説明

排熱利用システム

【課題】排水が保有する熱量を回収し、年間を通して有効に利用できる排熱利用システムを提供する。
【解決手段】排水処理槽11内の排水を汲み上げるポンプ装置12と、排水が通る熱交換器1次側13aと熱交換を行う熱交換器2次側13bを有する排熱回収用熱交換器13と、外気を予熱処理する予熱用熱交換器16を有し、かつ、外気の温度と湿度を調整して屋内空調ゾーン14に供給する空気調和装置15と、冷却塔17と、空気調和装置または生産装置側18内を冷却する冷凍機19と、熱交換器2次側13bを通る冷媒流体を予熱用熱交換器16と冷却塔17と冷凍機19に流通させる冷媒回路21と、該冷媒回路21に配設され、冷媒流体の循環経路を、熱交換器2次側13bと予熱用熱交換器16とを循環する予熱経路態様と熱交換器2次側13bと冷却塔と17と冷凍機19とを循環する冷却経路態様とに切り換え可能な予熱・冷却経路切換弁35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排熱利用システムに関するものであり、特に、例えば工場の製造過程で排水される低温の工場排水を有効に利用して空調等を行うための排熱利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば飲食品を製造する工場での製造過程では、原料や容器の洗浄水等が多量に発生する。この洗浄水は、排水処理が施された後、排熱を利用することなく公共下水に流されている。また、一般に、これら工場からの排水は、排水設備の都合上、年間を通して20〜25℃程度である場合が多い。一方、空調設備や生産設備で必要とされる加熱源、あるいは、冷熱源の温度は、通常、加熱源で40℃以上、冷熱源で15℃以下であり、25℃前後の排熱水は加熱側にも冷却側にも利用しにくい中途半端な温度域である。このため、予熱や再熱として利用する程度であり、この予熱や再熱に排熱を利用している空調システムは従来から数多く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2003−202165号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の工場の製造過程で発生する25℃前後の低温排水は、効率良く熱を回収することが困難であり、そのため予熱や再熱として用いられる程度であり、その熱を用いる用途も限られていた。また、年間を通して使用することが難しく、運用上での問題があった。
【0005】
そこで、排水が保有する熱量を簡易なシステムで回収し、かつ、年間を通して有効に利用することができる排熱利用システムを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、排水処理槽に排出された低温排水の熱を回収して利用する排熱利用システムにおいて、前記排水処理槽内の前記排水を汲み上げるポンプ装置と、該ポンプ装置で汲み上げられた前記排水が通る熱交換器1次側と該熱交換器1次側と熱交換を行う熱交換器2次側を有する排熱回収用熱交換器と、外気を予熱処理する予熱用熱交換器を有し、かつ、該予熱用熱交換器で調整された前記外気の温度と湿度を調整して屋内空調ゾーンに供給する空気調和装置と、外気と熱交換をする冷却塔と、空気調和装置または生産装置を冷却する冷凍機と、前記熱交換器2次側を通る冷媒流体を前記予熱用熱交換器と前記冷却塔と前記冷凍機に流通させる冷媒回路と、前記冷媒回路に配設され、前記冷媒流体が循環して流通する経路を、前記熱交換器2次側と前記予熱用熱交換器を経由して循環する予熱経路態様と前記熱交換器2次側と前記冷却塔と前記冷凍機を経由して循環する冷却経路態様とに切り換え可能な予熱・冷却経路切換弁と、を備える排熱利用システムを提供する。
【0007】
この構成によれば、排熱回収用熱交換器における熱交換器1次側に供給される排水温度が年間を通して例えば20〜25℃であり、また、冬季の外気温が例えば17℃以下であるような場合、予熱・冷却経路切換弁を操作し、冷媒流体が冷媒回路内で循環して流通する経路を熱交換器2次側と予熱用熱交換器を経由して循環する予熱経路態様側に切り換えると、熱交換器2次側で回収された排水の熱が予熱用熱交換器に送られ、該予熱用熱交換器において外気を前記回収された熱で温める。ここで温められた外気は、空気調和装置でさらに適宜な温度及び湿度に調整された後、屋内空調ゾーンに供給される。したがって、冬季等には外気導入の予熱処理を行うことで、空気調和装置における外気熱処理負荷が軽減する。
【0008】
反対に、夏季等で、外気温が例えば17℃以上であって、回収された熱が外気予熱として効果的に利用することができないような場合、予熱・冷却経路切換弁を操作し、冷媒流体が冷媒回路内で循環して流通する経路を冷却経路態様側に切り換えると、熱交換器2次側で回収された排水の熱は冷却塔を通って冷凍機に送られ、該冷凍機を冷却する熱として利用される。これによって、冷凍機における夏季の冷却水の温度が従来よりも低温度になり、該冷凍機における熱処理負荷が軽減する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記冷媒回路には、上記熱交換器2次側から上記冷却塔に向かう上記冷媒流体が途中でバイパスされて上記冷凍機と前記熱交換器2次側を経由して循環するバイパス路と、前記冷媒流体が上記冷却経路態様から該バイパス路を経由して循環するバイパス経路態様及び該バイパス経路態様から前記冷却経路態様に切り換え可能なバイパス・冷却経路切換弁とを設けてなる排熱利用システムを提供する。
【0010】
この構成によれば、夏季等で、外気温が例えば17℃以上ではあるが、熱交換器2次側を経由して冷却された冷媒流体がさほど高くない例えば32℃以下のとき、バイパス・冷却経路切換弁を操作し、冷媒流体が冷媒回路内で循環して流通する経路をバイパス冷却経路態様側に切り換え、該冷媒流体が冷却塔を通らず、冷凍機と熱交換器2次側を通って循環する経路にすると、冷却塔を停止した状態で冷凍機を運転することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、上記排水処理槽は、上流側に設けられる調整槽と該調整槽からオーバーフローされた排水を受ける最終中和槽を備え、前記ポンプ装置は、前記最終中和槽から汲み上げられた前記排水が上記熱交換器1次側を通って該最終中和槽に戻る循環用配管を備える排熱利用システムを提供する。
【0012】
この構成によれば、ポンプ装置は調整槽で一度浄化処理された排水を最終中和槽から汲み上げ、熱交換器1次側を通して再び最終中和槽に戻すようにしているので、熱交換器1次側の内部等の汚れが少なくなる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の構成において、上記循環用配管は、上記熱交換器1次側の上流側に、上記排水処理槽から汲み上げられた上記排水を濾過するストレーナを配設してなる排熱利用システムを提供する。
【0014】
この構成によれば、ポンプ装置で汲み上げられた排水はストレーナを通して濾過された後、熱交換器1次側に送られるので、該熱交換器1次側の内部等における金属表面の腐食や目詰まり等の汚れをさらに少なくすることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、上記循環用配管は、上記ストレーナの内部に逆方向から上記排水を流して該ストレーナの内部を洗浄する洗浄手段を有する排熱利用システムを提供する。
【0016】
この構成によれば、ストレーナの内部に逆方向から排水を流すと、該ストレーナのフィルタ等に付着しているゴミ等が都合よく剥離され、該ストレーナの内部をきれいに洗浄することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、排水の熱を回収し、冬季等には外気導入の予熱処理を行うエネルギーとして使用し、夏季等には冷凍機の冷却水を冷却するエネルギーとして使用するので、年間を通して排熱を使用することができる。すなわち、冬季等には外気導入の予熱処理を行うことで、空気調和装置における外気熱処理負荷が軽減され、ボイラー等の加熱源機器のエネルギー消費量を少なくすることができる。一方、夏季等には冷凍機の冷却水を冷却して従来よりも低い温度にすることができるので、冷凍機のエネルギー効率が向上する。これにより、年間を通して省エネルギー効果を得ることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、外気温に応じて冷却塔を停止した状態で冷凍機を運転することができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、さらに省エネルギー効果を得ることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、熱交換器1次側の内部等の汚れを少なくすることができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、メンテナンスのコストを低く抑えることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、熱交換器1次側の内部等が汚れるのを少なくして運転することができるので、請求項3記載の発明の効果に加えて、さらにメンテナンスの回数を減らしてコストを低く抑えることができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、ストレーナ内部の洗浄を簡単に行うことができるので、請求項4記載の発明の効果に加えて、さらにメンテナンスが簡単になり、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る排熱利用システムの概念図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、排水が保有する熱量を簡易なシステムで回収し、かつ、年間を通して有効に利用することができる排熱利用システムを提供するという目的を達成するために、排水処理槽に排出された低温排水の熱を回収して利用する排熱利用システムにおいて、前記排水処理槽内の前記排水を汲み上げるポンプ装置と、該ポンプ装置で汲み上げられた前記排水が通る熱交換器1次側と該熱交換器1次側と熱交換を行う熱交換器2次側を有する排熱回収用熱交換器と、外気を予熱処理する予熱用熱交換器を有し、かつ、該予熱用熱交換器で調整された前記外気の温度と湿度を調整して屋内空調ゾーンに供給する空気調和装置と、外気と熱交換をする冷却塔と、気調和装置または生産装置を冷却する冷凍機と、前記熱交換器2次側を通る冷媒流体を前記予熱用熱交換器と前記冷却塔と前記冷凍機に流通させる冷媒回路と、前記冷媒回路に配設され、前記冷媒流体が循環して流通する経路を、前記熱交換器2次側と前記予熱用熱交換器を経由して循環する予熱経路態様と前記熱交換器2次側と前記冷却塔と前記冷凍機を経由して循環する冷却経路態様とに切り換え可能な予熱・冷却経路切換弁とを備える構成としたことにより実現した。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の排熱利用システムについて、好適な実施例を添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る排熱利用システムの概念図である。
【0025】
同図において、この排熱利用システムは、例えば工場等から排出される排水を受ける排水処理槽11と、該排水処理槽11内の排水を汲み上げるポンプ装置12と、該排水の熱を回収する排熱回収用熱交換器13と、外気を取り入れ、かつ、該外気の温度と湿度を調整して屋内空調ゾーン14に供給する空気調和装置15と、該空気調和装置15に取り入れる外気を予熱処理する予熱用熱交換器16と、冷却塔17と、空気調和装置または生産装置側18を冷却する冷凍機19等を備えている。また、前記排熱回収用熱交換器13と前記予熱用熱交換器16と前記冷却塔17と前記冷凍機19は、互いに冷媒配管20で直接連結されており、同一の空調系循環水(以下、「冷媒流体」という)が流通する冷媒回路21を構成している。
【0026】
前記排水処理槽11は、互いに並置された調整槽22と最終中和槽23とを備えている。該調整槽22には工場からの排水が流入されて浄化処理され、最終中和槽23は該調整槽22でオーバーフローした排水が流入するようになっている。なお、本実施例における最終中和槽23の排水温度は年間を通して例えば20〜25℃であり、また、調整槽22で浄化処理された排水は無色透明ではあるが、通常、有機物やシリカ等の微細な浮遊物が僅かに存在している。
【0027】
前記排熱回収用熱交換器13は、前記排水が流通する熱交換器1次側13aと前記冷媒回路21の冷媒流体が流れる熱交換器2次側13bを備え、該熱交換器1次側13a内を通る排水の熱を該熱交換器2次側13b側に伝えて該排水の熱を回収することが可能になっている。
【0028】
前記ポンプ装置12は、ポンプ24と、ストレーナ25と、循環用配管26とを備えている。該循環用配管26は、前記最終中和槽23内から該ポンプ24と該ストレーナ25及び前記排熱回収用熱交換器13の前記熱交換器1次側13aを通って再び該最終中和槽23に戻る経路で配設されている。
【0029】
前記ポンプ24は、インバータ式の電動ポンプであり、最終中和槽23内の排水を汲み上げ、この汲み上げた排水を前記ストレーナ25を通して前記交換器1次側13aに送るためのポンプである。
【0030】
前記ストレーナ25は、前記ポンプ24で汲み上げられた排水内に含まれる不純物を濾過して取り除く装置であり、定期的に洗浄処理及びフィルタ交換が行われる。
【0031】
なお、前記ポンプ装置12には、前記排熱回収用熱交換器13の前記熱交換器1次側13a内に溜まる不純物及びストレーナ25内に溜まる不純物を取り除くための手段として洗浄用管27a、27b、27c、27dと、開閉弁28a、28b、28c、28d、28e、28f、28g、28hが設けられている。
【0032】
そして、通常の運転時は、開閉弁28a、28c、28d、28fを開、開閉弁28b、28e、28g、28hを閉にしてポンプ24を駆動する。これにより、ポンプ24で汲み上げられた最終中和槽23内の排水は、開閉弁28a、ストレーナ25、開閉弁28c、28dを通り、かつ、熱交換器1次側13aの上部から下部に向かって該熱交換器1次側13a内を流れ、その後、開閉弁28fを通って再び最終中和槽23に戻る経路で流される。
【0033】
一方、ストレーナ25を洗浄するときは、開閉弁28a、28cを閉、開閉弁28b、27hを開にして、ポンプ24を駆動する。これにより、該ポンプ24で汲み上げられた最終中和槽23内の排水は、開閉弁28bを通り、ストレーナ25の下部から該ストレーナ25内に入り、その後、開閉弁28hを通って調整槽22に戻る経路で流される。これにより、ストレーナ25内は、通常の運転時とは逆の方向から排水を流すことによってフラッシング洗浄が行われ、簡易洗浄を行うことができる。なお、該簡易洗浄で対応することができなくなったら内部フィルタの交換が行われる。
【0034】
また、排水が熱媒体として供給される前記排熱回収用熱交換器13の交換器1次側13a内は、排水内の微細な浮遊物が内部に付着し、金属表面の腐食や、細菌が繁殖してスラム状となって目詰まりを起こしやすく、その結果、流量不足による省エネルギー効果の低減や、腐食による水漏れ事故が発生する可能性があるので、本実施例の構造では該熱交換器1次側13a内を定期的に洗浄できるようにしている。該熱交換器1次側13a内を洗浄する場合は、開閉弁28a、28d、28f、28hを閉、開閉弁28b、28c、28e、28gを開にしてポンプ24を駆動する。これにより、ポンプ24で汲み上げられた最終中和槽23内の排水は、開閉弁28b、開閉弁28c、28eを通り、かつ、該熱交換器1次側13aの下部から上部に向かって該熱交換器1次側13a内を流れ、その後、開閉弁28gを通って再び最終中和槽23に戻る経路で流される。これにより、熱交換器1次側13a内は、通常の運転時とは逆に、下から上に向かって排水が流され、洗浄が行われる。なお、洗浄時、該熱交換器1次側13aの配管系統内に薬液洗浄用のポートを設置し、酸・アルカリ洗浄を行うようにしてもよい。
【0035】
また、前記ポンプ装置12の循環用配管26内には、該循環用配管26内の圧力を検出する圧力センサ29a、29b、29c、29dが配設されており、該圧力センサ29a〜29dで検出された配管内の圧力に応じて、図示せぬ制御回路がポンプ24を駆動制御するようになっている。
【0036】
前記空気調和装置15は、予熱用熱交換器15a、冷却用熱交換器15b、加熱用熱交換器15c、加湿器15d、給気ファン15eを備えている。また、該空気調和装置15には、該空気調和装置15内を通る空気の温度及び湿度を検出するセンサ30が設けられている。
【0037】
そして、該空気調和装置15においては、給気ファン15eの駆動により取り込まれた外気は、冬季等の暖房・加湿運転時、予熱用熱交換器15a及び加熱用熱交換器15cにより所定の温度まで温められるとともに、加湿器15dにより必要な湿度が付加され、その後、該給気ファン15eの駆動により屋内空調ゾーン14へ送り出される。一方、夏季などの冷房・除湿運転時は、冷却用熱交換器15cにおいて所定の露点温度まで除湿・冷却された後、給気ファン15eの駆動により屋内空調ゾーン14へ送り出される。なお、図示していないが、予熱用熱交換器15aと冷却用熱交換器15bと加熱用熱交換器15cに対する熱媒流体の経路は、前記冷媒回路21とは独立している別経路で設けられている。
【0038】
前記予熱用熱交換器16は、前記空気調和装置15の前側に配設され、冬季等の暖房・加湿運転時に該空気調和装置15に取り入れられる外気の温度が例えば17℃以下と低い場合に、前記排熱回収用熱交換器13で回収された熱を利用して該外気を温めるもので、前記冷媒回路21の開閉弁31a、31b、開閉弁32及びインバータ式のポンプ33を介して前記排熱回収用熱交換器13の熱交換器2次側13bに連結されている。また、予熱用熱交換器16の外気取り入れ側には、該外気の温度を検出する温度センサ34が設けられている。なお、開閉弁31a,31bは、同じく冷媒回路21内に配設されている開閉弁31c、31d、31eとともに予熱・冷却経路切換弁35を形成している。
【0039】
そして、該予熱用熱交換器16において、該開閉弁31a、31b、32が開の状態で該ポンプ33が駆動されると、前記冷媒回路21内の冷媒流体が、該熱交換器2次側13b、開閉弁31a、予熱用熱交換器16、開閉弁32、31bを順に流通して再び該ポンプ33に戻る経路で流れ、予熱用熱交換器16を通る外気を所定の温度まで温めることができるようになっている。
【0040】
前記冷却塔17は、冷却用熱交換器17a、貯水タンク17b、ポンプ17c、散水器17d、送風ファン17eを備えている。なお、冷却用熱交換器17aは、前記冷媒回路21に接続された熱交換器であり、該冷媒回路21には該冷却用熱交換器17aを通った冷媒流体の温度を検出する温度センサ39を備える。該温度センサ39の信号は、送風ファン17eの駆動・停止を制御するコントローラ17f等に供給される。
【0041】
そして、該冷却塔17において、ポンプ17cが駆動されると、貯水タンク17b内の水が散水器17dに汲み上げられ、該散水器17dから冷却用熱交換器17aに水が散水されて該冷却用熱交換器17aが冷却され、該冷却用熱交換器17a内を流通する冷媒流体も冷却される。
【0042】
前記冷媒回路21には、前記予熱・冷却系路切換弁35の他に、冷凍機19へ送られる冷媒流体の温度を検出するセンサ36と、冷凍機19内から排熱回収用熱交換器13を流通して来る冷媒流体の温度を検出するセンサ31、該冷凍機19へ送られる冷媒流体の温度が所定の温度より低くなったときにバイパス路21aを流通する冷媒流体の流量を調整して、冷却用熱交換器17a内を流通して来る冷媒流体とバイパス路21をバイパスして流入される冷媒流体とを混合させ、冷凍機19に供給される冷媒流体の温度が所定の温度より低くならないにように制御するバイパス冷却系路切換弁としての三方弁37と、冷媒回路21内の冷媒流体を冷凍機19に送る冷媒用ポンプ38等が設けられている。なお、前記三方弁37は、図示しないコントローラで制御される。
【0043】
次に、上記構成の排熱利用システムの動作について説明する。以下の説明では、熱交換器2次側で回収された排水温度が年間を通して例えば20〜25℃である場合とし、また、冬季等では外気温が例えば17℃以下の場合に排水の排熱温度を予熱用として使用し、夏季等で外気温度が17℃以上である場合に排水の排熱温度を冷却用として使用する場合として説明するが、これらの温度は環境に応じて自由に変更されるものである。
【0044】
(1)冬季等で外気温が例えば17℃以下であるような場合;
予熱・冷却経路切換弁35を構成している開閉弁31a,31b,31eを開、開閉弁31c,31dを閉とした予熱経路態様側に切り換える。この予熱経路態様では、冷媒回路21は予熱・冷却経路切換弁35の切り換えにより、空気調和装置15側と冷凍機19側とに分離され、前記冷媒流体は各側で各々独立して流通する。そして、空気調和装置15側では、冷媒回路21側のポンプ33及びポンプ装置12側のポンプ24が駆動されると、排熱回収用熱交換器13では排水と冷媒流体の間の熱交換が行われ、冷媒流体が20〜25℃に近い所定の温度に温められる。また、ここで温められた冷媒流体は予熱用熱交換器16に送られ、該予熱用熱交換器16において外気と熱交換され、該外気を20〜25℃に近い所定の温度に温めて、空気調和装置15側に送る。該空気調和装置15側では、該予熱用熱交換器16側から送られて来る外気の温度及び湿度をさらに調整して屋内空調ゾーン14に送り、該屋内空調ゾーン14内の空調を行う。
【0045】
一方、冷凍機19側における空気調和装置または生産装置側18の冷却では、前記排熱回収用熱交換器13で回収された熱は使わずに、冷却塔17の冷却用熱交換器17aと該冷凍機19を循環する冷媒流体を使う。
【0046】
(2)夏季等で、外気温が例えば17℃以上であるような場合;
予熱・冷却経路切換弁35を構成している開閉弁31a,31b,31eを閉、開閉弁31c,31dを開とした冷却経路態様側に切り換える。この冷却経路態様では、冷媒回路21は予熱・冷却経路切換弁35の切り換えにより、予熱用熱交換器16と排熱回収用熱交換器13の間が切り離される。そして、排熱回収用熱交換器13は該冷凍機19側及び冷却塔17側に接続される。また、冷凍機19内から排熱回収用熱交換器13を流通して来る冷媒流体の温度を検出するセンサ31の温度が例えば32℃より高い場合は三方弁37の切り換えにより、該冷媒流体は排熱回収用熱交換器13と冷却塔17と冷凍機19を通って循環される。反対に、32℃より低い場合はバイパス路21aが使用され、冷媒流体は冷却塔17を通らずに排熱回収用熱交換器13と冷凍機19を通って循環する。そして、冷却塔17の運転は休止状態に保持される。
【0047】
すなわち、排熱回収用熱交換器13での冷媒流体の温度が例えば37℃程度のとき、冷媒回路21側のポンプ33及びポンプ装置12側のポンプ24が駆動されると、排熱回収用熱交換器13では排水と冷媒流体の間の熱交換が行われて、冷媒流体が32℃以下の温度に冷却される。また、この冷却された冷媒流体は冷却塔17に送られ、該冷却塔17においてさらに30℃程度まで冷却され、冷凍機19側に送られる。該冷凍機19側では、該冷却塔17側から送られて来る冷媒流体により空気調和装置または生産装置側18内の冷却を行う。
【0048】
一方、排熱回収用熱交換器13での冷媒流体の温度が例えば32℃程度のとき、冷媒回路21側のポンプ33及びポンプ装置12側のポンプ24が駆動されると、排熱回収用熱交換器13では排水と冷媒流体の間の熱交換が行われ、冷媒流体が27℃以下の温度に冷却される。また、この冷却された冷媒流体は冷凍機19側に送られる。該冷凍機19側では、排熱回収用熱交換器13側から送られて来る冷媒流体により空気調和装置または生産装置側18の冷却を行う。
【0049】
次に、空気調和装置15側では、冷媒流体の温度に応じて予熱用熱交換器16及び該空気調和装置15が駆動され、外気の温度及び湿度を調整して屋内空調ゾーン14に送り、該屋内空調ゾーン14内の空調を行う。
【0050】
したがって、本実施例の排熱利用システムでは、排水の熱を回収し、冬季等には外気導入の予熱処理を行うエネルギーとして使用し、夏季等には冷凍機19の冷却水を冷却するエネルギーとして使用するので、年間を通して排熱を使用することができる。すなわち、冬季等には外気導入の予熱処理を行うことで、空気調和装置15における外気熱処理負荷が軽減され、エネルギー消費量を少なくすることができる。一方、夏季等には冷凍機19の冷却水を冷却して従来よりも低い温度にすることができるので、冷凍機19のエネルギー効率が向上する。これにより、年間を通して省エネルギー効果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は工場排水を有効利用する場合について説明したが、工場排水以外の排水の熱を利用する場合にも応用できる。
【符号の説明】
【0053】
11 排水処理槽
12 ポンプ装置
13 排熱回収用熱交換器
13a 熱交換器1次側
13b 熱交換器2次側
14 屋内空調ゾーン
15 空気調和装置
15a 予熱用熱交換器
15b 冷却用熱交換器
15c 加熱用熱交換器
15d 加湿器
15e 給気ファン
16 予熱用熱交換器
17 冷却塔
17a 冷却用熱交換器
17b 貯水タンク
17c ポンプ
17d 散水器
17f コントローラ
18 空気調和装置または生産装置側
19 冷凍機
20 冷媒配管
21 冷媒回路
21a バイパス路
22 調整槽
23 最終中和槽
24 ポンプ
25 ストレーナ
26 循環用配管
27a〜27d 洗浄用管
28a〜28h 開閉弁
29a〜29d 圧力センサ
30 センサ
31a〜31e 開閉弁
31 センサ
32 開閉弁
33 ポンプ
34 センサ
35 予熱・冷却系路切換弁
36 センサ
37 三方弁(バイパス冷却系路切換弁)
38 冷媒用ポンプ
39 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理槽に排出された低温排水の熱を回収して利用する排熱利用システムにおいて、
前記水処理槽内の前記排水を汲み上げるポンプ装置と、
該ポンプ装置で汲み上げられた前記排水が通る熱交換器1次側と該熱交換器1次側と熱交換を行う熱交換器2次側を有する排熱回収用熱交換器と、
外気を予熱処理する予熱用熱交換器と、
該予熱用熱交換器で調整された前記外気の温度と湿度を調整して屋内空調ゾーンに供給する空気調和装置と、
外気と熱交換をする冷却塔と、
空気調和装置または生産装置を冷却する冷凍機と、
前記熱交換器2次側を通る冷媒流体を前記予熱用熱交換器と前記冷却塔と前記冷凍機に流通させる冷媒回路と、
前記冷媒回路に配設され、前記冷媒流体が循環して流通する経路を、前記熱交換器2次側と前記予熱用熱交換器を経由して循環する予熱経路態様と前記熱交換器2次側と前記冷却塔と前記冷凍機を経由して循環する冷却経路態様とに切り換え可能な予熱・冷却経路切換弁と、
を備えることを特徴とする排熱利用システム。
【請求項2】
上記冷媒回路には、上記熱交換器2次側から上記冷却塔に向かう上記冷媒流体が途中でバイパスされて上記冷凍機と前記熱交換器2次側を経由して循環するバイパス路と、前記冷媒流体が上記冷却経路態様から該バイパス路を経由して循環するバイパス経路態様及び該バイパス経路態様から前記冷却経路態様に切り換え可能なバイパス・冷却経路切換弁とを設けてなることを特徴とする請求項1記載の排熱利用システム。
【請求項3】
上記排水処理槽は、上流側に設けられる調整槽と該調整槽からオーバーフローされた排水を受ける最終中和槽を備え、前記ポンプ装置は、前記最終中和槽から汲み上げられた前記排水が上記交換器1次側を通って該最終中和槽に戻る循環用配管を備えることを特徴とする請求項1または2記載の排熱利用システム。
【請求項4】
上記循環用配管は、上記熱交換器1次側の上流側に、上記排水処理槽から汲み上げられた上記排水を濾過するストレーナを配設してなることを特徴とする請求項3記載の排熱利用システム。
【請求項5】
上記循環用配管は、上記ストレーナの内部に逆方向から上記排水を流して該ストレーナの内部を洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする請求項4記載の排熱利用システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−52942(P2011−52942A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204641(P2009−204641)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(592031318)富士古河E&C株式会社 (7)