説明

排水栓装置

【課題】伝達部材の存在に起因する配管の詰まり等の不具合をより確実に防止することができる排水栓装置を提供する。
【解決手段】排水栓装置1は、排水口104に設けられた栓蓋45と、栓蓋45を支持する支持軸42と、配管111の内周面に沿って配置された筒状の外周壁41Aを有するとともに、支持軸42を支持する通水部材41と、槽体等に対して変位可能な可動部材22を有する操作部2と、可動部材22の変位を支持軸42側に伝達する伝達部材3とを備える。伝達部材3の一端部から配管111内に突出する支持突起39が設けられ、支持突起39により通水部材41の外周壁41Aが支持される。支持突起39のうち少なくとも通水部材41を支持する部位は、可動部材22の変位により槽体に対して上下動可能に構成され、支持突起39の先端は配管111の中心に到達しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(浴槽や洗面器など)に設けられた排水口を開閉するための栓蓋を備えており、近年では、遠隔操作により栓蓋を上下動させ、排水口を開閉させる技術が知られている。
【0003】
このような排水栓装置としては、押しボタンなどの軸方向に沿って変位する可動部材と、栓蓋を支持する支持軸及び前記可動部材の間を連結し、前記可動部材の軸方向に沿った変位を支持軸へと伝達する伝達部材とを備えるものが提案されている。ここで、前記支持軸は、通水性や栓蓋によるシール性の面を鑑みて、排水口の中心軸上に設けられるのが一般的であり、前記伝達部材は、前記支持軸の下端部に対して連結される(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−21965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、支持軸が排水口の中心軸上に位置することから、伝達部材を支持軸に連結するためには、伝達部材の端部を排水口の中心軸(換言すれば、配管の中心)にまで到達させることが必要である。しかしながら、この場合には、配管に対して伝達部材が比較的大きく突出した状態となるため、伝達部材に対して毛髪やゴミ等が引っ掛かりやすくなってしまい、ひいては配管の詰まりが生じやすくなってしまうおそれがある。また、伝達部材の存在により、その下方に位置する配管やトラップ等の清掃に支障が生じてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、伝達部材の存在に起因する配管の詰まり等の不具合をより確実に防止することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
自身の一端部で前記栓蓋を支持する支持軸と、
排水用の配管内において前記配管の内周面に沿って配置される環状の外周壁を有するとともに、前記支持軸の他端部を支持する通水部材と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部材を有する操作部と、
前記可動部材及び前記支持軸の間に設けられ、前記可動部材の変位を前記支持軸側に伝達する伝達部材と
を備えた排水栓装置であって、
前記伝達部材の一端部から前記配管内に突出する支持突起を備えるとともに、
前記支持突起により前記通水部材の外周壁が支持され、
前記支持突起のうち少なくとも前記通水部材を支持する部位は、前記可動部材の変位により前記槽体に対して上下動可能に構成されるとともに、
前記支持突起の先端は前記配管の中心に到達しないことを特徴とする排水栓装置。
【0009】
上記手段1によれば、支持軸を支持する通水部材のうち、その外周壁が支持突起に支持され、支持突起の先端は配管の中心に到達しないように構成されている。つまり、配管の内周面に対する支持突起の突出量が非常に小さなものとされている。従って、支持突起に対して毛髪やゴミ等が極めて引っ掛かりにくくなり、配管の詰まりを効果的に抑制することができる。また、支持突起から先(下方)に位置する配管やトラップ等を比較的容易に清掃することができる。
【0010】
手段2.前記可動部材は、自身の中心軸を回転軸として前記槽体又は前記構造物に対して相対回転可能に構成されるとともに、
前記伝達部材は、自身の中心軸を回転軸として回転することで前記可動部材の回転変位を伝達し、かつ、自身の一端部が、前記支持軸の中心軸と交差する方向に延び、
前記支持突起は、前記可動部材の回転により前記伝達部材の一端部の中心軸を回転軸として回転可能に構成され、自身の回転に伴い前記槽体に対して上下動することを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0011】
押しボタン式などの軸方向に沿って変位する可動部材においては、その変位する範囲に対応するために、可動部材を支持する部材等を比較的長尺化する必要がある。そのため、操作部が比較的大型になってしまい、操作部を配設可能な位置は、槽体や構造物のうち内部に十分なスペースがある位置に限られてしまう。
【0012】
この点、上記手段2によれば、可動部材は、自身の中心軸を回転軸として槽体等に対して相対回転可能に構成されている。そのため、可動部材を支持する部材等の長尺化等が不要となり、操作部の小型化を図ることができる。その結果、槽体等のうち内部スペースが比較的小さな位置であっても操作部を配設することができ、栓蓋や支持軸に対する操作部の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0013】
手段3.前記支持突起の一端側から見たとき、前記伝達部材の一端部の回転軸から鉛直上方に延びる直線上に前記支持突起と前記通水部材の外周壁との接触部分が配置されないように、前記支持突起の回転可能範囲が規制されることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0014】
排水口が開いた状態において、支持突起の一端側から見て、伝達部材の一端部の回転軸から鉛直上方に延びる直線上に支持突起と通水部材の外周壁との接触部分が位置していると、栓蓋が踏まれること等により通水部材に上方から大きな力が加わってしまったときに、支持突起に対してその大きな力が直接加わってしまう。その結果、支持突起に破損が生じてしまうおそれがある。
【0015】
この点、上記手段3によれば、通水部材に上方から大きな力が加わった際に、支持突起が回転することとなり、ひいては支持突起に加わる力を低減させることができる。これにより、支持突起の破損をより確実に防止することができる。
【0016】
手段4.前記操作部は、前記可動部材の回転を規制する回転規制機構を備え、前記可動部材の回転を規制することで、前記支持突起の回転可能範囲が規制されることを特徴とする手段3に記載の排水栓装置。
【0017】
支持突起の回転可能範囲を規制するにあたっては、例えば、伝達部材の一端部に、当該伝達部材の一端部の回転可能範囲を規制する手段を設けることが考えられる。ところが、この場合には、伝達部材の一端部の回転が規制された状態で可動部材が回転させられることで、伝達部材に対して比較的大きなねじり応力が加わってしまうおそれがあり、伝達部材における破損や変形等が懸念される。
【0018】
この点、上記手段4によれば、可動部材の回転を規制する回転規制機構により支持突起の回転可能範囲が規制されている。従って、伝達部材に対して大きなねじり応力が加わってしまうことを防止でき、伝達部材の破損等をより確実に防止することができる。
【0019】
手段5.前記伝達部材の一端部は、前記支持軸の中心軸と交差する方向に延びるとともに、前記配管に対して接離移動可能とされ、前記配管に対する前記支持突起の突出量を変更可能であり、
前記支持突起は、前記配管側に向けて下方に傾斜する傾斜面を備え、前記傾斜面により前記通水部材の外周壁が支持されており、
前記配管に対して前記伝達部材の一端部を接離移動させることで、前記通水部材を前記槽体に対して上下動させることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0020】
上記手段5によれば、基本的には上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。加えて、通水部材に上方から大きな力が加わった際には、支持突起が配管の中心から離間する方向へと移動することとなる。そのため、支持突起の破損を防止するための特別な手段を設けることなく、支持突起の破損をより確実に防止することができる。
【0021】
手段6.前記伝達部材の一端部は、前記配管に連通された筒状の取付管に挿通されており、
前記伝達部材の一端部は、斜め下方側に向けて延びていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の排水栓装置。
【0022】
上記手段6によれば、伝達部材の一端部が斜め下方側に延びているため、伝達部材の一端部と取付管との間を伝わった水の漏出をより確実に防止することができる。
【0023】
手段7.前記伝達部材の一端部は、前記配管に連通された筒状の取付管に挿通されるとともに、前記伝達部材の外周面には、凸状又は凹状をなす係合部が設けられており、
前記取付管に設けられ、前記係合部を係合可能な凹状又は凸状の被係合部に対して前記係合部が係合されていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の排水栓装置。
【0024】
上記手段7によれば、取付管に対する伝達部材の配設を比較的容易に行うことができ、槽体等に対する排水栓装置の組付作業性を一層向上させることができる。
【0025】
手段8.前記栓蓋の下方にはヘアキャッチャーが設けられるとともに、
前記ヘアキャッチャーは、前記支持軸が挿通されることで当該支持軸を支持する筒状部を備え、
前記支持軸は、
前記支持軸の一端側に位置し、自身の一端部において前記栓蓋を支持する棒状の一端側支持軸と、
前記支持軸の他端側に位置し、前記一端側支持部に対して直列的に配置されるとともに、自身の他端部が前記通水部材に固定された棒状の他端側支持軸とを備え、
前記一端側支持軸及び前記他端側支持軸は分離可能に構成されるとともに、
前記一端側支持軸、及び、前記他端側支持軸の一端部は、前記筒状部に挿通されており、
前記筒状部の内周面に設けられ、径方向内側に突出する爪部に対して、前記他端側支持軸の一端部の外周面に設けられ、径方向外側に突出する突部が着脱自在に係止可能とされていることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の排水栓装置。
【0026】
上記手段8によれば、支持軸がヘアキャッチャーにより支持されるため、支持軸を支持するための部材を別途設ける必要がなく、部品点数の低減や構成の簡素化を図ることができる。その結果、製造コストを低減させることができる。
【0027】
また、支持軸は、一端側支持軸と他端側支持軸とで分離可能に構成されるため、栓蓋を支持する一端側支持軸を筒状部から取外すことで、ヘアキャッチャーを排水口に配置したままの状態で、栓蓋を取外すことができる。これにより、ヘアキャッチャーを排水口に配置したまま、ヘアキャッチャーの上面を清掃するといったことが可能となる。
【0028】
さらに、他端側支持部の突部が筒状部の爪部に係止可能とされているため、ヘアキャッチャーを排水口から取外すことで、通水部材も取外すことができる。その結果、配管に対する通水部材の着脱をより容易に行うことができ、通水部材から先の配管等の清掃をより一層容易に行うことができる。加えて、爪部に対して突部が着脱自在であるため、筒状部(ヘアキャッチャー)から他端側支持軸ひいては通水部材を取外すことができ、ヘアキャッチャーや通水部材をそれぞれ単独で清掃することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】排水栓装置の構成を示す断面図である。
【図2】操作部の構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】回転規制機構を説明するための図2のA矢視透視図である。
【図4】(a),(b)は、支持突起の回転可能範囲を説明するための図1のA矢視図である。
【図5】排水口装置の構成を示す部分拡大断面図である。
【図6】別の実施形態における支持突起等の構成を示す部分拡大断面図である。
【図7】別の実施形態における支持突起等の構成を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取り付けられており、操作部2と、伝達部材3と、排水口装置4とを備えている。
【0031】
操作部2は、洗面器100の側壁部101の上端から外側に向かって延びるフランジ部102に取り付けられており、図2に示すように、ガイド部21と、可動部材22とを備えている。
【0032】
前記ガイド部21は、筒状をなし、その一端部がフランジ部102に形成された孔部103から洗面器100の内部に挿入されるとともに、その他端部が前記フランジ部102の外表面から突出している。また、ガイド部21の一端部外周面には雄ねじ部23が形成されており、ガイド部21の他端部との間で前記フランジ部102を挟み込むようにして所定のナット24が前記雄ねじ部23に締結されることにより、ガイド部21がフランジ部102に固定されている。また、ガイド部21の他端部の外周面には、周方向に沿って延びる複数の環状溝部25が設けられるとともに、環状溝部25よりも一端側(下側)には、外側に膨出する鍔状部26が設けられている。加えて、鍔状部26の下方側の面とフランジ部102との間には、環状のシール部材27が設けられている。当該シール部材27により、ガイド部21とフランジ部102との間がシールされている。
【0033】
前記可動部材22は、筒状の外周壁部28を備えるとともに、当該外周壁部28の内周にガイド部21の他端部が挿入された状態で、前記ガイド部21ひいては洗面器100に対して自身の中心軸を回転軸として相対回転可能に構成されている。また、ガイド部21の他端面21Fは前記可動部材22に対して周方向に沿って面接触しており、その結果、ガイド部21と可動部材22との間がシールされている。加えて、ガイド部21に設けられた前記環状溝部25により、ガイド部21の外周面と可動部材22の内周面との間には、周方向に沿って延びる環状の空間部29が形成されている。空間部29の存在により、ガイド部21と可動部材22との間を伝わった洗面器100内部への水の浸入を抑制でき、さらに、ガイド部21の他端面21Fと可動部材22との間が周方向に沿って面接触することで、水の浸入抑制効果を一層向上させることができる。
【0034】
さらに、図3(図3は、図2のA矢視透視図である)に示すように、前記操作部2は、前記可動部材22の回転を規制する回転規制機構2Aを備えている。回転規制機構2Aは、前記鍔状部26の上面に設けられた切欠部26Aと、可動部材22の内周面から突出し、前記切欠部26Aに差し込まれた突状部22Bとにより構成されている。切欠部26Aは、周方向に沿って延びるほぼ半周の溝であり、切欠部26Aの設けられた範囲内で突状部22Bが移動可能となっている。その結果、本実施形態では、可動部材22の回転可能範囲が約180度に規制されている。
【0035】
図1に戻り、前記伝達部材3は、樹脂材料により形成されるとともに、操作部2と排水口装置4との間に設けられ、可動部材22の回転変位を排水口装置4側へと伝達すべく、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。伝達部材3は、操作部2から排水口装置4側に向かって、それぞれ棒状をなす第1伝達棒31と、第2伝達棒32と、第3伝達棒33とが直列的に接続されて構成されている。
【0036】
前記第1伝達棒31は、一端部が前記第2伝達棒32に連結される一方で、その他端部が前記ガイド部21に挿通されており、また、その他端部に爪状の係止部31Aを備えている。そして、可動部材22の一端部に設けられた突起状の被係止部22Aに対して第1伝達棒31の前記係止部31Aが係止されることで、可動部材22と伝達部材3との間がスナップフィット結合されており、可動部材22の回転変位が伝達部材3(第1棒状部31)に対して伝達されるようになっている。
【0037】
前記第2伝達棒32は、メススプライン軸34にオススプライン軸35が挿通されてなるスライド機構36を備えており、当該スライド機構36により、第2伝達棒32ひいては伝達部材3が伸縮可能に構成されている。
【0038】
加えて、前記第3伝達棒33は、その一端部が排水用の配管111に連通された筒状の取付管112に対して挿通されている。また、第3伝達棒33の外周面には凹状の係合部33Aが設けられており、当該係合部33Aに対して前記取付管112の端部に設けられた凸状の被係合部113が係合されている。その結果、第3伝達棒33は、自身の中心軸を回転軸として回転可能とされる一方で、その軸方向に沿った移動が規制されている。加えて、第3伝達棒33は、配管111に向かって斜め下方側に延びており、取付管112も配管111に向かって斜め下方側に延びている。また、第3伝達棒33の中心軸は、後述する支持軸42の中心軸(本実施形態では、鉛直方向)と交差する方向に延びている。
【0039】
さらに、前記第1伝達棒31と第2伝達棒32との間、及び、第2伝達棒32と第3伝達棒33との間は、それぞれユニバーサルジョイント37,38を介して連結されている。従って、第1、第2伝達棒31,32間の連結角度、及び、第2、第3伝達棒32,33間の連結角度を自在に変更することができ、ひいては可動部材22から伝達部材3の一端部(第3伝達棒33)に対する回転の伝達方向を変換できるようになっている。
【0040】
また、伝達部材3(第3伝達棒33)の一端面外周には、第3伝達棒33の中心軸方向に沿って延びる支持突起39が設けられており、前記可動部材22を回転させることで、第1伝達棒31、第2伝達棒32、第3伝達棒33の順に回転が伝達されていき、第3伝達棒33の中心軸を回転軸として支持突起39が回転する。このとき、第3伝達棒33の中心軸が鉛直方向と交差する方向に延びているため、支持突起39が回転することで、支持突起39は洗面器100に対して上下動することとなる。
【0041】
但し、上述の通り、回転規制機構2Aにより可動部材22の回転可能範囲が規制されているため、支持突起39の回転可能範囲も規制されている。詳述すると、図4(a)(尚、図4は、図1のA矢視図である)に示すように、支持突起39が最も下方側に配置されたとき、支持突起39の一端側から見て、支持突起39は第3伝達棒33の回転軸の鉛直下方に配置される。一方で、図4(b)に示すように、支持突起39が最も上方に配置されたとき、支持突起39の一端側から見て、支持突起39は第3伝達棒33の回転軸の鉛直上方からややずれた位置に配置される。すなわち、支持突起39の一端側から見たとき、伝達部材3の一端部(第3伝達棒33)の回転軸から鉛直上方に延びる直線L1上に、支持突起39と後述する通水部材41の外周壁41Aとの接触部分TPが配置されないように支持突起39の回転可能範囲が規制されている(尚、図4においては、通水部材41等は不図示)。
【0042】
また、本実施形態では、図5に示すように、配管111の内周面に対する支持突起39の突出量が比較的小さくされることで、支持突起39の一端部(先端)は前記配管111の中心に到達しないように構成されている。
【0043】
次に、排水口装置4について説明する。前記排水口装置4は、洗面器100の排水口104等に設けられており、通水部材41と、支持軸42と、ヘアキャッチャー43と、排水口部材44と、栓蓋45とを備えている。
【0044】
通水部材41は、環状(本実施形態では、筒状)をなす外周壁41Aを備えており、当該外周壁41Aが配管111の内周面に沿うようにして配管111内に配置されている。また、通水部材41は、その外周壁41Aの下端面が支持突起39に載置状態とされることで、配管111内にて支持されており、支持突起39の上下動に伴って洗面器100に対して上下動するように構成されている。加えて、通水部材41は、その外周壁41Aから排水路の中心に向かって延びる複数のアーム部46を備えており、前記支持軸42の下端部がアーム部46に固定されている。
【0045】
支持軸42は、鉛直方向に延びる棒状をなし、当該支持軸42の一端(上端)側に位置し、前記栓蓋45の背面中央を支持する一端側支持軸42Aと、支持軸42の他端(下端)側に位置し、他端部が前記通水部材41のアーム部46に固定された他端側支持軸42Bとを備えている。前記一端側支持軸42A及び他端側支持軸42Bは、直列的に配置されるとともに、それぞれが分離可能に構成されている。そして、両支持軸42A,42Bを分離することで、ヘアキャッチャー43を排水口104から取外すことなく、栓蓋45を排水口104から取外すことができるようになっている。また、通水部材41の上下動により、支持軸42ひいては栓蓋45が上下動し、排水口104の開閉が行われるようになっている。
【0046】
前記ヘアキャッチャー43は、髪の毛等を捕集するものであって、前記排水口104のうち鉛直方向にほぼ沿って延びる筒状の垂下部105に対して、その外周縁が接触した状態で配置されている。また、ヘアキャッチャー43は、その中央に鉛直方向に延びる筒状部43Aを備えており、当該筒状部43Aに対して前記一端側挿通部42Aと他端側挿通部42Bの一端部とが挿通されている。栓蓋45を支持する一端側支持軸42Aを、外周縁が排水口104の垂下部105に接触するヘアキャッチャー43により支持することで、支持軸42の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するようになっている。
【0047】
加えて、他端側挿通部42Bの一端部外周面には、径方向外側に突出する環状の突部42Cが設けられており、また、筒状部43Aの内周面には、径方向内側に突出する環状の爪部43Dが設けられている。そして、他端側挿通部42Bの一端部が筒状部43Aに挿通された状態において、前記爪部43Dに対して前記突部42Cが着脱自在に係止可能とされている。
【0048】
前記排水口部材44は、筒状をなしており、自身の上端鍔状部分と所定のナット48との間で、前記垂下部105の下端から径方向内側に延びる鍔部106を挟み込むことにより、排水口104に取付けられている。また、排水口部材44の下端部は、洗面器100からのオーバーフロー水を流すためのオーバーフロー口114を備えた連接管115を介して配管111に接続されており、その結果、排水口104から配管111へと至る排水路が形成されている。
【0049】
前記栓蓋45は、樹脂等からなる円板状の蓋部49と、弾性変形可能な材料からなる環状のパッキン50とを備えている。可動部材22を回転させることにより栓蓋45を下動させ、排水口104を閉じた際には、排水口104のうち下方に向かって縮径するテーパ部107に対して前記パッキン50が圧接し、その結果、栓蓋45と排水口104との間がシールされる。本実施形態では、支持軸42の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するように構成されているため、栓蓋45(パッキン50)の外周縁を排水口104に対してより確実に接触させることができ、ひいては栓蓋45と排水口104との間のシール性の向上が図られている。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、支持軸42を支持する通水部材41のうち、その外周壁412Aが支持突起39に支持され、支持突起39の先端は配管111の中心に到達しないように構成されている。つまり、配管111の内周面に対する支持突起39の突出量が非常に小さなものとされている。従って、支持突起39に対して毛髪やゴミ等が極めて引っ掛かりにくくなり、配管111の詰まりを効果的に抑制することができる。また、支持突起39から先(下方)に位置する配管111やトラップ(図示せず)等を比較的容易に清掃することができる。
【0051】
加えて、可動部材22は、自身の中心軸を回転軸として洗面器100に対して相対回転可能に構成されている。そのため、軸方向に変位する可動部材を用いる場合と比較して、可動部材を支持する部材等の長尺化等が不要となり、操作部2の小型化を図ることができる。その結果、槽体等のうち内部スペースが比較的小さな位置であっても操作部2を配設することができ、栓蓋45や支持軸42に対する操作部2の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0052】
さらに、支持突起39の一端側から見たとき、伝達部材3の一端部の回転軸から鉛直上方に延びる直線L1上に支持突起39が配置されないように支持突起39の回転可能範囲が規制されている。このため、通水部材41に上方から大きな力が加わった際に、支持突起39が回転することとなり、ひいては支持突起39に加わる力を低減することができる。これにより、支持突起39の破損をより確実に防止することができる。
【0053】
併せて、可動部材22の回転を規制する回転規制機構2Aにより支持突起39の回転可能範囲が規制されている。従って、伝達部材3に対して大きなねじり応力が加わってしまうことを防止でき、伝達部材3の破損等をより確実に防止することができる。
【0054】
また、伝達部材3の一端部が斜め下方側に延びているため、伝達部材3の一端部と取付管112との間を伝わった水の漏出をより確実に防止することができる。
【0055】
加えて、第3伝達棒33の外周面には凹状の係合部33Aが設けられており、当該係合部33Aに対して取付管112に設けられた凸状の被係合部113が係合されている。従って、取付管112に対する伝達部材3の配設を比較的容易に行うことができ、洗面器100に対する排水栓装置1の組付作業性を一層向上させることができる。
【0056】
さらに、支持軸42がヘアキャッチャー43により支持されるため、部品点数の低減や構成の簡素化を図ることができ、ひいては製造コストを低減させることができる。
【0057】
また、支持軸42は、一端側支持軸42Aと他端側支持軸42Bとで分離可能に構成されるため、ヘアキャッチャー43を排水口104に配置した状態で、栓蓋45を取外すことができる。これにより、ヘアキャッチャー43を排水口104に配置したまま、ヘアキャッチャー43の上面を清掃するといったことが可能となる。
【0058】
さらに、他端側支持部42Bの突部42Cが筒状部43Aの爪部43Dに係止可能とされているため、ヘアキャッチャー43を排水口104から取外すことで、通水部材41も取外すことができる。その結果、配管111に対する通水部材41の着脱をより容易に行うことができ、通水部材41から先の配管111等の清掃をより一層容易に行うことができる。加えて、爪部43Dに対して突部が42C着脱自在であるため、筒状部43A(ヘアキャッチャー43)から他端側支持軸42Bひいては通水部材41を取外すことができ、ヘアキャッチャー43や通水部材41をそれぞれ単独で清掃することが可能となる。
【0059】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0060】
(a)上記実施形態では、支持突起39が回転することで、通水部材41ひいては栓蓋45が上下動するように構成されているが、図6に示すように、配管111側に向けて下方へと傾斜する傾斜面79Aを有する支持突起79を用い、前記傾斜面79により通水部材41の外周壁41Aを支持した状態で、配管111に対する支持突起79の突出量を変更することで、通水部材41ひいては栓蓋45を上下動させることとしてもよい。この場合においても、上記実施形態とほぼ同様の作用効果が奏されることとなる。尚、配管111に対する支持突起79の突出量を変更可能とするためには、伝達部材80の一端部を配管111に対して接離移動可能(つまり、伝達部材80をその長手方向に沿って移動可能)とすることが必要であり、この点を考慮すると、可動部材として軸方向に変位する押ボタン式のものを用いるとともに、伝達部材80として軸方向の変位をより確実に伝達可能なレリースワイヤ等を用いることが好ましい。
【0061】
(b)上記実施形態において、支持突起39は伝達部材3の一端部(第3伝達棒33)の中心軸を回転軸として回転可能に構成されているが、図7に示すように、伝達部材90の一端部の中心軸と直交する方向(水平方向)に沿って延びる軸を回転軸として回転可能な支持突起89により通水部材41を上下動させることとしてもよい。尚、伝達部材90としてレリースワイヤを用いるとともに、例えば、ラックアンドピニオン91を用いることにより、伝達部材90の軸方向に沿った変位を支持突起89の回転に変換することとしてもよい。
【0062】
(c)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、槽体としての浴槽や流し台等の排水口に本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0063】
(d)上記実施形態では、操作部2が洗面器100に対して取付けられているが、洗面器100の近傍に設けられた構造物に対して操作部2を設けることとしてもよい。
【0064】
(e)上記実施形態では、通水部材41は、外周壁部41Aと複数のアーム部46とを備えて構成されているが、通水部材41としてオーバーフロー口114を通った髪の毛等を捕集可能なヘアキャッチャーを用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…排水栓装置、2…操作部、2A…回転規制機構、3…伝達部材、22…可動部材、33A…係合部、39…支持突起、41…通水部材、41A…外周壁、42…支持軸、42A…一端側支持軸、42B…他端側支持軸、42C…突部、43…ヘアキャッチャー、43A…筒状部、43D…爪部、45…栓蓋、100…洗面器(槽体)、104…排水口、111…配管、112…取付管、113…被係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
自身の一端部で前記栓蓋を支持する支持軸と、
排水用の配管内において前記配管の内周面に沿って配置される環状の外周壁を有するとともに、前記支持軸の他端部を支持する通水部材と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部材を有する操作部と、
前記可動部材及び前記支持軸の間に設けられ、前記可動部材の変位を前記支持軸側に伝達する伝達部材と
を備えた排水栓装置であって、
前記伝達部材の一端部から前記配管内に突出する支持突起を備えるとともに、
前記支持突起により前記通水部材の外周壁が支持され、
前記支持突起のうち少なくとも前記通水部材を支持する部位は、前記可動部材の変位により前記槽体に対して上下動可能に構成されるとともに、
前記支持突起の先端は前記配管の中心に到達しないことを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記可動部材は、自身の中心軸を回転軸として前記槽体又は前記構造物に対して相対回転可能に構成されるとともに、
前記伝達部材は、自身の中心軸を回転軸として回転することで前記可動部材の回転変位を伝達し、かつ、自身の一端部が、前記支持軸の中心軸と交差する方向に延び、
前記支持突起は、前記可動部材の回転により前記伝達部材の一端部の中心軸を回転軸として回転可能に構成され、自身の回転に伴い前記槽体に対して上下動することを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記支持突起の一端側から見たとき、前記伝達部材の一端部の回転軸から鉛直上方に延びる直線上に前記支持突起と前記通水部材の外周壁との接触部分が配置されないように、前記支持突起の回転可能範囲が規制されることを特徴とする請求項2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記可動部材の回転を規制する回転規制機構を備え、前記可動部材の回転を規制することで、前記支持突起の回転可能範囲が規制されることを特徴とする請求項3に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記伝達部材の一端部は、前記支持軸の中心軸と交差する方向に延びるとともに、前記配管に対して接離移動可能とされ、前記配管に対する前記支持突起の突出量を変更可能であり、
前記支持突起は、前記配管側に向けて下方に傾斜する傾斜面を備え、前記傾斜面により前記通水部材の外周壁が支持されており、
前記配管に対して前記伝達部材の一端部を接離移動させることで、前記通水部材を前記槽体に対して上下動させることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項6】
前記伝達部材の一端部は、前記配管に連通された筒状の取付管に挿通されており、
前記伝達部材の一端部は、斜め下方側に向けて延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項7】
前記伝達部材の一端部は、前記配管に連通された筒状の取付管に挿通されるとともに、前記伝達部材の外周面には、凸状又は凹状をなす係合部が設けられており、
前記取付管に設けられ、前記係合部を係合可能な凹状又は凸状の被係合部に対して前記係合部が係合されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項8】
前記栓蓋の下方にはヘアキャッチャーが設けられるとともに、
前記ヘアキャッチャーは、前記支持軸が挿通されることで当該支持軸を支持する筒状部を備え、
前記支持軸は、
前記支持軸の一端側に位置し、自身の一端部において前記栓蓋を支持する棒状の一端側支持軸と、
前記支持軸の他端側に位置し、前記一端側支持部に対して直列的に配置されるとともに、自身の他端部が前記通水部材に固定された棒状の他端側支持軸とを備え、
前記一端側支持軸及び前記他端側支持軸は分離可能に構成されるとともに、
前記一端側支持軸、及び、前記他端側支持軸の一端部は、前記筒状部に挿通されており、
前記筒状部の内周面に設けられ、径方向内側に突出する爪部に対して、前記他端側支持軸の一端部の外周面に設けられ、径方向外側に突出する突部が着脱自在に係止可能とされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の排水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−36558(P2012−36558A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174381(P2010−174381)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(392028767)株式会社日本アルファ (73)
【Fターム(参考)】