よりも高い場合(S13でNOの場合)には、排水口容器12内の水温が上限温度T1以下になるまで待機する。排水口容器12内の水温が上限温度T1以下になると(S13でYESになると)、制御装置25は電磁開閉弁23を開き(ステップS14)、ポンプ22を作動させる(ステップS15)。ポンプ22を作動させると同時にタイマー(制御装置25のタイマー機能)のカウントを開始し(ステップS16)、所定時間S1が経過すると(ステップS17)タイマーのカウントを停止し(ステップS18)、ポンプ22の運転を停止して(ステップS19)電磁開閉弁23を閉じる(ステップS20)。
【0024】
よって、微生物タンク21内の微生物28は、微生物供給管20を通じてポンプ22により排水口容器12内へ供給され、滞留している排水中に混入される。このときポンプ22は所定時間S1のあいだ作動されるので、排水口容器12には一定量の微生物28が供給される。
【0025】
こうして排水口容器12内に所定量の微生物28が供給されると、制御装置25は、温度センサ19によって微生物28の混じった排水の温度を読み取り、排水口容器12内の水温が所定の水温T2以上であるかどうか判断する(ステップS21)。この水温T2は、微生物28が繁殖し易い温度の下限温度であって、例えば約35℃となっている。
【0026】
排水口容器12内の水温が下限温度T2よりも低い場合(S21でNOの場合)にはヒーター18に電流を流して発熱させる(ステップS22)。ヒーター18の発熱によって排水口容器12内の水温が下限温度T2以上になった場合(S21でYESの場合)には、ヒーター18が通電されていればヒーター18の通電を停止する(ステップS23)。
【0027】
こうして排水口容器12内の水温が微生物28の繁殖し易い温度(下限温度T2以上、上限温度T1以下)に調整されたら、その後所定時間S2のあいだ排水口容器12内の水温を下限温度T2以上に維持する(ステップS24〜S29)。すなわち、タイマー(制御装置25のタイマー機能)のカウントを開始し(ステップS24)、所定時間S2が経過するまでの間は(ステップS25でNOのとき)、温度センサ19によって排水口容器12内の水温を読み取って下限温度T2以上であるかどうか判断する(ステップS26)。そして、排水口容器12内の水温が下限温度T2よりも低い場合にはヒーター18を発熱させ(ステップS27)、下限温度T2以上である場合にはヒーター18の発熱を停止させる(ステップS28)。所定時間S2を経過したら、タイマーのカウントを停止させる(ステップS29)。よって、この所定時間S2の間に排水口容器12内の微生物28が十分に繁殖してタンパク質を分解する酵素が十分に生産される。
【0028】
ついで、排水口容器12内の水温を、タンパク質を分解する酵素がもっとも活性化し易い温度T3(以下、活性化温度という。例えば、60℃)に上げ、所定時間S3のあいだ活性化温度T3に維持する。すなわち、タイマー(制御装置25のタイマー機能)のカウントを開始し(ステップS30)、所定時間S3が経過するまでの間は(ステップS31でNOのとき)、温度センサ19によって排水口容器12内の水温を読み取って活性化温度T3以上であるかどうか判断する(ステップS32)。そして、排水口容器12内の水温が活性化温度T3よりも低い場合にはヒーター18を発熱させ(ステップS33)、活性化温度T3以上である場合にはヒーター18の発熱を停止させる(ステップS34)。所定時間S3を経過したら、タイマーのカウントを停止させる(ステップS35)。よって、この所定時間S3のあいだに、タンパク質を分解する酵素の働きで、排水口容器12内の毛髪29その他の動物性の異物や汚れが分解され、排水口容器12等が掃除される。
【0029】
この後、ヒーター18に通電されている場合にはヒーター18の通電を停止させて発熱を止め(ステップS36)、リモコン24の表示ランプ27を消灯させて(ステップS37)排水口洗浄運転を終了する。排水口容器12内の微生物28、酵素、分解された毛髪等の異物や汚れなどは、排水口11から排水する際に、排水とともに配水管16から下水道に排出される。
【0030】
なお、上記実施例では、主として排水口容器12や配水管16の上端部の洗浄を行うようになっていたが、特許文献1に記載されているのと同様に配水管に開閉弁を設けて、この開閉弁を閉じた場合には排水口蓋まで排水中に浸かるようにすれば、排水口蓋の洗浄も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、排水口と本発明の実施例1にかかる排水口清浄装置の構造を示す概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の排水口清浄装置による排水口洗浄動作を説明するフロー図である。
【図3】図3は、実施例1の排水口清浄装置による排水口洗浄動作を説明するフロー図であって、図2の動作に続く動作を示す。
【符号の説明】
【0032】
11 排水口
12 排水口容器
13 防臭キャップ
14 排水口蓋
15 浴室床パン
16 配水管
17 フィルタ
18 ヒーター
19 温度センサ
20 微生物供給管
21 微生物タンク
22 ポンプ
23 電磁開閉弁
24 リモコン
25 制御装置
26 洗浄スイッチ
27 表示ランプ
28 微生物
29 毛髪
31 排水口清浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口に溜まった異物や汚れを分解する排水口清浄装置であって、
排水中の異物や汚れを分解する働きを有する微生物を保存する微生物タンクと、微生物タンク内に保存されている微生物を排水口に供給する微生物供給手段とを備えた排水口清浄装置。
【請求項2】
前記微生物タンクは、微生物を休眠状態で保存することを特徴とする、請求項1に記載の排水口清浄装置。
【請求項3】
前記微生物はタンパク質を分解する酵素を生産する働きを有し、当該酵素により排水中の異物や汚れを分解するものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水口清浄装置。
【請求項4】
排水口内の排水の温度を測定する温度センサと、排水口内の排水を加熱する加熱手段と、加熱手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、微生物を供給された排水口内の排水の温度を、微生物の繁殖し易い温度に所定時間維持した後、微生物が生産した酵素が活性化される温度に所定時間維持することを特徴とする、請求項3に記載の排水口清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−29767(P2007−29767A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212114(P2005−212114)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】