説明

掘削作業ロッドの軸継手

【課題】 従来の軸継手により継ぎ足された掘削ロッドに曲げが負荷されたときに、雄継手の小径円形軸部が受ける損傷を防止することを課題とする。
【解決手段】 六角軸の前後両端に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、上記六角軸と嵌合すべき六角孔の前後両端に、上記前後端の円形軸部とそれぞれ嵌合すべき円形孔部を連設した雌継手とからなり、
上記雄継手の前端の円形軸部の外径及び上記雌継手の後端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅のそれぞれ95%以上とし、
上記雄継手の後端の円形軸部の外径及び上記雌継手の前端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅のそれぞれ105%以内とした、
軸継手。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤改良、地中連続壁造成その他各種の工事に使用される掘削ロッド、掘削撹拌ロッド、掘削スクリューロッド等の掘削作業ロッドの軸継手に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、掘削作業ロッドは運搬の便宜のため一定長に製作されているが、数十メートルにも及ぶ大深度の掘削を行う場合は、これら一定長の掘削作業ロッドを軸継手により順次継ぎ足して使用している。
従来、これに使用する軸継手として、六角軸の雄継手を六角孔の雌継手に嵌入し、ついで上記六角軸と六角孔の接合面にまたがって貫通された孔に抜け止めピンを挿入した構造のものが広く使用されている。
【0003】
しかし、上記の従来継手は、嵌合状態において軸径方向の隙間があるため、これを用いて継ぎ足された掘削ロッドにより掘削を行った場合、掘削縦孔にいわゆる孔曲りが生じる欠点があった。
【0004】
これを改善するため、六角軸の前後に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、六角孔の前後に円形孔部をそれぞれ連設した雌継手とからなる軸継手であって、雌雄嵌合時に前後の円形軸部が後前の円形孔部に嵌合する構成のものが提案された。
【0005】
しかし、上記改善案では、雄継手における前端の円形軸部及び雌継手における後端の円形孔部が、六角軸及び六角孔と比較して小径に形成されているため、これを用いて継ぎ足された掘削ロッドに、上記間隙に基づく曲げが負荷された場合、上記小径の円形軸部及び円形孔部に過大な面圧が加わり、それが原因で該小径円形軸部に損傷を受け易い難点が残されていた。
【0006】
又、雄継手は中実材料から、雌継手は中空材料から切削加工により製作するのが一般的であるが、従来の雄継手及び雌継手ともに材料のロスが大きく、加工量が増大する欠点もあった。
【特許文献1】意匠登録第797247号
【特許文献2】意匠登録第797248号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、雄継手における前端円形軸部の損傷を防止すると共に、切削加工を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段として、本願第1発明は、
六角軸の前後両端に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、上記六角軸と嵌合すべき六角孔の前後両端に、上記前後端の円形軸部とそれぞれ嵌合すべき円形孔部を連設した雌継手とからなり、
上記雄継手の前端の円形軸部の外径及び上記雌継手の後端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅のそれぞれ95%以上とし、
上記雄継手の後端の円形軸部の外径及び上記雌継手の前端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅のそれぞれ105%以内とした、
軸継手を提案し、
【0009】
本願第2発明は、
六角軸の前後両端に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、上記六角軸と嵌合すべき六角孔の前後両端に、上記前後端の円形軸部とそれぞれ嵌合すべき円形孔部を連設した雌継手とからなり、
上記雄継手の前端の円形軸部の外径及び上記雌継手の後端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅のそれぞれ−10mm以内とし、
上記雄継手の後端の円形軸部の外径及び上記雌継手の前端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅のそれぞれ+10mm以内とした、
軸継手を提案する。
【発明の効果】
【0010】
本願第1及び第2発明の軸継手によれば、これを用いて継ぎ足された掘削作業ロッドに曲げが負荷されたときは、雄継手前端の円形軸部及び雌継手後端の円形孔部が六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅に近い大径に形成されたので、これに加わる面圧に十分に耐えることができ、しかも雄継手後端の円形軸部及び雌継手前端の円形孔部も六角軸及び六角孔の相対する2角間の幅に近い大径に形成されて、それに加わる面圧に十分耐えうることと相まって、上記掘削作業ロッドの曲げを抑制し、孔曲りを防止することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願第1発明における雄継手の前端の円形軸部の外径及び雌継手の後端の円形孔部の内径の各上限は、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅と等しい値である。
【0012】
又、雄継手の後端の円形軸部の外径及び雌継手の前端の円形孔部の内径の各下限は、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅と等しい値である。
【実施例】
【0013】
本願第1発明の実施例について図面を参照して詳述する。雄継手(1)は、図1(イ)に示すように六角軸(2)の前後両端に円形軸部(3)、(4)をそれぞれ連設し、又雌継手(5)は、同図(ロ)に示すように上記雄継手の六角軸(2)と嵌合すべき前端開口の六角孔(6)を有し、該六角孔(6)の後端に、上記雄継手の前端の円形軸部(3)と嵌合すべき円形孔部(7)を連設し、六角孔(6)の前端に、上記雄継手の後端の円形軸部(4)と嵌合すべき円形孔部(8)を連設してある。
【0014】
上記のような雄継手(1)において、本例では前端の円形軸部(3)の外径を、六角軸(2)の相対する2面間の幅(A1)(図2(イ)参照)の95%とし、後端の円形軸部(4)の外径を、六角軸(2)の相対する2つの角の間の幅(B1)の105%としてある。
【0015】
又、雌継手(5)において、本例では後端の円形孔部(7)の内径を、六角孔(6)の相対する2面間の幅(A2)(図2(ロ)参照)の95%とし、前端の円形孔部(8)の内径を、六角孔(6)の相対する2つの角の間の幅(B2)の105%としてある。
【0016】
(9)…は、雄雌継手(1)、(5)の嵌合時に、六角軸(2)と六角孔(6)の接合面にまたがって貫通された抜け止めピン孔の半円孔である。
【0017】
上例の作用は次のようである。雄継手(1)を一方の掘削ロッド(R1)の一端に、雌継手(5)を他方の掘削ロッド(R2)の他端にそれぞれ固定し、その雄継手(1)を雌継手(5)内に挿入し、円形軸部(3)と円形孔部(7)、六角軸(2)と六角孔(6)、及び円形軸部(4)と円形孔部(8)をそれぞれ嵌合した後、抜け止めピンをピン孔に挿入して両掘削ロッド(R1)、(R2)を接続する。
【0018】
接続された掘削ロッド(R1)、(R2)の回転により地中深く掘削を行うと、六角軸(2)と六角孔(6)の間にある間隙により継手部分に曲げが発生しようとするが、大径の円形軸部(3)と円形孔部(7)が、それに加わる面圧に十分に耐え、それと共に大径の円形軸部(4)と円形孔部(8)も、それに加わる面圧に十分に耐え、それらが相まって掘削ロッド(R1)、(R2)の継手部分の曲げを抑制し、孔曲りを防止するのである。
【0019】
本願第2発明の実施例は次のようである。上例における雄継手(1)の前端の円形軸部(3)の外径を、六角軸(2)の相対する2面間の幅(A1)から10mmを差し引いた値とし、後端の円形軸部(4)の外径を、六角軸(2)の相対する2角間の幅(B1)に10mmを加えた値としてあり、又雌継手(5)の後端の円形孔部(7)の内径を、六角孔(6)の相対する2面間の幅(A2)から10mmを差し引いた値とし、前端の円形孔部(8)の内径を、六角孔(6)の相対する2角間の幅(B2)に10mmを加えた値とし、他の構造は図1、2と実質的に同一の例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(イ)本発明による雄継手の正面図である。 (ロ)本発明による雌継手の縦断正面図である。
【図2】(イ)図1(イ)の雄継手の底面図である。 (ロ)図1(ロ)の雌継手の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 雄継手
2 六角軸
3、4 円形軸部
5 雌継手
6 六角孔
7、8 円形孔部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角軸の前後両端に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、上記六角軸と嵌合すべき六角孔の前後両端に、上記前後端の円形軸部とそれぞれ嵌合すべき円形孔部を連設した雌継手とからなり、
上記雄継手の前端の円形軸部の外径及び上記雌継手の後端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅のそれぞれ95%以上とし、
上記雄継手の後端の円形軸部の外径及び上記雌継手の前端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅のそれぞれ105%以内とした、
軸継手。
【請求項2】
六角軸の前後両端に円形軸部をそれぞれ連設した雄継手と、上記六角軸と嵌合すべき六角孔の前後両端に、上記前後端の円形軸部とそれぞれ嵌合すべき円形孔部を連設した雌継手とからなり、
上記雄継手の前端の円形軸部の外径及び上記雌継手の後端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2面間の幅のそれぞれ−10mm以内とし、
上記雄継手の後端の円形軸部の外径及び上記雌継手の前端の円形孔部の内径を、上記六角軸及び六角孔の相対する2つの角の間の幅のそれぞれ+10mm以内とした、
軸継手。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−262706(P2007−262706A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87161(P2006−87161)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【特許番号】特許第3834796号(P3834796)
【特許公報発行日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】