採血器具
【課題】シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用することができ、また、手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具を提供する。
【解決手段】採血管10は、開口端20を有する管本体11と、開口端20を閉塞するシート12と、シート12に積層されたゴム片13と、天板22の開口24からゴム片13及びシート12の一部が外部へ露出され、かつ天板22がシート12に接合されて管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14とを具備する。管本体11の開口端20とシート12とのシール強度が、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度より弱い。
【解決手段】採血管10は、開口端20を有する管本体11と、開口端20を閉塞するシート12と、シート12に積層されたゴム片13と、天板22の開口24からゴム片13及びシート12の一部が外部へ露出され、かつ天板22がシート12に接合されて管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14とを具備する。管本体11の開口端20とシート12とのシール強度が、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度より弱い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器中に採取された血液を貯留する採血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、診断等を目的としてヒトなどの生体から血液が採取され、その血液中の各種成分の分析が血液検査として行われている。生体から血液を採取するには、注射器などのほか、採血管と称される採血器具が使用される。この採血管は、主として、チューブ形状の容器がゴム栓などによって気密に閉塞されたものである。ゴム栓によって閉塞された容器の内部空間は大気圧に対して減圧状態に保持されている。また、必要に応じて、血清分離剤や凝固剤などの薬剤が容器内に封入されている。採血針が取り付けられた採血針ホルダに採血管が装着されると、採血針がゴム栓を貫通して、その減圧状態の内部空間に採血針を通じて生体の血液が吸引される。適当な量の血液が容器内に吸引されると、採血針ホルダから採血管が取り外される。採血管が取り外される際に、ゴム栓から採血針が引き抜かれ、採血針による刺通路はゴムの弾性により液密に封止される。採血後の採血管は、そのまま遠心分離等の処理が行われてから開栓され、採血管内の血液又は血清などが採取され、各種の血液検査が行われる(特許文献1)。
【0003】
前述された採血管には、ゴム栓に代えて、ガスバリア性のフィルムを用いて容器が気密に閉塞されたタイプのものがある。このフィルムには、抜針後の液密を確保するために、一部分にゴム片が取り付けられている。このゴム片を採血針が貫通して、前述されたように、採血針を通じて容器内に血液が吸引される。また、遠心分離等の処理が行われた後は、フィルムが剥離されることによって容器が開封され、容器内の血液又は血清が採取される(特許文献2)。
【0004】
また、前述された採血管には、ゴム栓にチューブ形状の被覆体が被せられたタイプの採血管がある。この被覆体は、ゴム栓と容器との境界部分を覆っている。ゴム栓を取り外して開栓する際に、ゴム栓と容器との境界に隙間が生じて外気が容器内に流れ込み、この外気等の流れによって容器内の血液が飛散して、ゴム栓と容器との隙間から外部へ血液飛沫が飛び出るおそれがあるが、ゴム栓と容器との境界を被覆体が覆っているので、その血液飛沫が被覆体の内面側に付着する。これにより、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献3)。
【0005】
また、ゴム栓のフランジ部分に、容器の外周を覆うスカート部が設けられたタイプの採血管がある。この採血管においても、ゴム栓を取り外す際に容器から飛び出した血液飛沫が、スカート部の内面側に付着することよって、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献4)。
【0006】
また、ゴム栓と容器との境界部分がフィルムで覆われたタイプの採血管がある。このフィルムは、ゴム栓を取り外す際に、ゴム栓と共に容器に対して捻られることによって一部が破断する。ゴム栓を取り外す際に容器から飛び出した血液飛沫が、フィルムの内面側に付着することによって、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献5)。
【0007】
また、前述された採血管には、ゴム栓の上面にシートが張られたものがある。このシートの有無や、シートに針を刺した跡があるか否かで、使用済み又は滅菌済みであるか否かを判断することができる(特許文献6)。
【0008】
また、前述された採血管には、管状容器の開口部がシート部材で気密に閉塞され、そのシート部材の外表面にカバー部材が設けられたものがある。このカバー部材は、管状容器に対して捻られることによってシート部材を破断させ、また、シート部材が破断した後は管状容器の開口に嵌合する。これにより、ゴム栓でなく、シート部材で気密に閉塞された採血管が開封された後も、カバー部材によって再び管状容器を閉塞することができる(特許文献7)。
【0009】
また、シートにより容器が気密に閉塞された採血管を、採血後に開栓する開栓装置が提案されている。この開栓装置は、採血管のシートに取り付けられたゴム片等を保持ピンが刺し通し、続いてゴム片の周囲を開栓カッターが打ち抜くことによって、採血管を開栓する(特許文献8)。
【0010】
【特許文献1】特開平8−322819号公報
【特許文献2】特開2005−261965号公報
【特許文献3】特開平8−145987号公報
【特許文献4】特開2001−276023号公報
【特許文献5】特開2002−587号公報
【特許文献6】特開2005−296122号公報
【特許文献7】特許第3533023号公報
【特許文献8】特開2008−184168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述された採血管において、ゴム栓により容器を気密に閉塞するタイプのものは、容器から血液を採取した後に、再びゴム栓によって容器を閉塞して、残りの血液を保存することができるという利点がある。一方、採血管のゴム栓を自動的に開栓する装置はあるものの、病院や検査センターなどの施設に導入されている開栓装置の多くは、特許文献8に開示されたようなシートを打ち抜いて開栓するタイプのものであり、このような所謂シートタイプの採血管に対する開栓装置が導入された施設においては、ゴム栓タイプの採血管の開栓を自動化するには別の開栓装置を更に導入する必要があり、ゴム栓タイプの採血管を大量に開栓するためのコストが高いという問題がある。
【0012】
他方、シートタイプの採血管は、既に多くの施設に導入されている開栓装置を利用して開栓の自動化を図ることができる。また、シールを手で剥離することによって、手作業で開栓することもできるので、開栓装置が導入されていない施設においても直ちに採用され得る。しかし、シールを剥離する際に、シートに付着した血液が作業者の手に付着し易いという欠点がある。また、シートを剥離する際に、シートと容器との隙間から、前述されたようにして、血液飛沫が飛び出すおそれがあるという欠点もある。
【0013】
特許文献7に開示された採血管によれば、シート部材の外表面に取り付けられたカバー部材を二重筒形状とすることによって、開栓時に飛び出した血液飛沫がカバー部材の内面に付着するので、作業者や周囲の環境が血液で汚染されることを防止し得る。しかし、カバー部材を管状容器に嵌合可能とするためには、管状容器の内面と接触する嵌め代を設ける必要がある。したがって、特許文献7の各図に示されるように、カバー部材がシート部材から軸方向外側へ大きく突出する。そうすると、汎用されている採血針ホルダに装着しても採血針がシート部材に到達しないおそれがあるので、専用の採血針ホルダ又は採血針を用いる必要が生じる。同様に、カバー部材がシート部材から軸方向外側へ大きく突出すると、既に導入されている開栓装置を用いることができないという不具合が生じ得る。
【0014】
さらに、特許文献7に開示された採血管を手で開栓するには、カバー部材を捻ることによって、そのカバー部材と共に捻られるシート部材に剪断力を作用させて破断し、このシート部材の破断によって管状容器が開栓される。しかし、このような剪断力をシート部材に一様に作用させて、シート部材をカバー部材の周縁に沿って均一に破断させることは難しい。その結果、例えば、完全に破断されなかったシート部材が部分的に残って、そのシート部材の一部分を管状容器から剥離させる必要が生じ、その作業において血液が作業者の手に付着するおそれがある。また、シート部材の破片が生じて、その破片が管状容器内の血液に混入するおそれがある。
【0015】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用することができ、また、手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用することができ、手で開栓する際に血液による汚染が生じ難く、かつ手で開栓した後に再び閉塞できる採血器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1) 本発明に係る採血器具は、開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、上記容器の第1端に接合されて上記開口を閉塞するシートと、上記シートにおける上記容器の外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、開口が形成された天板、及び当該天板から上記容器の外面に沿って延出された胴部を有し、当該天板の開口から上記針刺用片及び上記シートの第1面の一部が外部へ露出され、かつ当該天板が上記第1面に接合されて、上記容器の第1端に外嵌されたキャップと、を具備し、上記容器と上記シートとのシール強度が、上記シートと上記キャップとのシール強度より弱いものである。
【0018】
本発明に係る採血器具は、例えば、周知の採血針ホルダに装着されて、採血針が針刺用片及びシートを貫通することによって、採血針を通じて容器の内部空間に血液を採取するものである。この容器の第1端にはシートが接合されて、容器の開口が液密に閉塞されている。そのシートの第1面には、針刺用片が積層されている。この針刺用片の外形は、シートの外形より小さい。したがって、シートは、第1面に針刺用片が積層された状態で、針刺用片が積層されていない第1面も存在する。容器に第1端には、シートの上側からキャップが嵌合されている。このキャップの天板は、シートの上側から容器の第1端に当接し、胴部は、容器の外面における第1端付近の一部を覆っている。キャップの天板に形成された開口からは、針刺用片とシートの第1面の一部が外部へ露出されている。したがって、開栓装置の開栓カッターは、キャップの開口を通じてシートに接触して、シートを打ち抜くことができる。
【0019】
キャップの天板は、シートの第1面と接合されている。容器とシートとのシール強度は、シートとキャップとのシール強度より弱い。したがって、容器の第1端に外嵌されたキャップが容器から外されると、キャップの天板からシートが剥がれる前に、容器からシートが剥がれる。これにより、作業者は、シートを直接触ることなく、容器からシートを剥離して容器を開栓することができる。
【0020】
なお、本発明における「シール強度」は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度(7.袋のヒートシール強さ試験)に準じて測定される測定値によって数値化されて、客観的に比較することができる。したがって、「シール強度」が強弱の関係にあれば、容器とシートとの接合、及びシートとキャップとの接合は、熱用着や超音波用着などの溶着、接着剤による接着、イージーピールなどの公知の接合方法の組み合わせが任意に採用され得る。
【0021】
(2) 上記容器と上記シートとの接合が、イージーピールにより実現されてもよい。
【0022】
イージーピールとは、食品包装などで用いられている公知のシール手法である。イージーピールは、剥離形態によって、界面剥離、凝集剥離、層間剥離に分類される。界面剥離においては、ピール層として、例えば粘着剤が添加されたエチレンビニルアルコール樹脂が採用され、粘着剤の種類によって剥離強度が調整される。凝集剥離においては、ピール層として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びその他の樹脂のポリマーブレンドが採用され、ポリマーブレンドにおける凝集力の制御によって剥離強度が調整される。層間剥離においては、支持層と接着層との間に中間層が設けられ、接着層と中間層との層間接着力の調整によって剥離強度が調整される。剥離強度としては、例えば、前述されたJIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値が1〜15N/15mmの範囲にあるものがイージーピールと称される。容器とシートとの接合がイージーピールにより実現され、シートとキャップとの接合が他の溶着又は接着により実現されることによって、容器とシートとのシール強度を、シートとキャップとのシール強度より弱くすることができる。
【0023】
(3) 上記キャップの胴部は、上記容器の外面に沿った筒形状であってもよい。
【0024】
したがって、容器とシートとの境界がキャップの胴部によって覆われる。前述されたようにして容器が開栓されるときに、キャップは容器の第1端から完全に取り外される必要がなく、例えば容器から若干浮き上がる程度に外されたり、容器に対して相対的に捻られたりするだけでよい。つまり、シートと容器との境界は、キャップの胴部によって覆われたままでよい。したがって、容器からシートが剥離されたときに、容器とシートとの隙間から容器内の血液が飛散しても、飛散した血液飛沫はキャップの胴部の内面に付着するので、作業者の手や周囲の環境が血液飛沫で汚染されることがない。
【0025】
(4) 上記シートは、上記容器の第1端と上記キャップの天板とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、上記容器及び上記天板とそれぞれ接合されていてもよい。
【0026】
開栓の際に、例えばキャップが容器から若干浮き上がるように押し上げられると、容器とシートとが接合された領域と、シートとキャップとが接合された領域とは、キャップが移動する方向に沿って並ぶこととなる。したがって、シートに対して、第1面と直交する方向の剪断力が生じ難い。また、例えばキャップが容器に対して捻られるように外されると、容器の第1端とキャップの天板と挟み込まれた状態のままで、シートがキャップの天板と共に回転するので、第1面と直交する方向の剪断力がシートに対して生じ難い。したがって、キャップを容器から外すときに、シートが破断することなく、容器からシートが剥離される。
【0027】
(5) 上記針刺用片は、上記容器の第1端に上記シートが接合された状態において、当該第1端の開口の内側に配置されてもよい。
【0028】
これにより、開栓装置の開栓カッターが、シートにおける針刺用片以外の部分を打ち抜くことができる。
【0029】
(6) 上記容器の第1端に嵌合された上記キャップの天板の開口により露出される上記シートの露出部分に、上記シートの第1面のうち少なくとも上記針刺用片の周囲の部分のすべてが含まれてもよい。
【0030】
これにより、開栓装置の保持ピンが針刺用片を刺し通した状態で、開栓カッターが針刺用片の周囲においてシートを打ち抜くことができる。
【0031】
(7) 上記容器は、その内部空間が上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態であってもよい。
【0032】
例えば、ガスバリア性のシートによって容器の内部空間が長期間に渡って減圧状態に保持される。これにより、簡易且つ安価に、内部空間が減圧された採血器具が実現される。
【0033】
(8) 本発明に係る採血器具は、開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、上記容器の第1端に嵌合され、当該第1端の開口と連続する開口が形成されたキャップと、上記キャップに接合されて当該キャップの開口を閉塞するシートと、上記シートにおける上記キャップの外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、を具備するものである。
【0034】
本発明に係る採血器具は、例えば、周知の採血針ホルダに装着されて、採血針が針刺用片及びシートを貫通することによって、採血針を通じて容器の内部空間に血液を採取するものである。この容器の第1端にはキャップが嵌合されている。キャップと容器との嵌合は、その嵌合部分が液密である。このキャップにより、容器の第1端及び容器の外面における第1端付近の一部が覆われている。このキャップには、容器の第1端の開口と連続する開口が形成されている。つまり、容器の第1端にキャップが嵌合された状態において、容器の第1端は完全に閉塞されておらず、キャップの開口及び第1端の開口を通じて、キャップの外側と容器の内部空間とが連続している。
【0035】
キャップにはシートが接合されて、その開口が液密に閉塞されている。このシートの第1面には、針刺用片が積層されている。この針刺用片の外形は、シートの外形より小さい。したがって、シートは、第1面に針刺用片が積層された状態で、針刺用片が積層されていない第1面も存在する。開栓装置の開栓カッターは、キャップの開口に合わせてキャップの外側からシートを打ち抜くことができる。また、キャップを容器から外すと、シート及び針刺用片とともに、容器からキャップを取り外して開栓することができる。これにより、作業者は、シートを直接触ることなく、容器を開栓できる。また、キャップを再び容器の第1端に嵌合させると、容器の第1端が再び閉塞される。
【0036】
(9) 上記針刺用片は、上記キャップの開口を上記シートが閉塞した状態において、当該開口と上記容器の開口とが連続する空間の内側に配置されたものであってもよい。
【0037】
これにより、開栓装置の開栓カッターが、シートにおける針刺用片以外の部分を打ち抜くことができる。
【0038】
(10) 上記容器は、その内部空間が上記キャップによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態であってもよい。
【0039】
例えば、ガスバリア性のシート及びキャップによって容器の内部空間が長期間に渡って減圧状態に保持される。これにより、簡易且つ安価に、内部空間が減圧された採血器具が実現される。
【0040】
(11) 上記針刺用片は、採血針を刺通可能なものであって、かつ採血針が抜かれた後に当該採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものであってもよい。
【0041】
例えば、加硫ゴムやエラストマーによって針刺用片が実現される。これにより、採血後の採血器具が遠心分離などの処理に供されても、刺通路から血液が外部へ漏出することがない。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る採血器具によれば、容器の第1端にはシートが接合されて開口が閉塞され、
そのシートの上側からキャップが外嵌され、キャップの天板に形成された開口から、針刺用片とシートの第1面の一部が外部へ露出されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップの開口を通じてシートに接触して、シートを打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血器具が実現される。
【0043】
また、容器とシートとのシール強度がシートとキャップとのシール強度より弱く、容器の第1端に外嵌されたキャップが容器から外されると、キャップの天板からシートが剥がれる前に、容器からシートが剥がれるので、作業者は、シートを直接触ることなく、容器からシートを剥離して容器を開栓することができる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具が実現される。また、このキャップは、再び容器の第1端に外嵌させることができ、キャップの天板に形成された開口は、シートで閉塞されたままなので、容器を再栓できる採血器具が実現される。
【0044】
また、本発明に係る採血器具によれば、容器の第1端にキャップが嵌合されて、容器の第1端及び容器の外面における第1端付近の一部が覆われており、このキャップの開口及び第1端の開口を通じて、キャップの外側と容器の内部空間とが連続しており、このキャップの開口がシートにより閉塞されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップの開口に合わせてキャップの外側からシートを打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血器具が実現される。
【0045】
また、キャップを容器から外すと、シート及び針刺用片とともに、容器からキャップを取り外して開栓することができるので、作業者は、シートを直接触ることなく、容器を開栓できる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具が実現される。また、このキャップは、再び容器の第1端に嵌合させることができるので、容器を再栓できる採血器具が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0047】
[図面の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る採血管10の外観構成を示す斜視図である。図2は、採血管10の分解斜視図である。図3は、採血管10の平面図である。図4は、採血管10の底面図である。図5は、採血管10の正面図である。なお、採血管10の右側面図、左側面図及び背面図は、正面図と同様である。図6は、図3のVI−VI切断線における採血管10の断面構成を示す断面図である。図7は、図6におけるキャップ14付近の拡大断面図である。図8は、採血管10を手で開栓する作業を示す断面図である。図9及び図10は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。図11は、本発明の第2実施形態に係る採血管30の外観構成を示す斜視図である。図12は、採血管30の分解斜視図である。図13は、採血管30の平面図である。図14は、採血管30の底面図である。図15は、採血管30の正面図である。なお、採血管30の右側面図、左側面図及び背面図は、正面図と同様である。図16は、図13のXVI−XVI切断線における採血管30の断面構成を示す断面図である。図17は、図16におけるキャップ32付近の拡大断面図である。図18は、採血管30を手で開栓する作業を示す断面図である。図19及び図20は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【0048】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態が説明される。なお、本実施形態において、単に「上側」又は「下側」と称される場合には、図2における軸線方向101が上下方向とされて、図2における上側が「上側」、図2における下側が「下側」である。
【0049】
(採血管10の概略構成)
図1から図5に示されるように、第1実施形態に係る採血管10は、管本体11と、管本体11の開口端20を閉塞するシート12と、シート12に取り付けられたゴム片13と、管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14とを主要な構成とする。本実施形態における管本体11が、本発明における容器に相当し、シート12が本発明におけるシートに相当し、ゴム片13が本発明における針刺用片に相当し、キャップ14が本発明におけるキャップに相当する。
【0050】
(管本体11)
図2に示されるように、管本体11は、円筒形状をなしている。図4及び図5に示されるように、管本体11は、下側が半球形状の底として閉塞されている。管本体11の上側は開口端20として開放されている。したがって、開口端20から管本体11の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。そして、図1などに示される姿勢に管本体11が維持されると、管本体11の内部空間に血液等の液体が貯留可能である。この管本体11の開口端20が本発明における第1端に相当する。
【0051】
管本体11の開口端20は、円筒形状の管本体11の軸線方向101に対して直交する平面をなしている。この開口端20の平面が、シート12との接合面として機能する。
【0052】
管本体11は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主原料として成形され得るが、その他の公知の素材が用いられてもよい。また、管本体11は、開口端20がシート12によって閉塞されることにより、内部空間が大気圧に対して減圧状態として気密に保持されることから、ガスバリアー性であることが好ましい。このガスバリアー性は、必ずしも単一の原料で実現される必要はなく、管本体11の外面又は内面にガスバリアー性フィルムなどが積層されて実現されてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では詳述されないが、管本体11の内部空間には、血清分離剤や凝固促進剤などの公知の薬剤が注入されてもよい。
【0054】
(シート12)
図1及び図2に示されるように、シート12は、管本体11の開口端20に接合されて開口端20を閉塞する。シート12が接合された状態において、管本体11の内部空間は液密且つ気密に維持される。シート12の接合が、減圧雰囲気下で行われることにより、管本体11の内部空間が減圧状態にされる。なお、管本体11の開口端20に接合された状態において、シート12において外側へ向く面が「表面」と称され、管本体11の内部空間へ向く面が「裏面」と称される。つまり、シート12は、裏面側が開口端20に接合されている。シート12の表面が、本発明における第1面に相当する。
【0055】
図2に示されるように、シート12は、開口端20の外径と同等の外径を有する円盤形状の薄膜である。シート12は、管本体11の内部空間を気密に保持するために、ガスバリアー性を有する。また、シート12は、管本体11の内部空間に貯留された血液などの液体を通過させず、かつ液体に対して耐性を有する。また、シート12は、採血管ホルダに取り付けられた採血針によって刺通可能なものである。このようなシート12は、例えば、アルミニウムとポリエチレンとのラミネートフィルムにより実現されるが、その他の樹脂シートや複合シートなどが用いられてもよい。管本体11の開口端20とシート12との接合は、後述されるイージーピールにより実現される。また、シート12とキャップ14との接合が溶着により実現されるのであれば、シート12の表面は、キャップ14と溶着可能な素材であることが好ましい。
【0056】
(ゴム片13)
図1及び図2に示されるように、ゴム片13は、シート12の表面に取り付けられている。ゴム片13は、概ね円盤形状をなしており、その外径は、シート12の外径より十分に小さい。ゴム片13の中央部分には、凹陥部21が形成されており、この凹陥部21によってゴム片13の中央部分が上下方向(軸線方向101)に対して薄肉とされている。この凹陥部21は、採血針が容易に貫通されるためのものである。
【0057】
図1及び図3に示されるように、ゴム片13は、その中央をシート12の中央に合わせてシート12の表面に配置されて、シート12と接合されている。シート12とゴム片13との接合は、公知の接着剤などによって実現される。この接合によって、シート12の表面にゴム片13が積層される。前述されたように、ゴム片13の外径はシート12の外径に対して十分に小さいので、この配置によって、図1及び図3に示されるように、シート12に積層されたゴム片13の周囲において、シート12の表面が露出されている。
【0058】
前述されたように、ゴム片13は、採血針を刺通可能なものである。また、ゴム片13は、採血針が抜かれた後に採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである。このようなゴム片13の特性は、天然ゴムやイソプロピレンゴム、シリコンゴムなどの公知のゴムによって実現される。また、ゴム以外であっても、加硫エラストマーや熱可塑性エラストマーなどの弾性材料によって実現されてもよい。
【0059】
(キャップ14)
図1及び図2に示されるように、キャップ14は、円環形状の天板22と円筒形状の胴部23とを主要構成とする。天板22及び胴部23は、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を主原料として一体に成形され得る。
【0060】
図2に示されるように、天板22は、管本体11の開口端20の外径より若干大きな外径を有する。したがって、図6に示されるように、天板22の中央が開口端20の中央に合致された配置において、天板22の周縁は管本体11の開口端20より外側へ突出する。この天板22の周縁から下方へ胴部23が延出されている。これにより、図1及び図5に示されるように、キャップ14が管本体11の開口端20に外嵌され、胴部23が管本体11の外周面に沿って下方へ延出される。つまり、管本体11の周囲を胴部23が囲む。なお、この胴部23の筒形状は、管本体11の外径に合わせて変更可能である。また、各図には示されていないが、キャップ14を管本体11から外しやすいように、胴部23の外周面に滑り止めのための凹凸形状などが形成されてもよい。
【0061】
図7に示されるように、胴部23の内面には環状の膨出部25が形成されている。膨出部25は、胴部23の内面から径方向内側へ向かって均等に突出されている。膨出部25の内径は、管本体11の外径より若干小さい。したがって、管本体11の開口端20にキャップ14が外嵌されると、膨出部25付近において、胴部23が若干外側へ弾性変形され、その反力によって膨出部25が管本体11の外周面に圧接される。これにより、キャップ14が管本体11に圧着されて、キャップ14が管本体11から容易に脱離しない。
【0062】
図2及び図6に示されるように、キャップ14は、管本体11の開口端20にシート12が接合されて、そのシート12の周縁を覆うようにして開口端20に嵌められている。このようにして、管本体11にキャップ14が外嵌されると、管本体11の外周面側に露出されたシート12と開口端20との接合境界のすべてがキャップ14によって覆われる。
【0063】
図1及び図2に示されるように、天板22には、その中央部分に開口24が形成されている。開口24は、天板22を厚み方向(軸線方向101)へ貫通している。開口24の内径は、管本体11の内径と同等である。図1、図3及び図6に示されるように、管本体11の開口端20にキャップ14が外嵌されると、天板22がシート12の表面の周囲に接触し、シート12の中央部分が天板22の開口24から外部へ露出される。つまり、開口24によってシート12の表面の一部が外部へ露出される。
【0064】
前述されたように、キャップ14の開口24から露出されるシート12の表面の露出部分は、シート12の中央部分である。また、前述されたように、ゴム片13は、その中央がシート12の中央に合致するように配置されている。そして、ゴム片13の外径は、開口24の内径より十分に小さい。したがって、シート12に積層されたゴム片13は、キャップ14の開口24より内側に配置されて、開口24を通じて外部へ露出される。また、そのゴム片13の全周囲におけるシート12の表面も、開口24を通じて外部へ露出される。
【0065】
(管本体11、シート12及びキャップ14の接合)
図7に示されるように、キャップ14が管本体11の開口端20に外嵌されると、開口端20に接合されたシート12の周縁が、開口端20とキャップ14の天板22とによって挟み込まれる。前述されたように、天板22に形成された開口24の内径と管本体11の内径とは同等なので、天板22とシート12とが接合する領域の面積と、シート12と開口端20とが接合する領域の面積は同等である。これら各々の接合する領域において、開口端20とシート12とが接合され、シート12と天板22とが接合されている。管本体11の開口端20とシート12との接合によって、管本体11がシート12によって気密且つ液密に閉塞される。
【0066】
前述された各接合において、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1は、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱い(I1<I2)。具体的には、開口端20とシート12とはイージーピールにより接合されている。イージーピールとは、食品包装などで用いられている公知のシール手法であり、剥離形態によって、界面剥離、凝集剥離、層間剥離に分類される。また、イージーピールの剥離強度は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値がおよそ1〜15N/15mmの範囲である。これに対し、シート12とキャップ14の天板22との接合は、溶着又は接着により実現されている。この溶着又は接着などの接合方法は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値が15N/15mmより十分に大きければ公知の接合方法が任意に採用され得る。
【0067】
[採血管10の使用方法]
以下に、採血管10の使用方法が説明される。
【0068】
(採血)
採血管10は、周知の採血針ホルダに装着されることによって、採血針がゴム片13及びシート12を貫通する。そして、管本体11の内部空間の減圧状態により生じる吸引力によって、採血針を通じて管本体11の内部空間に血液が吸引される。吸引された血液102は、管本体11の内部空間に貯留される。そして、所定量の血液102が管本体11に吸引されると、採血管10が採血針ホルダから取り外される。シート12において採血針により形成された刺通路は液密に閉塞されないが、ゴム片13において採血針により形成された刺通路は液密に閉塞される。これにより、採取された血液102が採血管10から漏出することがない。採血後は、必要に応じて、採血管10の血液102に対して遠心分離などの処理が行われる。例えば、遠心分離が施されることによって、採血管10の血液102が血清成分と、それ以外の血球成分などとに分離される。
【0069】
(手作業による開栓)
図8に示されるように、採血管10の血液102や血清成分を採取するために、採血管10を手で開栓する場合には、管本体11からキャップ14が外される。管本体11からキャップ14を外すには、キャップ14が管本体11から若干浮き上がるように、キャップ14を押し上げたり、管本体11に対してキャップ14を相対的に捻ったりすればよい。例えば、軸線方向101に沿ってキャップ14を管本体11から浮きがあるように移動させると、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とに挟み込まれて双方とそれぞれ接合されたシート12には、軸線方向101に引っ張られる。つまり、シート12の表面と裏面とが軸線方向101に沿って相反する向きへ引っ張られる力が作用する。また、例えば、軸線方向101を軸として相対的に回転するように、管本体11又はキャップ14が捻られると、この捻りによって、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とに挟み込まれて双方とそれぞれ接合されたシート12は、その表面に沿った方向に捻られる。つまり、シート12の表面と裏面とが相反する向きへ回転する力が作用する。
【0070】
前述されたように、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1は、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱い(I1<I2)ので、管本体11からキャップ14が外されると、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に、管本体11の開口端20からシート12が剥がれる。これにより、作業者は、シート12を直接触ることなく、管本体11の開口端20からシート12を剥離して、採血管10を開栓する。
【0071】
キャップ14を管本体11に対して若干浮かすようにしたり、管本体11に対して相対的に捻るようにしたりして、キャップ14が管本体11から外れる過程において、管本体11の開口端20からシート12が剥がれるときには、キャップ14は、管本体11から完全に外される前であって、図6に示されるように、管本体11の開口端20に外嵌された状態に近い。したがって、開口端20とシート12との接合境界は、キャップ14によって覆われている。これにより、開口端20からシート12が剥がれる際に、外部の大気が管本体11の内部空間へ急激に進入して、管本体11の血液102が飛散して、血液102の飛沫が開口端20とシート12との隙間から管本体11の外部へ飛び出したとしても、その血液102の飛沫は、キャップ14の内面に付着する。
【0072】
また、図8に示されるように、採血管10を開栓する際には、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に管本体11の開口端20からシート12が剥がれるので、天板22の開口24は、シート12で閉塞されたままである。したがって、キャップ14を再び管本体11の開口端20に外嵌させると、管本体11の開口端20をキャップ14で覆うことができる。これにより、採血管10に残った血液102に塵埃などが混入することがない。また、再び管本体11がキャップ14で覆われた状態で、採血管10を冷凍庫などに保管すれば、採血管10に残った血液102を保存することができる。
【0073】
(開栓装置による開栓)
採血管10の血液102や血清成分を採取するために、採血管10を開栓装置を用いて開栓する場合には、採血管10を開栓装置にセットする。図9及び図10に示されるように、開栓装置には、管本体11の内径やゴム片13の配置に対応した開栓カッター103及び保持ピン104が設けられている。開栓カッター103は、保持ピン104を囲む概ね円筒形状をなしており、その先端がシート12を打ち抜き可能な山形状の刃に加工されている。
【0074】
開栓装置が動作されると、保持ピン104の直下にゴム片13が位置するように、採血管10が位置決めされ、図9に示されるように、開栓カッター103及び保持ピン104が、採血管10に対して降下される。これにより、保持ピン104がゴム片13を刺し通す。また、開栓カッター103が、ゴム片13の周囲においてシート12を打ち抜く。前述されたように、ゴム片13の周囲において、シート12がキャップ14の開口24を通じて外部へ露出されているので、開栓カッター103は、キャップ14の開口24を通じてシート12を打ち抜くことができる。そして、開栓カッター103及び保持ピン104が採血管10に対して上昇されると、打ち抜かれたシート12は、ゴム片13とともに保持ピン104によって上昇され、その下方にシート12が打ち抜かれて開栓された採血管10が残る。このようにして、開栓装置を用いて採血管10が開栓される。
【0075】
[第1実施形態の作用効果]
前述されたように、採血管10によれば、管本体11の開口端20にはシート12が接合されて閉塞され、そのシート12の上側からキャップ14が外嵌され、キャップ14の天板22に形成された開口24から、ゴム片13とシート12の表面の一部が外部へ露出されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップ14の開口24を通じてシート12に接触して、シート12を打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血管に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血管10が実現される。
【0076】
また、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1が、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱く(I1<I2)、管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14が管本体11から外されると、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に、管本体11からシート12が剥がれるので、作業者は、シート12を直接触ることなく、管本体11からシート12を剥離して採血管10を開栓することができる。これにより、作業者が手で採血管10を開栓する際に、血液102による汚染が生じ難い採血管10が実現される。また、手で開栓した後のキャップ14は、再び管本体11の開口端20に外嵌させることができ、キャップ14の天板22に形成された開口24は、シート12で閉塞されたままなので、管本体11を再栓できる採血管10が実現される。
【0077】
また、キャップ14の胴部23が、管本体11の外面に沿った円筒形状なので、管本体11の開口端20とシート12との境界がキャップ14の胴部23によって覆われる。そして、採血管10が開栓されるときにも、開口端20とシート12との境界は、キャップ14の胴部23によって覆われたままである。したがって、管本体11の開口端20からシート12が剥離されたときに、開口端20とシート12との隙間から管本体11内の血液102が飛散しても、飛散した血液102の飛沫はキャップ14の胴部23の内面に付着するので、作業者の手や周囲の環境が血液102の飛沫で汚染されることがない。
【0078】
また、シート12は、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、シート12が開口端20及び天板22とそれぞれ接合されているので、採血管20が開栓される際に、例えばキャップ14が管本体11から若干浮き上がるように軸線方向101へ押し上げられると、管本体11とシート12とが接合された領域と、シート12とキャップ14の天板22とが接合された領域とが、キャップ14が移動する方向(軸線方向101)に沿って並ぶこととなる。したがって、シート12に対して、表面と直交する方向の剪断力が生じ難い。また、例えばキャップ14が管本体11に対して捻られると、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22と挟み込まれた状態のままで、シート12がキャップ14の天板22と共に回転するので、シート12の表面と直交する方向の剪断力がシート12に対して生じ難い。したがって、管本体11からキャップ14が外されるときに、シート12が破断することなく、管本体11の開口端20からシート12が剥離される。
【0079】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態が説明される。なお、本実施形態において、単に「上側」又は「下側」と称される場合には、図12における軸線方向111が上下方向とされて、図12における上側が「上側」、図12における下側が「下側」である。
【0080】
(採血管30の概略構成)
図11から図15に示されるように、第2実施形態に係る採血管30は、管本体31と、管本体31の開口端40に外嵌されたキャップ32と、キャップ32の開口44を閉塞するシート33と、シート33に取り付けられたゴム片34とを主要な構成とする。本実施形態における管本体31が、本発明における容器に相当し、キャップ32が本発明におけるキャップに相当し、シート33が本発明におけるシートに相当し、ゴム片34が本発明における針刺用片に相当する。
【0081】
(管本体11)
図12に示されるように、管本体31は、円筒形状をなしている。図14に示されるように、管本体31は、下側が半球形状の底として閉塞されている。管本体31の上側は開口端40として開放されている。したがって、開口端40から管本体31の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。そして、図11などに示される姿勢に管本体31が維持されると、管本体31の内部空間に血液等の液体が貯留可能である。管本体31の開口端40は、円筒形状の管本体31の軸線方向111に対して直交する平面をなしている。この管本体31の開口端40が本発明における第1端に相当する。
【0082】
なお、管本体31の素材などは、第1実施形態における管本体11と同様であるので、ここでは詳細な説明が省略される。また、管本体31の内部空間に血清分離剤や凝固促進剤などの公知の薬剤が注入されてもよいことも第1実施形態と同様である。
【0083】
(キャップ32)
図11及び図12に示されるように、キャップ32は、円環形状の天板41と円筒形状の胴部42とを主要構成とする。天板41及び胴部42は、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を主原料として一体に成形され得る。
【0084】
図12に示されるように、天板41は、管本体31の開口端40の外径より若干大きな外径を有する。したがって、図16に示されるように、天板41の中央が開口端40の中央に合致された配置において、天板41の周縁は管本体31の開口端40より外側へ突出する。この天板41の周縁から下方へ胴部42が延出されている。これにより、図11及び図15に示されるように、キャップ32が管本体31の開口端40に外嵌され、胴部42が管本体31の外周面に沿って下方へ延出される。つまり、管本体31の周囲を胴部42が囲む。なお、この胴部42の筒形状は、管本体31の外径に合わせて変更可能である。また、各図には示されていないが、キャップ32を管本体31から外しやすいように、胴部42の外周面に滑り止めのための凹凸形状などが形成されてもよい。
【0085】
図17に示されるように、胴部42において軸線方向111の中央付近には、その上下側の厚みより肉厚の膨出部43が軸線方向111周りに環状に形成されている。この膨出部43は、胴部42の外面及び内面からそれぞれ径方向へ膨出されている。図18に示されるように、胴部42の内面においては、膨出部43は、径方向内側へ向かって均等に膨出されている。胴部42の内面側における膨出部43の内径は、管本体31の外径より若干小さい。したがって、管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されると、膨出部43付近において、胴部42が若干外側へ弾性変形され、その反力によって膨出部43が管本体31の外周面に圧接される。これにより、キャップ32が管本体31に圧着されて、キャップ32が管本体31から容易に脱離しない。また、胴部42において、膨出部43より下側、つまり天板41に対して反対向きの先端側の内径は、管本体31の外径より若干大きい。つまり、胴部43において膨出部43より下側の厚みが薄肉とされている。なお、膨出部43は、キャップ32を管本体31に圧着させるためのものなので、胴部42の外面からは必ずしも膨出される必要はない。
【0086】
図11及び図17に示されるように、キャップ32が管本体31の開口端40に外嵌されると、開口端40に天板41が密着する。この密着状態は、前述されたように、キャップ32の胴部42と管本体31の外周面との圧接によって維持される。キャップ32の天板41と管本体31の開口端40との密着、及びキャップ32の胴部42と管本体31の外周面との圧接は、いずれも気密且つ液密である。
【0087】
図12に示されるように、天板41には、その中央部分に開口44が形成されている。開口44は、天板41を厚み方向(軸線方向111)へ貫通している。開口44の内径は、管本体31の内径と同等である。管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されると、天板41が管本体31の開口端40に密着し、開口端40と開口44とが軸線方向111を中心として連続する。つまり、管本体31にキャップ32が外嵌された状態において、開口端40及び開口44を通じて管本体31の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。
【0088】
(シート33)
図11及び図12に示されるように、シート33は、キャップ32の天板41において外側となる表面(図11及び図12における上側)に接合されて開口44を閉塞する。シート33が開口44を閉塞することによって、管本体31の内部空間は液密且つ気密に維持される。シート33の接合が、減圧雰囲気下で行われることにより、管本体31の内部空間が減圧状態にされる。なお、キャップ32の天板41に接合された状態において、シート33において外側へ向く面が「表面」と称され、管本体31の内部空間へ向く面が「裏面」と称される。シート33の表面が、本発明における第1面に相当する。
【0089】
図12に示されるように、シート33は、キャップ32の天板41の外径と同等の外径を有する円盤形状の薄膜である。シート33の素材や特定は、第1実施形態におけるシート12と同様なので、ここでは詳細な説明が省略される。また、シート33とキャップ32の天板41との接合は、溶着や接着などの公知の接合手法が採用され得る。
【0090】
(ゴム片34)
図11及び図12に示されるように、ゴム片34は、シート33の表面に取り付けられている。ゴム片34は、概ね円盤形状をなしており、その外径は、シート33の外径より十分に小さく、また、キャップ32の開口44よりも小さい。ゴム片34の中央部分には、凹陥部45が形成されており、この凹陥部45によってゴム片34の中央部分が上下方向(軸線方向111)に対して薄肉とされている。この凹陥部45は、採血針が容易に貫通されるためのものである。
【0091】
図11及び図13に示されるように、ゴム片34は、その中央をシート33の中央に合わせてシート33の表面に配置されて、シート33と接合されている。シート33とゴム片34との接合は、公知の接着剤などによって実現される。この接合によって、シート33の表面にゴム片34が積層される。前述されたように、ゴム片34の外径はシート33の外径に対して十分に小さいので、この配置によって、図11及び図13に示されるように、シート33に積層されたゴム片34の周囲において、シート33の表面が露出されている。また、このゴム片34の周囲において露出されたシート33の表面の一部は、キャップ32の開口44より内側にある。
【0092】
前述されたように、ゴム片34は、採血針を刺通可能なものである。また、ゴム片34は、採血針が抜かれた後に採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである。このようなゴム片34の素材や特性は、第1実施形態におけるゴム片13と同様なので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0093】
[採血管30の使用方法]
以下に、採血管30の使用方法が説明される。
【0094】
(採血)
採血管30は、周知の採血針ホルダ及び採血針を用いて採血される。この採血方法は、第1実施形態と同様である。採血針がゴム片34及びシート33を貫通し、キャップ32の開口44及び管本体31の開口端40を通じて、管本体31の内部空間へ到達すると、その内部空間の減圧状態により生じる吸引力によって、採血針を通じて管本体31の内部空間に血液102が吸引される。
【0095】
(手作業による開栓)
採血管30の血液102や血清成分を採取するために、採血管30を手で開栓する場合には、管本体31からキャップ32が引き外される。キャップ32は、その膨出部43が管本体31の外周面に圧着されることによって管本体31に装着されているので、膨出部43と管本体31との摩擦抵抗より強い力でキャップ32が軸線方向111へ移動されると、管本体31からキャップ32が外れる。これにより、作業者は、シート33を直接触ることなく、管本体31の開口端40からシート33を剥離して、採血管30を開栓する。
【0096】
前述されたようにして、管本体31からキャップ32が外されるときに、キャップ32は管本体31に対して軸線方向111に移動される過程において、キャップ32の膨出部43が管本体31の外周面から離れる。これにより、キャップ32の胴部42において、膨出部43より下側の先端部分が、管本体31の外周面と接触しないか、接触したとしても、その隙間を気体が流通可能となる。これにより、キャップ32が管本体31から完全に引き抜かれる前に、管本体31とキャップ32の隙間を通じて、開口端40から管本体31の内部空間へ外気が流入する。換言すれば、このように外気が流入する際に、管本体31の開口端40はキャップ32に覆われている。これにより、外部の大気が管本体31の内部空間へ急激に進入して、管本体31の血液102が飛散して、血液102の飛沫が開口端40から管本体31の外部へ飛び出したとしても、その血液102の飛沫は、キャップ32の内面又はシート33の裏面に付着する。
【0097】
また、前述されたように採血管30を開栓する際には、キャップ32の天板41にはシート33が接合されて開口44が閉塞されたままである。したがって、キャップ32を再び管本体31の開口端40に外嵌させると、管本体31の開口端40をキャップ32で再栓することができる。これにより、採血管30に残った血液102に塵埃などが混入することがない。また、再び管本体31がキャップ32で密閉された状態で、採血管30を冷凍庫などに保管すれば、採血管30に残った血液102を保存することができる。
【0098】
(開栓装置による開栓)
採血管30の血液102や血清成分を採取するために、採血管30を開栓装置を用いて開栓する場合には、採血管30を開栓装置にセットする。図19及び図20に示されるように、開栓装置には、管本体31の内径やゴム片34の配置に対応した開栓カッター103及び保持ピン104が設けられている。開栓カッター103は、保持ピン104を囲む概ね円筒形状をなしており、その先端がシート33を打ち抜き可能な山形状の刃に加工されている。
【0099】
開栓装置が動作されると、保持ピン104の直下にゴム片34が位置するように、採血管30が位置決めされ、図19に示されるように、開栓カッター103及び保持ピン104が、採血管30に対して降下される。これにより、保持ピン104がゴム片34を刺し通す。また、開栓カッター103が、ゴム片34の周囲においてシート33を打ち抜く。前述されたように、ゴム片34の周囲において露出されたシート33の一部分は、キャップ32の開口44及び管本体31の開口端40の内側にあるので、開栓カッター103は、キャップ32の開口44を通じてシート33を打ち抜くことができる。そして、開栓カッター103及び保持ピン104が採血管30に対して上昇されると、打ち抜かれたシート33は、ゴム片34とともに保持ピン104によって上昇され、その下方にシート33が打ち抜かれて開栓された採血管30が残る。このようにして、開栓装置を用いて採血管30が開栓される。
【0100】
[第2実施形態の作用効果]
前述されたように、採血管30によれば、管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されて、管本体31の開口端40及び開口端41付近の外周面が覆われており、キャップ32の開口44及び開口端40を通じて、キャップ32の外側と管本体31の内部空間とが連続しており、キャップ32の開口44がシート33により閉塞されているので、開栓装置の開栓カッター103が、キャップ32の開口44に合わせてキャップ32の外側からシート33を打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血管に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血管30が実現される。
【0101】
また、キャップ32を管本体31から引き外すと、シート33及びゴム片34とともに、管本体31からキャップ32を取り外して開栓することができるので、作業者は、シート33を直接触ることなく、採血管30を開栓できる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血管30が実現される。また、キャップ32は、再び管本体31の開口端40に外嵌させることができるので、再栓できる採血管30が実現される。
【0102】
なお、本実施形態においては、キャップ32が管本体31に外嵌されるものとしたが、キャップ32は、その一部が管本体31に内挿されて液密且つ気密に嵌合されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る採血管10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、採血管10の分解斜視図である。
【図3】図3は、採血管10の平面図である。
【図4】図4は、採血管10の底面図である。
【図5】図5は、採血管10の正面図である。
【図6】図6は、図3のVI−VI切断線における採血管10の断面構成を示す断面図である。
【図7】図7は、図6におけるキャップ14付近の拡大断面図である。
【図8】図8は、採血管10を手で開栓する作業を示す断面図である。
【図9】図9は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図10】図10は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係る採血管30の外観構成を示す斜視図である。
【図12】図12は、採血管30の分解斜視図である。
【図13】図13は、採血管30の平面図である。
【図14】図14は、採血管30の底面図である。
【図15】図15は、採血管30の正面図である。
【図16】図16は、図13のXVI−XVI切断線における採血管30の断面構成を示す断面図である。
【図17】図17は、図16におけるキャップ32付近の拡大断面図である。
【図18】図18は、採血管30を手で開栓する作業を示す断面図である。
【図19】図19は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図20】図20は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10,30・・・採血管(採血器具)
11,31・・・管本体(容器)
12,33・・・シート
13,34・・・ゴム片(針刺用片)
14,32・・・キャップ
20,40・・・開口端(第1端)
22,41・・・天板
23,42・・・胴部
24,44・・・開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器中に採取された血液を貯留する採血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、診断等を目的としてヒトなどの生体から血液が採取され、その血液中の各種成分の分析が血液検査として行われている。生体から血液を採取するには、注射器などのほか、採血管と称される採血器具が使用される。この採血管は、主として、チューブ形状の容器がゴム栓などによって気密に閉塞されたものである。ゴム栓によって閉塞された容器の内部空間は大気圧に対して減圧状態に保持されている。また、必要に応じて、血清分離剤や凝固剤などの薬剤が容器内に封入されている。採血針が取り付けられた採血針ホルダに採血管が装着されると、採血針がゴム栓を貫通して、その減圧状態の内部空間に採血針を通じて生体の血液が吸引される。適当な量の血液が容器内に吸引されると、採血針ホルダから採血管が取り外される。採血管が取り外される際に、ゴム栓から採血針が引き抜かれ、採血針による刺通路はゴムの弾性により液密に封止される。採血後の採血管は、そのまま遠心分離等の処理が行われてから開栓され、採血管内の血液又は血清などが採取され、各種の血液検査が行われる(特許文献1)。
【0003】
前述された採血管には、ゴム栓に代えて、ガスバリア性のフィルムを用いて容器が気密に閉塞されたタイプのものがある。このフィルムには、抜針後の液密を確保するために、一部分にゴム片が取り付けられている。このゴム片を採血針が貫通して、前述されたように、採血針を通じて容器内に血液が吸引される。また、遠心分離等の処理が行われた後は、フィルムが剥離されることによって容器が開封され、容器内の血液又は血清が採取される(特許文献2)。
【0004】
また、前述された採血管には、ゴム栓にチューブ形状の被覆体が被せられたタイプの採血管がある。この被覆体は、ゴム栓と容器との境界部分を覆っている。ゴム栓を取り外して開栓する際に、ゴム栓と容器との境界に隙間が生じて外気が容器内に流れ込み、この外気等の流れによって容器内の血液が飛散して、ゴム栓と容器との隙間から外部へ血液飛沫が飛び出るおそれがあるが、ゴム栓と容器との境界を被覆体が覆っているので、その血液飛沫が被覆体の内面側に付着する。これにより、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献3)。
【0005】
また、ゴム栓のフランジ部分に、容器の外周を覆うスカート部が設けられたタイプの採血管がある。この採血管においても、ゴム栓を取り外す際に容器から飛び出した血液飛沫が、スカート部の内面側に付着することよって、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献4)。
【0006】
また、ゴム栓と容器との境界部分がフィルムで覆われたタイプの採血管がある。このフィルムは、ゴム栓を取り外す際に、ゴム栓と共に容器に対して捻られることによって一部が破断する。ゴム栓を取り外す際に容器から飛び出した血液飛沫が、フィルムの内面側に付着することによって、飛び出した血液飛沫が作業者の手や周囲の環境を汚すことがない(特許文献5)。
【0007】
また、前述された採血管には、ゴム栓の上面にシートが張られたものがある。このシートの有無や、シートに針を刺した跡があるか否かで、使用済み又は滅菌済みであるか否かを判断することができる(特許文献6)。
【0008】
また、前述された採血管には、管状容器の開口部がシート部材で気密に閉塞され、そのシート部材の外表面にカバー部材が設けられたものがある。このカバー部材は、管状容器に対して捻られることによってシート部材を破断させ、また、シート部材が破断した後は管状容器の開口に嵌合する。これにより、ゴム栓でなく、シート部材で気密に閉塞された採血管が開封された後も、カバー部材によって再び管状容器を閉塞することができる(特許文献7)。
【0009】
また、シートにより容器が気密に閉塞された採血管を、採血後に開栓する開栓装置が提案されている。この開栓装置は、採血管のシートに取り付けられたゴム片等を保持ピンが刺し通し、続いてゴム片の周囲を開栓カッターが打ち抜くことによって、採血管を開栓する(特許文献8)。
【0010】
【特許文献1】特開平8−322819号公報
【特許文献2】特開2005−261965号公報
【特許文献3】特開平8−145987号公報
【特許文献4】特開2001−276023号公報
【特許文献5】特開2002−587号公報
【特許文献6】特開2005−296122号公報
【特許文献7】特許第3533023号公報
【特許文献8】特開2008−184168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述された採血管において、ゴム栓により容器を気密に閉塞するタイプのものは、容器から血液を採取した後に、再びゴム栓によって容器を閉塞して、残りの血液を保存することができるという利点がある。一方、採血管のゴム栓を自動的に開栓する装置はあるものの、病院や検査センターなどの施設に導入されている開栓装置の多くは、特許文献8に開示されたようなシートを打ち抜いて開栓するタイプのものであり、このような所謂シートタイプの採血管に対する開栓装置が導入された施設においては、ゴム栓タイプの採血管の開栓を自動化するには別の開栓装置を更に導入する必要があり、ゴム栓タイプの採血管を大量に開栓するためのコストが高いという問題がある。
【0012】
他方、シートタイプの採血管は、既に多くの施設に導入されている開栓装置を利用して開栓の自動化を図ることができる。また、シールを手で剥離することによって、手作業で開栓することもできるので、開栓装置が導入されていない施設においても直ちに採用され得る。しかし、シールを剥離する際に、シートに付着した血液が作業者の手に付着し易いという欠点がある。また、シートを剥離する際に、シートと容器との隙間から、前述されたようにして、血液飛沫が飛び出すおそれがあるという欠点もある。
【0013】
特許文献7に開示された採血管によれば、シート部材の外表面に取り付けられたカバー部材を二重筒形状とすることによって、開栓時に飛び出した血液飛沫がカバー部材の内面に付着するので、作業者や周囲の環境が血液で汚染されることを防止し得る。しかし、カバー部材を管状容器に嵌合可能とするためには、管状容器の内面と接触する嵌め代を設ける必要がある。したがって、特許文献7の各図に示されるように、カバー部材がシート部材から軸方向外側へ大きく突出する。そうすると、汎用されている採血針ホルダに装着しても採血針がシート部材に到達しないおそれがあるので、専用の採血針ホルダ又は採血針を用いる必要が生じる。同様に、カバー部材がシート部材から軸方向外側へ大きく突出すると、既に導入されている開栓装置を用いることができないという不具合が生じ得る。
【0014】
さらに、特許文献7に開示された採血管を手で開栓するには、カバー部材を捻ることによって、そのカバー部材と共に捻られるシート部材に剪断力を作用させて破断し、このシート部材の破断によって管状容器が開栓される。しかし、このような剪断力をシート部材に一様に作用させて、シート部材をカバー部材の周縁に沿って均一に破断させることは難しい。その結果、例えば、完全に破断されなかったシート部材が部分的に残って、そのシート部材の一部分を管状容器から剥離させる必要が生じ、その作業において血液が作業者の手に付着するおそれがある。また、シート部材の破片が生じて、その破片が管状容器内の血液に混入するおそれがある。
【0015】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用することができ、また、手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用することができ、手で開栓する際に血液による汚染が生じ難く、かつ手で開栓した後に再び閉塞できる採血器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1) 本発明に係る採血器具は、開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、上記容器の第1端に接合されて上記開口を閉塞するシートと、上記シートにおける上記容器の外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、開口が形成された天板、及び当該天板から上記容器の外面に沿って延出された胴部を有し、当該天板の開口から上記針刺用片及び上記シートの第1面の一部が外部へ露出され、かつ当該天板が上記第1面に接合されて、上記容器の第1端に外嵌されたキャップと、を具備し、上記容器と上記シートとのシール強度が、上記シートと上記キャップとのシール強度より弱いものである。
【0018】
本発明に係る採血器具は、例えば、周知の採血針ホルダに装着されて、採血針が針刺用片及びシートを貫通することによって、採血針を通じて容器の内部空間に血液を採取するものである。この容器の第1端にはシートが接合されて、容器の開口が液密に閉塞されている。そのシートの第1面には、針刺用片が積層されている。この針刺用片の外形は、シートの外形より小さい。したがって、シートは、第1面に針刺用片が積層された状態で、針刺用片が積層されていない第1面も存在する。容器に第1端には、シートの上側からキャップが嵌合されている。このキャップの天板は、シートの上側から容器の第1端に当接し、胴部は、容器の外面における第1端付近の一部を覆っている。キャップの天板に形成された開口からは、針刺用片とシートの第1面の一部が外部へ露出されている。したがって、開栓装置の開栓カッターは、キャップの開口を通じてシートに接触して、シートを打ち抜くことができる。
【0019】
キャップの天板は、シートの第1面と接合されている。容器とシートとのシール強度は、シートとキャップとのシール強度より弱い。したがって、容器の第1端に外嵌されたキャップが容器から外されると、キャップの天板からシートが剥がれる前に、容器からシートが剥がれる。これにより、作業者は、シートを直接触ることなく、容器からシートを剥離して容器を開栓することができる。
【0020】
なお、本発明における「シール強度」は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度(7.袋のヒートシール強さ試験)に準じて測定される測定値によって数値化されて、客観的に比較することができる。したがって、「シール強度」が強弱の関係にあれば、容器とシートとの接合、及びシートとキャップとの接合は、熱用着や超音波用着などの溶着、接着剤による接着、イージーピールなどの公知の接合方法の組み合わせが任意に採用され得る。
【0021】
(2) 上記容器と上記シートとの接合が、イージーピールにより実現されてもよい。
【0022】
イージーピールとは、食品包装などで用いられている公知のシール手法である。イージーピールは、剥離形態によって、界面剥離、凝集剥離、層間剥離に分類される。界面剥離においては、ピール層として、例えば粘着剤が添加されたエチレンビニルアルコール樹脂が採用され、粘着剤の種類によって剥離強度が調整される。凝集剥離においては、ピール層として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びその他の樹脂のポリマーブレンドが採用され、ポリマーブレンドにおける凝集力の制御によって剥離強度が調整される。層間剥離においては、支持層と接着層との間に中間層が設けられ、接着層と中間層との層間接着力の調整によって剥離強度が調整される。剥離強度としては、例えば、前述されたJIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値が1〜15N/15mmの範囲にあるものがイージーピールと称される。容器とシートとの接合がイージーピールにより実現され、シートとキャップとの接合が他の溶着又は接着により実現されることによって、容器とシートとのシール強度を、シートとキャップとのシール強度より弱くすることができる。
【0023】
(3) 上記キャップの胴部は、上記容器の外面に沿った筒形状であってもよい。
【0024】
したがって、容器とシートとの境界がキャップの胴部によって覆われる。前述されたようにして容器が開栓されるときに、キャップは容器の第1端から完全に取り外される必要がなく、例えば容器から若干浮き上がる程度に外されたり、容器に対して相対的に捻られたりするだけでよい。つまり、シートと容器との境界は、キャップの胴部によって覆われたままでよい。したがって、容器からシートが剥離されたときに、容器とシートとの隙間から容器内の血液が飛散しても、飛散した血液飛沫はキャップの胴部の内面に付着するので、作業者の手や周囲の環境が血液飛沫で汚染されることがない。
【0025】
(4) 上記シートは、上記容器の第1端と上記キャップの天板とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、上記容器及び上記天板とそれぞれ接合されていてもよい。
【0026】
開栓の際に、例えばキャップが容器から若干浮き上がるように押し上げられると、容器とシートとが接合された領域と、シートとキャップとが接合された領域とは、キャップが移動する方向に沿って並ぶこととなる。したがって、シートに対して、第1面と直交する方向の剪断力が生じ難い。また、例えばキャップが容器に対して捻られるように外されると、容器の第1端とキャップの天板と挟み込まれた状態のままで、シートがキャップの天板と共に回転するので、第1面と直交する方向の剪断力がシートに対して生じ難い。したがって、キャップを容器から外すときに、シートが破断することなく、容器からシートが剥離される。
【0027】
(5) 上記針刺用片は、上記容器の第1端に上記シートが接合された状態において、当該第1端の開口の内側に配置されてもよい。
【0028】
これにより、開栓装置の開栓カッターが、シートにおける針刺用片以外の部分を打ち抜くことができる。
【0029】
(6) 上記容器の第1端に嵌合された上記キャップの天板の開口により露出される上記シートの露出部分に、上記シートの第1面のうち少なくとも上記針刺用片の周囲の部分のすべてが含まれてもよい。
【0030】
これにより、開栓装置の保持ピンが針刺用片を刺し通した状態で、開栓カッターが針刺用片の周囲においてシートを打ち抜くことができる。
【0031】
(7) 上記容器は、その内部空間が上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態であってもよい。
【0032】
例えば、ガスバリア性のシートによって容器の内部空間が長期間に渡って減圧状態に保持される。これにより、簡易且つ安価に、内部空間が減圧された採血器具が実現される。
【0033】
(8) 本発明に係る採血器具は、開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、上記容器の第1端に嵌合され、当該第1端の開口と連続する開口が形成されたキャップと、上記キャップに接合されて当該キャップの開口を閉塞するシートと、上記シートにおける上記キャップの外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、を具備するものである。
【0034】
本発明に係る採血器具は、例えば、周知の採血針ホルダに装着されて、採血針が針刺用片及びシートを貫通することによって、採血針を通じて容器の内部空間に血液を採取するものである。この容器の第1端にはキャップが嵌合されている。キャップと容器との嵌合は、その嵌合部分が液密である。このキャップにより、容器の第1端及び容器の外面における第1端付近の一部が覆われている。このキャップには、容器の第1端の開口と連続する開口が形成されている。つまり、容器の第1端にキャップが嵌合された状態において、容器の第1端は完全に閉塞されておらず、キャップの開口及び第1端の開口を通じて、キャップの外側と容器の内部空間とが連続している。
【0035】
キャップにはシートが接合されて、その開口が液密に閉塞されている。このシートの第1面には、針刺用片が積層されている。この針刺用片の外形は、シートの外形より小さい。したがって、シートは、第1面に針刺用片が積層された状態で、針刺用片が積層されていない第1面も存在する。開栓装置の開栓カッターは、キャップの開口に合わせてキャップの外側からシートを打ち抜くことができる。また、キャップを容器から外すと、シート及び針刺用片とともに、容器からキャップを取り外して開栓することができる。これにより、作業者は、シートを直接触ることなく、容器を開栓できる。また、キャップを再び容器の第1端に嵌合させると、容器の第1端が再び閉塞される。
【0036】
(9) 上記針刺用片は、上記キャップの開口を上記シートが閉塞した状態において、当該開口と上記容器の開口とが連続する空間の内側に配置されたものであってもよい。
【0037】
これにより、開栓装置の開栓カッターが、シートにおける針刺用片以外の部分を打ち抜くことができる。
【0038】
(10) 上記容器は、その内部空間が上記キャップによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態であってもよい。
【0039】
例えば、ガスバリア性のシート及びキャップによって容器の内部空間が長期間に渡って減圧状態に保持される。これにより、簡易且つ安価に、内部空間が減圧された採血器具が実現される。
【0040】
(11) 上記針刺用片は、採血針を刺通可能なものであって、かつ採血針が抜かれた後に当該採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものであってもよい。
【0041】
例えば、加硫ゴムやエラストマーによって針刺用片が実現される。これにより、採血後の採血器具が遠心分離などの処理に供されても、刺通路から血液が外部へ漏出することがない。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る採血器具によれば、容器の第1端にはシートが接合されて開口が閉塞され、
そのシートの上側からキャップが外嵌され、キャップの天板に形成された開口から、針刺用片とシートの第1面の一部が外部へ露出されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップの開口を通じてシートに接触して、シートを打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血器具が実現される。
【0043】
また、容器とシートとのシール強度がシートとキャップとのシール強度より弱く、容器の第1端に外嵌されたキャップが容器から外されると、キャップの天板からシートが剥がれる前に、容器からシートが剥がれるので、作業者は、シートを直接触ることなく、容器からシートを剥離して容器を開栓することができる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具が実現される。また、このキャップは、再び容器の第1端に外嵌させることができ、キャップの天板に形成された開口は、シートで閉塞されたままなので、容器を再栓できる採血器具が実現される。
【0044】
また、本発明に係る採血器具によれば、容器の第1端にキャップが嵌合されて、容器の第1端及び容器の外面における第1端付近の一部が覆われており、このキャップの開口及び第1端の開口を通じて、キャップの外側と容器の内部空間とが連続しており、このキャップの開口がシートにより閉塞されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップの開口に合わせてキャップの外側からシートを打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血器具に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血器具が実現される。
【0045】
また、キャップを容器から外すと、シート及び針刺用片とともに、容器からキャップを取り外して開栓することができるので、作業者は、シートを直接触ることなく、容器を開栓できる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血器具が実現される。また、このキャップは、再び容器の第1端に嵌合させることができるので、容器を再栓できる採血器具が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0047】
[図面の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る採血管10の外観構成を示す斜視図である。図2は、採血管10の分解斜視図である。図3は、採血管10の平面図である。図4は、採血管10の底面図である。図5は、採血管10の正面図である。なお、採血管10の右側面図、左側面図及び背面図は、正面図と同様である。図6は、図3のVI−VI切断線における採血管10の断面構成を示す断面図である。図7は、図6におけるキャップ14付近の拡大断面図である。図8は、採血管10を手で開栓する作業を示す断面図である。図9及び図10は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。図11は、本発明の第2実施形態に係る採血管30の外観構成を示す斜視図である。図12は、採血管30の分解斜視図である。図13は、採血管30の平面図である。図14は、採血管30の底面図である。図15は、採血管30の正面図である。なお、採血管30の右側面図、左側面図及び背面図は、正面図と同様である。図16は、図13のXVI−XVI切断線における採血管30の断面構成を示す断面図である。図17は、図16におけるキャップ32付近の拡大断面図である。図18は、採血管30を手で開栓する作業を示す断面図である。図19及び図20は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【0048】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態が説明される。なお、本実施形態において、単に「上側」又は「下側」と称される場合には、図2における軸線方向101が上下方向とされて、図2における上側が「上側」、図2における下側が「下側」である。
【0049】
(採血管10の概略構成)
図1から図5に示されるように、第1実施形態に係る採血管10は、管本体11と、管本体11の開口端20を閉塞するシート12と、シート12に取り付けられたゴム片13と、管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14とを主要な構成とする。本実施形態における管本体11が、本発明における容器に相当し、シート12が本発明におけるシートに相当し、ゴム片13が本発明における針刺用片に相当し、キャップ14が本発明におけるキャップに相当する。
【0050】
(管本体11)
図2に示されるように、管本体11は、円筒形状をなしている。図4及び図5に示されるように、管本体11は、下側が半球形状の底として閉塞されている。管本体11の上側は開口端20として開放されている。したがって、開口端20から管本体11の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。そして、図1などに示される姿勢に管本体11が維持されると、管本体11の内部空間に血液等の液体が貯留可能である。この管本体11の開口端20が本発明における第1端に相当する。
【0051】
管本体11の開口端20は、円筒形状の管本体11の軸線方向101に対して直交する平面をなしている。この開口端20の平面が、シート12との接合面として機能する。
【0052】
管本体11は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主原料として成形され得るが、その他の公知の素材が用いられてもよい。また、管本体11は、開口端20がシート12によって閉塞されることにより、内部空間が大気圧に対して減圧状態として気密に保持されることから、ガスバリアー性であることが好ましい。このガスバリアー性は、必ずしも単一の原料で実現される必要はなく、管本体11の外面又は内面にガスバリアー性フィルムなどが積層されて実現されてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では詳述されないが、管本体11の内部空間には、血清分離剤や凝固促進剤などの公知の薬剤が注入されてもよい。
【0054】
(シート12)
図1及び図2に示されるように、シート12は、管本体11の開口端20に接合されて開口端20を閉塞する。シート12が接合された状態において、管本体11の内部空間は液密且つ気密に維持される。シート12の接合が、減圧雰囲気下で行われることにより、管本体11の内部空間が減圧状態にされる。なお、管本体11の開口端20に接合された状態において、シート12において外側へ向く面が「表面」と称され、管本体11の内部空間へ向く面が「裏面」と称される。つまり、シート12は、裏面側が開口端20に接合されている。シート12の表面が、本発明における第1面に相当する。
【0055】
図2に示されるように、シート12は、開口端20の外径と同等の外径を有する円盤形状の薄膜である。シート12は、管本体11の内部空間を気密に保持するために、ガスバリアー性を有する。また、シート12は、管本体11の内部空間に貯留された血液などの液体を通過させず、かつ液体に対して耐性を有する。また、シート12は、採血管ホルダに取り付けられた採血針によって刺通可能なものである。このようなシート12は、例えば、アルミニウムとポリエチレンとのラミネートフィルムにより実現されるが、その他の樹脂シートや複合シートなどが用いられてもよい。管本体11の開口端20とシート12との接合は、後述されるイージーピールにより実現される。また、シート12とキャップ14との接合が溶着により実現されるのであれば、シート12の表面は、キャップ14と溶着可能な素材であることが好ましい。
【0056】
(ゴム片13)
図1及び図2に示されるように、ゴム片13は、シート12の表面に取り付けられている。ゴム片13は、概ね円盤形状をなしており、その外径は、シート12の外径より十分に小さい。ゴム片13の中央部分には、凹陥部21が形成されており、この凹陥部21によってゴム片13の中央部分が上下方向(軸線方向101)に対して薄肉とされている。この凹陥部21は、採血針が容易に貫通されるためのものである。
【0057】
図1及び図3に示されるように、ゴム片13は、その中央をシート12の中央に合わせてシート12の表面に配置されて、シート12と接合されている。シート12とゴム片13との接合は、公知の接着剤などによって実現される。この接合によって、シート12の表面にゴム片13が積層される。前述されたように、ゴム片13の外径はシート12の外径に対して十分に小さいので、この配置によって、図1及び図3に示されるように、シート12に積層されたゴム片13の周囲において、シート12の表面が露出されている。
【0058】
前述されたように、ゴム片13は、採血針を刺通可能なものである。また、ゴム片13は、採血針が抜かれた後に採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである。このようなゴム片13の特性は、天然ゴムやイソプロピレンゴム、シリコンゴムなどの公知のゴムによって実現される。また、ゴム以外であっても、加硫エラストマーや熱可塑性エラストマーなどの弾性材料によって実現されてもよい。
【0059】
(キャップ14)
図1及び図2に示されるように、キャップ14は、円環形状の天板22と円筒形状の胴部23とを主要構成とする。天板22及び胴部23は、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を主原料として一体に成形され得る。
【0060】
図2に示されるように、天板22は、管本体11の開口端20の外径より若干大きな外径を有する。したがって、図6に示されるように、天板22の中央が開口端20の中央に合致された配置において、天板22の周縁は管本体11の開口端20より外側へ突出する。この天板22の周縁から下方へ胴部23が延出されている。これにより、図1及び図5に示されるように、キャップ14が管本体11の開口端20に外嵌され、胴部23が管本体11の外周面に沿って下方へ延出される。つまり、管本体11の周囲を胴部23が囲む。なお、この胴部23の筒形状は、管本体11の外径に合わせて変更可能である。また、各図には示されていないが、キャップ14を管本体11から外しやすいように、胴部23の外周面に滑り止めのための凹凸形状などが形成されてもよい。
【0061】
図7に示されるように、胴部23の内面には環状の膨出部25が形成されている。膨出部25は、胴部23の内面から径方向内側へ向かって均等に突出されている。膨出部25の内径は、管本体11の外径より若干小さい。したがって、管本体11の開口端20にキャップ14が外嵌されると、膨出部25付近において、胴部23が若干外側へ弾性変形され、その反力によって膨出部25が管本体11の外周面に圧接される。これにより、キャップ14が管本体11に圧着されて、キャップ14が管本体11から容易に脱離しない。
【0062】
図2及び図6に示されるように、キャップ14は、管本体11の開口端20にシート12が接合されて、そのシート12の周縁を覆うようにして開口端20に嵌められている。このようにして、管本体11にキャップ14が外嵌されると、管本体11の外周面側に露出されたシート12と開口端20との接合境界のすべてがキャップ14によって覆われる。
【0063】
図1及び図2に示されるように、天板22には、その中央部分に開口24が形成されている。開口24は、天板22を厚み方向(軸線方向101)へ貫通している。開口24の内径は、管本体11の内径と同等である。図1、図3及び図6に示されるように、管本体11の開口端20にキャップ14が外嵌されると、天板22がシート12の表面の周囲に接触し、シート12の中央部分が天板22の開口24から外部へ露出される。つまり、開口24によってシート12の表面の一部が外部へ露出される。
【0064】
前述されたように、キャップ14の開口24から露出されるシート12の表面の露出部分は、シート12の中央部分である。また、前述されたように、ゴム片13は、その中央がシート12の中央に合致するように配置されている。そして、ゴム片13の外径は、開口24の内径より十分に小さい。したがって、シート12に積層されたゴム片13は、キャップ14の開口24より内側に配置されて、開口24を通じて外部へ露出される。また、そのゴム片13の全周囲におけるシート12の表面も、開口24を通じて外部へ露出される。
【0065】
(管本体11、シート12及びキャップ14の接合)
図7に示されるように、キャップ14が管本体11の開口端20に外嵌されると、開口端20に接合されたシート12の周縁が、開口端20とキャップ14の天板22とによって挟み込まれる。前述されたように、天板22に形成された開口24の内径と管本体11の内径とは同等なので、天板22とシート12とが接合する領域の面積と、シート12と開口端20とが接合する領域の面積は同等である。これら各々の接合する領域において、開口端20とシート12とが接合され、シート12と天板22とが接合されている。管本体11の開口端20とシート12との接合によって、管本体11がシート12によって気密且つ液密に閉塞される。
【0066】
前述された各接合において、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1は、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱い(I1<I2)。具体的には、開口端20とシート12とはイージーピールにより接合されている。イージーピールとは、食品包装などで用いられている公知のシール手法であり、剥離形態によって、界面剥離、凝集剥離、層間剥離に分類される。また、イージーピールの剥離強度は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値がおよそ1〜15N/15mmの範囲である。これに対し、シート12とキャップ14の天板22との接合は、溶着又は接着により実現されている。この溶着又は接着などの接合方法は、例えば、JIS Z 0238によるシートヒール強度に準じて測定された測定値が15N/15mmより十分に大きければ公知の接合方法が任意に採用され得る。
【0067】
[採血管10の使用方法]
以下に、採血管10の使用方法が説明される。
【0068】
(採血)
採血管10は、周知の採血針ホルダに装着されることによって、採血針がゴム片13及びシート12を貫通する。そして、管本体11の内部空間の減圧状態により生じる吸引力によって、採血針を通じて管本体11の内部空間に血液が吸引される。吸引された血液102は、管本体11の内部空間に貯留される。そして、所定量の血液102が管本体11に吸引されると、採血管10が採血針ホルダから取り外される。シート12において採血針により形成された刺通路は液密に閉塞されないが、ゴム片13において採血針により形成された刺通路は液密に閉塞される。これにより、採取された血液102が採血管10から漏出することがない。採血後は、必要に応じて、採血管10の血液102に対して遠心分離などの処理が行われる。例えば、遠心分離が施されることによって、採血管10の血液102が血清成分と、それ以外の血球成分などとに分離される。
【0069】
(手作業による開栓)
図8に示されるように、採血管10の血液102や血清成分を採取するために、採血管10を手で開栓する場合には、管本体11からキャップ14が外される。管本体11からキャップ14を外すには、キャップ14が管本体11から若干浮き上がるように、キャップ14を押し上げたり、管本体11に対してキャップ14を相対的に捻ったりすればよい。例えば、軸線方向101に沿ってキャップ14を管本体11から浮きがあるように移動させると、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とに挟み込まれて双方とそれぞれ接合されたシート12には、軸線方向101に引っ張られる。つまり、シート12の表面と裏面とが軸線方向101に沿って相反する向きへ引っ張られる力が作用する。また、例えば、軸線方向101を軸として相対的に回転するように、管本体11又はキャップ14が捻られると、この捻りによって、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とに挟み込まれて双方とそれぞれ接合されたシート12は、その表面に沿った方向に捻られる。つまり、シート12の表面と裏面とが相反する向きへ回転する力が作用する。
【0070】
前述されたように、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1は、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱い(I1<I2)ので、管本体11からキャップ14が外されると、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に、管本体11の開口端20からシート12が剥がれる。これにより、作業者は、シート12を直接触ることなく、管本体11の開口端20からシート12を剥離して、採血管10を開栓する。
【0071】
キャップ14を管本体11に対して若干浮かすようにしたり、管本体11に対して相対的に捻るようにしたりして、キャップ14が管本体11から外れる過程において、管本体11の開口端20からシート12が剥がれるときには、キャップ14は、管本体11から完全に外される前であって、図6に示されるように、管本体11の開口端20に外嵌された状態に近い。したがって、開口端20とシート12との接合境界は、キャップ14によって覆われている。これにより、開口端20からシート12が剥がれる際に、外部の大気が管本体11の内部空間へ急激に進入して、管本体11の血液102が飛散して、血液102の飛沫が開口端20とシート12との隙間から管本体11の外部へ飛び出したとしても、その血液102の飛沫は、キャップ14の内面に付着する。
【0072】
また、図8に示されるように、採血管10を開栓する際には、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に管本体11の開口端20からシート12が剥がれるので、天板22の開口24は、シート12で閉塞されたままである。したがって、キャップ14を再び管本体11の開口端20に外嵌させると、管本体11の開口端20をキャップ14で覆うことができる。これにより、採血管10に残った血液102に塵埃などが混入することがない。また、再び管本体11がキャップ14で覆われた状態で、採血管10を冷凍庫などに保管すれば、採血管10に残った血液102を保存することができる。
【0073】
(開栓装置による開栓)
採血管10の血液102や血清成分を採取するために、採血管10を開栓装置を用いて開栓する場合には、採血管10を開栓装置にセットする。図9及び図10に示されるように、開栓装置には、管本体11の内径やゴム片13の配置に対応した開栓カッター103及び保持ピン104が設けられている。開栓カッター103は、保持ピン104を囲む概ね円筒形状をなしており、その先端がシート12を打ち抜き可能な山形状の刃に加工されている。
【0074】
開栓装置が動作されると、保持ピン104の直下にゴム片13が位置するように、採血管10が位置決めされ、図9に示されるように、開栓カッター103及び保持ピン104が、採血管10に対して降下される。これにより、保持ピン104がゴム片13を刺し通す。また、開栓カッター103が、ゴム片13の周囲においてシート12を打ち抜く。前述されたように、ゴム片13の周囲において、シート12がキャップ14の開口24を通じて外部へ露出されているので、開栓カッター103は、キャップ14の開口24を通じてシート12を打ち抜くことができる。そして、開栓カッター103及び保持ピン104が採血管10に対して上昇されると、打ち抜かれたシート12は、ゴム片13とともに保持ピン104によって上昇され、その下方にシート12が打ち抜かれて開栓された採血管10が残る。このようにして、開栓装置を用いて採血管10が開栓される。
【0075】
[第1実施形態の作用効果]
前述されたように、採血管10によれば、管本体11の開口端20にはシート12が接合されて閉塞され、そのシート12の上側からキャップ14が外嵌され、キャップ14の天板22に形成された開口24から、ゴム片13とシート12の表面の一部が外部へ露出されているので、開栓装置の開栓カッターが、キャップ14の開口24を通じてシート12に接触して、シート12を打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血管に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血管10が実現される。
【0076】
また、管本体11の開口端20とシート12とのシール強度I1が、シート12とキャップ14の天板22とのシール強度I2より弱く(I1<I2)、管本体11の開口端20に外嵌されたキャップ14が管本体11から外されると、キャップ14の天板22からシート12が剥がれる前に、管本体11からシート12が剥がれるので、作業者は、シート12を直接触ることなく、管本体11からシート12を剥離して採血管10を開栓することができる。これにより、作業者が手で採血管10を開栓する際に、血液102による汚染が生じ難い採血管10が実現される。また、手で開栓した後のキャップ14は、再び管本体11の開口端20に外嵌させることができ、キャップ14の天板22に形成された開口24は、シート12で閉塞されたままなので、管本体11を再栓できる採血管10が実現される。
【0077】
また、キャップ14の胴部23が、管本体11の外面に沿った円筒形状なので、管本体11の開口端20とシート12との境界がキャップ14の胴部23によって覆われる。そして、採血管10が開栓されるときにも、開口端20とシート12との境界は、キャップ14の胴部23によって覆われたままである。したがって、管本体11の開口端20からシート12が剥離されたときに、開口端20とシート12との隙間から管本体11内の血液102が飛散しても、飛散した血液102の飛沫はキャップ14の胴部23の内面に付着するので、作業者の手や周囲の環境が血液102の飛沫で汚染されることがない。
【0078】
また、シート12は、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、シート12が開口端20及び天板22とそれぞれ接合されているので、採血管20が開栓される際に、例えばキャップ14が管本体11から若干浮き上がるように軸線方向101へ押し上げられると、管本体11とシート12とが接合された領域と、シート12とキャップ14の天板22とが接合された領域とが、キャップ14が移動する方向(軸線方向101)に沿って並ぶこととなる。したがって、シート12に対して、表面と直交する方向の剪断力が生じ難い。また、例えばキャップ14が管本体11に対して捻られると、管本体11の開口端20とキャップ14の天板22と挟み込まれた状態のままで、シート12がキャップ14の天板22と共に回転するので、シート12の表面と直交する方向の剪断力がシート12に対して生じ難い。したがって、管本体11からキャップ14が外されるときに、シート12が破断することなく、管本体11の開口端20からシート12が剥離される。
【0079】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態が説明される。なお、本実施形態において、単に「上側」又は「下側」と称される場合には、図12における軸線方向111が上下方向とされて、図12における上側が「上側」、図12における下側が「下側」である。
【0080】
(採血管30の概略構成)
図11から図15に示されるように、第2実施形態に係る採血管30は、管本体31と、管本体31の開口端40に外嵌されたキャップ32と、キャップ32の開口44を閉塞するシート33と、シート33に取り付けられたゴム片34とを主要な構成とする。本実施形態における管本体31が、本発明における容器に相当し、キャップ32が本発明におけるキャップに相当し、シート33が本発明におけるシートに相当し、ゴム片34が本発明における針刺用片に相当する。
【0081】
(管本体11)
図12に示されるように、管本体31は、円筒形状をなしている。図14に示されるように、管本体31は、下側が半球形状の底として閉塞されている。管本体31の上側は開口端40として開放されている。したがって、開口端40から管本体31の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。そして、図11などに示される姿勢に管本体31が維持されると、管本体31の内部空間に血液等の液体が貯留可能である。管本体31の開口端40は、円筒形状の管本体31の軸線方向111に対して直交する平面をなしている。この管本体31の開口端40が本発明における第1端に相当する。
【0082】
なお、管本体31の素材などは、第1実施形態における管本体11と同様であるので、ここでは詳細な説明が省略される。また、管本体31の内部空間に血清分離剤や凝固促進剤などの公知の薬剤が注入されてもよいことも第1実施形態と同様である。
【0083】
(キャップ32)
図11及び図12に示されるように、キャップ32は、円環形状の天板41と円筒形状の胴部42とを主要構成とする。天板41及び胴部42は、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を主原料として一体に成形され得る。
【0084】
図12に示されるように、天板41は、管本体31の開口端40の外径より若干大きな外径を有する。したがって、図16に示されるように、天板41の中央が開口端40の中央に合致された配置において、天板41の周縁は管本体31の開口端40より外側へ突出する。この天板41の周縁から下方へ胴部42が延出されている。これにより、図11及び図15に示されるように、キャップ32が管本体31の開口端40に外嵌され、胴部42が管本体31の外周面に沿って下方へ延出される。つまり、管本体31の周囲を胴部42が囲む。なお、この胴部42の筒形状は、管本体31の外径に合わせて変更可能である。また、各図には示されていないが、キャップ32を管本体31から外しやすいように、胴部42の外周面に滑り止めのための凹凸形状などが形成されてもよい。
【0085】
図17に示されるように、胴部42において軸線方向111の中央付近には、その上下側の厚みより肉厚の膨出部43が軸線方向111周りに環状に形成されている。この膨出部43は、胴部42の外面及び内面からそれぞれ径方向へ膨出されている。図18に示されるように、胴部42の内面においては、膨出部43は、径方向内側へ向かって均等に膨出されている。胴部42の内面側における膨出部43の内径は、管本体31の外径より若干小さい。したがって、管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されると、膨出部43付近において、胴部42が若干外側へ弾性変形され、その反力によって膨出部43が管本体31の外周面に圧接される。これにより、キャップ32が管本体31に圧着されて、キャップ32が管本体31から容易に脱離しない。また、胴部42において、膨出部43より下側、つまり天板41に対して反対向きの先端側の内径は、管本体31の外径より若干大きい。つまり、胴部43において膨出部43より下側の厚みが薄肉とされている。なお、膨出部43は、キャップ32を管本体31に圧着させるためのものなので、胴部42の外面からは必ずしも膨出される必要はない。
【0086】
図11及び図17に示されるように、キャップ32が管本体31の開口端40に外嵌されると、開口端40に天板41が密着する。この密着状態は、前述されたように、キャップ32の胴部42と管本体31の外周面との圧接によって維持される。キャップ32の天板41と管本体31の開口端40との密着、及びキャップ32の胴部42と管本体31の外周面との圧接は、いずれも気密且つ液密である。
【0087】
図12に示されるように、天板41には、その中央部分に開口44が形成されている。開口44は、天板41を厚み方向(軸線方向111)へ貫通している。開口44の内径は、管本体31の内径と同等である。管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されると、天板41が管本体31の開口端40に密着し、開口端40と開口44とが軸線方向111を中心として連続する。つまり、管本体31にキャップ32が外嵌された状態において、開口端40及び開口44を通じて管本体31の内部空間へ血液等の液体が流入又は流出可能である。
【0088】
(シート33)
図11及び図12に示されるように、シート33は、キャップ32の天板41において外側となる表面(図11及び図12における上側)に接合されて開口44を閉塞する。シート33が開口44を閉塞することによって、管本体31の内部空間は液密且つ気密に維持される。シート33の接合が、減圧雰囲気下で行われることにより、管本体31の内部空間が減圧状態にされる。なお、キャップ32の天板41に接合された状態において、シート33において外側へ向く面が「表面」と称され、管本体31の内部空間へ向く面が「裏面」と称される。シート33の表面が、本発明における第1面に相当する。
【0089】
図12に示されるように、シート33は、キャップ32の天板41の外径と同等の外径を有する円盤形状の薄膜である。シート33の素材や特定は、第1実施形態におけるシート12と同様なので、ここでは詳細な説明が省略される。また、シート33とキャップ32の天板41との接合は、溶着や接着などの公知の接合手法が採用され得る。
【0090】
(ゴム片34)
図11及び図12に示されるように、ゴム片34は、シート33の表面に取り付けられている。ゴム片34は、概ね円盤形状をなしており、その外径は、シート33の外径より十分に小さく、また、キャップ32の開口44よりも小さい。ゴム片34の中央部分には、凹陥部45が形成されており、この凹陥部45によってゴム片34の中央部分が上下方向(軸線方向111)に対して薄肉とされている。この凹陥部45は、採血針が容易に貫通されるためのものである。
【0091】
図11及び図13に示されるように、ゴム片34は、その中央をシート33の中央に合わせてシート33の表面に配置されて、シート33と接合されている。シート33とゴム片34との接合は、公知の接着剤などによって実現される。この接合によって、シート33の表面にゴム片34が積層される。前述されたように、ゴム片34の外径はシート33の外径に対して十分に小さいので、この配置によって、図11及び図13に示されるように、シート33に積層されたゴム片34の周囲において、シート33の表面が露出されている。また、このゴム片34の周囲において露出されたシート33の表面の一部は、キャップ32の開口44より内側にある。
【0092】
前述されたように、ゴム片34は、採血針を刺通可能なものである。また、ゴム片34は、採血針が抜かれた後に採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである。このようなゴム片34の素材や特性は、第1実施形態におけるゴム片13と同様なので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0093】
[採血管30の使用方法]
以下に、採血管30の使用方法が説明される。
【0094】
(採血)
採血管30は、周知の採血針ホルダ及び採血針を用いて採血される。この採血方法は、第1実施形態と同様である。採血針がゴム片34及びシート33を貫通し、キャップ32の開口44及び管本体31の開口端40を通じて、管本体31の内部空間へ到達すると、その内部空間の減圧状態により生じる吸引力によって、採血針を通じて管本体31の内部空間に血液102が吸引される。
【0095】
(手作業による開栓)
採血管30の血液102や血清成分を採取するために、採血管30を手で開栓する場合には、管本体31からキャップ32が引き外される。キャップ32は、その膨出部43が管本体31の外周面に圧着されることによって管本体31に装着されているので、膨出部43と管本体31との摩擦抵抗より強い力でキャップ32が軸線方向111へ移動されると、管本体31からキャップ32が外れる。これにより、作業者は、シート33を直接触ることなく、管本体31の開口端40からシート33を剥離して、採血管30を開栓する。
【0096】
前述されたようにして、管本体31からキャップ32が外されるときに、キャップ32は管本体31に対して軸線方向111に移動される過程において、キャップ32の膨出部43が管本体31の外周面から離れる。これにより、キャップ32の胴部42において、膨出部43より下側の先端部分が、管本体31の外周面と接触しないか、接触したとしても、その隙間を気体が流通可能となる。これにより、キャップ32が管本体31から完全に引き抜かれる前に、管本体31とキャップ32の隙間を通じて、開口端40から管本体31の内部空間へ外気が流入する。換言すれば、このように外気が流入する際に、管本体31の開口端40はキャップ32に覆われている。これにより、外部の大気が管本体31の内部空間へ急激に進入して、管本体31の血液102が飛散して、血液102の飛沫が開口端40から管本体31の外部へ飛び出したとしても、その血液102の飛沫は、キャップ32の内面又はシート33の裏面に付着する。
【0097】
また、前述されたように採血管30を開栓する際には、キャップ32の天板41にはシート33が接合されて開口44が閉塞されたままである。したがって、キャップ32を再び管本体31の開口端40に外嵌させると、管本体31の開口端40をキャップ32で再栓することができる。これにより、採血管30に残った血液102に塵埃などが混入することがない。また、再び管本体31がキャップ32で密閉された状態で、採血管30を冷凍庫などに保管すれば、採血管30に残った血液102を保存することができる。
【0098】
(開栓装置による開栓)
採血管30の血液102や血清成分を採取するために、採血管30を開栓装置を用いて開栓する場合には、採血管30を開栓装置にセットする。図19及び図20に示されるように、開栓装置には、管本体31の内径やゴム片34の配置に対応した開栓カッター103及び保持ピン104が設けられている。開栓カッター103は、保持ピン104を囲む概ね円筒形状をなしており、その先端がシート33を打ち抜き可能な山形状の刃に加工されている。
【0099】
開栓装置が動作されると、保持ピン104の直下にゴム片34が位置するように、採血管30が位置決めされ、図19に示されるように、開栓カッター103及び保持ピン104が、採血管30に対して降下される。これにより、保持ピン104がゴム片34を刺し通す。また、開栓カッター103が、ゴム片34の周囲においてシート33を打ち抜く。前述されたように、ゴム片34の周囲において露出されたシート33の一部分は、キャップ32の開口44及び管本体31の開口端40の内側にあるので、開栓カッター103は、キャップ32の開口44を通じてシート33を打ち抜くことができる。そして、開栓カッター103及び保持ピン104が採血管30に対して上昇されると、打ち抜かれたシート33は、ゴム片34とともに保持ピン104によって上昇され、その下方にシート33が打ち抜かれて開栓された採血管30が残る。このようにして、開栓装置を用いて採血管30が開栓される。
【0100】
[第2実施形態の作用効果]
前述されたように、採血管30によれば、管本体31の開口端40にキャップ32が外嵌されて、管本体31の開口端40及び開口端41付近の外周面が覆われており、キャップ32の開口44及び開口端40を通じて、キャップ32の外側と管本体31の内部空間とが連続しており、キャップ32の開口44がシート33により閉塞されているので、開栓装置の開栓カッター103が、キャップ32の開口44に合わせてキャップ32の外側からシート33を打ち抜くことができる。これにより、シートタイプの採血管に対して汎用されている開栓装置を利用できる採血管30が実現される。
【0101】
また、キャップ32を管本体31から引き外すと、シート33及びゴム片34とともに、管本体31からキャップ32を取り外して開栓することができるので、作業者は、シート33を直接触ることなく、採血管30を開栓できる。これにより、作業者が手で開栓する際に血液による汚染が生じ難い採血管30が実現される。また、キャップ32は、再び管本体31の開口端40に外嵌させることができるので、再栓できる採血管30が実現される。
【0102】
なお、本実施形態においては、キャップ32が管本体31に外嵌されるものとしたが、キャップ32は、その一部が管本体31に内挿されて液密且つ気密に嵌合されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る採血管10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、採血管10の分解斜視図である。
【図3】図3は、採血管10の平面図である。
【図4】図4は、採血管10の底面図である。
【図5】図5は、採血管10の正面図である。
【図6】図6は、図3のVI−VI切断線における採血管10の断面構成を示す断面図である。
【図7】図7は、図6におけるキャップ14付近の拡大断面図である。
【図8】図8は、採血管10を手で開栓する作業を示す断面図である。
【図9】図9は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図10】図10は、採血管10を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係る採血管30の外観構成を示す斜視図である。
【図12】図12は、採血管30の分解斜視図である。
【図13】図13は、採血管30の平面図である。
【図14】図14は、採血管30の底面図である。
【図15】図15は、採血管30の正面図である。
【図16】図16は、図13のXVI−XVI切断線における採血管30の断面構成を示す断面図である。
【図17】図17は、図16におけるキャップ32付近の拡大断面図である。
【図18】図18は、採血管30を手で開栓する作業を示す断面図である。
【図19】図19は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【図20】図20は、採血管30を開栓装置で開栓する作業を示す断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10,30・・・採血管(採血器具)
11,31・・・管本体(容器)
12,33・・・シート
13,34・・・ゴム片(針刺用片)
14,32・・・キャップ
20,40・・・開口端(第1端)
22,41・・・天板
23,42・・・胴部
24,44・・・開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、
上記容器の第1端に接合されて上記開口を閉塞するシートと、
上記シートにおける上記容器の外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、
開口が形成された天板、及び当該天板から上記容器の外面に沿って延出された胴部を有し、当該天板の開口から上記針刺用片及び上記シートの第1面の一部が外部へ露出され、かつ当該天板が上記第1面に接合されて、上記容器の第1端に外嵌されたキャップと、を具備し、
上記容器と上記シートとのシール強度が、上記シートと上記キャップとのシール強度より弱い採血器具。
【請求項2】
上記容器と上記シートとの接合が、イージーピールにより実現されている請求項1に記載の採血器具。
【請求項3】
上記キャップの胴部は、上記容器の外面に沿った筒形状である請求項1又は2に記載の採血器具。
【請求項4】
上記シートは、上記容器の第1端と上記キャップの天板とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、上記容器及び上記天板とそれぞれ接合されている請求項1から3のいずれかに記載の採血器具。
【請求項5】
上記針刺用片は、上記容器の第1端に上記シートが接合された状態において、当該第1端の開口の内側に配置された請求項1から4のいずれかに記載の採血器具。
【請求項6】
上記容器の第1端に嵌合された上記キャップの天板の開口により露出される上記シートの露出部分に、上記シートの第1面のうち少なくとも上記針刺用片の周囲の部分のすべてが含まれる請求項5に記載の採血器具。
【請求項7】
上記容器は、その内部空間が上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態である請求項1から6のいずれかに記載の採血器具。
【請求項8】
開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、
上記容器の第1端に嵌合され、当該第1端の開口と連続する開口が形成されたキャップと、
上記キャップに接合されて当該キャップの開口を閉塞するシートと、
上記シートにおける上記キャップの外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、を具備する採血器具。
【請求項9】
上記針刺用片は、上記キャップの開口を上記シートが閉塞した状態において、当該開口と上記容器の開口とが連続する空間の内側に配置された請求項8に記載の採血器具。
【請求項10】
上記容器は、その内部空間が上記キャップ及び上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態である請求項8又は9に記載の採血器具。
【請求項11】
上記針刺用片は、採血針を刺通可能なものであって、かつ採血針が抜かれた後に当該採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである請求項1から10のいずれかに記載の採血器具。
【請求項1】
開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、
上記容器の第1端に接合されて上記開口を閉塞するシートと、
上記シートにおける上記容器の外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、
開口が形成された天板、及び当該天板から上記容器の外面に沿って延出された胴部を有し、当該天板の開口から上記針刺用片及び上記シートの第1面の一部が外部へ露出され、かつ当該天板が上記第1面に接合されて、上記容器の第1端に外嵌されたキャップと、を具備し、
上記容器と上記シートとのシール強度が、上記シートと上記キャップとのシール強度より弱い採血器具。
【請求項2】
上記容器と上記シートとの接合が、イージーピールにより実現されている請求項1に記載の採血器具。
【請求項3】
上記キャップの胴部は、上記容器の外面に沿った筒形状である請求項1又は2に記載の採血器具。
【請求項4】
上記シートは、上記容器の第1端と上記キャップの天板とによって挟み込まれており、その挟み込まれた部分において、上記容器及び上記天板とそれぞれ接合されている請求項1から3のいずれかに記載の採血器具。
【請求項5】
上記針刺用片は、上記容器の第1端に上記シートが接合された状態において、当該第1端の開口の内側に配置された請求項1から4のいずれかに記載の採血器具。
【請求項6】
上記容器の第1端に嵌合された上記キャップの天板の開口により露出される上記シートの露出部分に、上記シートの第1面のうち少なくとも上記針刺用片の周囲の部分のすべてが含まれる請求項5に記載の採血器具。
【請求項7】
上記容器は、その内部空間が上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態である請求項1から6のいずれかに記載の採血器具。
【請求項8】
開口された第1端を有し、内部空間に血液を貯留可能な容器と、
上記容器の第1端に嵌合され、当該第1端の開口と連続する開口が形成されたキャップと、
上記キャップに接合されて当該キャップの開口を閉塞するシートと、
上記シートにおける上記キャップの外側となる第1面に対して、その周囲において第1面が露出されるように積層された針刺用片と、を具備する採血器具。
【請求項9】
上記針刺用片は、上記キャップの開口を上記シートが閉塞した状態において、当該開口と上記容器の開口とが連続する空間の内側に配置された請求項8に記載の採血器具。
【請求項10】
上記容器は、その内部空間が上記キャップ及び上記シートによって気密に保持され、かつその内部空間が大気圧に対して減圧状態である請求項8又は9に記載の採血器具。
【請求項11】
上記針刺用片は、採血針を刺通可能なものであって、かつ採血針が抜かれた後に当該採血針によって形成された刺通路を液密に閉塞可能なものである請求項1から10のいずれかに記載の採血器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−94356(P2010−94356A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268682(P2008−268682)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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