説明

排水管継手

【課題】従来の排水管継手の問題点を解消し、縦管路内を流下する排水の旋回力を高めることができて、通気芯を確実に確保できるとともに、旋回羽根による減勢効果によって縦管路内の圧力変動も小さくできる排水管継手を提供する。
【解決手段】第1旋回羽根14g、第2旋回羽根12c、及び第3旋回羽根52を内部に備えるとともに、これらの旋回羽根14g,12c,52を、垂直軸に直交する方向に投影したときに重なりあうことがなく、かつ、第1旋回羽根14gで受けられた排水がさらに第2旋回羽根12cで受けられ、第1旋回羽根14g及び第2旋回羽根12cで受けられた排水が第3旋回羽根52が受けられないように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立管路と、横管路と、立管路及び横管路を接続する曲り管路とを備える排水管路において立管路の横枝管合流部に用いられる排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅などの多層建築物の場合、各階の衛生機器等から排出される排水は、各階の衛生機器等から横枝管を介してパイプシャフト内に設けられた排水立管路に集められて、曲管路、横管路を介して下水路に排水されるようになっている。
【0003】
また、単管式排水システムの立管路の横枝管合流部には、内部に旋回羽根(整流板とも称される)が設けられた排水管継手が用いられている(特許文献1〜3参照)。
すなわち、上記排水管継手は、上階から流下してきた排水を旋回羽根で受けて立管路の内壁面に沿う旋回流とし、常に立管路内に通気芯を設け、立管路内の閉塞による圧力変動なくして、圧力変動による各階の衛生機器等の封水の破封を防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−93021号公報
【特許文献2】特許2912827号公報
【特許文献3】特開平11−217859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来の旋回羽根付きの排水管継手は、以下の点で問題があった。
例えば、特許文献1に記載の排水管継手は、排水が流下するための有効断面積を確保することが必ずしも十分とはいえず、また、枝管への流入を防止するために偏流ガイド側壁の形状を大きくする必要があるので、偏流ガイドの形状が複雑となり製造が困難になりやすいという問題がある。
【0006】
特許文献2に記載の排水管継手は、偏流板によって偏流させた排水流に対して、排水条件などを加味して精度よく対応する位置に旋回整流板を設ける必要があるため、旋回整流板の位置設定が難しくまた位置が限定され、継手の大きさなどの全体の形状にも大きな制約を受けることとなり、製造が困難になりやすいという問題がある。
【0007】
特許文献3に記載の排水管継手は、旋回羽根を横枝管接続口より下方において、排水立管より大径の円筒部からテーパー筒部に2枚を管軸に対して位置をずらして設置しているが、旋回羽根が同じ高さ位置で対向しており、共に横枝管接続部の下方に設置してあるため、互いの旋回羽根からの旋回流の干渉の影響を受けて流れが乱れるため、排水性能に影響を与えるという問題があったほか、テーパー筒部に複数の旋回羽根を設置することによる汚物の詰りを防止するために、十分に大きな旋回羽根を設置できない等の問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、従来の排水管継手の問題点を解消し、立管路内を流下する排水の旋回力を高めることができて、通気芯を確実に確保できるとともに、旋回羽根による減勢効果によって立管路内の圧力変動も小さくできる排水管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる排水管継手は、内径が上下に接続される立管より大径の本体胴部と、この本体胴部の壁面から突出するように設けられた少なくとも1つの横枝管接続部と、本体胴部より下方に設けられ、下端側に向かって徐々に縮径するテーパー筒部とを備える排水管継手において、前記本体胴部の内部に設けられる第1旋回羽根と、この第1旋回羽根の下端より下方に設けられた第2旋回羽根と、この第2旋回羽根の下端より下方、かつ、前記テーパー筒部内に設けられた第3旋回羽根とを有し、前記第1〜第3旋回羽根は、第1旋回羽根で受けられた排水が、前記第2旋回羽根で受けられて、前記第3旋回羽根に受けられない旋回流となるように配置されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の排水管継手は、特に限定されないが、第1旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L1の中点C1から本体胴部の中心軸への垂線L2と、第2旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L3の中点C2から本体胴部の中心軸への垂線L4と、第3旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L5の中点C3から本体胴部の中心軸への垂線L6とが、垂線L2、垂線L4、垂線L6を第1旋回羽根側から第3旋回羽根側に向かって前記中心軸方向に投影したとき、投影された垂線L2と垂線L4のなす角度が、70〜90°を満足し、投影された垂線L4と垂線L6のなす角度が、150〜200°を満足することが好ましい。
【0011】
すなわち、投影された垂線L2と垂線L4のなす角度が、70°未満では、第1旋回羽根と第2旋回羽根の重なりが大きくなり、それぞれの旋回羽根の効果が十分に発揮されず、90°を超えると第1旋回羽根からの流下排水を第2旋回羽根で十分に受けることができないおそれがある。
また、投影された垂線L4と垂線L6のなす角度が、150°未満では、第2旋回羽根からの旋回流と第3旋回羽根の旋回流が干渉仕合い、流れが乱れ、通気芯を閉塞し、200°を超えると、第1旋回羽根と第3旋回羽根の重なりが大きくなり、それぞれの旋回羽根の効果が十分に発揮されないおそれがある。
なお、上記旋回羽根の外縁とは、旋回羽根を支持する継手本体の内壁面や支持脚の壁面に沿う縁を意味し、旋回羽根の形状によっては、外縁上端が旋回羽根の最高点、外縁下端が旋回羽根の最低点でない場合もある。
【0012】
なお、本発明において、旋回羽根は、本体胴部などの円筒状部に接着あるいは一体成形する、継手本体を構成する円筒状部材の壁面を凹設することによって形成する、あるいは、断面円弧状をした羽根支持脚部の円弧内壁面に沿うように旋回羽根を接着あるいは一体成形した部材を継手本体内に組み込むことによって設けられる。
したがって、旋回羽根の外縁とは、円筒状部の内壁面に接する縁、円筒状部材の内周面に接する縁、あるいは、羽根支持脚部の円弧内壁面に接する縁をいい、外縁上端及び外縁下端は、必ずしも旋回羽根自体の上端あるいは下端でない場合がある。
【0013】
本発明の排水管継手は、特に限定されないが、第1旋回羽根の下端と、第2旋回羽根の上端との高低差が0以上本体胴部の内径の2倍以下であることが好ましい。
すなわち、高低差が上記範囲から逸脱すると、第1旋回羽根から第2旋回羽根にうまく排水が載り移らず、旋回流を乱すおそれがある。
【0014】
本発明の排水管継手は、特に限定されないが、横枝管接続部が、本体胴部内壁面に、横枝管合流部の本体胴部側開口へ上流から排水の入り込みを邪魔する縦リブを備えていることが好ましい。
また、縦リブは、第1旋回羽根の下流側に設け、縦リブに当たった排水が第2旋回羽根に受けられるようにしてもよい。
【0015】
上記縦リブの高さ(管中心方向への最大突出量)は、横枝管合流部の本体胴部側開口への上流から排水の入り込みを邪魔することができれば、特に限定されないが、あまり高くすると、立管路内を流下してくる固形物やテストボールの通過の妨げとなるため、本体胴部の内径が140mm程度であれば、本体胴部の内壁から最大高さ部分で5〜30mm程度が好ましい。
【0016】
本発明の排水管継手は、特に限定されないが、第1〜第3旋回羽根が、それぞれ管軸に対して15〜50°(好ましくは20〜45°)の傾斜角度で傾斜することが好ましい。すなわち、各旋回羽根の傾斜角度が急すぎると、流下してくる排水を十分受け止めることができず、緩すぎると、流下してくる排水の跳ね返りが大きくなり、流れが乱れるおそれがある。
第1〜第3旋回羽根の管軸に対する傾斜角度は、同じでも構わないが、第2旋回羽根の傾斜角度を、第1旋回羽根の傾斜角度及び第3旋回羽根の傾斜角度より小さくすることが好ましい。
【0017】
第1〜第3旋回羽根の大きさは、特に限定されないが、立管の水平内断面に対する投影面積比率が、第1旋回羽根及び第2旋回羽根においては5〜30%、第3旋回羽根においては、テーパー面に設けられるため、3〜25%となる大きさとすることが好ましい。
すなわち、投影面積比率が小さすぎると、旋回羽根による効果を十分に得られなくなり、投影面積比率が大きすぎると、立管路内を流下してくる固形物やテストボールの通過の妨げとなるおそれがある。
【0018】
本発明の排水管継手の材質は、特に限定されないが、軽量化及び製造の容易性を考慮すると、合成樹脂組成物からなる複数の筒状またはリング状をした継手構成部材が連結一体化されて形成されていて、少なくとも床スラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層を少なくとも備える耐火熱膨張性樹脂パイプで形成されている構成とすることが好ましい。
すなわち、すべて合成樹脂で形成されているので、軽量である。
【0019】
また、床スラブ貫通部は、階下で火災が発生しても、階下からの煙や火炎が床スラブ貫通部から上階に2時間以上入り込まないような耐火性が要求されるが、床スラブ貫通部を構成する継手構成部材が、耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層を少なくとも備える耐火熱膨張性樹脂パイプで形成されていれば、排水管継手の階下露出部が階下の火炎に炙られて消失しても、耐火熱膨張性樹脂パイプの耐火膨張層が膨張して床スラブ貫通部が閉塞し、階下の火炎や煙が排水管継手内を通り、上階に入り込むことがない。
【0020】
本発明において、耐火熱膨張性樹脂パイプとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層の単層構造であるもの、あるいは、耐火熱膨張性樹脂パイプが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物からなる耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆うように設けられる熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層とからなる3層構造であるものが好ましい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0021】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400〜1600が好ましく、600〜1400が、特に好ましい。尚、上記平均重合度とは、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0024】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
【0025】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、特に限定されず、従来公知の塩素化方法が採用されてよく、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0026】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性していてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の耐火熱膨張性樹脂パイプは、火炎等によって加熱されると耐火膨張層が膨張して、管内を閉塞あるいは閉塞に近い状態にすることができるものであれば、耐火膨張層のみの単層のものでも、耐火膨張層の内外面に耐火膨張層の耐火性能を阻害しない範囲で膨張黒鉛を含まない樹脂組成物からなる樹脂層を設けた複層構造とするようにしても構わない。
【0028】
上記単層構造品の場合、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含むものが好ましく、1〜8重量部の割合で含むものがより好ましく、2〜7重量部の割合で含むものがさらに好ましい。すなわち、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないおそれがあり、10重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
【0029】
一方、複層構造品の場合、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含むものが好ましく、1〜12重量部の割合で含むものがより好ましく、2〜10重量部の割合で含むものがさらに好ましい。すなわち、熱膨張性黒鉛を熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないし、15重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
また、上記のように耐火膨張層がポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物で形成された複層構造品の場合、耐火膨張層の内外面を熱膨張性耐火材料非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で被覆した3層構造とすることが好ましい。
【0030】
上記のような3層構造の複層構造品の場合、耐火管状の内面および外面を被覆する被覆層の厚みが、それぞれ0.2〜2.0mmであることが好ましい。
すなわち、耐火膨張層の内面および外面を被覆する被覆層の厚みが0.2mm未満であると管としての機械的強度に劣るおそれがあり、2.0mmを超えると耐火性が低下するおそれがある。
【0031】
本発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで、黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした後、pH調整して得られる炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物であって、pH1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛、および、1.3倍膨張温度が180℃〜240℃の熱膨張性黒鉛を用いることが好ましい。
すなわち、熱膨張性黒鉛のpHが1.5未満であると、酸性が強すぎて、成形装置の腐食などを引き起こしやすく、pHが4.0を超えると、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進効果が薄れ、十分な耐火性能が得られなくなるおそれがある。
【0032】
上記熱膨張性黒鉛のpH調整方法は、特に限定されないが、通常、上記のように、原料黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした状態では、pH1以下になっているため、例えば、酸処理後の黒鉛を水で洗浄して、黒鉛の表面に残存する酸を除去した後、乾燥させる方法が挙げられる。すなわち、熱膨張性黒鉛のpHを上昇させるには、水洗と乾燥とを繰り返せばよい。
【0033】
一方、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度が180℃未満であると、成形中に熱膨張性黒鉛が膨張してしまうことがあり、管の外観不良を引き起こす上、燃焼時の耐火性が低下してしまうおそれがあり、熱膨張性黒鉛の1.3倍膨張温度が240℃を超えると、成形中に熱膨張性黒鉛の膨張が開始してしまうおそれはないものの、燃焼時において、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解(発泡)が進行し、ポリ塩化ビニル系樹脂の柔軟性が低下してしまった後に、熱膨張性黒鉛が膨張するため、ポリ塩化ビニル系樹脂が、熱膨張性黒鉛の膨張に耐え切れなくなり、バラバラに崩壊してしまうおそれがある。
なお、1.3倍膨張温度とは、加熱炉内を一定温度にして、熱膨張性黒鉛の試料を30分加熱した後の熱膨張性黒鉛の膨張倍率が、1.3以上になる温度を意味する。また、膨張倍率は、加熱後の試料の体積を加熱前の試料の体積で除することで求められる。
【0034】
上記熱膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、好ましくは100〜400μmであり、さらに好ましくは120〜350μmである。すなわち、粒径が細かくなりすぎると、耐火性樹脂組成物の膨張率が低下してしまうおそれがある。一方、粒径が大きくなりすぎると、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうし、耐火性樹脂組成物を配管材としたときの引張強度や扁平強度などの物性が低下してしまい、管材として必要な機械的強度が得られなくなってしまうおそれがある。
【0035】
また、耐火膨張層を形成する耐火熱膨張性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
上記安定剤としては、特に限定されないが、鉛系安定剤、有機スズ安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられる。
【0036】
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛が挙げられる。
また、有機スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプトなどのメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマーなどのマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマーなどのカルボキシレート類が挙げられる。
【0037】
高級脂肪酸金属塩(金属石ケン)としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2−エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛が挙げられる。
【0038】
上記安定剤の配合割合は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.3〜5.0重量部とすることが好ましい。
すなわち、安定剤の配合割合が0.3重量部未満であると、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性が確保されにくく、成形中に炭化物が出やすくなってしまうおそれがあり、5.0重量部を超えると、燃焼時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進を阻害して十分な耐火性能が得られなくなるおそれがある。
【0039】
無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が候補に挙げられ、これらのうち、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄等の塩基性無機充填剤を用いることが好ましい。
これらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
また、無機充填剤の配合割合は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜50重量部の割合とすることが好ましく、2〜5重量部の割合とすることが好ましい。すなわち、無機充填剤が0.3重量部未満であると、燃焼時に、骨材的な働きがなされず、その形状を保持できずに残渣が脱落して、耐火性が低下してしまうおそれがあり、50重量部を超えると、組成物全体に対するポリ塩化ビニル系樹脂の割合が低くなるため、引張強度が低下してしまうおそれがある。
【0041】
特に、熱膨張性黒鉛として、pHを1.5〜4.0に調整されたものを用いる場合には、上記塩基性無機充填剤をポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜5.0重量部の割合で配合することが好ましい。すなわち、塩基性無機充填剤の配合割合がポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3重量部未満であると、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性が確保されず、成形中に炭化物が出やすくなってしまい、塩基性化合物が5.0重量部を超えると、燃焼時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進を阻害することとなり、耐火性能の著しい向上が見られなくなるおそれがある。
【0042】
上記難燃剤としては、燃焼時の難燃性を高めるためのものであれば特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などが挙げられるが、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果としては、三酸化アンチモンが特に好ましい。アンチモン化合物は、ハロゲン系化合物の存在下では、高温条件のもとで、ハロゲン化アンチモン化合物を作り、燃焼サイクルを抑制させる効果が非常に強く、相乗効果が著しいからである。
【0043】
難燃剤を併用することにより、燃焼時において、熱膨張性黒鉛の膨張による断熱効果と難燃剤による燃焼遅延効果が相乗効果を発揮して、より効率的に耐火性能を向上させることができる。難燃剤の添加部数は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下、添加されていることが好ましい。難燃剤が1重量部未満であると、十分な相乗効果が得られにくいし、難燃剤が20重量部を超えて添加されると、成形性や物性が著しく低下してしまうおそれがあるからである。
【0044】
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
【0048】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
【0050】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0051】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0052】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0053】
また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には可塑剤が添加されていてもよいが、成形品の耐熱性や耐火性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0054】
上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0055】
上記耐火熱膨張性樹脂パイプ以外の継手構成部材の材質としては、特に限定されないが燃焼遅延物質を含む合成樹脂組成物が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して燃焼遅延物質としての非膨張黒鉛を0.1〜1重量部含む樹脂組成物をもちいることがより好ましい。
すなわち、非膨張性黒鉛が0.1重量部未満では、熱によって変形しやすくモルタルとのシール面が保持できず発煙してしまう、場合によっては、燃焼してしまうおそれがあり、1.0重量部を超えると、継手のJIS物性である偏平強度が確保できなくなってしまうおそれがある。
【0056】
上記非膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、平均粒径で300μm以下が好まし
い。すなわち、300μm以上では、偏平強度が不足するおそれがある。
【0057】
上記非熱膨張性黒鉛としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂への混合前に熱乾燥処理されているものが好ましい。
すなわち、市販の黒鉛には、揮発分が付着しており、この揮発分が成形時の温度上昇に
より揮発し、成形品外観が悪化する不具合が発生するおそれがあり、成形品の外観を良好に保つために熱乾燥処理によって揮発分を事前に除去することが好ましい。
【0058】
また、上記耐火熱膨張性樹脂パイプ以外の継手構成部材を構成する樹脂組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて耐火熱膨張性樹脂パイプと同様の安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
【0059】
さらに、本発明の排水管継手は、耐火熱膨張性樹脂パイプの上端に連結される継手構成部材に、射出成形されたものを用いる場合、射出時のゲート位置が、耐火熱膨張性樹脂パイプとの接続部であるものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0060】
本発明にかかる排水管継手は、以上のように、本体胴部の内部に設けられる第1旋回羽根と、この第1旋回羽根の下端より下方に設けられた第2旋回羽根と、この第2旋回羽根の下端より下方、かつ、前記テーパー筒部内に設けられた第3旋回羽根とを有し、第1〜第3旋回羽根は、第1旋回羽根で受けられた排水が、第2旋回羽根で受けられて、第3旋回羽根に受けられない旋回流となるように配置されている。
【0061】
すなわち、本発明にかかる排水管継手は、第3旋回羽根に受けられて旋回流となる排水と、第1旋回羽根及び第2旋回羽根に受けられた排水の旋回流が衝突しない。したがって、第1旋回羽根及び第2旋回羽根に生じる旋回流と第3旋回羽根によって生じる旋回流とが互いに干渉されることなく、スムーズな旋回流を保ちながら流下し、立管路内に通気芯を確実に確保できるとともに、旋回羽根による減勢効果によって立管路内の圧力変動も小さくできる。つまり、安定して高い排水能力を維持することができる。
さらに、第1旋回羽根及び第2旋回羽根によって旋回流となった排水と、第3旋回羽根によって旋回流となった排水とが、合流することがないので、排水音の発生も低減することが可能となる。
しかも、第2旋回羽根が、第1旋回羽根の下端より下方に設けられ、第3旋回羽根が第2旋回羽根より下方に設けられているので、各旋回羽根を水平方向に大きく張り出させても、各旋回羽根が他の旋回羽根と重なりあうことがない。したがって、各旋回羽根をテストボールの通過に妨げとならない範囲で大きくすれば、排水能力をより高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にかかる排水管継手の第1の実施の形態をあらわす縦断面図である。
【図2】図1の排水管継手の本体胴部の横断面を上方から見た図である。
【図3】図1の排水管継手を逆方向からみたテーパー筒部の部分の断面図である。
【図4】図1の排水管継手の施工状態を説明する断面図である。
【図5】図1の排水管継手の分解状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかる排水管継手の第1の実施の形態をあらわし、図4はその施工状態をあらわしている。
【0064】
図1に示すように、この排水管継手Aは、本体胴部11aと、3つの横枝管接続部21と、テーパー筒部13bとを備えるとともに、第1旋回羽根14g、第2旋回羽根12c及び第3旋回羽根52の計3つの旋回羽根を備えている。
本体胴部11aは、内径が上下に接続される立管より大径(例えば、立管が100Aの場合、内径135〜145mm)になっている。
【0065】
3つの横枝管接続部21は、本体胴部11aの管軸にほぼ直交するとともに、1つの横枝管接続部21を中央にして本体胴部11aの周方向に90°ずれた状態でそれぞれ本体胴部11aに連設されている。
本体胴部11aの内壁面には、3つの縦リブ51a,51b,51cが一体に設けられている。
【0066】
縦リブ51a,51b,51cは、それぞれ、旋回流となって上方から流れてくる排水が各横枝管接続部21の本体胴部11a側の開口端から横枝管接続部21内に入り込んだり、横枝管接続部21が閉塞されるのを防止する目的で各横枝管接続部の開口端近傍の、排水の旋回流の上流側に設けられている。
また、縦リブ51a,51b,51cの高さ(本体胴部11aの内壁面から本体胴部11aの中心軸方向の寸法)は、テストボールの通過の障害とならず、上記目的を達成することができれば、特に限定されないが、後述する第1旋回羽根14gの下流側で第1旋回羽根14gの直近に設けられる縦リブ51aが少し他より高くなっている。
【0067】
第1旋回羽根14gは、図1に示すように、本体胴部11a内の、縦リブ51aより旋回流の上流側に配置され、水平断面円弧状をした旋回羽根支持脚部14hの円弧の内周面に沿うように設けられている。
また、第1旋回羽根14gは、その傾斜角度が管軸に対して15〜50°で、接続される立管の内断面積に対する投影面積比率が5〜30%となる大きさに形成されている。
【0068】
第2旋回羽根12cは、第1旋回羽根14gと水平方向で重ならず、その上端と、第1旋回羽根14gの下端との高低差が、本体胴部11aの内径以下で、かつ、その傾斜角度が管軸に対して第1旋回羽根14g及び後述する第3旋回羽根52より少し小さく、その大きさが立管の内断面積に対する投影面積比率が5〜30%となる大きさに形成されている。
また、第2旋回羽根12cは、第1旋回羽根14gの外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L1の中点C1から本体胴部11aの中心軸Cへの垂線L2と、第2旋回羽根12cの外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L3の中点C2から本体胴部11aの中心軸Cへの垂線L4とをそれぞれ本体胴部11aの中心軸方向に投影したときの投影された垂線L2と垂線L4とのなす角度αが70〜90°を満足するとともに、縦リブ51aを下方から受けるように配置されている。
【0069】
さらに、第2旋回羽根12cは、その上端と、第1旋回羽根14gの下端との高低差が0より大きく本体胴部11aの内径の2倍以下になっている。
第3旋回羽根52は、テーパー筒部13bに設けられ、その大きさが立管の内断面積に対する投影面積比率が5〜30%となる大きさに形成されている。
また、第3旋回羽根52は、第3旋回羽根52の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L5の中点C3から本体胴部の中心軸への垂線L6と、上記垂線L4とを、それぞれ本体胴部11aの中心軸方向に投影したときの投影された垂線L6と垂線L4とのなす角度βが150〜200°を満足するとともに、第2旋回羽根12cによって旋回流となった排水が第3旋回羽根52上を流れないような位置に設けられている。
【0070】
そして、この排水管継手Aは、図5に示す第1継手構成部材10〜第11継手構成部材20の11の継手構成部材と、第1パッキン31〜第3パッキン33の3つのパッキンを組み立てることによって形成されている。
詳しく説明すると、第1継手構成部材10は、例えば、特開2008-180367号公報に開示されているポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜15重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物で形成された耐火膨張層と、この耐火膨張層の内外面を覆う熱膨張性耐火材料非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で形成された被覆層で覆われた3層構造となった押出成形で得られるパイプ(例えば、積水化学工業社エスロン耐火VPパイプ)であって、後述する排水立管P1より大径になっている。
【0071】
第2継手構成部材11〜第11継手構成部材20は、それぞれポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1〜1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形することによって得られる。
そして、第2継手構成部材11は、図1〜図3に示すように、縦方向の管路形成部としての本体胴部11aと、横枝管接続部21の一部を構成する3つの横枝管接続部形成用筒部11bと、を備えている。
【0072】
本体胴部11aは、第1継手構成部材10の外径と略同じ内径をした筒状をしていて、上側に第3継手構成部材12の下端部が嵌合する上部嵌合部11c、下側に後述する第4継手構成部材13のリング状嵌合部12a及び第1継手構成部材10の上端部が嵌合する下部嵌合部11dを備えている。
また、本体胴部11aの内面には、上述の3本の縦リブ51a,51b,51cが上部嵌合部11cの下端から下部嵌合部12dの上端に達するように設けられている。
【0073】
各横枝管接続部形成用筒部11bは、本体胴部11aの同じ高さ位置で本体胴部11aの外壁面から円筒状に突出するように設けられている。
また、第2継手構成部材11は、射出成形の際のゲート位置が、その下端、すなわち、第1継手構成部材10との接続部に設けられている。
【0074】
第3継手構成部材12は、リング状嵌合部12aと、旋回羽根形成部12bとを備えている。
リング状嵌合部12aは、上記第2継手構成部材11の本体胴部11aの内径とほぼ同じ外径をしていて、縦リブ51の高さとほぼ同じ肉厚のリング状をしている。
【0075】
旋回羽根形成部12bは、第2旋回羽根12cと、羽根支持脚部12dとを備えている。
羽根支持脚部12dは、リング状嵌合部12aの下端から延出していて、上下方向の寸法が第1継手構成部材10の上下方向(管軸方向)の寸法とほぼ同じになっているとともに、水平断面が円弧状をしている。
そして、第3継手構成部材12は、図3に示すように、第2旋回羽根12cが縦リブ51aを下方から臨む位置に設けられる。
【0076】
第4継手構成部材13は、上部受口13aと、テーパー筒部13bと、下部受口13cとを備えている。
上部受口13aは、第1継手構成部材10の下端が嵌り込むようになっていて、その内径が第1継手構成部材10の外径とほぼ同じになっている。
【0077】
テーパー筒部13bは、上端から下端に向かって徐々に縮径するとともに、上端が第1継手構成部材10の内径とほぼ同じ内径となっていて、下端が接続される排水立管P1の内径とほぼ同じになっている。
また、テーパー筒部13bは、図1及び図5に示すように、その壁面の一部を内側に凹ませることによって、その内側に突出するように、第3旋回羽根52が設けられている。
【0078】
第5継手構成部材14は、本体部14aと、旋回羽根形成部14bとを備えている。
本体部14aは、上部筒部14cと、下部筒部14dとを備えている。
上部筒部14cは、その外径が第2継手構成部材11の本体胴部11aの内径より大きくなっていて、その上端部外周面に、後述する第6継手構成部材15が抜け止め状態で嵌合する嵌合突条14eがリング状に設けられている。
【0079】
下部筒部14dは、上部筒部14cの下端から段状に縮径し、その外径が第2継手構成部材11の本体胴部11aの内径とほぼ同じになっている。
また、下部筒部14dは、その下端に内側に鍔状に張り出し、後述する第1パッキン31の立管受部31bを介して排水立管P1の荷重を受けるリブ14fをリング状に備えている。
【0080】
リブ14fの内径は、排水立管P1の内径とほぼ同じになっている。
旋回羽根形成部14bは、第1旋回羽根14gと、羽根支持脚部14hとを備えている。
旋回羽根支持脚部14hは、第1旋回羽根14g水平方向の幅と略同じ幅で下部筒部14dの下端から下方延出し、第1旋回羽根14gを下端縁から少し上側で支持している。
【0081】
第1パッキン31は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであって、上端部に、例えば、図4に示すように、呼び径100Aの排水立管P1の外周面に水密に密着するリップ部31aを有し、その上端面が、第5継手構成部材14の上端面とほぼ一致するように第5継手構成部材14の本体部14aに嵌合されている。
また、リップ部31aは、下端側に向かって徐々に小径となるように設けられ、上端側が排水立管P1の外径と略同じか少し大径になっていて、下端側が排水立管P1の外径より小径となって段状に立管受部31bを有している。そして、この立管受部31bが排水立管P1の管端部を受けて、排水立管P1の熱伸縮を吸収するようになっている。
【0082】
第6継手構成部材15は、第5継手構成部材14の上端部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部15aによって、第1パッキン31の第5継手構成部材14からの離脱を防止するようになっている。
そして、第5継手構成部材14、第1パッキン31及び第6継手構成部材15は、予め、組み立てた一体化したのち、第5継手構成部材14の下部筒部14dを第2継手構成部材11の本体胴部11aに設けられた上部嵌合部11cに嵌合接着される。
【0083】
第7継手構成部材16は、一端に嵌着部16aを有し、他端にパッキン装着部16bを備えている。
嵌着部16aは、第2継手構成部材11の横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着される。
パッキン装着部16bは、嵌着部16aより外径が少し大径になっていて、後述する第2パッキン32が嵌着される。
【0084】
第2パッキン32は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであって、パッキン装着部16bに嵌着され、例えば、図4に示すように、呼び径80Aの横枝管P2の外周面に水密に密着するリップ部32aを有している。
【0085】
第8継手構成部材17は、第7継手構成部材16のパッキン装着部16bに外嵌され、一端に設けられたフランジ部17aによって、第2パッキン32の第7継手構成部材16からの離脱を防止するようになっている。
【0086】
第9継手構成部材18は、一端に嵌着部18aを有し、他端にパッキン装着部18bを備えている。
嵌着部18aは、第2継手構成部材11の横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着される。
パッキン装着部18bは、嵌着部18aより外径が少し大径になっていて、後述する第2パッキン32が嵌着される。
また、嵌着部18a及びパッキン装着部18bを貫通する後述する横枝管P3が挿通される孔18cは、第9継手構成部材1の横枝管接続部形成用筒部11bへの第9継手構成部材18の中心軸から下方に偏芯している。
【0087】
第3パッキン33は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンであっテーパーッキン装着部18bに嵌着され、例えば、図4に示すように、呼び径50Aの横枝管P3の外周面に水密に密着するリップ部33aを有している。
【0088】
第10継手構成部材19は、第9継手構成部材18のパッキン装着部18bに外嵌され、一端に設けられたフランジ部19aによって、第3パッキン33の第9継手構成部材18からの離脱を防止するようになっている。
【0089】
第11継手構成部材20は、図2に示すように、蓋部20aと嵌合部20bとを備え、嵌合部20bが第2継手構成部材11の横枝管P2を接続しない横枝管接続部形成用筒部11bに嵌合接着されて横枝管接続部形成用筒部11bを封止している。
【0090】
そして、この排水管継手Aは、図4に示すように、多層階建築物の排水立管路の各階の横枝管合流部に用いられ、以下のように施工される。
すなわち、第1継手構成部材10及び第1継手構成部材10と第2継手構成部材11の嵌合接続部を含む部分を床スラブSの貫通孔S1に臨ませた状態で設置され、下側の階の排水立管P1(例えば、市販品である積水化学工業社製のエスロン耐火VPパイプが使用できる)を第4継手構成部材13の下部受口13cに嵌合させて接着する。
また、第6継手構成部材5を介して上側の階の排水立管P1の下端部を第5継手構成部材15に嵌合させる。
【0091】
つぎに、床スラブ貫通孔S1にモルタルMを充填し、第1継手構成部材10及び第1継手構成部材10と第2継手構成部材11の嵌合接続部を含む部分をモルタルM内に埋設する。
そして、第9継手構成部材19、第8継手構成部材18を介して横枝管P2の端部を第7継手構成部材17内に挿入して横枝管P2を接続する。
【0092】
この排水管継手Aは、上記のようになっており、上階から排水管継手Aまで流下してきた排水のうち、第1旋回羽根14gによって受けられた排水が、まず、第1旋回羽根14gによって減速され、旋回力を付与される。そして、第1旋回羽根14gを経た排水は、第1旋回羽根14gに受け止められず、第2旋回羽根12cに直接受け止められた排水とともに第2旋回羽根12cに受け止められて、旋回力をさらに付与されながら下方に流下する。そして、第2旋回羽根12cを経た排水は、第3旋回羽根52に受け止められることなく、旋回流を保ちながら、下階の排水立管P1へと流れ込む。
【0093】
一方、第1旋回羽根14g及び第2旋回羽根12cによって受け止められず、第3旋回羽根52に直接受け止められた排水は、第3旋回羽根52によって減速され、旋回力を付与され、旋回流を保ちながら、下階の排水立管P1へと流れ込む。
すなわち、この排水管継手Aは、上記第1旋回羽根14g及び上記第2旋回羽根12cによって旋回流となった排水と、第3旋回羽根によって旋回流となった排水とが、合流することなく下方へ流下する。したがって、通気芯が十分確保でき、排水性能が向上する。
【0094】
さらに、第1旋回羽根14g及び第2旋回羽根12cによって旋回流となった排水と、第3旋回羽根52によって旋回流となった排水とが、合流することがないので、排水音の発生も低減することが可能となる。
【0095】
また、第2継手構成部材11が、本体胴部11a内壁面に、横枝管接続部21の本体胴部11a側開口へ上流から排水の入り込みを邪魔する縦リブ51a,51b,51cを備えているので、上方から旋回流となって流下してきた排水が、横枝管接続部21側に流れ込んで、横枝管側を閉塞させることがない。
さらに、上方の立管から流下してきた排水は、この排水管継手A内に入り、第1旋回羽根14gに受けられた排水は、第1旋回羽根14gによって旋回力が強められて下流側に向かうが、第1旋回羽根14gの下流直近に設けられた縦リブ51aの高さを他の縦リブ51b,51cより高くしたので、縦リブ51aを乗り越えることがない。
そして、縦リブ51aに当たった排水は、縦リブ51aの直下に設けられた第2旋回羽根12cに確実に受けられ、第2旋回羽根12cによって旋回力が強められて下流側に向かう。
【0096】
また、この排水管継手Aは、全ての継手構成部材が合成樹脂組成物で形成されているので、軽量化が図れ、配管作業が容易である。
また、第1継手構成部材10が耐火熱膨張性樹脂パイプであるので、下の階で火災が発生し、立管路部分が炎によって加熱されると、第1継手構成部材10中の熱膨張性黒鉛が膨張し、第1継手構成部材10が閉塞状態となる。したがって、上の階への類焼や煙の流入を防止できる。
【0097】
しかも、第2継手構成部材11のゲート位置が、第1継手構成部材10との接続部に設けられているので、第2継手構成部材11に第2継手構成部材11の内径方向に向かう残留ひずみがなく、第1継手構成部材10の閉塞部分が熱の滞留部となり、本体胴部11aの床スラブSより上側の部分がこの滞留熱に曝されても熱変形しにくい。
したがって、その変形によりモルタルMとの間に隙間が発生し、シール面が保持されず発煙してしまうといったことがなくなる。
【0098】
本発明の耐火排水集合継手は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、第2継手構成部材が3方に横枝管接続部形成用筒部を備えていたが、2方でも構わないし、1方にのみ設けられていても構わない。
上記の実施の形態では、旋回羽根を上下方向に3つ設けられていたが、排水能力が確保できれは、2つ以下でも構わない。
上記の実施の形態では、第4継手構成部材が下部受口を備えていたが、第4継手構成部材の下部は差口形状になっていても構わない。
また、上記の実施の形態では、全て樹脂で形成されていたが、継手本体部を、膨張性黒鉛等を含まない合成樹脂で形成し、この継手本体の周囲に無機材料からなる耐火層を設けた2層構造としても構わない。
【0099】
以下に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0100】
(実施例1)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:90°
角度β:157°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:41mm
【0101】
(実施例2)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:90°
角度β:167°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:41mm
【0102】
(比較例1)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:90°
角度β:157°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:200mm
【0103】
(比較例2)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:51°
角度β:146°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:40mm
【0104】
(比較例3)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:29°
角度β:147°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:41mm
【0105】
(比較例4)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:29°
角度β:167°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:41mm
【0106】
(比較例5)
各部寸法に設けられた図1に示す排水管継手を作製した。
本体胴部11aの内径:140mm
第1継手構成部材10の内径:125mm
第1旋回羽根14gの傾斜角度:35°
第1旋回羽根14gの投影面積比率:14%
第2旋回羽根12cの傾斜角度:29°
第2旋回羽根12cの投影面積比率:20%
第3旋回羽根52の傾斜角度:34°
第3旋回羽根52の投影面積比率:21%
縦リブ51aの高さ:20mm
角度α:284°
角度β:223°
第1旋回羽根14gの下端と、第2旋回羽根12cの上端との高低差:41mm
【0107】
上記実施例1,2及び比較例1〜5で作製した排水管継手を各階に用いたマンション17階相当の実験排水立管路(立管は100AのVP管)をそれぞれ形成し、この実験排水立管路の17階相当部分から排水量を徐々に増量させながら排水を流し、全排水管継手内での管内最大発生負圧が400Paを超えない、最大排水量を調べた。
また、第1旋回羽根14gで受けられた排水が、第2旋回羽根12cに受けられるか否か、第2旋回羽根12cに受けられた排水が第3旋回羽根52に受けられるか否かを調べた。
【0108】
そして、上記最大排水量及び第2旋回羽根12cに受けられるか否か、第2旋回羽根12cに受けられた排水が第3旋回羽根52に受けられるか否かの結果を併せて表1に示した。
なお、表1中、排水が受けられたときは「のる」、受けられないときは「のらない」と記載した。
【0109】
【表1】

【符号の説明】
【0110】
A 排水管継手
10 第1継手構成部材(耐火熱膨張性パイプ)
11 第2継手構成部材
11a 本体胴部
11b 横枝管接続部形成用筒部
12 第3継手構成部材
12c 第2旋回羽根
13 第4継手構成部材
13b テーパー筒部
14 第5継手構成部材
14g 第1旋回羽根
15 第6継手構成部材
16 第7継手構成部材
17 第8継手構成部材
18 第9継手構成部材
19 第10継手構成部材
20 第11継手構成部材
21 横枝管接続部
31 第1パッキン
32 第2パッキン
33 第3パッキン
51a,51b,51c 縦リブ
52 第3旋回羽根
P1 排水立管
P2,P3 横枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径が上下に接続される立管より大径の本体胴部と、この本体胴部の壁面から突出するように設けられた少なくとも1つの横枝管接続部と、本体胴部より下方に設けられ、下端側に向かって徐々に縮径するテーパー筒部とを備える排水管継手において、
前記本体胴部の内部に設けられる第1旋回羽根と、
この第1旋回羽根の下端より下方に設けられた第2旋回羽根と、
この第2旋回羽根の下端より下方、かつ、前記テーパー筒部内に設けられた第3旋回羽根とを有し、
前記第1〜第3旋回羽根は、第1旋回羽根で受けられた排水が、前記第2旋回羽根で受けられて、前記第3旋回羽根に受けられない旋回流となるように配置されていることを特徴とする排水管継手。
【請求項2】
第1旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L1の中点C1から本体胴部の中心軸への垂線L2と、
第2旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L3の中点C2から本体胴部の中心軸への垂線L4と、
第3旋回羽根の外縁上端と外縁下端とを結ぶ線分L5の中点C3から本体胴部の中心軸への垂線L6とが、
垂線L2、垂線L4、垂線L6を第1旋回羽根側から第3旋回羽根側に向かって前記中心軸方向に投影したとき、投影された垂線L2と垂線L4のなす角度が、70〜90°を満足し、投影された垂線L4と垂線L6のなす角度が、150〜200°を満足する請求項1に記載の排水管継手。
【請求項3】
第1旋回羽根の下端と、第2旋回羽根の上端との高低差が0より大きく本体胴部の内径の2倍以下である請求項1または請求項2に記載の排水管継手。
【請求項4】
横枝管接続部が、本体胴部内壁面に、横枝管合流部の本体胴部側開口へ上流から排水の入り込みを邪魔する縦リブを備えている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の排水管継手。
【請求項5】
第1〜第3旋回羽根が、立管の管軸に対して15〜50°の傾斜角度で傾斜する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の排水管継手。
【請求項6】
第2旋回羽根の傾斜角度が、第1旋回羽根及び第3旋回羽根の傾斜角度より小さい請求項5に記載の排水管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−236676(P2011−236676A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110126(P2010−110126)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】