説明

排水栓装置

【課題】ヘアキャッチャーにより支持軸を保持しつつ、排水口の中心軸に対するヘアキャッチャーの傾きを抑制し、槽体と栓蓋との間をより確実にシールする。
【解決手段】排水栓装置1は、排水口104の閉時において外周縁がテーパ部107と接触する栓蓋45と、栓蓋45を支持し、槽体に対して上下動可能な支持軸42と、支持軸42が挿通される筒状部43A、及び、外周縁が筒状部43Aと同心円状に形成された環状のリング部43Bを有するとともに、筒状部43A及びリング部43Bの間にネット部43Cを具備するヘアキャッチャー43と、自身の一端部に径方向外側に膨出する張出部44Aを有し、自身の他端部が配管111に対して接続される排水口部材44とを備える。ヘアキャッチャー43のリング部43Bは、その外周縁全周が垂下部105に対してほぼ接触した状態で、排水口部材44の張出部44A上に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口に設けられる排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽やユニットバスの洗い場など)の排水栓装置としては、鍔状のフランジを有する排水口金具を槽体の排水口に設けるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。しかし、このような排水栓装置においては、前記フランジが槽体の排水口縁に設置された状態となってしまうため、槽体とフランジとの間に汚れが付着してしまいやすく、また、槽体に水を溜める際において、槽体とフランジとの間に付着した汚れが溜められた水と触れてしまう可能性がある。さらに、フランジが槽体の表面に顕出してしまうため、外観品質の低下を招いてしまう。
【0003】
そこで近年では、排水口金具を設けることなく、排水栓装置を構成する技術が提案されている。このような技術としては、例えば、栓蓋を上下動可能に支持する支持軸を排水口に設けるために、支持軸を保持する支持部材が必要となるところ、従来排水口金具に固定されていた前記支持部材を、槽体に対して直接固定することで、排水口金具を設けないものとした技術が知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【0004】
また、髪の毛やゴミ等を捕集するためのヘアキャッチャーの外周縁を排水口に対して接触させるとともに、ヘアキャッチャーの中心に位置する筒状部分に支持軸を挿通することで、ヘアキャッチャーにより支持軸を保持する手法が提案されている(例えば、特許文献3等参照)。当該手法を用いることで、支持部材とヘアキャッチャーとを別々に設けることに伴う製造コストの増大を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3633336号公報
【特許文献2】特開2010−1678号公報
【特許文献3】特開2010−37923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3の技術においては、排水口に対するヘアキャッチャー外周縁の接触位置が上下方向に沿ってずれてしまうことがあり得る。そのため、ヘアキャッチャーの筒状部材ひいては支持軸が排水口の中心軸に対して傾いてしまうおそれがあり、槽体(排水口)に対する栓蓋のシール性が損なわれてしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘアキャッチャーにより支持軸を保持しながら、排水口の中心軸に対するヘアキャッチャーの傾きを抑制することができ、槽体と栓蓋との間をより確実にシールすることができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.下方に向けて縮径する環状のテーパ部と、前記テーパ部から下方に向かって延び、前記テーパ部と同心円状に形成された筒状の垂下部と、前記垂下部の下端から径方向内側に向けて膨出する鍔部とを備えた槽体の排水口に取付けられるとともに、所定の配管に接続される排水栓装置であって、
前記排水口に設けられ、前記排水口の閉時において外周縁が前記テーパ部と接触する栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持軸と、
前記支持軸が挿通される筒状の筒状部、及び、外周縁が前記筒状部と同心円状に形成された環状のリング部を有するとともに、前記筒状部及び前記リング部の間にネット部を具備するヘアキャッチャーと、
自身の一端部に径方向外側に膨出する張出部を有し、前記鍔部に対して前記張出部が載置された状態で前記排水口に取付けられるとともに、自身の他端部が前記配管に対して直接又は間接的に接続される筒状の排水口部材とを備え、
前記ヘアキャッチャーのリング部は、その外周縁全周が前記垂下部に対してほぼ接触した状態で、前記排水口部材の張出部上に配設されることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
尚、「ほぼ接触」とあるのは、リング部の外周縁が垂下部に対して全周に亘って接触している場合のみならず、リング部の外周縁の一部と垂下部との間に若干の隙間が形成され、リング部の外周縁の一部が垂下部に対して接触可能とされている場合も含む。
【0011】
上記手段1によれば、栓蓋の下方側に排水口部材が設けられることとなり、栓蓋の閉時には、槽体の表面側に排水口部材が顕出せず、また、栓蓋の開時であっても、槽体の表面側から排水口部材が視認しにくくなる。従って、外観品質を向上させることができる。
【0012】
また、栓蓋の閉時には、槽体の表面側に排水口部材が顕出しないため、仮に槽体と排水口部材との間に汚れが付着したとしても、水を溜める際に、当該汚れが溜められた水と触れてしまうことがない。その結果、衛生面の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、上記手段1によれば、ヘアキャッチャーのリング部は、その外周縁全周が排水口のうち下方に沿って延びる垂下部に対してほぼ接触している。そのため、リング部と同心円状に形成された筒状部の中心軸と垂下部の中心軸とを一致させることができ、ひいては筒状部に挿通される支持軸の中心軸と垂下部に対して同心円状に形成されたテーパ部の中心軸とを一致させることができる。
【0014】
また、リング部は、排水口部材の張出部上に配設されているため、排水口に対してリング部の接触位置が上下方向にずれてしまうことをより確実に抑制することができる。これにより、支持軸の中心軸がテーパ部の中心軸に対して傾いてしまうといった事態を効果的に防止することができる。
【0015】
以上のように、上記手段1によれば、支持軸の中心軸とテーパ部の中心軸とを一致させつつ、支持軸の中心軸とテーパ部の中心軸との軸ずれをより確実に防止することができる。その結果、ヘアキャッチャーにより支持軸を保持し、別途の支持部材を必要としないことによる製造コストの低減を図りつつ、排水口の閉時において、槽体と栓蓋との間をより確実にシールすることができる。
【0016】
手段2.前記支持軸は、前記筒状部に対して挿脱可能に構成されることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0017】
上記手段2によれば、筒状部に対して支持軸が挿脱可能に構成されているため、ヘアキャッチャーと栓蓋とを分離することができる。従って、ヘアキャッチャーを排水口に配置したままの状態で栓蓋を取外すことができ、ひいてはヘアキャッチャーを排水口に配置したまま、その上面を清掃するといったことが可能となる。
【0018】
手段3.前記支持軸のうち少なくとも前記筒状部に挿通される部位の外周面、及び、前記筒状部のうち少なくとも前記支持軸が挿通される部位の内周面の一方は、長手方向と直交する断面において、円形状に形成され、
前記支持軸のうち少なくとも前記筒状部に挿通される部位の外周面、及び、前記筒状部のうち少なくとも前記支持軸が挿通される部位の内周面の他方は、長手方向と直交する断面において、多角形状に形成されることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0019】
支持軸の外周面と筒状部の内周面とが面接触してしまうと、水の表面張力により筒状部に対する支持軸の相対移動が困難となってしまい、排水口を閉じるときに、支持軸ひいては栓蓋が下動しなくなってしまったり、排水口を開けるときに、支持軸とともにヘアキャッチャーが上動してしまったりするおそれがある。
【0020】
この点を鑑みて、上記手段3によれば、支持軸の外周面及び筒状部の内周面の一方が、断面円形状に形成されるとともに、支持軸の外周面及び筒状部の内周面の他方が、断面多角形状に形成されており、支持軸の外周面と筒状部の内周面との間に隙間が形成されるように構成されている。このため、支持軸の外周面と筒状部の内周面とが面接触してしまうことを抑制することができ、支持軸及び筒状部の間に水が浸入した場合であっても、筒状部に対して支持軸が容易に相対移動可能となる。その結果、上述した不具合の発生をより確実に防止することができる。
【0021】
尚、支持軸の外周面と筒状部の内周面との面接触を防止するために、例えば、筒状部の内周面に径方向内側に膨出する複数のリブを設ける手法が考えられる。ところが、この場合には、リブ同士の間に汚れが付着してしまいやすく、また、その汚れの除去が極めて難しい。
【0022】
この点、上記手段3によれば、支持軸の外周面及び筒状部の内周面の双方ともに表面が平坦状に形成されることとなる。そのため、支持軸の外周面や筒状部の内周面に対して汚れが付着しにくくなり、また、仮に汚れが付着したとしてもその汚れを比較的容易に除去することができる。
【0023】
手段4.前記排水口部材は、自身の外周面にねじ部を備えるとともに、当該ねじ部に所定のナットが螺合され、当該ナットと前記張出部との間で前記鍔部を挟み込むことで前記排水口に取付けられており、
前記張出部の外周と前記垂下部との間に、環状のパッキンが圧入されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0024】
尚、「パッキン」としては、ゴム等の弾性素材により形成されたOリングやXリング等を挙げることができる。
【0025】
排水口部材と槽体と間のシール性を向上させるべく、両者の間に環状のパッキンを設けることが考えられる。ここで、パッキンは、例えば、上記特許文献3に記載の技術のように、槽体の背面と排水口部材の上面との間に設けられるのが一般的である。しかしながら、この場合には、例えば、排水口部材を槽体に取付けるための取付ねじの緩み等により、槽体に対する排水口部材の押付け力が弱まってしまうと、槽体や排水口部材に対するパッキンの圧接力が低下してしまう。その結果、排水口部材と槽体との間のシール性が不十分となってしまうおそれがある。
【0026】
この点、上記手段4によれば、排水口部材の張出部と垂下部との間に環状のパッキンが圧入されている。従って、排水口部材を排水口に取付けるためのナットに多少の緩みが生じた場合であっても、垂下部や張出部(排水口部材)に対するパッキンの圧接力が低下してしまうことがない。その結果、排水口部材と槽体との間で優れたシール性を実現できるとともに、その優れたシール性を長期間に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】排水栓装置の構成を示す断面図である。
【図2】操作部の構成を示す部分拡大断面図である。
【図3】排水口装置の構成を示す部分拡大断面図である。
【図4】栓蓋を取外した状態における排水栓装置を示す部分拡大断面図である。
【図5】図3のJ−J線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取り付けられており、操作部2と、伝達部材3と、排水口装置4とを備えている。
【0029】
操作部2は、洗面器100の側壁部101の上端から外側に向かって延びるフランジ部102に取り付けられており、図2に示すように、ガイド部21と、可動部材22とを備えている。
【0030】
前記ガイド部21は、筒状をなし、その一端部がフランジ部102に形成された孔部103から洗面器100の内部に挿入されるとともに、その他端部が前記フランジ部102の外表面から突出している。また、ガイド部21の一端部外周面には雄ねじ部23が形成されており、ガイド部21の他端部との間で前記フランジ部102を挟み込むようにして所定のナット24が前記雄ねじ部23に締結されることにより、ガイド部21がフランジ部102に固定されている。また、ガイド部21の他端部の外周面には、周方向に沿って延びる複数の環状溝部25が設けられるとともに、環状溝部25よりも一端側(下側)には、外側に膨出する鍔状部26が設けられている。加えて、鍔状部26の下方側の面とフランジ部102との間には、環状のシール部材27が設けられている。当該シール部材27により、ガイド部21とフランジ部102との間がシールされている。
【0031】
前記可動部材22は、筒状の外周壁部28を備えるとともに、当該外周壁部28の内周にガイド部21の他端部が挿入された状態で、前記ガイド部21ひいては洗面器100に対して自身の中心軸を回転軸として相対回転可能に構成されている。また、ガイド部21の他端面21Fは前記可動部材22に対して周方向に沿って面接触しており、その結果、ガイド部21と可動部材22との間がシールされている。加えて、ガイド部21に設けられた前記環状溝部25により、ガイド部21の外周面と可動部材22の内周面との間には、周方向に沿って延びる環状の空間部29が形成されている。当該空間部29により、ガイド部21と可動部材22との間を伝わった水の浸入を抑制することができ、また、ガイド部21の他端面21Fと可動部材22とを周方向に沿って面接触させることで、水の浸入抑制効果を一層高めることができるようになっている。
【0032】
図1に戻り、前記伝達部材3は、樹脂材料により形成されるとともに、操作部2と排水口装置4との間に設けられ、可動部材22の回転変位を排水口装置4側へと伝達すべく、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。伝達部材3は、操作部2から排水口装置4側に向かって、それぞれ棒状をなす第1伝達棒31と、第2伝達棒32と、第3伝達棒33とが直列的に接続されて構成されている。
【0033】
前記第1伝達棒31は、一端部が前記第2伝達棒32に連結される一方で、その他端部が前記ガイド部21に挿通されており、また、その他端部に爪状の係止部31Aを備えている。そして、可動部材22の一端部に設けられた突起状の被係止部22Aに対して第1伝達棒31の前記係止部31Aが係止されることで、可動部材22と伝達部材3との間がスナップフィット結合されており、可動部材22の回転変位が伝達部材3(第1棒状部31)に伝達されるようになっている。
【0034】
前記第2伝達棒32は、メススプライン軸34にオススプライン軸35が挿通されてなるスライド機構36を備えている。当該スライド機構36により、第2伝達棒32ひいては伝達部材3が伸縮可能とされており、排水栓装置1を様々な槽体に対して組付けることができるようになっている。
【0035】
加えて、前記第3伝達棒33は、その一端部が排水用の配管111に連通された筒状の取付管112に対して挿通されている。また、第3伝達棒33は、前記取付管112の端部に設けられた爪部113によって軸方向に沿った移動が規制されている一方で、自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。尚、第3伝達棒33の中心軸は、後述する支持軸42の中心軸(鉛直方向)と交差する方向に延びている。
【0036】
さらに、前記第1伝達棒31と第2伝達棒32との間、及び、第2伝達棒32と第3伝達棒33との間は、それぞれユニバーサルジョイント37,38を介して連結されている。従って、第1、第2伝達棒31,32間の連結角度、及び、第2、第3伝達棒32,33間の連結角度を自在に変更することができ、ひいては可動部材22から伝達部材3の一端部(第3伝達棒33)に対する回転の伝達方向を変換できるようになっている。
【0037】
また、伝達部材3(第3伝達棒33)の一端面外周には、第3伝達棒33の中心軸方向に沿って延びる支持突起39が設けられている。そして、前記可動部材22を回転させることにより、第1伝達棒31、第2伝達棒32、第3伝達棒33の順に回転が伝達されていき、第3伝達棒33の中心軸を回転軸として支持突起39が回転することで、支持突起39が上下動するようになっている。
【0038】
次に、排水口装置4について説明する。前記排水口装置4は、図3に示すように、洗面器100の排水口104等に設けられており、通水部材41と、支持軸42と、ヘアキャッチャー43と、排水口部材44と、栓蓋45とを備えている。
【0039】
通水部材41は、筒状をなし、その外周壁が配管111の内周面に沿うようにして配管111内に配置されている。また、通水部材41は、その下端面外周が前記支持突起39に載置状態とされることで、配管111内で支持されており、支持突起39の上下動に伴って洗面器100に対して相対的に上下動するように構成されている。
【0040】
加えて、通水部材41は、その外周壁から排水路の中心に向かって延びる複数のアーム部46を備えており、棒状をなす前記支持軸42の下端部がアーム部46に固定されている。支持軸42は、その上端部に前記栓蓋45の背面中央が固定されており、通水部材41の上下動により、支持軸42ひいては栓蓋45が上下動し、排水口104の開閉が行われるようになっている。
【0041】
尚、支持軸42は、当該支持軸42の一端(上端)側に位置し、前記栓蓋45の背面中央を支持する一端側支持軸42Aと、支持軸42の他端(下端)側に位置し、他端部が前記通水部材41のアーム部46に固定された他端側支持軸42Bとを備えており、支持軸42は、その長手方向に沿った自身の略中央において分離可能に構成されている。そして、支持軸42を分離することで、後述するヘアキャッチャー43の筒状部43Aに対して支持軸42を挿脱することができるようになっている。その結果、図4に示すように、ヘアキャッチャー43を排水口104から取外すことなく、栓蓋45を排水口104から取外すことができるようになっている。
【0042】
図3に戻り、ヘアキャッチャー43は、前記支持軸42が挿通される筒状の筒状部43Aと、少なくとも外周縁が前記筒状部43Aと同心円状に形成されたリング部43Bと、筒状部43A及びリング部43Bの間に設けられ、髪の毛等を捕集するためのネット部43Cとを備えている。
【0043】
本実施形態においては、図5(図5は、図3のJ−J線断面図である)に示すように、前記筒状部43Aに挿通される支持軸42(一端側支持軸42A)の外周面が、支持軸42の長手方向と直交する断面において、多角形状(例えば、六角形状)に形成されている。一方で、筒状部43Aの内周面は、当該筒状部43Aの長手方向と直交する断面において、円形状に形成されている。そのため、支持軸42の外周面と筒状部43Aの内周面との間には、周方向に沿って複数の隙間が形成されるようになっている。
【0044】
図3に戻り、前記排水口部材44は、全体として筒状をなしており、また、自身の一端部(上端部)に径方向外側に膨出する鍔状の張出部44Aを備えている。加えて、排水口部材44の外周面には、ねじ部44Bが形成されている。排水口部材44は、前記張出部44Aとねじ部44Bに螺合された所定のナット48との間で、前記垂下部105の下端から内周側に突出形成された鍔部106を挟み込むことにより、排水口104に取付けられている。また、排水口部材44の下端部は、洗面器100からのオーバーフロー水を流すためのオーバーフロー口114を備えた連接管115を介して配管111に接続されており、その結果、排水口104から配管111へと至る排水路が形成されている。
【0045】
本実施形態において、前記ヘアキャッチャー43のリング部43Bは、その外周縁全周が、前記排水口104のうち下方に延びる垂下部105にほぼ接触した状態で、前記排水口部材44の張出部44A上に配設されている。
【0046】
また、前記張出部44Aの外周には環状のパッキンとしてのOリング47が設けられており、排水口部材44の張出部44Aと垂下部105との間に前記Oリング47が圧入されている。これにより、Oリング47は張出部44A及び垂下部105の双方に対して圧接された状態となっている。
【0047】
前記栓蓋45は、樹脂等からなる円板状の蓋部49と、弾性変形可能な材料からなる環状のパッキン50とを備えている。可動部材22を回転させることにより栓蓋45を下動させ、排水口104を閉じた際には、排水口104のうち下方に向かって縮径するテーパ部107に対して前記パッキン50が圧接し、その結果、栓蓋45と排水口104との間がシールされる。尚、排水口104においては、少なくとも前記垂下部105の内周面の中心軸とテーパ部107の内周面の中心軸とが一致するように構成されている。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態によれば、栓蓋45の下方側に排水口部材44が設けられており、栓蓋45の閉時には、洗面器100の表面側に排水口部材44が顕出せず、また、栓蓋45の開時であっても、洗面器100の表面側から排水口部材44が視認しにくくなる。従って、外観品質を向上させることができる。
【0049】
また、栓蓋45の閉時には、洗面器100の表面側に排水口部材44が顕出しないため、仮に洗面器100と排水口部材44との間に汚れが付着したとしても、水を溜める際に、当該汚れが溜められた水と触れてしまうことがない。その結果、衛生面の向上を図ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態において、ヘアキャッチャー43のリング部43Bは、その外周縁全周が排水口104の垂下部105に対してほぼ接触している。そのため、リング部43Bと同心円状に形成された筒状部43Aの中心軸と垂下部105の中心軸とを一致させることができ、ひいては筒状部43Aに挿通される支持軸42の中心軸と垂下部105に対して同心円状に形成されたテーパ部107の中心軸とを一致させることができる。
【0051】
また、リング部43Bは、排水口部材44の張出部44A上に配設されているため、排水口104に対してリング部43Bの接触位置が上下方向にずれてしまうことをより確実に抑制することができる。これにより、支持軸42の中心軸がテーパ部47の中心軸に対して傾いてしまうといった事態を効果的に防止することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、支持軸42の中心軸とテーパ部107の中心軸とを一致させつつ、支持軸42の中心軸とテーパ部107の中心軸との軸ずれをより確実に防止することができる。その結果、ヘアキャッチャー43により支持軸42を保持し、別途の支持部材を必要としないことによる製造コストの低減を図りつつ、排水口104の閉時において、洗面器100と栓蓋45との間をより確実にシールすることができる。
【0053】
加えて、筒状部43Aに対して支持軸42が挿脱可能に構成されているため、ヘアキャッチャー43と栓蓋45とを分離することができる。従って、ヘアキャッチャー43を排水口104に配置したままの状態で栓蓋45を取外すことができ、ひいてはヘアキャッチャー43を排水口104に配置したまま、ヘアキャッチャー43の上面を清掃するといったことが可能となる。
【0054】
さらに、支持軸42の外周面は、断面多角形状に形成される一方で、筒状部43Aの内周面は、断面円形状に形成されており、支持軸42の外周面と筒状部43Aの内周面との間には隙間が形成されている。このため、支持軸42の外周面と筒状部43Aの内周面とが面接触してしまうことを極力抑制することができ、支持軸42及び筒状部43Aの間に水が浸入した場合でも、筒状部43Aに対して支持軸42が容易に相対移動可能となる。その結果、排水口104を閉じるときに、支持軸42ひいては栓蓋45が下動しなくなってしまうなどの不具合をより確実に防止することができる。
【0055】
また、支持軸42の外周面及び筒状部43Aの内周面の双方ともに表面が平坦状に形成されているため、支持軸42や筒状部43Aに対して汚れが付着しにくくなり、また、仮に汚れが付着したとしてもその汚れを比較的容易に除去することができる。
【0056】
併せて、排水口部材44の張出部44Aの外周と垂下部105との間にOリング47が圧入されており、Oリング47は張出部44A及び垂下部105の双方に対して圧接された状態となっている。従って、排水口部材44を排水口104に取付けるためのナット48に多少の緩みが生じた場合であっても、垂下部105や張出部44Aに対するOリング47の圧接力が低下してしまうことがない。その結果、排水口部材44と洗面器100との間で優れたシール性を実現できるとともに、その優れたシール性を長期間に亘って維持することができる。
【0057】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0058】
(a)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、槽体としての浴槽や流し台等の排水口に本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0059】
(b)上記実施形態における、操作部2や伝達部材3の構成は例示であって、操作部や伝達部材の構成はこれに限定されるものではない。従って、操作部として、軸方向(洗面器100に対する出没方向)に沿って変位可能な可動部材(例えば、押しボタン式の可動部材)を有するものを用いるとともに、伝達部材として、自身の長手方向(軸方向)に沿って変位可能なもの(例えば、レリースワイヤなど)を用いることとしてもよい。
【0060】
(c)上記実施形態では、通水部材41を介して支持軸42を上下動させることとしているが、通水部材41を省略し、支持突起39を支持軸42に接触させることとしてもよい。また、伝達部材として、その長手方向に沿って変位可能なものを用いる場合には、支持突起39や通水部材41を設けることなく、伝達部材の一端部を支持軸42に接触させ、支持軸42を上下動させることとしてもよい。
【0061】
(d)上記実施形態では、支持軸42の外周面が断面多角形状に形成される一方で、筒状部43Aの内周面が断面円形状に形成されているが、支持軸42の外周面を断面円形状に形成する一方で、筒状部43Aの内周面を断面多角形状に形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…排水栓装置、42…支持軸、43…ヘアキャッチャー、43A…筒状部、43B…リング部、43C…ネット部、44…排水口部材、44A…張出部、44B…ねじ部、45…栓蓋、47…Oリング、48…ナット、100…洗面器(槽体)、104…排水口、105…垂下部、106…鍔部、107…テーパ部、111…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向けて縮径する環状のテーパ部と、前記テーパ部から下方に向かって延び、前記テーパ部と同心円状に形成された筒状の垂下部と、前記垂下部の下端から径方向内側に向けて膨出する鍔部とを備えた槽体の排水口に取付けられるとともに、所定の配管に接続される排水栓装置であって、
前記排水口に設けられ、前記排水口の閉時において外周縁が前記テーパ部と接触する栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持軸と、
前記支持軸が挿通される筒状の筒状部、及び、外周縁が前記筒状部と同心円状に形成された環状のリング部を有するとともに、前記筒状部及び前記リング部の間にネット部を具備するヘアキャッチャーと、
自身の一端部に径方向外側に膨出する張出部を有し、前記鍔部に対して前記張出部が載置された状態で前記排水口に取付けられるとともに、自身の他端部が前記配管に対して直接又は間接的に接続される筒状の排水口部材とを備え、
前記ヘアキャッチャーのリング部は、その外周縁全周が前記垂下部に対してほぼ接触した状態で、前記排水口部材の張出部上に配設されることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記支持軸は、前記筒状部に対して挿脱可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記支持軸のうち少なくとも前記筒状部に挿通される部位の外周面、及び、前記筒状部のうち少なくとも前記支持軸が挿通される部位の内周面の一方は、長手方向と直交する断面において、円形状に形成され、
前記支持軸のうち少なくとも前記筒状部に挿通される部位の外周面、及び、前記筒状部のうち少なくとも前記支持軸が挿通される部位の内周面の他方は、長手方向と直交する断面において、多角形状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記排水口部材は、自身の外周面にねじ部を備えるとともに、当該ねじ部に所定のナットが螺合され、当該ナットと前記張出部との間で前記鍔部を挟み込むことで前記排水口に取付けられており、
前記張出部の外周と前記垂下部との間に、環状のパッキンが圧入されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−36560(P2012−36560A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174395(P2010−174395)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(392028767)株式会社日本アルファ (73)
【Fターム(参考)】