説明

掘削装置、掘削方法および排出ステーション

【課題】悪い気象条件下でもケーシングチューブ内にボーリング孔を効率的に形成できる掘削装置および掘削方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ケーシングチューブ内を掘削する掘削装置および掘削方法に関する。掘削機器は、ケーシングチューブに対して固定する固定手段を有する支持フレームと、支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて伸縮ロッドを介して回転駆動されるドリル工具とを備える。ケーシングチューブの上端部に取り付けられる排出ステーション20が設けられ、その排出ステーション20に、掘削機器の支持フレームを固定できる。ドリル工具から掘りくずを出して空にするために、排出ステーション20は、掘りくずを受け取るよう調節可能な荷下ろし手段25を備える。荷下ろし手段25は、排出ステーション20から掘りくずを送出するよう設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングチューブ内を掘削する掘削機器を備えた掘削装置に関する。その掘削機器は、ケーシングチューブに対して固定する固定手段を有する支持フレームと、支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて伸縮ロッドを介して回転駆動されるドリル工具と、を備える。
【0002】
本発明はさらに、ケーシングチューブ内にボーリング孔を形成する掘削方法に関する。その掘削方法では、掘削機器の支持フレームをケーシングチューブに対して固定し、支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて伸縮ロッドを介してドリル工具を回転駆動する。それにより、ケーシングチューブ内で、土壌物質が掘りくずとして掘り出されてドリル工具に収容される。
【背景技術】
【0003】
このようなタイプの掘削装置および掘削方法は、特許文献1に記載されている。軟質の地中にドリル杭を形成するには、まず、既知の導入装置を用いてケーシングチューブを押し入れるかねじ込む。続いて、ケーシングチューブ内の土壌物質を除去するために、支持フレームを備えた掘削機器を、クレーン手段を介して用いる。その際に、支持フレームをケーシングチューブの上端部にクランプ固定する。ドリル工具としては、ドリリングバケットを、クレーン手段を用いて伸縮式のケリーロッドを介して降下させて使用する。クランプ固定された支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて、ケリーロッドを介して、掘削機器のドリル工具を回転駆動する。
【0004】
掘り出された土壌物質でドリリングバケットの収容スペースが満たされた時点ですぐに、ドリル工具をクレーン手段で再度引き上げる。その後、支持フレームをケーシングチューブから取り外し、掘削機器全体をケーシングチューブに対して側方に宙づりで移動させる。その位置にて、ドリリングバケットを空にする。
【0005】
掘削工程を続けるには、掘削機器を再度ケーシングチューブに配置し、そこに支持フレームをクランプ固定し、掘削機器をもう一度降下させる。
【0006】
掘削工程の完了時には、クレーン手段を用いて掘削機器全体を撤去する。ケーシングチューブ内に形成された空洞には、たとえば、スチール製の補強ケージやコンクリートを挿入して、基礎杭を形成することができる。
【0007】
この掘削方法では、掘削完了時に掘削機器をクレーン手段で別のケーシングチューブへ移動可能であり、次の掘削工程を直後に開始できるため、全体としてとても経済的である。クレーン手段で吊り下げたケーブルによって掘削機器を素早く効率的に移動可能であることにより、いわゆる「空飛ぶ掘削機器」が実現されている。
【0008】
しかし、たとえば視界不良や強風などで気象条件が良くない場合は、掘削機器のケーシングチューブへの配置および支持フレームのクランプ固定には、クレーン手段の操作者に豊富な経験および高い技術が求められる。クレーンのケーブルに吊り下げられた掘削機器の揺れによって、作業工程に遅れが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1154078 B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、悪い気象条件下でもケーシングチューブ内にボーリング孔を効率的に形成できる掘削装置および掘削方法を提供するという課題に基づいて成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、本願請求項1に記載の特徴を有する掘削装置および本願請求項8に記載の特徴を有する掘削方法のそれぞれによって、上記課題が解決される。本発明の好適な実施形態は、各従属項に記載するとおりである。
【0012】
本発明による掘削装置は、ケーシングチューブの上端部に取り付けられる排出ステーションを備え、その排出ステーションに掘削機器の支持フレームを固定できる。ドリル工具から掘りくずを出して空にするために、排出ステーションに荷下ろし手段が設けられ、その荷下ろし手段が、掘りくずを受け取るよう調節可能であって掘りくずを排出ステーションから送出するよう設計されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の基本的な概念は、ボーリング孔の形成中に、ドリル工具を空にする目的や計測作業または保守作業を実施する目的などで掘削機器をケーシングチューブから取り外すことを不要にする点にある。そのために、掘削機器は、ケーシングチューブの上端部に取り付けられた排出ステーションに連結される。排出ステーションは、解除可能な固定機構を用いてケーシングチューブに連結することができる。掘削機器は、ケーシングチューブに対して軸方向に移動して、排出ステーション内の保持位置に至ることが可能である。その位置で、排出ステーション内に組み込まれた荷下ろし手段によってドリル工具を空にすることができ、その際に荷下ろし手段は、掘りくずを送出する位置へ移動される。
【0014】
その結果、支持フレームの取り外しと新たな調節および固定との繰り返しが不要となり、作業工程は全体的に容易になる。それにより、気象の影響にあまり関係なく作業ができるようになる。したがって、本発明による掘削装置は、たとえば沖合の領域で海底に基礎杭を形成する際にも利用可能である。沿岸の強風があっても、水上の輸送手段に設置されたクレーン手段に揺れがあっても、作業工程にほとんど関係がない。
【0015】
基本的には、掘削機器では、様々な種類のドリル工具を使用できる。本発明では、自身をねじ込むオーガなどを含む、断続的に動作するドリル工具が特に有利である。軟質の土壌中または水面下で実施される作業では、本発明によれば、ドリル工具がドリリングバケットとして設計されていて、それを空にするためにドリリングバケットの底部がヒンジで開くようになっていると有利である。
【0016】
本発明による更なる展開としては、荷下ろし手段に作動部材を設け、それによって、荷下ろし手段の荷下ろし位置への調節および荷下ろし位置からの調節の際にドリリングバケットの底部を開閉する点がある。既知の手法に従い、第1の時点で、ヒンジ付き底部は切削手段を備えた開口部を有し、それによって、土壌物質を掘り出してその開口部を通じてドリリングバケットの円筒形収容スペース内に運び入れる。実施形態によっては、ドリリングバケット内の追加の運搬手段として、スクリュを設けることができる。収容スペースが満たされた時点で、底部のねじる動きを通じて開口部を閉鎖して、掘り出された土壌物質で満たされたドリリングバケットを、ケーシングチューブから引き出して排出ステーションに引き入れる。その後、荷下ろし手段を、排出のための位置に移動させ、その際に、ドリリングバケットの底部が作動部材によってヒンジで開き排出を実施できる。このことはたとえば、荷下ろし手段を調節することで、ドリリングバケットを移動させてストッパに押し当てた結果、ラッチ機構が作動してドリリングバケットの底部を開くことによって実現されうる。ドリリングバケットの掘りくずを荷下ろし手段が受け取った時点または送出した時点ですぐに、荷下ろし手段を荷下ろし位置から移動するよう調節することによって、ヒンジで開いていたドリリングバケットの底部を再度閉じることができる。荷下ろし手段はたとえば、作動部材として傾斜形位置決め要素を備えることが可能であり、それを変位させることによって、ヒンジで開いていた底部を元の閉位置に押し戻し、底部のロックを再度ラッチさせることができる。その後、ドリル工具を再度、伸縮ロッドでケーシングチューブ内へ降下させ、掘削作業を継続できる。
【0017】
基本的には、排出ステーションには、様々なタイプの荷下ろし手段を組み込むことができる。荷下ろし手段はたとえば、調節可能なコンベヤベルトとして設計可能であり、除去された掘りくずをそれに乗せて搬出することができる。また、吸引手段を用いて掘りくずをドリル工具から吸い取ることも可能である。
【0018】
ただし本発明では、荷下ろし手段が、旋回軸の周りを旋回可能であってそれにより斜め状態に配置されるシュートを備えることが特に好適である。シュートはたとえば、掘削軸の近傍にて排出ステーションの側方に取り付けられることが可能であり、ドリル工具の下方で斜め状態に配置されその状態で掘りくずを受け取ることができる。
【0019】
本発明の別の好適な実施形態では、シュートが、旋回軸の周りを、引込み位置と荷下ろし位置との間で旋回可能であり、その荷下ろし位置にて、シュートは斜め状態にあり、排出ステーションから掘りくずを送出可能である。シュートはたとえば、ケーシングチューブの近傍の取付具に配置することができる。引込み位置では、シュートの表面が、ケーシングチューブとほぼ平行に支持されることが可能である。それにより、ドリル工具は掘削軸に沿って妨げられずに移動できる。掘削ステップ後にドリル工具をケーシングチューブから移動して排出ステーション内に入れた時点ですぐに、シュートを、ドリル工具の下方で斜め状態になる荷下ろし位置に調節できる。この調節工程はたとえば、シュートの下縁が回転ジョイントを介して排出ステーションに接続していて、この回転ジョイントを通じてシュートをドリル工具の下方で斜め状態になるまで旋回させることで実現できる。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態では、荷下ろし手段が運搬キャリッジを備える。運搬キャリッジは、荷下ろし位置と、掘りくずを排出ステーションから送出する送出位置との間の通路に沿って移動可能である。運搬キャリッジはたとえば、荷下ろし位置と送出位置との間のレールに沿ってローラで移動可能であり、その場合は、キャリッジの駆動は様々な方法で実現可能である。たとえば、キャリッジに専用のモータを設け、それによってキャリッジ自体を駆動できる。ただし、他のタイプの駆動も可能であり、キャリッジを巻き上げ機またはロープで引いたり、あるいは、短距離の場合は通路に沿って液圧シリンダで移動させることもできる。作動に必要なエネルギは、掘削機器から得ることも可能であり、あるいは、排出ステーションの独自のエネルギ源から供給を受けることもできる。運搬キャリッジは、積載スペースを備えるよう設計されており、キャリッジが荷下ろし位置に配置された状態で、ドリル工具からその積載スペースに掘りくずを受け取ることができる。積載スペースはたとえば、可傾式の桶の形状であることが可能であり、それにより、運搬キャリッジが送出位置に配置された時点ですぐに、傾けて排出ステーションから掘りくずを投棄できる。もしくは、運搬キャリッジの積載スペースにもヒンジ付き底部を設け、それを通じて、送出位置で掘りくずを下方に投棄することも可能である。投棄された物質は、排出ステーションに隣接配置された廃棄システムで収容できる。それはたとえば、コンテナ、トラック、コンベヤベルト、輸送船などである。
【0021】
本発明によれば、排出ステーションが、ケーシングチューブに固定する結合手段と、結合手段に対して調整手段を用いて調整可能なプラットフォームとを備えることが好適である。クランプ爪などの適切な固定手段によって、結合手段はケーシングチューブに着脱可能に接続される。結合手段に取り付けられたプラットフォームは、調整手段によって、ケーシングチューブの開口部に対して様々な状態に調整可能である。その結果、プラットフォームをたとえば、ケーシングチューブに対して角度をつけて配置することができる。具体的には、垂直線に対して斜めに掘削する場合であっても、プラットフォームを水平位置に配置することが可能である。また、ケーシングチューブに対してプラットフォームを持ち上げる際にも同様にできる。このようなタイプの調整手段は、本発明において前述の特徴から独立した概念として認識することも可能であり、あるいは、前述の特徴の一部分として認識してケーシングチューブに配置される他の取付装置と共に使用することもできる。
【0022】
本発明の掘削方法は、ケーシングチューブの上端部に配置された排出ステーションに掘削機器の支持フレームを固定し、ドリル工具から掘りくずを排出するためにドリル工具をケーシングチューブから取り出して排出ステーション内に移動し、排出ステーションに設けられた荷下ろし手段を、ドリル工具から掘りくずを受け取る荷下ろし位置に調節して、その荷下ろし手段によって掘りくずを排出ステーションから送出することを特徴とする。
【0023】
前述のとおり、本発明による排出ステーションによって、作業工程の迅速化および簡素化が実現される。
【0024】
本発明による好適な方法では、ヒンジ付き底部を有するドリリングバケットとして設計されたドリル工具を、排出ステーション内へ移動してストッパに押し当てることで、ドリリングバケットの底部が開いて中が空になる。ドリリングバケットは、回転によってラッチ機構が作動させることで、ドリリングバケットの底部を開いて中を空にすることも可能である。
【0025】
本発明の他の好適な実施形態において、掘りくずを受け取る荷下ろし位置では、荷下ろし手段はドリル工具の下方に配置される。荷下ろし手段のこの荷下ろし位置によって、荷下ろし工程が主に重力によって実施されるため、ドリル工具を空にする際に追加の能動的システムが通常は必要でない点が有利である。
【0026】
さらに本発明によれば、荷下ろし手段が、旋回軸の周りを旋回して荷下ろし位置にて斜め状態に配置されるシュートを備え、斜めのシュートを通じて掘りくずが排出ステーションから送出されることが有利になるうる。シュートは、様々な方法で荷下ろし位置に配置されることが可能である。たとえばシュートは、静止位置から展開または移動されて荷下ろし位置に配置されることもできるし、あるいは、ケーシングチューブの長手側面に平行な軸を中心に回転されて荷下ろし位置に配置されることもできる。掘りくずの送出は、シュートが水平面に対して斜め状態であることによって実現される。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、荷下ろし手段が、荷下ろし位置と送出位置との間の通路に沿って移動可能な運搬キャリッジを備える。荷下ろし位置では、掘りくずがドリル工具から運搬キャリッジ内へ排出され、送出位置では、運搬キャリッジによって掘りくずが排出ステーションから送出される。前述のタイプの駆動方式によって、運搬キャリッジは、荷下ろし位置と送出位置との間の通路に沿って移動する。運搬キャリッジの移動ならびに掘りくずの受入れおよび送出は、自動または手動で制御可能である。
【0028】
さらに本発明によれば、荷下ろし手段の荷下ろし位置への調節および荷下ろし位置からの調節の際に、ドリル工具として使用されるドリリングバケットの底部を開閉する構成が設けられている。ドリリングバケットの底部のラッチ機構を作動することが可能であり、たとえば、シュートまたは運搬キャリッジの積載スペースをドリリングバケットの底部に沿って移動させた際に、それによってドリリングバケットの底部を開閉する。
【0029】
本発明による他の好適な方法によれば、排出ステーションを結合手段によってケーシングチューブに固定し、調整手段を用いて排出ステーションのプラットフォームを結合手段に対して調整する。調整手段は、掘削方法にとって好都合な条件が達成されるように、ケーシングチューブに対するプラットフォームの位置を設定する機能を果たす。たとえば1つまたは複数の位置決めシリンダを用いることで、プラットフォームとケーシングチューブの横軸との間に異なる角度を設定することが可能である。同様に、プラットフォームを、水平面または垂直面に対して変位させることもできる。
【0030】
さらに本発明によれば、ケーシングチューブを土壌中に導入する(特に、押し入れる)構成が設けられる。この目的のために、既知の押込み装置を用いることができる。また、排出ステーションをケーシングチューブに着脱可能に固定することと、その後にケーシングチューブ内に形成されたボーリング孔にコンクリートを充填してドリル杭を形成することとは、本発明に適合することである。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、排出ステーションであって、ケーシングチューブに固定する結合手段と、ドリル工具を備えた掘削機器を受け入れて保持する受け部と、ドリル工具を空にするようドリル工具から掘りくずを受け取る荷下ろし手段とを有し、荷下ろし手段が、排出ステーションから掘りくずを送出するよう設計されている。この排出ステーションは特に、前述の掘削装置および前述の掘削方法と共に使用でき、それによって、それらに関連して述べた利点を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による第1の排出ステーションを示す概略側面図である。
【図2】本発明による掘削方法を図1に示す排出ステーションを用いて実施している状態を示す概略側面図である。
【図3】本発明による第2の排出ステーションを示す概略側面図である。
【図4】本発明による更なる掘削方法を図3に示す排出ステーションを用いて実施している状態を示す概略側面図である。
【図5】本発明による掘削機器を示す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に概略的に示す好適な実施形態を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0034】
図1に示す本発明による第1の排出ステーション20は、スチールの輪郭部を用いて構築されたプラットフォーム30を備える。プラットフォーム30の下側には、ケーシングチューブ5に着脱可能に固定するための結合手段34が配置されている。結合手段34は、下部に円錐形に広がる部分を有するスリーブ部材40を備える。スリーブ部材40の内径は、液圧クランプシリンダ42によって縮小できる。それにより、スリーブ部材40を、ケーシングチューブ5の外周に設置し、圧力ばめによってケーシングチューブ5に接続することができる。
【0035】
スリーブ形部材40は、ほぼ水平な軸の周りを旋回可能な状態に、旋回ジョイント44を介してプラットフォーム30に取り付けられている。その反対側には旋回シリンダ32が設けられ調整手段31を形成しており、それを用いることで、旋回ジョイント44を介して、プラットフォーム30を結合手段34に対して角度をつけて配置することができる。
【0036】
プラットフォーム30の上側には、鉛直の支持部材によってフレーム26が形成されており、その上側には、スリーブ形の受け部70が配置されている。スリーブ形受け部70は、排出ステーション20を取り付けるケーシングチューブ5の直径とほぼ同じ直径を有する。スリーブ形受け部70は、掘削機器を固定する役割を果たし、そのことは図5を参照して以下で説明する。
【0037】
さらに本発明によれば、荷下ろし手段25がプラットフォーム30に設けられている。本実施形態では、荷下ろし手段はシュート36を備える。そのシュート36は、位置決めシリンダ39によって、旋回軸38を介して図示の引込み位置と荷下ろし位置との間を旋回可能である。
【0038】
また、フレーム26には、掘削機器を作動させるストッパ37が配置されている。さらに、クレーン吊り下げ部12が配置されることにより、排出ステーション20は、クレーンによってケーシングチューブ5への移動およびケーシングチューブ5からの移動が可能になっている。
【0039】
図2に、本発明による掘削方法の一例を、8つの作業ステップによって概略的に示す。最初に、サポートまたは掘削チューブとも呼ばれるケーシングチューブ5を、振動機、インパクト駆動システム、または押込み装置を用いて、既知の方法で軟質の土壌に押し込む。図示の実施形態では、ケーシングチューブ5は、垂直軸に対して斜めの角度にて水底に導入されている。水域での作業のためのポンツーン2上に設置されたクレーン1によって、図1に示す排出ステーション20を、ケーシングチューブ5の上側まで搬送する(ステップ1)。作業ステップ2では、直径が拡張された状態の結合手段34を載置する。クランプシリンダ42を締めることによって、結合手段34を、ケーシングチューブ5の上端部に圧力ばめで接続する。そうする際に、スリーブ部材40がケーシングチューブ5の長手軸と同軸に配置されると同時に、排出ステーション20のプラットフォーム30が水平位置をとるように、調整手段31を設定する。
【0040】
続いてステップ3では、ドリル工具140としてドリリングバケットを備える掘削機器100を、円筒形受け部70内に入れる。掘削機器100については、図5を参照しながら以下でさらに詳述する。
【0041】
作業ステップ4では、掘削機器100を、それ自体の支持フレーム110を通じて円筒形受け部70の上端部にクランプ固定し、それによって以降は、結合手段34を含む排出ステーション20を通じて、ケーシングチューブ5に固定的に接続された状態が維持される。
【0042】
続いてステップ5では、掘削機器100が垂直位置から、掘削機器100の軸がケーシングチューブ5の長手軸に対して整列する斜め位置に配置されるよう、調整手段31を調整する。これらの作業ステップの間、荷下ろし手段25は図示の引込み位置に配置されており、それにより掘削機器100のドリル工具140は、土壌物質の除去のために、排出ステーション20を自由に通過してケーシングチューブ5内部に至ることができる。
【0043】
作業ステップ6では、すでに、ケーシングチューブ5の下端部における最も深い位置での最終掘削ステップが示されている。ドリリングバケットとして設計されたドリル工具140が、ケーシングチューブ5内で除去した土壌物質で満たされた時点ですぐに、伸縮式のケリーロッド7をクレーン1で収縮させることによって、作業ステップ7に示すように、ドリル工具140を排出ステーション20内の所望の保持位置に配置する。その状態で、荷下ろし手段25のシュート36を、作業ステップ7に示す荷下ろし位置に旋回させることができる。ドリル工具140を開くことによって、掘りくずをドリル工具140から排出することが可能である。この掘りくずは、重力によって、斜めシュート36を通じて直接、排出ステーション20の外部の運搬手段50に送出される。運搬手段50は、輸送船であることが可能である。ドリル工具140のねじる動きと、ストッパ37の助けと、シュート36の引込み位置への移動とによって、図2の作業ステップ8に示すように、ドリル工具140を再度閉じることができる。続いて、ドリル工具140を再度ケーシングチューブ5内に降下させて、さらなる掘削ステップを実施することが可能である。
【0044】
ボーリング孔を所望の最終的な深さまで形成した後、ドリル工具140を再度引き上げて、排出ステーション20および掘削機器100を含む掘削装置10を、ケーシングチューブ5から取り外せる。その後、ケーシングチューブ5の空洞を鉄筋およびコンクリートで充填して、ドリル杭を形成することができる。その充填工程において、ケーシングチューブ5を抜き取って、必要な箇所で再利用することが可能である。あるいは、ケーシングチューブ5を地中に入れたままにして、ケーシング付きのドリル杭を形成することもできる。
【0045】
図3に、第2の排出ステーション20’を示す。これも、図1の排出ステーション20に関連して説明したのと同様に、結合手段34を備えたプラットフォーム30を有する。さらに、プラットフォーム30の上側には、掘削機器を固定するための円筒形受け部70を備えたフレーム26が設けられている。
【0046】
図1の排出ステーション20とは異なり、図3の排出ステーション20’の円筒形受け部70は、軸72の周りを旋回可能な状態でフレーム26に支持されている。スリーブ形受け部70の旋回運動は、2つの側方の旋回シリンダ74によって実施される。受け部70にその旋回能力を設けることによって、斜めである可能性があるケーシングチューブに対して排出ステーション20を整列させる目的の調整手段31の旋回運動に、追加的な向上が図られている。
【0047】
さらに、図1の排出ステーション20とは異なり、改変された荷下ろし手段25が設けられている。
【0048】
図3による荷下ろし手段25は、運搬キャリッジ28を備える。運搬キャリッジ28は、プラットフォーム30上にレールで形成された通路29に沿って、図示の荷下ろし位置と外側の送出位置との間を移動可能である。その移動のために運搬キャリッジ28は、自身の下側に配置されたローラ33を備える。さらに、運搬キャリッジ28の収容部分は、調節シリンダ35によって作動可能なシュート36として設計されている。
【0049】
図2で示したのと同様に、図4に、本発明による別の掘削方法を、図3の排出ステーション20’を用いた8つの作業ステップによって示す。
【0050】
図2による掘削方法と同じように、排出ステーション20’をケーシングチューブ5に固定する。続いて、掘削機器100を円筒形受け部70に連結する。さらに、作業ステップ3に示すように、運搬キャリッジ28を外側の引込み位置に移動する。
【0051】
作業ステップ4からわかるとおり、旋回シリンダ74を作動させることによって、垂直に配向されていた円筒形受け部70を、角度をつけて配置してケーシングチューブ5の軸に整列させる。その後、作業ステップ5に示すように、掘削機器100のドリル工具140を、数回の掘削ステップにて、ケリーロッド7の最大長Lに従って降下させることができる。
【0052】
作業ステップ6では、各掘削ステップ後にドリル工具140が満たされた時点で、ドリル工具140を排出ステーション20’内に戻す。そして、運搬キャリッジ28を、ドリル工具140の下方の荷下ろし位置に移動し、それと同時またはそれに続いて、ドリル工具140を開いて、掘りくずをドリル工具140から運搬キャリッジ28に降ろす。作業ステップ7では、運搬キャリッジ28を排出ステーション20’の外の送出位置に移動し、同時に、運搬キャリッジ28に設けられた作動部材22によって、ドリル工具140のヒンジ付き底部を閉じる。送出位置にて、運搬キャリッジ28のシュート36を傾けて、掘りくずをシュート36から除去する。その後、作業ステップ8にて、ドリル工具140を用いてさらなる掘削ステップを実施できる。
【0053】
好適な掘削機器100を図5に示す。掘削機器100は、横材117が下端部に設けられた支持フレーム110を備える。横材117の下側には、装着ブラケット111が配置されており、それを用いて、掘削機器100を排出ステーション20のスリーブ形受け部70の上縁部に装着することができる。さらに、装着ブラケット111からずれた位置には、液圧作動式のコレットを備えた1つまたは複数の固定手段114が設けられている。これらのコレットによって、支持フレーム110を、回転方向に固定された状態で受け部70に取り付けることができる。
【0054】
さらに、支持フレーム110には、伸縮ロッド130を介してドリル工具140を回転駆動するためのドリル駆動部116が配置されている。
【0055】
図示の実施形態では、支持フレーム110は二部構成であって、下側支持フレーム部分115と、その上方に位置する上側支持フレーム部分113とから成る。上側支持フレーム部分113は、液圧シリンダピストン112aを備えた液圧シリンダ112によって、下側支持フレーム部分115に対して軸を調節可能である。上側支持フレーム部分113に、ドリル駆動部116が固定されて配置されている。
【0056】
固定手段114を解除することによって、掘削機器100を、受け部70から上方に引き抜くことができ、続いて、さらなるボーリング孔を形成するために他の排出ステーションの受け部に装着することができる。
【符号の説明】
【0057】
5 ケーシングチューブ、20,20’ 排出ステーション、22 作動部材、25 荷下ろし手段、28 運搬キャリッジ、29 通路、30 プラットフォーム、31 調整手段、34 結合手段、36 シュート、37 ストッパ、38 旋回軸、70 受け部、100 掘削機器、110 支持フレーム、116 ドリル駆動部、130 伸縮ロッド、140 ドリル工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングチューブ内を掘削する掘削機器を備えた掘削装置であって、
前記掘削機器は、
前記ケーシングチューブに対して固定する固定手段を有する支持フレームと、
前記支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて伸縮ロッドを介して回転駆動されるドリル工具と、
を備え、
前記ケーシングチューブの上端部に取り付けられる排出ステーションが設けられ、その排出ステーションに、前記掘削機器の前記支持フレームを固定でき、
前記ドリル工具から掘りくずを出して空にするために、前記排出ステーションは、掘りくずを受け取るよう調節可能な荷下ろし手段を備え、
前記荷下ろし手段は、前記排出ステーションから掘りくずを送出するよう設計されている、掘削装置。
【請求項2】
前記ドリル工具が、ドリリングバケットとして設計され、ドリリングバケットを空にするためにヒンジで開くことができる底部を有する、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記荷下ろし手段が作動部材を備え、それによって、前記荷下ろし手段の荷下ろし位置への調節または荷下ろし位置からの調節の際に、前記ドリリングバケットの前記底部を開閉できる、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記荷下ろし手段が、旋回軸の周りを旋回可能であってそれにより斜め状態に配置されるシュートを備える、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項5】
請求項4に記載の掘削装置であって、
前記シュートが、前記旋回軸の周りを旋回可能であってそれにより引込み位置と荷下ろし位置との間で旋回され、
前記シュートが、前記荷下ろし位置にて前記斜め状態にあり、その状態で前記排出ステーションから掘りくずを送出可能である、掘削装置。
【請求項6】
前記荷下ろし手段が運搬キャリッジを備え、その運搬キャリッジが、荷下ろし位置と、掘りくずを前記排出ステーションから送出する送出位置との間の通路に沿って移動可能である、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記排出ステーションが、前記ケーシングチューブに固定する結合手段と、前記結合手段に対して調整手段を用いて調整可能なプラットフォームとを備える、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項8】
ケーシングチューブ内にボーリング孔を形成する掘削方法であって、特に請求項1に記載の掘削装置を用いて実施し、掘削機器の支持フレームを前記ケーシングチューブに対して固定し、前記支持フレームに設置されたドリル駆動部を用いて伸縮ロッドを介してドリル工具を回転駆動することによって、前記ケーシングチューブ内で土壌物質が掘りくずとして除去されて前記ドリル工具に収容される掘削方法において、
前記掘削機器の前記支持フレームを、前記ケーシングチューブの上端部に設置された排出ステーションに固定することと、
前記ドリル工具から掘りくずを排出するために、前記ドリル工具を前記ケーシングチューブから取り出して前記排出ステーション内へ移動することと、
前記排出ステーションに設けられた荷下ろし手段を、前記ドリル工具から掘りくずを受け取る荷下ろし位置に調節することと、
前記荷下ろし手段によって掘りくずを排出ステーションから送出することと、
を含む、方法。
【請求項9】
ヒンジ付きの底部を有するドリリングバケットとして設計された前記ドリル工具を、前記排出ステーション内へ移動してストッパに押し当てることによって、前記ドリリングバケットの前記底部を排出のために開くことを含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項10】
前記荷下ろし手段が、旋回軸の周りを旋回可能であってそれにより前記荷下ろし位置にて斜め状態に配置されるシュートを備え、斜めの前記シュートを通じて掘りくずを排出ステーションから送出することを含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項11】
前記荷下ろし手段が、前記荷下ろし位置と送出位置との間の通路に沿って移動する運搬キャリッジを備え、
前記荷下ろし位置にて、掘りくずを前記ドリル工具から前記運搬キャリッジへ排出することと、
前記送出位置にて、前記運搬キャリッジによって、掘りくずを前記排出ステーションから送出することと、
を含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項12】
前記荷下ろし手段の前記荷下ろし位置への調節および前記荷下ろし位置からの調節の際に、ドリル工具として使用されるドリリングバケットの底部を開閉することを含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項13】
結合手段を用いて前記排出ステーションを前記ケーシングチューブに固定し、調整手段を用いて前記排出ステーションのプラットフォームを前記結合手段に対して調整することを含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項14】
前記ケーシングチューブを土壌中に導入することと、
前記排出ステーションを着脱可能な状態で前記ケーシングチューブに固定することと、
さらに、前記ケーシングチューブ内に形成されたボーリング孔をコンクリートで充填してドリル杭を形成することと、
を含む、請求項8に記載の掘削方法。
【請求項15】
特に請求項1に記載の掘削装置または請求項8に記載の掘削方法のための排出ステーションであって、
ケーシングチューブに固定する結合手段と、
ドリル工具を備えた掘削機器を受け入れて保持する受け部と、
前記ドリル工具を空にするよう前記ドリル工具から掘りくずを受け取り、前記排出ステーションから掘りくずを送出するよう設計されている荷下ろし手段と、
を備える排出ステーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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