説明

接合方法および接合装置

【課題】接合面の全体を均一に接合でき、さらに好適な接合条件を容易に設定し得る接合方法および接合装置を提供する。
【解決手段】互いに接合される被接合部材10,20の接合面10a,20aを対向させ、一対の被接合部材を相対的に摺動させつつ、被接合部材の一方から他方へ電極42,44を経由して電流を流して抵抗加熱する。接合面の高面圧部に摩耗、塑性流動を生じさせ、時々刻々と電流集中箇所を変化させつつ接合面同士を接合する。さらに、(a)被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極を経由した通電C、および(d)被接合部材と電極とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて接合面同士を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱および加振摩擦を用いた接合方法および接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性の金属材料同士を互いに接合する方法として、抵抗溶接が使用されている。抵抗溶接は、導電性金属材料同士を接触させた状態で電極により挟み、電極から電流を与えることで、接合面の接触抵抗により生じる抵抗加熱により、導電性金属材料同士を溶融接合する方法である。例えば特許文献1には、接合する対の導電性金属材料を接触させた状態で加振し、表面の絶縁被覆を剥がした後に加振を停止させ、抵抗加熱により溶融接合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11―138275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法では、電流を供給した際に、接合面における高面圧部に電流が集中するため、接合面における電流のあまり流れない部位は加熱されず、限定された面積および形状しか接合できない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、接合面の全体を均一に接合でき、さらに好適な接合条件を容易に設定し得る接合方法および接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る接合方法は、導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法である。当該接合方法は、互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記被接合部材の一方から他方へ電極を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有している。そして、前記接合工程において、(a)前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、(b)摺動の変位、(c)前記電極を経由した通電、および(d)前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧力のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて前記接合面同士を接合する。
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る接合装置は、導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合装置である。当該接合装置は、互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記被接合部材の一方から他方へ電極を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合手段を有している。前記接合手段は、前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧手段と、前記被接合部材を相対的に摺動させる摺動手段と、前記被接合部材の一方から他方へ前記電極を経由して電流を流すための電流供給手段と、前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧手段と、前記加圧手段、前記摺動手段、前記電流供給手段、および前記電極加圧手段のそれぞれの作動を制御する制御手段と、を有している。そして、前記制御手段は、前記接合面同士を接合するときに、(a)前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、(b)摺動の変位、(c)前記電極を経由した通電、および(d)前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧力のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて、前記加圧手段、前記摺動手段、前記電流供給手段、または前記電極加圧手段の作動を制御する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した接合方法および接合装置によれば、被接合部材を摺動させつつ抵抗加熱を行って接合するため、抵抗加熱により加熱された高面圧部に摺動が作用して摩耗、塑性流動が生じ、高面圧部の面圧が低下することにより時々刻々と電流集中箇所が変化する。これにより、接合面を均一に加熱し、接合面の全体を均一に接合できる。接合面同士を接合するときには、(a)被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、(b)摺動の変位、(c)電極を経由した通電、および(d)被接合部材と電極とを相対的に押し付ける電極加圧力のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させているため、好適な接合条件を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る接合装置の一例を説明するための概略図である。
【図2】実施の形態に係る接合方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】電極を経由した通電を、摺動の変位に同期させた制御を説明するための図である。
【図4】電極を経由した通電を、摺動の変位に同期させた制御を説明するための図である。
【図5】電極を経由した通電を、時間とともに変化する加圧力に同期させた制御を説明するための図である。
【図6】電極を経由した通電を、時間とともに変化する加圧力に同期させた制御を説明するための図である。
【図7】電極を経由した通電を、時間とともに変化する電極加圧力に同期させた制御を説明するための図である。
【図8】電極を経由した通電を、時間とともに変化する電極加圧力に同期させた制御を説明するための図である。
【図9】時間とともに変化する加圧力を、摺動の変位に同期させた制御を説明するための図である。
【図10】時間とともに変化する電極加圧力を、摺動の変位に同期させた制御を説明するための図である。
【図11】時間とともに変化する電極加圧力を、摺動の変位に同期させた制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0011】
図1は、実施の形態に係る接合装置の一例を説明するための概略図である。
【0012】
実施の形態に係る接合装置40は、導電性を備えた一対の被接合部材10,20を接合するための接合装置である。接合装置40は、概説すれば、互いに接合される被接合部材10,20の接合面10a,20aを対向させ、一対の被接合部材10,20を相対的に摺動させつつ、被接合部材10,20の一方から他方へ第1と第2の電極42,44(電極に相当する)を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、接合面10a,20a同士を接合する接合手段を有している。抵抗加熱および摩擦熱(塑性流動)を利用する接合手段は、被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧装置80(加圧手段に相当する)と、被接合部材10,20を相対的に摺動させる摺動装置70(摺動手段に相当する)と、被接合部材10,20の一方から他方へ電極42,44を経由して電流を流すための電流供給装置50(電流供給手段に相当する)と、被接合部材10,20と電極42,44とを相対的に押し付ける電極加圧装置88(電極加圧手段に相当する)と、制御装置90(制御手段に相当する)を有する。制御装置90は、加圧装置80、摺動装置70、電流供給装置50、および電極加圧装置88のそれぞれの作動を制御する。そして、制御装置90は、接合面10a,20a同士を接合するときに、(a)被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極42,44を経由した通電C、および(d)被接合部材10,20と電極42,44とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて、加圧装置80、摺動装置70、電流供給装置50、または電極加圧装置88の作動を制御している。以下、詳述する。
【0013】
接合されるワークは、上方に位置する被接合部材10と、下方に位置する被接合部材20と、被接合部材10,20の間に配置される被接合部材である中間部材30とからなる。被接合部材10,20および中間部材30は、後述される振動の方向に対して一様形状を有し、接合面10a,20aの延長方向は、水平方向Hとなっている。
【0014】
被接合部材10,20は、本実施の形態においては、アルミニウム(Al)が適用される。アルミニウムは、圧延材(例えば、A5052)や鋳造材(例えば、ADC12)を利用することが可能である。被接合部材10,20は、導電材料であれば特に限定されず、鉄(Fe)やマグネシュウム(Mg)を適用することが可能である。また、Al−Alの同材同士の接合、Al−FeやAl−Mgの異材接合に適用することも可能である。Al−FeやAl−Mgの異材接合体を得ることができるため、シリンダヘッド等の自動車用部品として適用することが容易である。
【0015】
中間部材30は、被接合部材10,20と共晶反応する共晶反応材料からなる。被接合部材10,20がアルミニウムの場合、アルミニウムと低温共晶を形成する共晶反応材料は、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)等を適用することが可能である。
【0016】
共晶反応材料は、液相を形成し、被接合部材10,20同士および共晶反応材料と被接合部材10,20との間における相互拡散を促進するため、良好な接合強度を確保することが可能であり、かつ、形成される液相によって間隙が埋められるため、広い面積や曲面の接合においても良好な水密性を達成することが容易である。したがって、高度な水密性が要求される部位や、2次元的な曲面や大面積部位に、特に有効である。共晶反応材料の厚みは、例えば、10〜100μmであるが、特にこれに限定されず、また、厚さを部位に応じ適宜変化させることも可能である。
【0017】
中間部材30の共晶反応により低融点で液層化し、酸素を遮断して再酸化を抑制する役割を果たすため、真空雰囲気と長時間が必要であった真空ろう付けに対し、大気中における短時間、低入熱での接合が可能となり、量産化が容易となる点でも好ましい。
【0018】
中間部材30は、共晶反応材料以外の液相を形成する導電材料から構成することも可能である。この場合は、中間部材の選択の自由度が大きく(材料の選択範囲が広い)、また、中間部材30によって液相が形成され、被接合部材10,20同士および中間部材30と被接合部材10,20との間における相互拡散が促進されるため、良好な接合強度が確保される。そして、形成される液相によって間隙が埋められるため、広い面積や曲面の接合においても良好な水密性を達成することが容易である。共晶反応材料以外の液相を形成する導電材料としては、共晶反応材料に比較して安価で一般的なろう材や低温はんだが挙げられる。
【0019】
中間部材30は、別体からなる形態に限定されず、被接合部材10,20の一方と一体化された被覆層から構成することも可能である。この場合、中間部材30を局所的に配置することが可能である。被覆は、めっき、クラッド材、塗布等により形成することが可能である。また、中間部材30は、かならずしも設けられなくてもよい。
【0020】
第1および第2電極42,44は、抵抗加熱によって被接合部材10,20および中間部材30(中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20a)を昇温し軟化させるための加熱手段であり、第1電極42は、上方に位置する被接合部材10に電気的に接続され、第2電極44は、下方に位置する被接合部材20に電気的に接続される。第1および第2電極42,44は、被接合部材10,20に直接接触する形態に限定されず、例えば、導電性を有する他の部材を介して間接的に接触させることも可能である。第1および第2電極42,44は、それぞれ複数の電極によって構成することも可能である。
【0021】
電流供給装置50は、直流電流または交流電流を、第1電極42から、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を経由して第2電極44に流すための電流供給手段であり、例えば、電流値および電圧値が調整自在に構成されている。
【0022】
保持装置60は、上方に位置する可動保持部62と下方に位置する固定保持部64とを有する。可動保持部62は、被接合部材10を水平方向Hに往復動自在に保持するために使用される。固定保持部64は、被接合部材20の水平方向Hへの移動を規制し、被接合部材10に対し被接合部材20を相対的に静止した状態で維持するために使用される。
【0023】
摺動装置70は、被接合部材10を被接合部材20に対して相対的に摺動させ、中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20aに摩擦熱(塑性流動)を発生させるために使用される加振手段からなる。加振手段は、可動保持部62に保持された被接合部材10を、接合面10a,20aの延長方向に対して平行である水平方向Hに振動(加振)させるシャフト72と、シャフト72の駆動源であるモータ74と、を有する。加振手段は、加振周波数、加振振幅および加振力等を任意に制御可能となっている。例えば、加振振幅は100〜1000μmの範囲、加振周波数は10〜100Hzの範囲で調整可能に構成されている。加振機構は、特に限定されず、例えば、超音波振動、電磁式振動、油圧式加振、カム式振動を適用することが可能である。
【0024】
加振方向は、接合面10a,20aの延長方向に沿う1方向への往復運動であるため、接合面10a,20aの形状の自由度が向上することとなる。すなわち、1方向にさえ変位可能であれば加振できるため、接合面10a,20aの形状が平面である必要はなく、例えば、一方向に延びる溝に凸部が嵌合する形態とすることも可能である。
【0025】
また、摺動装置70は、振動(加振機構)を利用する形態に限定されず、回転運動や、自転せずに円軌道を描くように振れ回る公転運動を適宜適用することも可能である。なお、公転運動の場合、振動と異なり、接合面10a,20a同士の相対的な運動が停止しないことから、動摩擦係数のみが作用して摩擦係数が安定し、接合面10a,20aを均一に磨耗させることが可能である。
【0026】
加圧装置80は、上方に位置する加圧部82と下方に位置する支持構造体84とを有する。加圧部82は、プッシュロッド86に連結され、かつ、上下方向(接合面10a,20aと直交する押圧方向)Lに進退動可能となっている。加圧部82は、プッシュロッド86を介して被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1を付与可能であり、被接合部材20に対する被接合部材10の押し付け面圧を調整するための面圧調整手段である。加圧部82は、例えば、油圧シリンダが組み込まれており、加圧力P1を調整自在に構成されている。例えば、加圧力P1は接合面にかかる面圧が2〜10MPaとなるように定められている。
【0027】
電極加圧装置88は、第1電極42に連結され、かつ、上下方向Lに進退動可能となっている。電極加圧装置88は、第1電極42を被接合部材10に押し付ける電極加圧力P2を付与可能であり、被接合部材10に対する第1電極42の押し付け面圧を調整するため面圧調整手段である。電極加圧装置88は、例えば、油圧シリンダが組み込まれており、電極加圧力P2を調整自在に構成されている。例えば、電極加圧力P2は電極接触面にかかる面圧が2〜10MPaとなるように定められている。なお、電極加圧装置88は、加圧部82と同様に、被接合部材20に対する被接合部材10の押し付け面圧を調整するための面圧調整手段としても機能している。
【0028】
支持構造体84は、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を介して加圧装置80の加圧力P1および電極加圧装置88の電極加圧力P2が伝達される第2電極44を、支持するために使用される。
【0029】
加圧部82および電極加圧装置88と、支持構造体84とを逆に配置することも可能である。この場合、下方に配置される加圧部82および電極加圧装置88によって第2電極44が押圧され、上方に配置される支持構造体84よって第1電極42が支持されることになる。また、支持構造体84の代わりに、第2の加圧部を設けることによって、面圧調整の自由度を向上させ、第2の電極加圧装置を設けることによって、第2電極44を被接合部材10に押し付ける電極加圧力の調整の自由度を向上させることも可能である。
【0030】
制御装置90は、演算部、記憶部、入力部および出力部を有するコンピュータからなる制御手段であり、加圧装置80、摺動装置70、電流供給装置50、および電極加圧装置88を統括的に制御するために使用される。制御装置90の各機能は、記憶装置に格納されているプログラムを演算部が実行することにより発揮される。
【0031】
プログラムは、例えば、加圧装置80の加圧力P1および電極加圧装置88の電極加圧力P2を調整した状態で、摺動装置70によって被接合部材10を水平方向Hに振動させることによって、中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20aを摺動させつつ、電流供給装置50から供給される電流を、第1電極42から、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を経由して、第2電極44へ流して抵抗加熱することによって、中間部材30を介在させて被接合部材10,20を接合するための手順を、制御装置90に実行させるためものである。
【0032】
次に、実施の形態に係る接合方法を説明する。
【0033】
図2は、実施の形態に係る接合方法を説明するためのフローチャートである。図2に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、制御装置90の記憶部にプログラムとして記憶されており、制御装置90の演算部によって実行される。接合装置40を用いて被接合部材10,20を接合する方法を、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0034】
初めに、図1に示すように、互いに接合する被接合部材10,20の間に中間部材30を挟み、電極42,44の間に被接合部材10,20を保持する。被接合部材20は固定保持部64に固定され、被接合部材10は可動保持部62に振動可能に保持される。
【0035】
続いて、加圧装置80の加圧部82によって、被接合部材10,20同士を予め設定された加圧力P1で加圧する。加圧力P1は、制御装置90で調節され、接合面にかかる面圧は例えば2〜10MPa程度が好ましいが、これに限定されない。電極加圧装置88によって、第1電極42を予め設定された電極加圧力P2で加圧する。電極加圧力P2は、制御装置90で調節され、電極接触面にかかる面圧は例えば2〜10MPa程度が好ましいが、これに限定されない。
【0036】
次に、制御装置90により摺動装置70を駆動させて、被接合部材10を、接合面10a,20aに沿う方向へ加振して摺動させる(予備摺動工程S11)。加振周波数および加振振幅は、特に限定されないが、一例として、加振振幅は100〜1000μm程度が好ましく、加振周波数は10〜100Hz程度が好ましい。
【0037】
上記のように加圧しながら摺動させる予備摺動工程S11が行われると、接合面10a,20aが摺動するとともに摩擦熱が発生して材料が軟化され、接合面10a,20aが磨耗しつつ塑性流動し、接合面10a,20aの間の面圧がある程度均一化される。更に、予備摺動工程S11は、アルミニウムの表面の酸化皮膜を除去して皮膜厚さの違いによる接触抵抗のばらつきを低減させ、後の工程で抵抗加熱した際の発熱量のばらつきを抑える効果を発揮する。したがって、接合する前に、アルミニウムである被接合部材10,20の表面を脱脂し、更にワイヤブラシによりブラッシングして表面の酸化膜を除去する等の処置が不要となり、作業性が向上する。なお、当然、予備摺動工程S11の前にブラッシング等の処置を行ってもよい。
【0038】
予備摺動工程S11の後には、第1接合工程S12を行う。第1接合工程S12では、第1電極42および第2電極44を被接合部材10,20に接触させ、摺動装置70による摺動を維持しつつ、第1電極42と第2電極44の間に電流供給装置50によって電流を供給する。このようにして、摩擦加熱および抵抗加熱の両方を併用して被接合部材10,20を加熱する。第1接合工程S12では、接合面10a,20aにおける電流が集中する高面圧部において抵抗加熱が大きく作用して加熱され、接合面10a,20aの酸化膜が強制的に剥離される。更に、抵抗加熱により加熱された高面圧部に加圧力と摺動が作用して塑性流動および材料拡散が生じ、かつ高面圧部が磨耗して時々刻々と電流集中箇所が変化する。これにより、電流の流れが分散し、接合面10a,20aが均一に加熱される。
【0039】
第1接合工程S12の後には、第2接合工程S13が行われる。第2接合工程S13では、電流供給装置50による電流の供給を減少させる一方、加圧装置80による加圧力P1を増加させることによって摩擦熱が増加させられる。これにより、抵抗加熱による発熱量が減少し、軟化された材料を摺動によって掻き混ぜるようにして一体化を促進する過程へ移行することになる。なお、電流供給装置50による電流の供給は、最終的には停止される。また、摩擦熱の増加は、摺動装置70を制御することによっても達成することが可能である。
【0040】
本実施形態の第1接合工程S12、第2接合工程S13においては、後述するが、制御装置90は、(a)被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極42,44を経由した通電C、および(d)被接合部材10,20と電極42,44とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて、加圧装置80、摺動装置70、電流供給装置50、または電極加圧装置88の作動を制御している。この点については後に詳述する。
【0041】
第2接合工程S13を終了する直前には、摺動装置70を停止させるが、被接合部材10,20を望ましい相対的位置で接合するために、最終的に摺動装置70によって被接合部材10,20を望ましい位置に位置決めする。なお、加圧装置80の加圧力P1や電極加圧装置88の加圧力P2が大きいと位置決め精度が低下するため、摺動装置70を停止させる前に、加圧装置80による加圧力P1や電極加圧装置88による加圧力P2を低下させてもよい。加圧装置80による加圧力P1や電極加圧装置88による加圧力P2を低下させると、被接合部材10,20の位置決め精度が向上し、被接合部材10,20が望ましい相対的位置となった状態で摺動装置70を停止させることができる。なお、被接合部材10,20を位置決めするための他の構成を別途設けてもよい。
【0042】
第2接合工程S13の後には、冷却工程S14を行う。冷却工程S14では、制御装置90が、摺動装置70および電流供給装置50を停止させ、加圧装置80の加圧部82による加圧力P1や電極加圧装置88による加圧力P2を上昇させる。そして、予め設定した時間が経過した際に、冷却が終了したと判断し、加圧装置80および電極加圧装置88による加圧を終了させる。または、被接合部材10,20の温度を計測する温度計(不図示)から制御装置90へ入力される信号が所定値以下となった後、冷却が終了したと判断し、加圧装置80および電極加圧装置88による加圧を終了させることもできる。この後、電極42,44を後退させて、接合された被接合部材10,20が装置から取り外される。これにより、被接合部材10,20の接合が完了する。
【0043】
本実施形態の接合方法によって接合された被接合部材10,20の接合界面には、被接合部材10,20の材料が拡散することで接合される拡散接合面、被接合部材10,20の材料が塑性流動することで接合される塑性流動接合面、および中間部材30を介在して接合される中間層介在接合面が混在して形成される。
【0044】
中間部材30は、第1接合工程S12および第2接合工程13において、共晶反応により低融点で液相化し、被接合部材10,20同士、または中間部材30の被接合部材10,20への相互拡散を促進させる。さらに、中間部材30は、酸素を遮断して接合面10a,20aの再酸化を抑制する役割を果たすため、大気中における短時間、低入熱での接合が可能となり、量産化が容易となる。
【0045】
本接合方法では、摺動および抵抗加熱を併用して接合するため、接合面10a,20aに高い加圧力を付与せずとも、電流集中箇所が変化して均一な加熱が可能となり、接合面10a,20aが大面積の場合や複雑な形状の場合であっても接合することができ、かつ低歪みで均一な面接合が可能である。また、接合面10a,20aの表層のみを溶融して接合するため、加熱時間を短縮でき、更に、材料内に気体を含有している鋳造品であっても、加熱により材料内の気体が膨張、噴出し難く、良好な接合を実現できる。
【0046】
なお、被接合部材10は、接合面10a,20aに沿う1方向に加振されるが、相対的に摺動するのであればこれに限定されず、例えば公転運動等のように、接合面10a,20aに沿う2方向へ加振することもできる。
【0047】
また、予備摺動工程S11は、かならずしも設けずに省略することができる。また、予備摺動工程S11の替わり若しくは予備摺動工程S11の前に、摺動装置70により摺動させるのではなしに、電流供給装置50により電極42,44へ電流を供給することで、接合面10a,20aを抵抗加熱により軟化させてもよい。また、第1接合工程S12と第2接合工程S13の間で、電流の供給を減少させつつ加圧力を増加させることなしに、第1接合工程S12および第2接合工程S13を1つの接合工程として実施することもできる。また、冷却工程S14も、かならずしも設けずに省略することができる。
【0048】
次に、制御装置90が実行する同期制御について説明する。上述したように、制御装置90は、接合面10a,20a同士を接合するときに、(a)被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極42,44を経由した通電C、および(d)被接合部材10,20と電極42,44とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて、加圧装置80、摺動装置70、電流供給装置50、または電極加圧装置88の作動を制御している。かかる制御を行うことによって、以下に説明するように、好適な種々の接合条件を容易に設定することができる。加圧力P1や電極加圧力P2は、油圧加振機のサーボ機構の制御装置によって周期的に変化させることができる。なお、以下の説明において、摺動が、被接合部材10を1方向に周期的に往復運動させる振動であるときを例に挙げて説明する。
【0049】
(通電Cについての同期制御)
制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位D、時間とともに変化する加圧力P1、または時間とともに変化する電極加圧力P2のいずれかに同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。摺動の速度や加圧力P1が高いときに通電すると、電極42,44が発熱することによって、電極42,44の磨耗や溶着を生じ易い。電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位D等に同期させることによって、好適な種々の接合条件を容易に設定することができ、電極42,44の磨耗や溶着の発生を防止することも可能となる。電極42,44の溶着を防止できるため、電極42,44を被接合部材10,20に接触させる位置の制限が少なくなる。例えば、精度が要求される面に電極42,44を接触させることも可能となり、電極42,44の接触位置の選定の自由度が高まる。
【0050】
図3および図4は、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位Dに同期させた制御を説明するための図であり、各図(A)は摺動の変位D、各図(B)は加圧力P1、各図(C)は電極42,44を経由した通電Cの状態を示す図である。
【0051】
図3を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位Dに同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、加圧力P1が一定となるように、加圧装置80の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては通電し、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては通電を停止している。
【0052】
本明細書において「通電する」「通電を停止する」の概念には、電流の供給を単にオン、オフする制御のほか、基準となる電流値(ゼロではない)から増減する制御つまり通電量を基準通電量に対して増減する制御も含まれる、と理解されなければならない。図3から後述する図8においては、理解の容易のために、電流の供給を単にオン、オフする制御を図示してある。
【0053】
さらに、電流の供給を単にオン、オフ制御する場合であっても、多少の応答遅れは生じ得る。したがって、「少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては通電し、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては通電を停止している」に、多少の応答遅れが生じていても何ら支障はない。
【0054】
上記の制御によれば、摺動の速度が比較的低速である範囲内の変位Dのときに通電することから、抵抗加熱による温度上昇によって軟化した電極が磨耗したり、軟化した部位が電極に溶着したりすることを回避することができる。その結果、電極の交換頻度を低減することが可能である。つまり、被接合部材10,20を抵抗加熱するための電極42,44の寿命を向上させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0055】
図4を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位Dに同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、加圧力P1が一定となるように、加圧装置80の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては通電し、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては通電を停止している。
【0056】
かかる制御によれば、摺動の速度が比較的高速である範囲内の変位Dのときに通電することから、抵抗加熱による温度上昇によって軟化した部位に対して、摺動による摩耗や塑性流動を一層生じさせることができる。その結果、摺動によって接合面10a,20aの形状を修正する速度を最大にすることができる。つまり、接合面10a,20aの面圧の均一化を促進させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0057】
図3において示した同期制御と、図4において示した同期制御とを組み合わせてもよい。すなわち、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位Dに同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、第1接合ステップ(S12)において被接合部材10,20同士の接合を開始するときには、少なくとも、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては通電し、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては通電を停止しており(図4を参照)、さらに、第1接合ステップ(S12)において被接合部材10,20同士の接合を終了するときには、少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては通電し、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては通電を停止している(図3を参照)。制御の切り替えは、例えば、接合面10a,20aの面圧が均一となったタイミングにて行う。
【0058】
かかる制御によれば、第1接合ステップ(S12)において被接合部材10,20同士の接合を開始するときには、接合面10a,20aの面圧の均一化を促進させ、かつ、面圧を均一にした後においては被接合部材10,20を抵抗加熱するための電極42,44の寿命を向上させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0059】
図5および図6は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する加圧力P1に同期させた制御を説明するための図であり、各図(A)は加圧力P1、各図(B)は電極42,44を経由した通電Cの状態を示す図である。
【0060】
図5を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する加圧力P1に同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、加圧力P1が最小となるときにおいては通電し、加圧力P1が最大となるときにおいては通電を停止している。
【0061】
かかる制御によれば、加圧力P1が最大未満であるときに通電することから、加圧力P1が比較的小さくて、接触抵抗が比較的大きくなるときに通電することによって、発熱量を増大させることができる。つまり、電流経路の制御によって発熱量の制御を図り得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0062】
図6を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する加圧力P1に同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、加圧力P1が最大となるときにおいては通電し、加圧力P1が最小となるときにおいては通電を停止している。
【0063】
かかる制御によれば、加圧力P1が最大近傍であるときに通電することから、加圧力P1が比較的大きく、接触抵抗が比較的小さくなるときに通電することによって、スパッタの発生を防止することができる。つまり、電流経路の制御によって発熱量の制御を図り得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0064】
図7および図8は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する電極加圧力P2に同期させた制御を説明するための図であり、各図(A)は電極加圧力P2、各図(B)は電極42,44を経由した通電Cの状態を示す図である。
【0065】
図7を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する電極加圧力P2に同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、電極加圧力P2が最大となるときにおいては通電し、電極加圧力P2が最小となるときにおいては通電を停止している。
【0066】
かかる制御によれば、電極加圧力P2が最大近傍であるときに通電することから、電極加圧力P2が比較的大きく、第1電極42の接触抵抗が比較的小さくなるときに通電することによって、第1電極42の発熱を小さくできる。このため、抵抗加熱による温度上昇によって軟化した電極が磨耗したり、軟化した部位が電極に溶着したりすることを回避することができる。その結果、電極の交換頻度を低減することが可能である。つまり、被接合部材10,20を抵抗加熱するための電極42,44の寿命を向上させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0067】
図8を参照して、制御装置90は、電極42,44を経由した通電Cを、時間とともに変化する電極加圧力P2に同期させて、電流供給装置50の作動を制御している。制御装置90は、電極加圧力P2が最小となるときにおいては通電し、電極加圧力P2が最大となるときにおいては通電を停止している。
【0068】
かかる制御によれば、電極加圧力P2が最大未満であるときに通電することから、電極加圧力P2が比較的小さくて、第1電極42の接触抵抗が比較的大きくなるときに通電することによって、第1電極42の発熱量を増大させることができる。抵抗加熱による温度上昇によって軟化した部位に対して、摺動による摩耗や塑性流動を一層生じさせることができる。その結果、摺動によって接合面10a,20aの形状を修正する速度を最大にすることができる。つまり、接合面10a,20aの面圧の均一化を促進させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0069】
(加圧力P1についての同期制御)
図9は、時間とともに変化する加圧力P1を、摺動の変位Dに同期させた制御を説明するための図であり、同図(A)は摺動の変位D、同図(B)は加圧力P1の状態を示す図である。
【0070】
図9を参照して、制御装置90は、時間とともに変化する加圧力P1を、摺動の変位Dに同期させて、加圧装置80の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては加圧力P1を最大とし、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては加圧力P1を最小としている。
【0071】
かかる制御によれば、静止摩擦係数となる折り返し地点での加圧力P1を小さくし、加圧部82のプッシュロッド86におけるスティックスリップを防止することができる。その結果、プッシュロッド86のビビリ現象によって、プッシュロッド86が接触する面に傷を付けることがない。つまり、被接合部材10の外面にスティックスリップによって傷が付くことを防止し得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0072】
(電極加圧力P2についての同期制御)
図10および図11は、時間とともに変化する電極加圧力P2を、摺動の変位Dに同期させた制御を説明するための図であり、各図(A)は摺動の変位D、各図(B)は電極加圧力P2の状態を示す図である。
【0073】
図10を参照して、制御装置90は、時間とともに変化する電極加圧力P2を、摺動の変位Dに同期させ、電極加圧装置88の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては電極加圧力P2を最大とし、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては電極加圧力P2を最小としている。
【0074】
かかる制御によれば、摺動の速度が比較的高速である範囲内の変位Dのときに電極加圧力P2が小さくなることから、第1電極42の接触圧力を小さくして磨耗を回避することができる。その結果、電極の交換頻度を低減することが可能である。つまり、被接合部材10,20を抵抗加熱するための電極42,44の寿命を向上させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0075】
図11を参照して、制御装置90は、時間とともに変化する電極加圧力P2を、摺動の変位Dに同期させ、電極加圧装置88の作動を制御している。制御装置90は、少なくとも、摺動の速度が最大となる変位Dのときにおいては電極加圧力P2を最大とし、摺動の速度がゼロとなる変位Dのときにおいては電極加圧力P2を最小としている。
【0076】
かかる制御によれば、摺動の速度が比較的高速である範囲内の変位Dのときに電極加圧力P2が大きくなることから、抵抗加熱による温度上昇によって軟化した部位に対して、摺動による摩耗や塑性流動を一層生じさせることができる。その結果、摺動によって接合面10a,20aの形状を修正する速度を最大にすることができる。つまり、接合面10a,20aの面圧の均一化を促進させ得る、という好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の接合方法は、導電性を備えた一対の被接合部材10,20を接合するための接合方法であって、互いに接合される被接合部材10,20の接合面10a,20aを対向させ、一対の被接合部材10,20を相対的に摺動させつつ、被接合部材10,20の一方から他方へ電極42,44を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、接合面10a,20a同士を接合する接合工程を有している。そして、その接合工程においては、(a)被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極を経由した通電C、および(d)被接合部材10,20と電極とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて接合面10a,20a同士を接合している。かかる接合方法によれば、被接合部材10,20を摺動させつつ抵抗加熱を行って接合するため、抵抗加熱により加熱された高面圧部に摺動が作用して摩耗、塑性流動が生じ、高面圧部の面圧が低下することにより時々刻々と電流集中箇所が変化する。これにより、接合面10a,20aを均一に加熱し、接合面10a,20aの全体を均一に接合できる。接合面10a,20a同士を接合するときには、(a)被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極を経由した通電C、および(d)被接合部材10,20と電極42,43とを相対的に押し付ける電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させているため、好適な接合条件を容易に設定することができる。また、本実施形態の接合方法を具現化した接合装置40についても、同様に、接合面10a,20aを均一に加熱し、接合面10a,20aの全体を均一に接合できる。さらに、制御装置90は、(a)加圧力P1、(b)摺動の変位D、(c)電極を経由した通電C、および(d)電極加圧力P2のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させているため、好適な接合条件を容易に設定することができる。
【0078】
また、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位D、時間とともに変化する加圧力P1、または時間とともに変化する電極加圧力P2のいずれかに同期させているため、好適な種々の接合条件を容易に設定することができ、電極42,44の磨耗や溶着の発生を防止することも可能となる。電極42,44の溶着を防止できるため、電極42,44の接触位置の選定の自由度を高めることができる。
【0079】
(その他の変形例)
本発明に係る接合方法および接合装置は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜改変可能である。加圧装置80によって加圧力P1を付与し、電極加圧装置88によって電極加圧力P2を付与する形態を示したが、加圧装置80が第1電極42を介して加圧力P1を付与する形態としてもよい。この形態にあっては、加圧力P1と電極加圧力P2とが等しくなる。この場合においても、例えば、電極42,44を経由した通電Cを、摺動の変位D、時間とともに変化する加圧力P1(=時間とともに変化する電極加圧力P2)のいずれかに同期させて制御することができる。
【0080】
摺動が、被接合部材10を1方向に周期的に往復運動させる振動であるときを例に挙げて、制御装置90が実行する同期制御を説明したが、本発明の適用は上記の振動に限定されるものではない。前述したように、摺動装置70は、振動(加振機構)を利用する形態に限定されず、回転運動や、自転せずに円軌道を描くように振れ回る公転運動を適宜適用することも可能である。このような摺動形態の場合においては、ある変位Dにおいて、その他の変位のときに比べて摺動の速度が小さくなるときには、その変位Dが「摺動の速度がゼロとなる変位」とみなして、本発明に係る同期制御を適用することができる。すなわち、「摺動の速度がゼロとなる変位」は、摺動の速度がゼロとなる変位のほか、ある変位Dにおいて、その他の変位のときに比べて摺動の速度が小さくなるときの当該変位Dを含む概念である。
【符号の説明】
【0081】
10,20 被接合部材、
10a,20a 接合面、
30 中間部材、
40 接合装置、
42 第1電極(電極)、
44 第2電極(電極)、
50 電流供給装置(電流供給手段)、
60 保持装置、
70 摺動装置(摺動手段)、
80 加圧装置(加圧手段)、
82 加圧部、
84 支持構造体、
86 プッシュロッド、
88 電極加圧装置(電極加圧手段)、
90 制御装置(制御手段)、
P1 被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、
P2 被接合部材と電極とを相対的に押し付ける電極加圧力、
C 電極を経由した通電、
D 摺動の変位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法であって、
互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記被接合部材の一方から他方へ電極を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有し、
前記接合工程において、(a)前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、(b)摺動の変位、(c)前記電極を経由した通電、および(d)前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧力のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて前記接合面同士を接合する接合方法。
【請求項2】
前記電極を経由した通電を、摺動の変位、時間とともに変化する加圧力、または時間とともに変化する電極加圧力のいずれかに同期させて前記接合面同士を接合する請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記電極を経由した通電を、摺動の変位に同期させ、
少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては通電し、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記電極を経由した通電を、摺動の変位に同期させ、
少なくとも、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては通電し、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記電極を経由した通電を、摺動の変位に同期させ、
前記被接合部材同士の接合を開始するときには、少なくとも、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては通電し、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては通電を停止しており、
前記被接合部材同士の接合を終了するときには、少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては通電し、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項6】
前記電極を経由した通電を、時間とともに変化する加圧力に同期させ、
少なくとも、加圧力が最小となるときにおいては通電し、加圧力が最大となるときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項7】
前記電極を経由した通電を、時間とともに変化する加圧力に同期させ、
少なくとも、加圧力が最大となるときにおいては通電し、加圧力が最小となるときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項8】
前記電極を経由した通電を、時間とともに変化する電極加圧力に同期させ、
少なくとも、電極加圧力が最大となるときにおいては通電し、電極加圧力が最小となるときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項9】
前記電極を経由した通電を、時間とともに変化する電極加圧力に同期させ、
少なくとも、電極加圧力が最小となるときにおいては通電し、電極加圧力が最大となるときにおいては通電を停止している請求項2に記載の接合方法。
【請求項10】
時間とともに変化する加圧力を、摺動の変位に同期させ、
少なくとも、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては加圧力を最大とし、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては加圧力を最小としている請求項1に記載の接合方法。
【請求項11】
時間とともに変化する電極加圧力を、摺動の変位に同期させ、
少なくとも、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては電極加圧力を最大とし、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては電極加圧力を最小としている請求項1に記載の接合方法。
【請求項12】
時間とともに変化する電極加圧力を、摺動の変位に同期させ、
少なくとも、摺動の速度が最大となる変位のときにおいては電極加圧力を最大とし、摺動の速度がゼロとなる変位のときにおいては電極加圧力を最小としている請求項1に記載の接合方法。
【請求項13】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合装置であって、
互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記被接合部材の一方から他方へ電極を経由して電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合手段を有し、
前記接合手段は、
前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧手段と、
前記被接合部材を相対的に摺動させる摺動手段と、
前記被接合部材の一方から他方へ前記電極を経由して電流を流すための電流供給手段と、
前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧手段と、
前記加圧手段、前記摺動手段、前記電流供給手段、および前記電極加圧手段のそれぞれの作動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記接合面同士を接合するときに、(a)前記被接合部材同士を相対的に押し付ける加圧力、(b)摺動の変位、(c)前記電極を経由した通電、および(d)前記被接合部材と前記電極とを相対的に押し付ける電極加圧力のうち、時間とともに変化させるパラメータ同士を同期させて、前記加圧手段、前記摺動手段、前記電流供給手段、または前記電極加圧手段の作動を制御する接合装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記電極を経由した通電を、摺動の変位、時間とともに変化する加圧力、または時間とともに変化する電極加圧力のいずれかに同期させて、前記電流供給手段の作動を制御する請求項13に記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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