説明

排水設備

【課題】構成部材の形状がより単純であるとともに、排水立て管を容易に更新可能な排水設備を提供する。
【解決手段】排水立て管50の上階の排水管継手と接続される上端または軸方向の中間位置において接続される2本の管状構造のうち一方の管状構造の端部に受け口が設けられており、該受け口と他方の管状構造とが更に深く挿入可能な状態で挿入接続が保持され、受け口に他方の管状構造を更に深く挿入することにより排水立て管50が取り外し可能に接続されたやりとり可能接続構成を備え、排水立て管50の下端59が挿入接続される下階の排水管継手30の上受け口34の奥部には排水立て管50の下端面を支持する受け部36が形成されており、受け部36と排水立て管50との間に弾性体38が介装され、上受け口34の内周面と排水立て管50の外周面との間には弾性体38とは別部材の環状パッキン35が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水設備に関する。より詳しくは、上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して各階に固定された排水管継手と、上階の排水管継手と下階の排水管継手との間に配管された排水立て管とを備える排水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排水設備は、例えば、本発明者に係る下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1に記載の排水設備では、排水立て管の上部受け口に上階の排水管継手の下端直管部が挿入されて接続されており、該挿入接続状態は排水立て管を上方に変位させることが可能な状態で保持されている。排水管継手は、所謂2体型であり、コンクリートスラブに固定された下胴体と排水立て管の下端が挿入される上受け口を備える上胴体とが連結解除可能に連結されている。この排水設備によれば、上胴体と下胴体との連結を解除し、排水立て管と上胴体とを一体で上方へ変位させてから斜め下方へ変位させることにより排水設備から取り外すことが可能となっている。この排水設備によれば、排水立て管を切断することなく取り外して更新することができる。
【0003】
ところで、従来、排水立て管の下端が挿入される排水管継手の上受け口には、下記特許文献2に記載されるような筒状のワンタッチパッキンが装着されていた。下記特許文献2に記載のパッキンは、筒状の本体部の口元から奥部に向けて徐々に小径になるように形成されたシール片を備え、該シール片が排水立て管の外周面に押圧されることにより上受け口と排水立て管とが水密に接続される構成となっている。パッキンの筒状の本体部の奥部には断面コの字状の緩衝部が形成されており、該緩衝部が排水立て管の下端面と上受け口の段つき部との間に介装される。このワンタッチパッキンはシール片により水密な接続を担うのみならず、使用時に排水立て管が排水により一時的に加熱されて伸縮するのを吸収する機能をも担っていた。
【0004】
【特許文献1】特開2008−180056号公報
【特許文献2】特開2000−74273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、排水立て管を容易に更新することのできる排水設備を鋭意検討した結果、排水管継手の上受け口にかかる構成部材の形状がより単純でありながらも容易に更新することのできる排水設備を着想し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、構成部材の形状がより単純であるとともに、容易に排水立て管を更新することのできる排水設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段をとる。
第1の発明は、上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して各階に固定された排水管継手と、上階の排水管継手と下階の排水管継手との間に配管された排水立て管とを備える排水設備であって、前記排水立て管は、下端が前記下階の排水管継手の上部に形成された上受け口に挿入接続されており、前記上階の排水管継手と接続される上端または軸方向の中間位置において接続される2本の管状構造をやりとり可能に接続するやりとり可能接続構成を備え、該やりとり可能接続構成は、接続される2本の管状構造のうち一方の管状構造の端部に受け口が設けられており、該受け口と他方の管状構造とが更に深く挿入可能な状態で挿入接続が保持されており、前記他方の管状構造に前記受け口を更に深く挿入することにより前記排水立て管が取り外し可能とされており、前記排水管継手の上受け口の奥部には前記排水立て管の下端面を支持する受け部が形成されており、該受け部と前記排水立て管との間に弾性体が介装され、前記上受け口の内周面と前記排水立て管の外周面との間には環状パッキンが介装されており、前記弾性体と前記環状パッキンとが別部材であることとを特徴とする排水設備である。
【0008】
本発明において、上階・下階とは、連続する2階層の相対的な位置関係を示しており、上階は連続する2階層のうち上側の階層を意味し、下階とは、連続する2階層のうち下側の階層、つまり上階に連続する直ぐ下の階層を意味する。
第1の発明の排水設備によれば、排水管継手の上受け口と排水立て管とを水密に接続する環状パッキンは、排水管継手の上受け口に設けられた受け部と排水立て管との間に介装される弾性体とは別部材として形成されており、環状パッキンをより単純な形状とすることが可能である。また、この排水設備では、接続される2本の管状構造のうち、一方の管状構造に設けられた受け口と他方の管状構造とが更に深く挿入可能な状態で挿入接続が保持されたやりとり可能接続構成を備えている。本発明における「やりとり」とは、接続される2本の管状構造のうち一方の管状構造の端部に受け口が設けられており、該受け口と他方の管状構造の端部とが更に深く挿入可能な状態で挿入接続された構成とされており、他方の環状構造に該受け口を更に深く挿入することである。つまり、一方の環状構造ないし他方の環状構造を相対変位させ、他方の環状構造が受け口に更に深く挿し込まれた状態とすることである。やりとり可能接続構成が設定される2本の環状構造とは、例えば、排水管継手の下端直管部と排水立て管、あるいは2本以上の管を接続して形成した排水立て管組立体における接続される管と管等を含む。該やりとり可能接続構成により使用時の排水立て管の伸縮を吸収することができるため、弾性体においては排水立て管の伸縮吸収を考慮せずにより単純な形状とすることが可能である。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明に記載の排水設備であって、前記環状パッキンはOリングであり、前記排水管継手の上受け口の内周面に形成された溝部に保持されていることを特徴とする排水設備である。
【0010】
第2の発明の排水設備によれば、既存の形状のOリングを環状パッキンとして用いることができる。加えて、Oリングは排水立て管の外周面との接触面積が比較的小さくても上受け口と排水立て管とを水密に保持することができ、排水立て管の外周面に癒着しにくい。そのため、排水立て管を上受け口から引き抜いてやりとりしやすい。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明の排水設備によれば、排水管継手の上受け口にかかる構成部材の形状がより単純であるとともに、容易に排水立て管を更新することが可能である。
上記第2の発明の排水設備によれば、より容易に排水立て管を更新することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施形態1]
図1〜3を参照しながら本発明の実施形態1について説明する。
図1(A)に示されるように、本実施形態に係る排水設備11は、排水管継手20,30と排水立て管組立体50とを主体として構成されている。先ず、この排水設備11を構成する各部材について説明する。
【0013】
<排水管継手20,30について>
排水管継手20,30は、複数層を有する建物の各階層を仕切るコンクリートスラブCSを貫通して各階に設置されるものである。本実施形態の説明においては、理解を容易にするために、連続する3階層を上から順に階層A,階層B,階層Cと称する。本実施形態において、排水管継手20は階層A、排水管継手30は階層Bに設置されている。排水管継手20,30は、設置された階層が異なるのみでその構成は同じであるから各部位については図中に同じ符号で示し、ここでは階層Bに設置された排水管継手30を取り上げて詳細に説明する。
排水管継手30は例えば鋳鉄製であり、階層Bに配管された排水立て管組立体50を流下する排水と横枝管48により導かれた排水とを合流させて階層Bの下の階層Cの排水立て管組立体51に流入させる継手である。排水管継手30は胴部32がコンクリートスラブCSの貫通孔CHに通された状態で埋め戻しモルタルMrにより固定されるとともに、コンクリートスラブCSに立設された継手用支持金具31によっても支持されている。
【0014】
排水管継手30の胴部32は、略筒状の胴本体32aとテーパ縮径部32bとが上から順に連続形成されてなる。胴本体32aのコンクリートスラブCSの上面より突出する位置には横枝管48が接続される横枝管受け口32yが設けられており、上端に排水立て管組立体50の直管状の下端部(下端挿し口)59が挿入接続される上受け口34が形成されている。胴部32のコンクリートスラブCSに埋め戻されている部分の相対向する内周面には、胴本体32aとテーパ縮径部32bとに跨って相互に交差する平滑な二枚の羽根32g(図3参照)が設けらており、該二枚の羽根32gの連携作用により流下する排水を減速・旋回させながら落下させることが可能となっている。テーパ縮径部32bの下端には直管状の下端直管部40が延設されている。下端直管部40はコンクリートスラブCSから垂下して配置されており、後で詳述するやりとり可能接続構成にて直ぐ下の階層Cに配管された排水立て管組立体51の上部受け口62と接続されている。
【0015】
図2に示されるように、排水立て管組立体50の下端挿し口59が挿入接続される上受け口34の奥部には、下端挿し口59がそれ以上挿入するのを規制することのできる受け部36が形成されている。受け部36は、下端挿し口59の通過は許容しないが、排水立て管組立体50を流下する排水の流れには干渉しない程度に管内方へ張り出し形成されている。受け部36の上面、すなわち下端挿し口59と対向する面には、断面略矩形の環状の弾性体38が載置されている。下端挿し口59は、該弾性体38を介して受け部36に当った状態で上受け口34に挿入接続されている。上受け口34の弾性体38が載置される受け部36の上面に沿う内周面には、周方向に沿って浅溝37が形成されており、弾性体38の載置スペースが確保されている。本実施形態の弾性体38は、例えば、ゴム製であり、断面矩形の中実部38aの下面に周方向に間隔を置いて径方向に沿って形成された襞部38bを有している。排水立て管組立体50は下端挿し口59がコンクリートスラブCSに固定された排水管継手30の上受け口34に挿入され、自重により該上受け口34の受け部36に弾性体38を介して当接した状態が維持されて軸方向の位置決めが行われている。上受け口34の開口付近の内周面には、周方向に沿って溝34mが形成されており、該溝34mにOリング35が嵌合されて保持されている。該Oリング35が排水立て管組立体50の下端挿し口59の外周面に当接することにより、下端挿し口59と排水管継手30の上受け口34とが水密に接続されている。このようにOリング35と弾性体38は別部材で形成されている。
【0016】
<排水立て管組立体50について>
本実施形態では、複数の構成部材を組み立てて形成された排水立て管組立体50が排水立て管として用いられている。各階層に配管された排水立て管組立体50,51は構成は同じであるから、各部位については図中に同じ符号で示し、ここでは階層Bに配管された排水立て管組立体50を取り上げて説明する。
図1(A)に示されるように、排水立て管組立体50は、大別して、直管状の立て管本体54と上部受け口62を構成する受け口ソケット60とで構成されており、立て管本体54と受け口ソケット60とが連結解除可能に連結されてなる。
立て管本体54は、所謂、耐火二層管仕様である。本実施形態では、第1立て管56と第2立て管58との2本の耐火二層管がソケット部57を介して同軸で連結されて立て管本体54を構成している。耐火二層管とは、例えば、硬質塩化ビニル等からなる樹脂製の内管の外表面が繊維強化モルタル(不燃材及び繊維等を混ぜたモルタル)等の耐火層で覆われた構成である。図2に示されるように、立て管本体54の下端(第2立て管58の下端)は、内管58nが耐火層58tに覆われず剥き出しにされて下端挿し口59が形成されており、排水管継手30の上受け口34に挿入接続されている。また、図3に示されるように、立て管本体54の上端(第1立て管56の上端は、内管56nが耐火層56tに覆われず剥き出しにされて上端挿し口55が形成されており、受け口ソケット60が連結されている。
【0017】
受け口ソケット60は鋳鉄製であり、図3に示されるように、軸方向の中央部が最も大径化した樽状に形成されている。受け口ソケット60は、上から順番に上端リング部64、下向き拡開部65、大径筒部66、上向き拡開部67、下部接続機構70を備えている。
上端リング部64、下向き拡開部65及び大径筒部66は略等しい外形寸法である。上端リング部64は、内周面に断面角形のシール溝64mが周方向に沿って形成されている。Oリング63が該シール溝64mに嵌め込まれ、大径筒部66の内径よりも内方へ張り出した位置で保持されている。
上端リング部64の下側に位置する下向き拡開部65は、その下側に位置する大径筒部66に近づくにつれて肉薄化し、内周面が下方に向けて拡開するテーパ面65tが形成されている。
下向き拡開部65の下側に位置する大径筒部66は、円筒状に形成されている。この大径筒部66の下端には下方に向かって縮径する、言い換えれば、上方に向けて拡開する上向き拡開部67が形成されている。上向き拡開部67は大径筒部66と略等しい肉厚寸法で形成されている。上端リング部64、下向き拡開部65、大径筒部66、上向き拡開部67が上部受け口62を構成している。
【0018】
上向き拡開部67の下側に位置する下部接続機構70は、受け口ソケット60を立て管本体54の直管状の上端挿し口55に接続するための機構であり、本実施形態では、所謂メカニカル接続の形態をとる。下部接続機構70は、直管受け口71を備える受け口フランジ部72、リング状の押さえフランジ部73、シールリング74及び両フランジ部72,73を連結するボルト・ナット75を備えている。シールリング74は、両フランジ部72,73の押圧面間に挟持される構成であり、ボルト・ナット75が締付けられて両フランジ部72,73が接近することにより、径内方に変形できるように構成されている。このため、図3に示されるように、立て管本体54の上端挿し口55を押さえフランジ部73とシールリング74に通し、受け口フランジ部72の直管受け口71に挿入した状態でボルト・ナット75を締付けることで、シールリング74が立て管本体54の上端挿し口55の外周面に圧接され、受け口ソケット60と立て管本体54とが水密な状態で接続され、排水立て管組立体50が構成されている。
【0019】
<排水立て管組立体50と上階の排水管継手20との接続構成について>
階層Bに配管された排水立て管組立体50と、該階層Bの上の階層である階層Aに配設された排水管継手20との接続構成は、やりとり可能接続構成とされている。すなわち、排水立て管組立体50が本発明の「一方の管状構造」に相当し、排水管継手20の下端直管部40が本発明の「他方の管状構造」に相当する。図3に示されるように、階層Bに配管された排水立て管組立体50とその上の階層の階層Aに設置された排水管継手20とは、通常使用時の接続状態において、上部受け口62が排水管継手20の下端直管部40に対して挿入され、更に深く挿入可能な余地(挿入余地)Eを残した状態で接続が保持されている。本実施形態では、上部受け口62が呑み込むことのできる下端直管部40の最大寸法(最大呑み込み可能寸法)Nmaxは130mmである。しかし、上部受け口62が下端直管部40を呑み込んでいる寸法(呑み込み寸法)Nは70mmである。言い換えれば、下端直管部40が上部受け口62に70mmだけ挿入された状態で接続状態が保持されている。つまり、下端直管部40は、{最大呑み込み可能寸法Nmax(130mm)−呑み込み寸法N(70mm)=60mm}だけ挿入余地Eを残した状態で上部受け口62に挿入接続されている。
【0020】
上記通常使用時の接続状態において、呑み込み寸法Nは、少なくとも、排水管継手20の下端直管部40と排水立て管組立体50の上部受け口62とを水密な状態で確実に接続するのに必要な寸法が確保される。排水管継手20の下端直管部40に排水立て管組立体50の上部受け口62が挿入接続されると、上部受け口62のシール溝64mに保持されたOリング63が下端直管部40に圧接することにより、上部受け口62と下端直管部40とが水密に維持される。上部受け口62の上端からシール溝64mの中心線までの長さdは10mmであり、上部受け口62と下端直管部40とを水密な状態で確実に接続するのに必要な最小挿入寸法は50mmである。本実施形態では、必要呑込み寸法(50mm)に20mmの余裕を付加して呑み込み寸法Nは70mmとされている。
【0021】
上記通常使用時の接続状態において、挿入余地Eは、少なくとも、排水立て管組立体50をやりとりして取り外すことが可能な寸法が確保される。本実施形態において「やりとりして取り外す」とは、図1(B)に示されるように、排水立て管組立体50を上方へ変位させて階層Bの排水管継手30の上受け口34から下端挿し口59を引き抜き、次いで斜め下方へ変位させて上部受け口62を階層Aの排水管継手20の下端直管部40から引き抜くことを意味する。本実施形態では、図2に示されるように、排水管継手30の上受け口34が排水立て管組立体50の下端挿し口59を呑み込んでいる深さ(呑み込み深さ)Dは50mmである。したがって、排水立て管組立体50を呑み込み深さD(50mm)だけ上方へ変位させると、上部受け口62が下端直管部40を呑み込みながら階層Aの排水管継手20に対して相対移動し、下端挿し口59が階層Bの排水管継手30の上受け口34から引き抜かれる。そして、更に排水立て管組立体50を上方へ変位させることにより、下端挿し口59と階層Bの排水管継手30の上受け口34との間に隙間(くぐり代)Kを設けることができる。例えば、排水立て管組立体50の全長Lが2470mmの場合、くぐり代Kを少なくとも6mm(最小くぐり代K1)だけ確保すれば、排水立て管組立体50を約4°傾けて下方に変位させることにより取り外すことができる。挿入余地Eは、上受け口34の呑み込み深さD(50mm)に排水立て管組立体50を斜め下方に移動させて引き抜きを可能とするくぐり代Kの最小値(最小くぐり代K1=6mm)を加えた値と同等以上確保される。本実施形態では、挿入余地E=60mmであり、{挿入余地E(60mm)−呑み込み深さD(50mm)=10mm}のくぐり代Kを確保することが可能である。
【0022】
排水立て管組立体50は、上記通常使用時の接続状態においては、下端挿し口59が階層Bの排水管継手30の上受け口34の受け部36に支持されることにより軸方向の位置決めされているが、使用に際し、例えば、高温の排水が流された場合には一時的に排水立て管組立体50が加熱されて伸縮する場合がある。本実施形態では、排水立て管組立体50と排水管継手20の下端直管部40との接続構成に設けられた挿入余地Eにより、このような排水設備11の使用に伴う伸縮を吸収することも可能な構成となっている。すなわち、排水立て管組立体50が伸張した場合には、上部受け口62が下端直管部40に対して相対的に上方へ変位して呑み込み寸法Nが大きくなり、排水立て管組立体50が収縮するときには、上部受け口62が下端直管部40に対して相対的に下方へ変位して呑み込み寸法Nが小さくなり伸縮が吸収される構成となっている。排水設備11を使用に際する際の排水立て管の伸張長さは、管種によっても異なるが、例えば、温度環境の変化により比較的伸縮しやすい塩化ビニル製の全長Lが2300mmの排水立て管の場合、排水立て管組立体50が50℃に加熱されたときの伸長長さは長く見積もって8mm程度である。したがって、挿入余地E(60mm)により十分に伸縮吸収をすることが可能となっている。さらに、地震時の上下動による変位に追従し、排水立て管の損傷が緩和される。
【0023】
以上の構成の排水設備11によれば以下の作用効果を奏する。
まず、排水立て管組立体50と上階の排水管継手20との接続構成がやりとり可能接続構成であるため、コンクリートスラブCSに固定された排水管継手20,30の間に配管された排水立て管組立体50を切断することなく更新することが可能である。以下に更新方法の一例を示す。
すなわち、先ず、排水立て管組立体50を少なくとも、{上受け口34の呑み込み深さD(50mm)+最小くぐり代K1(6mm)=56mm}上方へ変位させ、排水管継手30の上受け口34から排水立て管組立体50の下端挿し口59を引き抜く。続いて、排水立て管組立体50を斜め下方へ変位させ、上部受け口62を排水管継手20の下端直管部40から引き抜く。これにより排水立て管組立体50を取り外すことができる。次に、新たな排水立て管組立体50の上部受け口62で排水管継手20の下端直管部40を呑み込ませ、排水立て管組立体50を斜め上方へ変位させながら直立させる。次いで排水立て管組立体50の下端挿し口59を排水管継手30の上受け口34に挿入する。これにより新たな排水立て管組立体50が配管される。このような排水設備11は、例えば、占有部内に設けられたパイプシャフト等の比較的小さいスペースであっても排水立て管組立体50を更新可能とすることができる。
【0024】
次に、本実施形態の排水設備11では、やりとり可能構成とされた排水立て管組立体50と上階の排水管継手20との接続構成において、使用に伴う排水立て管組立体50の伸縮を吸収することが可能な挿入余地Eが確保されている。そのため、排水立て管組立体50の下端挿し口59と排水管継手30の上受け口34の受け部36との間に介装される弾性体38として、排水立て管組立体50の使用時の伸縮を考慮せず、より単純な形状の環状の弾性部材を用いることが可能となっている。つまり、弾性体38は、下端挿し口59と受け部36とが直に接触するのを防ぐことのできるものであれば、極単純な形状もので用をなし、材質も特に限定されるものではない。弾性体38は、例えば、断面矩形、中実のゴム製環状平形パッキンでもよい。
【0025】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
例えば、やりとり可能接続構成は、排水立て管組立体50と上階の排水管継手20の下端直管部40との接続構成に限らず、排水立て管組立体50の中間に設けてもよい。すなわち、複数本の立て管を接続して立て管本体54を形成する場合は、接続箇所のうちいずれか一箇所においてやりとり可能接続構成とすればよい。例えば、上記実施形態を取り上げて説明すると、第1立て管56の下端又は第2立て管58の上端の一方に受け口を設け、やりとり可能に接続することができる。
また、立て管本体54を構成する立て管片の材質は特に限定されるものではなく、上記実施形態では耐火二層管仕様の管を例示したが、塩化ビニル等の樹脂で形成された樹脂管、硬質塩ビライニング鋼管、ステンレス管等の排水管を使用することができる。
また、上記実施形態では、排水立て管の一形態として排水立て管組立体50を例示したが、立て管本体54が連続形成された一本ものの管であってもよいし、上部受け口62が立て管本体54の上部に一体的に形成されていてもよい。例えば、樹脂管の上端部を拡開して受け口を一体形成した排水立て管を用いることもできる。また、受け口ソケット60を用いる場合でも、鋳鉄製に限らず、樹脂で形成された受け口ソケットを用いることができる。受け口ソケット60は、例えば、硬質塩化ビニル等の樹脂製、あるいは、且つ、耐火層で覆われたものとして実施してもよい。なお、この場合の下部接続機構70はメカニカル接続でなく、短筒状の差込み接着形式のものでよい。
また、上受け口34に装着されるOリング35に変えて、例えば舌片状など、他の形態の環状パッキンを用いることもできる。
【0026】
また、排水管継手は上下に分割可能な所謂2体型の排水管継手を使用することもできる。例えば、図4に示されるように、上受け口134が胴部132とは分離形成されて連結解除可能に連結された2体型の排水管継手130を使用することができる。なお、上記実施形態と変更を要しない部分については図4において同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。排水管継手130の上受け口134の下端には、内周面に受け部36が形成されており、外周面に外方へ張り出す下端フランジ部134fが形成されている。胴部132の上端には、外方へ張り出す上端フランジ部132fが形成されており、シートパッキン131を介在させて該上端フランジ部132fに上受け口134の下端フランジ部134fを締結されることにより胴部132と上受け口134とが連結されている。かかる2体型の排水管継手130を用いた場合、排水立て管組立体50を「やりとりして取り外す」方法は2通りある。第1のやりとりして取り外す方法は、上記実施形態と同様に、先ず、排水立て管組立体50を上方へ変位させることにより上受け口134から下端挿し口59を引き抜き、次いで排水立て管組立体50を斜め下方へ変位させることにより上受け口34を下端直管部40から引き抜いて取り外す方法である。第2のやりとりして取り外す方法は、先ず、排水管継手130の胴部132の上端フランジ部132fと上受け口134の下端フランジ部134fとの締結を解除し、次いで排水立て管組立体50と上受け口134とを一緒に上方へ変位させてくぐり代を確保し、次いで排水立て管組立体50と上受け口134とを一緒に斜め下方へ変位させて上部受け口62を下端直管部40から引き抜いて取り外す方法である。この第2のやりとりして取り外す方法は、第1のやりとりして取り外す方法に比べ、排水立て管組立体50の上方への変位がより小さくても取り外し可能である。排水管継手130の胴部132と上受け口134との締結を解除するテクニカルスペースを確保することのできる、例えば、建物の共用部等で特に好ましく実施することができる。
【0027】
また、2体型の排水管継手では、上受け口134に変えて図5に示される上胴体136を用いることもできる。なお、上記実施形態と変更を要しない部分については図5において同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。上胴体136は、下端に胴部132の上端フランジ部132fと連結可能な下端フランジ部138fを備える円筒部138を備え、該円筒部138の上端に上受け口34が形成されたものである。この上胴体136では、円筒部138の内周面に流下する排水を減速させる羽根状の減速ガイド138gが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る排水設備の側面図であり、(A)は通常使用時の接続状態を示す図であり、(B)は排水立て管組立体をやりとりして取り外す様子を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る上受け口の縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る排水管継手と排水立て管組立体の接続機構を一部断面で示す図である。
【図4】本発明の変更例に係る排水管継手の上受け口の縦断面図である。
【図5】本発明の変更例に係る排水管継手の上胴体を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
11 排水設備
20,30 排水管継手
35 Oリング
36 受け部
38 弾性体
40 下端直管部(他方の管状構造)
50 排水立て管組立体(一方の管状構造)
54 立て管本体
60 受け口ソケット
62 上部受け口
130 排水管継手
132 胴部
134 上受け口
136 上胴体
CS コンクリートスラブ
E 挿入余地


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階と下階とを仕切るコンクリートスラブを貫通して各階に固定された排水管継手と、上階の排水管継手と下階の排水管継手との間に配管された排水立て管とを備える排水設備であって、
前記排水立て管は、下端が前記下階の排水管継手の上部に形成された上受け口に挿入接続されており、前記上階の排水管継手と接続される上端または軸方向の中間位置において接続される2本の管状構造をやりとり可能に接続するやりとり可能接続構成を備え、該やりとり可能接続構成は、接続される2本の管状構造のうち一方の管状構造の端部に受け口が設けられており、該受け口と他方の管状構造とが更に深く挿入可能な状態で挿入接続が保持されており、前記他方の管状構造に前記受け口を更に深く挿入することにより前記排水立て管が取り外し可能とされており、
前記排水管継手の上受け口の奥部には前記排水立て管の下端面を支持する受け部が形成されており、該受け部と前記排水立て管との間に弾性体が介装され、前記上受け口の内周面と前記排水立て管の外周面との間には環状パッキンが介装されており、前記弾性体と前記環状パッキンとが別部材であることとを特徴とする排水設備。
【請求項2】
請求項1に記載の排水設備であって、
前記環状パッキンはOリングであり、前記排水管継手の上受け口の内周面に形成された溝部に保持されていることを特徴とする排水設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112114(P2010−112114A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287542(P2008−287542)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(390013527)
【Fターム(参考)】