説明

接合処理用工具

【課題】雌雄の部材の接合作業の作業性を向上させた接合処理工具を提供する。
【解決手段】接合処理用工具70の一対の操作部73の内の一方の操作部73には、他方の操作部73との対向面に雄部材押圧板76が設けられ、他方の操作部73には、一方の操作部73との対向面に雌部材押圧板77が設けられ、雄部材押圧板76には、雄部材50を押圧するべく突設された1つの押し込み突起761が設けられ、雌部材押圧板77には、雌部材60を押圧するべく突設された2つの押圧条772が設けられ、雌雄の部材60,50は、1つの押し込み突起761と2つの押圧条772とによる3点の押圧処理によって互いに接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の被処理物に対向可能に付設された接合手段である雄部材と雌部材とを互いに当接結合(接合)させるために使用される接合処理用工具に関するものであり、特に、電線などの長尺物(被巻き付け物)に巻き付けられる巻き付け具(被処理物)への適用等が好適な接合処理用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の巻き付け具の一例である鳥害防止具が特許文献1に記載されている。この鳥害防止具は、電線等の長尺物に止まる鳥の糞害を防止するために使用されるものであり、横長の長方形状を呈するゴム製あるいは軟質の合成樹脂製の平板状部材と、この平板状部材の表面側から密集状態で突設された複数本の針状体とを備えて構成されている。
【0003】
このような鳥害防止具は、平板状部材の裏面側を当該電線に沿わせた状態で電線を包み込むように湾曲され、引き続き対向した両縁部を、接合手段を介して互いに接合させることにより電線に装着される。
【0004】
かかる鳥害防止具が電線に取り付けられることにより、当該電線は、全周に亘って鳥が嫌う多数の針状体によって保護された状態になり、鳥が電線に止まることを確実に防止することができる。
【0005】
前記接合手段は、平板状部材の一方の縁部から突設された雄部材としての第1ブラケットと、この第1ブラケットに対応し得るように他方の縁部から突設された雌部材としての第2ブラケット(引用文献1ではブラケットという表記がないが、ここでは分かり易くするべくあえて使用した)とを備えて構成されている。前記第1ブラケットには、第2ブラケットとの対向面に突起が設けられている一方、第2ブラケットには、この突起に対応した位置に当該突起を嵌め込ませるための嵌合孔が設けられている。
【0006】
前記突起は、先端が軸心方向で2つに割れた二股状に形成され、各先端に互いに反対方向に向けて突設された返し部がそれぞれ設けられている。
【0007】
前記嵌合孔は、突起の二股部分間の外寸法より僅かに大きく設定されているとともに、一対の返し部間の外寸法より小さく設定されている。従って、突起を嵌合孔に押し込んでいくと、一対の返し部がそれぞれ嵌合孔の縁部と干渉し、これによって二股部分が互いに接近する方向に向けて一旦弾性変形する。そして、一対の返し部は、嵌合孔の縁部を通り過ぎると弾性力によって元の離間状態に復元するため、各返し部が嵌合孔の縁部に係止されることになる。従って、前記の鳥害防止具は、突起の二股部分を第2ブラケットの嵌合孔に圧入することにより、外れ止め状態で両者を互いに結合することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−173006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来、上記のような突起を嵌合孔に嵌入して第1および第2ブラケットを接合する操作は、絶縁性の分厚い手袋を嵌めたうえで、手指を用いた手作業で行われたり、ペンチやマイナスドライバー等の市販の工具を用いて行われたりするのが一般的であった。
【0010】
しかしながら、分厚い手袋を嵌めての手作業は、指先が思うように動かないだけでなく、手作業では指先に大きな力がかかり、手の疲労で長時間の作業を行うことができず、作業性が極めて劣るという問題点を有している。
【0011】
これに対し市販のペンチやマイナスドライバー等の工具を用いた場合は、手指のみによるときのような大きな力を必要とせず、その分作業性が向上する。しかしながら、市販の工具は、単に二股状の操作部により目的物を挟持するだけの構造のものであるため、ゴム製や軟質の合成樹脂製の柔軟な第1ブラケットに設けられている突起を、同一の材料製の第2ブラケットに穿設された嵌合孔に差し込んで返し部で係止させるような複雑な作業を前記工具で安定して行うことは困難であり、結果として作業性が劣るという問題点を有している。
【0012】
本発明は、従来のかかる問題点を解消するべくなされたものであって、所定の被処理物に付設された雌部材および雄部材に対し容易に接合処理を施すために使用され、これによって接合作業の作業性を向上させることができる接合処理用工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、把持するための一対の把持部と、前記各把持部の先端から延設された一対の操作部とを備え、前記把持部と前記操作部との境界位置が連結軸回りに互いに回動可能に連結されているとともに、所定の被処理物における係止用突起が突設された雄部材と、前記係止用突起が係止状態で嵌入される嵌合孔が穿設された雌部材とが前記一方および他方の操作部にそれぞれ押圧挟持され得るように構成された接合処理用工具において、前記一方の操作部には、前記他方の操作部との対向面に雄部材押圧板が設けられ、前記他方の操作部には、前記一方の操作部との対向面に雌部材押圧板が設けられ、前記雄部材押圧板には、前記雄部材を押圧するべく突設された1つの第1押圧部が設けられ、前記雌部材押圧板には、前記雌部材を押圧するべく突設された2つの第2押圧部が設けられ、前記雌雄の部材が、前記1つの第1押圧部と前記2つの第2押圧部とによる3点の押圧処理によって互いに外れ止めされるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、雌雄の部材を接合処理用工具を用いて互いに外れ止めするに際しては、まず、雌雄の部材の対向面が互いに近付けられた状態で、一対の操作部の第1および雌部材押圧板間に雌雄の部材を挟み込むことが行われる。このとき、雄部材押圧板を雄部材に当てるとともに、雌部材押圧板を雌部材に当てるようにする。この状態で把持している一対の把持部を強く握り締めることにより、第1および雌部材押圧板は、連結軸回りに互いに接近する方向に向けて回動し、これによって雌雄の部材は、互いに当接されて押圧挟持される。
【0015】
そして、雌雄の部材は、雄部材の係止用突起に対応した部分が当接される1つの第1押圧部と、雌部材の嵌合孔に対応した部分が当接される2つの第2押圧部とにより、3点が押圧処理されるため、係止用突起および各点は、確実に雌雄の部材に当接され、これによって安定した押圧処理が実現する。
【0016】
特に、第1押圧部が雄部材の係止用突起に対応した部分に当接されているため、把持部を操作することによる押圧力を確実に係止用突起に伝達することができる。
【0017】
また、2つの第2押圧部を、嵌合孔を跨いだ状態で雌部材に当接させることにより、嵌合孔の状態が安定するため、把持部を操作することにより係止用突起を当該嵌合孔に容易に嵌め込むことができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記第1押圧部を雄部材の前記係止用突起に対応させた状態で、前記2つの第2押圧部が前記雌部材の嵌合孔を基準とした略左右対象位置に臨むように第1および第2押圧部の設置位置が設定され、前記第1押圧部と、前記第2押圧部とによる押圧挟持で前記雄部材の係止用突起を前記雌部材の嵌合孔に嵌め込ませるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、雌雄の部材がゴムやたとえ軟質の合成樹脂によって可撓性を備えているような場合であっても、2つの第2押圧部が嵌合孔を跨ぐことで当該嵌合孔の保形性が確保されるため、係止用突起を嵌合孔に確実に嵌め込むことができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第1押圧部は、一対の片割れ突起によって二股状に形成された雄部材を、前記片割れ突起の基端側から押圧し、前記第2押圧部は、前記嵌合孔を横断し、前記一対の片割れ突起の間に嵌り込むように先端を自由端とした抜け止め片を設けた雌部材を、前記抜け止め片の側から押圧するように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、雄部材の係止用突起である一対の片割れ突起が雌部材の嵌合孔に貫通されつつあるときは、各片割れ突起の先端の一対の返し部が嵌合孔の内周面と干渉し、これによって各片割れ突起は、互いに接近する方向に向けて弾性変形している。
【0022】
そして、一対の返し部が嵌合孔から外部に突出すると、弾性変形していた一対の片割れ突起が元の状態に復元し、これによって一対の返し部が嵌合孔の孔縁に係止されるため、片割れ突起が嵌合孔から抜け止めされる。
【0023】
このとき、雌部材に設けられた抜け止め片が一対の返し部の間に押し込まれるため、以後、一対の返し部が互いに接近する方向に向けて弾性変形し、嵌合孔から抜け出てしまうような不都合の発生が確実に防止される。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記第1押圧部は、前記雄部材押圧板から前記係止用突起に対応して突設された突片であることを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成によれば、突片によって雄部材の雄部材押圧板の係止用突起に対応した部分を集中的に押圧することができる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、第1押圧部は、前記雄部材押圧板の前記雌部材押圧板に対する対向面が円弧状に膨設された円弧形状部の頂部によって形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
かかる構成によれば、雄部材押圧板は、雌部材押圧板との対向面が、抜け止め片を一対の片割れ突起間に押し込み得るように全体的に雌部材押圧板へ向けて膨出した円弧形状とされているため、雄部材および雌部材が円弧形状に変形し、特に、雄部が一対の片割れ突起によって二股状に形成されている場合において、一対の片割れ突起の先端側の間隔を広くすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る接合処理用工具によれば、雄部材の係止用突起に対応した部分が当接される1つの第1押圧部と、雌部材の嵌合孔に対応した部分が当接される2つの第2押圧部とにより、3点が押圧されるため、第1および第2押圧部によって安定した状態で雌雄の部材を押圧することができ、雌雄の部材に対し確実な外れ止め処理を施すことができる。
【0029】
そして、このように接合処理用工具を用いて雌雄の部材を互いに結合することにより、従来のように手で行う場合や、3点支持ではなく単に挟持するだけのペンチやレンチ等を用いて行う場合に比較し、被処理物の雌雄の部材を容易に結合することができ、作業時の疲労の軽減および作業効率の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る接合処理用工具が利用される巻き付け具の一実施形態を示す図であり、(A)は展開斜視図、(B)は接合手段の雄部材の拡大斜視図、(C)は接合手段の雌部材の拡大斜視図である。
【図2】図1に示す巻き付け具が電線に巻き付けられた状態を示す部分斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る接合処理用工具を示す斜視図であり、(A)は、接合処理用工具の操作部が開かれた状態、(B)は、同操作部が閉じられた状態をそれぞれ示している。
【図4】第1実施形態に係る接合処理用工具の作用を説明するための図3(B)のIII−III線視の模式的断面図であって、(A)は、雄部材および雌部材が雄部材押圧板および雌部材押圧板によって押圧される直前の状態、(B)は、雄部材および雌部材が雄部材押圧板および雌部材押圧板によって押圧挟持されることにより、係止用円柱体が嵌合孔に嵌り込みつつある状態、(C)は、係止用円柱体が嵌合孔を貫通し返し部による係止で雄部材および雌部材が互いに外れ止めされた状態をそれぞれ示している。
【図5】第2実施形態に係る接合処理用工具を示す斜視図である。
【図6】雄部材と雌部材とを接合する接合構造の他の実施形態を示す断面視の説明図であり、(A)は、雌雄の部材が接合される前の状態、(B)は、雌雄の部材が接合されつつある状態。(C)は、雌雄の部材が接合された状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本発明に係る接合処理用工具70が利用される巻き付け具10について説明する。図1および図2は、本発明に係る接合処理用工具70によって接合処理される巻き付け具10の一実施形態を示す斜視図であり、図1は、展開斜視図、図2は、巻き付け具10が電線Lに巻き付けられた状態を示す斜視図である。特に図1では、(A)に巻き付け具10の展開斜視図を、(B)に接合手段40の雄部材50の拡大斜視図を、(C)に接合手段40の雌部材の拡大斜視図をそれぞれ示している。なお、図1および図2において、X方向を左右方向、Y方向を前後方向といい、特に−Xを左方、+Xを右方、−Yを前方、+Yを後方という。
【0032】
本実施形態に係る巻き付け具(被処理物)10は、鳥が止まるのを防止するべく電線(長尺物(被巻き付け物))Lに装着されて、いわゆる鳥害防止具として使用されるものであるが、巻き付け具10が鳥害防止具であることに限定されるものではなく、竿竹などの各種の長尺物を含め、これら以外の各種の被処理物にも適用し得るものである。
【0033】
かかる巻き付け具10は、図1および図2に示すように、軟質の合成樹脂製の長方形状を呈する平板状部材20と、この平板状部材20の表面側(図1では上面側)に立設された複数本の針状体30と、平板状部材20の長手方向(図1では左右方向)へ延びる各縁部に付設された複数(本実施形態では3組)の接合手段40とを備えた基本構成を有している。前記接合手段40は、平板状部材20を短手方向に湾曲させることによって図2に示すように電線Lに巻き付かせ、この状態で長尺側の各縁部を互いに接合させるものである。
【0034】
前記平板状部材20は、本実施形態においては、長尺側である左右寸法が略500mmに設定されているとともに、短尺側である前後寸法が略100mmに設定されている。また、厚み寸法が略3mmに設定されているが、かかる寸法に限定されるものではなく、状況に応じて各種の寸法に設定することができる。
【0035】
かかる平板状部材20には、左右方向に長尺の複数の長孔21が規則正しく多数穿設されている。この長孔21は、複数孔(図1に示す例では10個の孔)が左右へ向けて直列に整列され、かかる孔列が前後方向で8列設けられている。このように多数の長孔21が設けられることにより、平板状部材20の材料コストの低減化が図られている。
【0036】
また、平板状部材20の左端の前後方向に延びる縁部には、同一厚み寸法で上方に向けて若干ずらされた状態の前後方向に延びる帯状縁部22が設けられている。一方、平板状部材20の右端の前後方向に延びる縁部には、裏面(図1では下面)側が平板状部材20と面一で厚み寸法が平板状部材20より若干薄めに設定された前後方向に延びる段差縁部23が設けられている。
【0037】
前記帯状縁部22には、前後の各端部に裏面側から図1における下方へ向けて突設された一対の係止ピン221が設けられているとともに、これら一対の係止ピン221間には、複数(図1に示す例では3つ)の角孔222が等ピッチで穿設されている。
【0038】
一方、前記段差縁部23には、前後の各端部に前記各係止ピン221に対応し、かつ、係止ピン221が摺接状態で嵌入され得る円孔231が穿設されているとともに、一対の円孔231間には、前記各角孔222に対応し、かつ、各帯状縁部22に嵌入し得る係止突起232が表面(図1では上面)側から外方に向けて突設されている。
【0039】
これらの係止ピン221および円孔231、並びに角孔222および係止突起232は、巻き付け具10を直列に継ぎ足すときにそれぞれが嵌め合わされ、これによって隣り合った巻き付け具10が離間するのを防止するためのものである。
【0040】
さらに、平板状部材20には、裏面側に、帯状縁部22および段差縁部23も含めた状態で、長尺方向である左右方向の全長に亘って凹設された複数条の折りくせ保持溝223が設けられている。本実施形態においては、前後方向に等ピッチで9条が設けられ、図2に示すように、平板状部材20における折りくせ保持溝223の部分が容易に折り曲げられることによって、平板状部材20の電線Lに対する巻き付け作業を容易に行うことができる
【0041】
前記針状体30は、平板状部材20と同一材料によって形成され、前端の1列を除いて平板状部材20における左右方向で隣設された長孔21間の中実部分に立設されている。かかる針状体30は、図1に示す例では、左右方向に整列された各列に10本ずつが設けられ、9列とされていることから、合計で90本の針状体30が1枚の平板状部材20に設けられていることになる。
【0042】
また、針状体30の長さ寸法は、本実施形態では略60mmとされ、これによって図2に示すように、巻き付け具10が電線Lに装着された状態で鳥が止まることができないようになされている。
【0043】
前記接合手段40は、平板状部材20と同一材料で形成され、平板状部材20の前縁部に立設された雄部材50と、前後方向でこの雄部材50と対向するように後縁部に立設された雌部材60とからなっている。かかる接合手段40は、本実施形態においては、平板状部材20の左右方向における左端部と、中央部と、右端部との3カ所に設けられているが、3カ所であることに限定されるものではなく、2カ所であってもよいし、4カ所以上であってもよい。
【0044】
前記雄部材50は、図1(B)に示すように、将棋の駒形状を呈する雄側ブラケット51と、この雄側ブラケット51の中央部から図1における前方へ向けて突設された円柱状を呈する係止用円柱体52とを備えている。
【0045】
前記係止用円柱体52は、先端(前端)から軸心を通る状態で切り込まれた割れ溝523を挟んで左右対称に形成された一対の片割れ突起521と、各片割れ突起521の先端に形成された返し部522とを有している。
【0046】
前記返し部522は、先端(図1における前端)側の曲率径寸法が片割れ突起521のそれと同一に設定されている一方、基端(図1における後端)側の曲率径寸法が片割れ突起521のそれより若干大きめに設定されている。これによって返し部522の曲率周面は、先端に向かって先下がりの傾斜周面になっている。
【0047】
前記雌部材60は、図1(C)に示すように、雄側ブラケット51と同一の外形を呈する雌側ブラケット61と、この雌側ブラケット61の中央部で前記係止用円柱体52に対応して穿設された嵌合孔62と、この嵌合孔62を上下方向に向けて横断するように設けられた抜け止め片63とを備えている。
【0048】
前記嵌合孔62は、内径寸法が前記雄部材50の片割れ突起521の曲率径寸法より僅かに大きめに設定され、これによって片割れ突起521は、摺接状態で嵌合孔62に嵌入され得るようになっている。
【0049】
前記抜け止め片63は、嵌合孔62の図1における前方側において、下端部が平板状部材20と一体に、また下部が雌側ブラケット61と一体に、かつ、嵌合孔62の孔心を通るように立設されている。かかる抜け止め片63の先端は、自由端とされている。
【0050】
このような抜け止め片63は、左右幅寸法が前記係止用円柱体52の割れ溝523より僅かに小さめに設定されている。従って、係止用円柱体52を嵌合孔62に差し込んでいくと、抜け止め片63が係止用円柱体52と対向した状態になるため、この状態で抜け止め片63を割れ溝523に向けて押し込むことができる。
【0051】
このように構成された巻き付け具10は、係止ピン221を除き平板状部材20、針状体30および接合手段40がそれぞれ一体的に射出成型法によって製造されている。因みに係止ピン221は、射出成形処理が行われた後に、後付けで取り付けられている。
【0052】
かかる図1に示す巻き付け具10を、電線Lに巻き付け、接合手段40の雄部材50を同雌部材60に接合させることにより、巻き付け具10は、図2に示すように、電線Lに装着される。因みに、巻き付け具10が電線Lに装着された状態で、通常、接合手段40の重みにより当該接合手段40が下側に回り込んでいる場合が多いが、図2では、接合手段40を見易くするべく上向きにして示している。
【0053】
なお、雄部材50と雌部材60との接合に際しては、雄部材50の係止用円柱体52が嵌合孔62に嵌め込まれる当初、返し部522が嵌合孔62の縁部と干渉するが、雄部材50を雌部材60に向けて押圧することにより、係止用円柱体52の先細りになった傾斜周面が嵌合孔62の縁部に誘導されることで各片割れ突起521が互いに接近する方向に向けて弾性変形し、これによって返し部522は嵌合孔62をすり抜けることができる。
【0054】
そして、返し部522が嵌合孔62をすり抜けると、弾性変形していた各片割れ突起521が元に復元するため、返し部522が嵌合孔62の縁部に係止され、これによって係止用円柱体52が抜け止めされる。
【0055】
さらに、本実施形態においては、係止用円柱体52が嵌合孔62に嵌入された状態で、一対の片割れ突起521間の割れ溝523に抜け止め片63が嵌め込まれるため、一対の片割れ突起521が互いに接近する方向に向けて弾性変形することを確実に防止することができる。
【0056】
従って、巻き付け具10が電線Lに装着された状態で、当該巻き付け具10に各種の外力が作用しても、雄部材50および雌部材60が互いに離間することを確実に防止することができるため、結果として巻き付け具10が電線Lから脱落してしまうような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態に係る巻き付け具10は、電線Lを囲繞するように当該電線Lに装着されるものであり、電線Lに巻き付けられる柔軟性材料製の平板状部材20と、平板状部材20の互いに対応した一対の縁部同士を接合させる接合手段40とが備えられてなるものである。
【0058】
そして、接合手段40は、平板状部材20の一方の縁部に設けられた雄部材50と、この雄部材50が嵌入可能に平板状部材20の他方の縁部に設けられた雌部材60とを有している。しかも、雌部材60は、雄部材50が嵌め込まれる嵌合孔62と、当該嵌合孔62に嵌め込まれた雄部材50の抜け止めを行う抜け止め片63とを有している。
【0059】
かかる巻き付け具10によれば、電線Lに平板状部材20が巻き付けられ、かつ、接合手段40の雄部材50が同雌部材60の嵌合孔62に嵌め込まれ状態で、雌部材60に設けられた抜け止め片63が雄部材50を抜け止めするため、巻き付け具10に思わぬ外力が作用しても、雄部材50が雌部材60から抜けてしまうことはない。従って、電線Lに装着された巻き付け具10が外力の作用で電線Lから外れてしまうような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0060】
そして、本実施形態においては、抜け止め片63は、雄部材50の一部(具体的には雄部材50の割れ溝523)に嵌り込むことによって当該雄部材50の嵌合孔62からの抜け止めを行うようになされているため、抜け止め構造を簡単なものにすることができる。
【0061】
また本実施形態においては、雄部材50の係止用円柱体52は、互いに対向し、かつ、先端に互いに反対方向に向けて突設された返し部522をそれぞれ有する一対の片割れ突起521によって二股状に形成されている。そして、嵌合孔62は、一対の片割れ突起521が嵌め込まれることによって各返し部522を抜け止め可能に孔縁に係止させるように寸法設定されているとともに、抜け止め片63は、各返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止された状態で一対の片割れ突起521間に押し込まれ得る位置に設けられている。
【0062】
従って、雄部材50の一対の片割れ突起521を雌部材60の嵌合孔62に嵌め込んだ状態で、雌突起に設けられた抜け止め片63を一対の片割れ突起521間に押し込むことにより、各片割れ突起521に設けられた返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止され、これによって一対の片割れ突起521を確実に抜け止めすることができる。
【0063】
さらに、一対の返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止された状態で抜け止め片63を一対の片割れ突起521間に押し込むことによって、当該一対の片割れ突起521が互いに接近する方向に向けて弾性変形することが確実に阻止されるため、たとえ各種の外力が巻き付け具10に加わったとしても、各片割れ突起521に設けられた返し部522が嵌合孔62の孔縁から外れることはなく、雄部材50が雌部材60から分離してしまうような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0064】
以下、図3〜図5を基に本発明に係る第1および第2実施形態の接合処理用工具70,70′について説明する。接合処理用工具70,70′は、雌部材60の雌側ブラケット61に穿設された嵌合孔62に雄部材50の雄側ブラケット51から突設された係止用円柱体52を嵌入した後、雌部材60の抜け止め片63を係止用円柱体52の割れ溝523に嵌め込むためのものである。
【0065】
まず、図3は、第1実施形態に係る接合処理用工具70を示す斜視図であり、図3(A)は、接合処理用工具70の操作部75が開かれた状態、図3(B)は、同操作部75が閉じられた状態をそれぞれ示している。第1実施形態の接合処理用工具70は、前記雌部材60の嵌合孔62に前記雄部材50の係止用円柱体52を押し込んだ上で抜け止め処理を施すものである。
【0066】
かかる接合処理用工具70は、挟持工具である市販のレンチを改装したものであり、作業者が把持するための一対の棒状の把持桿(把持部)72およびこの把持桿72の先端側から延設された前記接合手段40に接合操作を施す一対の操作部73と、これら把持桿72および操作部73の境界位置が連結軸74回りに互いに回動可能に連結されてなる工具本体71と、接合手段40を挟持して押圧する押圧板75とを備えた基本構成を有している。
【0067】
工具本体71は、市販のものであるのに対し、押圧板75は、接合手段40の雄部材50および雌部材60を互いに接合させた上で外れ止め処理を施すべく、木材などを加工することによって形成され、工具本体71の操作部73に付設されている。
【0068】
前記押圧板75は、図3における連結軸74より下方側に示された雄部材押圧板76と、同連結軸74の上方側に示された雌部材押圧板77とからなっている。前記雄部材押圧板76は、押圧板75によって接合手段40を挟持するに際し、接合手段40の雄部材50に当てられるものであり、雌部材押圧板77は、接合手段40の雌部材60に当てられるものである。
【0069】
そして、押圧板75によって接合手段40が挟持された状態で握持している一対の把持桿72に力が込められることによって、雄部材50の係止用円柱体52が雌部材60の嵌合孔62に嵌め込まれるとともに、係止用円柱体52の各片割れ突起521の返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止され、これによって雄部材押圧板76および雌部材押圧板77が互いに外れ止めされるようになっている。
【0070】
前記雄部材押圧板76には、図3における左右方向の中央部の先端位置であって、雄部材50の係止用円柱体52に対応した位置に押し込み突起(突片(第1押圧部))761が設けられている。かかる押し込み突起761が設けられるのは、雄部材50の背面側(図3における下側)において、係止用円柱体52が設けられている部分を集中的に押圧するためである。
【0071】
前記雌部材押圧板77には、図3における左右方向の中央部の先端位置であって、雌部材60の嵌合孔62に対応した位置には、先端から切り欠かれることによって形成された逃がし溝771が形成されている。かかる逃がし溝771が設けられるのは、雄部材押圧板76と雌部材押圧板77とで接合手段40を挟持したとき、嵌合孔62を貫通して雌側ブラケット61の背面側(図3における上側)に抜け出た片割れ突起521の返し部522を逃がすためである。
【0072】
そして、雌部材押圧板77における逃がし溝771を挟んだ両側部には、嵌合孔62を挟み、当該嵌合孔62と干渉しない状態で雌側ブラケット61の表面(図3における上面)に当接して押圧するための一対の押圧条772が設けられている。
【0073】
従って、接合手段40の雌雄の部材60,50が接合処理用工具70の雌雄の押圧板77,76によって押圧挟持された状態では、雌側ブラケット61における嵌合孔62の両側部が一対の押圧条772によって押圧されるとともに、雄側ブラケット51における係止用円柱体52に対応した部分が押し込み突起761によって押圧され、これら2つの押圧条772と、1つの押し込み突起761とによる3点支持によって雌雄のブラケット61,51に押圧処理が施されるため、接合手段40がたとえゴムや軟質の合成樹脂製のものであっても、係止用円柱体52の嵌合孔62への嵌入処理を短時間で容易に行うことができる。
【0074】
図4は、第1実施形態に係る接合処理用工具70の作用を説明するための説明図であって、図3(B)のIII−III線視の模式的断面図である。そして、図4(A)は、雄部材50および雌部材60が雄部材押圧板76および雌部材押圧板77によって押圧される直前の状態、図4(B)は、雄部材50および雌部材60が雄部材押圧板76および雌部材押圧板77によって押圧挟持されることにより、係止用円柱体52が嵌合孔62に嵌り込みつつある状態、図4(C)は、係止用円柱体52が嵌合孔62を貫通し、返し部522による係止で雄部材50および雌部材60が互いに外れ止めされた状態をそれぞれ示している。
【0075】
接合手段40の雌雄の部材60,50を互いに接合させるに際しては、まず、工具本体71の把持桿72(図3)を連結軸74回りに操作し、図4(A)および先の図3(A)に示すように、雌雄の押圧板77,76を離間させ、この状態で雌雄の押圧板77,76間に接合手段40の雌雄の部材60,50を位置させる。
【0076】
このとき、雄部材押圧板76の押し込み突起761を雄部材50の係止用円柱体52に対応させるとともに、雌部材押圧板77の一対の押圧条772を嵌合孔62の両側方の雌側ブラケット61に対応させるようにする。
【0077】
この状態で把持している一対の把持桿72(図3)を握り締めていくことにより、雌雄の押圧板77,76が連結軸74(図3)回りに互いに接近する方向に向けて回動する。これによって雄部材押圧板76の押し込み突起761は、雄側ブラケット51の図4における下面側であって、一対の片割れ突起521に対応した位置を押圧するとともに、雌部材押圧板77の一対の押圧条772は、雌側ブラケット61における嵌合孔62の外側の左右の位置を押圧することになる。
【0078】
そして、これらの押圧挟持状態を継続することにより、図4(B)に示すように、一対の返し部522が嵌合孔62の孔壁と干渉することによって一対の片割れ突起521が互いに接近する方向に向けて弾性変形しつつ、係止用円柱体52が嵌合孔622内に圧入されていく。
【0079】
そして、雌雄の押圧板77,76によって雌雄の部材60,50を最後まで押圧することにより、図4(C)に示すように、係止用円柱体52の片割れ突起521が嵌合孔62を貫通し、これによって弾性変形していた一対の返し部522が雌部材押圧板77の逃がし溝771内で元に復元する。この復元によって返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止され、これによって雄側ブラケット51および雌側ブラケット61は互いに外れ止めされた状態になる。
【0080】
またこのとき、一対の片割れ突起521の先端側(図4における上側)は、図4(B)に示すように、一旦、雌側ブラケット61の抜け止め片63を上方に向けて押圧し、これによって当該抜け止め片63が図4における上方へ向かって弾性変形するが、一対の返し部522が嵌合孔62から上方へ抜け出ると、各返し部522は元に復元し、これによって一対の片割れ突起521間に隙間が生じる。
【0081】
従って、図4(C)に示すように、抜け止め片63が一対の片割れ突起521間に嵌り込むため、一対の片割れ突起521が互いに接近する方向に向けて弾性変形することが防止される。従って、巻き付け具10が電線Lに装着された状態でたとえ当該巻き付け具10に外力が作用しても、接合手段40の雌雄の部材60,50が分離してしまうような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0082】
図5は、第2実施形態に係る接合処理用工具70′を示す斜視図である。第2実施形態の接合処理用工具70′は、工具本体71に、先の木材製の押圧板75に代えて竹材製の押圧板75′が採用されている。
【0083】
竹材製の押圧板75′が採用される理由は以下のとおりである。すなわち、竹材の縦横に切断して得られた切断片は、竹繊維の延びる方向と直交する方向から見た端面視で円弧状に形成され、この切断片の表面側の円弧面を利用することによって第1実施形態の雄部材押圧板76の押し込み突起761と同様の機能を備えることができるとともに、同裏面側の円弧面を利用することによって、第1実施形態の雌部材押圧板77の逃がし溝771と同様の機能を期待することができるからである。
【0084】
そして、第2実施形態の接合処理用工具70′においては、竹材製の雄部材押圧板76′は、竹材を竹の繊維に沿って、曲率中心角が45°〜90°になるように切断した上で所定の長さ寸法に繊維方向と直交に切断することによって形成されている。
【0085】
また、竹材製の雌部材押圧板77′は、曲率中心角が雄部材押圧板76′のそれより若干大きめに設定されているとともに、長さ寸法は、雄部材押圧板76′のそれと同一に設定さえている。
【0086】
そして、特に雌部材押圧板77′にあっては、嵌合孔62を貫通した返し部522を確実に逃がすべく、念のために第1実施形態のものと同様の逃がし溝771が設けられている。
【0087】
このような押圧板76′,77′の内、雄部材押圧板76′は、一方(図5に示す例では下側)の操作部73の上面側に竹材の切断片の裏面側が取り付けられることによって形成され、これによって上に凸になっている。
【0088】
また、雌部材押圧板77′は、他方(図5に示す例では上側)の操作部73の下面側に竹材の切断片の表面側が取り付けられることによって形成され、これによって上に凸(すなわち下に凹)になっている。そして、雌部材押圧板77′は、端面視で図5における上に凸の円弧状を呈しており、その両側部の各縁部によって押圧条772′がそれぞれ形成されている。これら一対の押圧条772′によって雌部材60の雌側ブラケット61が押圧される。第2実施形態の接合処理用工具70′のその他の構成は、第1実施形態の接合処理用工具70と同様である。
【0089】
第2実施形態の接合処理用工具70′によれば、第1実施形態の木材製の雄部材押圧板76および雌部材押圧板77が、それぞれ竹材製の雄部材押圧板76′および雌部材押圧板77′に変更になっているだけであり、第1実施形態の接合処理用工具70と同様の作用効果を奏することができる。
【0090】
このような第1および第2実施形態の接合処理用工具70,70′を採用することにより、巻き付け具10を電線Lに装着するに際して行われる雄部材50と雌部材60との接合作業を、従来の指先による手作業や、ペンチなどの従来の工具を用いて行う場合などに比較し、格段に短時間で容易に行うことができるため、結果として電線Lに対する巻き付け具10の装着作業の作業性を大幅に向上させることができる。
【0091】
以上詳述したように、第1および第2実施形態に係る接合処理用工具70,70′は、把持するための一対の棒状の把持桿72と、各把持桿72の先端から延設された一対の操作部73とを備え、把持桿72と操作部73との境界位置が連結軸74回りに互いに回動可能に連結されているとともに、所定の被処理物(本実施形態では巻き付け具10)における係止用円柱体52が突設された雄部材50と、係止用円柱体52が係止状態で嵌入される嵌合孔62が穿設された雌部材60とが各操作部73,73にそれぞれ押圧挟持され得るように基本構成されている。
【0092】
そして、一方の操作部73には、他方の操作部73との対向面に雄部材押圧板76,76′が設けられているとともに、他方の操作部73には、一方の操作部73との対向面に雌部材押圧板77,77′が設けられている。
【0093】
また、雄部材押圧板76,76′には、雄部材50を押圧するべく突設された1つの押し込み突起761(第2実施形態では円弧形状の雄部材押圧板76′そのものの頂部が第1実施形態の押し込み突起761を代用している)が設けられている。
【0094】
そして、雌部材押圧板77,77′には、雌部材60を押圧するべく突設された2つの押圧条772,772′が設けられ、雌雄の部材60,50は、1つの押し込み突起761と2つの押圧条772,772′とによる3点の押圧処理によって互いに接合されている。
【0095】
かかる構成によれば、雌雄の部材60,50を接合処理用工具を用いて互いに外れ止めするに際しては、まず、雌雄の部材60,50の対向面が互いに近付けられた状態で、一対の操作部73の雄部材押圧板76,76′および雌部材押圧板77,77′間に雌雄の部材60,50を挟み込むことが行われる。
【0096】
このとき、雄部材押圧板76,76′を雄部材50に当てるとともに、雌部材押圧板77,77′を雌部材60に当てるようにする。この状態で把持している一対の把持桿72を強く握り締めることにより、雄部材押圧板76,76′および雌部材押圧板77,77′は、連結軸74回りに互いに接近する方向に向けて回動し、これによって雌雄の部材60,50は、互いに当接されて押圧挟持される。
【0097】
そして、雌雄の部材60,50は、雄部材50の係止用円柱体52に対応した部分が当接される1つの押し込み突起761と、雌部材60の嵌合孔62に対応した部分が当接される2つの押圧条772,772′とにより、3点が押圧処理されるため、係止用円柱体52および各点は、雌雄の部材60,50に無駄なく確実に当接され、これによって安定した状態で押圧処理を施すことができる。
【0098】
特に、押し込み突起761が雄部材50の係止用円柱体52に対応した部分に当接されているため、把持桿72を操作することによる押圧力を確実に係止用円柱体52に伝達することができる。
【0099】
また、2つの押圧条772,772′を、嵌合孔62を跨いだ状態で雌部材60に当接させることにより、嵌合孔62の状態が安定するため、把持桿72を操作することにより係止用円柱体52を当該嵌合孔62に容易に嵌め込むことができる。
【0100】
そして、本実施形態においては、押し込み突起761を雄部材50の係止用円柱体52に対応させた状態で、2つの押圧条772,772′が雌部材60の嵌合孔62を基準とした略左右対象位置に臨むように押し込み突起761および押圧条772,772′の設置位置が設定されている。また、押し込み突起761と、押圧条772,772′とによる押圧挟持で雄部材50の係止用円柱体52を雌部材60の嵌合孔62に嵌め込ませるようになされている。
【0101】
かかる構成によれば、雌雄の部材60,50がゴムやたとえ軟質の合成樹脂によって可撓性を備えているような場合であっても、2つの押圧条772,772′が嵌合孔62を跨ぐことで当該嵌合孔62の保形性が確保されるため、係止用円柱体52を嵌合孔62に確実に嵌め込むことができる。
【0102】
また、本実施形態においては、雄部材50は、互いに対向し、かつ、先端に互いに反対方向に向けて突設された返し部522をそれぞれ有する一対の片割れ突起521によって二股状に形成されている。
【0103】
そして、嵌合孔62は、一対の片割れ突起521が貫通嵌入されることによって各返し部522を抜け止め可能に孔縁に係止させるように寸法設定され、雌部材60は、各返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止された状態で一対の片割れ突起521間に押し込まれ得る抜け止め片63を有している。
【0104】
かかる構成によれば、雄部材50の係止用円柱体52である一対の片割れ突起521が雌部材60の嵌合孔62に貫通されつつあるときは、各片割れ突起521の先端の一対の返し部522が嵌合孔62の内周面と干渉し、これによって各片割れ突起521は、互いに接近する方向に向けて弾性変形している。
【0105】
そして、一対の返し部522が嵌合孔62から外部に突出すると、弾性変形していた一対の片割れ突起521が元の状態に復元し、これによって一対の返し部522が嵌合孔62の孔縁に係止されるため、片割れ突起521が嵌合孔62から抜け止めされる。
【0106】
このとき、雌部材60に設けられた抜け止め片63が一対の返し部522の間に押し込まれるため、以後、一対の返し部522が互いに接近する方向に向けて弾性変形し、嵌合孔62から抜け出てしまうような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0107】
そして、第1実施形態の接合処理用工具70においては、押し込み突起761は、雄部材押圧板76から係止用円柱体52に対応して突設されているため、押し込み突起761によって雄部材50の雄部材押圧板76の係止用円柱体52に対応した部分を集中的に押圧することができる。
【0108】
また、第2実施形態の外れ止め処理工具70′によれば、押し込み突起761は、雄部材押圧板76′の雌部材押圧板77′に対する対向面が円弧状に膨設された円弧形状部の頂部によって形成されているため、雄側ブラケット51および雌側ブラケット61が円弧状に変形し、一対の片割れ突起521の先端側の間隔が広くなるため、抜け止め片63が一対の片割れ突起521の間に入り易いものとされる。
【0109】
そして、このように接合処理用工具70,70′を用いて雌雄の部材60,50を互いに結合することにより、従来のように手で行う場合や、3点支持ではなく単に挟持するだけのペンチやレンチ等を用いて行う場合に比較し、平板状部材20の雌雄の部材60,50を容易に結合することができ、作業時の疲労の軽減および作業効率の向上に貢献することができる。
【0110】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0111】
(1)上記の実施形態においては、巻き付け具10として電線Lに装着される鳥害防止具を例に挙げて説明したが、本発明は、巻き付け具10が鳥害防止具であることに限定されるものではなく、竿竹等の長尺物にも適用可能であり、さらに長尺物ではない、通常の直方体状のものや筒体状のもの等にも適用可能である。
【0112】
(2)上記の実施形態においては、第1実施形態の雄部材押圧板76に押し込み突起761が設けられているが、特に押し込み突起761を設けない平板状のものであってもよい。この場合、雄側ブラケット51の外面側が雄部材押圧板76によって全体的に押圧されることになる。
【0113】
(3)上記実施形態において、雌部材押圧板77の一対の押圧条772間の逃がし溝771に、雌側ブラケット61の抜け止め片63に対応する押圧片を設け、接合処理用工具70の雌雄の押圧板77,76により雌雄のブラケット61,51を押圧挟持した状態で、抜け止め片63がこの押圧片によって雄側ブラケット51の一対の片割れ突起521の割れ溝523へ向けて押し込まれるようにしてもよい。こうすることで、抜け止め片63を割れ溝523へ確実に嵌め込むことができる。
【0114】
(4)図6は、雄部材50′と雌部材60′とを接合する接合構造の他の実施形態を示す断面視の説明図であり、図6(A)は、雌雄の部材60′,50′が接合される前の状態、図6(B)は、雌雄の部材60′,50′が接合されつつある状態。図6(C)は、雌雄の部材60′,50′が接合された状態をそれぞれ示している。
【0115】
この実施形態の接合構造においては、雄部材50′の雄側ブラケット51には、上記の片割れ突起521を有する係止用円柱体52に代えて、雄側ブラケット51に立設された括れ軸53と、この括れ軸53の先端に同心で付設された球体54とが設けられている。
【0116】
括れ軸53は、径寸法が雌側ブラケット61の嵌合孔62の孔径寸法より若干小さめに設定されているのに対し、球体54の径寸法は、嵌合孔62の径寸法より僅かに大きめに設定されている。
【0117】
また、括れ軸53の長さ寸法は、雄側ブラケット51の厚み寸法より若干短めに設定されている。さらに、雌側ブラケット61には、抜け止め片63が設けられていない。
【0118】
かかる構成の接合構造によれば、図6(A)に示すように、球体54を嵌合孔62に対向させた状態で、雄部材50′および雌部材60′に矢印で示すような力を加える。
【0119】
そうすると、図6(B)に示すように、球体54が嵌合孔62の孔壁を弾性半径させながら当該嵌合孔62内に圧入されていく。
【0120】
そして、図6(C)に示すように、球体54が嵌合孔62から抜け出たときには、球体54の周面が嵌合孔62の孔縁と干渉した状態になるため、雌雄の部材60′,50′は、外れ止め状態で互いに接合される。この接合を解除するときは、矢印と反対方向に向けて雌雄の部材60′,50′に力を加え、両者を引き剥がせばよい。
【0121】
このような接合構造において、括れ軸53の長さ寸法と球体54の半径との合計寸法は、雌側ブラケット61の厚み寸法より若干短めに設定され、これによって球体54が嵌合孔62から抜け出たとき、嵌合孔62の孔縁が弾性変形しない状態で球体54が孔縁に当接するようになされている。
【0122】
しかし、こうする代わりに、前記の合計寸法を雌側ブラケット61の厚み寸法より相当短くすると、球体54が嵌合孔62から抜け出た状態で、当該球体54の周面が嵌合孔62の孔縁を弾性変形させたままの状態になるため、この弾性力で雌雄の部材60′,50′は密着し、これによって両者がガタつくような不都合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 巻き付け具(被処理物) 20 平板状部材
21 長孔 22 帯状縁部
221 係止ピン 222 角孔
23 段差縁部 231 円孔
232 係止突起 30 針状体
40 接合手段 50,50′ 雄部材
51 雄側ブラケット 52 係止用円柱体(係止用突起)
521 片割れ突起 522 返し部
523 割れ溝 60,60′ 雌部材
61 雌側ブラケット 62 嵌合孔
63 抜け止め片 70,70′ 接合処理用工具
71 工具本体 72 把持桿(把持部)
73 操作部 74 連結軸
75,75′ 押圧板 76,76′ 雄部材押圧板
761 押し込み突起(突片(第1押圧部))
77,77′ 雌部材押圧板
771 逃がし溝 772,772′ 押圧条(第2押圧部)
L 電線(長尺物(被巻き付け物)))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持するための一対の把持部と、前記各把持部の先端から延設された一対の操作部とを備え、前記把持部と前記操作部との境界位置が連結軸回りに互いに回動可能に連結されているとともに、
所定の被処理物における係止用突起が突設された雄部材と、前記係止用突起が係止状態で嵌入される嵌合孔が穿設された雌部材とが前記一方および他方の操作部にそれぞれ押圧挟持され得るように構成された接合処理用工具において、
前記一方の操作部には、前記他方の操作部との対向面に雄部材押圧板が設けられ、
前記他方の操作部には、前記一方の操作部との対向面に雌部材押圧板が設けられ、
前記雄部材押圧板には、前記雄部材を押圧するべく突設された1つの第1押圧部が設けられ、
前記雌部材押圧板には、前記雌部材を押圧するべく突設された2つの第2押圧部が設けられ、
前記雌雄の部材が、前記1つの第1押圧部と前記2つの第2押圧部とによる3点の押圧処理によって互いに外れ止めされるように構成されていることを特徴とする接合処理用工具。
【請求項2】
前記第1押圧部を雄部材の前記係止用突起に対応させた状態で、前記2つの第2押圧部が前記雌部材の嵌合孔を基準とした略左右対象位置に臨むように第1および第2押圧部の設置位置が設定され、
前記第1押圧部と、前記第2押圧部とによる押圧挟持で前記雄部材の係止用突起を前記雌部材の嵌合孔に嵌め込ませるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の接合処理用工具。
【請求項3】
前記第1押圧部は、一対の片割れ突起によって二股状に形成された雄部材を、前記片割れ突起の基端側から押圧し、
前記第2押圧部は、前記嵌合孔を横断し、前記一対の片割れ突起の間に嵌り込むように先端を自由端とした抜け止め片を設けた雌部材を、前記抜け止め片の側から押圧するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の接合処理工具。
【請求項4】
前記第1押圧部は、前記雄部材押圧板から前記係止用突起に対応して突設された突片であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接合処理工具。
【請求項5】
前記第1押圧部は、前記雄部材押圧板の前記雌部材押圧板に対する対向面が円弧状に膨設された円弧形状部の頂部によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接合処理工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151925(P2011−151925A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10379(P2010−10379)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】