説明

排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置

【課題】気体燃料の排熱エネルギーを燃料助燃用の空気の予熱と、供給するインゴットの予熱に再利用し、予熱されたインゴットを間歇的に供給できる自動供給装置を組込むようにして成るようにした排熱を利用したインゴットの熔融装置を提供することにある。
【解決手段】インゴット12の熔融炉を加熱する熔融炉加熱機構Aと、インゴット12を予熱する予熱室13を備えたチェーンコンベア9及びチェーンコンベア9の端部を熔融炉の開口上方に臨ませて、ピストンシリンダー機構18により一個宛順次と押出して傾斜路17より落下させるインゴット送給機構Bと、空気供給路を加熱する第1の熱交換部8及び前記インゴット送給機構Bに設けられる予熱室13に通ずる第2の熱交換部21を備えた排熱交換機構Cとより成ることを特徴とする排熱を利用したインゴットの熔融装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウムインゴットの熔融処理を、熔融処理に必要な熱エネルギーの排熱を再利用すると共に、併せてインゴット自体の予熱処理を行わせた熱効率の高い排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアルミニウムその他のインゴットの熔融装置は、気体ないしは液体の各種燃料を用いた構成のものが知られている。
【0003】
特に燃料の消費量を節約するための、炉を加熱するバーナーの燃焼用空気をバーナーで使用された排熱を再利用して新しい空気を予熱して排熱の無駄な放出を防ぐようにした構成の熔融装置も広く知られている(例えば、特許文献1参照。)
さらに、熔融されるインゴット自体を炉内に投入する前に炉のバーナーより得られる排熱を供給して予熱してから溶解液に供給するようにした構成の熔融装置も知られている(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−59384号公報
【特許文献2】特開平11−281264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す先行例は、専ら燃料として用いられる燃焼のための空気を予熱させるための熔融装置であり、また特許文献2の先行例は、インゴットを予熱するためにのみ排熱を利用するための熔融装置であって、バーナーの空気の予熱と同時に平行してインゴットの予熱についての配慮が成されていないという課題があった。
【0006】
さらに、インゴットを熔融状態にある炉内に、予め定めた設定温度に達した後、自動的に供給するための自動供給手段が欠除していないという課題もあった。
【0007】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、炉内で働く燃料を気体燃料とし、この燃料の排熱エネルギーを燃料助燃用の空気の予熱に再利用すると共に、供給するアルミニウムインゴットを設定温度まで加熱する熱エネルギーをバーナーの排熱を利用し、併せて逐次供給されるインゴットを設定温度に予熱し、予熱されたインゴットを間歇的に供給できる自動供給装置を組込むようにして成るようにした排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0009】
(1)アルミニウムインゴットの熔融炉を加熱するバーナーに気体燃料の吐出口及び空気の吐出口を開口して成る熔融炉加熱機構と、棒柱状のアルミニウムインゴットを縦方向に並列して移行させて、アルミニウムインゴットを予熱する予熱室を備えたチェーンコンベア及び前記チェーンコンベアの端部を前記熔融炉の開口上方に臨ませて、ピストンシリンダー機構により一個宛順次と押出して傾斜路より落下させるアルミニウムインゴット送給機構と、前記バーナーの加熱処理後の排熱流が流通する過程に、前記熔融加熱機構の空気の吐出口に向う空気供給路を加熱する第1の熱交換部及び前記アルミニウムインゴット送給機構に設けられる予熱室に通ずる第2の熱交換部を備えた排熱交換機構とより成ることを特徴とする排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。
【0010】
(2)前記アルミニウムインゴット送給機構は、間欠モータにより作動するチェーンコンベアを間欠移動させ、チェーンコンベアの後部に前記予熱室を配設し、この予熱室の後端に予熱処理されたアルミニウムインゴットを熔融炉の開口溝に投下できるピストンシリンダー機構とアルミニウムインゴットを滑落させることができる傾斜路を設けて成ることを特徴とする前記(1)記載の排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。
【0011】
(3)前記チェーンコンベアの予熱室は、昇降する前扉と後扉とより成り、チェーンコンベア上のアルミニウムインゴットが入室及び出室する度毎に開閉させて成ることを特徴とする前記(1)記載の排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルミニウムインゴットの熔融に際し、燃料としてLPGなどの気体燃料を用い、かつ空気などの助燃気体は、インゴット熔融炉を加熱した排熱により第1の熱交換部で予熱すると共に、前記熔融炉に供給されたアルミニウムインゴットを同様にインゴット熔融炉を加熱した排熱による第2の熱交換部で予熱させているので、熱効率が従来に比し格段と向上できる。
【0013】
殊に、アルミニウムインゴット送給機構は棒柱状のアルミニウムインゴットを縦方向にチェーンコンベア上に並列させて、一個宛順次移送して予熱されたアルミニウムインゴットを傾斜路よりピストンシリンダー機構により随時、間欠的に熔融炉の開口部よりアルミニウム熔融液上に投下供給させているので、常に熔融炉内の加熱熔融されているアルミニウムの補助処理を燃料の無駄なく適確に行わせることができる。
【0014】
従って、アルミ鋳造製作を能率的に行うことができる。
【0015】
さらに、アルミニウムインゴット送給機構に設けられる予熱室は、アルミニウムインゴットの入口側の前扉とアルミニウムインゴットの傾斜路の手前に設けられる後扉とはアルミニウムインゴットの入室,出室に応じて開閉させているので、予熱室内の排熱温度の不用意な温度降下が防がれ、設定された恒温状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る排熱を利用したアルミニウムインゴット熔融装置の要部の平面図
【図2】アルミニウムインゴットの熔融炉並びに熱交換機構を断面で示す図1の側面図
【図3】(a),(b)アルミニウムインゴット送給機構の予熱室の前扉の開閉操作状況を示す要部の斜視図
【図4】アルミニウムインゴットの熔融炉へ供給する傾斜路の構成と後扉の構成を示す要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0018】
図面ついて、1はアルミニウム熔融炉、2はバーナーでLPGなどの気体燃料の導入管3及びブロア4と通ずる空気供給管5を開口接続させてある。6はアルミニウム熔融釜で、熔融炉加熱機構Aを構成している。7は前記炉1の排気部で、排気ダンパー7−1を有する。8は前記排気部7の外周に捲装させたパイプ状の第1の熱交換部で、前記空気供給管5と連通させてある。
【0019】
即ち、作動始動時はブロア4より供給された周囲環境温度の空気を、第1の熱交換部8を介して空気供給管5を介してバーナー2に助燃材料として供給するが、炉1でのLPG燃料ガスによる燃焼加熱して、高温になるとブロア4よりの空気は排熱の通路の排気部7に捲装した第1の熱交換部8で熱交換されて加熱され、高温状態となってバーナー2に供給されてLPGの気体燃料と効率的な燃焼作用を行わせることができる。
【0020】
符号9は、前記炉1に近接して配設されるアルミニウムインゴット送給機構Bのチェーンコンベア、10はステッピングモータのような間欠駆動モータ、11は、棒柱状のアルミニムウインゴット12を縦方向に一定間隔を以って並列する載置部、13はチェーンコンベア9の後部に設けられる筒状の予熱室、14はアルミニウムインゴット12の入口側に設けられる前扉、15はアルミニウムインゴット12の出口側に設けられる後扉であって、両扉14,15は、ピストンシリンダーなどの昇降器16,16によって開閉操作させている。17は後扉15より前方に配設される予熱されたアルミニウムインゴット12を側方に臨まれる前記炉1の釜6のアルミニウム熔融炉1上に投下できる傾斜路、18は前記傾斜路17の一側に設けたピストンシリンダー機構であって、ピストン爪19をアルミニウムインゴット12の端部に係止させて前記傾斜路17へ移動し、滑落させて自重により熔融釜6内に供給することができる。
【0021】
さらに、符号20は前記熔融炉1の管状の排気部7と接続される排熱管で、前記予熱室13と接続されてチェーンコンベア9上の移送されてくるアルミニウムインゴット12を加熱するための第2の熱交換部21を構成している。22は予熱室13に突設した排気管である。
【0022】
そして、第1の熱交換部8と第2の熱交換部21とにより排熱交換機構Cを構成している。
【0023】
なお、図示していないが熔融炉1の加熱温度、第1の熱交換部8、第2の熱交換部21の加熱温度は、温度計により常時計測すると共に、チェーンコンベア9の間欠移動、予熱室13の前扉14、後扉15の昇降による開閉操作などは、予めプログラム設計された速度の下に適正に自動制御させることができる。
【0024】
以上の構成の下に、作用を説明する。
【0025】
適正な点火手段で燃焼させた熔融炉1のバーナー2により気体燃料は、ブロア4より加圧された助燃用の空気と混合して燃焼し、次第に求める高温燃焼に達し、熔融炉1はLPGガスの常温下の最高温度に達し、釜6内のアルミニウムインゴット12は、熔融し始め、760℃の熔融状態に達する。
【0026】
そして、アルミニウム熔融炉1内での熔融炉加熱機構Aによる燃焼作用が続くと、排気部7を通過する排気ガスも亦500℃以上の温度を保持して排熱管20へ導入される。
【0027】
そこで排気部7には、ブロア4よりの空気は排気部7に設けた捲装した第1の熱交換部8内を通過するので、加熱空気となってバーナー2に供給される。
【0028】
したがって、LPGなどの気化燃料との効率的な混合が行われて必要以上の気化燃料を消費することなく、適正なLPGの消費量で熔融炉1を加熱できる。
【0029】
更にアルミニウムインゴット送給機構Bのチェーンコンベア9に設けたアルミニウムインゴット12の予熱室13には熔融炉1の排気部7と接続されている排熱管20が開口連結して第2の熱交換部21を形成してあるので、排気部7よりの排気ガスは、予熱室13内に供給され、チェーンコンベア9上の予熱室13内に供給されたアルミニウムインゴット12を加熱予熱し、200℃前後に昇温させることができる。
【0030】
斯して、予熱されたアルミニウムインゴット12は、チェーンコンベア9の最終位置において、ピストンシリンダー機構18のピストン爪19によりアルミニウムインゴット12の端部を係止して側方に移送し、傾斜路17に移動させるとアルミニウムインゴット12は自重により滑落してアルミニウム熔融炉1のアルミニウム熔融釜6内に供給できる。
【0031】
供給されるアルミニウムインゴット12は、既に200℃前後に予熱されているので、釜自体の温度を必要以上に低下させることなく、周囲の熱を得て熔融される。
アルミニウム熔融炉1内で熔融されたアルミニウムは手動ないし自動で、例えば、隣接されるアルミニウム移送装置に送られて求める製品を鋳造できる。
【0032】
そして、アルミニウムインゴット送給機構Bでは、チェーンコンベア9に設けた予熱室13の手前では人為的に供給するアルミニウムインゴット12を、順次並列に載置するが、予熱室13の前後に配設される前扉14、後扉15の昇降開閉は、チェーンコンベア9の移動速度と連動し、かつ予熱されたアルミニウムインゴット12の釜6への滑落供給を行う、ピストンシリンダー機構18の作動と連動させてあるので、アルミニウム熔融釜6内のアルミニウム消費量に応じた必要数の予熱したアルミニウムインゴット12を適切に釜6へ供給できる。
【0033】
さらに、LPGガスの気体燃料の供給に応ずる助燃用の空気は単なる空気のブロアだけでなく熔融炉1のバーナー2で得られる排熱の第1の熱交換部8による予熱利用と、釜6へ供給されるアルミニウムインゴット12の予熱室13における第2の熱交換部21における有効な予熱利用が行われる。
【0034】
即ち、熔融炉1内でのバーナー2の排熱は、第1の熱交換部8及び第2の熱交換部21を構成する排熱交換機構Cによって、常に有効に再利用しているので、エネルギーの無駄をなくして効率の高いアルミニウムインゴットの熔融処理を行わせることができる。
【0035】
そして、予熱室13に設けた排気ダンパー23を有する排気管22と炉側の排気部7により低温の下、安全に排気できる。
【符号の説明】
【0036】
1 炉
2 バーナー
3 導入管
4 ブロア
5 空気供給管
6 アルミニウム熔融釜
7 排気部
7−1 排気ダンパー
8 第1の熱交換部
9 チェーンコンベア
10 間欠駆動モータ
11 載置部
12 アルミニウムインゴット
13 予熱室
14 前扉
15 後扉
16 昇降器
17 傾斜路
18 ピストンシリンダー機構
19 ピストン爪
20 排熱管
21 第2の熱交換部
22 排気管
23 排気ダンパー
A 熔融炉加熱機構
B アルミニウムインゴット送給機構
C 排熱交換機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムインゴットの熔融炉を加熱するバーナーに気体燃料の吐出口及び空気の吐出口を開口して成る熔融炉加熱機構と、棒柱状のアルミニウムインゴットを縦方向に並列して移行させて、アルミニウムインゴットを予熱する予熱室を備えたチェーンコンベア及び前記チェーンコンベアの端部を前記熔融炉の開口上方に臨ませて、ピストンシリンダー機構により一個宛順次と押出して傾斜路より落下させるアルミニウムインゴット送給機構と、前記バーナーの加熱処理後の排熱流が流通する過程に、前記熔融加熱機構の空気の吐出口に向う空気供給路を加熱する第1の熱交換部及び前記アルミニウムインゴット送給機構に設けられる予熱室に通ずる第2の熱交換部を備えた排熱交換機構とより成ることを特徴とする排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。
【請求項2】
前記アルミニウムインゴット送給機構は、間欠モータにより作動するチェーンコンベアを間欠移動させ、チェーンコンベアの後部に前記予熱室を配設し、この予熱室の後端に予熱処理されたアルミニウムインゴットを熔融炉の開口溝に投下できるピストンシリンダー機構とアルミニウムインゴットを滑落させることができる傾斜路を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。
【請求項3】
前記チェーンコンベアの予熱室は、昇降する前扉と後扉とより成り、チェーンコンベア上のアルミニウムインゴットが入室及び出室する度毎に開閉させて成ることを特徴とする請求項1記載の排熱を利用したアルミニウムインゴットの熔融装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137204(P2012−137204A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288090(P2010−288090)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(598147514)東京ファーネス工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】