説明

排水栓装置

【課題】操作部の小型化を図りつつ、操作部と栓蓋等との位置関係を比較的自由に設定可能とする。
【解決手段】排水栓装置1は、排水口104に設けられた栓蓋45と、栓蓋45を支持し、上下動可能な支持軸42と、洗面器100などの槽体等に取付けられ、槽体等に対して変位可能な可動部材22を有する操作部2と、可動部材22の変位を支持軸42に伝達する伝達部材3とを備える。可動部材22は、自身の中心軸を回転軸として槽体等に対して相対回転可能に構成される。伝達部材3は、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されるとともに、可動部材22の回転によって支持軸42側に位置する自身の一端部が槽体に対して相対的に変位可能とされる。可動部材22の回転に伴う伝達部材3の一端部の相対変位により支持軸42を上下動させ、排水口104を開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(例えば、浴槽や洗面器など)の排水口を開閉するための栓蓋を備えており、近年では、遠隔操作により栓蓋を上下動させ、排水口を開閉させる技術が知られている。
【0003】
このような遠隔操作により排水口を開閉させる排水栓装置としては、押しボタンなどの軸方向に沿って変位する可動部材を有する操作部と、前記可動部材の軸方向に沿った変位を伝達し、栓蓋を支持する支持軸を上下動させることで排水栓を開閉する伝達部材とを具備するものが提案されている。
【0004】
具体的には、伝達部材としてレリースワイヤを用いるとともに、可動部材が操作される度に栓蓋を上昇及び下降を交互に行う機構(例えば、スラストロック機構等)を有するもの(例えば、特許文献1等参照)が知られている。また、伝達部材として、可動部材から下方に延びる第1の棒状部材と、一端部に栓蓋の支持軸が載置された第2の棒状部材と、両棒状部材の端部同士を回転可能に軸支する回転軸とを備えてなるキックレバーを用いるもの(例えば、特許文献2等参照)も提案されている。
【0005】
尚、一般に操作部は、槽体やその近傍の構造物に取付けられるが、外観の向上を図るべく、操作部のうち利用者が操作する可動部位を除いた部位は、前記槽体や構造物の内部に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−21965号公報
【特許文献2】実開昭62−114958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1,2に記載の技術においては、栓蓋や支持軸に対する操作部の配設位置関係が限定されてしまうおそれがある。すなわち、伝達部材としてレリースワイヤを用いた場合には、可動部材の変位する範囲に対応するように、可動部材を支持する部材等を軸方向に沿って比較的長くする必要があり、ひいては操作部が比較的大型になってしまう。そのため、操作部を配設可能な位置は、槽体や構造物のうち内部に十分なスペースが存在する位置に限られてしまう。また、伝達部材としてキックレバーを用いた場合には、第1の棒状部材の延びる方向を栓蓋(支持軸)の移動方向とほぼ等しいものとする必要があり、結果として、操作部を配置可能な位置は限定されてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部の小型化を図ることができ、操作部と栓蓋や支持軸との位置関係を比較的自由に設定することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持軸と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部材を有する操作部と、
前記可動部材及び前記支持軸の間に設けられ、前記可動部材の変位を前記支持軸に伝達する伝達部材と
を備えた排水栓装置であって、
前記可動部材は、自身の中心軸を回転軸とした回転方向に沿って、前記槽体又は前記構造物に対して相対的に変位可能に構成されるとともに、
前記伝達部材は、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されるとともに、前記可動部材の回転によって前記支持軸側に位置する自身の一端部が前記槽体に対して相対的に変位可能とされ、
前記可動部材の回転に伴う前記伝達部材の一端部の相対変位により前記支持軸を上下動させることで、前記排水口を開閉可能に構成したことを特徴とする排水栓装置。
【0011】
上記手段1によれば、可動部材は軸方向に沿って変位せず、自身の中心軸を回転軸とした回転方向に変位するように構成されている。従って、可動部材を支持する部材等の長尺化等が不要となり、操作部の小型化を図ることができる。その結果、槽体等の内部スペースが比較的小さい場合であっても操作部を配設することができ、ひいては栓蓋や支持軸に対する操作部の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0012】
手段2.前記可動部材の回転軸と、前記支持軸側に位置する前記伝達部材の一端部の回転軸とが異なる方向に延びるものであって、
前記伝達部材は、
複数の棒状部材と、
前記棒状部材の端部同士を連結するユニバーサルジョイントとを備えており、
前記ユニバーサルジョイントにより、前記可動部材から前記伝達部材の一端部に対する回転の伝達方向を変換可能に構成したことを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0013】
可動部材の回転に伴う変位を伝達部材の一端部へとより確実に伝達するために、伝達部材としては回転(ねじり)に対する剛性に比較的優れる棒状部材を用いることが好ましい。しかしながら、棒状部材を用いたときにおいて、可動部材の回転軸と伝達部材の一端部の回転軸とが一致しない場合には、回転の伝達方向を変換する手段を設けることが必要となる。
【0014】
この点、上記手段2によれば、伝達部材はユニバーサルジョイントを備えており、当該ユニバーサルジョイントにより棒状部材の連結角度を自在に変更することができる。従って、伝達部材を屈曲させつつ、伝達部材をその中心軸を回転軸として回転させることができる。その結果、棒状部材を用いることによる回転変位のより確実な伝達を実現しつつ、栓蓋等に対する操作部の相対位置関係をより自由に設定することができる。
【0015】
手段3.前記伝達部材は、自身の長手方向に沿って伸縮変形可能なスライド機構を備えることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0016】
上記手段3によれば、スライド機構により伝達部材が伸縮可能に構成されている。従って、操作部や栓蓋等の取付位置が異なる様々な形状の槽体等に対応して排水栓装置を設けることができる。また、槽体等に対する排水栓装置の組付をより容易に、かつ、より確実に行うことができる。
【0017】
手段4.前記伝達部材は、前記スライド機構の所定長さ以上の伸長を規制するストッパ機構を備えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0018】
手段4によれば、スライド機構において伝達部材が分離してしまうといった事態を防止することができ、槽体等に対する排水栓装置の組付や取外(分解)の作業性を高めることができる。
【0019】
手段5.前記操作部は、前記槽体又は前記構造物に固定されるとともに、少なくとも端部が前記槽体又は前記構造物の外部へと突出する筒状のガイド部を備え、
前記可動部材は、筒状の外周壁部を備えるとともに、前記外周壁部の内周に前記ガイド部の端部が挿入されており、
前記ガイド部の端部に対して前記可動部材の内面が周方向に沿って面接触していることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の排水栓装置。
【0020】
手段5によれば、ガイド部の端部が槽体等から突出しており、当該突出したガイド部の端部と可動部材とが周方向に沿って面接触している。従って、ガイド部と可動部材との間がより確実にシールされることとなり、槽体等の内部に対するガイド部と可動部材との間を伝わった水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0021】
手段6.前記ガイド部の外周面と前記外周壁部の内周面との間に、周方向に沿って延びる環状の空間部を設けたことを特徴とする手段5に記載の排水栓装置。
【0022】
上記手段6によれば、仮にガイド部と可動部材との間に水が浸入した場合であっても、その水は空間部に溜まることとなる。従って、空間部から先への水の浸入を抑制でき、ひいては槽体等の内部に対する水の浸入をより確実に抑制することができる。
【0023】
手段7.前記可動部材及び前記伝達部材の他端部の一方に、爪状の係止部が設けられ、
前記可動部材及び前記伝達部材の他端部の他方に、前記係止部がスナップフィット結合される被係止部が設けられることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の排水栓装置。
【0024】
上記手段7によれば、可動部材と伝達部材とをワンタッチで連結・取外することができ、槽体等に対する排水栓装置の組付や取外の作業性を一層向上させることができる。
【0025】
手段8.前記操作部は、前記槽体又は前記構造物の立壁面に設けられ、前記可動部材の回転軸と前記伝達部材の他端部の回転軸とが異なる方向に延びており、
前記操作部は、
前記可動部材に固定され、外周面に第1傘歯車を有する第1歯車軸と、
前記第1傘歯車に噛合される第2傘歯車を有し、前記伝達部材の他端部に取付けられる第2歯車軸とを備え、
前記可動部材から前記伝達部材の他端部に対する回転の伝達方向を変換可能に構成したことを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の排水栓装置。
【0026】
操作部を槽体等の立壁面に設ける場合においては、可動部材の変位方向と伝達部材の変位方向とが異なる向きとなるのが一般的である。従って、従来技術のように伝達部材としてレリースワイヤを用いる場合などでは、可動部材の変位を確実に伝達するために、槽体等の内部に十分な奥行を設ける必要がある。そのため、槽体等の立壁面と部屋壁等との間に十分な奥行がない場合などには、操作部を立壁面に配置することは極めて困難なものとなってしまう。これに対して、立壁面の少なくとも一部を膨出させることで、槽体等の内部に奥行を確保することも考えられるが、この場合には、槽体等の外観が悪化してしまうおそれがある。
【0027】
この点、上記手段8によれば、操作部は、外周面に第1傘歯車を有する第1歯車軸と、第2傘歯車を有する第2歯車軸とを備えており、両傘歯車を介して、可動部材から伝達部材の他端部に対する回転の伝達方向が変換可能とされている。従って、可動部材の変位を伝達部材へとより確実に伝達可能としつつ、内部の奥行が比較的狭い槽体や構造物など、様々な槽体等に対してその立壁面へと操作部を設けることができる。
【0028】
手段9.外周に径方向外側に膨出するフランジ部を有するとともに、内周部分において前記第1歯車軸を回転可能に支持する筒状の第1支持部材と、
前記槽体又は前記構造物の内部に設けられ、前記第2歯車軸を回転可能に支持する第2支持部材とを備え、
前記フランジ部と前記第2支持部材との間で前記立壁面を挟み込むことで、前記両支持部材が前記槽体又は前記構造物に対して固定されており、
前記第1歯車軸の外周面と前記第1支持部材の内周面との間に、周方向に沿って延びる環状の間隙部を設けたことを特徴とする手段8に記載の排水栓装置。
【0029】
上記手段9によれば、第1歯車軸と第1支持部材との間に浸入した水が間隙部に留まることとなり、それより先への水の浸入が抑制される。従って、槽体等の内部に対する水の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0030】
手段10.前記可動部材は筒状の外周壁部を有し、前記フランジ部の外周に前記外周壁部が配置された状態で、前記可動部材が前記第1歯車軸に固定されており、
前記外周壁部の内周面と前記フランジ部の外周面との間に水抜き溝を設け、当該水抜き溝を介して前記可動部材の内側に侵入した水を排出可能に構成したことを特徴とする手段9に記載の排水栓装置。
【0031】
上記手段10によれば、外周壁部の内周面とフランジ部の外周面との間に水抜き溝が形成されており、当該水抜き溝を介して可動部材の内側に侵入した水を排出することができる。その結果、槽体等の内部に対する水の浸入をより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】排水栓装置の構成を示す断面図である。
【図2】操作部の構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】排水口装置の構成を示す部分拡大断面図である。
【図4】第2実施形態における排水栓装置の構成を示す断面図である。
【図5】第2実施形態における操作部の構成を示す部分拡大断面図である。
【図6】(a)は、別の実施形態における伝達部材の構成を示す部分拡大正面図であり、(b)は、別の実施形態における伝達部材の構成を示す一部破断拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取り付けられており、操作部2と、伝達部材3と、排水口装置4とを備えている。
【0034】
操作部2は、洗面器100の側壁部101の上端から外側に向かって延びるフランジ部102に取り付けられており、図2に示すように、ガイド部21と、可動部材22とを備えている。
【0035】
前記ガイド部21は、筒状をなし、その一端部がフランジ部102に形成された孔部103から洗面器100の内部に挿入されるとともに、その他端部が前記フランジ部102の外表面から突出している。また、ガイド部21の一端部外周面には雄ねじ部23が形成されており、ガイド部21の他端部との間で前記フランジ部102を挟み込むようにして所定のナット24が前記雄ねじ部23に締結されることにより、ガイド部21がフランジ部102に固定されている。また、ガイド部21の他端部の外周面には、周方向に沿って延びる複数の環状溝部25が設けられるとともに、環状溝部25よりも一端側(下側)には、外側に膨出する鍔状部26が設けられている。加えて、鍔状部26の下方側の面とフランジ部102との間には、環状のシール部材27が設けられている。当該シール部材27により、ガイド部21とフランジ部102との間がシールされている。
【0036】
前記可動部材22は、筒状の外周壁部28を備えるとともに、当該外周壁部28の内周にガイド部21の他端部が挿入された状態で、前記ガイド部21ひいては洗面器100に対して自身の中心軸を回転軸として相対回転可能に構成されている。また、ガイド部21の他端面21Fは前記可動部材22に対して周方向に沿って面接触しており、その結果、ガイド部21と可動部材22との間がシールされている。加えて、ガイド部21に設けられた前記環状溝部25により、ガイド部21の外周面と可動部材22の内周面との間には、周方向に沿って延びる環状の空間部29が形成されている。
【0037】
図1に戻り、前記伝達部材3は、樹脂材料により形成されるとともに、操作部2と排水口装置4との間に設けられ、可動部材22の回転変位を排水口装置4側へと伝達すべく、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。伝達部材3は、操作部2から排水口装置4側に向かって、それぞれ棒状をなす第1伝達棒31と、第2伝達棒32と、第3伝達棒33とが直列的に接続されて構成されている。
【0038】
前記第1伝達棒31は、一端部が前記第2伝達棒32に連結される一方で、その他端部が前記ガイド部21に挿通されており、また、その他端部に爪状の係止部31Aを備えている。そして、可動部材22の一端部に設けられた突起状の被係止部22Aに対して第1伝達棒31の前記係止部31Aが係止されることで、可動部材22と伝達部材3との間がスナップフィット結合されており、可動部材22の回転変位が伝達部材3(第1棒状部31)に伝達されるようになっている。
【0039】
前記第2伝達棒32は、メススプライン軸34にオススプライン軸35が挿通されてなるスライド機構36を備えており、当該スライド機構36により、第2伝達棒32ひいては伝達部材3が伸縮可能に構成されている。
【0040】
加えて、前記第3伝達棒33は、その一端部が排水用の配管111に連通された筒状の取付管112に対して挿通されている。また、第3伝達棒33は、前記取付管112の端部に設けられた爪部113によって軸方向に沿った移動が規制されている一方で、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。尚、本実施形態においては、第1伝達棒31の回転軸と第3伝達棒33の回転軸とが異なる方向に延びている。
【0041】
さらに、前記第1伝達棒31と第2伝達棒32との間、及び、第2伝達棒32と第3伝達棒33との間は、それぞれユニバーサルジョイント37,38を介して連結されている。従って、第1、第2伝達棒31,32間の連結角度、及び、第2、第3伝達棒32,33間の連結角度を自在に変更することができ、ひいては可動部材22から伝達部材3の一端部(第3伝達棒33)に対する回転の伝達方向を変換できるようになっている。
【0042】
また、伝達部材3(第3伝達棒33)の一端面外周の所定部位(第3伝達棒33の軸芯に対して偏心した位置)には、第3伝達棒33の中心軸方向に沿って延びる支持突起39が設けられている。そして、前記可動部材22を回転させることにより、第1伝達棒31、第2伝達棒32、第3伝達棒33の順に回転が伝達されていき、第3伝達棒33の中心軸を回転軸として支持突起39が回転することで、支持突起39が上下動するようになっている。
【0043】
次に、排水口装置4について説明する。前記排水口装置4は、図3に示すように、洗面器100の排水口104等に設けられており、通水部材41と、支持軸42と、ヘアキャッチャー43と、排水口部材44と、栓蓋45とを備えている。
【0044】
通水部材41は、筒状をなし、その外周壁が配管111の内周面に沿うようにして配管111内に配置されている。また、通水部材41は、その下端面外周が前記支持突起39に載置状態とされることで、配管111内で支持されており、支持突起39の上下動に伴って洗面器100に対して相対的に上下動するように構成されている。
【0045】
加えて、通水部材41は、その外周壁から排水路の中心に向かって延びる複数のアーム部46を備えており、棒状をなす前記支持軸42の下端部がアーム部46に固定されている。支持軸42は、その上端部に前記栓蓋45の背面中央が固定されており、通水部材41の上下動により、支持軸42ひいては栓蓋45が上下動し、排水口104の開閉が行われるようになっている。尚、支持軸42は、その長手方向に沿った自身の略中央において分離可能に構成されており、支持軸42を分離することで、前記ヘアキャッチャー43を排水口104から取外すことなく、栓蓋45を排水口104から取外すことができるようになっている。
【0046】
前記ヘアキャッチャー43は、髪の毛等を捕集するものであって、前記排水口104のうち鉛直方向にほぼ沿って延びる垂下部105に対して、その外周縁が接触した状態で配置されている。また、ヘアキャッチャー43は、その中央に鉛直方向に延びる筒状部43Aを備えており、当該筒状部43Aに対して支持軸42が挿通されている。支持軸42を、外周縁が排水口104の垂下部105に接触するヘアキャッチャー43により支持することで、支持軸42の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するようになっており、ひいては栓蓋45の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するようになっている。
【0047】
前記排水口部材44は、筒状をなしており、自身の上端鍔状部分と所定のナット48との間で、前記垂下部105の下端から径方向内側に延びる鍔部106を挟み込むことにより、排水口104に取付けられている。また、排水口部材44の下端部は、洗面器100からのオーバーフロー水を流すためのオーバーフロー口114を備えた連接管115を介して配管111に接続されており、その結果、排水口104から配管111へと至る排水路が形成されている。
【0048】
前記栓蓋45は、樹脂等からなる円板状の蓋部49と、弾性変形可能な材料からなる環状のパッキン50とを備えている。可動部材22を回転させることにより栓蓋45を下動させ、排水口104を閉じた際には、排水口104のうち下方に向かって縮径するテーパ部107に対して前記パッキン50が圧接し、その結果、栓蓋45と排水口104との間がシールされる。本実施形態では、栓蓋45の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するように構成されているため、栓蓋45(パッキン50)の外周縁を排水口104に対してより確実に接触させることができ、ひいては栓蓋45と排水口104との間のシール性の向上が図られている。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態によれば、可動部材22は軸方向に沿って変位せず、自身の中心軸を回転軸とした回転方向に変位するように構成されている。従って、可動部材を支持する部材等の長尺化等が不要となり、操作部2の小型化を図ることができる。その結果、洗面器100の内部スペースが比較的小さい場合であっても操作部2を配設することができ、ひいては栓蓋45や支持軸42に対する操作部2の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0050】
さらに、伝達部材3はユニバーサルジョイント37,38を備えており、当該ユニバーサルジョイント37,38により隣接する各伝達棒31〜33の連結角度を自在に変更することができる。従って、伝達部材3の中心軸が洗面器100に対して相対移動することなく、伝達部材3を屈曲させた状態で、その中心軸を回転軸として伝達部材3を回転させることができる。その結果、棒状の伝達棒31〜33を用いることによる回転変位のより確実な伝達を実現しつつ、栓蓋45等に対する操作部2の相対位置関係をより自由に設定することができる。
【0051】
加えて、スライド機構36により伝達部材3は伸縮可能に構成されているため、操作部2や栓蓋45等の取付位置が異なる様々な形状の槽体等に対応して排水栓装置1を設けることができ、また、その組付をより容易に、かつ、より確実に行うことができる。
【0052】
併せて、ガイド部21の端部が洗面器100から突出しており、当該突出したガイド部21の他端面21Fと可動部材22とが周方向に沿って面接触している。従って、ガイド部21と可動部材22との間がより確実にシールされることとなり、洗面器100の内部に対するガイド部21と可動部材22との間を伝わった水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0053】
さらに、ガイド部21と可動部材22との間には空間部29が設けられており、ガイド部21と可動部材22との間に浸入した水は空間部29に溜まることとなる。従って、空間部29から先への水の浸入を抑制でき、ひいては洗面器100の内部に対する水の浸入をより確実に抑制することができる。
【0054】
また、可動部材22と伝達部材3(第1伝達棒31)とはスナップフィット結合されており、可動部材22と伝達部材3とをワンタッチで連結・取外することができる。そのため、排水栓装置1の組付や取外の作業性を一層向上させることができる。
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。本第2実施形態においては、図4に示すように、操作部6が、前記洗面台100の側壁部101(本発明の立壁面に相当する)に設けられ、可動部材60の回転軸と伝達部材3の他端部(第1伝達棒31)の回転軸とが異なる方向に延びている。そこで、本第2実施形態では、可動部材60から伝達部材3の他端部に対する回転の伝達方向を変換可能とすべく、図5に示すように、操作部6が、第1歯車軸61と第2歯車軸62とを備えている。
【0055】
第1歯車軸61は、可動部材60の中心軸と自身の中心軸とが一致するように可動部材60の背面中央に取付けられており、一端部が比較的細径に形成される一方で、他端部が大径に形成されている。また、第1歯車軸61は、その他端部の外周面に第1傘歯車63を備えている。
【0056】
第2歯車軸62は、その一端部が伝達部材3の一端部(第1伝達棒31)に取付けられている一方で、その他端部に第1傘歯車63に噛合された第2傘歯車64を備えている。この両傘歯車63,64を介して回転が伝達されることで、可動部材60から伝達部材3の他端部に対する回転の伝達方向が変換されるようになっている。
【0057】
また、側壁部101に形成された孔部108に対して、筒状をなす第1支持部材65が挿通されている。前記第1歯車軸61は、自身の他端部が第1支持部材65に挿通されるとともに、自身の一端部が後述する第1挿通孔67に挿通された状態で回転可能に支持されている。加えて、前記洗面台100の内部には、第2歯車軸62を回転可能に支持する第2支持部材66が設けられている。第2支持部材66は、第1歯車軸61が挿通・支持される第1挿通孔67と、第2歯車軸62が挿通される第2支持孔67と、側壁部101側に形成された開口部69とを備えている。両支持部材65,66は、第1支持部材65の外周に設けられた径方向外側に膨出するフランジ部70と第2支持部材66の開口部69側の端面との間で側壁部101を挟み込んだ状態で、第1支持部材65の外周に設けられた雄ねじ(図示せず)を第2支持部材66の開口部69に設けられた雌ねじ(図示せず)に螺合することにより、洗面台100に固定されている。
【0058】
さらに、第1歯車軸61の外周面には、環状溝部71が設けられており、その結果、第1歯車軸61の外周面と第1支持部材65の内周面との間に、周方向に沿って延びる環状空間をなす間隙部72が設けられている。
【0059】
加えて、前記可動部材60の外周壁部73の内周面と前記フランジ部70の外周面との間であって下方側の位置には、水抜き溝74が設けられている。
【0060】
また、第2歯車軸62の一端部には、爪状の係止部62Aが設けられており、第1伝達棒31の他端に設けられた突起状の被係止部31Bが前記係止部62Aに係止されることで、第2歯車軸62と伝達部材3との間がスナップフィット結合されている。
【0061】
以上、本第2実施形態によれば、操作部6は、外周面に第1傘歯車63を有する第1歯車軸61と、第2傘歯車64を有する第2歯車軸62とを備えており、両傘歯車63,64を介して、可動部材60から伝達部材3の他端部に対する回転の伝達方向が変換可能とされている。従って、可動部材60の変位を伝達部材3へとより確実に伝達可能としつつ、内部の奥行が比較的狭い槽体や構造物など、様々な槽体等に対してその立壁面へと操作部6を設けることができる。
【0062】
また、第1歯車軸61と第1支持部材65との間には間隙部72が設けられており、第1歯車軸61と第1支持部材65との間に浸入した水を間隙部72に留まらせることができる。従って、それより先への水の浸入が抑制され、洗面器100の内部に対する水の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0063】
加えて、可動部材60の外周壁部73の内周面とフランジ部70の外周面との間に水抜き溝74が設けられており、当該水抜き溝74により、可動部材60の内側に侵入した水を排出することができる。従って、洗面器100の内部に対する水の浸入をより一層確実に防止することができる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、槽体としての浴槽や流し台等の排水口に本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0066】
(b)上記実施形態では、伝達部材3にスライド機構36が設けられているが、スライド機構を設けることなく、伝達部材を構成することとしてもよい。また、スライド機構36を設けるにあたって、図6(a),(b)に示すように、メススプライン軸34に長手方向に沿って延びるスライド溝81を設けるとともに、オススプライン軸35にスライド溝81に入り込む突部82を設けることで、スライド機構36の所定長さ以上の伸長を規制するストッパ機構83を設けることとしてもよい。この場合には、スライド機構36において伝達部材3が分離してしまうといった事態が生じず、洗面器100に対する排水栓装置1の組付や取外(分解)の作業性を高めることができる。
【0067】
(c)上記実施形態では、操作部2(6)が洗面器100に対して取付けられているが、洗面器100の近傍に設けられた構造物に対して操作部2(6)を設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…排水栓装置、2,6…操作部、3…伝達部材、21…ガイド部、22,60…可動部材、22A,31B…被係止部、28,73…外周壁部、30…空間部、31A,62A…係止部、36…スライド機構、37,38…ユニバーサルジョイント、42…支持軸、45…栓蓋、61…第1歯車軸、62…第2歯車軸、63…第1傘歯車、64…第2傘歯車、65…第1支持部材、66…第2支持部材、70…フランジ部、72…間隙部、74…水抜き溝、83…ストッパ機構、100…洗面器(槽体)、101…側壁部(立壁面)、104…排水口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持軸と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部材を有する操作部と、
前記可動部材及び前記支持軸の間に設けられ、前記可動部材の変位を前記支持軸に伝達する伝達部材と
を備えた排水栓装置であって、
前記可動部材は、自身の中心軸を回転軸とした回転方向に沿って、前記槽体又は前記構造物に対して相対的に変位可能に構成されるとともに、
前記伝達部材は、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されるとともに、前記可動部材の回転によって前記支持軸側に位置する自身の一端部が前記槽体に対して相対的に変位可能とされ、
前記可動部材の回転に伴う前記伝達部材の一端部の相対変位により前記支持軸を上下動させることで、前記排水口を開閉可能に構成したことを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記可動部材の回転軸と、前記支持軸側に位置する前記伝達部材の一端部の回転軸とが異なる方向に延びるものであって、
前記伝達部材は、
複数の棒状部材と、
前記棒状部材の端部同士を連結するユニバーサルジョイントとを備えており、
前記ユニバーサルジョイントにより、前記可動部材から前記伝達部材の一端部に対する回転の伝達方向を変換可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記伝達部材は、自身の長手方向に沿って伸縮変形可能なスライド機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記伝達部材は、前記スライド機構の所定長さ以上の伸長を規制するストッパ機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記槽体又は前記構造物に固定されるとともに、少なくとも端部が前記槽体又は前記構造物の外部へと突出する筒状のガイド部を備え、
前記可動部材は、筒状の外周壁部を備えるとともに、前記外周壁部の内周に前記ガイド部の端部が挿入されており、
前記ガイド部の端部に対して前記可動部材の内面が周方向に沿って面接触していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項6】
前記ガイド部の外周面と前記外周壁部の内周面との間に、周方向に沿って延びる環状の空間部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の排水栓装置。
【請求項7】
前記可動部材及び前記伝達部材の他端部の一方に、爪状の係止部が設けられ、
前記可動部材及び前記伝達部材の他端部の他方に、前記係止部がスナップフィット結合される被係止部が設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項8】
前記操作部は、前記槽体又は前記構造物の立壁面に設けられ、前記可動部材の回転軸と前記伝達部材の他端部の回転軸とが異なる方向に延びており、
前記操作部は、
前記可動部材に固定され、外周面に第1傘歯車を有する第1歯車軸と、
前記第1傘歯車に噛合される第2傘歯車を有し、前記伝達部材の他端部に取付けられる第2歯車軸とを備え、
前記可動部材から前記伝達部材の他端部に対する回転の伝達方向を変換可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項9】
外周に径方向外側に膨出するフランジ部を有するとともに、内周部分において前記第1歯車軸を回転可能に支持する筒状の第1支持部材と、
前記槽体又は前記構造物の内部に設けられ、前記第2歯車軸を回転可能に支持する第2支持部材とを備え、
前記フランジ部と前記第2支持部材との間で前記立壁面を挟み込むことで、前記両支持部材が前記槽体又は前記構造物に対して固定されており、
前記第1歯車軸の外周面と前記第1支持部材の内周面との間に、周方向に沿って延びる環状の間隙部を設けたことを特徴とする請求項8に記載の排水栓装置。
【請求項10】
前記可動部材は筒状の外周壁部を有し、前記フランジ部の外周に前記外周壁部が配置された状態で、前記可動部材が前記第1歯車軸に固定されており、
前記外周壁部の内周面と前記フランジ部の外周面との間に水抜き溝を設け、当該水抜き溝を介して前記可動部材の内側に侵入した水を排出可能に構成したことを特徴とする請求項9に記載の排水栓装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−36557(P2012−36557A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174380(P2010−174380)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(392028767)株式会社日本アルファ (73)
【Fターム(参考)】