説明

採光機能付建具

【課題】採光パネルと建具パネルとの固定を強固にして、採光パネルの温度変化による伸縮を阻止できる採光機能付建具を提供する。
【解決手段】採光パネル10は、硬質の合成樹脂にて形成され、その左右の側端部に、表裏に貫通する係止孔11が上下方向に複数穿設されており、縁固定部材20は、一方の側端部に上下方向にわたる凹溝部21を有し、この凹溝部21の両側壁22に係止孔11と対応配置される係合孔23が穿設されており、採光パネル10の側端部に縁固定部材20の凹溝部21を嵌合し、その凹溝部21の係合孔23と、両側壁間に配された採光パネル10の係止孔11とにねじ3を挿通させて採光パネル10の側端部に縁固定部材20を係止結合させ、縁固定部材20を採光パネル枠部40の内側端部に形成された溝状部41に各々嵌合固着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採光パネルを有した採光機能付建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の扉等には、適度な採光を図るために、あるいはデザイン性の向上のために、合成樹脂製の透明または半透明の採光パネルを木製の建具パネルの横方向の中程に設けた採光機能付建具が使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
採光パネルの建具パネルへの固定手段として、例えば特許文献1では、採光パネルの左右の側端部を、左右の両建具パネル材の各々の側端面に設けた凹部に嵌入して固定する方法が採られている。また、特許文献2では、採光パネルの側端部に凸部を設けて、この凸部を建具パネルの凹部に嵌入固定する方法が採られている。これらの文献には、両者の固定を強固にするために、さらに接着材で接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−60378号公報
【特許文献2】特開2006−161349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合成樹脂で製された採光パネルは温度変化により木製の建具パネルよりも大きく熱膨張するため、嵌合または嵌合接合した建具パネルとの間でずれが生じるおそれがある。
【0006】
特に、建具パネルの上下方向の全長にわたって採光パネルを設けたものなど、長尺の採光パネルを使用したものでは、熱膨張による伸張長さが大きいため、採光パネルが建具パネルの上下端面より目立つ程度に突出してしまい、デザイン性が損なわれることがあった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、採光パネルと建具パネルとの固定を強固にして、採光パネルの温度変化による伸縮を阻止できる採光機能付建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る採光機能付建具は、木製の建具パネルの横方向の中程に設けた上下方向にわたる採光パネル枠部に、透明もしくは半透明の採光パネルを木製の縁固定部材を介して固定した採光機能付建具であって、採光パネルは、硬質の合成樹脂にて形成され、その左右の側端部に、表裏に貫通する係止孔が上下方向に複数穿設されており、縁固定部材は、一方の側端部に上下方向にわたる凹溝部を有し、この凹溝部の両側壁に係止孔と対応配置される係合孔が穿設されており、採光パネルの側端部に縁固定部材の凹溝部を嵌合し、その凹溝部の両側壁の係合孔と、両側壁間に配された採光パネルの係止孔とにピンを挿通させて採光パネルの側端部に縁固定部材を係止結合させ、縁固定部材を採光パネル枠部の内側端部に形成された溝状部に各々嵌合固着してなることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、建具パネルの上下両端面と、採光パネルの上下両端面とが面一状に形成されるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明においては、採光パネル枠部の溝状部は巾広の浅溝と、この浅溝の底部中程に連設される巾狭の深溝とで二段状に形成され、縁固定部材には、溝状部の深溝に対応した凸条部が形成してあり、縁固定部材の凸条部が溝状部の深溝に嵌合され、凹溝部の両側壁部分が溝状部の浅溝に嵌合されるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明においては、採光パネルの左右に分離された構成となっており、該分離された左右の建具パネルの巾寸法が異なったものとしてもよい。
【0012】
また、本発明においては、採光パネルを形成する硬質の合成樹脂がアクリル樹脂で構成されたものでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の採光機能付建具によれば、上述のような構成としたことで、採光パネルと建具パネルとの固定を強固にでき、それによって採光パネルの温度変化による伸縮を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る採光機能付建具の概略分解正面図である。
【図2】同採光機能付建具の概略正面図である。
【図3】(a)、(b)は採光パネルと縁固定部材の結合手順を示す平面図である。
【図4】(a)、(b)は、図3の結合手順によって作製した採光パネルユニットの建具パネルへの取付手順を示す一部断面平面図である。
【図5】(a)、(b)は、縁固定部材と採光パネル枠部の他の形状例を示す概略平面図である。
【図6】他の採光機能付建具の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1〜図4は、本実施形態に係る採光機能付建具の一例の説明図である。図1は採光機能付建具の概略分解正面図、図2は同採光機能付建具の概略正面図、図3(a)、(b)は採光パネルと縁固定部材の結合手順を示す平面図、図4(a)、(b)は図3の結合手順によって作製した採光パネルユニットの建具パネルへの取付手順を示す一部断面平面図である。
【0017】
この採光機能付建具1は、図2に示すように、建具パネル30を構成する2枚の木製の建具パネル材31、31の間に、上下方向の全長にわたって採光パネル10を設けたものである。
【0018】
本例の採光機能付建具1は、開き戸に使用されるものであり、図1、図2において右側の建具パネル材31の右側端部が扉縦枠(不図示)に蝶番で結合される。図中の右側の建具パネル材31の右側端の凹みは蝶番取付部31cであり、左側の建具パネル材31の上下方向中央の符号31dはドアノブ取付部である。
【0019】
図1に示すように、採光パネル10は、建具パネル30の中程に設けた採光パネル枠部40、つまり2枚の建具パネル材31、31のそれぞれの内側端部に、木製の縁固定部材20、20を介して取り付けられている。
【0020】
なお本実施形態においては、採光パネル枠部40を建具パネル30の縦桟31aで構成したものを示しているが(図4参照)、これには限定されない。例えば、図1における左側の建具パネル材31のような細巾のものは、内部に空間を有さない1枚の板材を用いて形成してもよく、そのようなものでは、採光パネル枠部40が建具パネル材31の右側端部にて構成される。
【0021】
採光パネル10は、透明もしくは半透明のアクリル樹脂等の硬質の合成樹脂にて形成され、その左右の側端部に、表裏に貫通する係止孔11が上下方向に複数穿設されている。
【0022】
一方、縁固定部材20は、採光パネル10と連結する側端部に上下方向の全長にわたる凹溝部21を有しており、この凹溝部21の両側壁22、22には、採光パネル10に形成された係止孔11と対応配置される係合孔23が穿設されている。
【0023】
採光パネル10と両縁固定部材20とは、係止孔11と係合孔23とを合わせるように嵌合されて、連通状態となった孔にピンを挿通することで結合される。そして、採光パネル10に結合された両縁固定部材20、20のそれぞれは、対応する建具パネル材31の採光パネル枠部40に形成した溝状部41に嵌合固着される。
【0024】
以下、詳細な各部材の形状および結合構造について、図3、図4に示した手順図を参照しながら説明する。
【0025】
まず、縁固定部材20の採光パネル10への結合について、図3にもとづいて説明する。
【0026】
縁固定部材20は、巾広の本体部24と、巾狭の凸条部25とよりなり、本体部24に上記凹溝部21が形成され、その両側壁22、22にピン(ねじ3)を挿通するための係合孔23が形成されている。また、本体部24の凹溝部21の内側面を除く表面には化粧材24aが貼着されている。
【0027】
また、凸条部25の先端には小溝25aが形成されている。この小溝25aは、図4で後述するように、縁固定部材20を建具パネル30の採光パネル枠部40の溝状部41に嵌合接合する際に剰余の接着剤を逃がすための接着剤逃げ代として設けられている。
【0028】
このような縁固定部材20を、その凹溝部21を採光パネル10の両端部に嵌合することで両者を結合させて、係合孔23と係止孔11とを連通状態にする。そして、その連通孔にねじ3を挿通させて、縁固定部材20と採光パネル10とを係止結合して採光パネルユニット2を形成する。
【0029】
ついで、この採光パネルユニット2の建具パネル材31、31への結合について、図4にもとづいて説明する。
【0030】
建具パネル材31は、その両側端部に縦桟31aを有し、横方向には横桟31eが配され、外表面には化粧板31bが貼着されている。建具パネル材31の一方の側端部に設けた縦桟31aは、もう一方の建具パネル材31の一方の縦桟31aとともに採光パネル枠部40を構成しており、それらの採光パネル枠部40の内側端部には、図4(a)に示すような溝状部41が上下にわたり形成されている。
【0031】
この溝状部41は、巾広の浅溝41aと、この浅溝41aの底部の中程に連設された巾狭の深溝41bとで二段状に形成されており、この二段状の溝状部41に、採光パネルユニット2に一体的に取り付けた縁固定部材20を嵌入できるようになっている。すなわち、溝状部41の深溝41bには縁固定部材20の凸条部25が嵌合し、溝状部41の浅溝41aには縁固定部材20の本体部24が嵌合する嵌合構造となっている。
【0032】
縁固定部材20の採光パネル枠部40の溝状部41への嵌合は、接着剤(不図示)を用いて接合することが望ましい。その接着嵌合時に発生する剰余の接着剤は、上述した縁固定部材20の小溝25a(接着剤逃げ代)や、採光パネル枠部40の溝状部41の深溝41bの底部に形成した凹み部41c(接着剤逃げ代)に入り込んで表面側にあふれ出ないようになっている。
【0033】
こうして、採光パネルユニット2を左右の建具パネル材31に嵌合固着すると、採光パネル枠部40の内側端面は、建具パネル材31の化粧材31bと、縁固定部材20の化粧材24aとが略面一となって(図2参照)、あたかも採光パネル10を直接建具パネル材31に取り付けたような外観となる。
【0034】
このように、採光パネル10は縁固定部材20をねじ3を用いて固定した状態で建具パネル30に固着されるため、温度変化により採光パネル10が上下方向に膨張あるいは収縮しようとしても、それを縁固定部材20との固定によって抑止することができる。その結果、採光パネル10を建具パネル30に対してずれないように固定でき、採光パネル10が建具パネル30よりも上下方向に突出したり、凹んだりすることを防止できる。つまりこの採光機能付建具1によれば、温度変化によらず、採光機能付建具1の上下端面を面一状態に維持して見映えが悪くなることを防止できる。特に、本実施形態のように横框を有さない構成のものには有効である。
【0035】
また、縁固定部材20の外表面のほとんどが溝状部41内に隠されるので、正面から見た際に建具パネル30に別部材を取り付けたようには見えず、よって美観を損なうおそれはない。
【0036】
さらに、上述したように採光パネル10と縁固定部材20とは結合してユニット化できるので、製造も簡易化できる。また、採光パネル10は合成樹脂で形成されているので、ガラス材のように加工が困難ではなく、係止孔11の加工も容易に行える。そのため、加工、製造時に採光パネル10が損傷するおそれもほとんどなく歩留まりも向上する。また、硬質の合成樹脂としてアクリル樹脂を用いているので製造コストを低減化できる。
【0037】
また、本実施形態では、採光パネル10の両側に配された、建具パネル30の左右部分(建具パネル材31、31)の巾寸法を異ならせてデザイン性を高めたものを示したが、それには限られず、同巾の建具パネル材を用いてもよい。さらに、採光パネルの形状についても矩形には限られず、種々の形状が適用可能であり、例えば巾寸法が一定でないものや側端部が階段状となったものなどでもよい。
【0038】
また、採光機能付建具1をより頑丈にするために、上下に、さらに横框を付加した構成としてもよい。
【0039】
なお、本実施形態においては、採光パネル10の横寸法は、建具パネル30の上下方向の全長に相当する縦寸法に比べてはるかに小さい。したがって、採光パネル10は横方向にも伸縮するおそれはあるものの、伸縮する長さはほとんど無視できる程度であり、そのため横方向への伸縮を阻止するための構造を有さなくてもよい。
【0040】
ついで、他の実施形態について図5、図6にもとづいて説明する。
【0041】
図5(a)、(b)は、縁固定部材と採光パネル枠部の他の形状例を示す概略平面図である。
【0042】
図5(a)では矩形の溝状部41に全体がそのまま嵌合できる断面略矩形の縁固定部材20が用いられ、図5(b)では矩形の溝状部41に一部(凸条部25)が嵌合できる縁固定部材20が用いられる。なお、縁固定部材20の採光パネル枠部40への固着は接着剤を用いることが望ましい。
【0043】
このように、縁固定部材20と採光パネル枠部40の溝状部41の少なくとも一方を簡易な形状とすることで、採光機能付建具1を低コストで製造することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、図5において図1〜図4に示した同一の構成部について同一の符号を付して、その説明を割愛する。
【0045】
図6は、上下に横框を備えた採光機能付建具の正面図である。
【0046】
この採光機能付建具1は、図1に示した採光機能付建具1と比較して、横寸法の大きな採光パネル10を備えている。
【0047】
このように横方向に大きな採光パネル10を用いる場合、図6に示すように、採光パネル10の横方向への伸縮を阻止するために、上下に横框5を設けて採光パネル10を固定するようにしてもよい。すなわち、この横框5と採光パネル10とは、採光パネル10の左右側端部と同様に、縁固定部材20を介して固定されている。なお、固定構造については、図3、図4のものとほぼ同じであるため、符号のみを付して説明を割愛する。
【0048】
このように、上下左右で採光パネル10を固定できるので、採光パネル10の上下左右方向への伸縮、および、それによる採光機能付建具1の上下左右方向の伸縮、歪み等を阻止することができる。
【0049】
上記実施形態では採光機能付建具1として開き戸を例示したが、これには限定されず、引戸、間仕切壁など種々の建具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 採光機能付建具
2 採光パネルユニット
3 ねじ(ピン)
10 採光パネル
11 係止孔
20 縁固定部材
21 凹溝部
22 側壁
23 係合孔
24 本体部
24a 化粧材
25 凸条部
25a 小溝(接着剤逃げ代)
30 建具パネル
31 建具パネル材
31a 縦桟
31b 化粧材
31c 蝶番取付部
31d ドアノブ取付部
40 採光パネル枠部
41 溝状部
41a 浅溝
41b 深溝
41c 凹み部(接着剤逃げ代)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の建具パネルの横方向の中程に設けた上下方向にわたる採光パネル枠部に、透明もしくは半透明の採光パネルを木製の縁固定部材を介して固定した採光機能付建具であって、
前記採光パネルは、硬質の合成樹脂にて形成され、その左右の側端部に、表裏に貫通する係止孔が上下方向に複数穿設されており、
前記縁固定部材は、一方の側端部に上下方向にわたる凹溝部を有し、この凹溝部の両側壁に前記係止孔と対応配置される係合孔が穿設されており、
前記採光パネルの側端部に前記縁固定部材の凹溝部を嵌合し、その凹溝部の両側壁の係合孔と、両側壁間に配された前記採光パネルの係止孔とにピンを挿通させて前記採光パネルの側端部に前記縁固定部材を係止結合させ、前記縁固定部材を前記採光パネル枠部の内側端部に形成された溝状部に各々嵌合固着してなることを特徴とする採光機能付建具。
【請求項2】
請求項1において、
前記建具パネルの上下両端面と、前記採光パネルの上下両端面とが面一状に形成されていることを特徴とする採光機能付建具。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記採光パネル枠部の溝状部は巾広の浅溝と、この浅溝の底部中程に連設される巾狭の深溝とで二段状に形成されており、
前記縁固定部材には、前記溝状部の深溝に対応した凸条部が形成してあり、
前記縁固定部材の凸条部が前記溝状部の深溝に嵌合され、前記凹溝部の両側壁部分が前記溝状部の浅溝に嵌合されていることを特徴とする採光機能付建具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記建具パネルは、前記採光パネルの左右に分離された構成となっており、該分離された左右の建具パネルの巾寸法が異なっていることを特徴とする採光機能付建具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記採光パネルを形成する硬質の合成樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする採光機能付建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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