説明

掘削装置と掘削方法

【課題】工事中における交通を確保することができ、狭い既設の道路における掘削工事に適した掘削装置とその掘削方法を提供する。
【解決手段】山に沿う道路101の谷側を掘削する掘削装置1において、内部に道路長さ方向の通路16を有し道路101に沿って移動可能に設けられた架台2と、この架台2の谷側に配置された掘削ドリルたるダウンザホールドリル3と、架台2の山側に設けられたウエート4とを備えるから、谷側のダウンザホールドリル3により道路101の谷側に縦孔61を形成し、その架台2は内部に通路16を有するため、その通路16により道路101の交通を確保することができ、また、架台2の谷側にウエート4を設けることにより、ダウンザホールドリル3を配置した谷側との釣り合いを保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の谷側を掘削する掘削装置と掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
谷側が傾斜面をなす道路を谷側に拡張する道路拡張工事(例えば、特許文献1及び特許文献2)においては、谷側の傾斜面に複数の基礎杭を立設し、この基礎杭により拡張部分の道路床版を支持する構造が採用されている。
【0003】
上記のような基礎杭を立設するには、掘削装置を備えた重機を既設道路に乗り入れ、掘削装置により谷側の傾斜面に縦孔を掘削形成し、該縦孔にコンクリートを充填したり(例えば、特許文献3)、前記縦孔にコンクリート杭や鋼管杭を打ち込んだりして基礎杭を構築する。
【特許文献1】特開2002−256504号公報
【特許文献2】特開2006−28807号公報
【特許文献3】特開2001−98872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような道路拡張工事の現場では、一般に既設道路は狭く、大型の重機の乗り入れが難しく、特許文献3のように高架式の仮設道路や重機乗り入れ用構台などを建築する必要が生じるという問題がある。また、重機の使用が可能な現場でも、山側及び谷側共に切り立った狭い既設道路では、重機が邪魔になり、工事期間中は、既設道路の交通を確保できないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、工事中における交通を確保することができ、狭い既設の道路における掘削工事に適した掘削装置とその掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、山に沿う道路の谷側を掘削する掘削装置において、内部に道路長さ方向の通路を有し前記道路に沿って移動可能に設けられた架台と、この架台の谷側に配置された掘削ドリルと、前記架台の山側に設けられたウエートとを備えるものである。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記架台の一部が谷側に突出するものである。
【0008】
また、請求項3の発明は、前記ウエートが液体を充填するタンク本体を備えるものである。
【0009】
また、請求項4の発明は、前記掘削ドリルがダウンザホールドリルである。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項1記載の掘削装置を用いた掘削方法において、前記道路に前記架台を固定し、前記通路により前記道路の通行を可能にする方法である。
【0011】
また、請求項6の発明は、前記掘削ドリルにより掘削孔を形成した後、前記架台を道路に沿って次の掘削孔位置に移動する方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、谷側の掘削ドリルにより道路の谷側に掘削孔を形成し、その架台は内部に通路を有するため、その通路により道路の交通を確保することができ、また、架台の谷側にウエートを設けることにより、掘削ドリルを配置した谷側との釣り合いを保つことができる。
【0013】
また、請求項2の構成によれば、道路の谷側で掘削作業を行うことができる。
【0014】
また、請求項3の構成によれば、液体を抜いたタンク本体は軽量であるから、扱いが容易となり、現場においても入手が容易な水などの液体を必要量だけ充填することにより、ウエートとしての作用が得られる。
【0015】
また、請求項4の構成によれば、ダウンザホールの部品は軽量であり、現場での扱いが容易になる。
【0016】
また、請求項5の構成によれば、道路に掘削装置を配置しても、必要なときに通行を確保することができる。
【0017】
また、請求項6の構成によれば、架台の移動と掘削を繰り返しながら、順次掘削孔を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な掘削装置とその掘削方法を採用することにより、従来にない掘削装置とその掘削方法が得られ、その掘削装置とその掘削方法について記述する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、掘削装置1を用いる現場の既設の道路101は、山側Yの上向きの傾斜面102と谷側Tの下向きの傾斜面103との間に挟まれ、その道路101の谷側Tである傾斜面103に基礎杭が構築される。
【0020】
前記掘削装置1は、前記道路101に沿って移動可能に設けられる架台2と、この架台2の谷側に配置された掘削ドリルたるダウンザホールドリル3と、前記架台2の山側に設けられたウエート4とを備える。
【0021】
前記架台2は、道路長さ方向の前後に位置する前枠体11F及び後枠体11Rを備え、これら前枠体11F及び後枠体11Rは、H形鋼などの鋼材からなる主構12を上下左右に配置した門型に形成してなる。さらに、前記架台2は、前記前枠体11F及び後枠体11Rの上下左右を、H形鋼などの鋼材からなる前後方向の4本の主構13T,13Y,14T,14Yにより一体化してなる。
【0022】
そして、図2に示すように、前記前枠体11F及び後枠体11Rの山側上下を前記主桁13Y,14Yにより連結し、前記前枠体11F及び後枠体11Rの谷側上下を前記主桁13T,14Tにより連結し、前記架台2の谷側は、前記傾斜面103側に張り出している。また、前記道路の谷側端部に対応して、前記架台2には前後方向の支持梁15が設けられ、この支持梁15は、前枠体11F及び後枠体11Rの上部の横方向の主構12,12の上部間と、その下部の横方向の主構12,12の上部間とにそれぞれ設けられている。
【0023】
前記掘削装置1は、上下の前記支持梁15,15の長さ方向の略中央に、リーダー21を縦設し、このリーダー21に沿って前記ダウンザホールドリル3を上下動可能に支持する。具体的には、前記リーダー21の上下に、ダウンザホールドリル3のガイド22を設け、前記リーダー21の上部に固定滑車23を設け、前記架台2上に昇降手段たる電動ホイスト24を設け、この電動ホイスト24が巻き取り及び繰り出しするロープ材24Aを、前記固定滑車に掛装すると共に、ダウンザホールドリル3の上部に連結してなる。尚、架台2の上面には上板30を設け、この上板部30に前記電動ホイスト24などを載置し、また、その上板部30上でダウンザホールドリル3の操作作業などを行うことができる。また、リーダー21及びダウンザホールドリル3は上板部30の開口(図示せず)に挿通されている。
【0024】
前記ダウンザホールドリル3は、上部にドリルヘッド25を備え、このドリルヘッド25の下部にエアースイベル26を連結し、このエアースイベル26の下部に複数のドリルロッド27を連結し、このドリルロッド27の下端にハンマードリル28を連結し、このハンマードリル28の下端には、硬質チップを備えた掘削ビット29が設けられている。そして、コンプレッサなどの空気圧によりシリンダ内のハンマーピストン(図示せず)が圧縮された空気で上下運動を起こし、これにより前記ハンマードリル28が往復動しながら、岩石などを破壊しながら掘削し、破壊された岩石はハンマードリル28を駆動した圧縮空気により地上に排出される。
【0025】
また、前記架台2の下部には、下側の前記支持梁15の上に位置して覆工板31が設けられ、前記架台2は、前記覆工板31の上と前記上の主構12との間に、道路の長さ方向に開口した通路16が形成されている。
【0026】
さらに、前記道路101には、工事に際して、前記架台2の箇所に鉄板などの覆い板32を敷設する。前記架台2下部の前後左右の四箇所には、移動手段を構成する車輪たる移動用チルタンク33を配置し、道路101の移動側にアンカー34を固定し、このアンカー34と架台2とを牽引手段たるチルホール35のロープ材35Aにより連結し、チルホール35によりロープ材36を巻き取ることにより、架台2を移動する。
【0027】
また、前記架台2の前後には、組み立て式のアプローチ板41が独立して設けられ、この案内板41は、道路101から架台2の覆工板31まで傾斜する傾斜案内面42と、この傾斜案内面42を支持する支持体43とを備える。したがって、道路101を走行する車両(図示せず)は、一方のアプローチ板41の傾斜案内面42に沿って、架台2の覆工板31に乗って走行し、他方のアプローチ板41から道路101に戻ることができる。
【0028】
尚、図中、符号44は、覆い板32上の架台2を固定するためのジャッキであり、このジャッキ44を伸ばして架台2を上げることにより、複数のジャッキ44により位置決め状態で架台2を支持することができ、ジャッキ44を縮めてチルタンク33により架台2を支持することにより、移動が可能となる。
【0029】
さらに、架台2の山側には前記ウエート4を設け、このウエート4は、架台2の山側上部に配置され、タンク本体51とこのタンク本体51に入れた液体たる水52とからなる。
【0030】
次に、前記掘削装置1を用いた掘削方法について説明する。例えば、16トンのラフタークレーンにより、現場の道路101に覆い板32を敷設し、架台2,ウエート4,リーダー21,ダウンザホールドリル3を組み立てていく。この場合、他のものに比べて、ダウンザホールドリル3の部品は軽量であり、扱いが容易である。また、ウエート4においては、架台2にタンク本体51を搭載した後に水52を充填することができる。
【0031】
そして、架台2の内部に覆工板31を取り付け、ジャッキ44により架台2を位置固定状態で支持し、架台2の前後にアプローチ板41を取り付けることにより、架台2の一方から通路32を通って他方に通行することが可能となる。
【0032】
このようにして、道路101の交通を開放しながら、或いは夜間などにおいて、暫定通行止めの時に、ダウンザホールドリル3により道路101の谷側に縦孔61を掘削する。
【0033】
1つの縦孔61の掘削が終了したら、通行止めを行い、アプローチ板41を取り外し、固定用のジャッキ44を縮小してチルタンク33により架台2を支持する。また、進行方向の道路101などに予めアンカー34を埋め込んでおき、アンカー34により反力を取って、チルホール35により引き寄せ、ダウンザホールドリル3を装備した架台2ごと次の掘削位置に移動する。尚、移動位置の道路101には予め覆い板32を敷設しておく。
【0034】
所定の位置まで掘削装置1を移動させたら、固定用のジャッキ44を伸ばして該ジャッキ44により架台2を支持し、アプローチ板41を取り付け、再び交通を開放する。
【0035】
架台2が移動した後の縦孔61に、前記ラフタークレーンにより、鋼管(図示せず)を建込、該縦孔61モルタルを充填して鋼管杭(図示しない)を構築する。
【0036】
上記のサイクルを杭の本数だけ繰り返し、杭施工を完了する。
【0037】
そして、前記鋼管杭により道路の拡張部分を構成する床版などを支持し、道路拡張構造の下部工とすることができる。
【0038】
このように、今まで実現が困難であった山側谷側共に切り立った狭い道路で、既設の道路101の通行を確保しながら、谷側の傾斜面103上或いは道路101の谷側路肩部に杭を設置するための掘削孔たる縦孔61を構築することができる。
【0039】
そして、架台2の内部を活用して通行を確保することができ、架台2の上で掘削の作業を行うので、架台2内部の通路16の通行を阻害することがない。また、架台2の一部は谷側に突出して縦孔61施工のための領域を確保し、同時に架台2の安定のバランスを架台2の山側に乗せたウエート4により確保している。また、ウエート4は、コンクリートなどの重量物を積み上げて構成してもよいが、タンク本体51にバランス上の必要分の水などを注入することで簡便に対応することができ、工事が終了したら、その水52は谷側に流して処理することができる。さらに、岩盤に杭建て込み用の縦孔61を掘削するダウンザホール工法において、小型のクレーンで容易にその部品や装置を組み立て及び解体することができる。
【0040】
また、架台2に設置されたダウンザホールドリル3の位置は、架台2において、前後左右に容易に移動でき、縦孔61位置の調整が容易にできる。すなわち、架台2において、前,後枠体11F,11Rに対して、支持梁15の取付位置を調整可能に設け、例えばボルト孔を複数個所設けて所定の位置に支持梁15を取付可能に構成すれば、道路幅方向に対するダウンザホールドリル3の位置を調整できる。また、同様に、支持枠15に長さ方向に対するリーダー21の取り付け箇所を調整可能に設ければ、架台2の長さ方向に対して、ダウンザホールドリル3の位置を調整することができる。
【0041】
そしてまた、一旦、現場で掘削装置1を組み立てた後は、ダウンザホールドリル3及び架台2などを分解することなく、次の掘削位置に容易に移動することができる。
【0042】
このように本実施例では、山に沿う道路101の谷側を掘削する掘削装置1において、内部に道路長さ方向の通路16を有し道路101に沿って移動可能に設けられた架台2と、この架台2の谷側に配置された掘削ドリルたるダウンザホールドリル3と、架台2の山側に設けられたウエート4とを備えるから、谷側のダウンザホールドリル3により道路101の谷側に縦孔61を形成し、その架台2は内部に通路16を有するため、その通路16により道路101の交通を確保することができ、また、架台2の谷側にウエート4を設けることにより、ダウンザホールドリル3を配置した谷側との釣り合いを保つことができる。
【0043】
また、このように本実施例では、架台2の一部が谷側に突出するから、道路101の谷側で掘削作業を行うことができる。
【0044】
また、このように本実施例では、ウエート4が液体を充填するタンク本体51を備えるから、液体を抜いたタンク本体51は軽量であるから、扱いが容易となり、現場においても入手が容易な水52などの液体を必要量だけ充填することにより、ウエート4としての作用が得られる。
【0045】
また、このように本実施例では、掘削ドリルがダウンザホールドリル3であるから、ダウンザホールドリル3の部品は軽量であり、現場での扱いが容易になる。
【0046】
また、このように本実施例では、請求項1記載の掘削装置を用いた掘削方法において、道路101に架台2を固定し、通路16により道路101の通行を可能にするから、道路101に掘削装置1を配置しても、必要なときに通行を確保することができる。
【0047】
また、このように本実施例では、ダウンザホールドリル3により縦孔61を形成した後、架台2を道路101に沿って次の縦孔位置に移動するから、架台2の移動と掘削を繰り返しながら、順次縦孔61を構築することができる。
【0048】
また、実施例上の効果として、ダウンザホールドリル3はリーダー21に沿って移動する方式のものを用いたから、その昇降手段が簡易なものになると共に、昇降操作を簡易に行うことができる。
【0049】
尚、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1を示す道路幅方向の断面図である。
【図2】同上、正面図である。
【図3】同上、平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 掘削装置
2 架台
3 ダウンザホールドリル(掘削ドリル)
4 ウエート
16 通路
52 タンク本体
53 水(液体)
61 縦孔(掘削孔)
101 既設の道路
103 傾斜面
Y 山側
T 谷側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山に沿う道路の谷側を掘削する掘削装置において、内部に道路長さ方向の通路を有し前記道路に沿って移動可能に設けられた架台と、この架台の谷側に配置された掘削ドリルと、前記架台の山側に設けられたウエートとを備えることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
前記架台の一部が谷側に突出することを特徴とする請求項1記載の掘削装置。
【請求項3】
前記ウエートが液体を充填するタンク本体を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の掘削装置。
【請求項4】
前記掘削ドリルがダウンザホールドリルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の掘削装置。
【請求項5】
請求項1記載の掘削装置を用いた掘削方法において、前記道路に前記架台を固定し、前記通路により前記道路の通行を可能にすることを特徴とする掘削方法。
【請求項6】
前記掘削ドリルにより掘削孔を形成した後、前記架台を道路に沿って次の掘削孔位置に移動することを特徴とする請求項5記載の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203750(P2009−203750A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48768(P2008−48768)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】