接着ウエハー
裏張り層を含み、前記裏張り層が肌当接面を有し、前記肌当接面が空隙容積によって互いに分離された第1および第2接着域を有し、前記空隙容積が裏張り層と、第1および第2接着域と、肌当接面とで画定され、第1および第2接着域が裏張り層の平面に対して互いに独立に移動可能な人工切開口フェースプレートまたは創傷被覆材としての接着ウエハー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの皮膚の傷、火傷または同様な傷害、または人工切開口を被覆するための肌に優しい接着ウエハーに係わる。
【背景技術】
【0002】
人工切開口用または創傷被覆材用の接着ウエハーは肌当接面に接着層を塗布した裏張り層の形態を取るのが普通である。接着剤と裏張り層の双方が柔軟且つ可撓性であっても、ウエハーが貼られる皮膚表面はウエハーの動きにつれて動き、ウエハーの縁辺部の動きが応力を発生させ、これがウエハー全体に伝わる。その結果、皮膚に不快感と外傷を惹き起こし、ウエハー中に緊張を発生させ、接着効果を弱め、漏れの恐れを生じさせる。人工切開口用の場合、ウエハーに採取バッグが取り付けられることが多く、前記バッグもまたウエハーに対する引っ張り力を誘発する。ウエハーに対するこのような力は横方向であること、即ちウエハーと平行であることが多く、公知のウエハーは横方向の動きに関しては充分に可撓性であるとはいえない。
【0003】
親水コロイドを含有する接着層および接着層の非肌当接側に固定された可撓性裏張りフィルムを含み、前記裏張りフィルムが少なくとも1条の線形凹部を有し、凹部における接着剤の厚さが凹部と平行する接着層の厚さよりも薄い創傷被覆材は欧州特許第768 071号明細書から公知である。接着層は切れ目なく裏張りフィルムを被覆し、肌に対して切れ目のない接着面を提供するが、凹部における接着層の厚さは周囲の部分の厚さよりも薄い。これらの凹部は被覆材の可撓性を高めるとともに、例えば、仙骨のような湾曲面に貼る場合に曲げ易くする。
【0004】
欧州特許第591 440号明細書は接着シートの中央部を完全にまたは部分的に囲む溝が形成されている好ましくは親水コロイド・タイプの創傷被覆材を開示している。溝は中心部から同心関係にまたは半径方向に外方へ配列され、溝の底におけるシートの厚さが溝間に位置するシートの厚さの1/4未満となるように深さが設定されている。溝は曲げた際の高い可撓性を可能にし、吸収された流体に対する制止点として作用することができる。
【0005】
人工切開口用のウエハーは欧州特許第591 440号明細書および欧州特許第768 071号明細書に開示されているが、いずれの開示内容にも、被覆材に設けた凹部/溝が可撓性を向上させるがこの可撓性は湾曲の過程においてのみ現れる、という欠点がある。横方向伸張の形で現れる横方向可撓性も、被覆材の一部だけの個別の移動も教示していない。上記引例に記載されている実施形態ではこのような個別の移動は不可能である。
【0006】
裏張り層、吸収層および肌当接層から成る創傷被覆材は欧州特許第898 471号明細書から公知である。この被覆材にはその中央部分を囲む1つまたは2つ以上のシールが設けられている。シールは超音波または熱エネルギーを加えて皮膚面から裏張り層に達する溝を形成することによって形成し、前記溝の両側に、例えば、接着剤のような不透水性材料で被覆する。シールは漏れ防止バリヤーとして機能する。しかし、この引例は横方向の可動性に言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題に対する使い勝手が良く、しかも快適な解決策を達成させる横方向可撓性を有する接着ウエハーを提供できるとの驚くべき所見を得た。
【0008】
本発明の1つの目的は特に横方向に高い可撓性を有する接着ウエハーを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は漏れ防止ウエハーを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は2つ以上の異なる接着剤を含むウエハーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は裏張り層を含み、前記裏張り層が肌当接面を有し、前記肌当接面が空隙容積によって互いに分離された第1および第2接着域を有し、前記空隙容積が裏張り層と、第1および第2接着域と、肌当接面とで画定され、第1および第2接着域が裏張り層の平面に対して互いに独立に移動可能な人工切開口フェースプレートまたは創傷被覆材としての接着ウエハーに係わる。
【0012】
空隙容積は2つの接着域が直接互いに接触するのを防止する流路の形態を呈する。空隙容積は2つの接着域どうしの相対移動に対するバッファとして機能する。流路の「屋根」に相当する裏張り層部分によって画定されるブリッジが2つの接着域を互いに連結している。即ち、空隙容積は空洞または中空スペースを意味し、接着剤を塗布されている肌当接面に切れ目がなく、例えば、漏れ流体に対応するスペースが存在しない溝付きウエハーとは異なる。
【0013】
空隙容積の屋根を形成する裏張り層部分は肌と接触せず、3次元空隙容積を形成することが好ましい。この容積は漏れ防止バリヤーとしても機能し、ウエハーの中央から縁辺部に向かって進行する流体漏れを制止する。漏れ流体は空隙容積に捕捉され、空隙容積内に分布されることで、空隙容積の外側に存在する接着域に作用する圧力を軽減または解消する。従って、空隙容積は漏れ流体のタンクとして機能する。裏張り層が透明または半透明である場合、ウエハーの肌非当接面から視認することができ、ユーザーに対して、ウエハーを交換する時期であることを示唆することができる。
【0014】
空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分は、裏張り層どうしの、または肌との、またはウエハーのその他の部分との接着が原因となって接着域の動きを制約することがないように、非接着性であることが好ましい。
【0015】
ウエハーの可撓性を高めるため、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分を、例えば、伸張させることで変形させることによって、空隙容積の上方に裏張り層の余剰分を発生させる。裏張り層にこのような余剰分が生ずることで裏張り層に殆ど制約されることなく接着域が容易に移動することができる。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分がプリーツ状に重なって接着域の移動を可能にする余剰分を提供する。裏張り層部分は、例えば、アコーディオンまたは横向きのプリーツの形態を呈して重なり合う。
【0017】
接着域は、例えば、同心円、正方形またはその他の幾何的形状を呈する環状構造に配列され、ウエハー自体も円形、楕円形またはその他の適当な形状を呈する。第1および第2接着域は同心関係にあることが好ましい。接着域の中心はウエハーの中心部に位置するか、または中心が非対称関係にあってもよい。即ち、同じ接着域の幅がウエハーの一方の側では他方の側における幅よりも広くなっていてもよい。空隙容積を切れ目のない環状に形成することによって空隙容積からの漏れが起こるリスクを軽減し、漏れ防止バリヤーとしての効果を高めることができる。
【0018】
空隙容積が存在することで、たとえ互いに親和性でなくても2種類以上の異なる接着剤を同じ用途に利用することが可能になる。本発明の1つの実施形態では、第1および第2接着域が異なる接着剤から成る。好ましくは、ウエハーの中央接着域には1つのタイプ、例えば、吸収性の接着剤を、周辺部には低吸収性ではあるが高粘着性の接着剤を使用する。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、ウエハーが結合リングまたは採取バッグを含む。この実施形態は採取バッグを取り付けるための結合リング(ツーピース・システム)を含むか、またはバッグをウエハーに直接取り付けることができる(ワンピース・システム)人工切開口用として特に好適である。結合リングとしては接着方式の結合手段または従来方式の結合リングを採用することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、ウエハーが吸収パッドを含む。この実施形態は、例えば、創傷被覆材として使用するのに好適である。
【0021】
本発明の接着ウエハーは3つ以上の接着域を含むことができる。流路によって分離された複数の接着域は最大限の可撓性を可能にするとともに有効な漏れ防止を可能にする。但し、接着域の数が多ければ多いほど肌に固定するための接着面が狭くなる。肌に安定的に固定するためには、多くの場合2つの接着域で充分である。高度の可撓性が要求される身体部位、例えば、関節に貼るための創傷被覆材は2つ以上の接着域を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積が発泡材から成る。発泡材は接着域どうしが直接接触するのを防止するスペーサとして機能し、漏れ流体があればこれを容積内に分散させるから、第2接着域を圧迫して漏れを助長することがない。ウエハーの可撓性を妨げないためには、発泡材が柔軟で、しかも容易に圧縮可能であることが好ましい。発泡材としてはポリマー・フォームのような適当な発泡材を採用することができる。発泡材は吸収性でも非吸収性でもよい。
【0023】
本発明のウエハーの裏張り層は可撓性フィルムの形態を呈することが好ましい。フィルムは弾性的および/または伸張可能/変形容易なフィルムであればよい。このような裏張り層に好適な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、塩化ポリビニルまたはこれらのラミネートが挙げられる。フィルムが可撓性でなければならないのは、接着域が個々に移動し易くするためである。フィルムは弾性的、即ち、容易に伸張可能であるが容易に初期の形状に復旧するフィルムであるか、または可塑性、即ち、伸張すると恒久的に変形するフィルムであるかのいずれかであればよい。
【0024】
空隙容積の横方向の幅は1−20mm、より好ましくは1−15mm、さらに好ましくは2−10mm、最も好ましくは3−8mmである。ここにいう横方向幅とは裏張り層の平面内における第1接着域の縁端から第2接着域の縁端に至る距離を意味する。最適距離は幾つかのパラメータ、例えば、所要の可撓性、特に裏張り層の材料として選択される材料、接着域の厚さ、ウエハーの用途(人工切開口用ウエハーまたは創傷被覆材としてのウエハー)、裏張り層の変形、などに応じて異なる。
【0025】
接着層の厚さは好ましくは0.1−2mm、より好ましくは0.7−1.5mmである。人工切開口用のウエハーは、多くの場合、接着層が比較的厚く、例えば、0.8−1.5mmであるのに対して、創傷被覆材の場合はもっと薄い。本発明の1つに実施形態では、接着域がそれぞれ異なる厚さを有する。本発明のウエハーは中央部、例えば、第1接着域と、周辺部、例えば、中央部を囲む第2接着域を含むことができる。中央部は40−80mm、より好ましくは50−75mmの直径を有し、周辺部は80−130mm、より好ましくは90−120mmの直径を有することができる。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、中央接着域はその厚さが均一ではなく、例えば、人工切開口と整合する中央アパーチャーを囲む部分において最も厚く、例えば、1cmであり、半径方向に空隙容積に向かって、例えば、0.2−0.7cmまで薄くなるように設定される。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積に対向する接着層の縁辺部に非接着層を設ける。この非接着層が存在することで、接着域が横方向に移動した場合でも、接着剤の縁辺部分どうしの接着を防止することを容易にする。非接着層はシリコンなどのコーティングまたは縁辺部分の粘着を軽減するパウダーの形態を取る。
【0028】
本発明の他の実施形態では、非接着層がポリマー・フィルムの形態を取る。このフィルムは接着剤の縁辺部分を被覆し、接着域の隅部を囲むように適宜湾曲して接着剤の肌当接面を被覆する複数のフィルム片である。フィルム片は接着剤の一方の縁辺部分から空隙容積の屋根に相当する裏張り層へ広がり、さらに他方の縁辺部分にまで跨る単一のフィルム片であるか、またはそれぞれの縁辺部分を被覆するが裏張り層を被覆することのない2片のフィルム片であるかのいずれかである。フィルム片は適当な材料から、但し、好ましくは裏張り層と同じ材料から形成すればよい。
【0029】
空隙容積には湿度インジケータ手段を設けることができる。このインジケータ手段としては、例えば、湿度に曝されると変色するカラー・インジケータを採用することができる。これによって、ユーザーまたはヘルパーはウエハーの交換時期を容易に判断することができる。
【0030】
裏張り層を変形させるかまたは伸張することによって横方向に屈曲させることができる。これには幾つかの異なる方法が考えられる:裏張り層を接着域にラミネートした後、裏張り層を伸張することによって変形させる。接着剤は塗布域にある程度の安定性と剛性を付与するから、裏張り層は接着剤が塗布されていない領域においてのみ変形する。接着剤が塗布されていない内側領域を引っ張ることで裏張り層を変形させることになる。
【0031】
熱と圧力を加えることによってフィルムを熱成形することもできる。金型内にウエハーを置き、真空を導入するか、またはツールを導入して変形させることもできる。
【0032】
好ましい実施形態では、接着ウエハーが採取バッグ取り付けのための結合リングを含む人工切開口フェースプレートである。第1接着域は人工切開口と整合するアパーチャーを囲むディスクの形態を有し、前記ディスクは結合リングよりも小さいか、または同じ直径を有し、第2接着域は第1ディスクをこれと同心関係に囲み、空隙容積によって第1ディスクから分離され、第2接着域は好ましくは人工切開口用採取バッグを取り付けるための結合手段を有するか、または人工切開口用採取バッグを直接備えている。第1接着域は人工切開口と整合するアパーチャーを囲んで流体密閉接着剤を詰めることを可能にする非復元性のパテ状接着剤を含み、第2接着域は接着性に優れるが、吸収性に乏しい接着剤を含む。接着域間の空隙容積はウエハー全体に応力を集中させることなく人工切開口と整合するアパーチャーの周りの内側接着域が広い範囲内で移動することを可能にする。さらにまた、空隙容積が2つの接着域を物理的に分離しているから、種類の異なる2つの接着剤間に干渉が起こることはない。
【0033】
中央接着域は、例えば、国際公開第98/17212号パンフレットに開示されているようなパテ状接着剤を含み、第2接着域は肌に優しい、例えば、米国特許第4,551,490号明細書およびデンマーク特許第147 035号明細書に開示されている接着剤を含むことができる。第2接着域に好適なその他の接着剤としては、例えば、シリコンまたはポリウレタンを含有する接着剤が考えられる。
【0034】
創傷被覆材の場合、空隙容積は肌の動きに追随し、肌の広い範囲を被覆することを可能にする。接着域が空隙容積によって分離されていると、接着域は互いに大きく移動することができる。
【0035】
従来の創傷被覆材または人工切開口用ウエハーは肌当接側に連続的な接着面を有するのが普通である。被覆されている皮膚の範囲にこれを動かそうとする力が作用すると、ウエハーの下に位置する皮膚が比較的硬いプレートとして作用し、結果として、被覆材に隣接する皮膚に引張力の全部が集中することになる。従って、皮膚のこの部分に強い応力が発生し、同時に被覆材のへりにも応力が加わり、接着硬化を弱め、ウエハーを脱落させることにもなる。
【0036】
接着面を複数の不連続接着域に分割することによって、ウエハーを横切る方向の力も分割され、運動に曝されるウエハーの部分だけが影響を受けることになる。
【0037】
ウエハーの空隙容積が広ければ広いほど、接着域がより独立的に移動することができる。空隙容積の屋根に相当する裏張り層がさらに変形すると、人工切開口の周りにおいて特に重要な可撓性を高める。人工切開口の周りの皮膚が移動すると、従来のウエハーの場合、すべての応力がプレート全体に作用し、最終的にプレートの縁辺部に集まるから、プレートがその縁辺部において皮膚から滑り落ちることが多い。本発明のウエハーでは、応力の大部分が人工切開口の周りの接着域に止まるか、または非接着性空隙容積に吸収され、結合リングを有する接着域に作用する応力は小さい。従って、着用時間が長くなり、着用感が向上する。
【0038】
採取バッグへの結合または取り付け第2の外側域に重なる裏張り層または空隙層に重なる裏張り層に対して行なうことが好ましい。
【0039】
空隙容積は被覆材中またはその下に、例えば、漏れ流体の流路が形成される場合、流れる流体を遮断する機能をも有し、このような流体は空隙容積によって阻止され、流体は空隙容積に沿って拡散される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の詳細を、添付図面を参照して以下に説明する。添付図面において:
図1aには本発明の1実施形態を断面図で示した。ウエハーはその肌当接面に空隙容積(4)を挟んで互いに分離している第1および第2接着域(2、3)を有する裏張り層(1)を含む。図示の実施形態は人工切開口用のウエハーであり、裏張り層の肌非当接面に(図示しないが)採取バッグを取り付けるための結合手段(6)をも含み、さらには、人工切開口と整合させるためのアパーチャー(7)を含む。空隙容積(4)はその上方に位置する裏張り層(5)と、接着剤(10)の縁辺部分と、(図示しない)肌面とで画定されて流路を形成し、この流路においては、裏張り層(5)が肌と接触しない。
【0041】
これと同じ本発明の実施形態を頂面図として図1bに示した。接着域(2、3)は空隙容積(4)によって分離された同心円の形態を呈する。
【0042】
図2aに示すように、空隙容積は第2接着域(3)に対する第1接着域(2)の横方向移動を吸収することができる。ここでは第1接着域が、例えば、患者の肌の動きに伴って、または採取バッグに意図しない引張力が作用して(矢印で示すように)右方へ変位している。その結果、空隙容積(4)の右側(4b)が圧迫されてその幅が狭くなり、左側(4a)が広くなり、空隙容積(5)に被さる裏張り層が伸張される。この状況を図2bに頂面図で示した。
【0043】
ウエハーの可撓性を向上させるため、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分を変形させることによって余剰分を提供する。裏張り層が変形する本発明の種々の実施形態を図3a-3dに示した。図3aの場合、裏張り層(5)が変形して膨らみを形成し、横方向移動を充分吸収できる余剰分を提供する。図3bおよび3cでは裏張り層(5)が変形し、重なり合って、それぞれ縦方向のプリーツ(図3b)および横方向プリーツ(図3c)を形成する。図3dに示す実施形態では、裏張り層(5)が変形して接着域の縁辺部分と接触する。余剰分は流路として機能する膨らみの形態を呈する。
【0044】
図4aおよび4bは空隙容積(4)の詳細図であり、接着域(2、3)の縁辺部分を非接着性にするため、縁辺部分被覆してある。図4aの場合、縁辺部分(10)を非接着性層(8)で被覆してある。両縁辺部分(10)を非接着性層で被覆してもよいし、一方の縁辺部分だけを被覆してもよい。一方の縁辺部分だけを被覆する場合には、非接着性層(8)が非被覆縁辺部分の接着剤に対して非付着性であることが好ましい。非接着性層(8)は縁辺部分だけを被覆するか、または図4aに示すように、接着面の縁辺部分をも被覆するようにさらに延出していてもよい。
【0045】
図4bは非接着性層(9)が3つの壁面(10、5)すべてを被覆している実施形態を示す。空洞容積(5)の屋根に相当する裏張り層部分が変形すると、非接着性層(9)も追随して裏張り層と同様の形状となる。裏張り層の可撓性を妨げないため、非接着性層(9)は裏張りフィルム(5)と少なくとも同じ弾性/可塑性を備えるものでなければならない。
【0046】
図5は空隙容積(4)が発泡体(11)から成る本発明の実施形態を示す。発泡体(11)は図5に示すように空隙容積(4)とほぼ同じ容積を有するか、または空隙容積よりも小さい容積を有する。発泡体(11)は接着剤縁辺部分(10)が互いに付着するのを防止することができ、しかも流体漏れの抑止に寄与することができる。発泡体(11)は柔軟であり、接着域どうしの相対移動を妨げないように容易に圧縮することができる。
【0047】
図6には、ウエハーが空隙容積(4)によって分離された複数の接着域(2、3、12)を含む本発明の実施形態を示した。
【0048】
図7は第1中央接着域(2)が第2周辺接着域(3)よりも厚い本発明の実施形態を示す。
【0049】
図8は第1接着域(2)が人工切開口と整合するアパーチャー(7)を囲む部分において、第2接着域(3)の近傍部分よりも厚い実施形態を示す。接着剤の厚さの変化を図面では線形勾配で示してあるが、この勾配は、例えば、中央に向かって指数関数的に変化する曲線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1a】本発明の1実施形態を示す。
【図1b】本発明の1実施形態を示す。
【図2a】本発明の上記実施形態を横方向の力が加わった状態で示す。
【図2b】本発明の上記実施形態を横方向の力が加わった状態で示す。
【図3a】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3b】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3c】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3d】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図4a】他の本発明の実施形態の詳細図である。
【図4b】他の本発明の実施形態の詳細図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す。
【図6】本発明の他の実施形態を示す。
【図7】本発明の他の実施形態を示す。
【図8】本発明の他の実施形態を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの皮膚の傷、火傷または同様な傷害、または人工切開口を被覆するための肌に優しい接着ウエハーに係わる。
【背景技術】
【0002】
人工切開口用または創傷被覆材用の接着ウエハーは肌当接面に接着層を塗布した裏張り層の形態を取るのが普通である。接着剤と裏張り層の双方が柔軟且つ可撓性であっても、ウエハーが貼られる皮膚表面はウエハーの動きにつれて動き、ウエハーの縁辺部の動きが応力を発生させ、これがウエハー全体に伝わる。その結果、皮膚に不快感と外傷を惹き起こし、ウエハー中に緊張を発生させ、接着効果を弱め、漏れの恐れを生じさせる。人工切開口用の場合、ウエハーに採取バッグが取り付けられることが多く、前記バッグもまたウエハーに対する引っ張り力を誘発する。ウエハーに対するこのような力は横方向であること、即ちウエハーと平行であることが多く、公知のウエハーは横方向の動きに関しては充分に可撓性であるとはいえない。
【0003】
親水コロイドを含有する接着層および接着層の非肌当接側に固定された可撓性裏張りフィルムを含み、前記裏張りフィルムが少なくとも1条の線形凹部を有し、凹部における接着剤の厚さが凹部と平行する接着層の厚さよりも薄い創傷被覆材は欧州特許第768 071号明細書から公知である。接着層は切れ目なく裏張りフィルムを被覆し、肌に対して切れ目のない接着面を提供するが、凹部における接着層の厚さは周囲の部分の厚さよりも薄い。これらの凹部は被覆材の可撓性を高めるとともに、例えば、仙骨のような湾曲面に貼る場合に曲げ易くする。
【0004】
欧州特許第591 440号明細書は接着シートの中央部を完全にまたは部分的に囲む溝が形成されている好ましくは親水コロイド・タイプの創傷被覆材を開示している。溝は中心部から同心関係にまたは半径方向に外方へ配列され、溝の底におけるシートの厚さが溝間に位置するシートの厚さの1/4未満となるように深さが設定されている。溝は曲げた際の高い可撓性を可能にし、吸収された流体に対する制止点として作用することができる。
【0005】
人工切開口用のウエハーは欧州特許第591 440号明細書および欧州特許第768 071号明細書に開示されているが、いずれの開示内容にも、被覆材に設けた凹部/溝が可撓性を向上させるがこの可撓性は湾曲の過程においてのみ現れる、という欠点がある。横方向伸張の形で現れる横方向可撓性も、被覆材の一部だけの個別の移動も教示していない。上記引例に記載されている実施形態ではこのような個別の移動は不可能である。
【0006】
裏張り層、吸収層および肌当接層から成る創傷被覆材は欧州特許第898 471号明細書から公知である。この被覆材にはその中央部分を囲む1つまたは2つ以上のシールが設けられている。シールは超音波または熱エネルギーを加えて皮膚面から裏張り層に達する溝を形成することによって形成し、前記溝の両側に、例えば、接着剤のような不透水性材料で被覆する。シールは漏れ防止バリヤーとして機能する。しかし、この引例は横方向の可動性に言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題に対する使い勝手が良く、しかも快適な解決策を達成させる横方向可撓性を有する接着ウエハーを提供できるとの驚くべき所見を得た。
【0008】
本発明の1つの目的は特に横方向に高い可撓性を有する接着ウエハーを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は漏れ防止ウエハーを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は2つ以上の異なる接着剤を含むウエハーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は裏張り層を含み、前記裏張り層が肌当接面を有し、前記肌当接面が空隙容積によって互いに分離された第1および第2接着域を有し、前記空隙容積が裏張り層と、第1および第2接着域と、肌当接面とで画定され、第1および第2接着域が裏張り層の平面に対して互いに独立に移動可能な人工切開口フェースプレートまたは創傷被覆材としての接着ウエハーに係わる。
【0012】
空隙容積は2つの接着域が直接互いに接触するのを防止する流路の形態を呈する。空隙容積は2つの接着域どうしの相対移動に対するバッファとして機能する。流路の「屋根」に相当する裏張り層部分によって画定されるブリッジが2つの接着域を互いに連結している。即ち、空隙容積は空洞または中空スペースを意味し、接着剤を塗布されている肌当接面に切れ目がなく、例えば、漏れ流体に対応するスペースが存在しない溝付きウエハーとは異なる。
【0013】
空隙容積の屋根を形成する裏張り層部分は肌と接触せず、3次元空隙容積を形成することが好ましい。この容積は漏れ防止バリヤーとしても機能し、ウエハーの中央から縁辺部に向かって進行する流体漏れを制止する。漏れ流体は空隙容積に捕捉され、空隙容積内に分布されることで、空隙容積の外側に存在する接着域に作用する圧力を軽減または解消する。従って、空隙容積は漏れ流体のタンクとして機能する。裏張り層が透明または半透明である場合、ウエハーの肌非当接面から視認することができ、ユーザーに対して、ウエハーを交換する時期であることを示唆することができる。
【0014】
空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分は、裏張り層どうしの、または肌との、またはウエハーのその他の部分との接着が原因となって接着域の動きを制約することがないように、非接着性であることが好ましい。
【0015】
ウエハーの可撓性を高めるため、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分を、例えば、伸張させることで変形させることによって、空隙容積の上方に裏張り層の余剰分を発生させる。裏張り層にこのような余剰分が生ずることで裏張り層に殆ど制約されることなく接着域が容易に移動することができる。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分がプリーツ状に重なって接着域の移動を可能にする余剰分を提供する。裏張り層部分は、例えば、アコーディオンまたは横向きのプリーツの形態を呈して重なり合う。
【0017】
接着域は、例えば、同心円、正方形またはその他の幾何的形状を呈する環状構造に配列され、ウエハー自体も円形、楕円形またはその他の適当な形状を呈する。第1および第2接着域は同心関係にあることが好ましい。接着域の中心はウエハーの中心部に位置するか、または中心が非対称関係にあってもよい。即ち、同じ接着域の幅がウエハーの一方の側では他方の側における幅よりも広くなっていてもよい。空隙容積を切れ目のない環状に形成することによって空隙容積からの漏れが起こるリスクを軽減し、漏れ防止バリヤーとしての効果を高めることができる。
【0018】
空隙容積が存在することで、たとえ互いに親和性でなくても2種類以上の異なる接着剤を同じ用途に利用することが可能になる。本発明の1つの実施形態では、第1および第2接着域が異なる接着剤から成る。好ましくは、ウエハーの中央接着域には1つのタイプ、例えば、吸収性の接着剤を、周辺部には低吸収性ではあるが高粘着性の接着剤を使用する。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、ウエハーが結合リングまたは採取バッグを含む。この実施形態は採取バッグを取り付けるための結合リング(ツーピース・システム)を含むか、またはバッグをウエハーに直接取り付けることができる(ワンピース・システム)人工切開口用として特に好適である。結合リングとしては接着方式の結合手段または従来方式の結合リングを採用することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、ウエハーが吸収パッドを含む。この実施形態は、例えば、創傷被覆材として使用するのに好適である。
【0021】
本発明の接着ウエハーは3つ以上の接着域を含むことができる。流路によって分離された複数の接着域は最大限の可撓性を可能にするとともに有効な漏れ防止を可能にする。但し、接着域の数が多ければ多いほど肌に固定するための接着面が狭くなる。肌に安定的に固定するためには、多くの場合2つの接着域で充分である。高度の可撓性が要求される身体部位、例えば、関節に貼るための創傷被覆材は2つ以上の接着域を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積が発泡材から成る。発泡材は接着域どうしが直接接触するのを防止するスペーサとして機能し、漏れ流体があればこれを容積内に分散させるから、第2接着域を圧迫して漏れを助長することがない。ウエハーの可撓性を妨げないためには、発泡材が柔軟で、しかも容易に圧縮可能であることが好ましい。発泡材としてはポリマー・フォームのような適当な発泡材を採用することができる。発泡材は吸収性でも非吸収性でもよい。
【0023】
本発明のウエハーの裏張り層は可撓性フィルムの形態を呈することが好ましい。フィルムは弾性的および/または伸張可能/変形容易なフィルムであればよい。このような裏張り層に好適な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、塩化ポリビニルまたはこれらのラミネートが挙げられる。フィルムが可撓性でなければならないのは、接着域が個々に移動し易くするためである。フィルムは弾性的、即ち、容易に伸張可能であるが容易に初期の形状に復旧するフィルムであるか、または可塑性、即ち、伸張すると恒久的に変形するフィルムであるかのいずれかであればよい。
【0024】
空隙容積の横方向の幅は1−20mm、より好ましくは1−15mm、さらに好ましくは2−10mm、最も好ましくは3−8mmである。ここにいう横方向幅とは裏張り層の平面内における第1接着域の縁端から第2接着域の縁端に至る距離を意味する。最適距離は幾つかのパラメータ、例えば、所要の可撓性、特に裏張り層の材料として選択される材料、接着域の厚さ、ウエハーの用途(人工切開口用ウエハーまたは創傷被覆材としてのウエハー)、裏張り層の変形、などに応じて異なる。
【0025】
接着層の厚さは好ましくは0.1−2mm、より好ましくは0.7−1.5mmである。人工切開口用のウエハーは、多くの場合、接着層が比較的厚く、例えば、0.8−1.5mmであるのに対して、創傷被覆材の場合はもっと薄い。本発明の1つに実施形態では、接着域がそれぞれ異なる厚さを有する。本発明のウエハーは中央部、例えば、第1接着域と、周辺部、例えば、中央部を囲む第2接着域を含むことができる。中央部は40−80mm、より好ましくは50−75mmの直径を有し、周辺部は80−130mm、より好ましくは90−120mmの直径を有することができる。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、中央接着域はその厚さが均一ではなく、例えば、人工切開口と整合する中央アパーチャーを囲む部分において最も厚く、例えば、1cmであり、半径方向に空隙容積に向かって、例えば、0.2−0.7cmまで薄くなるように設定される。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、空隙容積に対向する接着層の縁辺部に非接着層を設ける。この非接着層が存在することで、接着域が横方向に移動した場合でも、接着剤の縁辺部分どうしの接着を防止することを容易にする。非接着層はシリコンなどのコーティングまたは縁辺部分の粘着を軽減するパウダーの形態を取る。
【0028】
本発明の他の実施形態では、非接着層がポリマー・フィルムの形態を取る。このフィルムは接着剤の縁辺部分を被覆し、接着域の隅部を囲むように適宜湾曲して接着剤の肌当接面を被覆する複数のフィルム片である。フィルム片は接着剤の一方の縁辺部分から空隙容積の屋根に相当する裏張り層へ広がり、さらに他方の縁辺部分にまで跨る単一のフィルム片であるか、またはそれぞれの縁辺部分を被覆するが裏張り層を被覆することのない2片のフィルム片であるかのいずれかである。フィルム片は適当な材料から、但し、好ましくは裏張り層と同じ材料から形成すればよい。
【0029】
空隙容積には湿度インジケータ手段を設けることができる。このインジケータ手段としては、例えば、湿度に曝されると変色するカラー・インジケータを採用することができる。これによって、ユーザーまたはヘルパーはウエハーの交換時期を容易に判断することができる。
【0030】
裏張り層を変形させるかまたは伸張することによって横方向に屈曲させることができる。これには幾つかの異なる方法が考えられる:裏張り層を接着域にラミネートした後、裏張り層を伸張することによって変形させる。接着剤は塗布域にある程度の安定性と剛性を付与するから、裏張り層は接着剤が塗布されていない領域においてのみ変形する。接着剤が塗布されていない内側領域を引っ張ることで裏張り層を変形させることになる。
【0031】
熱と圧力を加えることによってフィルムを熱成形することもできる。金型内にウエハーを置き、真空を導入するか、またはツールを導入して変形させることもできる。
【0032】
好ましい実施形態では、接着ウエハーが採取バッグ取り付けのための結合リングを含む人工切開口フェースプレートである。第1接着域は人工切開口と整合するアパーチャーを囲むディスクの形態を有し、前記ディスクは結合リングよりも小さいか、または同じ直径を有し、第2接着域は第1ディスクをこれと同心関係に囲み、空隙容積によって第1ディスクから分離され、第2接着域は好ましくは人工切開口用採取バッグを取り付けるための結合手段を有するか、または人工切開口用採取バッグを直接備えている。第1接着域は人工切開口と整合するアパーチャーを囲んで流体密閉接着剤を詰めることを可能にする非復元性のパテ状接着剤を含み、第2接着域は接着性に優れるが、吸収性に乏しい接着剤を含む。接着域間の空隙容積はウエハー全体に応力を集中させることなく人工切開口と整合するアパーチャーの周りの内側接着域が広い範囲内で移動することを可能にする。さらにまた、空隙容積が2つの接着域を物理的に分離しているから、種類の異なる2つの接着剤間に干渉が起こることはない。
【0033】
中央接着域は、例えば、国際公開第98/17212号パンフレットに開示されているようなパテ状接着剤を含み、第2接着域は肌に優しい、例えば、米国特許第4,551,490号明細書およびデンマーク特許第147 035号明細書に開示されている接着剤を含むことができる。第2接着域に好適なその他の接着剤としては、例えば、シリコンまたはポリウレタンを含有する接着剤が考えられる。
【0034】
創傷被覆材の場合、空隙容積は肌の動きに追随し、肌の広い範囲を被覆することを可能にする。接着域が空隙容積によって分離されていると、接着域は互いに大きく移動することができる。
【0035】
従来の創傷被覆材または人工切開口用ウエハーは肌当接側に連続的な接着面を有するのが普通である。被覆されている皮膚の範囲にこれを動かそうとする力が作用すると、ウエハーの下に位置する皮膚が比較的硬いプレートとして作用し、結果として、被覆材に隣接する皮膚に引張力の全部が集中することになる。従って、皮膚のこの部分に強い応力が発生し、同時に被覆材のへりにも応力が加わり、接着硬化を弱め、ウエハーを脱落させることにもなる。
【0036】
接着面を複数の不連続接着域に分割することによって、ウエハーを横切る方向の力も分割され、運動に曝されるウエハーの部分だけが影響を受けることになる。
【0037】
ウエハーの空隙容積が広ければ広いほど、接着域がより独立的に移動することができる。空隙容積の屋根に相当する裏張り層がさらに変形すると、人工切開口の周りにおいて特に重要な可撓性を高める。人工切開口の周りの皮膚が移動すると、従来のウエハーの場合、すべての応力がプレート全体に作用し、最終的にプレートの縁辺部に集まるから、プレートがその縁辺部において皮膚から滑り落ちることが多い。本発明のウエハーでは、応力の大部分が人工切開口の周りの接着域に止まるか、または非接着性空隙容積に吸収され、結合リングを有する接着域に作用する応力は小さい。従って、着用時間が長くなり、着用感が向上する。
【0038】
採取バッグへの結合または取り付け第2の外側域に重なる裏張り層または空隙層に重なる裏張り層に対して行なうことが好ましい。
【0039】
空隙容積は被覆材中またはその下に、例えば、漏れ流体の流路が形成される場合、流れる流体を遮断する機能をも有し、このような流体は空隙容積によって阻止され、流体は空隙容積に沿って拡散される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の詳細を、添付図面を参照して以下に説明する。添付図面において:
図1aには本発明の1実施形態を断面図で示した。ウエハーはその肌当接面に空隙容積(4)を挟んで互いに分離している第1および第2接着域(2、3)を有する裏張り層(1)を含む。図示の実施形態は人工切開口用のウエハーであり、裏張り層の肌非当接面に(図示しないが)採取バッグを取り付けるための結合手段(6)をも含み、さらには、人工切開口と整合させるためのアパーチャー(7)を含む。空隙容積(4)はその上方に位置する裏張り層(5)と、接着剤(10)の縁辺部分と、(図示しない)肌面とで画定されて流路を形成し、この流路においては、裏張り層(5)が肌と接触しない。
【0041】
これと同じ本発明の実施形態を頂面図として図1bに示した。接着域(2、3)は空隙容積(4)によって分離された同心円の形態を呈する。
【0042】
図2aに示すように、空隙容積は第2接着域(3)に対する第1接着域(2)の横方向移動を吸収することができる。ここでは第1接着域が、例えば、患者の肌の動きに伴って、または採取バッグに意図しない引張力が作用して(矢印で示すように)右方へ変位している。その結果、空隙容積(4)の右側(4b)が圧迫されてその幅が狭くなり、左側(4a)が広くなり、空隙容積(5)に被さる裏張り層が伸張される。この状況を図2bに頂面図で示した。
【0043】
ウエハーの可撓性を向上させるため、空隙容積の屋根に相当する裏張り層部分を変形させることによって余剰分を提供する。裏張り層が変形する本発明の種々の実施形態を図3a-3dに示した。図3aの場合、裏張り層(5)が変形して膨らみを形成し、横方向移動を充分吸収できる余剰分を提供する。図3bおよび3cでは裏張り層(5)が変形し、重なり合って、それぞれ縦方向のプリーツ(図3b)および横方向プリーツ(図3c)を形成する。図3dに示す実施形態では、裏張り層(5)が変形して接着域の縁辺部分と接触する。余剰分は流路として機能する膨らみの形態を呈する。
【0044】
図4aおよび4bは空隙容積(4)の詳細図であり、接着域(2、3)の縁辺部分を非接着性にするため、縁辺部分被覆してある。図4aの場合、縁辺部分(10)を非接着性層(8)で被覆してある。両縁辺部分(10)を非接着性層で被覆してもよいし、一方の縁辺部分だけを被覆してもよい。一方の縁辺部分だけを被覆する場合には、非接着性層(8)が非被覆縁辺部分の接着剤に対して非付着性であることが好ましい。非接着性層(8)は縁辺部分だけを被覆するか、または図4aに示すように、接着面の縁辺部分をも被覆するようにさらに延出していてもよい。
【0045】
図4bは非接着性層(9)が3つの壁面(10、5)すべてを被覆している実施形態を示す。空洞容積(5)の屋根に相当する裏張り層部分が変形すると、非接着性層(9)も追随して裏張り層と同様の形状となる。裏張り層の可撓性を妨げないため、非接着性層(9)は裏張りフィルム(5)と少なくとも同じ弾性/可塑性を備えるものでなければならない。
【0046】
図5は空隙容積(4)が発泡体(11)から成る本発明の実施形態を示す。発泡体(11)は図5に示すように空隙容積(4)とほぼ同じ容積を有するか、または空隙容積よりも小さい容積を有する。発泡体(11)は接着剤縁辺部分(10)が互いに付着するのを防止することができ、しかも流体漏れの抑止に寄与することができる。発泡体(11)は柔軟であり、接着域どうしの相対移動を妨げないように容易に圧縮することができる。
【0047】
図6には、ウエハーが空隙容積(4)によって分離された複数の接着域(2、3、12)を含む本発明の実施形態を示した。
【0048】
図7は第1中央接着域(2)が第2周辺接着域(3)よりも厚い本発明の実施形態を示す。
【0049】
図8は第1接着域(2)が人工切開口と整合するアパーチャー(7)を囲む部分において、第2接着域(3)の近傍部分よりも厚い実施形態を示す。接着剤の厚さの変化を図面では線形勾配で示してあるが、この勾配は、例えば、中央に向かって指数関数的に変化する曲線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1a】本発明の1実施形態を示す。
【図1b】本発明の1実施形態を示す。
【図2a】本発明の上記実施形態を横方向の力が加わった状態で示す。
【図2b】本発明の上記実施形態を横方向の力が加わった状態で示す。
【図3a】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3b】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3c】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図3d】本発明の他の実施形態の詳細図である。
【図4a】他の本発明の実施形態の詳細図である。
【図4b】他の本発明の実施形態の詳細図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す。
【図6】本発明の他の実施形態を示す。
【図7】本発明の他の実施形態を示す。
【図8】本発明の他の実施形態を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏張り層を含み、前記裏張り層が肌当接面を有し、前記肌当接面が空隙容積によって互いに分離された第1および第2接着域を有し、前記空隙容積が裏張り層と、第1および第2接着域と、肌当接面とで画定され、第1および第2接着域が裏張り層の平面に対して互いに独立に移動可能な人工切開口フェースプレートまたは創傷被覆材としての接着ウエハー。
【請求項2】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が非接触性である請求項1に記載の接着ウエハー。
【請求項3】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が変形/伸張可能である請求項1または請求項2に記載の接着ウエハー。
【請求項4】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が重なり合う請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項5】
第2接着域が第1接着域を囲む請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項6】
第1および第2接着域がそれぞれ異なる接着剤から成る請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項7】
ウエハーが結合リングを含む請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項8】
ウエハーが吸収パッドを含む請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項9】
裏張り層が3つ以上の接着域を含む請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項10】
空隙容積が発泡材から成る請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項11】
空隙容積の横方向幅が1−10mmである請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項12】
接着層の厚さが0.2−2mmである請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項13】
第1および第2接着域の厚さがそれぞれ異なる請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項14】
第1接着域が均一でない厚さを有し、中央部分において最も厚い請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項15】
空隙容積と対向する接着層の縁辺部分に非接着層を設けた請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項16】
非接着層がコーティングの形態を取る請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項17】
非接着層がポリマー・フィルムの形態を取る請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項18】
非接着層が空隙容積の屋根を画定する裏張り層をも被覆する請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項19】
空隙容積に湿度インジケータ手段を設けた請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項1】
裏張り層を含み、前記裏張り層が肌当接面を有し、前記肌当接面が空隙容積によって互いに分離された第1および第2接着域を有し、前記空隙容積が裏張り層と、第1および第2接着域と、肌当接面とで画定され、第1および第2接着域が裏張り層の平面に対して互いに独立に移動可能な人工切開口フェースプレートまたは創傷被覆材としての接着ウエハー。
【請求項2】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が非接触性である請求項1に記載の接着ウエハー。
【請求項3】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が変形/伸張可能である請求項1または請求項2に記載の接着ウエハー。
【請求項4】
空隙容積の屋根を画定する裏張り層が重なり合う請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項5】
第2接着域が第1接着域を囲む請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項6】
第1および第2接着域がそれぞれ異なる接着剤から成る請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項7】
ウエハーが結合リングを含む請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項8】
ウエハーが吸収パッドを含む請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項9】
裏張り層が3つ以上の接着域を含む請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項10】
空隙容積が発泡材から成る請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項11】
空隙容積の横方向幅が1−10mmである請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項12】
接着層の厚さが0.2−2mmである請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項13】
第1および第2接着域の厚さがそれぞれ異なる請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項14】
第1接着域が均一でない厚さを有し、中央部分において最も厚い請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項15】
空隙容積と対向する接着層の縁辺部分に非接着層を設けた請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【請求項16】
非接着層がコーティングの形態を取る請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項17】
非接着層がポリマー・フィルムの形態を取る請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項18】
非接着層が空隙容積の屋根を画定する裏張り層をも被覆する請求項15に記載の接着ウエハー。
【請求項19】
空隙容積に湿度インジケータ手段を設けた請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の接着ウエハー。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−534057(P2009−534057A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505721(P2009−505721)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000184
【国際公開番号】WO2007/121744
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000184
【国際公開番号】WO2007/121744
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】
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