接合体の製造方法、接合体及び金属製品
【課題】第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造可能な接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を接合して接合体を形成する接合体形成工程を含み、当該接合体形成工程は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に縦弾性係数及び硬度が比較的低い第3金属部材16を介在させた状態で各金属部材を固相接合する固相接合工程と、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面近傍に第1硬度遷移領域13が形成され、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面近傍に第2硬度遷移領域15が形成されるように熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とを含む接合体の製造方法。
【解決手段】第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を接合して接合体を形成する接合体形成工程を含み、当該接合体形成工程は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に縦弾性係数及び硬度が比較的低い第3金属部材16を介在させた状態で各金属部材を固相接合する固相接合工程と、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面近傍に第1硬度遷移領域13が形成され、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面近傍に第2硬度遷移領域15が形成されるように熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とを含む接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法、接合体及び金属製品に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図11は、従来の接合体の製造方法を説明するために示す図である。図11(a)は金属部材準備工程S91を説明するために示す図であり、図11(b)及び図11(c)は接合体形成工程S92を説明するために示す図であり、
【0003】
従来、複数の金属部材を接合して接合体を製造する接合体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の接合体の製造方法は、特にCrを含有する鉄鋼部材を接合して接合体を製造するのに適した方法であり、具体的には、図10及び図11に示すように、第1の金属材料からなる第1金属部材92と、第2の金属材料からなる第2金属部材94とを準備する金属部材準備工程S91と、第1金属部材92及び第2金属部材94を接合して接合体を形成する接合体形成工程S92とをこの順序で含み、接合体形成工程S92は、第1金属部材92及び第2金属部材94が溶融しない温度条件下で第1金属部材92及び第2金属部材94を固相接合する固相接合工程S92aと、接合した第1金属部材92及び第2金属部材94を所定条件の下で加熱及び徐冷することにより、2つの金属部材の間の接合力を強化する接合力強化工程S94bとをこの順序で含む。
【0004】
従来の接合体の製造方法によれば、接合体の接合力を低下させる原因となる空隙や不動態層(金属部材がCrを含有する場合にはCr含有不動態層)を金属組織が変態する過程で消散させることが可能となり、その結果、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。また、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間(例えば、熱交換媒体を流す熱交換流路)を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。このようにして製造した接合体は、各種金型、各種工具、各種構造部材等の金属製品に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/129622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した方法により製造した接合体は、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生しない条件でこれを使用する場合には十分に高い接合力を維持できる。しかしながら、上記した方法で製造した接合体は、これに焼き入れ処理を施すことにより硬度を高くしてこれを使用する場合においては、焼き入れ処理により第1金属部材と第2金属部材の硬度が高くなるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で当該接合体を使用した場合に、温度差に起因して発生する熱応力が接合力の限界を超えてしまい、接合体が破損してしまう場合があるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造可能な接合体の製造方法を提供することを目的とする。また、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を提供することを目的とする。さらにまた、本発明の接合体を用いた金属製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の接合体の製造方法は、第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを準備する金属部材準備工程と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を接合して接合体を形成する接合体形成工程とをこの順序で含み、前記接合体形成工程は、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が溶融しない温度条件下で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を固相接合する固相接合工程と、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が形成され、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が形成される温度条件下で熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の接合体の製造方法により製造される接合体においては、第1金属部材と第2金属部材との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数(ヤング率ともいう。)及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材が存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0010】
また、本発明の接合体の製造方法により製造される接合体においては、第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間には、上記した第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域がそれぞれ存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0011】
その結果、本発明の接合体の製造方法によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力が、これら第1硬度遷移領域、第3金属部材及び第2硬度遷移領域の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明の接合体の製造方法によれば、接合体形成工程中に硬度遷移領域形成工程を実施する中で金属部材の接合面に存在する空隙や不動態層を消散させることが可能となるため、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。
【0013】
また、本発明の接合体の製造方法によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、複雑な形状の内部空間を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0014】
なお、本発明の接合体の製造方法は、4層以上の金属部材が接合された構造の接合体を製造する場合にも適用することが可能である。この場合、4層以上の層のうち本発明の条件を満たす3層に着目すれば、本発明の接合体の製造方法を実施することになる。
【0015】
第3の金属材料は、第1金属部材及び第2金属部材の硬度を高くするための熱処理(例えば、焼入れ処理)によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなることが好ましい。この場合、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0016】
[2]本発明の接合体の製造方法においては、前記第1硬度遷移領域は、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、前記第2硬度遷移領域は、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0017】
このような方法とすることにより、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域の厚さを十分に確保し、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力を、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において十分に分散することが可能となる。
【0018】
なお、上記の観点からは、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って100μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って100μm以上の厚さを有することが一層好ましく、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って200μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って200μm以上の厚さを有することがより一層好ましい。
また、接合体全体の機械的強度を一層高くするという観点からは、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0019】
[3]本発明の接合体の製造方法においては、前記硬度遷移領域形成工程においては、前記第3金属部材内であって前記第1硬度遷移領域と前記第2硬度遷移領域との間に、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すことが好ましい。
【0020】
このような方法とすることにより、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が残るため、第3金属部材に緩衝材としての働きを十分に発揮させることが可能となる。
【0021】
[4]本発明の接合体の製造方法においては、前記硬度定常領域は、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0022】
このような方法とすることにより、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が十分に残るため、第3金属部材に緩衝材としての働きを一層十分に発揮させることが可能となる。
【0023】
なお、上記の観点からは、硬度定常領域が第1硬度遷移領域から第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って60μm以上の厚さを有することが一層好ましく、100μm以上の厚さを有することがより一層好ましい。
また、接合体全体の機械的強度を一層高くするという観点からは、硬度定常領域が第1硬度遷移領域から第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って3mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0024】
[5]本発明の接合体の製造方法においては、前記第3金属部材の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあることが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが可能となり、かつ、全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが可能となる。
【0026】
なお、本発明において、第3金属部材の最小厚みを0.3mm〜10.0mmの範囲内としたのは、当該厚みが0.3mmより小さい場合には固相接合後に第3金属部材が第1金属部材及び第2金属部材に吸収されてしまい、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが困難となる場合があるためであり、当該厚みが10.0mmより大きい場合には接合体全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが困難となる場合があるためである。この観点からは、第3金属部材の最小厚みが0.5mm〜5.0mmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0027】
なお、上記[5]に記載した第3金属部材の厚みは、金属部材準備工程時のものである。
【0028】
[6]本発明の接合体の製造方法においては、前記接合体形成工程より後に、前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部に対して、前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材を溶融させながら被覆する被覆工程をさらに含み、前記被覆工程においては、前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が形成され、前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が形成され、前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が形成される条件で前記第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0029】
このような方法とすることにより、第4金属部材と第3金属部材との境界面の近傍に第3硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0030】
また、上記[6]の方法によれば、被覆工程においては第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0031】
なお、第1金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第1金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第1金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第6硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第2金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第2金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第7硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0032】
第1金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第1金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第2金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0033】
本発明の接合体の製造方法においては、被覆工程より後に、被覆工程で第4金属部材を被覆した部分を平滑化する平滑化工程をさらに含むことが好ましい。このような方法とすることにより、表面が平滑な接合体を製造することが可能となる。
【0034】
[7]本発明の接合体の製造方法においては、前記第4金属部材は、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなることが好ましい。
【0035】
一般的に、縦弾性係数が低い金属材料は硬度も低くなる傾向にあり、製造した接合体において第3金属部材が露出していると、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうことが考えられる。
【0036】
一方、上記[7]の方法によれば、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材で第3金属部材を覆うことになるため、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうのを防ぐことが可能な接合体を製造することが可能となる。
【0037】
[8]本発明の接合体の製造方法においては、前記接合体形成工程と前記被覆工程との間に、前記露出部分のうち少なくとも一部を含むように、前記接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程をさらに含み、前記被覆工程においては、前記表面切削工程で削り取った部分を前記第4金属部材で埋めるように前記第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、第3金属部材を含む表面が周りの面よりも低くなるため、被覆工程において第4金属部材を容易に被覆することが可能となる。
【0039】
また、上記[8]の方法によれば、内部の接合面よりも接合の強度が低い可能性がある表面の接合面を削り取り、製造する接合体全体としての機械的強度を向上させることが可能となる。
【0040】
なお、表面切削工程において表面を削り取る深さ寸法は、製造する接合体に応じて任意の寸法とすることができるが、第3金属部材の厚さ寸法よりも大きい寸法(例えば、第3金属部材の厚さ寸法の2倍〜6倍)とすることが好ましい。
【0041】
[9]本発明の接合体の製造方法においては、前記被覆工程より後に、前記接合体に蓄積されている応力を緩和するために前記接合体に熱処理を施す熱処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0042】
このような方法とすることにより、接合体に蓄積されている応力を緩和し、接合体全体としての接合力を高めることが可能となる。
【0043】
また、上記[9]の方法によれば、上記熱処理により各硬度遷移領域の範囲を大きくし、各金属部材間に発生する応力がより一層分散されるようにすることが可能となる。
【0044】
なお、上記のような熱処理としては、焼きなましを含む熱処理を例示することができる。また、製造する接合体全体として高い硬度を得たい場合には、焼きなましの後に焼入れ等を行ってもよい。
【0045】
[10]本発明の接合体は、第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に位置し、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを備え、前記第3金属部材が前記第1金属部材と前記第2金属部材とに固相接合された構造を有する接合体であって、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が存在し、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が存在することを特徴とする。
【0046】
本発明の接合体においては、第1金属部材と第2金属部材との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数(ヤング率ともいう。)及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0047】
また、本発明の接合体においては、第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間には、上記した第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域がそれぞれ存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0048】
その結果、本発明の接合体によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力がこれら第1硬度遷移領域、第3金属部材及び第2硬度遷移領域の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0049】
また、本発明の接合体によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間を有しても比較的容易に製造することが可能な接合体となる。
【0050】
なお、本発明の接合体は、4層以上の金属部材が接合された構造の接合体にも適用することが可能である。この場合、4層以上の層のうち本発明の条件を満たす3層に着目すれば、本発明の接合体であるということになる。
【0051】
第3の金属材料は、第1金属部材及び第2金属部材の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなることが好ましい。この場合、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0052】
[11]本発明の接合体においては、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材をさらに備え、前記第4金属部材が、前記第3金属部材の少なくとも一部を被覆する構造を有し、前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が存在し、前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が存在し、前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が存在することが好ましい。
好ましい。
【0053】
このような構成とすることにより、第4金属部材と第3金属部材との境界面の近傍に第3硬度遷移領域が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0054】
また、上記[11]の構成によれば、上記したような第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0055】
なお、第1金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第1金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第1金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第6硬度遷移領域が存在することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第2金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第2金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第7硬度遷移領域が存在することが好ましい。
【0056】
第1金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第1金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないように接合されていることが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第2金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないように接合されていることが好ましい。
【0057】
[12]本発明の金属製品は、上記[10]又は[11]に記載の接合体を用いて製造されたものである。
【0058】
本発明の金属製品によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる本発明の接合体を用いて製造されたため、大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難い金属製品となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図2】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すグラフである。
【図4】実施形態1に係る接合体10を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係る接合体10における硬度の分布を説明するために示す図である。
【図6】実施例に係る接合体10a(全体は図示せず。)を説明するために示す写真である。
【図7】実施例に係る接合体10aを説明するために示すグラフである。
【図8】実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図9】実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図10】従来の接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図11】従来の接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の接合体の製造方法、接合体及び金属製品について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0061】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図2は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は金属部材準備工程S1を説明するために示す図であり、図2(b)及び図2(c)は接合体形成工程S2を説明するために示す図であり、図2(d)は表面切削工程S3を説明するために示す図であり、図2(e)は被覆工程S4を説明するために示す図であり、図2(f)は平滑化工程S6を説明するために示す図である。なお、図2(a)〜図2(f)の各図は、接合体10となる部分の一部(後述する図4の符号B参照。)を示す模式図である。また、図2においては、熱交換流路19の図示を省略している。さらにまた、図2においては、熱処理工程S5についての図示を省略している。
図3は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すグラフである。図3中、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。
【0062】
まず、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明する。
実施形態1に係る接合体の製造方法は、接合体10(図4参照。)を製造するための方法である。
【0063】
実施形態1に係る接合体の製造方法は、金属部材準備工程S1と、接合体形成工程S2と、表面切削工程S3と、被覆工程S4と、熱処理工程S5と、平滑化工程S6とをこの順序で含む。以下、各工程について説明する。
【0064】
1.金属部材準備工程S1
金属部材準備工程S1は、第1の金属材料からなる第1金属部材12と、第2の金属材料からなる第2金属部材14と、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16とを準備する工程である(図2(a)参照。)。
【0065】
第1の金属材料、第2の金属材料及び第3の金属材料は、それぞれCrを含有する鉄鋼材料からなる。さらにいえば、第1の金属材料及び第2の金属材料は工具鋼からなり、第3の金属材料は、ステンレス鋼からなる。なお、実施形態1においては、第1の金属材料と第2の金属材料とは同一の金属材料からなる。工具鋼としては、例えば、熱間ダイス鋼であるSKD61を用いることができる。ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lを用いることができる。SUS316Lは、硬度を高めるための熱処理(例えば、焼入れ処理)によっては硬度が高くなりにくい金属材料である。
【0066】
実施形態1においては、第1の金属材料の熱膨張率と第3の金属材料の熱膨張率との差は、例えば、1×10−6m/K〜5×10−6m/Kの範囲内にあり、第2の金属材料の熱膨張率と第3の金属材料の熱膨張率との差も、例えば、1×10−6m/K〜5×10−6m/Kの範囲内にある。また、第1の金属材料の縦弾性係数と第3の金属材料の縦弾性係数との差は、例えば、10GPa〜20GPaの範囲内にあり、第2の金属材料の縦弾性係数と第3の金属材料の縦弾性係数との差も、例えば、10GPa〜20GPaの範囲内にある。
【0067】
第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16のそれぞれの接合予定面(第1金属部材12と第3金属部材16とが向かい合う部分と、第2金属部材14と第3金属部材16とが向かい合う部分)における算術平均荒さは、例えば、0.2μm以下である。
第3金属部材16の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあり、さらにいえば0.5mm〜5.0mmの範囲内にあり、例えば、1.0mmである。なお、実施形態1においては、各接合予定面は平面であり、各金属部材は平板状の形状(円柱を輪切りにしたような形状)を有する。
【0068】
2.接合体形成工程S2
接合体形成工程S2は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を接合して接合体を形成する工程である(図2(b)及び図2(c)参照。)。
【0069】
接合体形成工程S2は、固相接合工程S2aと硬度遷移領域形成工程S2bとをこの順序で含む。
固相接合工程S2aは、図3に示すように、第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16に所定の圧力をかけ、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16が溶融しない温度条件下(第1温度T1)で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を固相接合する工程である。実施形態1において、固相接合工程S2aは、各金属部材を積層して所定の圧力をかけた上で第1温度T1に加熱し、その後徐冷することにより実施する。
【0070】
硬度遷移領域形成工程S2bは、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面の近傍に第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第1金属部材12から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域13が形成され、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面の近傍に第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第2金属部材14から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域15が形成される温度条件下で熱処理を施す工程である。
【0071】
実施形態1においては、硬度遷移領域形成工程S2bは、まず、固相接合工程S2a後に残留している応力を開放して金属組織を均一化するために、接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷する。その後、接合体を第2温度T2に加熱した後、接合体を第3温度T3まで徐冷することにより実施される。第1温度T1、第2温度T2、第3温度T3及び第4温度T4は、固相接合する金属部材を構成する金属材料の種類によって適宜選択することが可能であるが、第1温度T1は、例えば、850℃〜1150℃の範囲内にあり、第4温度T4は、例えば、1000℃〜1150℃の範囲内にあり、第2温度T2は、例えば、800℃〜1150℃の範囲内にあり、第3温度T3は、例えば、600℃以下である。
【0072】
第1硬度遷移領域13は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、一層好ましくは100μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは200μm以上の厚さを有する。第2硬度遷移領域15は、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、一層好ましくは100μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは200μm以上の厚さを有する。また、第1硬度遷移領域13は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましく、第2硬度遷移領域15は、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0073】
硬度遷移領域形成工程S2bにおいては、第3金属部材16内であって、第1硬度遷移領域13と第2硬度遷移領域15との間に、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域(つまり、第3金属部材16のうち、第1硬度遷移領域13と第2硬度遷移領域15との間の部分)が残る条件で熱処理を施す。
硬度定常領域は、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有し、一層好ましくは60μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは100μm以上の厚さを有する。また、硬度定常領域は、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って3mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0074】
なお、実施形態1における硬度遷移領域形成工程S2bにおいては、固相接合工程S2a後に残留している応力を開放して金属組織を均一化するために、接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷したが、本発明はこれに限定されるものではない。固相接合工程後に残留している応力が十分に小さい場合には、「接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷する」という工程を行わなくてもよい。
【0075】
3.表面切削工程S3
表面切削工程S3は、第3金属部材16が接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部を含むように、接合体の表面を部分的に削り取る工程である(図2(d)参照。)。
【0076】
実施形態1においては、断面形状が半円形となる溝状の凹部ができるように切削工程を行う。表面切削工程S3において表面を削り取る深さの寸法は、第3金属部材16の厚さの寸法よりも深く、第3金属部材16の厚さの寸法の2倍〜6倍である。
【0077】
4.被覆工程S4
被覆工程S4は、露出部分のうち少なくとも一部に対して、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16が接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材20を溶融させながら被覆する工程である(図2(e)参照。)。つまり、被覆工程S4は液相接合を行う工程であるともいえる。
第4金属部材20は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる。第4の金属材料は、工具鋼からなり、例えば、熱間ダイス鋼であるSKD61を用いることができる。なお、実施形態1においては、第4の金属材料と、第1の金属材料及び第2の金属材料とは同一の金属材料からなる。
【0078】
被覆工程S4においては、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に、第4金属部材20から第3金属部材16に向かう方向に沿って第4金属部材20から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域21が形成され、第4金属部材20と第1硬度遷移領域13との境界面の近傍に、第4金属部材20から第1硬度遷移領域13に向かう方向に沿って第4金属部材20から第1硬度遷移領域13にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域23が形成され、第4金属部材20と第2硬度遷移領域15との境界面の近傍に、第4金属部材20から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って第4金属部材20から第2硬度遷移領域15にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域25が形成される条件で第4金属部材20を被覆する。
【0079】
実施形態1においては、第1金属部材12と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材20を被覆する。また、第2金属部材14と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材20を被覆する。
被覆工程S4においては、表面切削工程S3で削り取った部分を第4金属部材20で埋めるように第4金属部材20を被覆する。
【0080】
5.熱処理工程S5
熱処理工程S5は、接合体に蓄積されている応力を緩和するために接合体に熱処理を施す工程である。接合体に蓄積されている応力を緩和するための熱処理としては、周知の方法である焼きなましを含む熱処理を用いることができる。なお、製造する接合体全体として高い硬度を得たいときには、焼きなましの後に焼入れ等を行ってもよい。
【0081】
6.平滑化工程S6
平滑化工程S6は、被覆工程S4で第4金属部材20を被覆した部分を平滑化する工程である(図2(f)参照。)。平滑化は、研磨や切削等、種々の方法で行うことができる。以上の工程により、接合体10を製造することができる。
【0082】
次に、接合体10について説明する。
図4は、実施形態1に係る接合体10を説明するために示す図である。図4(a)は接合体10の斜視図であり、図4(b)は接合体10の上面図であり、図4(c)は図4(b)のA−A断面図である。なお、図4(b)及び図4(c)においては、視点位置からは直接見えない熱交換流路19について点線で表示している。
図5は、実施形態1に係る接合体10における硬度の分布を説明するために示す図である。図5においては、硬度が高い部分を濃い色で図示し、硬度が低い部分を薄い色で図示している。なお、図5における破線は、固相接合又は被覆の時点における金属部材同士の接合面又は境界面を大まかに表すものであり、硬度の分布を表すものではない。
【0083】
接合体10は、成形金型の一部として用いる金属製品であり、接合体10は実施形態1に係る金属製品であるともいえる。接合体10は、内部に熱交換媒体を流して熱交換をおこなうための熱交換流路19を有する。当該熱交換流路19のうち、第1金属部材12と第2金属部材14とにまたがる部分については、あらかじめ第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を削り取り、その後固相接合することにより形成したものである。熱交換流路19のうち、それ以外の部分(例えば、金属部材14の中を通る部分)については、広く用いられている穿孔手段(例えば、ドリル)を用いた穿孔により形成することができる。
【0084】
接合体10は、第1の金属材料からなる第1金属部材12と、第2の金属材料からなる第2金属部材14と、第1金属部材12と第2金属部材14との間に位置し、第1の金属材料及び第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16とを備え、第1金属部材12、第3金属部材16及び第2金属部材14が接合された構造を有する接合体である(全体図は図4を、詳細は図5をそれぞれ参照。)。
【0085】
接合体10は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面の近傍に第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第1金属部材12から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域13が存在し、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面の近傍に第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第2金属部材14から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域15が存在する(図5参照。)。
【0086】
接合体10は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材20をさらに備え、第4金属部材20が第3金属部材16の少なくとも一部を被覆する構造を有し、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に、第4金属部材20から第3金属部材16に向かう方向に沿って第4金属部材20から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域21が存在し、第4金属部材20と第1硬度遷移領域13との境界面の近傍に、第4金属部材20から第1硬度遷移領域13に向かう方向に沿って第4金属部材20から第1硬度遷移領域13にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域23が存在し、第4金属部材20と第2硬度遷移領域15との境界面の近傍に、第4金属部材20から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って第4金属部材20から第2硬度遷移領域15にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域25が存在する。
【0087】
また、接合体10においては、第1金属部材12と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないように接合されており、また、第2金属部材14と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないように接合されている。
【0088】
以下、実施形態1に係る接合体の製造方法、接合体及び金属製品の効果を記載する。
【0089】
実施形態1に係る接合体の製造方法により製造される接合体10においては、第1金属部材12と第2金属部材14との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16が存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0090】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法により製造される接合体10においては、第1金属部材12と第3金属部材16との間及び第2金属部材14と第3金属部材16との間には、上記した第1硬度遷移領域13及び第2硬度遷移領域15がそれぞれ存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0091】
その結果、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第1金属部材12と第2金属部材14との間に発生する熱応力が、これら第1硬度遷移領域13、第3金属部材16及び第2硬度遷移領域15の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0092】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、接合体形成工程S2中に硬度遷移領域形成工程S2bを実施する中で金属部材の接合面に存在する空隙や不動態層を消散させることが可能となるため、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。
【0093】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、複雑な形状の内部空間を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0094】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第3の金属材料は、第1金属部材12及び第2金属部材14の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなるため、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0095】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第1硬度遷移領域13が第1金属部材15と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域15が第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有するため、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域の厚さを十分に確保し、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力を、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において十分に分散することが可能となる。
【0096】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、硬度遷移領域形成工程S2bにおいて硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すため、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が残り、第3金属部材に緩衝材としての働きを十分に発揮させることが可能となる。
【0097】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、硬度定常領域が第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有するため、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が十分に残り、第3金属部材に緩衝材としての働きを一層十分に発揮させることが可能となる。
【0098】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第3金属部材16の厚さが0.3mm〜10.0mmの範囲内にあるため、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが可能となり、かつ、全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが可能となる。
【0099】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に第3硬度遷移領域21が形成される条件で第4金属部材20を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0100】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4においては第4硬度遷移領域23及び第5硬度遷移領域25が形成される条件で第4金属部材20を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0101】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4で第4金属部材20を被覆した部分を平滑化する平滑化工程S6をさらに含むため、表面が平滑な接合体を製造することが可能となる。
【0102】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第4金属部材20は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなるため、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材で第3金属部材を覆うことになり、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうのを防ぐことが可能な接合体を製造することが可能となる。
【0103】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、露出部分のうち少なくとも一部を含むように接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程S3を含むため、第3金属部材を含む表面が周りの面よりも低くなり、被覆工程において第4金属部材を容易に被覆することが可能となる。
【0104】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、内部の接合面よりも接合の強度が低い可能性がある表面の接合面を削り取り、製造する接合体全体としての機械的強度を向上させることが可能となる。
【0105】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4より後に、接合体に蓄積されている応力を緩和するために接合体に熱処理を施す熱処理工程S5を含むため、接合体に蓄積されている応力を緩和し、接合体全体としての接合力を高めることが可能となる。
【0106】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、熱処理により各硬度遷移領域の範囲を大きくし、各金属部材間に発生する応力がより一層分散されるようにすることが可能となる。
【0107】
実施形態1に係る接合体10においては、第1金属部材12と第2金属部材14との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0108】
また、実施形態1に係る接合体10においては、第1金属部材12と第3金属部材16との間及び第2金属部材14と第3金属部材16との間には、上記した第1硬度遷移領域13及び第2硬度遷移領域15がそれぞれ存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0109】
その結果、実施形態1に係る接合体10によれば、第1金属部材12と第2金属部材14との間に発生する熱応力がこれら第1硬度遷移領域13、第3金属部材16及び第2硬度遷移領域15の働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0110】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間を有しても比較的容易に製造することが可能な接合体となる。
【0111】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第3の金属材料は、第1金属部材12及び第2金属部材14の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなるため、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0112】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に第3硬度遷移領域21が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0113】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第4硬度遷移領域23及び第5硬度遷移領域25が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0114】
実施形態1に係る金属製品は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる実施形態1に係る接合体10を用いて製造されたため、大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難い金属製品となる。
【0115】
[実施例]
図6は、実施例に係る接合体10a(全体は図示せず。)を説明するために示す写真である。図6(a)は接合体10aの断面の拡大光学写真であり、図6(b)は接合体10aの断面の電子顕微鏡写真である。なお、図6において示した硬度遷移領域(第1硬度遷移領域13a、第2硬度遷移領域15a、第3硬度遷移領域21a、第4硬度遷移領域23a及び第5硬度遷移領域25a)の範囲は概略であり、必ずしも実際の範囲を正確に写し取ったものではない。
【0116】
図7は、実施例に係る接合体10aを説明するために示すグラフである。図7のグラフにおいては、縦軸は硬度を表し、横軸は測定ポイントの数を表している。なお、硬度の測定は第1金属部材12a−第3金属部材16a−第2金属部材14a間で、接合面に対する角度を60°としてマイクロビッカース法で測定した。測定ポイントの間隔は約24μmである。なお、図7においては、硬度が定常状態となるはずの部分や硬度が徐々に変化するはずの部分において、硬度の値が乱高下して見えるが、これはマイクロビッカース法による測定誤差がそのまま出ているためである。図7において符号12aで示すのは第1金属部材12aのみからなる部分の硬度であり、符号13aで示すのは第1硬度遷移領域13aの部分の硬度であり、符号16aで示すのは第3金属部材16aのみからなる部分(つまり、硬度定常領域)の硬度であり、符号15aで示すのは第2硬度遷移領域15aの部分の硬度であり、符号14aで示すのは第2金属部材14aのみからなる部分の硬度である。
【0117】
実施例においては、実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法を用いて接合体10aを製造し、写真による観察と硬度の測定とを行った。なお、実施例においては、第1金属部材12a(SKD61からなる。)、第2金属部材14a(SKD61からなる。)、第3金属部材16a(SUS316Lからなる。)、第4金属部材20a(SKD61からなる。)を用いた。なお、第3金属部材16aの元々の厚さ寸法は約0.7mmであったが、固相接合工程のときにおける圧力と熱により第3金属部材16aがやや潰れたため、最終的な第3金属部材16aの厚さ寸法は0.6mmほどになっている。
【0118】
実施例においては、硬度の測定は第1金属部材12a−第3金属部材16a−第2金属部材14a間で行ったが、第4金属部材20a−第3金属部材16a間、第4金属部材20a−第1金属部材12a間及び第4金属部材20a−第2金属部材14a間においても、図7に示す第1硬度遷移領域13a及び第2硬度遷移領域15aにおける硬度変化の様子と類似した各硬度遷移領域(第3硬度遷移領域、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域)の硬度変化の様子がそれぞれ観測されると考えられる。
【0119】
実施例での観察と観測の結果、本発明に係る接合体10aが製造できていることが確認できた。
【0120】
なお、現在様々な条件により実験中であるが、本発明に係る接合体の製造方法を用いて製造した接合体から、成形金型を製造し、アルミニウムダイカスト鋳造を実際に行って耐久性をテストしたところ、10万ショットを超えても成形金型の破損は見られなかった。
【0121】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図9は、実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。図9(a)は金属部材準備工程S11を説明するために示す図であり、図9(b)及び図9(c)は接合体形成工程S12を説明するために示す図である。なお、図9(a)〜図9(c)の各図は、接合体30(全体は図示せず。)となる部分の一部を示す模式図である。
【0122】
実施形態2に係る接合体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法であるが、表面切削工程以降の工程を含まない点で実施形態1に係る接合体の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る接合体の製造方法は、図8及び図9に示すように、金属部材準備工程S11と接合体形成工程S12とをこの順序で含む。金属部材準備工程S11は実施形態1における金属部材準備工程S1と、接合体形成工程S12は実施形態1における接合体形成工程S2と基本的に同様の工程であるため、詳細な説明は省略する。
【0123】
なお、実施形態2に係る接合体の製造方法により製造される接合体30は、第4金属部材を備えず、第3金属部材36からなる部分が露出している。接合体30を用いる金属製品が、表面の硬度の差があまり問題にならない用途(例えば、内部構造に用いられる構造部材)に用いられるものである場合には、実施形態2に係る接合体30のような構成でも十分である。
【0124】
実施形態2に係る接合体の製造方法は、表面切削工程以降の工程を含まない点が実施形態1に係る接合体の製造方法とは異なるが、実施形態1に係る接合体の製造方法と同様に、第1金属部材32と第2金属部材34との間に発生する熱応力が第1硬度遷移領域33、第3金属部材36及び第2硬度遷移領域35の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0125】
なお、実施形態2に係る接合体の製造方法は、表面切削工程以降の工程を含まない点以外は実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法であるため、実施形態1に係る接合体の製造方法が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0126】
実施形態2に係る接合体30は、第4金属部材を備えない点が実施形態1に係る接合体10とは異なるが、実施形態1に係る接合体10と同様に、第1金属部材32と第2金属部材34との間に発生する熱応力が第1硬度遷移領域33、第3金属部材36及び第2硬度遷移領域35の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0127】
なお、実施形態2に係る接合体30は、第4金属部材を備えない点以外は実施形態1に係る接合体10と同様の構成を有するため、実施形態1に係る接合体10が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0128】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0129】
(1)上記各実施形態においては、第1金属部材及び第2金属部材として、熱間ダイス鋼であるSKD61からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1金属部材及び第2金属部材としては、製造する金属製品の用途に適合する限り種々の金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いてよく、例えば、SKD61以外の熱間ダイス鋼、熱間ダイス鋼以外の工具鋼、工具鋼以外の鉄鋼、鉄鋼以外の金属等を用いることができる。なお、実施形態1における第4金属部材も同様である。
【0130】
(2)上記各実施形態においては、第3金属部材として、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lからなる第3金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第3金属部材としては、製造する金属製品の用途に適合する限り種々の金属材料からなる第3金属部材を用いてよく、例えば、SUS316L以外のステンレス鋼、ステンレス鋼以外の鉄鋼、鉄鋼以外の金属等を用いることができる。
【0131】
(3)上記各実施形態においては、接合予定面が平面である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。接合予定面が互いに密着可能であれば、接合予定面が平面でなくてもよい(例えば、曲面形状、段差形状など。)。
【0132】
(4)上記各実施形態においては、第1金属部材及び第2金属部材として、同一の金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1金属部材及び第2金属部材としては、異なる金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いてもよい。
【0133】
(5)上記実施形態1においては、第4金属部材として、第1金属部材及び第2金属部材と同一の金属材料からなる第4金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第4金属部材としては、第1金属部材又は第2金属部材とは異なる金属材料からなる第4金属部材を用いてもよい。
【0134】
(6)上記実施形態1においては、第4金属部材として、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第4金属部材としては、第3の金属材料と硬度が同じ又は第3の金属材料よりも硬度が低い金属材料からなる第4金属部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0135】
10,30,90…接合体、12,12a,32,92…第1金属部材、13,13a,23…第1硬度遷移領域、14,14a,34,94…第2金属部材、15,15a,35…第2硬度遷移領域、16,16a,36…第3金属部材、20,20a…第4金属部材、21,21a…第3硬度遷移領域、23,23a…第4硬度遷移領域、25,25a…第5硬度遷移領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法、接合体及び金属製品に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図11は、従来の接合体の製造方法を説明するために示す図である。図11(a)は金属部材準備工程S91を説明するために示す図であり、図11(b)及び図11(c)は接合体形成工程S92を説明するために示す図であり、
【0003】
従来、複数の金属部材を接合して接合体を製造する接合体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の接合体の製造方法は、特にCrを含有する鉄鋼部材を接合して接合体を製造するのに適した方法であり、具体的には、図10及び図11に示すように、第1の金属材料からなる第1金属部材92と、第2の金属材料からなる第2金属部材94とを準備する金属部材準備工程S91と、第1金属部材92及び第2金属部材94を接合して接合体を形成する接合体形成工程S92とをこの順序で含み、接合体形成工程S92は、第1金属部材92及び第2金属部材94が溶融しない温度条件下で第1金属部材92及び第2金属部材94を固相接合する固相接合工程S92aと、接合した第1金属部材92及び第2金属部材94を所定条件の下で加熱及び徐冷することにより、2つの金属部材の間の接合力を強化する接合力強化工程S94bとをこの順序で含む。
【0004】
従来の接合体の製造方法によれば、接合体の接合力を低下させる原因となる空隙や不動態層(金属部材がCrを含有する場合にはCr含有不動態層)を金属組織が変態する過程で消散させることが可能となり、その結果、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。また、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間(例えば、熱交換媒体を流す熱交換流路)を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。このようにして製造した接合体は、各種金型、各種工具、各種構造部材等の金属製品に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/129622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した方法により製造した接合体は、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生しない条件でこれを使用する場合には十分に高い接合力を維持できる。しかしながら、上記した方法で製造した接合体は、これに焼き入れ処理を施すことにより硬度を高くしてこれを使用する場合においては、焼き入れ処理により第1金属部材と第2金属部材の硬度が高くなるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で当該接合体を使用した場合に、温度差に起因して発生する熱応力が接合力の限界を超えてしまい、接合体が破損してしまう場合があるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造可能な接合体の製造方法を提供することを目的とする。また、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を提供することを目的とする。さらにまた、本発明の接合体を用いた金属製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の接合体の製造方法は、第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを準備する金属部材準備工程と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を接合して接合体を形成する接合体形成工程とをこの順序で含み、前記接合体形成工程は、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が溶融しない温度条件下で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を固相接合する固相接合工程と、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が形成され、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が形成される温度条件下で熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の接合体の製造方法により製造される接合体においては、第1金属部材と第2金属部材との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数(ヤング率ともいう。)及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材が存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0010】
また、本発明の接合体の製造方法により製造される接合体においては、第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間には、上記した第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域がそれぞれ存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0011】
その結果、本発明の接合体の製造方法によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力が、これら第1硬度遷移領域、第3金属部材及び第2硬度遷移領域の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明の接合体の製造方法によれば、接合体形成工程中に硬度遷移領域形成工程を実施する中で金属部材の接合面に存在する空隙や不動態層を消散させることが可能となるため、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。
【0013】
また、本発明の接合体の製造方法によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、複雑な形状の内部空間を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0014】
なお、本発明の接合体の製造方法は、4層以上の金属部材が接合された構造の接合体を製造する場合にも適用することが可能である。この場合、4層以上の層のうち本発明の条件を満たす3層に着目すれば、本発明の接合体の製造方法を実施することになる。
【0015】
第3の金属材料は、第1金属部材及び第2金属部材の硬度を高くするための熱処理(例えば、焼入れ処理)によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなることが好ましい。この場合、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0016】
[2]本発明の接合体の製造方法においては、前記第1硬度遷移領域は、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、前記第2硬度遷移領域は、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0017】
このような方法とすることにより、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域の厚さを十分に確保し、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力を、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において十分に分散することが可能となる。
【0018】
なお、上記の観点からは、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って100μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って100μm以上の厚さを有することが一層好ましく、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って200μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って200μm以上の厚さを有することがより一層好ましい。
また、接合体全体の機械的強度を一層高くするという観点からは、第1硬度遷移領域が第1金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有し、第2硬度遷移領域が第2金属部材と第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0019】
[3]本発明の接合体の製造方法においては、前記硬度遷移領域形成工程においては、前記第3金属部材内であって前記第1硬度遷移領域と前記第2硬度遷移領域との間に、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すことが好ましい。
【0020】
このような方法とすることにより、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が残るため、第3金属部材に緩衝材としての働きを十分に発揮させることが可能となる。
【0021】
[4]本発明の接合体の製造方法においては、前記硬度定常領域は、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0022】
このような方法とすることにより、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が十分に残るため、第3金属部材に緩衝材としての働きを一層十分に発揮させることが可能となる。
【0023】
なお、上記の観点からは、硬度定常領域が第1硬度遷移領域から第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って60μm以上の厚さを有することが一層好ましく、100μm以上の厚さを有することがより一層好ましい。
また、接合体全体の機械的強度を一層高くするという観点からは、硬度定常領域が第1硬度遷移領域から第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って3mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0024】
[5]本発明の接合体の製造方法においては、前記第3金属部材の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあることが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが可能となり、かつ、全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが可能となる。
【0026】
なお、本発明において、第3金属部材の最小厚みを0.3mm〜10.0mmの範囲内としたのは、当該厚みが0.3mmより小さい場合には固相接合後に第3金属部材が第1金属部材及び第2金属部材に吸収されてしまい、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが困難となる場合があるためであり、当該厚みが10.0mmより大きい場合には接合体全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが困難となる場合があるためである。この観点からは、第3金属部材の最小厚みが0.5mm〜5.0mmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0027】
なお、上記[5]に記載した第3金属部材の厚みは、金属部材準備工程時のものである。
【0028】
[6]本発明の接合体の製造方法においては、前記接合体形成工程より後に、前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部に対して、前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材を溶融させながら被覆する被覆工程をさらに含み、前記被覆工程においては、前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が形成され、前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が形成され、前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が形成される条件で前記第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0029】
このような方法とすることにより、第4金属部材と第3金属部材との境界面の近傍に第3硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0030】
また、上記[6]の方法によれば、被覆工程においては第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0031】
なお、第1金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第1金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第1金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第6硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第2金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第2金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第7硬度遷移領域が形成される条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0032】
第1金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第1金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第2金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0033】
本発明の接合体の製造方法においては、被覆工程より後に、被覆工程で第4金属部材を被覆した部分を平滑化する平滑化工程をさらに含むことが好ましい。このような方法とすることにより、表面が平滑な接合体を製造することが可能となる。
【0034】
[7]本発明の接合体の製造方法においては、前記第4金属部材は、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなることが好ましい。
【0035】
一般的に、縦弾性係数が低い金属材料は硬度も低くなる傾向にあり、製造した接合体において第3金属部材が露出していると、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうことが考えられる。
【0036】
一方、上記[7]の方法によれば、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材で第3金属部材を覆うことになるため、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうのを防ぐことが可能な接合体を製造することが可能となる。
【0037】
[8]本発明の接合体の製造方法においては、前記接合体形成工程と前記被覆工程との間に、前記露出部分のうち少なくとも一部を含むように、前記接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程をさらに含み、前記被覆工程においては、前記表面切削工程で削り取った部分を前記第4金属部材で埋めるように前記第4金属部材を被覆することが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、第3金属部材を含む表面が周りの面よりも低くなるため、被覆工程において第4金属部材を容易に被覆することが可能となる。
【0039】
また、上記[8]の方法によれば、内部の接合面よりも接合の強度が低い可能性がある表面の接合面を削り取り、製造する接合体全体としての機械的強度を向上させることが可能となる。
【0040】
なお、表面切削工程において表面を削り取る深さ寸法は、製造する接合体に応じて任意の寸法とすることができるが、第3金属部材の厚さ寸法よりも大きい寸法(例えば、第3金属部材の厚さ寸法の2倍〜6倍)とすることが好ましい。
【0041】
[9]本発明の接合体の製造方法においては、前記被覆工程より後に、前記接合体に蓄積されている応力を緩和するために前記接合体に熱処理を施す熱処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0042】
このような方法とすることにより、接合体に蓄積されている応力を緩和し、接合体全体としての接合力を高めることが可能となる。
【0043】
また、上記[9]の方法によれば、上記熱処理により各硬度遷移領域の範囲を大きくし、各金属部材間に発生する応力がより一層分散されるようにすることが可能となる。
【0044】
なお、上記のような熱処理としては、焼きなましを含む熱処理を例示することができる。また、製造する接合体全体として高い硬度を得たい場合には、焼きなましの後に焼入れ等を行ってもよい。
【0045】
[10]本発明の接合体は、第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に位置し、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを備え、前記第3金属部材が前記第1金属部材と前記第2金属部材とに固相接合された構造を有する接合体であって、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が存在し、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が存在することを特徴とする。
【0046】
本発明の接合体においては、第1金属部材と第2金属部材との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数(ヤング率ともいう。)及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0047】
また、本発明の接合体においては、第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間には、上記した第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域がそれぞれ存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0048】
その結果、本発明の接合体によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力がこれら第1硬度遷移領域、第3金属部材及び第2硬度遷移領域の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0049】
また、本発明の接合体によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間を有しても比較的容易に製造することが可能な接合体となる。
【0050】
なお、本発明の接合体は、4層以上の金属部材が接合された構造の接合体にも適用することが可能である。この場合、4層以上の層のうち本発明の条件を満たす3層に着目すれば、本発明の接合体であるということになる。
【0051】
第3の金属材料は、第1金属部材及び第2金属部材の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなることが好ましい。この場合、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0052】
[11]本発明の接合体においては、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材をさらに備え、前記第4金属部材が、前記第3金属部材の少なくとも一部を被覆する構造を有し、前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が存在し、前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が存在し、前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が存在することが好ましい。
好ましい。
【0053】
このような構成とすることにより、第4金属部材と第3金属部材との境界面の近傍に第3硬度遷移領域が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0054】
また、上記[11]の構成によれば、上記したような第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0055】
なお、第1金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第1金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第1金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第6硬度遷移領域が存在することが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが異なる金属材料からなる場合には、第4金属部材から第2金属部材に向かう方向に沿って第4金属部材から第2金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第7硬度遷移領域が存在することが好ましい。
【0056】
第1金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第1金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないように接合されていることが好ましい。また、第2金属部材と第4金属部材とが同一の金属材料からなる場合には、第2金属部材と第4金属部材との間に明確な境界面が残らないように接合されていることが好ましい。
【0057】
[12]本発明の金属製品は、上記[10]又は[11]に記載の接合体を用いて製造されたものである。
【0058】
本発明の金属製品によれば、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる本発明の接合体を用いて製造されたため、大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難い金属製品となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図2】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すグラフである。
【図4】実施形態1に係る接合体10を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係る接合体10における硬度の分布を説明するために示す図である。
【図6】実施例に係る接合体10a(全体は図示せず。)を説明するために示す写真である。
【図7】実施例に係る接合体10aを説明するために示すグラフである。
【図8】実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図9】実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図10】従来の接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図11】従来の接合体の製造方法を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の接合体の製造方法、接合体及び金属製品について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0061】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図2は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は金属部材準備工程S1を説明するために示す図であり、図2(b)及び図2(c)は接合体形成工程S2を説明するために示す図であり、図2(d)は表面切削工程S3を説明するために示す図であり、図2(e)は被覆工程S4を説明するために示す図であり、図2(f)は平滑化工程S6を説明するために示す図である。なお、図2(a)〜図2(f)の各図は、接合体10となる部分の一部(後述する図4の符号B参照。)を示す模式図である。また、図2においては、熱交換流路19の図示を省略している。さらにまた、図2においては、熱処理工程S5についての図示を省略している。
図3は、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明するために示すグラフである。図3中、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。
【0062】
まず、実施形態1に係る接合体の製造方法を説明する。
実施形態1に係る接合体の製造方法は、接合体10(図4参照。)を製造するための方法である。
【0063】
実施形態1に係る接合体の製造方法は、金属部材準備工程S1と、接合体形成工程S2と、表面切削工程S3と、被覆工程S4と、熱処理工程S5と、平滑化工程S6とをこの順序で含む。以下、各工程について説明する。
【0064】
1.金属部材準備工程S1
金属部材準備工程S1は、第1の金属材料からなる第1金属部材12と、第2の金属材料からなる第2金属部材14と、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16とを準備する工程である(図2(a)参照。)。
【0065】
第1の金属材料、第2の金属材料及び第3の金属材料は、それぞれCrを含有する鉄鋼材料からなる。さらにいえば、第1の金属材料及び第2の金属材料は工具鋼からなり、第3の金属材料は、ステンレス鋼からなる。なお、実施形態1においては、第1の金属材料と第2の金属材料とは同一の金属材料からなる。工具鋼としては、例えば、熱間ダイス鋼であるSKD61を用いることができる。ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lを用いることができる。SUS316Lは、硬度を高めるための熱処理(例えば、焼入れ処理)によっては硬度が高くなりにくい金属材料である。
【0066】
実施形態1においては、第1の金属材料の熱膨張率と第3の金属材料の熱膨張率との差は、例えば、1×10−6m/K〜5×10−6m/Kの範囲内にあり、第2の金属材料の熱膨張率と第3の金属材料の熱膨張率との差も、例えば、1×10−6m/K〜5×10−6m/Kの範囲内にある。また、第1の金属材料の縦弾性係数と第3の金属材料の縦弾性係数との差は、例えば、10GPa〜20GPaの範囲内にあり、第2の金属材料の縦弾性係数と第3の金属材料の縦弾性係数との差も、例えば、10GPa〜20GPaの範囲内にある。
【0067】
第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16のそれぞれの接合予定面(第1金属部材12と第3金属部材16とが向かい合う部分と、第2金属部材14と第3金属部材16とが向かい合う部分)における算術平均荒さは、例えば、0.2μm以下である。
第3金属部材16の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあり、さらにいえば0.5mm〜5.0mmの範囲内にあり、例えば、1.0mmである。なお、実施形態1においては、各接合予定面は平面であり、各金属部材は平板状の形状(円柱を輪切りにしたような形状)を有する。
【0068】
2.接合体形成工程S2
接合体形成工程S2は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を接合して接合体を形成する工程である(図2(b)及び図2(c)参照。)。
【0069】
接合体形成工程S2は、固相接合工程S2aと硬度遷移領域形成工程S2bとをこの順序で含む。
固相接合工程S2aは、図3に示すように、第1金属部材12と第2金属部材14との間に第3金属部材16を介在させた状態で、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16に所定の圧力をかけ、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16が溶融しない温度条件下(第1温度T1)で第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を固相接合する工程である。実施形態1において、固相接合工程S2aは、各金属部材を積層して所定の圧力をかけた上で第1温度T1に加熱し、その後徐冷することにより実施する。
【0070】
硬度遷移領域形成工程S2bは、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面の近傍に第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第1金属部材12から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域13が形成され、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面の近傍に第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第2金属部材14から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域15が形成される温度条件下で熱処理を施す工程である。
【0071】
実施形態1においては、硬度遷移領域形成工程S2bは、まず、固相接合工程S2a後に残留している応力を開放して金属組織を均一化するために、接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷する。その後、接合体を第2温度T2に加熱した後、接合体を第3温度T3まで徐冷することにより実施される。第1温度T1、第2温度T2、第3温度T3及び第4温度T4は、固相接合する金属部材を構成する金属材料の種類によって適宜選択することが可能であるが、第1温度T1は、例えば、850℃〜1150℃の範囲内にあり、第4温度T4は、例えば、1000℃〜1150℃の範囲内にあり、第2温度T2は、例えば、800℃〜1150℃の範囲内にあり、第3温度T3は、例えば、600℃以下である。
【0072】
第1硬度遷移領域13は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、一層好ましくは100μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは200μm以上の厚さを有する。第2硬度遷移領域15は、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、一層好ましくは100μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは200μm以上の厚さを有する。また、第1硬度遷移領域13は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましく、第2硬度遷移領域15は、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って5mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0073】
硬度遷移領域形成工程S2bにおいては、第3金属部材16内であって、第1硬度遷移領域13と第2硬度遷移領域15との間に、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域(つまり、第3金属部材16のうち、第1硬度遷移領域13と第2硬度遷移領域15との間の部分)が残る条件で熱処理を施す。
硬度定常領域は、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有し、一層好ましくは60μm以上の厚さを有し、より一層好ましくは100μm以上の厚さを有する。また、硬度定常領域は、第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って3mm以下の厚さを有することが好ましい。
【0074】
なお、実施形態1における硬度遷移領域形成工程S2bにおいては、固相接合工程S2a後に残留している応力を開放して金属組織を均一化するために、接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷したが、本発明はこれに限定されるものではない。固相接合工程後に残留している応力が十分に小さい場合には、「接合体を一度第4温度T4まで加熱した後に急冷し、その後に徐冷する」という工程を行わなくてもよい。
【0075】
3.表面切削工程S3
表面切削工程S3は、第3金属部材16が接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部を含むように、接合体の表面を部分的に削り取る工程である(図2(d)参照。)。
【0076】
実施形態1においては、断面形状が半円形となる溝状の凹部ができるように切削工程を行う。表面切削工程S3において表面を削り取る深さの寸法は、第3金属部材16の厚さの寸法よりも深く、第3金属部材16の厚さの寸法の2倍〜6倍である。
【0077】
4.被覆工程S4
被覆工程S4は、露出部分のうち少なくとも一部に対して、第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16が接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材20を溶融させながら被覆する工程である(図2(e)参照。)。つまり、被覆工程S4は液相接合を行う工程であるともいえる。
第4金属部材20は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる。第4の金属材料は、工具鋼からなり、例えば、熱間ダイス鋼であるSKD61を用いることができる。なお、実施形態1においては、第4の金属材料と、第1の金属材料及び第2の金属材料とは同一の金属材料からなる。
【0078】
被覆工程S4においては、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に、第4金属部材20から第3金属部材16に向かう方向に沿って第4金属部材20から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域21が形成され、第4金属部材20と第1硬度遷移領域13との境界面の近傍に、第4金属部材20から第1硬度遷移領域13に向かう方向に沿って第4金属部材20から第1硬度遷移領域13にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域23が形成され、第4金属部材20と第2硬度遷移領域15との境界面の近傍に、第4金属部材20から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って第4金属部材20から第2硬度遷移領域15にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域25が形成される条件で第4金属部材20を被覆する。
【0079】
実施形態1においては、第1金属部材12と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材20を被覆する。また、第2金属部材14と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないような条件で第4金属部材20を被覆する。
被覆工程S4においては、表面切削工程S3で削り取った部分を第4金属部材20で埋めるように第4金属部材20を被覆する。
【0080】
5.熱処理工程S5
熱処理工程S5は、接合体に蓄積されている応力を緩和するために接合体に熱処理を施す工程である。接合体に蓄積されている応力を緩和するための熱処理としては、周知の方法である焼きなましを含む熱処理を用いることができる。なお、製造する接合体全体として高い硬度を得たいときには、焼きなましの後に焼入れ等を行ってもよい。
【0081】
6.平滑化工程S6
平滑化工程S6は、被覆工程S4で第4金属部材20を被覆した部分を平滑化する工程である(図2(f)参照。)。平滑化は、研磨や切削等、種々の方法で行うことができる。以上の工程により、接合体10を製造することができる。
【0082】
次に、接合体10について説明する。
図4は、実施形態1に係る接合体10を説明するために示す図である。図4(a)は接合体10の斜視図であり、図4(b)は接合体10の上面図であり、図4(c)は図4(b)のA−A断面図である。なお、図4(b)及び図4(c)においては、視点位置からは直接見えない熱交換流路19について点線で表示している。
図5は、実施形態1に係る接合体10における硬度の分布を説明するために示す図である。図5においては、硬度が高い部分を濃い色で図示し、硬度が低い部分を薄い色で図示している。なお、図5における破線は、固相接合又は被覆の時点における金属部材同士の接合面又は境界面を大まかに表すものであり、硬度の分布を表すものではない。
【0083】
接合体10は、成形金型の一部として用いる金属製品であり、接合体10は実施形態1に係る金属製品であるともいえる。接合体10は、内部に熱交換媒体を流して熱交換をおこなうための熱交換流路19を有する。当該熱交換流路19のうち、第1金属部材12と第2金属部材14とにまたがる部分については、あらかじめ第1金属部材12、第2金属部材14及び第3金属部材16を削り取り、その後固相接合することにより形成したものである。熱交換流路19のうち、それ以外の部分(例えば、金属部材14の中を通る部分)については、広く用いられている穿孔手段(例えば、ドリル)を用いた穿孔により形成することができる。
【0084】
接合体10は、第1の金属材料からなる第1金属部材12と、第2の金属材料からなる第2金属部材14と、第1金属部材12と第2金属部材14との間に位置し、第1の金属材料及び第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16とを備え、第1金属部材12、第3金属部材16及び第2金属部材14が接合された構造を有する接合体である(全体図は図4を、詳細は図5をそれぞれ参照。)。
【0085】
接合体10は、第1金属部材12と第3金属部材16との接合面の近傍に第1金属部材12と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第1金属部材12から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域13が存在し、かつ、第2金属部材14と第3金属部材16との接合面の近傍に第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って第2金属部材14から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域15が存在する(図5参照。)。
【0086】
接合体10は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材20をさらに備え、第4金属部材20が第3金属部材16の少なくとも一部を被覆する構造を有し、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に、第4金属部材20から第3金属部材16に向かう方向に沿って第4金属部材20から第3金属部材16にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域21が存在し、第4金属部材20と第1硬度遷移領域13との境界面の近傍に、第4金属部材20から第1硬度遷移領域13に向かう方向に沿って第4金属部材20から第1硬度遷移領域13にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域23が存在し、第4金属部材20と第2硬度遷移領域15との境界面の近傍に、第4金属部材20から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って第4金属部材20から第2硬度遷移領域15にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域25が存在する。
【0087】
また、接合体10においては、第1金属部材12と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないように接合されており、また、第2金属部材14と第4金属部材20との間に明確な境界面が残らないように接合されている。
【0088】
以下、実施形態1に係る接合体の製造方法、接合体及び金属製品の効果を記載する。
【0089】
実施形態1に係る接合体の製造方法により製造される接合体10においては、第1金属部材12と第2金属部材14との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16が存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0090】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法により製造される接合体10においては、第1金属部材12と第3金属部材16との間及び第2金属部材14と第3金属部材16との間には、上記した第1硬度遷移領域13及び第2硬度遷移領域15がそれぞれ存在するようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0091】
その結果、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第1金属部材12と第2金属部材14との間に発生する熱応力が、これら第1硬度遷移領域13、第3金属部材16及び第2硬度遷移領域15の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0092】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、接合体形成工程S2中に硬度遷移領域形成工程S2bを実施する中で金属部材の接合面に存在する空隙や不動態層を消散させることが可能となるため、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、接合力が高い接合体を製造することが可能となる。
【0093】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、従来の接合体の製造方法の場合と同様に、複雑な形状の内部空間を有する接合体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0094】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第3の金属材料は、第1金属部材12及び第2金属部材14の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなるため、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0095】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第1硬度遷移領域13が第1金属部材15と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、第2硬度遷移領域15が第2金属部材14と第3金属部材16との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有するため、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域の厚さを十分に確保し、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力を、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において十分に分散することが可能となる。
【0096】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、硬度遷移領域形成工程S2bにおいて硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すため、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が残り、第3金属部材に緩衝材としての働きを十分に発揮させることが可能となる。
【0097】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、硬度定常領域が第1硬度遷移領域13から第2硬度遷移領域15に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有するため、縦弾性係数が比較的低い領域(第3金属部材そのままの領域)が十分に残り、第3金属部材に緩衝材としての働きを一層十分に発揮させることが可能となる。
【0098】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第3金属部材16の厚さが0.3mm〜10.0mmの範囲内にあるため、第3金属部材の厚みを緩衝材として十分なものとすることが可能となり、かつ、全体としての形態安定性が十分に高い接合体を製造することが可能となる。
【0099】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に第3硬度遷移領域21が形成される条件で第4金属部材20を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0100】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4においては第4硬度遷移領域23及び第5硬度遷移領域25が形成される条件で第4金属部材20を被覆するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0101】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4で第4金属部材20を被覆した部分を平滑化する平滑化工程S6をさらに含むため、表面が平滑な接合体を製造することが可能となる。
【0102】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、第4金属部材20は、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなるため、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材で第3金属部材を覆うことになり、第3金属部材の部分が第1金属部材の部分及び第2金属部材の部分よりも早く損耗してしまうのを防ぐことが可能な接合体を製造することが可能となる。
【0103】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、露出部分のうち少なくとも一部を含むように接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程S3を含むため、第3金属部材を含む表面が周りの面よりも低くなり、被覆工程において第4金属部材を容易に被覆することが可能となる。
【0104】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、内部の接合面よりも接合の強度が低い可能性がある表面の接合面を削り取り、製造する接合体全体としての機械的強度を向上させることが可能となる。
【0105】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、被覆工程S4より後に、接合体に蓄積されている応力を緩和するために接合体に熱処理を施す熱処理工程S5を含むため、接合体に蓄積されている応力を緩和し、接合体全体としての接合力を高めることが可能となる。
【0106】
また、実施形態1に係る接合体の製造方法によれば、熱処理により各硬度遷移領域の範囲を大きくし、各金属部材間に発生する応力がより一層分散されるようにすることが可能となる。
【0107】
実施形態1に係る接合体10においては、第1金属部材12と第2金属部材14との間には、第1の金属材料及び第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材16が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件でこれを使用した場合に、第3金属部材が、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力を分散させる緩衝材として働くようになる。
【0108】
また、実施形態1に係る接合体10においては、第1金属部材12と第3金属部材16との間及び第2金属部材14と第3金属部材16との間には、上記した第1硬度遷移領域13及び第2硬度遷移領域15がそれぞれ存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合に、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力もが、第1硬度遷移領域及び第2硬度遷移領域において分散されることとなる。
【0109】
その結果、実施形態1に係る接合体10によれば、第1金属部材12と第2金属部材14との間に発生する熱応力がこれら第1硬度遷移領域13、第3金属部材16及び第2硬度遷移領域15の働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0110】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、接合する金属部材のうち少なくとも1つの金属部材として、接合予定面に凹部が形成された金属部材を用いることにより、複雑な形状の内部空間を有しても比較的容易に製造することが可能な接合体となる。
【0111】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第3の金属材料は、第1金属部材12及び第2金属部材14の硬度を高くするための熱処理によっては硬度が高くなりにくい金属材料からなるため、接合体全体の硬度を高くするための熱処理を施して硬度を高くした場合であっても、第3金属部材が存在する部分についてはそれ程硬度が高くならない(つまり、縦弾性係数が高くなりすぎない)ようにすることが可能となり、その結果、第3金属部材を緩衝材として十分に働かせることが可能となる。
【0112】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第4金属部材20と第3金属部材16との境界面の近傍に第3硬度遷移領域21が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第4金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第3硬度遷移領域において分散されるようにすることが可能となる。
【0113】
また、実施形態1に係る接合体10によれば、第4硬度遷移領域23及び第5硬度遷移領域25が存在するため、第1金属部材と第2金属部材との間に発生する熱応力により第1金属部材と第3金属部材との間及び第2金属部材と第3金属部材との間に発生する応力が、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域においても分散されるようにすることが可能となる。
【0114】
実施形態1に係る金属製品は、第1金属部材12と第2金属部材14との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる実施形態1に係る接合体10を用いて製造されたため、大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難い金属製品となる。
【0115】
[実施例]
図6は、実施例に係る接合体10a(全体は図示せず。)を説明するために示す写真である。図6(a)は接合体10aの断面の拡大光学写真であり、図6(b)は接合体10aの断面の電子顕微鏡写真である。なお、図6において示した硬度遷移領域(第1硬度遷移領域13a、第2硬度遷移領域15a、第3硬度遷移領域21a、第4硬度遷移領域23a及び第5硬度遷移領域25a)の範囲は概略であり、必ずしも実際の範囲を正確に写し取ったものではない。
【0116】
図7は、実施例に係る接合体10aを説明するために示すグラフである。図7のグラフにおいては、縦軸は硬度を表し、横軸は測定ポイントの数を表している。なお、硬度の測定は第1金属部材12a−第3金属部材16a−第2金属部材14a間で、接合面に対する角度を60°としてマイクロビッカース法で測定した。測定ポイントの間隔は約24μmである。なお、図7においては、硬度が定常状態となるはずの部分や硬度が徐々に変化するはずの部分において、硬度の値が乱高下して見えるが、これはマイクロビッカース法による測定誤差がそのまま出ているためである。図7において符号12aで示すのは第1金属部材12aのみからなる部分の硬度であり、符号13aで示すのは第1硬度遷移領域13aの部分の硬度であり、符号16aで示すのは第3金属部材16aのみからなる部分(つまり、硬度定常領域)の硬度であり、符号15aで示すのは第2硬度遷移領域15aの部分の硬度であり、符号14aで示すのは第2金属部材14aのみからなる部分の硬度である。
【0117】
実施例においては、実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法を用いて接合体10aを製造し、写真による観察と硬度の測定とを行った。なお、実施例においては、第1金属部材12a(SKD61からなる。)、第2金属部材14a(SKD61からなる。)、第3金属部材16a(SUS316Lからなる。)、第4金属部材20a(SKD61からなる。)を用いた。なお、第3金属部材16aの元々の厚さ寸法は約0.7mmであったが、固相接合工程のときにおける圧力と熱により第3金属部材16aがやや潰れたため、最終的な第3金属部材16aの厚さ寸法は0.6mmほどになっている。
【0118】
実施例においては、硬度の測定は第1金属部材12a−第3金属部材16a−第2金属部材14a間で行ったが、第4金属部材20a−第3金属部材16a間、第4金属部材20a−第1金属部材12a間及び第4金属部材20a−第2金属部材14a間においても、図7に示す第1硬度遷移領域13a及び第2硬度遷移領域15aにおける硬度変化の様子と類似した各硬度遷移領域(第3硬度遷移領域、第4硬度遷移領域及び第5硬度遷移領域)の硬度変化の様子がそれぞれ観測されると考えられる。
【0119】
実施例での観察と観測の結果、本発明に係る接合体10aが製造できていることが確認できた。
【0120】
なお、現在様々な条件により実験中であるが、本発明に係る接合体の製造方法を用いて製造した接合体から、成形金型を製造し、アルミニウムダイカスト鋳造を実際に行って耐久性をテストしたところ、10万ショットを超えても成形金型の破損は見られなかった。
【0121】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
図9は、実施形態2に係る接合体の製造方法を説明するために示す図である。図9(a)は金属部材準備工程S11を説明するために示す図であり、図9(b)及び図9(c)は接合体形成工程S12を説明するために示す図である。なお、図9(a)〜図9(c)の各図は、接合体30(全体は図示せず。)となる部分の一部を示す模式図である。
【0122】
実施形態2に係る接合体の製造方法は、基本的には実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法であるが、表面切削工程以降の工程を含まない点で実施形態1に係る接合体の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る接合体の製造方法は、図8及び図9に示すように、金属部材準備工程S11と接合体形成工程S12とをこの順序で含む。金属部材準備工程S11は実施形態1における金属部材準備工程S1と、接合体形成工程S12は実施形態1における接合体形成工程S2と基本的に同様の工程であるため、詳細な説明は省略する。
【0123】
なお、実施形態2に係る接合体の製造方法により製造される接合体30は、第4金属部材を備えず、第3金属部材36からなる部分が露出している。接合体30を用いる金属製品が、表面の硬度の差があまり問題にならない用途(例えば、内部構造に用いられる構造部材)に用いられるものである場合には、実施形態2に係る接合体30のような構成でも十分である。
【0124】
実施形態2に係る接合体の製造方法は、表面切削工程以降の工程を含まない点が実施形態1に係る接合体の製造方法とは異なるが、実施形態1に係る接合体の製造方法と同様に、第1金属部材32と第2金属部材34との間に発生する熱応力が第1硬度遷移領域33、第3金属部材36及び第2硬度遷移領域35の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で接合体を使用した場合においても破損し難い接合体を製造することが可能となる。
【0125】
なお、実施形態2に係る接合体の製造方法は、表面切削工程以降の工程を含まない点以外は実施形態1に係る接合体の製造方法と同様の方法であるため、実施形態1に係る接合体の製造方法が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0126】
実施形態2に係る接合体30は、第4金属部材を備えない点が実施形態1に係る接合体10とは異なるが、実施形態1に係る接合体10と同様に、第1金属部材32と第2金属部材34との間に発生する熱応力が第1硬度遷移領域33、第3金属部材36及び第2硬度遷移領域35の応力を分散するという働きにより効果的に分散されるようになるため、第1金属部材と第2金属部材との間に大きな温度差が発生する条件で使用した場合においても破損し難くすることが可能となる。
【0127】
なお、実施形態2に係る接合体30は、第4金属部材を備えない点以外は実施形態1に係る接合体10と同様の構成を有するため、実施形態1に係る接合体10が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0128】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0129】
(1)上記各実施形態においては、第1金属部材及び第2金属部材として、熱間ダイス鋼であるSKD61からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1金属部材及び第2金属部材としては、製造する金属製品の用途に適合する限り種々の金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いてよく、例えば、SKD61以外の熱間ダイス鋼、熱間ダイス鋼以外の工具鋼、工具鋼以外の鉄鋼、鉄鋼以外の金属等を用いることができる。なお、実施形態1における第4金属部材も同様である。
【0130】
(2)上記各実施形態においては、第3金属部材として、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lからなる第3金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第3金属部材としては、製造する金属製品の用途に適合する限り種々の金属材料からなる第3金属部材を用いてよく、例えば、SUS316L以外のステンレス鋼、ステンレス鋼以外の鉄鋼、鉄鋼以外の金属等を用いることができる。
【0131】
(3)上記各実施形態においては、接合予定面が平面である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。接合予定面が互いに密着可能であれば、接合予定面が平面でなくてもよい(例えば、曲面形状、段差形状など。)。
【0132】
(4)上記各実施形態においては、第1金属部材及び第2金属部材として、同一の金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1金属部材及び第2金属部材としては、異なる金属材料からなる第1金属部材及び第2金属部材を用いてもよい。
【0133】
(5)上記実施形態1においては、第4金属部材として、第1金属部材及び第2金属部材と同一の金属材料からなる第4金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第4金属部材としては、第1金属部材又は第2金属部材とは異なる金属材料からなる第4金属部材を用いてもよい。
【0134】
(6)上記実施形態1においては、第4金属部材として、第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第4金属部材としては、第3の金属材料と硬度が同じ又は第3の金属材料よりも硬度が低い金属材料からなる第4金属部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0135】
10,30,90…接合体、12,12a,32,92…第1金属部材、13,13a,23…第1硬度遷移領域、14,14a,34,94…第2金属部材、15,15a,35…第2硬度遷移領域、16,16a,36…第3金属部材、20,20a…第4金属部材、21,21a…第3硬度遷移領域、23,23a…第4硬度遷移領域、25,25a…第5硬度遷移領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを準備する金属部材準備工程と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を接合して接合体を形成する接合体形成工程とをこの順序で含み、
前記接合体形成工程は、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が溶融しない温度条件下で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を固相接合する固相接合工程と、
前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が形成され、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が形成される温度条件下で熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合体の製造方法において、
前記第1硬度遷移領域は、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、
前記第2硬度遷移領域は、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接合体の製造方法において、
前記硬度遷移領域形成工程においては、前記第3金属部材内であって前記第1硬度遷移領域と前記第2硬度遷移領域との間に、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の接合体の製造方法において、
前記硬度定常領域は、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合体の製造方法において、
前記第3金属部材の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接合体の製造方法において、
前記接合体形成工程より後に、
前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部に対して、前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材を溶融させながら被覆する被覆工程をさらに含み、
前記被覆工程においては、
前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が形成され、
前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が形成され、
前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が形成される条件で前記第4金属部材を被覆することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の接合体の製造方法において、
前記第4金属部材は、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の接合体の製造方法において、
前記接合体形成工程と前記被覆工程との間に、
前記露出部分のうち少なくとも一部を含むように、前記接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程をさらに含み、
前記被覆工程においては、前記表面切削工程で削り取った部分を前記第4金属部材で埋めるように前記第4金属部材を被覆することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の接合体の製造方法において、
前記被覆工程より後に、前記接合体に蓄積されている応力を緩和するために前記接合体に熱処理を施す熱処理工程をさらに含むことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項10】
第1の金属材料からなる第1金属部材と、
第2の金属材料からなる第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に位置し、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを備え、
前記第3金属部材が前記第1金属部材と前記第2金属部材とに固相接合された構造を有する接合体であって、
前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が存在し、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が存在することを特徴とする接合体。
【請求項11】
請求項11に記載の接合体において、
前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材をさらに備え、前記第4金属部材が、前記第3金属部材の少なくとも一部を被覆する構造を有し、
前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が存在し、
前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が存在し、
前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が存在することを特徴とする接合体。
【請求項12】
請求項11又は12に記載の接合体を用いて製造された金属製品。
【請求項1】
第1の金属材料からなる第1金属部材と、第2の金属材料からなる第2金属部材と、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のいずれよりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを準備する金属部材準備工程と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を接合して接合体を形成する接合体形成工程とをこの順序で含み、
前記接合体形成工程は、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に前記第3金属部材を介在させた状態で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が溶融しない温度条件下で前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材を固相接合する固相接合工程と、
前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が形成され、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が形成される温度条件下で熱処理を施す硬度遷移領域形成工程とをこの順序で含むことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合体の製造方法において、
前記第1硬度遷移領域は、前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有し、
前記第2硬度遷移領域は、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って50μm以上の厚さを有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接合体の製造方法において、
前記硬度遷移領域形成工程においては、前記第3金属部材内であって前記第1硬度遷移領域と前記第2硬度遷移領域との間に、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って硬度が定常状態となる硬度定常領域が残る条件で熱処理を施すことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の接合体の製造方法において、
前記硬度定常領域は、前記第1硬度遷移領域から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って30μm以上の厚さを有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合体の製造方法において、
前記第3金属部材の厚さは、0.3mm〜10.0mmの範囲内にあることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接合体の製造方法において、
前記接合体形成工程より後に、
前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分(以下、露出部分という。)のうち少なくとも一部に対して、前記第1金属部材、前記第2金属部材及び前記第3金属部材が前記接合体の表面に露出している部分を溶融させた状態で、第4金属部材を溶融させながら被覆する被覆工程をさらに含み、
前記被覆工程においては、
前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が形成され、
前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が形成され、
前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が形成される条件で前記第4金属部材を被覆することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の接合体の製造方法において、
前記第4金属部材は、前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の接合体の製造方法において、
前記接合体形成工程と前記被覆工程との間に、
前記露出部分のうち少なくとも一部を含むように、前記接合体の表面を部分的に削り取る表面切削工程をさらに含み、
前記被覆工程においては、前記表面切削工程で削り取った部分を前記第4金属部材で埋めるように前記第4金属部材を被覆することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の接合体の製造方法において、
前記被覆工程より後に、前記接合体に蓄積されている応力を緩和するために前記接合体に熱処理を施す熱処理工程をさらに含むことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項10】
第1の金属材料からなる第1金属部材と、
第2の金属材料からなる第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に位置し、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料よりも縦弾性係数及び硬度が低い第3の金属材料からなる第3金属部材とを備え、
前記第3金属部材が前記第1金属部材と前記第2金属部材とに固相接合された構造を有する接合体であって、
前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第1金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第1金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第1硬度遷移領域が存在し、かつ、前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面の近傍に前記第2金属部材と前記第3金属部材との接合面に垂直な方向に沿って前記第2金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第2硬度遷移領域が存在することを特徴とする接合体。
【請求項11】
請求項11に記載の接合体において、
前記第3の金属材料よりも硬度が高い第4の金属材料からなる第4金属部材をさらに備え、前記第4金属部材が、前記第3金属部材の少なくとも一部を被覆する構造を有し、
前記第4金属部材と前記第3金属部材との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第3金属部材に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第3金属部材にかけて硬度が徐々に変化する第3硬度遷移領域が存在し、
前記第4金属部材と前記第1硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第1硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第4硬度遷移領域が存在し、
前記第4金属部材と前記第2硬度遷移領域との境界面の近傍に、前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域に向かう方向に沿って前記第4金属部材から前記第2硬度遷移領域にかけて硬度が徐々に変化する第5硬度遷移領域が存在することを特徴とする接合体。
【請求項12】
請求項11又は12に記載の接合体を用いて製造された金属製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−81998(P2013−81998A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225341(P2011−225341)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(505290542)株式会社 旭 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(505290542)株式会社 旭 (8)
【Fターム(参考)】
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