説明

排水栓装置

【課題】操作部の小型化を図ることで、操作部と栓蓋等との位置関係を比較的自由に設定することができ、さらに、伝達部の取り回しを容易とし、かつ、操作性の向上を図る。
【解決手段】排水栓装置1は、栓蓋36を支持する支持部材33と、可動部22を有する操作部2と、可動部22の変位を支持部材33に伝達する伝達部4と、自身の回動に伴い支持部材33を上下動させる駆動部31とを備え、可動部22は、槽体としての洗面器100に対して相対回動可能とされる。伝達部4は、それぞれ可動部22及び駆動部31に固定された第1、第2伝達ワイヤー41,42により構成される。可動部22の回動により第1伝達ワイヤー41を引き動作させることで、駆動部31が一方の方向に回動し、可動部22の回動により第2伝達ワイヤー42を引き動作させることで、駆動部31が他方の方向に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(例えば、浴槽や洗面器など)の排水口を開閉するための栓蓋を備えており、近年では、遠隔操作により栓蓋を上下動させ、排水口を開閉させる技術が知られている。
【0003】
遠隔操作により排水口を開閉させる排水栓装置としては、押しボタンなどの軸方向に沿って変位する可動部を有し、槽体やその近傍の構造物に取付けられる操作部と、前記可動部の軸方向に沿った変位を伝達し、栓蓋を支持する支持部材を上下動させることで排水栓を開閉する伝達部とを具備するものが提案されている。具体的には、伝達部としてレリースワイヤを用いるとともに、可動部が操作される度に栓蓋を上昇及び下降を交互に行う機構(例えば、スラストロック機構等)を有するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。また、一般に伝達部(ワイヤー等)はチューブ内に配置され、当該伝達部がチューブ内において一方の方向に移動(例えば、押し動作)することで支持部材ひいては栓蓋が上動し、伝達部がチューブ内を他方の方向に移動(例えば、引き動作)することで支持部材ひいては栓蓋が下動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−322703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記技術においては、可動部の変位範囲に対応すべく、可動部を支持する部材等を軸方向に沿って比較的長くする必要があり、操作部が比較的大型になってしまう。そのため、操作部を配設可能な位置は、槽体や構造物のうち内部に十分なスペースが存在する位置に限られてしまい、結果として、栓蓋や支持部材に対する操作部の配設位置が限定されてしまうおそれがある。
【0006】
さらに、チューブ内における伝達部の押引き動作により、栓蓋を上下動させるには、押し動作時においてより確実な動作の伝達を図るべく、伝達部の線径をある程度の大きさ以上とし、伝達部の撓み変形等を防止することが好ましい。しかしながら、伝達部の線径を大きくした場合において、チューブ内で伝達部をスムーズに移動させるためには、伝達部の曲げ半径を大きくする必要があり、曲げ半径を大きくすれば、伝達部の取り回しが難しくなってしまう。一方で、伝達部の曲げ半径を小さくすると、伝達部及びチューブ間で生じる摩擦力が大きくなるため、チューブ内で伝達部を移動させるために大きな力が必要となり、可動部を動作させるために大きな力が必要となってしまう。その結果、可動部のスムーズな動作が阻害されてしまい、操作性の悪化を招いてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部の小型化を図ることで、操作部と栓蓋等との位置関係を比較的自由に設定することができるとともに、伝達部の取り回しを容易とし、かつ、操作性の向上を図ることが可能な排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持部材と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部を有する操作部と、
前記可動部及び前記支持部材間に設けられ、前記可動部の変位を前記支持部材に伝達する伝達部と
を備えた排水栓装置であって、
前記槽体又は前記構造物に対して相対回動可能であるとともに、自身の回動動作に伴い前記支持部材を上下動させる駆動部を備えるとともに、
前記可動部は、前記槽体又は前記構造物に対して相対回動可能とされ、
前記伝達部は、
それぞれ前記可動部及び前記駆動部に固定された第1伝達ワイヤー及び第2伝達ワイヤーにより構成され、
前記第1、第2伝達ワイヤーは、筒状のチューブ内において押引き動作可能であり、
前記可動部を一方の方向に回動させ、前記チューブ内において前記第1伝達ワイヤーを引き動作させることで、前記駆動部を一方の方向に回動させ、
前記可動部を他方の方向に回動させ、前記チューブ内において前記第2伝達ワイヤーを引き動作させることで、前記駆動部を他方の方向に回動させることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
上記手段1によれば、可動部は軸方向に変位するものではなく、回動するものであるため、可動部を支持する部材等の長尺化等が不要となり、操作部の小型化を図ることができる。その結果、槽体等の内部スペースが比較的小さい場合であっても操作部を配設することができ、ひいては栓蓋等に対する操作部の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0011】
さらに、上記手段1によれば、押し動作ではなく、第1、第2伝達ワイヤーの引き動作(つまり、ワイヤーに座屈が生じることのない動作)により、可動部の回動動作が駆動部に伝達されるため、ワイヤーの線径を細くすることができる。従って、伝達部の曲げ半径を小さくしつつ、チューブ内におけるワイヤーのスムーズな移動を実現することができる。すなわち、伝達部の取り回しが容易になるとともに、可動部をスムーズに回動させることが可能となり、操作性を向上させることができる。
【0012】
加えて、上述した従来手法では、可動部を一方の方向に動作させたときに伝達部は押し動作及び引き動作のうちの一方の動作をし、可動部を他方の方向に動作させたときに伝達部は押し動作及び引き動作のうちの他方の動作をする。従って、可動部の動作方向によって操作感が異なるといった事態が生じてしまうおそれがある。
【0013】
この点、上記手段1によれば、可動部を一方の方向に回動させたときと、可動部を他方の方向に回動させたときとの双方において、ワイヤーの引き動作により可動部の回動動作が駆動部に伝達される。従って、可動部の動作方向によって操作感が変化してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0014】
手段2.前記駆動部には、排水用の配管内に突出し、前記支持部材を直接又は間接的に支持する支持突起が設けられるとともに、
前記支持突起のうち少なくとも前記支持部材を支持する部位は、前記駆動部の回動により前記槽体に対して上下動可能に構成され、
前記支持突起の先端は前記配管の中心に到達しないことを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0015】
上記手段2によれば、配管の内周面に対する支持突起の突出量が非常に小さなものとなるため、支持突起に対して毛髪やゴミ等が引っ掛かりにくくなり、配管の詰まりを効果的に抑制することができる。また、支持突起の突出量が小さいため、支持突起から先(下方)に位置する配管やトラップ等を比較的容易に清掃することができる。
【0016】
手段3.前記駆動部の回動半径を、前記可動部の回動半径よりも大きくしたことを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0017】
尚、「駆動部の回動半径」とあるのは、駆動部の回動軸から、その回動軸よりも外周側に位置し前記伝達部からの力を受ける部位(伝達力受け部)までの距離をいう。また、「可動部の回動半径」とあるのは、可動部の回動軸から、その回動軸よりも外周側に位置し前記伝達部に対して力を加える基点となる部位(伝達力付与部)までの距離をいう(以下、同様)。
【0018】
上記手段3のように、駆動部の回動半径を可動部の回動半径よりも大きくすることで、可動部に加える力が比較的小さくても、駆動部を十分に回動させることができる。従って、栓蓋の上下動を容易に行うことができ、操作性を一層向上させることができる。
【0019】
手段4.前記駆動部の回動半径を、前記可動部の回動半径よりも小さくしたことを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0020】
上記手段4によれば、可動部を回動させた際に、可動部の回動角度よりも駆動部の回動角度が大きなものとなり、可動部の変位量が小さくても、駆動部を大きく回動させることができる。従って、栓蓋の開閉時における操作部(可動部)の変位量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】排水栓装置の構成を示す断面図である。
【図2】操作部等の構成を示す断面斜視図である。
【図3】排水口機構の構成を示す拡大断面図である。
【図4】駆動部等の構成を示す断面斜視図である。
【図5】操作部等の構成を示す斜視図である。
【図6】駆動部等の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取り付けられており、操作部2と、排水口機構3と、伝達部4とを備えている。
【0023】
操作部2は、洗面器100の底壁部101の外周に立設された側壁部102に取り付けられており、図2に示すように、フランジ部21と、可動部22とを備えている。
【0024】
前記フランジ部21は、筒状をなし、その一端部が側壁部102に形成された孔部103から洗面器100の内部に挿入されるとともに、その他端部が径方向外側に突出する鍔状をなし、側壁部102の外表面から突出している。また、フランジ部21の一端部外周面には雄ねじ部211が形成されており、フランジ部21の鍔状部位との間で前記側壁部102を挟み込むようにして所定のナット23が前記雄ねじ部211に締結されることにより、フランジ部21が側壁部102に固定されている。尚、フランジ部21の鍔状部位と側壁部102との間には、弾性材料からなる環状のパッキン24が設けられており、当該パッキン24により、フランジ部21と側壁部102との間がシールされている。
【0025】
前記可動部22は、フランジ部21に挿通され、他端部に径方向外側に突出する爪部221Aを有してなる比較的大径の挿通部221と、前記挿通部221よりも小径に形成され、他端側に向けて突出する突出部222とを備えている。
【0026】
挿通部221は、フランジ部21に挿通されるとともに、前記爪部221Aがフランジ部21の内周に形成された段差に係止されている。そのため、挿通部221は、フランジ部21に対して自身の軸方向に沿って相対移動不能とされる一方で、自身の中心軸を回転軸としてフランジ部21に対して相対回動可能(変位可能)となっている。
【0027】
突出部222は、有底円筒状をなす操作用のツマミ部25を支持するものである。具体的には、突出部222は、その先端部に凹状の括れ部222Aを備えており、当該括れ部222Aに対してツマミ部25の内周に設けられた突起が係合されることで、突出部222に対してツマミ部25が相対回動不能な状態で支持されている。そして、ツマミ部25を回動させることで、ツマミ部25とともに可動部22が回動するようになっている。尚、可動部22(挿通部221)の外周面と、フランジ部21の内周面との間には、樹脂やゴム等からなる環状のシール部材26が挟み込まれている。これにより、フランジ部21と可動部22との間から外部への水の滲出が抑制されている。
【0028】
さらに、可動部22の他端側には、円環状をなし、前記伝達部4の他端部が取付けられる可動側取付部223が設けられている(可動側取付部223に対する伝達部4の取付状態は後に詳述する)。
【0029】
加えて、可動側取付部223の外周には、径方向外側に突出する筒状のチューブ固定部27Aを備えてなるチューブ保持部材27が設けられている。当該チューブ保持部材27は、フランジ部21等に固定されることで、洗面器100に対して相対変位不能とされている。また、チューブ固定部27Aには、後述する平型チューブ43の他端部が挿通・固定されている。
【0030】
次いで、排水口機構3について説明する。前記排水口機構3は、図3に示すように、洗面器100の排水口104に設けられており、駆動部31と、通水部材32と、支持部材33と、ヘアキャッチャー34と、排水口部材35と、栓蓋36とを備えている。
【0031】
駆動部31は、棒状をなし、図4に示すように、その一端部が排水用の配管105に連通された筒状の取付管106に対して挿通されている。また、駆動部31は、前記取付管106の端部に設けられた爪部107によって軸方向に沿った移動が規制されている一方で、自身の中心軸を回転軸として回動可能に構成されている。
【0032】
さらに、駆動部31の一端面には、駆動部31の中心軸方向に沿って延びる支持突起311が設けられている。本実施形態において、支持突起311は、駆動部31の一端面のうち駆動部31の中心軸から偏心した位置に設けられており、その結果、駆動部31の回動に伴い、支持突起311が上下動するようになっている。
【0033】
加えて、駆動部31の他端側には、円環状をなし、前記伝達部4の一端部が取付けられる駆動側取付部312が設けられている(駆動側取付部312に対する伝達部4の取付状態は後に詳述する)。
【0034】
併せて、駆動側取付部312の外周には、径方向外側に突出する筒状のチューブ固定部36Aを備えてなるチューブ保持部材36が設けられている。当該チューブ保持部材36は、前記取付管106に固定されることで、洗面器100に対して相対変位不能とされている。また、チューブ固定部36Aには、後述する平型チューブ43の一端部が挿通・固定されている。
【0035】
図3に戻り、通水部材32は、筒状をなし、その外周壁が配管105の内周面に沿うようにして配管105内に配置されている。また、通水部材32は、その下端面外周が前記支持突起311に載置されることで、配管105内で支持されており、駆動部31の回動に伴う支持突起311の上下動により洗面器100に対して相対的に上下動するようになっている。
【0036】
さらに、本実施形態では、配管105の内周面に対する支持突起311の突出量が比較的小さくされることで、支持突起311の一端部(先端)は前記配管105の中心に到達しないように構成されている。
【0037】
加えて、通水部材32は、その外周壁から排水路の中心に向かって延びる複数のアーム部32Aを備えており、棒状をなす前記支持部材33の下端部がアーム部32Aに固定されている。支持部材33は、その上端部に前記栓蓋36の背面中央が固定されており、通水部材32の上下動により、支持部材33ひいては栓蓋36が上下動し、排水口104の開閉が行われるようになっている。尚、支持部材33は、その長手方向に沿った自身の略中央において分離可能に構成されており、支持部材33を分離することで、前記ヘアキャッチャー34を排水口104から取外すことなく、栓蓋36を排水口104から取外すことができるようになっている。
【0038】
前記ヘアキャッチャー34は、髪の毛等を捕集するものであって、前記排水口104のうち鉛直方向にほぼ沿って延びる垂下部108に対して、その外周縁が接触した状態で配置されている。また、ヘアキャッチャー34は、その中央に鉛直方向に延びる筒状部34Aを備えており、当該筒状部34Aに対して支持部材33が挿通されている。支持部材33を、外周縁が排水口104の垂下部108に接触するヘアキャッチャー34により支持することで、支持部材33の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致し、ひいては栓蓋36の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するようになっている。
【0039】
前記排水口部材35は、筒状をなしており、自身の上端鍔状部分と所定のナット37との間で、洗面器100のうち前記垂下部108の下端から径方向内側に延びる鍔部109を挟み込むことにより、排水口104に取付けられている。また、排水口部材35の下端部は、洗面器100からのオーバーフロー水を流すためのオーバーフロー管110を備えてなる連接管111を介して配管105に接続されており、その結果、排水口104から配管105へと至る排水路が形成されている。
【0040】
前記栓蓋36は、樹脂等からなる円板状の蓋部36Aと、弾性変形可能な材料からなる環状のパッキン36Bとを備えている。栓蓋36により排水口104を閉じる際には、排水口104のうち下方に向かって縮径するテーパ部112に対して前記パッキン36Bが圧接し、その結果、栓蓋36と排水口104との間がシールされる。本実施形態では、上述の通り、栓蓋36の中心軸と排水口104の中心軸とがほぼ一致するように構成されているため、栓蓋36(パッキン36B)の外周縁を排水口104に対してより確実に接触させることができ、ひいては栓蓋36と排水口104との間におけるシール性の向上が図られている。
【0041】
図1に戻り、前記伝達部4は、操作部2(可動部22)と排水口機構3(支持部材33)との間に設けられ、可動部22の変位を支持部材33に伝達するものである。本実施形態において、伝達部4は、図5及び図6(尚、図5においては、図示の便宜上、側壁部102を省略している)に示すように、第1伝達ワイヤー41及び第2伝達ワイヤー42により構成されている。両伝達ワイヤー41,42は、それぞれ所定の金属により形成されており、所定の樹脂等からなる筒状の平型チューブ43(本発明のチューブに相当する)に対してそれぞれが平行となるように挿通されている。そして、第1伝達ワイヤー41は、平型チューブ43内において押引き動作可能とされており、第2伝達ワイヤー42は、平型チューブ43内において押引き動作可能とされている。
【0042】
加えて、図2及び図5に示すように、第1伝達ワイヤー41の他端側は、可動側取付部223のうち、チューブ固定部27Aと可動部22の回動軸X1とを通る仮想面VS1よりも一方側(図5中、右側)に巻き付けられた状態で、可動側取付部223に固定されている。一方で、第2伝達ワイヤー42の他端側は、可動側取付部223のうち前記仮想面VL1よりも他方側(図5中、左側)に巻き付けられた状態で、可動側取付部223に固定されている。尚、両伝達ワイヤー41,42は、可動側取付部223の外周に設けられた溝部223Mに対して配置されている(図2参照)。
【0043】
さらに、第1、第2伝達ワイヤー41,42は、それぞれの他端部が所定の取付用アタッチメント224に挿通・固定されており、当該取付用アタッチメント224が、可動側取付部223において内周側に形成された凹状のアタッチメント取付部225に固定されることで、可動側取付部223に固定されている。尚、取付用アタッチメント224に対する第1、第2伝達ワイヤー41,42の挿通量を変更することで、前記両取付部223,312間における第1、第2伝達ワイヤー41,42の長さを調節できるようになっている。
【0044】
また、図4及び図6に示すように、第1伝達ワイヤー41の一端側は、駆動側取付部312のうち、チューブ固定部36Aと駆動部31の回動軸X2とを通る仮想面VS2よりも一方側(図6中、上側)に巻き付けられた状態で、駆動側取付部312に固定されている。一方で、第2伝達ワイヤー42の他端側は、駆動側取付部312のうち前記仮想面VS2よりも他方側(図6中、下側)に巻き付けられた状態で、駆動側取付部312に固定されている。尚、両伝達ワイヤー41,42は、駆動側取付部312の外周に設けられた溝部312Mに対して配置されている(図4参照)。
【0045】
本実施形態では、ツマミ部25の操作に伴い、可動部22を一方の方向に回動させることで、平型チューブ43内において第1伝達ワイヤー41が引き動作し、駆動部31が一方の方向に回動する。一方で、ツマミ部25の操作に伴い、可動部22を他方の方向に回動させた場合には、平型チューブ43内において第2伝達ワイヤー42が引き動作し、駆動部31が他方の方向に回動する。つまり、本実施形態では、両伝達ワイヤー41,42のそれぞれの引き動作により、駆動部31が回動し、駆動部31の支持突起311が洗面器100に対して相対的に上下動する。そして、支持突起311の上下動に伴い、これに対して支持部材33等を介して支持された栓蓋36が上下動し、その結果、排水口104の開閉がなされるようになっている。
【0046】
さらに、本実施形態では、平型チューブ43内におけるワイヤー41,42の引き動作により駆動部31が動作し、平型チューブ43内におけるワイヤー41,42の押し動作は、駆動部31を動作させる上で特段機能していない。そのため、押し動作により駆動部31を動作させる場合には、力をより確実に伝達するために、ワイヤーの線径を比較的大きくする必要があるが、本実施形態では、その必要はなく、両ワイヤー41,42の線径が比較的小さなもの(例えば、0.5mm以下)とされている。
【0047】
加えて、本実施形態では、図5及び図6に示すように、駆動部31の回動半径D2が、可動部22の回動半径D1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0048】
尚、「回動半径D1」とあるのは、図5に示すように、可動部22の回動軸X1から、可動部22のうち、その回動軸X1よりも外周側に位置し伝達部4(第1、第2伝達ワイヤー41,42)に対して力を加える基点となる部位までの距離をいい、本実施形態では、可動部22に対するワイヤー41,42の巻径に相当する。
【0049】
また、「回動半径D2」とあるのは、図6に示すように、駆動部31の回動軸X2から、駆動部31のうち、その回動軸X2よりも外周側に位置し伝達部4(第1、第2伝達ワイヤー41,42)からの力を受ける部位までの距離をいい、本実施形態では、駆動部31に対するワイヤー41,42の巻径に相当する。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、可動部22は軸方向に変位するものではなく、回動するものであるため、可動部22を支持するフランジ部21等の長尺化等が不要となり、操作部2の小型化を図ることができる。その結果、洗面器100の内部スペースが比較的小さい場合であっても操作部2を配設することができ、ひいては栓蓋36等に対する操作部2の相対位置関係を比較的自由に設定することができる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、押し動作ではなく、第1、第2伝達ワイヤー41,42の引き動作(つまり、ワイヤー41,42に座屈が生じることのない動作)により、可動部22の回動動作が駆動部31に伝達されるため、ワイヤー41,42の線径を細くすることができる。従って、伝達部4の曲げ半径を小さくしつつ、平型チューブ43内におけるワイヤー41,42のスムーズな移動を実現することができる。すなわち、伝達部4の取り回しが容易になるとともに、可動部22をスムーズに回動させることが可能となり、操作性を向上させることができる。
【0052】
加えて、可動部22を一方の方向に回動させたときと、可動部22を他方の方向に回動させたときとの双方において、ワイヤー41,42の引き動作により可動部22の回動動作が駆動部31に伝達されるように構成されている。従って、可動部22の動作方向によって操作感が変化してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0053】
また、配管105の内周面に対する支持突起311の突出量が非常に小さなものとされているため、支持突起311に対して毛髪やゴミ等が引っ掛かりにくくなり、配管105の詰まりを効果的に抑制することができる。また、支持突起311の突出量が小さいため、支持突起311から先(下方)に位置する配管やトラップ等を比較的容易に清掃することができる。
【0054】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0055】
(a)上記実施形態では、駆動部31の回動半径D2が、可動部22の回動半径D1とほぼ等しくなるように構成されているが、回動半径D2を回動半径D1よりも大きくしてもよい。この場合には、可動部22(ツマミ部25)に加える力が比較的小さくても、駆動部31を十分に回動させることができる。従って、栓蓋36の上下動を容易に行うことができ、操作性を向上させることができる。
【0056】
さらに、回動半径D2を回動半径D1よりも小さくしてもよい。この場合には、可動部22(ツマミ部25)を回動させた際に、可動部22の回動角度よりも駆動部31の回動角度が大きなものとなり、可動部22の変位量が小さくても、駆動部31を大きく回動させることができる。従って、栓蓋36の開閉時における操作部2(可動部22)の変位量を小さくすることができる。
【0057】
(b)上記実施形態では、第1、第2伝達ワイヤー41,42を可動側取付部223に取付けるにあたって、取付用アタッチメント224が用いられているが、取付用アタッチメント224を設けることなく、第1、第2伝達ワイヤー41,42の端部を可動側取付部223の外周に直接固定してもよい。
【0058】
(c)上記実施形態では、1本の平型チューブ43内に第1、第2伝達ワイヤー41,42が挿通されているが、チューブを2本設け、一方のチューブに第1伝達ワイヤー41を挿通し、他方のチューブに第2伝達ワイヤー42を挿通することとしてもよい。
【0059】
(d)上記実施形態において、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取付けられているが、排水栓装置1の取付対象は洗面器100に限られるものではなく、例えば、洗面器以外の槽体(例えば、浴槽や流し台など)に排水栓装置1を取付けることとしてもよい。また、槽体に排水口機構3を取付ける一方で、槽体の近傍に設けられた構造物に操作部2を取付けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…排水栓装置、2…操作部、4…伝達部、22…可動部、31…駆動部、33…支持部材、36…栓蓋、41…第1伝達ワイヤー、42…第2伝達ワイヤー、43…平型チューブ(チューブ)、100…洗面器(槽体)、105…配管、311…支持突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口に設けられた栓蓋と、
前記栓蓋を支持し、前記槽体に対して上下動可能な支持部材と、
前記槽体又はその近傍の構造物に取付けられ、前記槽体又は前記構造物に対して変位可能な可動部を有する操作部と、
前記可動部及び前記支持部材間に設けられ、前記可動部の変位を前記支持部材に伝達する伝達部と
を備えた排水栓装置であって、
前記槽体又は前記構造物に対して相対回動可能であるとともに、自身の回動動作に伴い前記支持部材を上下動させる駆動部を備えるとともに、
前記可動部は、前記槽体又は前記構造物に対して相対回動可能とされ、
前記伝達部は、
それぞれ前記可動部及び前記駆動部に固定された第1伝達ワイヤー及び第2伝達ワイヤーにより構成され、
前記第1、第2伝達ワイヤーは、筒状のチューブ内において押引き動作可能であり、
前記可動部を一方の方向に回動させ、前記チューブ内において前記第1伝達ワイヤーを引き動作させることで、前記駆動部を一方の方向に回動させ、
前記可動部を他方の方向に回動させ、前記チューブ内において前記第2伝達ワイヤーを引き動作させることで、前記駆動部を他方の方向に回動させることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記駆動部には、排水用の配管内に突出し、前記支持部材を直接又は間接的に支持する支持突起が設けられるとともに、
前記支持突起のうち少なくとも前記支持部材を支持する部位は、前記駆動部の回動により前記槽体に対して上下動可能に構成され、
前記支持突起の先端は前記配管の中心に到達しないことを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記駆動部の回動半径を、前記可動部の回動半径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記駆動部の回動半径を、前記可動部の回動半径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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