説明

掘削装置

【課題】設置及び撤去作業を容易に行うことができるとともに、装置全体を小型化することができ、製造コストを安くすることができる掘削装置を提供することを課題とする。
【解決手段】掘削装置1であって、傾動自在なアーム11を有するキャブバッククレーン10及び荷台21を備えた自走可能なトラック20(搬送車両)と、アーム11に支持された状態で立設される門型フレーム30(支柱)と、門型フレーム30に沿って昇降可能なアースオーガ40(掘削手段)とを備え、門型フレーム30及びアースオーガ40を、トラック20の荷台21に積載して移動可能であり、アーム11の先端部11aを門型フレーム30の上端部に取り付けるとともに、アーム11から吊り下げられた昇降用ワイヤをアースオーガ40に取り付けることにより、アースオーガ40が門型フレーム30に沿って昇降するように構成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削するための掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤に縦穴を掘削するための掘削装置としては、地盤に立設されるリーダと、このリーダに沿って昇降するアースオーガと、リーダ及びアースオーガを支持するためのクローラクレーンと、を備えているものがある。
この従来の掘削装置では、クローラクレーンの支持用ワイヤによって、リーダの上端部を支持するとともに、クローラクレーンの昇降用ワイヤによって、アースオーガを支持しており、昇降用ワイヤを繰り出し又は巻き取ることにより、アースオーガがリーダに沿って昇降するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−38861号公報(段落0041〜0044、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の掘削装置を施工現場に搬入する場合には、リーダ及びアースオーガを搬送するためのトラックと、クローラクレーンを搬送するためのトラックとが必要となり、二台の搬送車両を用いることになるため、掘削装置の設置及び撤去作業が煩雑になってしまうという問題がある。
また、クローラクレーンを用いているため、井戸を掘削する場合など、小規模な施工を行う場合であっても、装置全体が大型化するとともに、掘削装置の製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、設置及び撤去作業を容易に行うことができるとともに、装置全体を小型化することができ、製造コストを安くすることができる掘削装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、地盤を掘削するための掘削装置であって、傾動自在なアームを有するクレーン及び荷台を備えた自走可能な搬送車両と、アームによって支持された状態で立設される支柱と、支柱に沿って昇降可能な掘削手段と、を備え、アームの先端部が支柱の上端部に脱着自在であるとともに、支柱及び掘削手段を、搬送車両の荷台に積載して移動可能であり、アームの先端部を支柱の上端部に取り付けて、支柱を立設させるとともに、アームの先端部から吊り下げられた昇降用ワイヤを、掘削手段に取り付け、昇降用ワイヤを繰り出し又は巻き取ることにより、掘削手段が支柱に沿って昇降するように構成されていることを特徴としている。
【0007】
この構成では、搬送車両に搭載されたクレーンのアームによって支柱を支持するとともに、このクレーンの昇降用ワイヤによって掘削手段を昇降させているため、搬送車両以外のクレーン車両を用いることなく、掘削作業を行うことができる。
【0008】
また、支柱及び掘削手段を搬送車両の荷台に積載することができ、装置全体を一台の搬送車両によって移動させることができるため、掘削装置の設置及び撤去作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、搬送車両に搭載されたクレーンを利用することにより、装置全体をコンパクトに構成することができる。なお、クレーンの駆動用として搬送車両に搭載された油圧装置や電源装置等の駆動源を用いて、掘削手段を駆動させた場合には、掘削装置の製造コストを安くすることができる。
【0010】
また、クレーンのワイヤによって支柱を支持することなく、クレーンのアームによって支柱の上端部を支持しているため、一系統のワイヤを備えたクレーンを用いることができる。これにより、井戸を掘削する場合など、小規模な施工を行う場合には、一般的なトラック搭載型クレーン(キャブバッククレーン)を用いて、掘削装置を構成することができるため、掘削装置を小型化することができるとともに、掘削装置の製造コストを安くすることができる。
【0011】
前記した掘削装置において、アームの先端部には、連結軸が横方向に突設され、支柱の上端部には、連結軸が嵌合可能な凹状の取付溝と、基端部を回動中心として縦方向に回動自在な固定用金具と、が設けられており、連結軸を取付溝に嵌合させた状態で、固定用金具を縦方向に回動させ、固定用金具を連結軸に被せることにより、連結軸を固定用金具と取付溝との間に固定させるように構成することができる。
【0012】
この構成では、支柱の上端部に形成された取付溝が凹状の溝であるため、この取付溝に対してアームの連結軸を容易に挿脱させることができる。
また、支柱の上端部に設けられた固定用金具を縦方向に回動させることにより、連結軸を支柱に対して容易に固定することができる。
さらに、昇降用ワイヤは、支柱に掛け渡されることなく、掘削手段を直接支持することになるため、昇降用ワイヤの取り回しを容易に行うことができる。
このように、クレーンと支柱及び掘削手段とは、容易に組み付け又は取り外すことができるため、掘削作業が行われていないときには、搬送車両を支柱及び掘削手段から速やかに取り外し、その搬送車両を用いて他の作業を行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0013】
前記した掘削装置において、支柱には、掘削手段に連結された掘削軸を取り外すために、掘削軸を軸回りに回動させるための張力付与手段が設けられており、張力付与手段は、伸縮自在なロッドを有し、支柱に固定されたシリンダと、シリンダのロッドに取り付けられた昇降滑車と、昇降滑車に掛け渡された引張り用線状体と、から構成され、引張り用線状体の一端を支柱に固定するとともに、他端を掘削軸の外周面に取り付けた状態で、シリンダのロッドを伸長させ、昇降滑車に掛け渡された引張り用線状体に張力を付与することにより、引張り用線状体から掘削軸の周方向に引張力を作用させて、掘削軸を軸回りに回動させるように構成することができる。
【0014】
ここで、従来の掘削装置において、掘削手段に連結された掘削軸を取り外すために、掘削軸を固定解除方向に向けて軸回りに回動させる場合には、クレーンのワイヤによって掘削軸の周方向に引張力を作用させている。したがって、従来の掘削装置のクレーンでは、掘削手段を昇降させるためのワイヤの他に別系統のワイヤを備えている必要があるため、トラック搭載型クレーン(キャブバッククレーン)のように、一系統のワイヤを有する小型のクレーンを用いることができない。
【0015】
これに対して、前記した構成では、支柱に固定されたシリンダのロッドを伸長させることにより、掘削軸の周方向に引張力を作用させ、掘削軸を固定解除方向に向けて軸回りに回動させることができる。そのため、クレーンのワイヤを用いることなく、掘削軸を掘削手段から取り外すことができる。これにより、トラック搭載型クレーン(キャブバッククレーン)のように、一系統のワイヤを有する小型のクレーンを用いることができるため、掘削装置を小型化することができるとともに、掘削装置の製造コストを安くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の掘削装置によれば、搬送車両以外のクレーン車両を用いることなく、掘削作業を行うことができる。
また、装置全体を一台の搬送車両によって移動させることができるため、設置及び撤去作業を容易に行うことができる。
また、搬送車両に搭載されたクレーンを利用することにより、装置全体をコンパクトに構成することができる。
また、一系統のワイヤを備えたクレーンを用いることができるため、小規模な施工を行う場合には、一般的なトラック搭載型クレーンを用いて、掘削装置を構成することができる。これにより、掘削装置を小型化することができるとともに、掘削装置の製造コストを安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、井戸などの縦穴を掘削するための掘削装置を例として説明する。
図1は、本実施形態の掘削装置を示した側面図である。図2は、本実施形態の掘削装置を示した正面図である。図3は、本実施形態の掘削装置におけるベース架台を示した平面図である。図4は、本実施形態の掘削装置におけるクレーンのアームと門型フレームの上枠材とを示した図で、(a)はアームを上枠材に取り付ける前の状態を示した平面図、(b)はアームを上枠材に取り付けた状態の平面図である。図5は、本実施形態の掘削装置におけるクレーンのアームを門型フレームの上枠材に取り付けるときの態様を示した図で、(a)は図4(a)のA−A断面図、(b)は図4(b)のB−B断面図である。図6は、本実施形態の掘削装置における張力付与装置を示した図で、(a)は側面図、(b)は引張り用ワイヤに張力を付与した状態の側面図である。図7は、本実施形態の掘削装置における張力付与装置を示した図で、オーガスクリュを回動させる態様を示した平面図である。
なお、以下の説明において、前後左右方向とは、各図に示した前後左右方向に対応している。
【0018】
[掘削装置の全体構成]
掘削装置1は、図1に示すように、キャブバッククレーン10及び荷台21を備えた自走可能なトラック20(特許請求の範囲における「搬送車両」)と、左右二本のリーダ31,31(図2参照)を有する門型フレーム30(特許請求の範囲における「支柱」)と、この門型フレーム30の各リーダ31,31に沿って昇降可能なアースオーガ40(特許請求の範囲における「掘削手段」)と、を備えている。
そして、図2に示すように、アースオーガ40の出力軸41に複数のオーガスクリュ50,50(特許請求の範囲における「掘削軸」)を連結し、このオーガスクリュ50,50を軸回りに回転させることにより、地盤を掘削することができる。
また、門型フレーム30の下端部には、アースオーガ40に連結されたオーガスクリュ50を取り外すために、オーガスクリュ50を軸回りに回動させるための張力付与装置60(特許請求の範囲における「張力付与手段」)が設けられている。
【0019】
[トラックの構成]
図1に示すトラック20は、運転室22と荷台21の間にキャブバッククレーン10が搭載されている一般的なクレーン付きの小型トラックであり、キャブバッククレーン10を駆動させるための油圧装置及び電源装置を備えている。
なお、図1のトラック20は走行方向を左右方向に向けて配置されており、トラック20を後方から見た図となっている。また、トラック20の構成は限定されるものではなく、各種公知のクレーン付きトラックを用いることができる。
【0020】
(キャブバッククレーンの構成)
キャブバッククレーン10は、図1に示すように、傾動及び伸縮自在であるとともに、水平方向に旋回可能なアーム11を有している。このキャブバッククレーン10は、公知の車両搭載型のクレーンを用いているため、その詳細な説明は省略する。
【0021】
キャブバッククレーン10は、図2に示すように、一系統の昇降用ワイヤ12を有しており、この昇降用ワイヤ12がアーム11(図1参照)の先端部11aから吊り下げられている。さらに、昇降用ワイヤ12にはフック13が吊り下げられている。
また、キャブバッククレーン10は、昇降用ワイヤ12の繰り出し又は巻き上げを行うための巻上機(図示せず)を備えており、この巻上機によって、昇降用ワイヤ12を繰り出し又は巻き上げることにより、フック13が昇降するように構成されている。
【0022】
アーム11の先端部11aには、図4(a)に示すように、連結軸11b、11bが左右方向(横方向)に突設されている。この連結軸11b,11bは、門型フレーム30(図1参照)の上端部に取り付けられる部位である。
また、アーム11の先端部11aにおいて、各連結軸11b,11bの後方には、支持軸11c、11cが左右方向に突設されており、前後に配置された連結軸11bと支持軸11cの各先端部が支持板11dによって連結されている。これにより、連結軸11bは両端が支持された状態となっているため、その支持力が大きくなっている。
【0023】
[門型フレームの構成]
門型フレーム30は、図2に示すように、後記するアースオーガ40の昇降を案内するための支柱であり、地面に載置されるベース架台32(図3参照)と、左右方向に所定間隔を離してベース架台32の上面に垂設されている二本のリーダ31,31と、各リーダ31,31の上端部の間に架設された上枠体33と、各リーダ31,31の所定の高さに取り付けられる作業台34と、から構成されている。
【0024】
(ベース架台の構成)
ベース架台32は、図3に示すように、平面視で四角形の枠組みであり、各リーダ31,31の下端部に設けられている。このベース架台32の上面には、各リーダ31,31の基端部が取り付けられている。
また、図3に示すように、ベース架台32において左側の後方角部には、張力付与装置60を取り付けるための取付部32aが左方に向けて延設されている。
さらに、ベース架台32の前枠材32bは、左右両端部がボルト(図示せず)によって、左右枠材32c,32cにそれぞれ固着されており、前枠材32bを左右枠材32c,32cから簡単に取り外すことができる。
【0025】
(リーダの構成)
図2に示す左右のリーダ31,31は、横断面が四角形状の中空な柱であり(図3参照)、上下方向に分割されている。本実施形態では、左右のリーダ31,31はそれぞれ四分割されており、ピンジョイントによって連結されている。
なお、各リーダ31,31の形状や連結部の構成は限定されるものではなく、各種公知の構成を用いることができる。
【0026】
(上枠体の構成)
上枠体33は、図2に示すように、左右のリーダ31,31の上端部に架設された板状の部材である。図4(a)に示すように、上枠体33の後方側の縁部において、左右方向の中央部には、切り欠き部33aが形成されている。この切り欠き部33aは、キャブバッククレーン10の先端部11aの前部が入り込める形状となっている(図4(b)参照)。
【0027】
また、上枠体33の上面において、切り欠き部33aの左右両側には、取付用ブラケット33b,33bがそれぞれ立設されている。
この取付用ブラケット33bは、二枚一組の縦板33b,33bから構成されており、図5(a)に示すように、縦板33b,33bには凹状の取付溝33cが形成されている。また、取り付けブラケット33bには、縦方向に回動自在な固定用金具33dが設けられている。
【0028】
取付溝33cは、取付用ブラケット33bの各縦板33b,33bの上端縁に形成されており、側面視で凹状の溝である。この取付溝33cは、後記するアーム11の連結軸11bの下半分が嵌合するように形成されている。また、取付溝33cは、前側縁部よりも後側縁部の方が低く形成されており、後方側から連結軸11bを入り込ませ易くなっている。
【0029】
固定用金具33dは、側面視で略U形状の部材であり、各縦板33b,33bの間に配設されている。なお、図5(a)は固定用金具33dを開いた状態を示している。
この固定用金具33dの基端部33dは、取付溝33cの前方で各縦板33b,33bに軸支されており、固定用金具33dは、基端部33dを回転中心として、縦方向に回動自在となっている。
また、固定用金具33dの先端部33dには、貫通穴33dが形成されている。この貫通穴33dは、図5(b)に示すように、固定用金具33dを回動させて閉じたときに、縦板33bに形成された貫通穴33eに連通するように構成されている。
【0030】
図5(b)に示すように、アーム11の連結軸11bの下半分を取付溝33cに嵌合させた状態で、固定用金具33dを回動させて閉じた場合には、固定用金具33dの中間部が連結軸11bの上半分に被さるように構成されている。
そして、固定用金具33dを回動させて閉じた状態で、固定用金具33dの先端部33dの貫通穴33dと、取付用ブラケット33bの縦板33bの貫通穴33eとにピン33fを挿通させることにより、固定用金具33dの先端部33dを縦板33bに固定することができる。
これにより、連結軸11bは、固定用金具33dと取付溝33cとの間に固定されることになり、アーム11の先端部11a(図1参照)を門型フレーム30の上端部に取り付けた状態となる。
【0031】
(作業台の構成)
作業台34は、図1に示すように、各リーダ31,31の所定高さに固定される足場であり、作業者は作業台34上からオーガスクリュ50の脱着等の高所作業を行うことができる。また、作業員は、作業台34に梯子(図示せず)を架けて、地上から作業台34に乗り込むように構成されている。
なお、作業台34の構成は限定されるものではなく、その形状や取付位置は作業性を考慮して適宜に設定されるものである。
【0032】
[アースオーガの構成]
アースオーガ40は、図2に示すように、軸方向が上下方向に配置された出力軸41を有する駆動モータ42と、各リーダ31,31に対してスライド可能に取り付けられているスライド部43,43とから構成されており、各スライド部43,43によって駆動モータ42が支持されている。
【0033】
(駆動モータの構成)
駆動モータ42は、既存の油圧モータであり、トラック20(図1参照)に搭載されている油圧装置(図示せず)で発生させた油圧によって駆動するように構成されている。また、駆動モータ42はトラック20に設けられた操作スイッチ(図示せず)を操作することにより、始動・停止させることができる。
なお、駆動モータ42の構成は限定されるものではなく、各種公知の駆動装置を用いることができる。
【0034】
また、駆動モータ42の上面には、環状の吊り金具44が設けられている。この吊り金具44に、昇降用ワイヤ12に吊り下げられているフック13を取り付けることにより、駆動モータ42は、昇降用ワイヤ12によって各リーダ31,31の間で吊り下げられた状態となっている。
【0035】
また、駆動モータ42の前方下部には、吊り込みワイヤ(図示せず)を繰り出し又は巻き取り可能な電動ウィンチ45が取り付けられている。
この電動ウィンチ45は、オーガスクリュ50を駆動モータ42に対して組み付けるときに、オーガスクリュ50を引き上げるために用いられるものである。この電動ウィンチ45は、トラック20(図1参照)に搭載された電源装置(図示せず)からの電力によって駆動する既存のウィンチであり、その構成は限定されるものではない。
【0036】
(スライド部の構成)
スライド部43は、外端部がリーダ31に外嵌されるとともに、内端部が駆動モータ42の外周面に取り付けられており、駆動モータ42の昇降に連動して、リーダ31に沿って上下方向に移動するように構成されている。
【0037】
[張力付与装置の構成]
図2に示す張力付与装置60は、アースオーガ40に連結されたオーガスクリュ50を取り外すために、オーガスクリュ50を軸回りに回動させるための装置である。
ここで、オーガスクリュ50は、掘削時の回転方向とは逆方向(固定解除方向)に向けて僅かに回動させることにより、オーガスクリュ50と出力軸41の連結、又は、上下に配置されたオーガスクリュ50,50の連結を解除することができるように構成されている。
また、オーガスクリュ50の上端部には、オーガスクリュ50を回動させるためのスパナ70(図7参照)を取り付けるための回動軸部51が設けられている。
【0038】
張力付与装置60は、図6(a)に示すように、上下方向に伸縮自在なロッド61aを有し、ベース架台32の取付部32aにシリンダ本体61bの基端部が固定されたシリンダ61と、ロッド61aの上端部に取り付けられた昇降滑車63と、シリンダ本体61bの外周面に取り付けられた固定滑車64と、昇降滑車63及び固定滑車64に掛け渡された引張り用ワイヤ65(特許請求の範囲における「引張り用線状体」)とから構成されている。
なお、シリンダ本体61bの外周面には、固定滑車64を取り付けるための取付穴61cが上下方向に複数形成されており、固定滑車64の取り付け高さを調整可能となっている。
【0039】
また、引張り用ワイヤ65は、昇降滑車63の外周溝の上側に掛け渡されるとともに、固定滑車64の外周溝の下側に掛け渡されている。
さらに、引張り用ワイヤ65の一端65a(左端)は、コッタ等の固定金具(図示せず)を用いて、シリンダ61の外周面に設けられたブラケットに固定されている。このようにして、引張り用ワイヤ65の一端65aは、シリンダ61を介してベース架台32に固定されている。
【0040】
また、引張り用ワイヤ65の他端65b(右端)は、図7に示すように、ワイヤクリップ等の固定金具を用いて、オーガスクリュ50の回動軸部51に組み付けられたスパナ70のグリップ部の先端部に取り付けられている。このようにして、引張り用ワイヤ65の他端65bは、スパナ70を介してオーガスクリュ50の外周面に取り付けられている。
【0041】
そして、図6(b)に示すように、シリンダ61のロッド61aを伸長させ、昇降滑車63及び固定滑車64に掛け渡された引張り用ワイヤ65に張力を付与することにより、図7に示すように、引張り用ワイヤ65によってスパナ70のグリップ部をシリンダ61側に引き寄せることができる。このようにして、オーガスクリュ50の周方向に引張力を作用させて、オーガスクリュ50を固定解除方向に回動させることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、オーガスクリュ50に引張力を作用させるための線状体として、引張り用ワイヤ65を用いているが、昇降滑車63及び固定滑車64に掛け渡される線状体はワイヤに限定されるものではなく、チェーンやロープ等の各種線状体を用いることもできる。
【0043】
[掘削装置を用いた掘削方法]
次に、前記した本実施形態の掘削装置を用いた掘削方法について説明する。
図8は、本実施形態の掘削装置を用いた掘削方法において、吊り滑車を用いてアースオーガを引き上げる態様を示した正面図である。
【0044】
(掘削装置の搬入)
まず、図1に示す掘削装置1を施工現場内に搬入する場合には、キャブバッククレーン10から門型フレーム30及びアースオーガ40を取り外してトラック20の荷台21に積載する。さらに、オーガスクリュ50や作業工具もトラック20の荷台21に積載した状態で、トラック20を走行させて装置全体を移動させることにより、掘削装置1を施工現場内に搬入する。
【0045】
(掘削装置の組み付け)
施工現場では、キャブバッククレーン10を用いて、門型フレーム30のベース架台32を地面に載置し、このベース架台32に各リーダ31,31を組み付ける。その後、キャブバッククレーン10を用いて、各リーダ31,31にアースオーガ40を組み付けるとともに、各リーダ31,31に作業台34を取り付ける。さらに、キャブバッククレーン10を用いて、各リーダ31,31に上枠体33を架設することにより、門型フレーム30を組み立てる。
【0046】
続いて、図4(a)に示すように、キャブバッククレーン10のアーム11の先端部11aの前部を、門型フレーム30の上枠体33に形成された切り欠き部33a内に後方側から入り込ませ、図5(a)に示すように、アーム11の先端部11aに形成された各連結軸11b、11bの下半分を、各取付用ブラケット33b,33bに形成された取付溝33c内にそれぞれ嵌合させる。
このとき、取付溝33cは、前側縁部よりも後側縁部の方が低く形成されているため、連結軸11bを上枠体33の後方側から前方に向けて移動させることにより、連結軸11bを取付溝33c内に容易に入り込ませることができる。
【0047】
また、図5(b)に示すように、アーム11の連結軸11bを取付溝33cに嵌合させた状態で、固定用金具33dを縦方向に回動させて閉じることにより、固定用金具33dの中間部を連結軸11bの上半分に被せる。
さらに、固定用金具33dの先端部33dを取付用ブラケット33bに固定して、連結軸11bが固定用金具33dと取付溝33cとの間に挟まれた状態にする。これにより、門型フレーム30の上端部にアーム11の先端部11aが取り付けられた状態となる。
【0048】
また、図2に示すように、キャブバッククレーン10(図1参照)の昇降用ワイヤ12に設けられたフック13を、アースオーガ40の吊り金具44に引っ掛けることにより、昇降用ワイヤ12にアースオーガ40が吊り下げられた状態にする。
【0049】
また、巻上機(図示せず)によって、昇降用ワイヤ12を巻き上げることにより、アースオーガ40を所定高さに上昇させる。そして、アースオーガ40の電動ウィンチ45の吊り込みワイヤ(図示せず)をオーガスクリュ50の上端部に取り付け、電動ウィンチ45の吊り込みワイヤを巻き上げることにより、オーガスクリュ50を引き起こす。そして、オーガスクリュ50の上端部を駆動モータ42の出力軸41に連結する。
このとき、作業員は各リーダ31,31の所定高さに取り付けられている作業台34(図1参照)から作業を行うことにより、作業効率を向上させることができるとともに、作業の安全性を向上させることができる。
【0050】
同様にして、電動ウィンチ45を用いて他のオーガスクリュ50を引き上げ、このオーガスクリュ50の上端部を、出力軸41に連結されたオーガスクリュ50の下端部に連結する。
なお、オーガスクリュ50を連結する本数は限定されるものではなく、所望の深さを掘削することができるように、適宜に設定されるものである。
【0051】
(掘削作業)
地盤を掘削するときには、図2に示す駆動モータ42の出力軸41を回転させ、オーガスクリュ50を軸回りに回転させながら、キャブバッククレーン10(図1参照)の巻上機(図示せず)によって昇降用ワイヤ12を繰り出して、アースオーガ40を下降させる。これにより、オーガスクリュ50の下端部が地盤に当接して、縦穴を掘削することになる。
【0052】
(オーガスクリュの引き抜き)
地盤に縦穴を掘削した後は、キャブバッククレーン10(図1参照)の巻上機(図示せず)によって、図2に示す昇降用ワイヤ12を巻き取ることにより、地盤からオーガスクリュ50を引き上げる。
【0053】
ここで、硬い地盤では、オーガスクリュ50を地盤から引き抜くために必要な引抜力が大きくなり、キャブバッククレーン10(図1参照)の昇降用ワイヤ12によってオーガスクリュ50を引き上げることが困難になってしまう場合がある。
このような場合には、図8に示すように、アースオーガ40の駆動モータ42から吊り金具44(図2参照)を取り外し、駆動モータ42の上面に吊り滑車80を取り付ける。そして、フック13に吊りワイヤ81の一端を取り付け、この吊りワイヤ81を吊り滑車80に掛け渡すとともに、吊りワイヤ81の他端を上枠体33の下面に設けられた支持ブラケット33gに取り付ける。このように、門型フレーム30の上枠体33に支点を設けることにより、アースオーガ40に作用する引張力を倍増させることができる。
【0054】
また、オーガスクリュ50の上端部が地盤から突出した状態で、アースオーガ40をオーガスクリュ50から取り外し、地盤にオーガスクリュ50を残した状態で、門型フレーム30を一時的に移動させる場合には、図3に示すベース架台32の前枠材32bを取り外して、ベース架台32を平面視でコの字形状にすることにより、ベース架台32とオーガスクリュ50の干渉を防ぐことができる。
なお、ベース架台32の前枠材32dは、ボルト(図示せず)によって、左右枠材32c,32cに固着されているため、前枠材32bを左右枠材32c,32cから簡単に取り外すことができる。
【0055】
(オーガスクリュの取り外し)
続いて、オーガスクリュ50をアースオーガ40から取り外す方法について説明する。
図7に示すように、張力付与装置60の引張り用ワイヤ65の他端65bを、オーガスクリュ50の回動軸部51に組み付けられたスパナ70のグリップ部の先端部に取り付ける。
【0056】
そして、シリンダ61のロッド61aを伸長させ、昇降滑車63及び固定滑車64に掛け渡された引張り用ワイヤ65に張力を付与することにより、引張り用ワイヤ65によって、スパナ70のグリップ部がシリンダ61側に引き寄せられる。
このようにして、オーガスクリュ50の周方向に引張力を作用させることにより、オーガスクリュ50を固定解除方向に回動させ、オーガスクリュ50をアースオーガ40又は他のオーガスクリュ50から取り外す。
【0057】
なお、図7に示す張力付与装置60では、固定滑車64の取り付け高さを調整することにより、オーガスクリュ50の外周面に取り付けられる引張り用ワイヤ65の他端65bの高さを、オーガスクリュ50の回動軸部51の高さに合わせて調整することができるため、オーガスクリュ50の回動軸部51の高さを調整する必要がなくなり、作業効率を向上させることができる。
【0058】
(掘削装置の撤去)
図1に示すキャブバッククレーン10の先端部11aを、門型フレーム30の上枠体33から取り外し、キャブバッククレーン10を用いて、門型フレーム30、アースオーガ40、オーガスクリュ50及び作業工具をトラック20の荷台21に積載する。そして、トラック20を走行させて装置全体を移動させることにより、掘削装置1を施工現場から撤去させる。
【0059】
[掘削装置の作用効果]
図1に示す本実施形態の掘削装置1では、トラック20のキャブバッククレーン10によって門型フレーム30を支持するとともに、このキャブバッククレーン10の昇降用ワイヤ12(図2参照)によってアースオーガ40を昇降させている。さらに、門型フレーム30、アースオーガ40及びオーガスクリュ50をトラック20の荷台21に積載して、装置全体を移動させることができる。
このように、トラック20以外のクレーン車両を設置することなく、掘削作業を行うことができ、さらに、装置全体を一台のトラック20によって移動させることができるため、掘削装置1の設置及び撤去作業を容易に行うことができる。
【0060】
また、トラック20に搭載されたキャブバッククレーン10を用いており、さらに、トラック20に搭載された油圧装置や電源装置を用いて、アースオーガ40を駆動させているため、装置全体をコンパクトに構成することができるとともに、掘削装置1の製造コストを安くすることができる。
【0061】
また、アースオーガ40を昇降させるための一系統のワイヤを備えたクレーンを用いることができるため、井戸を掘削する場合など、小規模な施工を行う場合には、一般的なキャブバッククレーン10を用いて、掘削装置1を構成することができる。これにより、掘削装置1を小型化することができるとともに、掘削装置1の製造コストを安くすることができる。
【0062】
また、図4に示すように、キャブバッククレーン10のアーム11の連結軸11bを、門型フレーム30の上枠体33に形成された凹状の取付溝33c内に嵌合させ、上枠体33に設けられた固定用金具33dを縦方向に回動させることにより、連結軸11bを取付溝33c内に固定することができる。
この構成では、凹状の取付溝33cに対して、アーム11の連結軸11bを容易に挿脱させることができる。
また、固定用金具33dを縦方向に回動させることにより、連結軸11bを取付溝33c内に容易に固定させることができる。
さらに、昇降用ワイヤ12は、図2に示すように、門型フレーム30の上枠体33に掛け渡されることなく、アースオーガ40を直接支持しているため、昇降用ワイヤ12の取り回しを容易に行うことができる。
【0063】
このように、アーム11と門型フレーム30、及び昇降用ワイヤ12とアースオーガ40を容易に脱着させることができるため、門型フレーム30及びアースオーガ40をトラック20(図1参照)から容易に脱着させることができる。
したがって、掘削作業を行わないときには、地面から延設したワイヤやロープによって門型フレーム30を地面に自立させ、キャブバッククレーン10を門型フレーム30及びアースオーガ40から速やかに取り外すことができる。これにより、トラック20を用いて他の作業を行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0064】
また、アースオーガ40に連結されたオーガスクリュ50を取り外す場合には、図6(b)に示すように、門型フレーム30の下端部に設けられた張力付与装置60のシリンダ61を伸長させることにより、図7に示すように、オーガスクリュ50を固定解除方向に向けて軸回りに回動させることができるため、キャブバッククレーン10(図1参照)を用いることなく、オーガスクリュ50をアースオーガ40から取り外すことができる。これにより、小型のクレーンを用いることができるため、掘削装置1を小型化することができるとともに、掘削装置1の製造コストを安くすることができる。
【0065】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。例えば、本実施形態の掘削装置1では、図2に示すように、二本のリーダ31,31を有する門型フレーム30に沿ってアースオーガ40が昇降するように構成されているが、一本の支柱に沿ってアースオーガ40が昇降するように構成してもよい。
【0066】
また、本実施形態の掘削装置1では、掘削手段としてアースオーガ40を用いており、このアースオーガ40にオーガスクリュ50を取り付けて縦穴を掘削するように構成されているが、掘削手段の構成は限定されるものではなく、各種公知の装置を用いることができる。例えば、駆動モータの出力軸に、円筒状のケーシングの上端部を取り付け、回転するケーシングによって既設杭の周囲を掘削して、既設杭を地盤から縁切りすることもできる。このように、本発明の掘削装置を杭抜き作業に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の掘削装置を示した側面図である。
【図2】本実施形態の掘削装置を示した正面図である。
【図3】本実施形態の掘削装置におけるベース架台を示した平面図である。
【図4】本実施形態の掘削装置におけるクレーンのアームと門型フレームの上枠材とを示した図で、(a)はアームを上枠材に取り付ける前の状態を示した平面図、(b)はアームを上枠材に取り付けた状態の平面図である。
【図5】本実施形態の掘削装置におけるクレーンのアームを門型フレームの上枠材に取り付けるときの態様を示した図で、(a)は図4(a)のA−A断面図、(b)は図4(b)のB−B断面図である。
【図6】本実施形態の掘削装置における張力付与装置を示した図で、(a)は側面図、(b)は引張り用ワイヤに張力を付与した状態の側面図である。
【図7】本実施形態の掘削装置における張力付与装置を示した図で、オーガスクリュを回動させる態様を示した平面図である。
【図8】本実施形態の掘削装置を用いた掘削方法において、吊り滑車を用いてアースオーガを引き上げる態様を示した正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 掘削装置
10 キャブバッククレーン(クレーン)
11 アーム
11a 先端部
11b 連結軸
12 昇降用ワイヤ
13 フック
20 トラック(搬送車両)
21 荷台
30 門型フレーム(支柱)
31 リーダ
32 ベース架台
33 上枠体
33c 取付溝
33d 固定用金具
34 作業台
40 アースオーガ(掘削手段)
41 出力軸
50 オーガスクリュ(掘削軸)
60 張力付与装置(張力付与手段)
61 シリンダ
63 昇降滑車
65 引張り用ワイヤ
70 スパナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削するための掘削装置であって、
傾動自在なアームを有するクレーン及び荷台を備えた自走可能な搬送車両と、
前記アームによって支持された状態で立設される支柱と、
前記支柱に沿って昇降可能な掘削手段と、を備え、
前記アームの先端部が前記支柱の上端部に脱着自在であるとともに、前記支柱及び前記掘削手段を、前記搬送車両の前記荷台に積載して移動可能であり、
前記アームの先端部を前記支柱の上端部に取り付けて、前記支柱を立設させるとともに、前記アームの先端部から吊り下げられた昇降用ワイヤを、前記掘削手段に取り付け、前記昇降用ワイヤを繰り出し又は巻き取ることにより、前記掘削手段が前記支柱に沿って昇降するように構成されていることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
前記アームの先端部には、連結軸が横方向に突設され、
前記支柱の上端部には、前記連結軸が嵌合可能な凹状の取付溝と、基端部を回動中心として縦方向に回動自在な固定用金具と、が設けられており、
前記連結軸を前記取付溝に嵌合させた状態で、前記固定用金具を縦方向に回動させ、前記固定用金具を前記連結軸に被せることにより、前記連結軸を前記固定用金具と前記取付溝との間に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記支柱には、前記掘削手段に連結された掘削軸を取り外すために、前記掘削軸を軸回りに回動させるための張力付与手段が設けられており、
前記張力付与手段は、
伸縮自在なロッドを有し、前記支柱に固定されたシリンダと、
前記シリンダの前記ロッドに取り付けられた昇降滑車と、
前記昇降滑車に掛け渡された引張り用線状体と、から構成され、
前記引張り用線状体の一端を前記支柱に固定するとともに、他端を前記掘削軸の外周面に取り付けた状態で、前記シリンダの前記ロッドを伸長させ、前記昇降滑車に掛け渡された前記引張り用線状体に張力を付与することにより、前記引張り用線状体から前記掘削軸の周方向に引張力を作用させて、前記掘削軸を軸回りに回動させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−95405(P2008−95405A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279376(P2006−279376)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(391033182)アボロンシステム株式会社 (18)
【出願人】(506345812)株式会社ナガサク (1)
【Fターム(参考)】