説明

排液浄化装置及び排液浄化方法

【課題】排液中の性状の異なる2種類の固形不純物を付着部材で捕捉すると共に、捕捉した固形不純物を付着部材から排出させて清掃する排液浄化装置及びその方法の提供。
【解決手段】排液浄化装置は、ポンプ70と、第1不純物、第2不純物が付着する第1付着部材10、第2付着部材20と、第1付着部材、第2付着部材が挿着される第1捕捉槽30、第2捕捉槽40と、第1不純物、第2不純物が排出される第1清掃槽、第2清掃槽と、第1付着部材、第2付着部材を第1清掃槽、第2清掃槽に移動させる移動手段72、73と、を備える。排液浄化方法は磁性不純物を磁気棒に付着後非磁性不純物をメッシュフィルターに付着させる工程と、磁気棒及びメッシュフィルターを第1清掃槽及び第2清掃槽に移動させる工程と、第1清掃槽で磁性不純物をスクレーパーとの摺接により集積後エアーにより排出し第2清掃槽で非磁性不純物をエアーにより排出する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排液浄化装置及び排液浄化方法に関する。更に詳しくは、排液中に含まれる固形不純物をフィルター等の付着部材に付着させることにより除去して排液を浄化すると共に、固形不純物が付着した付着部材を清掃する排液浄化装置及び排液浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の切削液、加工品洗浄機の溶剤等は、循環して使用するため、これらの排液中には、切削粉等の固形不純物が蓄積してくる。特に、工作機械に関しては、鋳物部品加工により生じた微粒子からなる切削粉が切削液中に浮遊してくる。切削液を循環するクーラントポンプには吸い込み側に切削粉を除去するためのメッシュフィルターが取り付けられているが、鉄粉等の微粒子の場合は、フィルターの目を通過してしまい、除去することが困難である。切削液中に混入した微粒子は、加工品を傷つけたり、スピンドル・工具等の磨耗の原因となっている。
また、排液中に大小様々なサイズの固形不純物が含まれている場合、目の粗いフィルターでは、小さなサイズの固形不純物を除去できず、目の細かいフィルターでは、目詰まりし易くなるという問題もある。
【0003】
上記の問題を解決するために、磁石を備える磁気棒を用いた磁気フィルターが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この磁気フィルターは、循環する排液の通路に磁気フィルターを設置し、磁気棒に微粒子からなる鉄粉を付着させることによって、排液から鉄粉を除去することができる。
更に、磁気棒に付着した鉄粉を簡易な方法で除去する磁気棒の清掃装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この装置によれば、鉄粉の付着した磁気棒をシリンダ内に空気圧を利用して挿入し、シリンダ入り口に設けた除去リングによって鉄粉を除去することができる。
また、メッシュフィルターと磁気フィルターを組み合わせることによって、鉄粉等の磁性不純物のみならず、非磁性不純物も除去する排液の浄化方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−12423号公報
【特許文献2】特開2002−195212号公報
【特許文献3】特開平8−206538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置及び特許文献2の装置のいずれも、磁気棒に付着した鉄粉を清掃するために、排液槽から磁気フィルターを取りはずして掃除をする必要がある。更に、磁気棒を使用して固形不純物を除去するため、非磁性不純物を除去することはできない。工作機械で製作する加工品から生ずる切削粉には、アルミニウム等の非磁性不純物も含まれ、実情に合わない場合も生ずる。
また、特許文献3の方法では、非磁性不純物を除去するために、磁性体からなる粉末を非磁性不純物に付着させる必要があり、一定のpHの条件が要求されるなど、限定された条件の下でしか、非磁性不純物を捕捉することができない。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、排液中の性状の異なる2種類の固形不純物を付着部材で捕捉すると共に、捕捉した固形不純物を付着部材から排出させて清掃する排液浄化装置及び排液浄化方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.排液中に含まれる固形不純物を除去して該排液を浄化する排液浄化装置であって、
前記排液を循環輸送するポンプと、前記排液中において前記固形不純物のうちの第1不純物が付着する第1付着部材、及び前記排液中において前記固形不純物のうちの第2不純物が付着する第2付着部材と、内部に前記第1付着部材が挿着され、前記第1不純物が付着して捕捉される第1捕捉槽、及び内部に前記第2付着部材が挿着され、前記第2不純物が付着して捕捉される第2捕捉槽と、内部に前記第1付着部材が挿着され、該第1付着部材に捕捉された第1不純物が排出される第1清掃槽、及び内部に前記第2付着部材が挿着され、該第2付着部材に捕捉された第2不純物が排出される第2清掃槽と、前記第1付着部材を前記第1捕捉槽から第1清掃槽に往復可能に移動させ、前記第2付着部材を前記第2捕捉槽から第2清掃槽に往復可能に移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする排液浄化装置。
2.前記第1不純物は、磁性不純物であり、前記第2不純物は非磁性不純物であると共に、前記第1付着部材は、前記磁性不純物が付着する磁気棒で形成され、前記第2付着部材は、前記非磁性不純物が付着するメッシュフィルターで形成されたことを特徴とする1.に記載の排液浄化装置。
3.前記第1清掃槽は、前記磁気棒に付着した前記磁性不純物を摺接により除去するスクレーパーと、該スクレーパーとの摺接により除去されて集積された前記磁性不純物をエアーの噴射により排出する第1排出手段とを備えていることを特徴とする2.に記載の排液浄化装置。
4.前記メッシュフィルターの外周面に、その外周面に付着して捕捉された前記非磁性不純物を捕集する受け部が上下に複数段周方向に沿って突設されていることを特徴とする2.又は3.に記載の排液浄化装置。
5.前記第2清掃槽は、前記メッシュフィルターに付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する第2排出手段を備えていることを特徴とする2.乃至4.のいずれかに記載の排液浄化装置。
6.前記ポンプは、前記第2捕捉槽の下流側に設けられていることを特徴とする1.乃5.のいずれかに記載の排液浄化装置。
7.前記第2捕捉槽の下流側、且つ、前記ポンプの下流側に、該ポンプの停止直後に前記排液を逆流させて前記各捕捉槽内に該排液を補充することにより該各捕捉槽内の液面低下を防止する補給タンクを更に備えていることを特徴とする1.乃至6.のいずれかに記載の排液浄化装置。
8.前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽とは同一円周上に配設されているとともに、前記第2捕捉槽と前記第2清掃槽とは前記円周と同心の同一円周上に配設され、前記第1付着部材及び前記第2付着部材は、前記円周の中心を軸に同位相回動することによりそれぞれ前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽との間及び前記第2捕捉槽と第2清掃槽との間を往復移動するよう設けられていることを特徴とする1.乃至7.のいずれかに記載の排液浄化装置。
9.排液中に含まれる固形不純物を除去して該排液を浄化する排液浄化方法であって、
第1捕捉槽に供給された前記排液中の磁性不純物を該第1捕捉槽内に挿着された磁気棒に付着させた後、前記磁性不純物が除去された該排液を第2捕捉槽に移送し、該排液中の非磁性不純物を該第2捕捉槽内に挿着された筒状のメッシュフィルターの外周面に付着させる付着工程と、前記磁気棒及び前記メッシュフィルターをそれぞれ第1捕捉槽から第1清掃槽に及び第2捕捉槽から第2清掃槽に往復可能に移動させる移動工程と、前記第1清掃槽において、前記磁気棒に付着した磁性不純物を前記第1清掃槽に設けられたスクレーパーとの摺接により集積させた後、エアーの噴射により排出するとともに、前記第2清掃槽において、前記メッシュフィルターの外周面に付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する排出工程と、を備えたことを特徴とする排液浄化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排液浄化装置によれば、第1不純物が付着する第1付着部材及び第2不純物が付着する第2付着部材を備えているため、固形不純物の種類に応じて排液を浄化することができる。更に、第1付着部材が挿着される第1清掃槽、第2付着部材が挿着される第2清掃槽と、第1付着部材を第1捕捉槽から第1清掃槽に移動させ、第2付着部材を第2捕捉槽から第2清掃槽に移動させる移動手段とを備えているため、それぞれに付着した固形不純物をその種類に応じて、効率的に排出することができる。
第1不純物は、磁性不純物であり、第2不純物は非磁性不純物であると共に、第1付着部材が磁気棒で形成され、第2付着部材が、メッシュフィルターで形成されていれば、不純物の性状に応じて効率よく固形不純物を除去することができる。
第1清掃槽が、磁気棒に付着した磁性不純物を摺接により除去するスクレーパーと、スクレーパーとの摺接により除去されて集積された磁性不純物をエアーの噴射により排出する第1排出手段とを備えていれば、手動で掃除することなく磁性不純物を排出することができる。
メッシュフィルターの外周面に、その外周面に付着して捕捉された非磁性不純物を捕集する受け部が上下に複数段周方向に沿って突設されていれば、大きな形状の非磁性不純物であっても脱落させることなくメッシュフィルターの外周面に捕捉することができる。
第2清掃槽が、メッシュフィルターに付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する第2排出手段を備えていれば、手動で掃除することなく非磁性不純物を排出することができる。
排液を循環輸送するポンプが、第2捕捉槽の下流側に設けられていれば、固形不純物を除去した後の排液がポンプに流入するため、ポンプの損傷を防ぐことができる。
第2捕捉槽の下流側、且つ、ポンプの下流側に、ポンプの停止直後に排液を逆流させて各捕捉槽内に排液を補充することにより各捕捉槽内の液面低下を防止する補給タンクを更に備えていれば、各捕捉槽に排液を満たすことで連続運転を可能にすることができる。
【0009】
前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽とは同一円周上に配設されているとともに、前記第2捕捉槽と前記第2清掃槽とは前記円周と同心の同一円周上に配設され、前記第1付着部材及び前記第2付着部材は、前記円周の中心を軸に同位相回動することにより前記各槽間を移動するよう設けられていれば、省スペースで効率よく、自動的に、固形不純物の付着、排出を行うことができる。
【0010】
本発明の排液浄化方法であれば、排液中の磁性不純物を磁気棒に付着させた後、磁性不純物が除去された排液を第2捕捉槽に移送し、非磁性不純物を筒状のメッシュフィルターの外周面に付着させる付着工程と、磁気棒及びメッシュフィルターをそれぞれ第1清掃槽及び第2清掃槽に移動させる移動工程と、第1清掃槽において、磁気棒に付着した磁性不純物を第1清掃槽に設けられたスクレーパーとの摺接により集積させた後、エアーの噴射により排出するとともに、前記第2清掃槽において、前記メッシュフィルターの外周面に付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する排出工程とを備えているため、磁性不純物及び非磁性不純物の捕捉と排出を効率よく且つ自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の排液浄化装置の模式断面図である。
【図2】本発明の排液浄化装置の模式平面図である。
【図3】本発明の排液浄化装置に係る第1付着材及び第2付着材が第1捕捉槽及び第2捕捉槽に挿着された状態を示す模式断面図である。
【図4】図3のA部の部分拡大図である。
【図5】本発明の排液浄化装置に係る第1付着材及び第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽に挿着された状態を示す模式断面図である。
【図6】図5のX−X´模式断面図である。
【図7】本発明の排液浄化装置に係り、第1付着材及び第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽に挿着された状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の排液浄化装置に係り、第1不純物が付着された第1付着材及び第2不純物が付着された第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽から真上に抜き出された状態を示す斜視図である。
【図9】図8の状態から水平方向に90度回転移動して第1付着材及び第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽の真上に配置された状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の排液浄化装置に係り、第1付着材及び第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽に挿着された状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の排液浄化装置に係り、第1付着材及び第2付着材が第1清掃槽及び第2清掃槽から真上に抜き出された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図1〜11を参照しながら本発明を詳しく説明する。尚、本発明は、かかる図に記載された具体例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更したものとすることができる。
【0013】
[1]排液浄化装置
本発明の排液浄化装置は、例えば図1に示すように、排液槽80の排液85中に含まれる固形不純物を除去して排液85を浄化する装置であって、排液85を循環輸送するポンプ70と、排液85中において固形不純物のうちの第1不純物が付着する第1付着部材10、及び排液85中において固形不純物のうちの第2不純物が付着する第2付着部材20と、内部に前記第1付着部材10が挿着され、第1不純物が付着して捕捉される第1捕捉槽30、及び内部に前記第2付着部材20が挿着され、前記第2不純物が付着して捕捉される第2捕捉槽40とを備える。また、図2及び図5に示すように、第1付着部材10が挿着される第1清掃槽50、及び第2付着部材20が挿着され第2清掃槽60を備える。更に、第1付着部材10を第1捕捉槽30から第1清掃槽50に移動させ、第2付着部材20を第2捕捉槽40から第2清掃槽60に移動させる移動手段72、73を備える。
【0014】
前記「固形不純物」とは、工作機械等から排出される排液中に含まれる鉄粉、切り粉などの金属成分のほか、無機物、有機物など、液体以外の成分をいう。
固形不純物のうちの第1不純物は、第1捕捉層30において第1付着部材10により捕捉される不純物であり、固形不純物のうちの第2不純物は、第2付着部材20により第2捕捉層40において捕捉される不純物である。
第1付着部材、第2付着部材は、固形不純物を不純物の性状に応じて2段階に亘って付着させるものであれば、特に限定はない。例えば、排液中に大小様々なサイズの固形不純物が含まれている場合、目の粗いメッシュフィルターを第1付着部材として、これに大きなサイズの第1不純物を付着させたのち、更に目の細かいメッシュフィルターを第2付着部材として、これに第2不純物を付着させることができる。こうすることにより、メッシュフィルターの目詰まりを防止し、効率的に排液を浄化することができる。
【0015】
第1不純物が、磁性不純物であり、第2不純物は非磁性不純物であると共に、第1付着部材は、磁性不純物が付着する磁気棒で形成され、第2付着部材は、非磁性不純物が付着するメッシュフィルターで形成されることができる。
前記「磁気棒」とは、棒状の磁石を備える柱状体であり、鉄、鉄合金、ニッケル等の磁性不純物を付着させて捕捉することができる。柱状体全体が磁石からなる必要はなく、一部が磁石を帯びていない構造であってもよく、また、他の部材が取り付けられていてもよい。例えば、図3に示す磁気棒10は、磁石部分である磁性体部10cと磁気を帯びていない非磁性体部10bを有しており、更に弾性材料からなるV字型パッキン10aを備えている。
前記「メッシュフィルター」は、排液を濾過する役割を果たす、網目状のメッシュを有しており、主としてアルミニウム、銅、銅合金などの非磁性不純物を付着させて捕捉することができる。メッシュフィルターは、網目状の濾過材を備えていて、濾過をする作用をすれば特に限定はなく、種々の構造をとることができる。また、濾過材の目の粗さも用途に応じて種々のものを選択することができる。
【0016】
メッシュフィルターの外周面に、その外周面に付着して捕捉された非磁性不純物を捕集する受け部が(上下に複数段)周方向に沿って突設されていることが好ましい。
例えば、図3に示すメッシュフィルター20は、円筒形をしており、付着して捕捉された非磁性不純物21を捕集する受け部(上下に複数段)周方向に沿って突設されている。そして、このメッシュフィルター20は図4に示すように、濾過材20cが、受け部20aと接続する外筒体20bと内筒体20dによって挟着保持されている。濾過材20cの材質は特に限定はなく、プラスチック製、金属性を問わないが、金属製であることが好ましい。金属製であれば、濾過精度及び再洗浄性に優れる。また、金属製の中でも特にステンレス製であることが好ましい。ステンレス製であれば、排液に対する耐食性に特に優れている。
【0017】
第1捕捉槽30は、図3に示すように、内部に第1付着部材10が挿着され、第1不純物11が、付着して捕捉される槽である。また、第2捕捉槽40は、図3に示すように、内部に第2付着部材20が挿着され、第2不純物21が、付着して捕捉される槽である。図3の矢印に示すように、排液は、第1付着部材10が挿着された第1捕捉層30の入口30aから流入し、その後、第2付着部材20が挿着された第2捕捉層40を通過して、第2捕捉層40の出口40aから流出する。
【0018】
第1清掃層50は、図5に示すように、内部に第1付着部材10が挿着され、第1付着部材10に捕捉された第1不純物11が排出される槽である。また、第2清掃槽60は、内部に第2付着部材20が挿着され、第2付着部材20に捕捉された第2不純物21が排出される槽である。
【0019】
第1不純物が磁性不純物であり、第2不純物は非磁性不純物であると共に、第1付着部材が磁性不純物を付着する磁気棒で形成され、第2付着部材が、非磁性不純物を付着するメッシュフィルターで形成されている場合には、第1清掃槽は、磁気棒に付着した磁性不純物を摺接により除去するスクレーパーと、このスクレーパーとの摺接により除去されて集積された磁性不純物をエアーの噴射により排出する第1排出手段とを備えていることが好ましい。
図5に示すように、スクレーパー51が磁気棒と摺接することにより、磁性不純物11を磁気棒上部の非磁性体部に集積することができる。スクレーパー51の材質は、磁気棒と摺接して磁性不純物11を集積できれば特に限定はないが、弾性材料からなることが好ましい。弾性材料であれば、磁気棒を傷つけることなく、摺接することができる。弾性材料としては、例えばゴムが挙げられる。また、スクレーパー51の形状も特に限定はないが、図5に示すように、V字形状であることが好ましい。V字形状であれば、V字形の谷部分に磁性不純物11を集積しやすい。更に、磁気棒側にもV字形パッキン10aを備えることにより、上下のV字形状で囲まれた空間を形成でき、磁性不純物11を効率よく集積することができる。
【0020】
集積された磁性不純物11は、エアー噴射口52から噴射されるエアーにより排出する第1排出手段により、排出管55を介して、装置外部へ排出される。
【0021】
第2清掃槽は、メッシュフィルターに付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する第2排出手段を備えていることが好ましい。第2排出手段は、エアーの噴射により非磁性不純物を排出することができるものであれば、特に限定はなく、円筒形のメッシュフィルターの外周面にエアーを噴射してもよく、メッシュフィルターの内部から、外部方向に向かってエアーを噴射してもよい。内部から外部方向に向かってエアーを噴射すれば、フィルターに付着した非磁性不純物をメッシュフィルターに再付着させることなく効率的に清浄化することができる。
例えば、図5に示す第2排出手段は、エアー噴射筒66に設けた複数のノズル66aにより、メッシュフィルターの内部からエアーを噴射し、濾過材及び受け部に付着した非磁性不純物を吹き払う構造である。エアー噴射筒66は、ギアモーター65により水平方向に回転することにより、メッシュフィルター全周に亘ってエアーを噴射することができる。更に、図6に示すように、エアー噴射筒66を偏心させながら回転する構造であるため、ノズル66aの噴出口を濾過材に接近させることができ、より強力な噴射により効率的に、非磁性不純物21を吹き払うことができる。
【0022】
前記「ポンプ」は排液を循環輸送することができれば、取り付け箇所に特に限定はなく、第1捕捉槽30の上流側に設けてもよいが、図1に示すポンプ70のように、第2捕捉槽40の下流側に設けられていることが好ましい。第2捕捉槽40の下流側に設けることにより、固形不純物を除去した後の排液がポンプに流入することにより、ポンプに固形不純物が混入することがなく、ポンプの損傷を防ぐことができる。
【0023】
前記第2捕捉槽の下流側、且つ、前記ポンプの下流側に、該ポンプの停止直後に前記排液を逆流させて前記各捕捉槽内に該排液を補充することにより該各捕捉槽内の液面低下を防止する補給タンクを更に備えていることが好ましい。図1に示すように、第2捕捉槽40の下流側、且つ、ポンプ70の下流側に、補給タンク90を備えることができる。こうすることで、ポンプ70の停止直後に、補給タンク中の排液91がその自重により逆流し、第1捕捉層30及び第2捕捉層40内が排液91で満たされ、第1捕捉層30及び第2捕捉層40内の液面低下を防ぐことができる。これにより、ポンプ70の停止直後に、第1付着部材10、第2付着部材20を引き上げても、第1捕捉層30及び第2捕捉層40の内部に外部から空気が入り、第1捕捉槽30及び第2捕捉槽40より吸入管87及び排出管89を通して排液が流出しても、補給タンク90内の排液91が逆流して第1捕捉層30及び第2捕捉層40内の液面を正常な位置に回復することができ、ポンプの連続運転が可能となる。
【0024】
前記「移動手段」は前記第1付着部材を前記第1捕捉槽から第1清掃槽に往復可能に移動させ、前記第2付着部材を前記第2捕捉槽から第2清掃槽に往復可能に移動させる手段である。
第1付着部材の第1捕捉槽から第1清掃槽への移動と、第2付着部材の第2捕捉槽から第2清掃槽への移動は、移動させることができれば、その順序は特に限定はない。すなわち、第1付着部材の第1捕捉槽から第1清掃槽への移動をした後に、第2付着部材の第2捕捉槽から第2清掃槽への移動を行なってもよく、第2付着部材の第2捕捉槽から第2清掃槽への移動をした後に、第1付着部材の第1捕捉槽から第1清掃槽への移動を行なってもよい。しかし、効率の面から、第1付着部材の第1捕捉槽から第1清掃槽への移動と、第2付着部材の第2捕捉槽から第2清掃槽への移動を同時に行なうことが好ましい。なお、上記移動には、第1清掃槽から第1捕捉槽への復帰移動、第2清掃槽から第2捕捉槽への復帰移動が含まれる。
【0025】
図3に示すように、第1付着部材10の取付部15と、第2付着部材20の取付部25が固定部材75に固定されていれば、移動手段72、73によって、図5に示すように、第1付着部材10、第2付着部材20を各々同時に第1清掃槽50及び第2清掃槽60へと移動させることができる。
【0026】
前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽とは同一円周上に配設されているとともに、前記第2捕捉槽と前記第2清掃槽とは前記円周と同心の同一円周上に配設され、前記第1付着部材及び前記第2付着部材は、前記円周の中心を軸に同位相回動することにより前記各槽間を移動するよう設けられていることが好ましい。
なお、第1捕捉槽と第1清掃槽とが配設された円周と、第2捕捉槽と第2清掃槽とが配設された円周とは同心である。つまり2つの円周は同心円であるが、同一半径の円でなくてもよい。ここで、「同一円周」とは、第1捕捉槽と第1清掃槽とは同一円周上にあり、また、第2捕捉槽と第2清掃槽とは同一円周上にあることを意味するが、4つの槽全てが同じ円周上にあることを意味するものではない。勿論、4つの槽全てが同じ円周上にあってもよいことは言うまでもない。
【0027】
図2に示すように、第1捕捉槽30と第1清掃槽50とは同一円周上に配設されているとともに、第2捕捉槽40と第2清掃槽60とは前記円周と同心の同一円周上に配設され、第1付着部材10及び第2付着部材20は、円周の中心を軸に同位相回動することにより各槽間を往復移動するよう設けられている。
こうすることで、2槽に亘る固形不純物の捕捉及び排出を省スペースで、効率よく行うことができる。
【0028】
(動作)
本発明の装置の動作について以下具体的に説明する。図7は第1付着部材10が第1捕捉槽30、第2付着部材20が第2捕捉槽40に挿着された状態を示す。この状態で、ポンプ70を作動させると、図1に示すように、排液槽80から排液85が吸入管87を通して第1捕捉槽30に流入し、第1不純物(磁性不純物)を第1付着部材10(磁気棒)に付着させた後、第2捕捉槽40へ流入する。第2捕捉槽40で第2付着部材20(メッシュフィルター)に第2不純物(非磁性不純物)を付着させ、補給タンク90を介してポンプ70へ流入する。そして、ポンプ70から排出管89を介して排液槽80へと流出する(付着工程)。このように排液を循環させることにより第1不純物及び第2不純物を一定量捕捉した時点で、ポンプ70を停止する。そうすると、補給タンク90に入っている排液91が逆流して、第1捕捉槽30及び第2捕捉槽40が排液で満たされる。
【0029】
次いで、図8に示すように、図1に示した移動手段73(昇降シリンダー)の上昇により、固定部材75を介して第1不純物が付着した第1付着部材10及び第2不純物が付着した第2付着部材20がそれぞれ第1捕捉槽30及び第2捕捉槽40から、抜き出される。
その後、図9に示すように、移動手段72(回転シリンダー)の作動により、上方から見て時計回りに90度回転して、第1付着部材10、第2付着部材20がそれぞれ第1清掃槽50、第2清掃槽60の真上に移動する(移動工程)。
【0030】
その後、図10に示すように、移動手段73(昇降シリンダー)の下降により、第1付着部材10、第2付着部材20がそれぞれ第1清掃槽50、第2清掃槽60に挿着される。そして、第1付着部材10に付着した第1不純物(磁性不純物)、第2付着部材20に付着した第2不純物(磁性不純物)はそれぞれ、第1清掃槽50、第2清掃槽60内において外部に排出される(排出工程)。第1清掃槽50、第2清掃槽60における作用については、前述の通りであるため、その説明を省略する。
【0031】
次いで、図11に示すように、移動手段73(昇降シリンダー)の上昇により清浄化された第1付着部材10、第2付着部材20が、固定部材75を介してそれぞれ第1清掃槽50及び第2清掃槽60から、抜き出される。その後、移動手段72(回転シリンダー)の作動により、90度逆方向に回転して、第1付着部材10、第2付着部材20がそれぞれ第1捕捉槽30及び第2捕捉槽40の真上に移動する(移動工程)。その後、移動手段73(昇降シリンダー)の下降により、図7に示すように、第1付着部材10及び第2付着部材20がそれぞれ第1捕捉槽30及び第2捕捉槽40に挿着される。そして、ポンプ70を作動させることによって、次の付着工程を開始する。
【0032】
上記の動作を繰り返すことにより、排液槽80内の排液を浄化することができる。なお、以上に述べた作動順序を実現する方法は従来周知のシーケンス制御で容易に実施することができるので、エアシリンダー等の作動、空気制御は説明を省略してある。
また、付着工程、排出工程等の時間は、用途に応じて適宜調整することができる。
また各工程の切り替えは、手動で行うこともできるが、自動化することもできる。すなわち、付着工程、排出工程の時間を一定にしておき、所定の時間間隔ごとに各工程を自動的に切り替えるようにすることにより、人手を用いずに、排液槽の浄化を自動的に行い省力化を図ることができる。
なお、本発明の排液浄化装置は、図1に示すように、台車77にて運搬することができ、複数箇所の排液槽80の設置箇所へ移動して使用することができる。
【0033】
[2]排液浄化方法
本発明の排液浄化方法は、排液中に含まれる固形不純物を除去して該排液を浄化する排液浄化方法であって、第1捕捉槽に供給された前記排液中の磁性不純物を該第1捕捉槽内に挿着された磁気棒に付着させた後、前記磁性不純物が除去された該排液を第2捕捉槽に移送し、該排液中の非磁性不純物を該第2捕捉槽内に挿着された筒状のメッシュフィルターの外周面に付着させる付着工程と、前記磁気棒及び前記メッシュフィルターをそれぞれ第1清掃槽及び第2清掃槽に移動させる移動工程と、前記第1清掃槽において、前記磁気棒に付着した磁性不純物を前記第1清掃槽に設けられたスクレーパーとの摺接により集積させた後、エアーの噴射により排出するとともに、前記第2清掃槽において、前記メッシュフィルターの外周面に付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する排出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0034】
前記「付着工程」は、第1捕捉槽に供給された前記排液中の磁性不純物を該第1捕捉槽内に挿着された磁気棒に付着させた後、前記磁性不純物が除去された該排液を第2捕捉槽に移送し、該排液中の非磁性不純物を該第2捕捉槽内に挿着された筒状のメッシュフィルターの外周面に付着させる工程である。
前記「移動工程」は、前記磁気棒及び前記メッシュフィルターをそれぞれ第1清掃槽及び第2清掃槽に往復可能に移動させる工程である。前記磁気棒及び前記メッシュフィルターをそれぞれ第1清掃槽及び第2清掃槽から、元の第1捕捉槽及び第2捕捉槽に移動させて復帰させる工程も「移動工程」に含まれる。
前記「排出工程」は、前記第1清掃槽において、前記磁気棒に付着した磁性不純物を前記第1清掃槽に設けられたスクレーパーとの摺接により集積させた後、エアーの噴射により排出するとともに、前記第2清掃槽において、前記メッシュフィルターの外周面に付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する工程である。
本発明の排液浄化方法に係る「付着工程」、「移動工程」、「排出工程」は、上記の排液浄化装置を用いて行うことができ、その内容も、排液浄化装置の実施形態において説明した通りであるため、その説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の排液浄化装置及び排液浄化方法は、工作機械、加工品洗浄機等における排液を循環して用いる技術の分野において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
10;第1付着部材(磁気棒)、11;第1不純物(磁性不純物)、20;第2付着部材(メッシュフィルター)、20a;受け部、21;第2不純物(非磁性不純物)、30;第1捕捉槽、40;第2捕捉槽、50;第1清掃槽、51;スクレーパー、60;第2清掃槽、70;ポンプ、72;73;移動手段、85;91;排液、90;補給タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液中に含まれる固形不純物を除去して該排液を浄化する排液浄化装置であって、
前記排液を循環輸送するポンプと、
前記排液中において前記固形不純物のうちの第1不純物が付着する第1付着部材、及び前記排液中において前記固形不純物のうちの第2不純物が付着する第2付着部材と、
内部に前記第1付着部材が挿着され、前記第1不純物が付着して捕捉される第1捕捉槽、及び内部に前記第2付着部材が挿着され、前記第2不純物が付着して捕捉される第2捕捉槽と、
内部に前記第1付着部材が挿着され、該第1付着部材に捕捉された第1不純物が排出される第1清掃槽、及び内部に前記第2付着部材が挿着され、該第2付着部材に捕捉された第2不純物が排出される第2清掃槽と、
前記第1付着部材を前記第1捕捉槽から第1清掃槽に往復可能に移動させ、前記第2付着部材を前記第2捕捉槽から第2清掃槽に往復可能に移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする排液浄化装置。
【請求項2】
前記第1不純物は、磁性不純物であり、前記第2不純物は非磁性不純物であると共に、
前記第1付着部材は、前記磁性不純物が付着する磁気棒で形成され、前記第2付着部材は、前記非磁性不純物が付着するメッシュフィルターで形成されたことを特徴とする請求項1に記載の排液浄化装置。
【請求項3】
前記第1清掃槽は、前記磁気棒に付着した前記磁性不純物を摺接により除去するスクレーパーと、該スクレーパーとの摺接により除去されて集積された前記磁性不純物をエアーの噴射により排出する第1排出手段とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の排液浄化装置。
【請求項4】
前記メッシュフィルターの外周面に、その外周面に付着して捕捉された前記非磁性不純物を捕集する受け部が上下に複数段周方向に沿って突設されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の排液浄化装置。
【請求項5】
前記第2清掃槽は、前記メッシュフィルターに付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する第2排出手段を備えていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の排液浄化装置。
【請求項6】
前記ポンプは、前記第2捕捉槽の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の排液浄化装置。
【請求項7】
前記第2捕捉槽の下流側、且つ、前記ポンプの下流側に、該ポンプの停止直後に前記排液を逆流させて前記各捕捉槽内に該排液を補充することにより該各捕捉槽内の液面低下を防止する補給タンクを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の排液浄化装置。
【請求項8】
前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽とは同一円周上に配設されているとともに、前記第2捕捉槽と前記第2清掃槽とは前記円周と同心の同一円周上に配設され、
前記第1付着部材及び前記第2付着部材は、前記円周の中心を軸に同位相回動することによりそれぞれ前記第1捕捉槽と前記第1清掃槽との間及び前記第2捕捉槽と第2清掃槽との間を往復移動するよう設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の排液浄化装置。
【請求項9】
排液中に含まれる固形不純物を除去して該排液を浄化する排液浄化方法であって、
第1捕捉槽に供給された前記排液中の磁性不純物を該第1捕捉槽内に挿着された磁気棒に付着させた後、前記磁性不純物が除去された該排液を第2捕捉槽に移送し、該排液中の非磁性不純物を該第2捕捉槽内に挿着された筒状のメッシュフィルターの外周面に付着させる付着工程と、
前記磁気棒及び前記メッシュフィルターをそれぞれ第1捕捉槽から第1清掃槽に及び第2捕捉槽から第2清掃槽に往復可能に移動させる移動工程と、
前記第1清掃槽において、前記磁気棒に付着した磁性不純物を前記第1清掃槽に設けられたスクレーパーとの摺接により集積させた後、エアーの噴射により排出するとともに、前記第2清掃槽において、前記メッシュフィルターの外周面に付着した非磁性不純物をエアーの噴射により排出する排出工程と、
を備えたことを特徴とする排液浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−274231(P2010−274231A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131620(P2009−131620)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(597142549)興進工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】