説明

掘削装置及び掘削工法

【課題】簡易な構成で、回転駆動源(アースオーガ)を迅速かつ確実に回転止めすることを可能とする。
【解決手段】回転駆動源18の機器枠体18bと柱状ケーシング12とを軸回り方向に係合させる第1回転止め手段20b,12aを介して連結するとともに、装置固定枠体11に対して柱状ケーシング12を軸回り方向に係合させる第2回転止め手段22,12bを介して支持し、回転駆動源18の機器枠体18bに発生した回転駆動力を第1回転止め手段20b,12aで柱状ケーシング12に伝達させ、その柱状ケーシング12を第2回転止め手段22,12bにより回転方向に係止して回転駆動源18の機器枠体18bを回転方向に係止させるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地層内に柱状ケーシングを引き込みながら削孔を行うように構成された掘削装置に関する。
【0002】
従来から、地層の削孔を行う掘削工法には種々のものがあるが、近年、削孔時に柱状ケーシングを地層に立てた状態で残すことが出来るようにした、いわゆる二重管式ダウンザホールハンマー工法が採用されつつある。その二重管式ダウンザホールハンマー工法によれば、急斜面で狭隘な土地や、崩壊しやすい現地等においても、杭打ちを行うことができるという利点がある。
【0003】
そのような二重管式ダウンザホールハンマー工法を実際に行うにあたっては、例えば図12に示されているように、回転駆動源としてのアースオーガ(電動モータ)1に、スクリューロッド2及びダウンザホールハンマー3を介して接続されたパイロットビット4を、中空状部材からなる柱状ケーシング5の内部に挿入していき、柱状ケーシング5の下端に回転可能に取り付けられたリングビット6にパイロットビット4の先端部分をチャッキングさせる。そして、装置全体を立設して杭芯に位置合せした状態で、アースオーガ(電動モータ)1を起動させ、その回転駆動力によってパイロットビット4及びリングビット6を削孔方向に回転させながら削孔を行うようにしている。
【0004】
このように回転駆動源としてのアースオーガ(電動モータ)1を回転駆動させるにあたっては、当該アースオーガ1のハウジングを構成している機器枠体1aを回転止めしておく必要があるが、そのため従来装置においては、アースオーガ1の機器枠体1aに、略水平に突出する複数のアーム部1bを設けておき、それらの各アーム部1bに固定ワイヤー7をそれぞれ通した後に、地層の適宜の位置に打設したアンカー8に各固定ワイヤー7の下端部を接続して固定状態とすることが行われている。
【0005】
しかしながら、このようにアースオーガ1に対して固定ワイヤー7を配備するに際しては、固定ワイヤー7の取り回しなどに相当の作業時間を要するとともに、固定ワイヤー7を接続するアンカー8の打込み作業等に多大な労力を要しており、工期の短縮化や安全性を阻害する原因の一つになっている。
【0006】
一方、下記の特許文献1に記載されているように、アースオーガに連結された柱状ケーシングの外周面に、外方に突出する回転止め板(連結補強部材)を設け、その回転止め板を、地層上に設置した反力止め手段に係合させることによって柱状ケーシング及びアースオーガの回転止めを行うようにした提案も従来からなされている。このような提案にかかる装置によれば、上述したような固定ワイヤーを用いることなくアースオーガの回転止めを行うことができる。しかしながら、削孔の際に、柱状ケーシングの外周面が孔壁面に接触しながら掘り進んでいく、いわゆるクリッド工法においては、柱状ケーシングから外方に突出するよう設けられた回転止め板が地層に衝突することになってしまい、それが重大な障害となって削孔を行うことが困難になるという問題がある。また、固定された部材同士の接触によって回転止めが行われていることから、削孔工程の進展により柱状ケーシングが下降していく際に固定部材同士が擦れ合う状態となり、その固定部材同士の擦れ音が騒音となって、環境上使用することができない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−355381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、簡易な構成で、回転駆動源(アースオーガ)を迅速かつ確実に回転止めすることができるようにした掘削装置及び掘削工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明にかかる掘削装置では、削孔される地層の内部に向かって挿入される長尺中空状部材からなる柱状ケーシングと、前記柱状ケーシングの中空内部に当該柱状ケーシングの略中心軸回りに回転可能に挿入されるパイロットビットと、前記柱状ケーシングの挿入方向における下端部に継手部材を介して回転可能に取り付けられるリングビットと、機器枠体から延出する出力軸の回転駆動力を前記パイロットビットに付与する回転駆動源とを備え、前記地層上に構築された装置固定枠体を介して前記柱状ケーシングを削孔位置に立設し、前記パイロットビット及び前記リングビットを前記回転駆動源により回転駆動させて前記地層に対して削孔を行うように構成された掘削装置において、前記回転駆動源の機器枠体と前記柱状ケーシングとを、前記中心軸に関する軸方向に分離可能としつつ軸回り方向に係合させるように連結する第1回転止め手段と、前記装置固定枠体に対して前記柱状ケーシングを、前記中心軸に関する軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させるように支持する第2回転止め手段とを備えた構成が採用されている。
【0010】
また、本発明にかかる掘削工法では、削孔される地層の内部に向かって挿入される長尺中空状部材からなる柱状ケーシングと、前記柱状ケーシングの中空内部に当該柱状ケーシングの略中心軸回りに回転可能に挿入されるパイロットビットと、前記柱状ケーシングの挿入方向における下端部に継手部材を介して回転可能に取り付けられるリングビットと、機器枠体から延出する出力軸の回転駆動力を前記パイロットビットに付与する回転駆動源とを備えた掘削装置を用いる工法であって、前記地層上に構築された装置固定枠体を介して前記柱状ケーシングを削孔位置に立設し、前記パイロットビット及び前記リングビットを前記回転駆動源により回転駆動させて前記地層に対して削孔を行う掘削工法において、前記回転駆動源の機器枠体と前記柱状ケーシングとを、前記中心軸に関する軸方向に分離可能としつつ軸回り方向に係合させるように連結し、前記装置固定枠体に対して前記柱状ケーシングを、前記中心軸に関する軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させるように支持する構成が採用されている。
【0011】
このような構成を有する掘削装置及び掘削工法によれば、回転駆動源の機器枠体において発生した回転駆動力が、第1回転止め手段を介して柱状ケーシングに伝達されるが、当該柱状ケーシングは、第2回転止め手段により回転方向に係止されるため、回転駆動源の機器枠体が回転方向に係止されることとなる。その結果、回転駆動源の出力軸並びにパイロットビット及びリングビットが駆動方向に円滑に回転され、回転駆動源の機器枠体に対する回転止めが、柱状ケーシングを介して簡易な回転止め手段により行われることから、従来のような回転駆動源に対する固定ワイヤーの配備や、アンカーの打ち込みなどの大がかりな作業が不要となり、工期の短縮及び安全性が高められる。
【0012】
また、本発明にかかる前記第1回転止め手段は、前記回転駆動源の機器枠体に取り付けられた中空円筒状部材を有し、前記中空円筒状部材の内周面及び前記柱状ケーシングの外周面に、前記中心軸に関する軸方向に分離可能で軸回り方向に係合させる回転係合板がそれぞれ設けられていることが望ましい。
【0013】
このような構成とすれば、第1回転止め手段を簡易な構成としつつ、確実な回転止め作用が得られる。
【0014】
また、本発明にかかる前記第2回転止め手段は、前記装置固定枠体に回転自在に取り付けられた回転ローラを有し、前記柱状ケーシングの外周面に、前記回転ローラを前記中心軸の軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させる回転係合溝が設けられていることが望ましい。
【0015】
このような構成とすれば、第2回転止め手段を簡易な構成としつつ、確実な回転止め作用が得られる。特に、第2回転止め手段を構成する回転係合溝が柱状ケーシングの外周面から内方に窪んでいるため、柱状ケーシングの外周面から外方に突出する従来の回転止め板のように削孔を行う際の邪魔になることがなく、削孔作業が円滑に行われる。また、削孔行程の進展により柱状ケーシングが下降していく際に、第2回転止め手段を構成する回転ローラの転動によって柱状ケーシングの下降が円滑に案内されることとなり、従来のような擦れ音等の騒音がほとんど発生しなくなって、環境上極めて良好な削孔作業が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明にかかる掘削装置及び掘削工法は、回転駆動源の機器枠体と柱状ケーシングとを軸方向に分離可能としつつ軸回り方向に係合させるように第1回転止め手段を介して連結するとともに、装置固定枠体に対して柱状ケーシングを軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させるように第2回転止め手段を介して支持する構成によって、回転駆動源の機器枠体に発生した回転駆動力を第1回転止め手段を介して柱状ケーシングに伝達させ、かつ柱状ケーシングを第2回転止め手段により回転方向に係止して回転駆動源の機器枠体を回転方向に係止させることにより、回転駆動源の出力軸並びにパイロットビット及びリングビットを駆動方向に円滑に回転させるとともに、回転駆動源の機器枠体に対する回転止めを柱状ケーシングを介して簡易な回転止め手段により行わせ、従来のような回転駆動源に対する固定ワイヤーの配備や、アンカーの打ち込みなどの大がかりな作業を不要として工期の短縮及び安全性を高めるように構成したものであるから、簡易な構成で、回転駆動源(アースオーガ)を迅速かつ確実に回転止めすることができ、掘削装置及び掘削工法の信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる掘削装置において、パイロットビットを柱状ケーシングの内部に挿入する準備段階の状態を表した部分縦断面説明図である。
【図2】図1に示された掘削装置において、パイロットビットを柱状ケーシングの内部に挿入した後の状態を表した部分断面説明図である。
【図3】図1及び図2に示された掘削装置の下端部分(ヘッド部分)を表した縦断面説明図である。
【図4】図1及び図2に示された掘削装置の上端部分に配置された第1回転止め手段を表した縦断面説明図である。
【図5】図4中のV−V線に沿った横断面説明図である。
【図6】図3中のVI−VI線に沿った横断面説明図である。
【図7】図1〜図3に示された掘削装置に用いられているパイロットビットの側面説明図である。
【図8】図7に示されたパイロットビットの正面説明図である。
【図9】図1〜図3に示された掘削装置に用いられているリングシューの側面説明図である。
【図10】図1〜図3に示された掘削装置に用いられているリングビットの側面説明図である。
【図11】図10に示されたリングビットの正面説明図である。
【図12】一般に用いられている掘削装置において、パイロットビットを柱状ケーシングの内部に挿入した後の状態を表した部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は、削孔時を想定して掘削の推進方向を下方向として行うこととする。
【0019】
まず、図1及び図2に示されている本発明の一実施形態にかかる掘削装置を使用するにあたっては、まず削孔が行われる地層Tの所定の杭芯位置に装置固定枠体11が構築され、その装置固定枠体11の内部に、長尺中空状の円形管部材からなる柱状ケーシング12が挿入されることによって、当該柱状ケーシング12が所定の杭芯位置に略鉛直方向に立てられた状態に保持されるようになっている。
【0020】
柱状ケーシング12は、削孔される地層Tの内部に向かって挿入されるものであるが、その柱状ケーシング12の下端部には、特に図3に示されているように、継手部材としてのケーシングシュー13を介してリングビット14が回転可能に取り付けられている。また、上記柱状ケーシング12の中空状内部には、当該柱状ケーシング12の略中心軸回りに回転駆動されるパイロットビット15が挿入されている。このパイロットビット15は、上述したリングビット14に対して後述するようにして回転伝達可能な状態にチャッキングされている。
【0021】
パイロットビット15の上端部には、ダウンザホールハンマ16及びオーガスクリュ17が連接されており、それらの両部材16,17を介してパイロットビット15が、回転駆動源としてのアースオーガ18の出力軸18aに連結されている。アースオーガ(回転駆動源)18は、機器枠体18bの内部に電気モータを備えたものであって、機器枠体18bから下方に延出する出力軸18aの回転駆動力によってパイロットビット15及びリングビット14が掘削方向に回転されるようになっている。
【0022】
なお、上述したように柱状ケーシング12は、長尺中空状の円形管部材から形成されているが、後述するように掘削直後の支持杭としてそのまま地層Tに立設された状態で残されたり、内部に鋼材等の本杭部材を挿入した後に引き抜かれたりするものである。
【0023】
また、その柱状ケーシング12の中空内部に挿入されるパイロットビット15は、比較的小径をなす駆動軸部15aを有しているとともに、その駆動軸部15aの下端部分に、比較的大径をなすヘッド部15bが設けられている。このヘッド部15bの先端面(下端面)には、多数の突起状部材からなる中心側ドリル片15cが点在するように設けられていて、上述した駆動軸部15aを介して伝達される所定の回転駆動力によってヘッド部15bが回転され、そのときの中心側ドリル片15cの切削作用で地層の掘削が行われて地層T内下方に向かって削孔が形成されるようになっている。
【0024】
また、当該ヘッド部15bには、上述したオーガスクリュ17及びダウンザホールハンマ16から駆動軸部15aを略中心軸方向に延びるエアー通路15dが形成されている。このエアー通路15dは、前記駆動軸部15a及びヘッド部15bの略軸中心に沿って延在しているとともに、前記ヘッド部15bの先端部分(下端部分)の近傍において複数(4体)に分岐しており、それらの各分岐路が、前記ヘッド部15bの先端面(下端面)に開口するように形成されている。
【0025】
さらに、上述したエアー通路15dの各開口部からは、排出溝15eが半径方向外方に向かって延在するように設けられている。それらの各排出溝15eは、前記ヘッド部15bの外周部まで放射状に延出した後に、そのヘッド部15bの外周部から当該ヘッド部15bの外周面上を軸方向に延びており、ヘッド部15bの反対側の上端面に開口するように設けられている。それらの各排出溝15eの上端側の開口部は、前記柱状ケーシング12の内部空間に連通しており、削孔時に生じる廃土等が、前記エアー通路15dから供給されたエアーにより各排出溝15eを通って排出されていくように構成されている。
【0026】
一方、前記柱状ケーシング12の軸方向下端部分には、継手部材としてのケーシングシュー13が溶接により固定されている。そのケーシングシュー(継手部材)13は、中空の管状部材から形成されたものであって、当該ケーシングシュー13の下端部分に、前記柱状ケーシング12の略中心軸回りに回転可能となるようにしてリングビット14が取り付けられる構成になされている。また、そのケーシングシュー13の内部側には、上述したパイロットビット15が回転可能に挿入されるようになっている。
【0027】
上述したリングビット14も、中空の管状部材から形成されており、当該リングビット14の下端面の外周部に多数の外周側ドリル片14aが突起状をなすように設けられていて、上述したパイロットビット15から、次に説明するマウント構造を介して伝達される所定の回転駆動力によって当該リングビット14が回転され、そのときの前記外周側ドリル片14aの切削作用により、前記柱状ケーシング12の外周部に相当する位置の掘削が行われるようになっている。
【0028】
このリングビット14の内部側には、上述したようにパイロットビット15が回転可能に挿入される構成になされているが、これらのリングビット14とパイロットビット15とは、いわゆるバヨネットマウントにより着脱(チャッキング)可能な構成になされている。すなわち、特に図7〜図11に示されているように、それらのパイロットビット15及びリングビット14における内周壁面には、半径方向の凹凸関係を逆にしたロック部15f,14bが設けられている。それらのロック部15f,14bは、特定の角度位置において嵌合するとともに、他の角度位置においては非嵌合状態となるように構成されたものであって、それらのロック部15f,14bどうしが非嵌合状態となる角度位置においてリングビット14とパイロットビット15とが軸方向に嵌め込まれた後、そのときの嵌め込み位置から適宜の中心角度だけ両者を相対的にずらすように回動させられることによって、前記両ロック部15f,14bどうしが、軸方向嵌合状態になされるとともに、周方向の一方に嵌合状態で他方向には非嵌合状態になされるようになっている。
【0029】
そして、パイロットビット15とリングビット14との嵌合状態から、アースオーガ18が起動され、その出力軸18aの回転駆動力によって特定の一方向にパイロットビット15が回転駆動されると、当該パイロットビット15に対して周方向に嵌合されたリングビット14が連れ回ることとなり、それらパイロットビット15及びリングビット14に設けられた中心側ドリル片15c及び外周側ドリル片14aにより地層Tの掘削が、前述したダウンザホールハンマ16からの下方向推進力が付与されつつ行われるようになっている。特に、リングビット14の外周側ドリル片14aは、削孔の外周壁面を形成するものであって、その削孔の外周壁面に沿って上述した柱状ケーシング12が挿入されるようになっている。
【0030】
また、上述したケーシングシュー(継手部材)13の上方側部分を構成している本体基部13aは、パイロットビット15のヘッド部15bの外周部分に対して軸方向移動可能かつ回転可能に装着されているとともに、その本体基部13aから下方向かって延出している支持部13bの内周側には、上述したリングビット14が回転可能に収容されている。それらケーシングシュー13の本体基部13aと、リングビット14の上端面との間には、ケーシングシュー13が軸方向に移動するための移動空間が形成されている。
【0031】
このようにケーシングシュー(継手部材)13の移動空間は、当該ケーシングシュー13の本体基部13aと、リングビット14の上端面とが軸方向に対向する面どうしの間(以下、軸方向対向面間と呼ぶ。)に形成されているが、当該移動空間を半径方向にみた場合には、半径方向内方側のパイロットビット15と、半径方向外方側のケーシングシュー13とが半径方向に対向する面どうしの間(以下、半径方向対向面間と呼ぶ。)に形成されている。
【0032】
そして、その軸方向対向面間及び半径方向対向面間に形成される移動空間の内部側には、少なくとも軸方向に弾性を有する緩衝部材19が配置されている。本実施形態における緩衝部材19としては、周方向に螺旋状に延在する環状コイルバネが採用されている。この環状コイルバネからなる緩衝部材19は、基本的には、ケーシングシュー13の本体基部13aとリングビット14の上端面との間部分において軸方向に介在して緩衝機能を発揮するように配置されたものであるが、当該緩衝部材19は、回転部材であるパイロットビット15とリングビット14との間における回転力伝達手段としての機能を有している。
【0033】
一方、前述したように回転駆動源としてのアースオーガ18の機器枠体18bは、特に図4に示されているように、第1回転止め手段としての回転止めキャップ20を介して柱状ケーシング12の上端部分に連結されている。その回転止めキャップ20は、中空円筒状部材からなるキャップ本体20aを有しており、当該キャップ本体20aの上端側の閉塞端縁部分が、前記アースオーガ18の機器枠体18bの下端側の外周面に溶接等により固定されている。そして、この回転止めキャップ20を構成しているキャップ本体20aは、当該キャップ本体20aの下端側に設けられた開口部から、前記柱状ケーシング12の上端部分の外方側を覆うように外嵌されることによって装着される構成になされている。
【0034】
このとき、図5に示されているように、上述した回転止めキャップ20を構成するキャップ本体20aの内周面には、中心軸に向かって内方側に突出するキャップ側回転係合板20bが円周方向に沿って略等間隔で4体設けられている。これに対応して、前記柱状ケーシング12の外周面には、中心軸から外方向に向かって突出するケーシング側回転係合板12aが円周方向に沿って略等間隔で4体設けられている。そして、上述したように回転止めキャップ20のキャップ本体20aが柱状ケーシング12に外方側から被せられるようにして装着されると、それらのキャップ側回転係合板20bとケーシング側回転係合板12aとが、円周方向に対向するように配置される位置関係になされている。
【0035】
そして、回転駆動源としてのアースオーガ18が僅かに回転駆動されることによって、前記両部材20a,12a同士が円周方向に当接され、その後にアースオーガ18が回転駆動されることによって、その出力軸18aからの回転駆動力が両部材20a,12aを介して柱状ケーシング12側に伝達される構成になされている。このように第1回転止め手段を、板状部材からなるキャップ側回転係合板20b及びケーシング側回転係合板12aにより構成することによって、簡易な構成としつつ、確実な回転止め作用が得られる。
【0036】
また、前述したように柱状ケーシング12は、当該柱状ケーシング12の下端部分が、地層に構築された装置固定枠体11の内部に挿入されることによって所定の杭芯位置に略鉛直方向に立てられた状態に保持されるようになっている。このときの装置固定枠体11には、特に図3に示されているように、第2回転止め手段としての一対の回転ローラ22,22が取り付けられている。それらの各回転ローラ22は、装置固定枠体11の上面に着脱自在かつ位置移動自在に配置された軸受け板22aに回転自在にそれぞれ取り付けられており、装置固定枠体11上において杭芯に相当する位置まで移動されてから、柱状ケーシング12を外方側から直径方向に挟むようにして適宜の固定手段で固定される。
【0037】
一方、図6にも示されているように、柱状ケーシング12の外周面には、上述した一対の回転ローラ(第2回転止め手段)22を受け入れるための一対の回転係合溝12b,12bが凹設されている。それらの各回転係合溝12bも、第2回転止め手段を構成するものであって、上述した回転ローラ22における半径方向の外端部分を収容可能とする溝幅及び溝深さを有しており、前述したパイロットビット15及びリングビット14を除いた柱状ケーシング12の略全長にわたって延在している。
【0038】
そして、図3に示されているように、柱状ケーシング12の回転係合溝12bの内部に回転ローラ22の一部が収容されることによって、柱状ケーシング12の回転が回転ローラ22により係止される一方、回転ローラ22が回転係合溝12bの底面を上下方向に転動することによって、柱状ケーシング12の全体が中心軸方向(上下方向)に沿って任意に往復移動可能となるように支持される構成になされている。
【0039】
このように第2回転止め手段を、回転ローラ22及び回転係合溝12bにより構成することによって、簡易な構成としつつ、確実な回転止め作用が得られる。また、削孔行程の進展により柱状ケーシング12が下降していく際に、第2回転止め手段を構成する回転ローラ22の転動によって柱状ケーシング12の下降が円滑に案内されることとなり、従来のような擦れ音等の騒音がほとんど発生しなくなって、環境上極めて良好な削孔作業が可能となる。
【0040】
このとき、上述した柱状ケーシング12に設けられた一対の回転係合溝12b,12bは、前述したパイロットビット15の排出溝15eに対応した位置に配置されており、かつその回転係合溝12bの外形状は、排出溝15eよりやや小さくなるように形成されている。これによって、柱状ケーシング12の内部をパイロットビット15が移動する際に、パイロットビット15側の排出溝15eが柱状ケーシング12側の回転係合溝12bに干渉することがない構成になされている。
【0041】
このような構成を有する掘削装置を用いた掘削によって削孔を形成するにあたっては、次のようなクリッド工法が用いられる。まず、現場に装置を搬入して、削孔を行う地層Tに装置固定枠体11を構築する一方、柱状ケーシング12の下端部にケーシングシュー(継手部材)2を溶接する。そのときのケーシングシュー13にはリングビット14が回転可能に取り付けられている。リングビット14が取り付けられた柱状ケーシング12は、装置固定枠体11に挿入されて略鉛直方向に立てた状態に保持される。このとき、柱状ケーシング12に設けられた一対の回転係合溝12b,12b内に、装置固定枠体11側に取り付けた一対の回転ローラ(第2回転止め手段)22,12がそれぞれ挿入される。
【0042】
次いで、図1に示されているように、アースオーガ18の出力軸18aにダウンザホールハンマ16及びオーガスクリュ17を介して連結されたパイロットビット15が、柱状ケーシング12の上端部から内部に挿入されて下端部分に配置されたリングビット14にチャッキングされる。そして、アースオーガ18を回転起動させてパイロットビット15及びリングビット14に回転駆動力を付与し、それによってパイロットビット15及びリングビット14の中心側ドリル片15c及び外周側ドリル片14aで地層Tの掘削を行い、削孔作業が実行される。
【0043】
その際、アースオーガ18の機器枠体18bに発生した回転駆動力は、回転止めキャップ(第1回転止め手段)20を介して柱状ケーシング12に伝達されるが、当該柱状ケーシング12は、回転ローラ(第2回転止め手段)22により回転方向に係止されるため、アースオーガ18の機器枠体18bが回転方向に係止されることなる。その結果、アースオーガ18の出力軸18a並びにパイロットビット15及びリングビット14が駆動方向に円滑に回転される。このように、アースオーガ18の機器枠体18bに対する回転止めが、柱状ケーシング12を介して簡易な構成の回転止め手段10,12により行われることから、従来のようなアースオーガ18に対する固定ワイヤーの配備や、アンカーの打ち込みなどの大がかりな作業が不要となり、工期の短縮及び安全性が高められる。
【0044】
特に、本実施形態では、第2回転止め手段を構成する回転係合溝12bが、柱状ケーシング12の外周面から内方に窪んで外方に突出することがないので、柱状ケーシングの外周面から外方に突出する従来の回転止め板のように削孔を行う際の邪魔になることがなく、削孔作業が円滑に行われる。また、削孔の進展に伴い、第2回転止め手段を構成する回転ローラ22の転動によって柱状ケーシング11が下降していくため、従来のような擦れ音等の騒音がほとんど発生しなくなり、環境上極めて良好な削孔作業が可能となる。
【0045】
また、このようなパイロットビット15及びリングビット14の回転駆動による削孔時には、柱状ケーシング12からケーシングシュー(継手部材)13を介してリングビット14に下方推進力が付与される。この下方推進力は、ハンマー装置等によって強い軸方向の押圧力として所定の周期で付与され、それによって削孔作業が迅速に行われるようになっている。
【0046】
この削孔作業時には、リングビット14に引き込まれるようにして柱状ケーシング12が地層T内に立てられることとなるが、削孔が予定の深さに達したら、パイロットビット15をリングビット14とのチャッキングから分離して上方に引き上げる。そして、その引き上げたパイロットビット15に替えて、鋼材等からなる杭を柱状ケーシング12の内部に挿入して地層Tに打ち込み、最後に柱状ケーシング12を地層Tから引き抜く。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0048】
例えば、本発明にかかる第1及び第2回転止め手段としては、上述した実施形態のような部材以外の各種の機構や部材を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
T 地層
11 装置固定枠体
12 柱状ケーシング
12a ケーシング側回転係合板
12b 回転係合溝(第2回転止め手段)
13 ケーシングシュー
13a 本体基部
13b 支持部
14 リングビット
14a 外周側ドリル片
14b ロック部
15 パイロットビット
15a 駆動軸部
15b ヘッド部
15c 中心側ドリル片
15d エアー通路
15e 排出溝
15f ロック部
16 ダウンザホールハンマ
17 オーガスクリュ
18 アースオーガ
18a 出力軸
18b 機器枠体
19 緩衝部材
20 回転止めキャップ(第1回転止め手段)
20a キャップ本体
20b キャップ側回転係合板
22 回転ローラ(第2回転止め手段)
22a 軸受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔される地層の内部に向かって挿入される長尺中空状部材からなる柱状ケーシングと、前記柱状ケーシングの中空内部に当該柱状ケーシングの略中心軸回りに回転可能に挿入されるパイロットビットと、前記柱状ケーシングの挿入方向における下端部に継手部材を介して回転可能に取り付けられるリングビットと、機器枠体から延出する出力軸の回転駆動力を前記パイロットビットに付与する回転駆動源と、を備え、
前記地層上に構築された装置固定枠体を介して前記柱状ケーシングを削孔位置に立設し、前記パイロットビット及び前記リングビットを前記回転駆動源により回転駆動させて前記地層に対して削孔を行うように構成された掘削装置において、
前記回転駆動源の機器枠体と前記柱状ケーシングとを、前記中心軸に関する軸方向に分離可能としつつ軸回り方向に係合させるように連結する第1回転止め手段と、
前記装置固定枠体に対して前記柱状ケーシングを、前記中心軸に関する軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させるように支持する第2回転止め手段と、
を備えていることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
前記第1回転止め手段は、前記回転駆動源の機器枠体に取り付けられた中空円筒状部材を有し、
前記中空円筒状部材の内周面及び前記柱状ケーシングの外周面に、前記中心軸に関する軸方向に分離可能で軸回り方向に係合させる回転係合板がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の掘削装置。
【請求項3】
前記第2回転止め手段は、前記装置固定枠体に回転自在に取り付けられた回転ローラを有し、
前記柱状ケーシングの外周面に、前記回転ローラを前記中心軸の軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させる回転係合溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の掘削装置。
【請求項4】
削孔される地層の内部に向かって挿入される長尺中空状部材からなる柱状ケーシングと、前記柱状ケーシングの中空内部に当該柱状ケーシングの略中心軸回りに回転可能に挿入されるパイロットビットと、前記柱状ケーシングの挿入方向における下端部に継手部材を介して回転可能に取り付けられるリングビットと、機器枠体から延出する出力軸の回転駆動力を前記パイロットビットに付与する回転駆動源とを備えた掘削装置を用いる工法であって、
前記地層上に構築された装置固定枠体を介して前記柱状ケーシングを削孔位置に立設し、前記パイロットビット及び前記リングビットを前記回転駆動源により回転駆動させて前記地層に対して削孔を行う掘削工法において、
前記回転駆動源の機器枠体と前記柱状ケーシングとを、前記中心軸に関する軸方向に分離可能としつつ軸回り方向に係合させるように連結し、
前記装置固定枠体に対して前記柱状ケーシングを、前記中心軸に関する軸方向に移動可能としつつ軸回り方向に係合させるように支持することを特徴とする掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−112160(P2012−112160A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261386(P2010−261386)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【特許番号】特許第4768877号(P4768877)
【特許公報発行日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(599040115)青葉建機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】