説明

排熱利用システム及び運転方法

【課題】2台以上の排熱発生機器と1台以上の排熱利用機器とを排熱搬送経路で接続した排熱利用システムにおいて、排熱発生機器の主機能に支障を来たすことなく排熱発生機器からの排熱を効率よく取得し、排熱利用機器に供給できる排熱利用システム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】複数の排熱発生機器からなる排熱発生機器群1と、複数の排熱利用機器からなる排熱利用機器群2と、排熱発生機器群1と排熱利用機器群2を接続する排熱搬送経路3と、制御装置を備えた排熱利用システムであって、制御装置により排熱発生機器の主機能に支障を来たすことなく排熱発生機器からの排熱を効率よく取得し、排熱利用機器に供給できるように、排熱発生機器の排熱取得台数、排熱取得開始順序等を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台以上の排熱発生機器と1台以上の排熱利用機器とを排熱搬送経路で接続した排熱利用システム及び運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機或いはボイラなどの熱源機器の台数制御は、一般に熱負荷状態に応じて熱源機器の運転台数を制御する台数制御をおこなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、冷凍機或いはボイラと異なり、排熱発生機器には、排熱を発生させることが一次機能でないものがある。例えば、コジェネレーションならば、一般に発電することが主機能となっており、加熱炉では、炉内の加熱が主機能になっている。そのため排熱需要(熱負荷)だけを勘案した台数制御では、排熱発生機器の一次機能(発電機能等)に支障を来たすことがある。例えば、排熱発生機器冷却水を排熱源として利用する場合、排熱を利用できないときには、排熱発生機器冷却のためにラジエータや冷却塔を使用して動力を投入してでも排熱を捨てなければならないという問題がある。例えば、エンジン冷却水、加熱炉冷却水などの排熱発生機器の冷却水は排熱源となりうるものであるが、排熱発生機器を運転した時に、排熱発生機器或いはその関連機器の運転に伴って必ず発生し、排熱発生機器の運転のためには冷却することが必須である。また一方で、排ガスボイラなどからの排熱利用は一般的に排ガスの利用状況は排熱発生機器の運転には支障を来たすことはない。このように、排熱発生機器からの排熱を有効に使用するためには、排熱源の条件を勘案した上で、排熱取得を行なわなければならないという課題がある。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、2台以上の排熱発生機器と1台以上の排熱利用機器とを排熱搬送経路で接続した排熱利用システムにおいて、排熱発生機器の主機能に支障を来たすことなく排熱発生機器からの排熱を効率よく取得し、排熱利用機器に供給できる排熱利用システム及び運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、2台以上の排熱発生機器と、1台以上の排熱利用機器と、該排熱発生機器と排熱利用機器とを接続する排熱搬送経路と、制御装置を備えた排熱利用システムであって、前記排熱利用機器の排熱利用量を検出する排熱利用量検出手段を備え、前記制御装置は、前記排熱利用量検出手段で検出した排熱利用量検出値から排熱利用量の増・減を判断し、該排熱利用量が所定量増・減したら、排熱発生機器の排熱取得台数を増・減させる排熱取得台数制御機能を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排熱利用システムにおいて、前記排熱発生機器の故障を検出する故障検出手段を備え、前記制御装置は、故障中の排熱発生機器を排熱取得台数制御から外す機能を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の排熱利用システムにおいて、前記制御装置の排熱取得台数制御機能は、下記(a)乃至(d)の機能のうちの何れか1つ又は2つ以上を備えたことを特徴とする。
(a)運転時間の短い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱取得を開始する機能、
(b)運転時間の長い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱取得を停止する機能、
(c)優先機を決定する運転時間として、排熱発生機器の累積運転時間或いは所定期間の運転時間とする優先機決定機能、
(d)優先機を決定する運転時間として、排熱発生機器の累積排熱取得時間或いは所定期間の排熱取得時間とする優先機決定機能
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排熱利用システムにおいて、前記制御装置の排熱取得台数制御機能は、下記(e)、(f)の何れか一方又は両機能を備えたことを特徴とする。
(e)累積或いは所定期間の排熱発生機器の運転時間又は排熱取得時間に、所定の優先時間を加減算した優先機判断時間を使用して優先機を決定する優先機決定機能、
(f)累積或いは所定期間の排熱発生機器の運転時間又は排熱取得時間に、所定の優先率を乗除算した優先機判断時間を使用して優先機を決定する優先機決定機能
【0009】
請求項5に記載の発明は、2台以上の排熱発生機器と、1台以上の排熱利用機器と、該排熱発生機器と排熱利用機器とを接続する排熱搬送経路とを備えた排熱利用システムの運転方法であって、排熱利用機器の排熱利用量が所定量増加したら、排熱発生機器の排熱取得台数を増加させ、排熱利用機器の排熱利用量が所定量減少したら、排熱発生機器の排熱取得台数を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排熱発生機器の主機能に支障を来たすことなく排熱発生機器からの排熱を効率よく取得し、排熱利用機器に供給できる排熱利用システム及び運転方法を提供できる。特に、エンジンコージェネレーションのエンジン冷却水や各種加熱炉の冷却水からの排熱取得のように、排熱を取得しない場合に、コージェネレーション機器や各種加熱炉の運転に支障を来してしまうような排熱発生機器からの排熱を効率よく取得可能な排熱利用システムを提供できる。また、排熱利用機器の排熱需要に合わせて、最適な容量の排熱発生機器から排熱取得を行うとともに、最適な排熱取得台数及び排熱取得開始順序に制御することができ、最適な排熱取得容量に保つことが可能な排熱利用システムも提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
〔排熱利用システム〕
図1は本発明に係る排熱利用システムの概略フローを示す図である。図示するように、排熱利用処理システムは、複数の排熱発生機器からなる排熱発生機器群1と複数の排熱利用機器からなる排熱利用機器群2とを、排熱搬送経路3で接続されている。排熱搬送経路3は排熱搬送媒体を流す流路で、排熱発生機器群1から排熱利用機器群2に排熱搬送媒体を送る排熱搬送往路3−1と、排熱媒体を循環使用するための排熱搬送復路3−2で構成される。なお、排熱搬送媒体を循環使用しない場合、例えば排熱搬送後に放出する蒸気或いはその凝縮水、1回だけ利用して排出する河川水や海水、井水等の場合は排熱搬送復路3−2を設ける必要がない。
【0012】
また、排熱搬送往路3−1には、図示はしないが必要に応じてポンプ・圧縮機、送風機、ブロア等の排熱搬送媒体を搬送するための搬送装置を設ける。搬送装置には、排熱発生機器群1の各排熱発生機器ごとに設ける一次排熱搬送装置、ヘッダーやタンクに集められ排熱搬送媒体を排熱利用機器群2に搬送するための二次排熱搬送装置がある。
【0013】
排熱搬送経路3には、排熱発生機器群1の各排熱発生機器及び排熱利用機器群2の各排熱利用機器を使用し或いは使用しないの状態に応じて、排熱搬送媒体を排熱発生機器及び排熱利用機器に流したり或いは流さなかったりするための切り替える弁等の排熱搬送経路切り替え装置を設けてもよい。また、各排熱発生機器及び各排熱利用機器への排熱搬送媒体への流量を制御するため流量制御手段を設けても良い。この流量制御手段の例としては、流量制御弁による流量制御、搬送装置の容量制御(回転数制御装置、…電源周波数制御装置、モータ極数切替、電源電圧制御)による流量制御がある。
【0014】
温度の異なる排熱発生機器を一つの排熱搬送経路3に接続する際には、排熱発生機器と排熱搬送往路とは熱交換器を介して排熱を排熱搬送媒体に移送することが望ましい。この場合排熱搬送媒体の熱交換器出口温度が一定になるように熱交換量を制御するのがよい。制御方法としては、熱交換器への排熱搬送媒体の流入量を流量制御手段で制御する方法、排熱発生機器の排熱発生量を制御する方法がある。排熱発生機器の排熱発生量を制御する方法としては、
・排ガスボイラの容量制御(ボイラへの排ガス導入量制御)
・排熱発生機器本体の容量制御
・地熱や温泉熱の取得手段の容量制御(ポンプやバルブによる流量制御等)
・太陽熱の場合は太陽熱集熱器の受熱面積の制御(集熱器台数制御等)
の例がある。
【0015】
〔排熱搬送媒体〕
排熱搬送媒体は、排熱発生機器群1の排熱発生機器及び排熱利用機器群2の排熱利用機器で熱交換を行い、顕熱(温度差)、潜熱(相変化)、その他の化学変化(吸熱/発熱反応)を利用して、排熱発生機器から排熱利用機器に熱を搬送する媒体である。この排熱搬送媒体例としては、水(温水、冷水)、蒸気、各種水溶液、各種有機物(フロン類、アルコール類等)がある。この各種水溶液としては、下記の水溶液がある。
・各種の無機物或いは有機物(エチレングリコール)を混入し、不凍液とした水溶液
・各種の無機物或いは有機物を混入し、凍結時に流動性を有するようにした水溶液
【0016】
〔排熱発生機器〕
排熱発生機器群1の排熱発生機器は1種類或いは複数種類の機器からなり、図1の排熱利用システムでは、複数台のエンジンコジェネレーション10−1、…10−n、タービンコジェネレーション11−1、…11−n、複数台の各種加熱炉12−1、…12−n、複数台の蒸気ボイラや蒸気利用機器13−1、…13−n、各種の自然熱源14−1、…14−nがある。コジェネレーションは燃料を投入することで、電気と熱を同時に供給する装置であり、エンジンあるいはタービンで発電機を駆動するものや燃料電池がある。蒸気利用機器としては蒸気焚吸収冷凍機、各種製造やクリーニング工場等での各種蒸気による加熱器がある。自然熱源としては地熱、温泉、太陽熱がある。
【0017】
〔排熱発生機器の運転〕
コジェネレーション10−1、…10−n、11−1、…11−nは、
・熱に比べて電気の方が、使用領域が広く、有効性も高い。
・熱に比べて電気の方が、一般的に使用する時間帯、期間、時期が広い。
ため、一般的にユーザーが電気を必要とする時に運転される(電主熱従)。ただし、
・熱(蒸気や温水)が必要とされて運転されることも考えられる。
・熱利用機器の使用状況に合わせて運転することも考えられる。
が、一般的でない。
【0018】
各種の加熱炉12−1、…12−nは、ユーザーの業務の都合に合わせて運転される。排熱は、各種加熱炉が運転中に、排熱利用機器群2の排熱利用機器の排熱利用状況に合わせて、排熱を供給することになる。
【0019】
蒸気ボイラや蒸気利用機器13−1、…13−nは、ユーザーの業務の都合に合わせて運転される。
【0020】
自然熱源14−1、…14−n内の地熱や温泉熱は、排熱利用機器群2の排熱利用機器の排熱使用状況に合わせて随時、排熱を供給することが可能である。また、太陽熱も日中であれば、排熱利用機器群2の排熱利用機器の排熱使用状況に合わせて随時、排熱を供給することが可能である。
【0021】
〔排熱利用機器〕
排熱利用機器群2は1種類或いは複数種類の排熱利用機器からなり、図1の排熱利用システムでは、複数台の給湯装置20−1、…20−n、複数台の蒸気発生装置21−1、20−2、…21−n、複数台の吸収冷凍機22−1、22−2、…22−n、複数台の発電装置23−1、23−2、…23−n、複数台の動力発生(回収)装置24−1、24−2、…24−n、複数台の蒸留装置25−1、25−2、…25−nがある。
【0022】
上記給湯装置20−1、…20−nとしては、排熱搬送媒体との熱交換器、温水ボイラがある。蒸気発生装置21−1、20−2、…21−nとしては、排ガスボイラや第2種の吸収ヒートポンプがある。吸収冷凍機22−1、22−2、…22−nとしては、タービン駆動の圧縮式冷凍機がある。発電装置23−1、23−2、…23−nとしては、排熱搬送媒体を熱源とするランキンサイクルを利用した発電装置(その他カリーナサイクル等を使用する発電サイクルは任意)、熱電変換素子(ペルチェ素子等)がある。動力発生(回収)装置24−1、24−2、…24−nとしては、排熱搬送媒体を熱源として膨張機を駆動して動力を取り出すタービン駆動圧縮機等がある。
【0023】
〔排熱利用機器の運転〕
排熱発生機器群1のエンジンコジェネレーション10−1、…10−nが運転された場合に、エンジンコジェネレーション10−1、…10−nからの排熱が排熱利用機器群2に供給可能となり、ユーザーのニーズに合わせて排熱利用機器群2の排熱利用機器を運転することが一般的である。ただし、
・排熱発生機器群1の運転状態に合わせて、排熱利用機器群2の排熱利用機器を運転する。
・排熱利用機器群2の排熱利用機器が運転した時に、排熱搬送媒体を排熱利用機器群2の各排熱利用機器に供給する。
・排熱搬送媒体を排熱搬送経路3に常に流しておき、各排熱利用機器群2の各排熱利用機器の運転時にそのまま、排熱を利用できるようにしてもよい。この場合、排熱利用機器群2の排熱利用機器が停止中は排熱搬送媒体は、当該排熱利用機器に使用されずに素通りすることになる。
としてもよい。
【0024】
各種加熱炉12−1、…12−nが運転された場合に、加熱炉12−1、…12−nからの排熱が排熱利用機器群2の各排熱利用機器に供給可能となり、ユーザーのニーズに合わせて排熱利用機器を運転することが一般的である。ただし、
・排熱発生機器群1の排熱発生機器に合わせて、排熱利用機器を運転する。
・排熱利用機器群2の排熱利用機器が運転された時に、排熱搬送媒体を排熱利用機器に供給する。
・排熱搬送媒体を排熱搬送経路3に常に流しておき、排熱利用機器群2の各排熱利用機器の運転時にそのまま、排熱を利用できるようにしてもよい。この場合、排熱利用機器群2が排熱利用機器停止中は排熱搬送媒体は、当該排熱利用機器を使用されずに素通りすることになる。
としてもよい。
【0025】
蒸気ボイラや蒸気利用機器13−1、…13−nが運転した場合に、該蒸気ボイラや蒸気利用機器13−1、…13−nからの排熱が排熱利用機器群2に供給可能となり、ユーザーのニーズに合わせて排熱利用機器群2の排熱利用機器を運転することが一般的である。ただし、
・排熱発生機器群1の排熱発生機器の運転に合わせて、排熱利用機器群2の排熱利用機器を運転する。
・排熱利用機器群2の各排熱利用機器が運転された時に、排熱搬送媒体を排熱利用機器群2に供給する。
・排熱搬送媒体を排熱搬送経路3に常に流しておき、排熱利用機器群2の各排熱利用機器の運転時にそのまま、排熱を利用できるようにしいもよい。この場合、排熱利用機器群2の停止中は排熱搬送媒体は、当該排熱利用機器に使用されずに素通りすることなる。
としてもよい。
【0026】
排熱発生機器群1の排熱発生機器が自然熱源14−1、…14−nである場合は、排熱利用機器群2の排熱利用機器のユーザーの運転に合わせて、排熱を供給する。
【0027】
〔台数制御の必要性〕
排熱発生機器群1の排熱発生機器が運転され、排熱利用機器群2に排熱が供給可能となった場合に、排熱利用機器群2の排熱利用機器が必要とする排熱を過不足なく供給しなければならない。そのためには、排熱発生機器群1の排熱発生機器からの排熱取得量を調整・制御する必要がある。この排熱取得量を調整する例としては、
・エンジンコジェネレーション10−1、…10−nやタービンコジェネレーション11−1、…11−nの排ガスボイラの容量制御(ボイラへの排ガス導入量制御)
・排熱源となる各種冷却水等の冷却器・放熱器・冷却塔による放熱量制御
・各排熱発生機器の容量制御(排熱取得量に合わせて制御が可能なら)。ただし、各排熱発生機器の容量制御は、電主熱従の排熱利用システム(例えばコジェネレーション)では採用困難であり、熱主電従の思想を持つコジェネレーションでは可能である。
・自然熱源14−1、…14−nの排熱取得の容量制御(搬送媒体の流量制御等)の例がある。
【0028】
排熱取得量の調整量が所定(排熱発生機器1台の取得量)以上となった場合は、排熱発生機器から排熱を取得する台数を増減した方がよく、それは、
・一般に、機械類は低負荷運転時より負荷の高い状態の方が機器の運転効率がよい。
・排熱発生機器の取得台数を減らすことで、搬送ポンプなどの補機の運転台数も減らせる。(補機の運転時間が減らせ、メンテナンス期間が延ばせるとともに、搬送ポンプ等の補機動力を減らすことができる。)
のような理由から、できるだけ排熱需要を満足できる最小台数で高負荷状態での運転が好ましいことによる。
【0029】
具体的には、排熱利用機器群2の排熱利用機器が必要とする排熱利用量に合わせて、排熱発生機器群1の排熱発生機器の排熱取得台数を、
・排熱利用量が所定の調整量以上増えた場合、排熱発生機器群1の排熱を取得する排熱発生機器の台数を増やす。
・排熱利用量が所定の調整量以上減った場合、排熱発生機器群1の排熱を取得する排熱発生機器の台数を減らす。
のように増減することが望ましい。
【0030】
図2は本発明に係る排熱利用システムの排熱搬送フローを示す図である。図示するように、本排熱利用システムは複数台(図では4台)の排熱発生機器1−1〜1−4と複数台(図では4台)の排熱利用機器2−1〜2−4とを備えている。排熱発生機器1−1〜1−4の排熱搬送媒体出口は配管4で搬送媒体往ヘッダー5に接続され、排熱発生機器1−1〜1−4の排熱搬送媒体入口は配管6で搬送媒体還ヘッダー7に接続されている。搬送媒体往ヘッダー5は排熱搬送往路3−1を経由して排熱利用機器2−1〜2−4の排熱搬送媒体入口に接続され、排熱利用機器2−1〜2−4の排熱搬送媒体出口は排熱搬送復路3−2を経由して搬送媒体還ヘッダー7に接続されている。
【0031】
15は冷却塔やラジエータ等の排熱放熱機器であり、排熱放熱機器15の排熱搬送媒体入口は配管8で搬送媒体還ヘッダー7に接続され、その排熱搬送媒体出口は配管9で前記配管6に接続されている。V1〜V4は排熱発生機器1−1〜1−4の排熱搬送媒体出口に設けた開閉弁、V5は排熱放熱機器15の排熱搬送媒体出口に設けた開閉弁、V6〜V9は排熱発生機器1−1〜1−4の排熱搬送媒体入口に設けた開閉弁、V10は排熱放熱機器15の排熱搬送媒体入口に設けた開閉弁、V11は排熱発生機器1−4をバイパスするバイパス経路に設けた開閉弁である。
【0032】
V12は搬送媒体往ヘッダー5と搬送媒体還ヘッダー7の間に設けられた差圧調整弁、26は排熱搬送往路3−1と排熱搬送復路3−2の間に設けた温水蓄熱槽等の蓄熱手段、V13は排熱搬送往路3−1と蓄熱手段26の間に設けた開閉弁、V14は排熱搬送復路3−2と蓄熱手段21の間に設けた開閉弁、V15は搬送媒体往ヘッダー5と蓄熱手段26を接続する配管に設けた開閉弁、16は搬送媒体還ヘッダー7と蓄熱手段26を接続する配管に設けた開閉弁、V17〜V19は排熱利用機器2−1〜2−3の排熱搬送媒体入口に接続された開閉弁、V20〜V22は排熱利用機器2−1〜2−3の排熱搬送媒体出口に接続された開閉弁、V23は排熱利用機器2−4は排熱搬送媒体入口に接続された三方弁である。
【0033】
P1〜P4はそれぞれ搬送媒体還ヘッダー7から配管6を経由して流れる排熱搬送媒体を排熱発生機器1−1〜1−4に送るポンプ、P5は搬送媒体還ヘッダー7から配管8を経由して流れる排熱搬送媒体を排熱放熱機器に送るポンプである。P6は搬送媒体往ヘッダー5内の搬送媒体を排熱搬送往路3−1に送るポンプ、P7は搬送媒体還ヘッダー7内の搬送媒体を蓄熱手段26に送るポンプである。開閉弁V1〜V11、開閉弁V17〜V22、三方弁23は排熱利用システム制御盤30で制御される。また、ポンプP1〜P7、排熱発生機器機器1−1〜1−4、排熱放熱機器15、及び排熱利用機器2−1〜2−4も排熱利用システム制御盤30で制御される。
【0034】
排熱発生機器1−1〜1−4から排出される排熱搬送媒体は、それぞれ開閉弁V1〜V4を通って配管4に流入し、該配管4を通って搬送媒体往ヘッダー5に集められる。搬送媒体往ヘッダー5内の排熱搬送媒体はポンプP6により排熱搬送往路3−1及び開閉弁V17〜V19、三方弁V23を通って排熱利用機器2−1〜2−4にそれぞれに流入するようになっている。排熱利用機器2−1〜2−4の排熱搬送媒体出口から排出された排熱搬送媒体は排熱搬送還路3−2を通って搬送媒体還ヘッダー7に集められ、該搬送媒体還ヘッダー7からポンプP1〜P4により排熱発生機器1−1〜1−4のそれぞれに戻るようになっている。
【0035】
搬送媒体還ヘッダー7の排熱搬送媒体はポンプP5により配管8、開閉弁V10を通って排熱放熱機器15に送られ、放熱され、放熱された排熱搬送媒体は開閉弁V5、配管9を通って配管6に戻される場合もある。なお、ポンプP1〜P7は必ずしも必要ものではなく、場合によっては省くことができる。ポンプP1〜P4は排熱発生機器1−1〜1−4毎に設ける一次排熱搬送手段であり、ポンプP6は搬送媒体往ヘッダー5に集められた排熱搬送媒体を排熱利用機器2−1〜2−4に搬送するための二次排熱搬送手段である。
【0036】
開閉弁V1〜V11、開閉弁V17〜V22、三方弁23、排熱発生機器1−1〜1−4及び排熱利用機器2−1〜2−4のそれぞれ使用する場合或いは使用しない場合の状態によって、排熱搬送媒体を排熱発生機器1−1〜1−4及び排熱利用機器2−1〜2−4のそれぞれ流す或いは流さないを切り替える作用を行う。
【0037】
また、排熱発生機器1−1〜1−4及び排熱利用機器2−1〜2−4への排熱搬送媒体の流量を制御する手段を設けてもよい。この流量制御手段としては図示しない流量制御弁を設けたり、ポンプP1〜P7により流量制御(例えば、ポンプP1〜P7を駆動するモータの周波数制御、該モータの極数切り替え、電源電圧制御)を行う。
【0038】
排熱温度の異なる複数台の排熱発生機器1−1〜1−4を一つの排熱搬送経路である配管4に接続する際には、排熱発生器1−1〜1−4と配管4とは、上述のように図示しない熱交換器を介して排熱を配管4に移送することが望ましい。この場合、上述のように熱交換器の排熱搬送媒体出口温度が一定になるように熱交換量を制御するのがよい。
【0039】
〔排熱取得機器台数制御の基本フロー〕
排熱取得機器台数制御は次の(1)〜(6)のルールに従って行う。
(1)排熱発生機器群1内の故障した排熱発生機器は台数制御から外す。
排熱発生機器群1の排熱取得中の排熱発生機器に故障が発生した場合は、当該排熱発生機器からの排熱取得を停止して代替排熱発生機器から排熱取得を行い、排熱取得を行っていない排熱発生機器に故障が発生した場合は、当該排熱発生機器を排熱取得機器台数制御フローから外し、排熱取得台数を増加させる場合は他の排熱発生機器からの排熱取得を開始する。
また、排熱発生機器が故障から復帰した場合は、当該排熱発生機器を排熱取得機器台数制御フローに戻し、排熱取得機器台数制御フローの必要に応じて排熱取得を行う。
同様に運転或いは排熱取得が禁止されている排熱発生機器も同様に台数制御から外す(例えば、メンテナンス中等)。
【0040】
(2)排熱発生機器群1内の運転時間の短い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱の取得を開始する。
運転時間の短い排熱発生機器から排熱の取得を開始することによって、補機類を含めて各種排熱発生機器の運転時間の均等化が図れる。
【0041】
(3)運転時間の長い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱の取得を停止する。
運転時間の長い排熱発生機器から排熱の取得を停止することによって、補機類を含めて各種排熱発生機器の運転時間の均等化が図れる。
【0042】
(4)優先機を決定する運転時間には、排熱発生機器の運転時間でも排熱発生機器からの排熱取得時間を使用する。
排熱発生機器設置からの累積運転時間で判断すれば、設置からの累積運転時間の均等化が図れる。
また、月間或いは週間等のある中短期間で運転時間を判断すれば、排熱発生機器の取り替えや追加設置した排熱発生機器があっても設置時期に応じた運転時間の均等化が図れる。
【0043】
(5)排熱利用機器群2の排熱利用機器の排熱利用量が増加したら、優先順位の高い排熱発生機器群1内の排熱取得する排熱発生機器の台数を増加する。
【0044】
(6)排熱利用機器群2の排熱利用機器の排熱利用量が減少したら、優先順位の高い排熱発生機器群1内の排熱取得する排熱発生機器の台数を減少する。
【0045】
次に、排熱発生機器からの排熱取得台数の制御に使用する排熱利用機器の排熱利用量の増減判断は次の(1)〜(4)のような方法で行うことができる。
(1)排熱搬送媒体の熱量による判定
熱量(排熱搬送量)の測定は、排熱搬送媒体の排熱発生機器群1或いは排熱利用機器群2の排熱搬送往路3−1と排熱搬送還路3−2の温度と流量を測定することで算出でき、排熱搬送媒体の熱量(往或いは還)が増加したら排熱利用量増加したと判断し、排熱利用量が所定の閾値を越えて増加した場合に、排熱取得する排熱発生機器の台数を増加させればよい。また排熱利用量が所定の閾値を所定時間継続して越えたら排熱取得する排熱発生機器の台数を増加するようにしてもよい。
同様に、排熱搬送媒体の熱量(往或いは還)が減少したら排熱利用量減少したと判断し、排熱利用量が所定の閾値未満になったら排熱取得する排熱発生機器の台数を減少させればよい。また、所定の閾値未満が所定時間継続したら排熱取得する排熱発生機器の台数を減少するようにしてもよい。
【0046】
(2)排熱搬送媒体の温度による判定
排熱搬送媒体が定流量の場合、搬送媒体の温度(往路或いは還路)或いは温度差(往路と還路)の上昇或いは下降で排熱利用機器の排熱利用量の増減が検出でき、排熱搬送媒体の温度(往或いは還)が上昇した場合、排熱利用量が増加したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の温度が所定の閾値を超えたら排熱取得機器の排熱取得台数を増加させてもよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の温度が所定の閾値を所定時間継続して超えたら排熱取得機器の排熱取得台数を増加させてもよい。
同様に、排熱搬送媒体の温度(往或いは還)が下降したら排熱利用量の減少したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の温度が、所定の閾値未満になったら排熱取得機器の台数を減少させればよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の温度が、所定の閾値未満が所定時間継続したら排熱取得機器の台数を減少させてもよい。
【0047】
(3)排熱搬送媒体の流量による判定
排熱搬送媒体の温度(往或いは還)或いは往路或いは還路の温度差が一定になるように流量制御を行っている場合には、排熱搬送媒体の流量の増減で排熱利用機器の排熱利用量の増減を検出でき、排熱搬送媒体の流量(排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の)が増加した場合、排熱利用量を増加したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の流量が所定の閾値を超えたら排熱取得機器の運転台数を増加させればよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の流量が所定の閾値を所定時間継続して超えたら排熱取得機器の運転台数を増加させてもよい。
同様に、排熱搬送媒体の流量(往或いは還)が減少した場合、排熱利用量を減少したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の流量が所定の閾値未満になったら、排熱取得機器の運転台数を減少させればよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の流量が所定の閾値未満が所定時間継続したら、排熱取得機器の運転台数を減少させてもよい。
【0048】
(4)排熱搬送媒体の圧力による判定
排熱搬送媒体が蒸気である場合には、排熱搬送量が増減すると蒸気消費量が増減し、蒸気圧力が増減することになる。従って排熱搬送媒体の圧力の増減から排熱利用機器の排熱利用量の増減が検出できる。
蒸気以外においても、排熱搬送量の調整を搬送媒体の流量で行っている場合、流量の増減に連動してポンプ吐出圧や管内圧が増減するので、排熱搬送媒体の圧力(ポンプ吐出圧や管内圧)の増減から排熱利用機器の排熱利用量の増減を検出できる。
従って、排熱搬送媒体の圧力(往或いは還)が下降した場合、排熱利用量を増加したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の圧力が所定の閾値未満となったら排熱発生機器の排熱取得台数を増加させればよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の圧力が所定の閾値を所定時間継続したら排熱発生機器の排熱取得台数を増加させてもよい。
同様に、排熱搬送媒体の圧力(往或いは還)が上昇した場合、排熱利用量が減少したと判断し、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の圧力が所定の閾値を越えたら排熱発生機器の排熱取得台数を減少させればよい。また、排熱搬送往路3−1又は排熱搬送還路3−2の排熱搬送媒体の圧力が所定の閾値を所定時間継続して越えたら排熱発生機器の排熱取得台数を減少させてもよい。
【0049】
〔台数制御の優先機判断〕
排熱発生機器からの排熱取得台数の制御を行う場合に、運転時間以外の条件で優先機を決定することもある。
まず、排熱発生機器群1の排熱発生機器の運転に関わる条件で優先するものがある場合で、例えば、排熱発生機器の冷却水(エンジンコージェネレーションのエンジン冷却水や各種加熱炉の冷却水など)を排熱取得源とする場合は、排熱取得が排熱発生機器の運転に直接影響するので、優先して排熱取得すべきであり、排熱発生機器群1の自然熱源等、排熱取得だけが機能である排熱発生機器からの排熱取得の優先順位は低くすべきである。
次に、部分負荷効率のよい排熱発生機器からの排熱取得を優先的に開始し、部分負荷効率の悪い排熱取得機器を優先的に停止するとよい。これにより部分負荷効率の悪い排熱取得機器を高負荷で運転することが可能になり、排熱取得効率を上げることができる。
【0050】
また、台数制御に該当する排熱取得機器の中で排熱取得量が異なるものが混在する場合も、排熱利用量の増減量に従って適切な排熱取得量が得られるものを優先して運転あるいは停止すべきである。
排熱取得能力が異なる排熱発生機器を台数制御する場合、運転時間だけで運転或いは停止の優先機器を決定した場合の課題として、排熱発生機器の冷却水を熱源とする排熱発生機器からの排熱取得が優先的に行われず、排熱発生機器の運転に支障がでたり、或いは排熱発生機器冷却水の持つ熱エネルギーを無駄に放出することになる。
また、最適な容量の排熱発生機器からの排熱取得ができないという課題もある。例えば、排熱取得量100kWの排熱発生機器の運転時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の運転時間よりも短い場合、排熱取得量の不足量が50kW以下でも排熱取得量100kWの排熱発生機器から排熱取得を開始してしまうし、排熱取得量100kWの排熱発生機器の運転時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の運転時間よりも長い場合、排熱取得量の過剰量が50kW以下でも排熱取得量100kWの排熱発生機器から排熱取得を停止してしまう。
【0051】
このような課題を解決するために、台数制御を行う場合排熱発生機器に優先時間(正数)を予め設定し、排熱利用機器の排熱利用量が増加し、排熱を取得する排熱発生機器の台数を増加させる際には、次式のように各排熱発生機器の運転時間から優先時間を減じた優先機器判定時間が短い排熱発生機器から排熱取得を開始する。
・(優先機器判定時間)=(運転時間)−(優先時間)
同様に、排熱利用機器の排熱利用量が減少し、排熱を取得する排熱発生機器の台数を減少させる際には、次式のように各排熱発生機器の運転時間に優先時間を加算した優先機器判断時間が短い排熱発生機器から排熱取得を開始する。
・(優先機器判定時間)=(運転時間)+(優先時間)
この時、排熱発生機器冷却水を排熱取得源とする場合には長い優先時間を設定するとよく、自然熱源等、排熱取得だけが機能である排熱発生機器からの排熱取得の優先時間は長くすべきである。
また、小容量機器には長い優先時間を設定し、大容量機器になるに従って短い優先時間を設定する。
ここで、同容量機器は優先時間を同じにし、最大容量機器の優先時間は0時間とし、全機器同容量の場合は、全機器の優先時間は0時間とすればよい。
さらに、排熱取得の部分負荷効率がよいものは、排熱取得の優先時間は長くすべきである。
優先時間を負数として設定することもできるが、その場合は前述の優先機器判定時間の算出式の加減算が逆になる。
【0052】
従って、台数制御の優先判断の長い順(優先順位の高い順)に並べると下記のようになる。
1.排熱発生機器冷却水を排熱取得源とする場合で、排熱取得量の小容量機器
2.排熱発生機器冷却水を排熱取得源とする場合で、排熱取得量の大容量機器
3.排熱取得源が排熱発生機器冷却水以外、自然熱源(排熱取得目的のみのもの)以外の排熱取得量の小容量機器
4.排熱取得源が排熱発生機器冷却水以外、自然熱源(排熱取得目的のみのもの)以外の排熱取得量の大容量機器
5.排熱取得目的のみ自然熱源の排熱取得量の小容量機器
6.排熱取得目的のみ自然熱源の排熱取得量の大容量機器
また、同等の優先順位の場合は同じ優先順位とすればよい。
【0053】
このように、優先時間を設定することによって、優先順位の調整を行うことで、優先時間(+1回分の運転時間)を超える運転時間の不均一を防止でき、運転時間の不均一は最大でも優先時間+1回分の運転時間に抑えられる。
【0054】
そして、台数制御の優先機器選定判断に優先時間を加味することにより、最適な容量の機械を運転できるようになる。
<排熱取得台数を増加させるケース>
例えば、排熱取得量100kWの排熱発生機器の運転時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の運転時間よりも短い場合(運転時間による判断では排熱取得量100kWの排熱発生機器が優先機器)でも、排熱取得量100kWの排熱発生機器の優先機器判断時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の優先機器判断時間よりも長い場合(優先機器判断時間による判断では排熱取得量50kWの排熱発生機器が優先機器)になり、小容量の排熱取得量50kWの排熱発生機器から排熱取得を開始する。
また、それぞれ機器の運転時間の不均一が大きくなる(優先機器判断時間同士の比較でも排熱取得量100kWの排熱発生機器が短い)と、運転時間の短い機器からの排熱取得を行うことにより、運転時間の過剰な不均一を解消することができる。
【0055】
<排熱取得台数を減少させるケース>
同様に、排熱取得量100kWの排熱発生機器の運転時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の運転時間より長い場合(運転時間による判断では排熱取得量100kWの排熱発生機器が優先機器)、排熱取得量100kWの排熱発生機器の優先機器判断時間が、排熱取得量50kWの排熱発生機器の優先機器判断時間より短い場合(優先機器判断時間による判断では排熱取得量50kWの排熱発生機器が優先機器)、小容量の排熱取得量50kWの排熱発生機器から排熱取得を停止する。
また、それぞれ機器の運転時間の不均一が大きくなる(優先機器判断時間同士の比較でも排熱取得量100kWの排熱発生機器が長い)と、運転時間の長い機器からの排熱取得を停止することになり、運転時間の過剰な不均一を解消することができる。
【0056】
運転時間以外に優先機器を決めるための排熱発生機器の運転に支障が出るような重要な条件がある場合は、運転時間の不均一が優先時間近傍となった場合に、運転時間以外の優先条件が有効に判断できなくなる可能性があるため、優先機器判断に使用する運転時間を累積運転時間ではなく、月間や週間などの中間期間内の運転時間とした方がよい。
【0057】
また、優先時間を過剰に大きな時間(製品寿命を超えるような時間、例えば2万時間)とすることで、運転時間の不均一解消よりも、最適な容量になるような台数制御を常に優先させることもできる。
【0058】
〔その他〕
優先時間を設定するという方法以外でも、運転時間(累積或いは所定期間内の排熱発生機器の運転時間或いは排熱取得時間)に優先率を乗除算することによっても同等な結果が得られる。
この場合、優先率の設定は1以上の値として、取得台数増加時には、次式のように運転時間を優先率で除算した値を優先機器判断時間とする。
・(優先機器判断時間)=(運転時間)÷(優先率)
同様に、取得台数減少時には、次式のように運転時間に優先率を乗算した値を優先機器判断時間とする。
・(優先機器判断時間)=(運転時間)×(優先率)
ここで、優先率の設定を0以上1以下とした場合は、優先機器判断時間算出時の乗除算を、取得台数増加時には乗算、取得台数減少時には除算のように、逆にすればよい。
このような運転時間に優先率を乗除算する方法では、運転時間の不均一は所定の割合以上に広がらないように台数制御が行われる。例えば、優先率が1.1の場合は、運転時間の不均一は10%以内となる。
また、運転時間として累積時間を使用しても、運転時間の不均一は所定の割合以内であれば、優先機器判断が有効にすることができる。
【0059】
さらに、常に同じ優先順位となるように、運転時間の差(或いは比)から優先時間(優先率)を算出するように構成することもでき、任意の排熱発生機器間の優先関係を常に一定にすることを実現することができる。
逆に、季節、時間、電力(発電機)負荷、気温、加熱炉負荷などの任意の条件によって、優先時間(優先率)変更することによって、優先順位を変更することもできる。
【0060】
そして、排熱発生機器から排熱取得台数を増加させる場合と、減少させる場合で優先時間(優先率)を独立して持たせ、それぞれの優先時間を異なる値にしてもよい。
また、排熱取得台数制御を行う排熱発生機器は、異なる種類の排熱発生機器が混在しても構わない。但し、一般的には同種類の排熱発生機器で排熱取得台数制御を行うことが望ましい。
【0061】
図3は排熱利用量が増加して、排熱取得台数を増加させる場合の排熱取得容量を示す図である。ケースAは排熱取得量が大きい排熱発生機器の運転時間が「短い」か又は排熱取得量が小さい排熱発生機器の運転時間が「長い」場合、ケースBは排熱取得量が大きい排熱発生機器の運転時間が「長い」か又は排熱取得量が小さい排熱発生機器の運転時間が「短い」場合である。Qに示すように排熱利用量が変化した場合、時間t1で運転時間の短い排熱発生機器からの排熱取得を開始して排熱取得台数を増加させる。図示するようにケースAとケースBでは、排熱取得容量が異なり、ケースAの場合は排熱取得能力が過大になる。
ここで、ケースAのような場合でも、排熱容量の小さい機器の方が排熱容量の大きい機器に比べて優先判断時間が短くなるように優先時間を設定することで、排熱容量の小さい排熱発生機器から優先して排熱取得を開始し、適正な排熱取得容量とすることができる。
【0062】
図4は排熱利用量が減少して、排熱取得台数を減少させる場合の排熱取得容量を示す図である。ケースAは排熱取得量が大きい排熱発生機器の運転時間が「短く」か又は排熱取得量容量が小さい排熱発生機器の運転時間が「長い」場合、ケースBは排熱取得量が大きい排熱発生機器の運転時間が「長い」か又は排熱取得量が小さい排熱発生機器の運転時間が「短い」場合である。Qに示すように排熱利用量が変化した場合、時間t2で運転時間の長い排熱発生機器からの排熱取得を停止して排熱取得台数を減少させる。図示するようにケースAとケースBでは、排熱取得容量が異なり、ケースBの場合は排熱取得能力が過大になる。
ここで、ケースBのような場合でも、排熱容量の小さい機器の方が排熱容量の大きい機器に比べて優先判断時間が長くなるように優先時間を設定することで、排熱容量の小さな排熱発生機器から優先して排熱取得を開始し、適正な排熱取得容量とすることができる。
【0063】
図5は本発明に係る排熱利用システムの排熱搬送フロー例を示す図である。図示するように本排熱利用システムは、排熱発生機器として2台のエンジンコジェネレーション10−1(NO.1)、10−2(NO.2)と排熱利用機器として2台の吸収冷凍機22−1(NO.1)、22−2(NO.2)、給湯器(装置)20−1、蒸留装置25−1を備えている。図5において図2と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。エンジンコジェネレーション10−1、10−2はそれぞれ排熱源としてエンジン冷却水Wと排ガスボイラE・Bを備えている。
【0064】
エンジンコジェネレーション10−1、10−2において、エンジン冷却水Wは運転中必ず排出され、排熱として使用しない場合は冷却塔等の排熱放熱機器15で放熱しなければならないから、エンジン冷却水Wを排ガスボイラE・Bより優先して排熱として利用した方がよい。また、排ガスボイラE・Bは運転を停止してもエンジンコジェネレーション10−1、10−2の運転には支障はない。また、排ガスボイラE・Bの排ガス供給を停止(バイパス)すれば、排熱取得を停止できる。
【0065】
また、温水蓄熱槽等の蓄熱手段26は、蓄熱時に排熱搬送経路3の排熱搬送往路3−1から排熱搬送媒体を導入し、蓄熱手段26中の冷えた排熱搬送媒体を排熱搬送復路3−2に戻す。また、蓄熱放熱時には排熱搬送往路3−1から冷えた排熱搬送媒体を導入し、蓄熱手段26中の熱い排熱搬送媒体を排熱搬送往路3−1に戻す。
【0066】
上記排熱利用システムにおいて、排熱供給量が過大の場合は、下記のステップで排熱取得量を制御する。
ステップ1:先ず排熱搬送往路3−1から排熱搬送媒体を蓄熱手段26に投入して蓄熱する。
ステップ2:次に排熱ボイラE・Bを先行して排熱取得を停止(2台のエンジンコジェネレーション10−1、10−2のそれぞれ排熱ボイラE・Bは前述の台数制御ルールで停止)する。
ステップ3:排熱放熱機器15の運転を開始する。
ステップ4:エンジンコジェネレーション10−1、10−2を停止し、エンジンの冷却水Wを停止(2台は上記台数制御ルールで停止)する。
【0067】
また、排熱供給量が過小の場合は、下記のステップで排熱取得量を制御する。
ステップ1:排熱放熱機器15の運転を停止する。
ステップ2:エンジンコジェネレーション10−1、10−2を運転して、エンジンの冷却水Wの供給を開始(2台を台数制御ルールで運転)する。
ステップ3:排ガスボイラE・Bの排熱取得開始(2台を台数制御ルールで運転)する。
ステップ4:蓄熱を放熱する。
【0068】
図6は図5に示す排熱利用システムの優先機器の判断例を示す図である。図では排熱発生機器であるエンジンコジェネレーション10−1(NO.1)、10−2(NO.2)の運転に影響するエンジン冷却水を優先して排熱取得する。取得機器台数増加時には優先してエンジン冷却水から排熱取得が開始される。ここでは、優先順位のエンジンコジェネレーション(NO.2)のエンジン冷却水、エンジンコジェネレーション(NO.1)のエンジン冷却水、エンジンコジェネレーション(NO.2)の排ガスボイラ、エンジンコジェネレーション(NO.1)の排ガスボイラの順に排熱取得が開始される。逆に、取得台数減少時には最後までエンジン冷却水から排熱取得が継続される。また、取得機器台数増加時には小容量機器を優先して排熱取得が開始され、取得機器台数減少時には小容量機器を優先して排熱取得が停止される。ここでは、エンジンコジェネレーション(NO.1)の排ガスボイラ、エンジンコジェネレーション(NO.2)の排ガスボイラ、エンジンコジェネレーション(NO.1)のエンジン冷却水、エンジンコジェネレーション(NO.2)のエンジン冷却水の順に排熱取得が停止される。
【0069】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る排熱利用システムの概略フローを示す図である。
【図2】本発明に係る排熱利用システムの排熱搬送フローを示す図である。
【図3】排熱利用システムの排熱利用量が増加して排熱取得台数を増加させる場合の排熱取得容量を示す図である。
【図4】排熱利用システムの排熱利用量が減少して排熱取得台数を減少させる場合の排熱取得容量を示す図である。
【図5】本発明に係る排熱利用システムの排熱搬送フローを示す図である。
【図6】図5の排熱利用システムの優先機器の判断例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 排熱発生機器群
2 排熱利用機器群
3 排熱搬送経路
4 配管
5 搬送媒体往ヘッダー
6 配管
7 排熱媒体還ヘッダー
8 配管
9 配管
10 エンジンコジェネレーション
11 タービンコジェネレーション
12 加熱炉
13 蒸気ボイラや蒸気利用機器
14 自然熱源
15 排熱放熱機器
20 給湯装置(器)
21 蒸気発生装置
22 吸収冷凍機
23 発電装置
24 動力発生装置
25 蒸留装置
26 蓄熱手段
30 排熱利用システム制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台以上の排熱発生機器と、1台以上の排熱利用機器と、該排熱発生機器と排熱利用機器とを接続する排熱搬送経路と、制御装置を備えた排熱利用システムであって、
前記排熱利用機器の排熱利用量を検出する排熱利用量検出手段を備え、
前記制御装置は、前記排熱利用量検出手段で検出した排熱利用量検出値から排熱利用量の増・減を判断し、該排熱利用量が所定量増・減したら、排熱発生機器の排熱取得台数を増・減させる排熱取得台数制御機能を備えることを特徴とする排熱利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排熱利用システムにおいて、
前記排熱発生機器の故障を検出する故障検出手段を備え、前記制御装置は、故障中の排熱発生機器を排熱取得台数制御から外す機能を備えたことを特徴とする排熱利用システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排熱利用システムにおいて、
前記制御装置の排熱取得台数制御機能は、下記(a)乃至(d)の機能のうちの何れか1つ又は2つ以上を備えたことを特徴とする排熱利用システム。
(a)運転時間の短い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱取得を開始する機能、
(b)運転時間の長い排熱発生機器を優先機として、優先して排熱取得を停止する機能、
(c)優先機を決定する運転時間として、排熱発生機器の累積運転時間或いは所定期間の運転時間とする優先機決定機能、
(d)優先機を決定する運転時間として、排熱発生機器の累積排熱取得時間或いは所定期間の排熱取得時間とする優先機決定機能
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排熱利用システムにおいて、
前記制御装置の排熱取得台数制御機能は、下記(e)、(f)の何れか一方又は両機能を備えたことを特徴とする排熱利用システム。
(e)累積或いは所定期間の排熱発生機器の運転時間又は排熱取得時間に、所定の優先時間を加減算した優先機判断時間を使用して優先機を決定する優先機決定機能、
(f)累積或いは所定期間の排熱発生機器の運転時間又は排熱取得時間に、所定の優先率を乗除算した優先機判断時間を使用して優先機を決定する優先機決定機能
【請求項5】
2台以上の排熱発生機器と、1台以上の排熱利用機器と、該排熱発生機器と排熱利用機器とを接続する排熱搬送経路とを備えた排熱利用システムの運転方法であって、
排熱利用機器の排熱利用量が所定量増加したら、排熱発生機器の排熱取得台数を増加させ、排熱利用機器の排熱利用量が所定量減少したら、排熱発生機器の排熱取得台数を減少させることを特徴とする排熱利用システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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