排泄検出装置及び吸収性物品
【課題】着用者からの尿や便などの排泄をより確実に検出しつつ、小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品を提供する。
【解決手段】排泄検出装置１００は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極１２１，電極１２２を有する電源部と、電解質溶液を保持する溶液保持部１１０と、温度情報を検出する温度センサー１３０と、センサーによって検出された温度情報を排泄検出装置１００の外部に送信する無線送信部を含むアクティブタグ１５０とを備える。電極１２１，電極１２２は、排泄物及び電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、排泄物の排泄前において電解質溶液と接触可能である。
【解決手段】排泄検出装置１００は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極１２１，電極１２２を有する電源部と、電解質溶液を保持する溶液保持部１１０と、温度情報を検出する温度センサー１３０と、センサーによって検出された温度情報を排泄検出装置１００の外部に送信する無線送信部を含むアクティブタグ１５０とを備える。電極１２１，電極１２２は、排泄物及び電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、排泄物の排泄前において電解質溶液と接触可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【０００２】
使い捨ておむつなどの吸収性物品に関して、尿や便などが吸収性物品の着用者（生体）から排泄されたことを検出する方法が知られている。
【０００３】
例えば、イオン化傾向が異なる材料によって構成される一対の電極に着用者の排泄物を接触させることによって起電させる方法が知られている。つまり、ボルタの電池の原理を利用することによって、バッテリーを用いずにブザーなどの報知器を作動させる方法が提案されている（特許文献１参照）。
【０００４】
一方、排泄物（尿）を用いた起電と、バッテリーとを併用した排泄検出装置を使い捨ておむつに搭載する方法も提案されている（特許文献２参照）。この排泄検出装置によれば、バッテリーの消耗を抑えることが可能となり、長時間に渡って着用者からの排泄を検出できる。
【０００５】
また、着用者からの排泄をより確実に検出するため、温度、湿度または臭気など、着用者からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーを用いる方法も提案されている（特許文献３参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２７７４３５号公報（第３頁、第４図）
【特許文献２】特開平４−１３８１５５号公報（第２−３頁、第１図）
【特許文献３】特開２００６−２９６５６６号公報（第４頁、第１図）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上述したような温度などを検出するセンサーを用いる場合、着用者からの排泄をより確実に検出するためには、着用者が尿や便を排泄する前からセンサーを作動させて温度などの環境情報を随時取得することが望ましい。例えば、温度センサーを用いる場合、尿や便の排泄直後における温度上昇を検出するためには、排泄前の温度と排泄後の温度とを比較する必要がある。
【０００８】
しかしながら、特許文献１に記載されているように排泄物を用いて起電する場合、尿や便などの排泄前においては起電できず、センサーを作動させることができない問題がある。
【０００９】
一方、特許文献２に記載されているようにバッテリーを併用すれば、排泄前からセンサーを作動させることができるが、バッテリーの搭載に伴って、排泄検出装置の小型・軽量化や使用後の廃棄容易性を阻害する別の問題を惹起する。
【００１０】
そこで、本発明は、着用者からの尿や便などの排泄をより確実に検出しつつ、小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。すなわち、本発明の特徴は、生体（着用者W）から排泄物（尿や便）の排泄があったことを検出する排泄検出装置（排泄検出装置１００）であって、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極（電極１２１，電極１２２）を有する電源部（電源部１６０）と、電解質溶液を保持する溶液保持部（溶液保持部１１０）と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報（例えば、温度情報）を検出するセンサー（温度センサー１３０）と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部（無線送信部１８０）とを備え、前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【００１２】
上述した本発明の特徴において、前記一対の電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能であることが好ましい。
【００１３】
上述した本発明の特徴において、前記通知部は、前記センサーによって検出された前記環境情報を示すデータを含む無線信号を送信する無線送信部（無線送信部１８０）であることが好ましい。
【００１４】
上述した本発明の特徴において、前記排泄検出装置は、前記生体に装着される吸収性物品に取り付けられ、前記センサーは、前記吸収性物品のうち、前記排泄物が排泄される領域の温度を前記環境情報として検出することが好ましい。
【００１５】
上述した本発明の特徴において、前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作（例えば、押圧）によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記一対の電極に前記電解質溶液を接触させることが好ましい。
【００１６】
本発明の他の特徴は、生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品（例えば、使い捨ておむつ１０Ａ）であって、前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、前記排泄検出装置は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、電解質溶液を保持する溶液保持部と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部とを備え、前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【００１７】
上述した本発明の他の特徴において、前記吸収性物品は、前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シート（表面シート１１）と、前記排泄物を吸収する吸収体（吸収体１３）とを含み、前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられることを要旨とする。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の特徴によれば、着用者からの尿や便などの排泄をより確実に検出しつつ、小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明の実施形態に係る排泄管理システム１の全体概略構成図である。
【図２】本発明の実施形態に係る排泄検出装置１００が埋め込まれた使い捨ておむつ１０Ａの平面展開図、及び排泄検出装置１００の外観を模式的に示した図である。
【図３】本発明の実施形態に係る排泄検出装置１００の機能ブロック構成図である。
【図４】本発明の実施形態に係る排泄管理システム１を用いた排泄管理フローを示す図である。
【図５】排便時における温度変化パターン及び排尿時における温度変化パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
次に、本発明に係る排泄検出装置及び吸収性物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【００２１】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【００２２】
（１）排泄管理システムの全体概略構成
図１は、本実施形態に係る排泄管理システム１の全体概略構成図である。図１に示すように、排泄管理システム１は、無線中継局２０、排泄管理サーバ４０及び排泄検出装置１００によって構成される。
【００２３】
使い捨ておむつ１０Ａ及び使い捨ておむつ１０Ｂは、着用者W（生体）に装着され、着用者Wからの尿や便などの排泄物を吸収する吸収性物品である。使い捨ておむつ１０Ａ及び使い捨ておむつ１０Ｂは、排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置１００を備える。具体的には、排泄検出装置１００は、オープン型（テープ型）の使い捨ておむつ１０Ａや、パンツ型の使い捨ておむつ１０Ｂに取り付けられる。
【００２４】
排泄検出装置１００は、着用者Wから排泄物の排泄があったことを検出する。排泄検出装置１００は、無線中継局２０に対して無線信号を送信可能なアクティブ型のＩＣタグや温度センサーなどによって構成され、使い捨ておむつ内の温度情報（環境情報）を含む無線信号を所定の周期で繰り返し送信する。なお、排泄検出装置１００の詳細構成については後述する。
【００２５】
無線中継局２０は、排泄検出装置１００から受信した無線信号を所定の通信方式に従った無線信号に変換する。本実施形態では、無線中継局２０は、排泄検出装置１００から受信した無線信号をPersonal Handy Phone（ＰＨＳ方式）の無線信号に変換し、当該無線信号を無線基地局３０に向けて送信する。無線中継局２０は、一辺が数ｃｍ以下の直方体であり、名札状にしてベッドに取り付けたり、着用者Wに取り付けたりすることができる。なお、無線中継局２０と排泄検出装置１００と無線通信を維持するため、無線中継局２０と排泄検出装置１００とは、一定距離内に位置する必要がある。
【００２６】
無線基地局３０は、無線中継局２０から無線信号を受信する。本実施形態では、無線基地局３０は、ＰＨＳ方式に従った無線信号を送受信する。無線基地局３０は、有線通信ネットワーク（不図示）を介して排泄管理サーバ４０に接続される。
【００２７】
排泄管理サーバ４０は、排尿や排便に関する環境情報（温度、湿度及び臭気など）の変化パターンを複数記憶している。排泄管理サーバ４０は、無線中継局２０及び無線基地局３０を介して排泄検出装置１００から繰り返し送信された温度情報に基づいて、着用者Wによる排尿または排便の有無を判定する。排泄管理サーバ４０は、排尿または排便があったと判定した場合、その旨を示す電子メールを予め登録された携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０に送信する。排泄管理サーバ４０が携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０に対してこのような電子メールを予め登録された宛先に送信することによって、当該電子メールを確認した着用者Wの保護者（介護者）は、使い捨ておむつの交換など、速やかに適切な措置を取り得る。
【００２８】
（２）排泄検出装置の配設位置及び構造
図２（ａ）は、排泄検出装置１００が埋め込まれた使い捨ておむつ１０Ａの平面展開図である。図２（ｂ）は、排泄検出装置１００の外観を模式的に示した図である。
【００２９】
図２（ａ）に示すように、使い捨ておむつ１０Ａは、表面シート１１、裏面シート１２及び吸収体１３を備える。表面シート１１は、着用者W（生体）の肌と接触する。表面シート１１は、尿などの液体を透過する資材によって構成される。裏面シート１２は、着用者Wの衣類と接触する。裏面シート１２は、液体を透過しない資材によって構成される。吸収体１３は、尿や便などの排泄物を吸収する。吸収体１３は、粉砕パルプなどの親水性繊維などによって構成される。使い捨ておむつ１０Ａは、公知の方法（例えば、特開２００３−３３９７７１号公報）に従って製造できる。
【００３０】
排泄検出装置１００は、表面シート１１と吸収体１３との間に設けられる。なお、排泄検出装置１００は、裏面シート１２と吸収体１３との間に設けてもよいが、尿と比較して粘度が高い便を排泄検出装置１００の電極部１２０に確実に接触させるためには、排泄検出装置１００を表面シート１１と吸収体１３との間に設けることが好ましい。また、オープン型の使い捨ておむつ１０Ｂの場合においても、排泄検出装置１００は、表面シート１１と吸収体１３との間に設けることが好ましい。なお、使い捨ておむつ１０Ｂも、公知の方法（例えば、特開２００５−５８７５５号公報）に従って製造できる。
【００３１】
排泄検出装置１００は、溶液保持部１１０、電極部１２０、温度センサー１３０及びアクティブタグ１５０を備える。溶液保持部１１０は、電解質溶液を保持する。電極部１２０は、溶液保持部１１０の下方（吸収体１３寄り）に設けられる。温度センサー１３０は、電解質溶液から滲出する電解質溶液と接触することを回避するため、アクティブタグ１５０を基準として、電極１２１及び電極１２２の反対側に設けられる。電極１２１及び電極１２２は、着用者Wからの排泄物及び溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。つまり、電極１２１及び電極１２２は、尿などの排泄前においては溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能である。
【００３２】
アクティブタグ１５０は、電極部１２０及び温度センサー１３０と接続され、溶液保持部１１０と重ならない位置に設けられる。
【００３３】
（３）排泄検出装置１００の機能ブロック構成
図３は、排泄検出装置１００の機能ブロック構成図である。図３に示すように、排泄検出装置１００は、溶液保持部１１０、電極部１２０、温度センサー１３０及びアクティブタグ１５０を備える。また、アクティブタグ１５０は、電源部１６０、制御部１７０及び無線送信部１８０によって構成される。
【００３４】
溶液保持部１１０は、電解質を水などの溶媒に溶かした電解質溶液を保持する。例えば、溶液保持部１１０は、塩化ナトリウム（ＮａＣｌ）を約１wt.％〜５wt.％含む水溶液を用いることができる。すなわち、尿成分と同等のＮａＣｌ水溶液を電解質溶液として用いる。溶液保持部１１０は、液体を蓄えておける袋状の容器であり、本実施形態では、溶液保持部１１０は、ポリオレフィン系の熱可塑性フィルムによって構成される。
【００３５】
溶液保持部１１０は、溶液保持部１１０に対する所定の操作、例えば、溶液保持部１１０を表面シート１１側から押圧することによって、溶液保持部１１０から電解質溶液を滲出させる。すなわち、溶液保持部１１０を押圧することによって熱可塑性フィルムによって構成されている袋状の溶液保持部１１０が破られ、電解質溶液が電極部１２０周辺に滲出する。この結果、電極１２１及び電極１２２に電解質溶液が接触する。
【００３６】
なお、溶液保持部１１０は水などの溶媒のみを蓄え、溶液保持部１１０の近傍に塩化ナトリウムの粉末を配置してもよい。この場合、塩化ナトリウムの粉末が溶液保持部１１０から滲出した水に溶解し、電解質溶液が生成される。このような場合も、溶液保持部１１０が電解質溶液を保持することに含まれる。
【００３７】
電極部１２０は、溶液保持部１１０の下方（吸収体１３寄り）であって、吸収体１３の上に設けられる。電極部１２０を構成する一対の電極１２１及び電極１２２は、電源部１６０に接続されている。電極１２１及び電極１２２は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成される。本実施形態では、電極１２１及び電極１２２として、アルミニウムと銀の組合せが用いられる。すなわち、このような電極部１２０を有する電源部１６０は、電解質溶液または排泄物が電極１２１と電極１２２との間に介在することによって、いわゆるボルタの電池として機能する。ボルタの電池とは、イオン化傾向が大きい金属と小さい金属とを使用した電極を電解液に浸けることによって電子を移動させて電流を発生させる電池である。
【００３８】
上述したように、電極１２１及び電極１２２は、尿などの排泄前においては溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能である。このため、排泄前においては電解質溶液、また、排泄後においては電解質溶液或いは排泄物によって、電極１２１と電極１２２との間に電位差が生じ、起電力が得られる。
【００３９】
温度センサー１３０は、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を検出する。具体的には、温度センサー１３０は、使い捨ておむつ１０Ａのうち、排泄物が排泄される領域（吸収体１３が設けられている領域）の温度を環境情報として検出する。温度センサー１３０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。
【００４０】
本実施形態では、温度センサー１３０は、薄膜サーミスタ（以下、サーミスタ）が用いられる。温度センサー１３０には、尿や便を検出するための電極と、サーミスタに電力を供給する電極とが導電性インクで印刷された合成樹脂フィルムが用いられる。温度センサー１３０としては、熱容量が小さく周囲の温度の影響を受けやすいサーミスタが好ましく、例えば、石塚電子株式会社製サーミスタＥＴ−１０３が挙げられる。
【００４１】
アクティブタグ１５０は、電極部１２０及び温度センサー１３０が接続されたアクティブ型のＩＣタグである。つまり、アクティブタグ１５０は、他の無線通信装置などに頼らずに無線信号を送信することができる。
【００４２】
電源部１６０は、起電回路１６１及び蓄電回路１６２を有する。起電回路１６１には、電極１２１及び電極１２２が接続される。起電回路１６１は、電極１２１と電極１２２との間に生じた電位差により起電し、発生した電力を蓄電回路１６２に蓄える。蓄電回路１６２は、コンデンサなどによって構成される。
【００４３】
制御部１７０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。具体的には、制御部１７０は、温度センサー１３０から出力された値に基づいて、温度情報を示すデータを生成し、生成したデータを無線送信部１８０に出力する。
【００４４】
無線送信部１８０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。無線送信部１８０は、温度センサー１３０によって検出された温度情報を排泄検出装置１００の外部に通知する。本実施形態において、無線送信部１８０は通知部を構成する。
【００４５】
具体的には、無線送信部１８０は、当該温度情報を示すデータを含む無線信号を無線中継局２０に向けて送信する。本実施形態では、無線送信部１８０は、当該無線信号を所定の周期（例えば、１０秒）で繰り返し送信する。
【００４６】
なお、排泄検出装置１００は、上述したように排泄前及び排泄後において、ボルタの電池として機能するため、温度センサー１３０、制御部１７０及び無線送信部１８０を作動させるためのバッテリーを搭載していないバッテリーレス型である。
【００４７】
（４）排泄管理システムを用いた排泄管理方法
図４は、上述した排泄管理システム１を用いた排泄管理フローを示す。具体的には、図４は、使い捨ておむつ１０Ａ（または使い捨ておむつ１０Ｂ）を着用した着用者Wが排尿または排便したことを排泄検出装置１００が検出し、携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０にその旨を通知する電子メールを送信するまでのフローを示す。
【００４８】
図４に示すように、ステップＳ１０において、乳幼児や被介護者などの対象者への使い捨ておむつ１０Ａの着用を補助する保護者や介護者（以下、補助者）は、使い捨ておむつ１０Ａを包装パッケージなどから取り出す。
【００４９】
ステップＳ２０において、補助者は、使い捨ておむつ１０Ａの表面シート１１下方に埋め込まれた溶液保持部１１０の部分を押圧する。補助者によるこの動作によって、袋状の溶液保持部１１０が破られる。
【００５０】
ステップＳ３０において、溶液保持部１１０から電解質溶液（塩化ナトリウム溶液）が電極部１２０周辺に滲出する。
【００５１】
ステップＳ３５において、補助者は、使い捨ておむつ１０Ａを乳幼児などの対象者に着用させる。これにより、補助者の使い捨ておむつ１０Ａの着用作業が完了する。
【００５２】
ステップＳ４０において、電源部１６０（起電回路１６１）は、電解質溶液が電極１２１と電極１２２との間に介在することによって起電し、電力を発生する。
【００５３】
ステップＳ５０において、電源部１６０が発生した電力によって排泄検出装置１００が作動を開始する。
【００５４】
ステップＳ６０において、排泄検出装置１００は、温度センサー１３０が取得した温度情報を定期的に排泄管理サーバ４０に送信する。具体的には、排泄検出装置１００は、上述したように無線中継局２０及び無線基地局３０を介して温度情報を排泄管理サーバ４０に送信する。
【００５５】
ステップＳ７０において、排泄管理サーバ４０は、受信した温度情報に基づいて、温度変化のパターンが予め記憶されたパターンと合致するか否かを判定する。本実施形態では、排泄管理サーバ４０は、排尿に伴う温度変化のパターン、及び排便に伴う温度変化のパターンを記憶している。
【００５６】
図５（ａ）は、排便時における温度変化パターンを示す。図５（ｂ）は、排尿時における温度変化パターンを示す。排便時と排尿時の温度変化パターンを比較すると、排尿時は、排便時よりも温度の立ち上がりが鋭く、温度変化の収束も早い。一方、排便の場合、排便時の温度の立ち上がりが遅く、温度変化の収束も遅い。排泄管理サーバ４０は、このような温度変化パターンの相違に基づいて、排尿と排便とを識別する。
【００５７】
受信した温度情報に基づく温度変化のパターンが排尿または排便の温度変化パターンと合致した場合（ステップＳ７０のＹＥＳ）、ステップＳ８０において、排泄管理サーバ４０は、排尿または排便があったことを示す電子メールを予め登録された宛先（携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０）に送信する。
【００５８】
ステップ９０において、着用者Wの補助者は、電子メールの受信により着用者Wの排尿や排便があったことを速やかに認識し、使い捨ておむつを交換する。なお、補助者は、使用後の使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置１００によって送信される無線信号と、交換後の新しい使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置１００によって送信される無線信号との混信を防ぐため、使用後の使い捨ておむつを無線中継局２０から一定距離以上引き離す必要がある。
【００５９】
以上説明した排泄検出装置１００によれば、電極部１２０は、着用者Wの排泄物及び溶液保持部１１０によって保持されていた電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。さらに、電極部１２０は、着用者Wの排泄前においても電解質溶液と接触可能である。
【００６０】
このため、排尿前や排便前においても電源部１６０による起電が可能となり、温度センサー１３０を作動させることができる。また、排泄検出装置１００では、このような構成としたため、一切バッテリーを搭載していない。すなわち、排泄検出装置１００を含む排泄管理システム１によれば、温度センサー１３０を用いて温度情報を連続して取得することによって、着用者Wからの尿や便などの排泄をより確実に検出することができる。また、バッテリーが搭載されないため、排泄検出装置１００の小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る。
【００６１】
さらに、排泄管理システム１によれば、使い捨ておむつ１０Ａの着用を補助する保護者や介護者は、電子メールの受信により、着用者Wが尿や便を排泄したことを速やかに認識でき、使い捨ておむつの交換などの適切な措置を取り得る。
【００６２】
また、排泄検出装置１００によれば、電極部１２０が着用者Wの排泄物に接触可能な位置に設けられるため、溶液保持部１１０から滲出した電解質溶液による起電ができなくなった場合でも、排泄物を用いて起電を継続することが可能となり、温度情報を長期間に渡って送信できる。
【００６３】
（５）その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【００６４】
例えば、上述した実施形態では、尿や便の排泄を検出するため、温度センサー１３０が用いられていたが、湿度や臭気を検出するセンサー、特定種類のイオンを選択的に検出するセンサー、または歪みを検出するセンサーを用いて、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を取得するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、無線送信部１８０を用いて温度情報を送信するようにしたが、無線送信部１８０による温度情報の送信に代えて、ブザーなどの報知器を作動させるようにしても構わない。
【００６５】
上述した実施形態では、電極部１２０は、吸収体１３の上、つまり、着用者Wの排泄物に接触可能な位置に設けられていたが、電極部１２０は、溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能な位置であれば、必ずしも排泄物に接触可能な位置に設けられていなくても構わない。例えば、溶液保持部１１０及び電極部１２０は、吸収体１３が設けられていない使い捨ておむつ１０Ａの長手方向の端部領域に配置してもよい。この場合、電源部１６０は、起電には排泄物を利用せず、溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液のみを利用して起電することとなる。
【００６６】
上述した実施形態では、溶液保持部１１０を表面シート１１側から押圧することによって、溶液保持部１１０が破れ、溶液保持部１１０から電解質溶液を滲出させるようにしたが、押圧と異なる操作によって電解質溶液を滲出させるようにしてもよい。例えば、溶液保持部１１０に連結された糸状部材を引っ張ることによって溶液保持部１１０が破れるようにしてもよい。
【００６７】
上述した実施形態では、排泄検出装置１００が使い捨ておむつに埋め込まれていたが、排泄検出装置１００は、複数回繰り返して利用できるおむつに搭載してもよい。また、排泄検出装置１００は、おむつに限らず、生理用ナプキンなどの吸収性物品に搭載してもよい。さらに、吸収性物品は、人間用に限らず、ペットなどの動物用でも構わない。
【００６８】
上述した実施形態では、排泄検出装置１００はバッテリーレス型であったが、搭載するバッテリーが小型・軽量であり、廃棄容易性も具備するものであれば、バッテリーを搭載するようにしてもよい。
【００６９】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【００７０】
１…排泄管理システム、１０Ａ，１０Ｂ…使い捨ておむつ、１１…表面シート、１２…裏面シート、１３…吸収体、２０…無線中継局、３０…無線基地局、４０…排泄管理サーバ、５０…携帯電話端末、６０…パーソナルコンピュータ、１００…排泄検出装置、１１０…溶液保持部、１２０…電極部、１２１，１２２…電極、１３０…温度センサー、１５０…アクティブタグ、１６０…電源部、１６１…起電回路、１６２…蓄電回路、１７０…制御部、１８０…無線送信部、W…着用者
【技術分野】
【０００１】
本発明は、生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【０００２】
使い捨ておむつなどの吸収性物品に関して、尿や便などが吸収性物品の着用者（生体）から排泄されたことを検出する方法が知られている。
【０００３】
例えば、イオン化傾向が異なる材料によって構成される一対の電極に着用者の排泄物を接触させることによって起電させる方法が知られている。つまり、ボルタの電池の原理を利用することによって、バッテリーを用いずにブザーなどの報知器を作動させる方法が提案されている（特許文献１参照）。
【０００４】
一方、排泄物（尿）を用いた起電と、バッテリーとを併用した排泄検出装置を使い捨ておむつに搭載する方法も提案されている（特許文献２参照）。この排泄検出装置によれば、バッテリーの消耗を抑えることが可能となり、長時間に渡って着用者からの排泄を検出できる。
【０００５】
また、着用者からの排泄をより確実に検出するため、温度、湿度または臭気など、着用者からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーを用いる方法も提案されている（特許文献３参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２７７４３５号公報（第３頁、第４図）
【特許文献２】特開平４−１３８１５５号公報（第２−３頁、第１図）
【特許文献３】特開２００６−２９６５６６号公報（第４頁、第１図）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上述したような温度などを検出するセンサーを用いる場合、着用者からの排泄をより確実に検出するためには、着用者が尿や便を排泄する前からセンサーを作動させて温度などの環境情報を随時取得することが望ましい。例えば、温度センサーを用いる場合、尿や便の排泄直後における温度上昇を検出するためには、排泄前の温度と排泄後の温度とを比較する必要がある。
【０００８】
しかしながら、特許文献１に記載されているように排泄物を用いて起電する場合、尿や便などの排泄前においては起電できず、センサーを作動させることができない問題がある。
【０００９】
一方、特許文献２に記載されているようにバッテリーを併用すれば、排泄前からセンサーを作動させることができるが、バッテリーの搭載に伴って、排泄検出装置の小型・軽量化や使用後の廃棄容易性を阻害する別の問題を惹起する。
【００１０】
そこで、本発明は、着用者からの尿や便などの排泄をより確実に検出しつつ、小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。すなわち、本発明の特徴は、生体（着用者W）から排泄物（尿や便）の排泄があったことを検出する排泄検出装置（排泄検出装置１００）であって、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極（電極１２１，電極１２２）を有する電源部（電源部１６０）と、電解質溶液を保持する溶液保持部（溶液保持部１１０）と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報（例えば、温度情報）を検出するセンサー（温度センサー１３０）と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部（無線送信部１８０）とを備え、前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【００１２】
上述した本発明の特徴において、前記一対の電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能であることが好ましい。
【００１３】
上述した本発明の特徴において、前記通知部は、前記センサーによって検出された前記環境情報を示すデータを含む無線信号を送信する無線送信部（無線送信部１８０）であることが好ましい。
【００１４】
上述した本発明の特徴において、前記排泄検出装置は、前記生体に装着される吸収性物品に取り付けられ、前記センサーは、前記吸収性物品のうち、前記排泄物が排泄される領域の温度を前記環境情報として検出することが好ましい。
【００１５】
上述した本発明の特徴において、前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作（例えば、押圧）によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記一対の電極に前記電解質溶液を接触させることが好ましい。
【００１６】
本発明の他の特徴は、生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品（例えば、使い捨ておむつ１０Ａ）であって、前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、前記排泄検出装置は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、電解質溶液を保持する溶液保持部と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部とを備え、前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【００１７】
上述した本発明の他の特徴において、前記吸収性物品は、前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シート（表面シート１１）と、前記排泄物を吸収する吸収体（吸収体１３）とを含み、前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられることを要旨とする。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の特徴によれば、着用者からの尿や便などの排泄をより確実に検出しつつ、小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明の実施形態に係る排泄管理システム１の全体概略構成図である。
【図２】本発明の実施形態に係る排泄検出装置１００が埋め込まれた使い捨ておむつ１０Ａの平面展開図、及び排泄検出装置１００の外観を模式的に示した図である。
【図３】本発明の実施形態に係る排泄検出装置１００の機能ブロック構成図である。
【図４】本発明の実施形態に係る排泄管理システム１を用いた排泄管理フローを示す図である。
【図５】排便時における温度変化パターン及び排尿時における温度変化パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
次に、本発明に係る排泄検出装置及び吸収性物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【００２１】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【００２２】
（１）排泄管理システムの全体概略構成
図１は、本実施形態に係る排泄管理システム１の全体概略構成図である。図１に示すように、排泄管理システム１は、無線中継局２０、排泄管理サーバ４０及び排泄検出装置１００によって構成される。
【００２３】
使い捨ておむつ１０Ａ及び使い捨ておむつ１０Ｂは、着用者W（生体）に装着され、着用者Wからの尿や便などの排泄物を吸収する吸収性物品である。使い捨ておむつ１０Ａ及び使い捨ておむつ１０Ｂは、排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置１００を備える。具体的には、排泄検出装置１００は、オープン型（テープ型）の使い捨ておむつ１０Ａや、パンツ型の使い捨ておむつ１０Ｂに取り付けられる。
【００２４】
排泄検出装置１００は、着用者Wから排泄物の排泄があったことを検出する。排泄検出装置１００は、無線中継局２０に対して無線信号を送信可能なアクティブ型のＩＣタグや温度センサーなどによって構成され、使い捨ておむつ内の温度情報（環境情報）を含む無線信号を所定の周期で繰り返し送信する。なお、排泄検出装置１００の詳細構成については後述する。
【００２５】
無線中継局２０は、排泄検出装置１００から受信した無線信号を所定の通信方式に従った無線信号に変換する。本実施形態では、無線中継局２０は、排泄検出装置１００から受信した無線信号をPersonal Handy Phone（ＰＨＳ方式）の無線信号に変換し、当該無線信号を無線基地局３０に向けて送信する。無線中継局２０は、一辺が数ｃｍ以下の直方体であり、名札状にしてベッドに取り付けたり、着用者Wに取り付けたりすることができる。なお、無線中継局２０と排泄検出装置１００と無線通信を維持するため、無線中継局２０と排泄検出装置１００とは、一定距離内に位置する必要がある。
【００２６】
無線基地局３０は、無線中継局２０から無線信号を受信する。本実施形態では、無線基地局３０は、ＰＨＳ方式に従った無線信号を送受信する。無線基地局３０は、有線通信ネットワーク（不図示）を介して排泄管理サーバ４０に接続される。
【００２７】
排泄管理サーバ４０は、排尿や排便に関する環境情報（温度、湿度及び臭気など）の変化パターンを複数記憶している。排泄管理サーバ４０は、無線中継局２０及び無線基地局３０を介して排泄検出装置１００から繰り返し送信された温度情報に基づいて、着用者Wによる排尿または排便の有無を判定する。排泄管理サーバ４０は、排尿または排便があったと判定した場合、その旨を示す電子メールを予め登録された携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０に送信する。排泄管理サーバ４０が携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０に対してこのような電子メールを予め登録された宛先に送信することによって、当該電子メールを確認した着用者Wの保護者（介護者）は、使い捨ておむつの交換など、速やかに適切な措置を取り得る。
【００２８】
（２）排泄検出装置の配設位置及び構造
図２（ａ）は、排泄検出装置１００が埋め込まれた使い捨ておむつ１０Ａの平面展開図である。図２（ｂ）は、排泄検出装置１００の外観を模式的に示した図である。
【００２９】
図２（ａ）に示すように、使い捨ておむつ１０Ａは、表面シート１１、裏面シート１２及び吸収体１３を備える。表面シート１１は、着用者W（生体）の肌と接触する。表面シート１１は、尿などの液体を透過する資材によって構成される。裏面シート１２は、着用者Wの衣類と接触する。裏面シート１２は、液体を透過しない資材によって構成される。吸収体１３は、尿や便などの排泄物を吸収する。吸収体１３は、粉砕パルプなどの親水性繊維などによって構成される。使い捨ておむつ１０Ａは、公知の方法（例えば、特開２００３−３３９７７１号公報）に従って製造できる。
【００３０】
排泄検出装置１００は、表面シート１１と吸収体１３との間に設けられる。なお、排泄検出装置１００は、裏面シート１２と吸収体１３との間に設けてもよいが、尿と比較して粘度が高い便を排泄検出装置１００の電極部１２０に確実に接触させるためには、排泄検出装置１００を表面シート１１と吸収体１３との間に設けることが好ましい。また、オープン型の使い捨ておむつ１０Ｂの場合においても、排泄検出装置１００は、表面シート１１と吸収体１３との間に設けることが好ましい。なお、使い捨ておむつ１０Ｂも、公知の方法（例えば、特開２００５−５８７５５号公報）に従って製造できる。
【００３１】
排泄検出装置１００は、溶液保持部１１０、電極部１２０、温度センサー１３０及びアクティブタグ１５０を備える。溶液保持部１１０は、電解質溶液を保持する。電極部１２０は、溶液保持部１１０の下方（吸収体１３寄り）に設けられる。温度センサー１３０は、電解質溶液から滲出する電解質溶液と接触することを回避するため、アクティブタグ１５０を基準として、電極１２１及び電極１２２の反対側に設けられる。電極１２１及び電極１２２は、着用者Wからの排泄物及び溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。つまり、電極１２１及び電極１２２は、尿などの排泄前においては溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能である。
【００３２】
アクティブタグ１５０は、電極部１２０及び温度センサー１３０と接続され、溶液保持部１１０と重ならない位置に設けられる。
【００３３】
（３）排泄検出装置１００の機能ブロック構成
図３は、排泄検出装置１００の機能ブロック構成図である。図３に示すように、排泄検出装置１００は、溶液保持部１１０、電極部１２０、温度センサー１３０及びアクティブタグ１５０を備える。また、アクティブタグ１５０は、電源部１６０、制御部１７０及び無線送信部１８０によって構成される。
【００３４】
溶液保持部１１０は、電解質を水などの溶媒に溶かした電解質溶液を保持する。例えば、溶液保持部１１０は、塩化ナトリウム（ＮａＣｌ）を約１wt.％〜５wt.％含む水溶液を用いることができる。すなわち、尿成分と同等のＮａＣｌ水溶液を電解質溶液として用いる。溶液保持部１１０は、液体を蓄えておける袋状の容器であり、本実施形態では、溶液保持部１１０は、ポリオレフィン系の熱可塑性フィルムによって構成される。
【００３５】
溶液保持部１１０は、溶液保持部１１０に対する所定の操作、例えば、溶液保持部１１０を表面シート１１側から押圧することによって、溶液保持部１１０から電解質溶液を滲出させる。すなわち、溶液保持部１１０を押圧することによって熱可塑性フィルムによって構成されている袋状の溶液保持部１１０が破られ、電解質溶液が電極部１２０周辺に滲出する。この結果、電極１２１及び電極１２２に電解質溶液が接触する。
【００３６】
なお、溶液保持部１１０は水などの溶媒のみを蓄え、溶液保持部１１０の近傍に塩化ナトリウムの粉末を配置してもよい。この場合、塩化ナトリウムの粉末が溶液保持部１１０から滲出した水に溶解し、電解質溶液が生成される。このような場合も、溶液保持部１１０が電解質溶液を保持することに含まれる。
【００３７】
電極部１２０は、溶液保持部１１０の下方（吸収体１３寄り）であって、吸収体１３の上に設けられる。電極部１２０を構成する一対の電極１２１及び電極１２２は、電源部１６０に接続されている。電極１２１及び電極１２２は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成される。本実施形態では、電極１２１及び電極１２２として、アルミニウムと銀の組合せが用いられる。すなわち、このような電極部１２０を有する電源部１６０は、電解質溶液または排泄物が電極１２１と電極１２２との間に介在することによって、いわゆるボルタの電池として機能する。ボルタの電池とは、イオン化傾向が大きい金属と小さい金属とを使用した電極を電解液に浸けることによって電子を移動させて電流を発生させる電池である。
【００３８】
上述したように、電極１２１及び電極１２２は、尿などの排泄前においては溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能である。このため、排泄前においては電解質溶液、また、排泄後においては電解質溶液或いは排泄物によって、電極１２１と電極１２２との間に電位差が生じ、起電力が得られる。
【００３９】
温度センサー１３０は、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を検出する。具体的には、温度センサー１３０は、使い捨ておむつ１０Ａのうち、排泄物が排泄される領域（吸収体１３が設けられている領域）の温度を環境情報として検出する。温度センサー１３０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。
【００４０】
本実施形態では、温度センサー１３０は、薄膜サーミスタ（以下、サーミスタ）が用いられる。温度センサー１３０には、尿や便を検出するための電極と、サーミスタに電力を供給する電極とが導電性インクで印刷された合成樹脂フィルムが用いられる。温度センサー１３０としては、熱容量が小さく周囲の温度の影響を受けやすいサーミスタが好ましく、例えば、石塚電子株式会社製サーミスタＥＴ−１０３が挙げられる。
【００４１】
アクティブタグ１５０は、電極部１２０及び温度センサー１３０が接続されたアクティブ型のＩＣタグである。つまり、アクティブタグ１５０は、他の無線通信装置などに頼らずに無線信号を送信することができる。
【００４２】
電源部１６０は、起電回路１６１及び蓄電回路１６２を有する。起電回路１６１には、電極１２１及び電極１２２が接続される。起電回路１６１は、電極１２１と電極１２２との間に生じた電位差により起電し、発生した電力を蓄電回路１６２に蓄える。蓄電回路１６２は、コンデンサなどによって構成される。
【００４３】
制御部１７０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。具体的には、制御部１７０は、温度センサー１３０から出力された値に基づいて、温度情報を示すデータを生成し、生成したデータを無線送信部１８０に出力する。
【００４４】
無線送信部１８０は、電源部１６０によって生成された電力によって作動する。無線送信部１８０は、温度センサー１３０によって検出された温度情報を排泄検出装置１００の外部に通知する。本実施形態において、無線送信部１８０は通知部を構成する。
【００４５】
具体的には、無線送信部１８０は、当該温度情報を示すデータを含む無線信号を無線中継局２０に向けて送信する。本実施形態では、無線送信部１８０は、当該無線信号を所定の周期（例えば、１０秒）で繰り返し送信する。
【００４６】
なお、排泄検出装置１００は、上述したように排泄前及び排泄後において、ボルタの電池として機能するため、温度センサー１３０、制御部１７０及び無線送信部１８０を作動させるためのバッテリーを搭載していないバッテリーレス型である。
【００４７】
（４）排泄管理システムを用いた排泄管理方法
図４は、上述した排泄管理システム１を用いた排泄管理フローを示す。具体的には、図４は、使い捨ておむつ１０Ａ（または使い捨ておむつ１０Ｂ）を着用した着用者Wが排尿または排便したことを排泄検出装置１００が検出し、携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０にその旨を通知する電子メールを送信するまでのフローを示す。
【００４８】
図４に示すように、ステップＳ１０において、乳幼児や被介護者などの対象者への使い捨ておむつ１０Ａの着用を補助する保護者や介護者（以下、補助者）は、使い捨ておむつ１０Ａを包装パッケージなどから取り出す。
【００４９】
ステップＳ２０において、補助者は、使い捨ておむつ１０Ａの表面シート１１下方に埋め込まれた溶液保持部１１０の部分を押圧する。補助者によるこの動作によって、袋状の溶液保持部１１０が破られる。
【００５０】
ステップＳ３０において、溶液保持部１１０から電解質溶液（塩化ナトリウム溶液）が電極部１２０周辺に滲出する。
【００５１】
ステップＳ３５において、補助者は、使い捨ておむつ１０Ａを乳幼児などの対象者に着用させる。これにより、補助者の使い捨ておむつ１０Ａの着用作業が完了する。
【００５２】
ステップＳ４０において、電源部１６０（起電回路１６１）は、電解質溶液が電極１２１と電極１２２との間に介在することによって起電し、電力を発生する。
【００５３】
ステップＳ５０において、電源部１６０が発生した電力によって排泄検出装置１００が作動を開始する。
【００５４】
ステップＳ６０において、排泄検出装置１００は、温度センサー１３０が取得した温度情報を定期的に排泄管理サーバ４０に送信する。具体的には、排泄検出装置１００は、上述したように無線中継局２０及び無線基地局３０を介して温度情報を排泄管理サーバ４０に送信する。
【００５５】
ステップＳ７０において、排泄管理サーバ４０は、受信した温度情報に基づいて、温度変化のパターンが予め記憶されたパターンと合致するか否かを判定する。本実施形態では、排泄管理サーバ４０は、排尿に伴う温度変化のパターン、及び排便に伴う温度変化のパターンを記憶している。
【００５６】
図５（ａ）は、排便時における温度変化パターンを示す。図５（ｂ）は、排尿時における温度変化パターンを示す。排便時と排尿時の温度変化パターンを比較すると、排尿時は、排便時よりも温度の立ち上がりが鋭く、温度変化の収束も早い。一方、排便の場合、排便時の温度の立ち上がりが遅く、温度変化の収束も遅い。排泄管理サーバ４０は、このような温度変化パターンの相違に基づいて、排尿と排便とを識別する。
【００５７】
受信した温度情報に基づく温度変化のパターンが排尿または排便の温度変化パターンと合致した場合（ステップＳ７０のＹＥＳ）、ステップＳ８０において、排泄管理サーバ４０は、排尿または排便があったことを示す電子メールを予め登録された宛先（携帯電話端末５０やパーソナルコンピュータ６０）に送信する。
【００５８】
ステップ９０において、着用者Wの補助者は、電子メールの受信により着用者Wの排尿や排便があったことを速やかに認識し、使い捨ておむつを交換する。なお、補助者は、使用後の使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置１００によって送信される無線信号と、交換後の新しい使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置１００によって送信される無線信号との混信を防ぐため、使用後の使い捨ておむつを無線中継局２０から一定距離以上引き離す必要がある。
【００５９】
以上説明した排泄検出装置１００によれば、電極部１２０は、着用者Wの排泄物及び溶液保持部１１０によって保持されていた電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。さらに、電極部１２０は、着用者Wの排泄前においても電解質溶液と接触可能である。
【００６０】
このため、排尿前や排便前においても電源部１６０による起電が可能となり、温度センサー１３０を作動させることができる。また、排泄検出装置１００では、このような構成としたため、一切バッテリーを搭載していない。すなわち、排泄検出装置１００を含む排泄管理システム１によれば、温度センサー１３０を用いて温度情報を連続して取得することによって、着用者Wからの尿や便などの排泄をより確実に検出することができる。また、バッテリーが搭載されないため、排泄検出装置１００の小型・軽量化や使用後の廃棄容易性も実現し得る。
【００６１】
さらに、排泄管理システム１によれば、使い捨ておむつ１０Ａの着用を補助する保護者や介護者は、電子メールの受信により、着用者Wが尿や便を排泄したことを速やかに認識でき、使い捨ておむつの交換などの適切な措置を取り得る。
【００６２】
また、排泄検出装置１００によれば、電極部１２０が着用者Wの排泄物に接触可能な位置に設けられるため、溶液保持部１１０から滲出した電解質溶液による起電ができなくなった場合でも、排泄物を用いて起電を継続することが可能となり、温度情報を長期間に渡って送信できる。
【００６３】
（５）その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【００６４】
例えば、上述した実施形態では、尿や便の排泄を検出するため、温度センサー１３０が用いられていたが、湿度や臭気を検出するセンサー、特定種類のイオンを選択的に検出するセンサー、または歪みを検出するセンサーを用いて、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を取得するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、無線送信部１８０を用いて温度情報を送信するようにしたが、無線送信部１８０による温度情報の送信に代えて、ブザーなどの報知器を作動させるようにしても構わない。
【００６５】
上述した実施形態では、電極部１２０は、吸収体１３の上、つまり、着用者Wの排泄物に接触可能な位置に設けられていたが、電極部１２０は、溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液と接触可能な位置であれば、必ずしも排泄物に接触可能な位置に設けられていなくても構わない。例えば、溶液保持部１１０及び電極部１２０は、吸収体１３が設けられていない使い捨ておむつ１０Ａの長手方向の端部領域に配置してもよい。この場合、電源部１６０は、起電には排泄物を利用せず、溶液保持部１１０から滲出する電解質溶液のみを利用して起電することとなる。
【００６６】
上述した実施形態では、溶液保持部１１０を表面シート１１側から押圧することによって、溶液保持部１１０が破れ、溶液保持部１１０から電解質溶液を滲出させるようにしたが、押圧と異なる操作によって電解質溶液を滲出させるようにしてもよい。例えば、溶液保持部１１０に連結された糸状部材を引っ張ることによって溶液保持部１１０が破れるようにしてもよい。
【００６７】
上述した実施形態では、排泄検出装置１００が使い捨ておむつに埋め込まれていたが、排泄検出装置１００は、複数回繰り返して利用できるおむつに搭載してもよい。また、排泄検出装置１００は、おむつに限らず、生理用ナプキンなどの吸収性物品に搭載してもよい。さらに、吸収性物品は、人間用に限らず、ペットなどの動物用でも構わない。
【００６８】
上述した実施形態では、排泄検出装置１００はバッテリーレス型であったが、搭載するバッテリーが小型・軽量であり、廃棄容易性も具備するものであれば、バッテリーを搭載するようにしてもよい。
【００６９】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【００７０】
１…排泄管理システム、１０Ａ，１０Ｂ…使い捨ておむつ、１１…表面シート、１２…裏面シート、１３…吸収体、２０…無線中継局、３０…無線基地局、４０…排泄管理サーバ、５０…携帯電話端末、６０…パーソナルコンピュータ、１００…排泄検出装置、１１０…溶液保持部、１２０…電極部、１２１，１２２…電極、１３０…温度センサー、１５０…アクティブタグ、１６０…電源部、１６１…起電回路、１６２…蓄電回路、１７０…制御部、１８０…無線送信部、W…着用者
【特許請求の範囲】
【請求項１】
生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置であって、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、
電解質溶液を保持する溶液保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられる排泄検出装置。
【請求項２】
前記一対の電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能である請求項１に記載の排泄検出装置。
【請求項３】
前記通知部は、前記センサーによって検出された前記環境情報を示すデータを含む無線信号を送信する無線送信部である請求項１または２に記載の排泄検出装置。
【請求項４】
前記排泄検出装置は、前記生体に装着される吸収性物品に取り付けられ、
前記センサーは、前記吸収性物品のうち、前記排泄物が排泄される領域の温度を前記環境情報として検出する請求項１乃至３の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項５】
前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記一対の電極に前記電解質溶液を接触させる請求項１乃至４の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項６】
生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、
前記排泄検出装置は、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、
電解質溶液を保持する溶液保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられる吸収性物品。
【請求項７】
前記吸収性物品は、
前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シートと、
前記排泄物を吸収する吸収体と
を含み、
前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられる請求項６に記載の吸収性物品。
【請求項１】
生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置であって、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、
電解質溶液を保持する溶液保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられる排泄検出装置。
【請求項２】
前記一対の電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能である請求項１に記載の排泄検出装置。
【請求項３】
前記通知部は、前記センサーによって検出された前記環境情報を示すデータを含む無線信号を送信する無線送信部である請求項１または２に記載の排泄検出装置。
【請求項４】
前記排泄検出装置は、前記生体に装着される吸収性物品に取り付けられ、
前記センサーは、前記吸収性物品のうち、前記排泄物が排泄される領域の温度を前記環境情報として検出する請求項１乃至３の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項５】
前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記一対の電極に前記電解質溶液を接触させる請求項１乃至４の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項６】
生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、
前記排泄検出装置は、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された一対の電極を有する電源部と、
電解質溶液を保持する溶液保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出するセンサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記センサーによって検出された前記環境情報を前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記一対の電極は、少なくとも前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられる吸収性物品。
【請求項７】
前記吸収性物品は、
前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シートと、
前記排泄物を吸収する吸収体と
を含み、
前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられる請求項６に記載の吸収性物品。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１１−１３０９２４（Ｐ２０１１−１３０９２４Ａ）
【公開日】平成２３年７月７日（２０１１．７．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２９３５０３（Ｐ２００９−２９３５０３）
【出願日】平成２１年１２月２４日（２００９．１２．２４）
【出願人】（０００１１５１０８）ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年７月７日（２０１１．７．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１２月２４日（２００９．１２．２４）
【出願人】（０００１１５１０８）ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Ｆターム（参考）】
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