説明

接着体の製造方法

【課題】インサート部品の温度が30〜150℃という比較的低温の状態でも、インサート部品と熱可塑性重合体組成物とを強固に接合させ得る、インサート成形による接着体の製造方法を提供すること。
【解決手段】インサート部品を保持した金型へ熱可塑性重合体組成物を充填して成形するインサート成形による接着体の製造方法であって、熱芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)1〜100質量部、極性基含有オレフィン系共重合体(C)5〜100質量部および軟化剤(D)0.1〜300質量部とを含有する熱可塑性重合体組成物を用い、かつインサート成形時のインサート部品4の温度を30〜150℃にする、接着体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着体の製造方法に関する。より詳細には、インサート成形によって、セラミックスや金属などのインサート部品と熱可塑性エラストマーとを強固に接合させた接着体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品、電子部品、機械部品、自動車部品などの様々な用途で、耐久性、耐熱性および機械的強度に優れたセラミックス、金属、合成樹脂が幅広く使用されている。これらの部材は、用途、部品構成および使用方法などにより、他の構造部材への固定のためや、衝撃吸収、破損防止またはシーリングなどの目的のため、柔軟性に優れたエラストマー部材を接着または複合化して使用する場合がある。インサート成形はこの様に異種材料を接着または複合化するのに有効な手段である。
【0003】
前記エラストマー部材としては、柔軟性および力学特性、さらには成形加工性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマーが用いられることがある。ここで、スチレン系熱可塑性エラストマーとは、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックと共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物を指す。しかしながら、スチレン系熱可塑性エラストマーは極性が低い材料であるため、セラミックス、金属などに対する接着力が十分でなく、そのままではインサート成形による接着が困難であるという問題点を有する。一方で、セラミックスや金属とスチレン系熱可塑性エラストマーを接着させるために、接着剤を塗布したり、あらかじめセラミックス、金属、合成樹脂の表面をプライマー処理したりする方法が開示されている(特許文献1〜6参照)。ところが、特許文献1〜6に開示された方法は、工程が煩雑であるばかりでなく、生産性も低くなり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0004】
このような問題に対し、セラミックス、金属および合成樹脂に対して優れた接着性を有する、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリビニルアセタールを含む熱可塑性重合体組成物が開示されている(特許文献7参照)。この熱可塑性重合体組成物は、接着剤を塗布したり、プライマー処理したりすることなく、加熱処理のみによってセラミックス、金属および合成樹脂に接着させることができるため、インサート成形を適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291019号公報
【特許文献2】特開2006−206715号公報
【特許文献3】特開昭63−25005号公報
【特許文献4】特開平9−156035号公報
【特許文献5】特開2009−227844号公報
【特許文献6】特開2010−1364号公報
【特許文献7】国際公開第2009/081877号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献7に開示された熱可塑性重合体組成物を用い、インサート成形によってインサート部品との接着体を得るには、インサート部品を当該熱可塑性重合体組成物の流動開始点以上の温度(180〜300℃程度)に加熱する必要があり、冷却過程における熱可塑性重合体組成物の収縮・変形が大きく、目的の形状が得られないという問題があった。また、加熱・冷却に多大なエネルギーを要すること、成形サイクル時間が長くなることから、インサート成形によってセラミックス、金属との接着体を得ることは現実には困難であった。
しかして、本発明の課題は、インサート部品の温度が30〜150℃という比較的低温の状態でも、インサート部品と熱可塑性重合体組成物とを強固に接合させ得る、インサート成形による接着体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記課題は、
[1]インサート部品を保持した金型へ熱可塑性重合体組成物を充填して成形するインサート成形による接着体の製造方法であって、
芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)(以下、熱可塑性エラストマー(A)と略称する)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)1〜100質量部、極性基含有オレフィン系共重合体(C)5〜100質量部および軟化剤(D)0.1〜300質量部とを含有する熱可塑性重合体組成物を用い、かつインサート成形時のインサート部品の温度を30〜150℃にする、接着体の製造方法;
[2]前記熱可塑性重合体組成物において、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、成分(B)の含有量が10〜70質量部、成分(C)の含有量が10〜70質量部、成分(D)の含有量が1〜200質量部である、上記[1]の接着体の製造方法;
[3]ポリビニルアセタール樹脂(B)が、平均重合度100〜4,000のポリビニルアルコールをアセタール化して得られるものであって、アセタール化度が55〜88モル%である、上記[1]または[2]の接着体の製造方法;
[4]ポリビニルアセタール樹脂(B)が、ポリビニルブチラールである、上記[1]〜[3]の接着体の製造方法;
[5]極性基含有オレフィン系共重合体(C)が、オレフィン系共重合性単量体と極性基含有共重合性単量体とを重合させてなるオレフィン系共重合体である、上記[1]〜[4]の接着体の製造方法;
[6]極性基含有オレフィン系共重合体(C)の190℃、荷重2.16kg(21.18N)の条件下におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分である、上記[5]の接着体の製造方法;
[7]極性基含有オレフィン系共重合体(C)のビカット軟化点が40〜100℃である、上記[1]〜[6]の接着体の製造方法;
[8]極性基含有オレフィン系共重合体(C)の極性基含有共重合性単量体に由来する構造単位の割合が1〜50質量%である、上記[5]〜[7]の接着体の製造方法;
[9]極性基含有オレフィン系共重合体(C)が、オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体である、上記[5]〜[8]の接着体の製造方法;
[10]前記インサート部品として、金属およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種を用いる、上記[1]〜[9]の接着体の製造方法;
[11]インサート部品の温度を発熱体によって制御する、上記[1]〜[10]のいずれかの接着体の製造方法;
[12]発熱体が、電気ヒーター、電磁誘導加熱ヒーターまたは熱媒体である、上記[11]の接着体の製造方法;および
[13]インサート成形時にホットランナーを用いる、上記[1]〜[12]の接着体の製造方法;を提供することにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インサート成形時のインサート部品の温度が30〜150℃という比較的低温であっても、インサート部品と熱可塑性重合体組成物とを強固に接合させた接着体を得ることができる。本発明により得られる接着体は、変形、ヒケおよび亀裂などが無く、外観に優れている。
本発明によれば、インサート部品を当該熱可塑性重合体組成物の流動開始点以上という高い温度(180〜300℃程度)に加熱する必要がないため、冷却過程における熱可塑性重合体組成物の収縮・変形が大幅に低減される。また、加熱・冷却に必要なエネルギーが削減され、成形サイクル時間も短縮されるため、工業的に有利な条件でインサート部品と熱可塑性重合体組成物との接着体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の可動側金型の正面図である。
【図2】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の可動側金型の横断面図である。
【図3】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の可動側金型の縦断面図である。
【図4】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の固定側金型の正面図である。
【図5】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の固定側金型の横断面図である。
【図6】実施例および比較例で採用した、インサート成形用の固定側金型の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[インサート成形による接着体の製造方法]
本発明は、インサート部品を保持した金型へ熱可塑性重合体組成物を充填して成形するインサート成形による接着体の製造方法であって、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)1〜100質量部、極性基含有オレフィン系共重合体(C)5〜100質量部および軟化剤(D)0.1〜300質量部とを含有する熱可塑性重合体組成物を用い、かつインサート成形時のインサート部品の温度を30〜150℃にする、接着体の製造方法である。
まず、熱可塑性重合体組成物について以下に説明し、次に、インサート成形条件などについて説明する。
【0011】
{熱可塑性重合体組成物}
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)1〜100質量部、極性基含有オレフィン系共重合体(C)5〜100質量部および軟化剤(D)0.1〜300質量部とを含有する。
【0012】
(熱可塑性エラストマー(A))
熱可塑性エラストマー(A)は、熱可塑性重合体組成物に柔軟性や、良好な力学特性および成形加工性などを付与するものであり、該組成物中でマトリックスの役割を果たす。
<芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック>
芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましい。
【0013】
ここで、本発明において、「芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック」とは、好ましくは芳香族ビニル化合物単位80質量%以上を含有する重合体ブロック、より好ましくは芳香族ビニル化合物単位90質量%以上を含有する重合体ブロック、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物単位95質量%以上(いずれも、原料の仕込み量換算の値である)を含有する重合体ブロックである。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ビニル化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。
他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、芳香族ビニル化合物単位および他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0014】
<共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック>
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの共役ジエン化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。特に、ブタジエンまたはイソプレンに由来する構造単位、またはブタジエンおよびイソプレンに由来する構造単位からなっていることが好ましい。
【0015】
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックを構成する共役ジエンの結合形態は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合には、1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。そのうちでも、共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロックがブタジエンからなる場合、イソプレンからなる場合、またはブタジエンとイソプレンの両方からなる場合は、共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロックにおける1,4−結合量の合計が1〜99モル%であることが好ましく、60〜98モル%であることがより好ましく、80〜98モル%であることがより好ましく、90〜98モル%であることがさらに好ましい。
なお、1,4−結合量は、1H−NMR測定によって算出できる。
【0016】
本発明において「共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック」とは、好ましくは共役ジエン化合物単位80モル%以上を含有する重合体ブロック、より好ましくは共役ジエン化合物単位90モル%以上を含有する重合体ブロック、さらに好ましくは共役ジエン化合物単位95モル%以上(いずれも、原料の仕込み量換算の値である)を含有する重合体ブロックである。共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックは、共役ジエン化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の効果を損なわない限り、共役ジエン化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。
他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、共役ジエン化合物単位および他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0017】
熱可塑性エラストマー(A)における、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物を含有する重合体ブロックとの結合形態は、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれでもよいが、直鎖状であることが好ましい。
例えば、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックをaで、共役ジエン化合物を含有する重合体ブロックをbで表したとき、a−bで表されるジブロック共重合体、a−b−aまたはb−а−bで表されるトリブロック共重合体、a−b−a−bで表されるテトラブロック共重合体、a−b−a−b−aまたはb−a−b−a−bで表されるペンタブロック共重合体が直鎖状の結合形態として挙げられる。これらの中でも、トリブロック共重合体が好ましく、a−b−aで表されるトリブロック共重合体であることがより好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性および耐候性を向上させる観点から、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックの一部または全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックの水添率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ここで、本明細書において、水添率は、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
【0019】
熱可塑性エラストマー(A)における芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックの含有量は、その柔軟性、力学特性の観点から、熱可塑性エラストマー(A)全体に対して、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。
また、熱可塑性エラストマー(A)の重量平均分子量は、その力学特性、成形加工性の観点から、好ましくは30,000〜300,000、より好ましくは50,000〜200,000である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
熱可塑性エラストマー(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、重量平均分子量50,000〜150,000の中分子量品と、150,000〜300,000の高分子量品との2種を組み合わせると、力学特性、成形加工性、接着性のバランスをより取り易くなるため好ましい。前記同様の理由で、2種を組み合わせる場合、前記中分子量品/前記高分子量品(質量比)が、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜75/25、さらに好ましくは20/80〜55/45である。
【0020】
(熱可塑性エラストマー(A)の製造方法)
熱可塑性エラストマー(A)の製造方法は、例えばアニオン重合法により製造できる。具体的には、
(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;
(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などが挙げられる。
【0021】
前記(i)および(ii)中のアルキルリチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。前記(ii)中のカップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼンなどが挙げられる。また、前記(iii)中のジリチウム化合物としては、例えばナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼンなどが挙げられる。
【0022】
これらのアルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物などの開始剤やカップリング剤の使用量は、目標とする熱可塑性エラストマー(A)の重量平均分子量により決定されるが、アニオン重合法に用いる芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物の合計100質量部に対して、通常、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物などの開始剤は、いずれも0.01〜0.2質量部用いられる。また、(ii)においては、アニオン重合法に用いる芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物の合計100質量部に対して、通常、カップリング剤は、0.001〜0.8質量部用いられる。
なお、上記のアニオン重合は、溶媒の存在下で行なうのが好ましい。溶媒としては、開始剤に対して不活性で、重合に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はなく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの飽和脂肪族炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。また、重合は、上記したいずれの方法による場合も、通常、0〜80℃で0.5〜50時間行なうのが好ましい。
【0023】
上記アニオン重合の際、有機ルイス塩基を添加することによって、熱可塑性エラストマー(A)の1,2−結合量および3,4−結合量を増やすこともできる。
該有機ルイス塩基としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
【0024】
上記方法により重合を行なった後、反応液に含まれるブロック共重合体を、メタノールなどの該ブロック共重合体の貧溶媒に注いで凝固させるか、または反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥させることにより、未水添の熱可塑性エラストマー(A)を単離できる。
さらに、上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(A)を水素添加反応に付すことによって、水添された熱可塑性エラストマー(A)を製造できる。水素添加反応は、反応および水素添加触媒に対して不活性な溶媒に上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(A)を溶解させるか、または、未水添の熱可塑性エラストマー(A)を前記の反応液から単離せずにそのまま用い、水素添加触媒の存在下、水素と反応させることにより行うことができる。
水素添加触媒としては、例えばラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの担体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などとの組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒などが挙げられる。
水素添加反応は、通常、水素圧力0.1〜20MPa、反応温度20〜250℃、反応時間0.1〜100時間の条件で行なうことができる。この方法による場合、水素添加反応液をメタノールなどの貧溶媒に注いで凝固させるか、または水素添加反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥させることにより、水添された熱可塑性エラストマー(A)を単離できる。
【0025】
また、熱可塑性エラストマー(A)として、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物の接着性などの特性を改良するために、熱可塑性ポリウレタンブロックを有する熱可塑性エラストマーを用いてもよい。熱可塑性ポリウレタンブロックを有する熱可塑性エラストマーは、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、末端に水酸基を含有する芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックおよび共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有する熱可塑性エラストマーとを、溶融条件下に混練して反応させ、得られる反応生成物から公知の方法で抽出・回収することにより得られる。該熱可塑性ポリウレタンとしては、ポリエステル系ポリウレタンが好ましく、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系ポリウレタンがより好ましい。該熱可塑性ポリウレタンとしては、株式会社クラレ製の「クラミロン(登録商標)」シリーズを用いることができる。
両者の混合割合は、質量比で、溶融混練前の熱可塑性エラストマー(A)/熱可塑性ポリウレタン=20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。
【0026】
(ポリビニルアセタール樹脂(B))
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物に接着性を付与するものであり、通常、組成物中にて島状に分散している。該ポリビニルアセタール樹脂(B)が存在することによって、セラミックス、金属または合成樹脂などの被着体の表面にプライマー処理を施さなくても良好に接着することができる。
該ポリビニルアセタール樹脂(B)は、通常、下記式(I)に表される繰り返し単位を有する樹脂である。
【0027】
【化1】

【0028】
上記式(I)中、nは、アセタール化反応に用いたアルデヒドの種類の数を表す。R1、R2、・・・、Rnは、アセタール化反応に用いたアルデヒドのアルキル残基または水素原子を表し、k(1)、k(2)、・・・、k(n)は、それぞれ[ ]で表す構成単位の割合(モル比)を表す。また、lは、ビニルアルコール単位の割合(モル比)、mは、ビニルアセテート単位の割合(モル比)を表す。
ただし、k(1)+k(2)+・・・+k(n)+l+m=1であり、k(1)、k(2)、・・・、k(n)、lおよびmは、いずれかがゼロであってもよい。
各繰返し単位は、特に上記配列順序によって制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。
【0029】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造方法)
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、例えば、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを反応させることによって得ることができる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられるポリビニルアルコールは、平均重合度が、通常、好ましくは100〜4,000、より好ましくは100〜3,000、さらに好ましくは100〜2,000、特に好ましくは250〜2,000である。ポリビニルアルコールの平均重合度が100以上であれば、ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造が容易となり、また取り扱い性が良好である。また、ポリビニルアルコールの平均重合度が4,000以下であると、溶融混練する際の溶融粘度が高くなり過ぎることがなく、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物の製造が容易である。
ここでポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定したものである。具体的には、ポリビニルアルコールを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求めた値である。
【0030】
ポリビニルアルコールの製法は特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニルなどをアルカリ、酸、アンモニア水などによりけん化して製造されたものを用いることができる。また、市販品を用いてもよい。市販品としては、株式会社クラレ製の「クラレポバール」シリーズなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、完全けん化されたものであってもよいが、部分的にけん化されたものであってもよい。けん化度は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0031】
また、上記ポリビニルアルコールとしては、エチレン−ビニルアルコール共重合体や部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコールと、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることができる。さらに、一部にカルボン酸などが導入された変性ポリビニルアルコールを用いることができる。これらポリビニルアルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられるアルデヒドは特に制限されない。例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、n−オクタナール、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒド、フルフラール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒドなどが挙げられる。これらのアルデヒドは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらアルデヒドのうち、製造容易性の観点から、ブチルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。
【0033】
ブチルアルデヒドを用いたアセタール化によって得られるポリビニルアセタール樹脂(B)を、特に、ポリビニルブチラール(PVB)と称する。
本発明では、ポリビニルアセタール樹脂(B)中に存在するアセタール単位のうち、ブチラール単位の割合(下式参照)が、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは0.95以上、特に好ましくは、実質的に1である。
すなわち、前記式(I)に示されるポリビニルアセタール樹脂(B)の構造式において、R1のみがC37であるとき、0.8≦k(1)/(k(1)+k(2)+・・・+k(n))であるものが好ましい。
【0034】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度は、好ましくは55〜88モル%である。アセタール化度が55モル%以上のポリビニルアセタール樹脂(B)は、製造コストが低く、入手が容易であり、また溶融加工性が良好である。一方、アセタール化度が88モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(B)は、製造が非常に容易であり、製造に際し、アセタール化反応に長い時間を要しないので経済的である。
ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度は、より好ましくは60〜88モル%であり、さらに好ましくは70〜88モル%であり、特に好ましくは75〜85モル%である。ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度が低いほど、ポリビニルアセタール樹脂(B)が有する水酸基の割合が大きくなり、セラミックス、金属および合成樹脂に対する接着性において有利となるが、上記範囲のアセタール化度とすることで、熱可塑性エラストマー(A)との親和性や相容性が良好となり、熱可塑性重合体組成物の力学特性に優れるとともに、セラミックス、金属および合成樹脂との接着強度が高くなる。
【0035】
ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度(モル%)は、以下の式で定義される。
アセタール化度(モル%)={k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100
(上記式中、n、k(1)、k(2)、・・・、k(n)、lおよびmは、前記定義の通りである。)
【0036】
なお、ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度は、JIS K 6728(1977年)に記載の方法に則って求めることができる。すなわち、ビニルアルコール単位の質量割合(l0)およびビニルアセテート単位の質量割合(m0)を滴定によって求め、ビニルアセタール単位の質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求める。これからビニルアルコール単位のモル割合l[l=(l0/44.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(アセタール)]およびビニルアセテート単位のモル割合m[m=(m0/86.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(アセタール)]を計算し、k=1−l−mの計算式によりビニルアセタール単位のモル割合(k=k(1)+k(2)+・・・+k(n))を得る。ここで、Mw(アセタール)は、ビニルアセタール単位ひとつあたりの分子量であり、例えば、ポリビニルブチラールのとき、Mw(アセタール)=Mw(ブチラール)=142.2である。そして、{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100の計算式によって、アセタール化度(モル%)を求めることができる。
また、ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂(B)を重水素化ジメチルスルホキシドなどの適切な重水素化溶媒に溶解し、1H−NMRや13C−NMRを測定して算出してもよい。
【0037】
また、ポリビニルアセタール樹脂(B)としては、ビニルアルコール単位を好ましくは12〜45モル%(0.12≦l≦0.45)含み、ビニルアセテート単位を好ましくは0〜5モル%(0≦m≦0.05)、より好ましくは0〜3モル%(0≦m≦0.03)含む。
【0038】
ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応(アセタール化反応)は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコールの水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下でアセタール化反応させて、ポリビニルアセタール樹脂(B)の粒子を析出させる水媒法;ポリビニルアルコールを有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下、アルデヒドとアセタール化反応させ、得られた反応混合液に、ポリビニルアセタール樹脂(B)に対して貧溶媒である水などを混合することにより、ポリビニルアセタール樹脂(B)を析出させる溶媒法などが挙げられる。
上記酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸類;二酸化炭素などの水溶液にした際に酸性を示す気体;陽イオン交換樹脂や金属酸化物などの固体酸触媒などが挙げられる。
【0039】
前記水媒法や溶媒法などにおいて生成したスラリーは、通常、酸触媒によって酸性を呈している。酸触媒を除去する方法として、前記スラリーの水洗を繰り返し、pHを好ましくは5〜9、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;前記スラリーに中和剤を添加して、pHを好ましくは5〜9、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;前記スラリーにアルキレンオキサイド類などを添加する方法などが挙げられる。
pHを調整するために用いられる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア、アンモニア水溶液などが挙げられる。また、前記アルキレンオキサイド類としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0040】
次に中和により生成した塩、アルデヒドの反応残渣などを除去する。
除去方法は特に制限されず、脱水と水洗を繰り返すなどの方法が通常用いられる。残渣などが除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂(B)は、必要に応じて乾燥され、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)としては、パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することにより、アルデヒドの反応残渣や水分などを低減したものが好ましい。
【0041】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)を1〜100質量部含有する。ポリビニルアセタール樹脂(B)が1質量部より少ないと、セラミックス、金属および合成樹脂との十分な接着性を得ることが難しい。一方、ポリビニルアセタール樹脂(B)が100質量部より多くなると、十分な接着性は得られるが、熱可塑性重合体組成物が硬くなり、柔軟性・力学特性が発現しにくくなる。ポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上であり、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。これらより、ポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは1〜70質量部、より好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜70質量部、より好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは20〜50質量部、特に好ましくは25〜45質量部である。
【0042】
(極性基含有オレフィン系共重合体(C))
極性基含有オレフィン系共重合体(C)は、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物により良好な成形加工性を付与するのみならず、該熱可塑性重合体組成物が、150℃以下においてもセラミックス、金属または合成樹脂などと良好に接着することを可能にする。
極性基含有オレフィン系共重合体(C)の極性基としては、例えば、エステル基、水酸基、アミド基や、塩素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
極性基含有オレフィン系共重合体(C)としては、オレフィン系共重合性単量体と極性基含有共重合性単量体からなるオレフィン系共重合体が好ましい。該オレフィン系共重合性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、シクロヘキセンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。中でも、エチレン、プロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、極性基含有共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましく、150℃以下においても高い接着性を得る観点から、アクリル酸メチルがさらに好ましい。
【0044】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)の重合形態は特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体などを用いることができる。中でも、ランダム共重合体が好ましい。
極性基含有オレフィン系共重合体(C)が有する極性基は、重合後に後処理されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸の金属イオンによる中和を行ってアイオノマーとしてもよいし、酢酸ビニルの加水分解などを行なってもよい。
【0045】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)の190℃、荷重2.16kg(21.18N)の条件下におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.1〜70g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは1〜20g/10分、特に好ましくは1〜10g/分である。極性基含有オレフィン系共重合体(C)の上記条件下におけるMFRが0.1g/10分以上であれば、150℃以下においても接着強度が十分に得られる。一方、該MFRが100g/10分以下であれば、入手が容易である上、力学特性が発現し易い。
【0046】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)のビカット軟化点は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは45〜95℃、より好ましくは45〜75℃、さらに好ましくは45〜65℃、特に好ましくは45〜55℃である。極性基含有オレフィン系共重合体(C)のビカット軟化点が40℃以上であれば、熱可塑性重合体組成物の力学特性が良好となる。また、該ビカット軟化点が100℃以下であれば、150℃以下においても接着強度が高くなる。なお、ビカット軟化点は、JIS K 7206に準じた方法で、A50法によって測定した値である。
【0047】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)が有する極性基含有構造単位の、極性基含有オレフィン系共重合体(C)が有する全構造単位に対する割合は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは1〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。極性基含有構造単位の割合がこの範囲であれば、熱可塑性エラストマー(A)との親和性や相容性と共に、ポリビニルアセタール樹脂(B)との親和性や相容性が良好であり、熱可塑性重合体組成物の力学特性が良好となり、セラミックス、金属および合成樹脂に対する接着性が高くなり、150℃以下においても接着強度が高くなる。
なお、極性基含有構造単位の割合が少なくなるに伴って、熱可塑性重合体組成物の力学特性が低下する傾向となり、極性基含有構造単位の割合が多くなるに伴って、熱可塑性エラストマー(A)との親和性や相容性が低くなる傾向にある。
【0048】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、極性基含有オレフィン系共重合体(C)を5〜100質量部含有する。極性基含有オレフィン系共重合体(C)が5質量部より少ないと、セラミックス、金属または合成樹脂を150℃以下で接着させることが難しい。一方、極性基含有オレフィン系共重合体(C)が100質量部より多くなると、十分な接着性は得られるが、熱可塑性重合体組成物が硬くなり、柔軟性および力学特性が発現しにくくなる。極性基含有オレフィン系共重合体(C)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上であり、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
これらより、極性基含有オレフィン系共重合体(C)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜70質量部、さらに好ましくは20〜70質量部、特に好ましくは35〜60質量部である。
【0049】
(軟化剤(D))
軟化剤(D)としては、例えば、一般にゴム、プラスチックスに用いられる軟化剤を使用できる。
例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレンなどが挙げられる。これらの中でもプロセスオイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
また、一般的にポリビニルアセタール樹脂と併せて使用される公知の軟化剤、例えば一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル系可塑剤;有機リン酸エステル、有機亜リン酸エステルなどのリン酸系可塑剤なども使用できる。
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコール−ジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステルなどに代表されるトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸などの一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコール系エステルが挙げられる。
多塩基酸有機エステルとしては、例えばセバシン酸ジブチルエステル、アゼライン酸ジオクチルエステル、アジピン酸ジブチルカルビトールエステルなどに代表されるアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの多塩基性有機酸と直鎖状または分岐状アルコールのエステルなどが挙げられる。
有機リン酸エステルとしては、例えばトリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
軟化剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、軟化剤(D)を0.1〜300質量部含有する。軟化剤(D)が0.1質量部より少ないと、熱可塑性重合体組成物の柔軟性、成形加工性が低下する。好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上である。一方、軟化剤(D)が300質量部より多くなると、力学特性、セラミックス、金属および合成樹脂に対する接着性が低下する。より好ましくは200質量部以下である。さらに好ましくは150質量部以下である。
これらより、軟化剤(D)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは50〜200質量部、特に好ましくは50〜150質量部である。
【0051】
(その他の任意成分)
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じてオレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレングリコールなど、他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。これらの中でも、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物にオレフィン系重合体を含有させると、その成形加工性、力学特性がさらに向上する。このようなオレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、プロピレンとエチレンや1−ブテンなどの他のα−オレフィンとのブロック共重合体やランダム共重合体などの1種または2種以上を使用することができる。
他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0052】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、必要に応じて、無機充填材を含有することができる。無機充填材は、熱可塑性重合体組成物の耐熱性、耐候性などの物性の改良、硬度調整、増量剤としての経済性の改善などに有用である。無機充填材としては、特に制限されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、クレー、天然ケイ酸、合成ケイ酸、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、ガラスバルーン、ガラス繊維などが挙げられる。無機充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材を含有させる場合、その含有量は、熱可塑性重合体組成物の柔軟性が損なわれない範囲であることが好ましく、一般に熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0053】
また、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに粘着付与樹脂を含有することができる。粘着付与樹脂としては、例えばロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
粘着付与樹脂を含有させる場合、その含有量は、熱可塑性重合体組成物の力学特性が損なわれない範囲であることが好ましく、一般に熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0054】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物は、さらに、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、光安定剤、加工助剤、顔料や色素などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などを含有していてもよい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、リン系、ラクトン系、ヒドロキシル系の酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、得られる熱可塑性重合体組成物を溶融混練する際に着色しない範囲であることが好ましく、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0055】
本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物の調製方法に特に制限はなく、前記成分を均一に混合し得る方法であればいずれの方法で調製してもよく、通常は溶融混練法が用いられる。溶融混練は、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バッチミキサー、ローラー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができ、通常、好ましくは170〜270℃で溶融混練することにより、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0056】
こうして得られた熱可塑性重合体組成物は、JIS K 6253のJIS−A法による硬度(以下、「A硬度」と称することがある)が、好ましくは93以下、より好ましくは30〜85、さらに好ましくは40〜75、特に好ましくは40〜60である。A硬度が高くなりすぎると、良好な柔軟性、弾性、力学特性が得られにくく、合成樹脂、特に無機充填材(ガラス繊維など)を含有する樹脂、セラミックスおよび金属と優れた接着性を有する熱可塑性重合体組成物としての好適な使用が難しくなる傾向にある。
【0057】
{インサート部品}
本発明では、前述のとおり、インサート部品を保持した金型へ前記熱可塑性重合体組成物を充填して成形するインサート成形により、接着体を製造する。ここで「インサート成形」とは、所定の形状をもつ金型内に金属素材等のインサート部品を挿入した後、熱可塑性重合体組成物を充填することで、当該インサート部品と当該熱可塑性重合体組成物とを一体化した成形品を得る方法である。インサート部品を金型内に保持する方法に特に制限は無く、公知の方法を採用することができ、例えばピンなどを使用して固定する方法、真空ラインにより固定する方法が挙げられる。なお、本発明において、「接着体」とは、インサート部品と熱可塑性重合体組成物とが接着して一体化したものを指す。
本発明に用いられるインサート部品としては、ガラス、セラミックス、金属および金属メッキからなる群から選択される少なくとも1種が用いられていることが好ましく、セラミックス、金属、または金属メッキされたものであることがより好ましい。
セラミックスとは、非金属系の無機材料を意味し、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などが挙げられる。具体的には、セメント類、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛系セラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フェライト類などが挙げられる。
金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、亜鉛、およびそれらを成分とする合金が挙げられる。また、金属メッキとしては、銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、錫メッキ、亜鉛メッキ、白金メッキ、金メッキ、銀メッキなどが挙げられる。
また、電子・電気機器、OA機器、家電機器、自動車用部材などのハウジング材には合成樹脂、アルミニウム、マグネシウム合金といった軽金属が用いられており、当然、このようなハウジング材をインサート部品として用いることもできる。
【0058】
{金型}
インサート成形時に用いる金型に特に制限は無いが、例えば図1〜図6に示されるような金型を用いることが好ましい。
図1〜図3はそれぞれ可動側金型の正面図、横断面図、縦断面図であり、図4〜図6はそれぞれ固定側金型の正面図、横断面図、縦断面図である。
図1において、CAV1とCAV2という2つのキャビティーが示されているが、それぞれ異なる深さに掘られたキャビティーとなっており、流路を切り替えることにより、CAV1とCAV2とを選択できる。また、キャビティー内に設置されたインサート部品(4)を真空ライン(2)で固定できるようになっている。図2および図3は、インサート部品(4)および熱可塑性重合体組成物(5)がキャビティー内に設置された状態を示している。図4は、金型温調用水路(6)を示しており、図1、図5および図6の太い矢印は、シリンダーから熱可塑性重合体組成物が充填される経路を示している。
【0059】
(インサート成形条件)
本発明において、インサート成形時のインサート部品の温度は、冷却過程における熱可塑性重合体組成物の収縮・変形を大幅に低減し、加熱・冷却に必要なエネルギーを削減し、かつ成形サイクル時間を短縮する観点から、30〜150℃である。本発明では、前記特定の熱可塑性重合体組成物を用いることにより、インサート部品の温度が当該温度範囲であっても、インサート部品と熱可塑性重合体組成物との間に充分な接着強度が得られる。
上記観点から、インサート部品の温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃、特に好ましくは120〜140℃である。30℃を下回ると、冷却設備を別途設ける必要があり、また、インサート部品と熱可塑性重合体組成物との間の充分な接着強度が得られない恐れがある。一方、150℃を上回ると、冷却過程における当該熱可塑性樹脂組成物の収縮・変形が大きくなり、目的の形状が得られ難くなると共に、加熱・冷却に必要なエネルギーが増大し、成形サイクル時間が増大する。
【0060】
インサート成形時のインサート部品の温度を前記範囲とする方法に特に制限は無く、金型の温度調節機構を介して行う方法や、インサート部品の温度を選択的に制御する機構を設ける方法などが挙げられる。150℃未満にする場合には、金型の温度調節機構を介して行う方法が簡便である。一方、50℃以上にする場合には、温度制御の容易性の観点から、インサート部品の温度を選択的に制御する機構を設ける方法が好ましい。
「金型の温度調節機構」とは、金型が有する、金型自体の温度を調節する機能のことであり、「インサート部品の温度を選択的に制御する機構」とは、インサート部品の近くに設けた、インサート部品専用の温度調節機能のことである。
インサート部品の温度を選択的に制御することで、インサート部品の昇温が容易となり、また、接着体の離型も容易になる。インサート部品の温度の選択的な制御には、電気ヒーター、電磁誘導加熱ヒーター、熱媒体、熱板などの発熱体を利用することができる。
電気ヒーターや電磁誘導加熱ヒーターを利用する場合、金型内に埋め込んで利用したり、ヒーターの埋め込まれた加熱板を金型表面に取り付けて利用したりすることができる。熱媒体を利用する場合、金型内に熱媒体流路を設け、所定温度の熱媒体を外部から供給し、外部へ排出する方法が挙げられる。熱媒体としては、特に制限は無いが、油、水、水蒸気、空気、窒素、燃焼ガスなどの流体が挙げられる。
なお、インサート部品に金属が用いられている場合は、直接通電させて加熱してもよいし、誘導コイルによって誘導加熱してもよい。
また、インサート部品の温度を前記範囲に保持する時間に特に制限は無く、生産効率の観点から、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内であるが、接着性の観点からは、好ましくは5秒以上、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。なお、実質的に保持時間を設けずに、すぐに後述する冷却操作に移行しても充分な接着力が得られる。
より効率よくインサート部品の温度を調節するには、インサート部品の周辺と金型の間に断熱構造を設けることも有効である。
【0061】
インサート部品の温度を前記範囲にする手順としては、
(1)前記熱可塑性重合体組成物を、インサート部品を保持した金型へ充填する前に、インサート部品を所定温度にしておく方法[以下、前加熱法と称することがある。]、
(2)熱可塑性重合体組成物を充填する段階では温度調節を行わず、充填した後に金型内で所定温度に昇温する方法[以下、後加熱法と称することがある。]、
(3)熱可塑性重合体組成物を充填する段階である程度昇温し、充填した後にさらに金型内で所定温度まで昇温する方法、
などが挙げられる。これらの中でも、接着性制御の観点から、(1)、(2)の方法が好ましく、インサート部品の温度制御の容易性の観点からは(1)の方法がより好ましく、接着体の外観の観点からは、(2)の方法がより好ましい。
なお、上記(1)の場合、熱可塑性重合体組成物を金型へ充填する作業を開始した直後にインサート部品の温度調節を停止してもよいし、熱可塑性重合体組成物の充填中にインサート部品の温度調節を継続していてもよい。
【0062】
インサート部品を前記所定温度に昇温して接着体を得た後は、得られた接着体を金型から取出す(離型する)ため、必要に応じて接着体の冷却を行う。接着体を金型から取出すまでに、接着体の表面温度が30〜50℃になっていることが好ましい。冷却方法に特に制限は無く、例えば、金型の温度調節機構を介して行う方法(ここでは放冷も含む。)が挙げられる。接着体の近傍に冷却媒体の流路を配置することによって、冷却時間を短縮することも可能である。特に、インサート部品の温度を、熱媒体を用いて選択的に制御した場合は、熱媒体の流路を利用し、熱媒体を冷却媒体に切り替えて冷却することもできる。
【0063】
本発明では、金型流路(例えばスプルー、ランナーおよびゲート)内の固化樹脂の取出しを省略することができ、かつ接着体を容易に離型することができる手段として、インサート成形時にホットランナーを用いることができる。ホットランナーの加熱方式は、内部加熱方式、外部加熱方式のいずれも使用できる。ホットランナーのゲートシール方式は、熱的バランスによる方式、バルブゲートによる方式などが挙げられる。熱的バランスによるシールとしては、ホットチップ、スプルーゲート、ホットエッジなどが挙げられる。
【0064】
本発明では射出成形法を利用するが、熱可塑性重合体組成物のヒケ、ボイドおよび成形歪の低減のため、射出圧縮成形法を採用することもできる。射出圧縮成形法により、インサート部品への接着力が上昇する効果もある。
【0065】
以上のようにして得られる接着体における熱可塑性重合体組成物の接着力は、通常、人間の手では剥離し難い程度である20N/25mm以上が好ましく、25N/25mm以上がより好ましく、30N/25mm以上がさらに好ましく、通常、25〜50N/25mmの範囲である。20N/25mmを下回ると、抵抗感はあるものの簡単に剥がすことができ、実用性の観点からは十分に接着しているとは言えない。ここで、接着力は、実施例に記載の方法でJIS K 6854−2に準じて測定した値である。
【0066】
本発明の製造方法を適用する接着体の形状、構造および用途などに特に制限は無い。本発明は、自動車や建築物の窓におけるガラスとアルミニウムサッシや金属開口部との接着部の製造、太陽電池モジュールなどにおけるガラスと金属製枠体との接続部の製造に有用である。また、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携帯電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、電子辞書、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラジオカセット再生機、インバーターなどのハウジングに衝撃緩和材、滑り止め防止機能を持った被覆材、防水材、意匠材などを成形する方法に有用である。
さらには、ノート型パソコン、携帯電話機、ビデオカメラなどの各種情報端末機器や、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに用いられる二次電池のセパレーターの製造などにも有用である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で用いた熱可塑性エラストマー(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)、極性基含有オレフィン系共重合体(C)、軟化剤(D)については、以下のものを用いた。
【0068】
〔(スチレン系)熱可塑性エラストマー(A1)〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン80L、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.17Lを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン3.9Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン12.1Lおよびブタジエン10.9Lの混合液を加えて4時間重合を行い、さらにスチレン3.9Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。
続いて、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体20kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水素添加物(以下、熱可塑性エラストマー(A1)と称する)を得た。得られた熱可塑性エラストマー(A1)の重量平均分子量は170,000、スチレン含量は32質量%、水添率は97%、分子量分布は1.04、1,4−結合量は95モル%であった。
【0069】
〔(スチレン系)熱可塑性エラストマー(A2)〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン80L、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.34Lを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン4.0Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン14.2Lおよびブタジエン11.6Lの混合液を加えて4時間重合を行い、さらにスチレン4.0Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。
続いて、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体20kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水素添加物(以下、熱可塑性エラストマー(A2)と称する)を得た。得られた熱可塑性エラストマー(A2)の重量平均分子量は100,000、スチレン含量は30質量%、水添率は97%、分子量分布は1.02、1,4−結合量は95モル%であった。
【0070】
〔ポリビニルアセタール樹脂(B1)〕
平均重合度500、けん化度99モル%のポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、n−ブチルアルデヒドおよび酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌しながら後処理をし、pH=7になるまで洗浄し、揮発分が0.3%になるまで乾燥することにより、アセタール化度が80モル%のポリビニルアセタール樹脂(B1)を得た。
〔ポリビニルアセタール樹脂(B2)〕
平均重合度1000、けん化度99モル%のポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、n−ブチルアルデヒドおよび酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌しながら後処理をし、pH=7になるまで洗浄し、揮発分が0.3%になるまで乾燥することにより、アセタール化度が80モル%のポリビニルアセタール樹脂(B2)を得た。
【0071】
〔極性基含有オレフィン系共重合体(C1)〕
エチレン−アクリル酸メチル共重合体「エルバロイ(登録商標)AC 1820AC」(アクリル酸メチル含有量:20質量%、MFR[190℃、荷重2.16kg(21.18N)]:8g/10分、ビカット軟化点:54℃、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
〔極性基含有オレフィン系共重合体(C2)〕
エチレン−アクリル酸メチル共重合体「エルバロイ(登録商標)AC 1609AC」(アクリル酸メチル含有量:9質量%、MFR[190℃、荷重2.16kg(21.18N)]:6g/10分、ビカット軟化点:70℃、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
〔極性基含有オレフィン系共重合体(C3)〕
エチレン−アクリル酸メチル共重合体「エルバロイ(登録商標)AC 1125AC」(アクリル酸メチル含有量:25質量%、MFR[190℃、荷重2.16kg(21.18N)]:0.4g/10分、ビカット軟化点:48℃、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
〔極性基含有オレフィン系共重合体(C4)〕
エチレン−アクリル酸エチル共重合体「エチレン−エチルアクリレートコポリマー NUC−6170」(アクリル酸エチル含有量:18質量%、MFR[190℃、荷重2.16kg(21.18N)]:6g/10分、ビカット軟化点:58℃、日本ユニカー株式会社製)
〔オレフィン系共重合体(C’5)〕
低密度ポリエチレン「ノバテックLD LC607K」(商品名、MFR[190℃、荷重2.16kg(21.18N)]:8g/10分、ビカット軟化点:89℃、日本ポリエチレン株式会社製)
【0072】
〔軟化剤(D1)〕
パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスPW−90」(商品名、出光興産株式会社製)
【0073】
<熱可塑性重合体組成物のペレットおよびシートの製造>
上記に記載した各成分を表に記載の質量比で混合し、二軸押出機を用いて230℃、スクリュー回転200rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断して熱可塑性重合体組成物のペレットを得た。
製造した熱可塑性重合体組成物の各物性を測定する為、ペレットを圧縮成形機を用いて230℃、荷重100kgf/cm2(9.8N/mm2)の条件下で3分間圧縮成形することで厚さ1mmの熱可塑性重合体組成物シートを得た。得られた熱可塑性重合体組成物シートの各物性の測定および評価は、以下のようにして行なった。結果を表1に示す。
【0074】
(メルトフローレート(MFR)の測定)
熱可塑性重合体組成物のペレットを、JIS K 7210に準じた方法で、230℃、荷重2.16kg(21.18N)の条件下でMFRを測定し、成形加工性評価の指標とした。MFRの値が大きいほど成形加工性に優れる。
(硬度の測定)
熱可塑性重合体組成物シートを重ねて厚さ6mmの試験片を作製し、JIS K 6253に準じたタイプAデュロメータによりタイプA硬度を測定した。
(引張破断強度(Tb)および引張破断伸度(Eb))
熱可塑性重合体組成物シートより、JIS K 6251に準じた方法でダンベル型試験片(ダンベル状5号形)を作製し、引張速度500mm/分で、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0075】
以下の実施例または比較例において使用したインサート部品は以下のとおりである。
〔インサート部品(a):アルミニウム板(A5052P)〕
〔インサート部品(b):鋼板(SPCC)〕
〔インサート部品(c):電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)〕
〔インサート部品(d):SUS304〕
〔インサート部品(e):銅板(C1100P)〕
長さ100mm×幅35mm×厚さ1mmの各インサート部品の両面の表面を、界面活性剤水溶液、蒸留水をこの順に用いて洗浄し、65℃で乾燥させた。
【0076】
また、以下の実施例または比較例で得た接着体の熱可塑性重合体組成物の接着力の測定および外観の評価は以下の通りに行なった。
(接着力の測定)
得られた接着体の熱可塑性重合体組成物側にポリエチレンテレフタレート製シートを接着剤で接着させ、JIS K 6854−2に準じて、剥離角度180°および引張速度50mm/分の条件でインサート部品と熱可塑性重合体組成物の接着力を測定した。
(外観の評価)
下記評価基準に従って、接着体の外観を目視にて評価した。熱可塑性重合体組成物の部分に変形、ヒケおよび亀裂のいずれも観察されない場合は「○」、変形、ヒケおよび亀裂の少なくとも1種が観察される場合は「×」とした。
【0077】
<実施例1〜8および比較例1〜7>
図1〜図6に示す金型を使用し、前記インサート部品(a)を真空ラインによって金型内に固定した。ヒーターを通電させ、熱伝導によってインサート部品を140℃に調節した。金型温度30℃、シリンダー温度230℃の条件にて、表1に示す配合からなる熱可塑性重合体組成物をCAV2へ充填し、充填を開始した直後に、ヒーターの通電を停止し、接着体の表面温度を30℃まで冷却することによって接着体を得た。得られた接着体の熱可塑性重合体組成物の接着力の測定結果を表1に示す。
【0078】
<実施例9〜13および比較例8>
実施例5において、インサート部品とインサート部品の温度を表2に示すとおりに変更した以外は同様に操作を行ない、接着体を得た。
【0079】
<実施例14>
実施例5において、熱可塑性重合体組成物の充填を開始した15秒後にヒーターの通電を停止した以外は同様に操作を行ない、接着体を得た。
得られた接着体の熱可塑性重合体組成物の接着力の測定結果を表2に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
表1および表2より、特定の成分(A)〜(D)を特定配合比で含有する熱可塑性重合体組成物を用いることにより、インサート成形時のインサート部品の温度が140℃であっても、得られる接着体の接着力に優れることが分かる(実施例1〜8)。また、当該熱可塑性重合体組成物を用いることにより、アルミニウム、鋼板、ステンレス、亜鉛メッキ鋼板等の種々の材質のインサート部品に対しても、インサート成形時のインサート部品の温度が120℃とさらに低くなっても、得られる接着体の接着力に優れ、かつ外観に優れることが分かる(実施例9〜13)。また、熱可塑性重合体組成物の充填後にインサート温度を一定時間保持しておくことで、接着力をさらに向上させることができた(実施例14)。
一方、本発明の規定から外れた熱可塑性重合体組成物の場合、インサート成形時のインサート部品の温度が140℃であると、得られる接着体の接着力に乏しくなった(比較例1〜7)。また、本発明で規定する特定の熱可塑性重合体組成物を用いた場合でも、インサート部品の温度を180℃まで高めてしまうと、熱可塑性重合体組成物にヒケが生じ、外観不良となった(比較例8)。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、自動車や建築物の窓におけるガラスとアルミニウムサッシや金属開口部との接着部の製造、太陽電池モジュールなどにおけるガラスと金属製枠体との接続部の製造に有用である。また、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携帯電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、電子辞書、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラジオカセット再生機、インバーターなどのハウジングに衝撃緩和材、滑り止め防止機能を持った被覆材、防水材、意匠材などを成形する方法に有用である。
さらには、ノート型パソコン、携帯電話機、ビデオカメラなどの各種情報端末機器や、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに用いられる二次電池のセパレーターの製造などにも有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 埋設ヒーター
2 真空ライン
3 突き出しピン
4 インサート部品
5 熱可塑性重合体組成物
6 金型温調用水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部品を保持した金型へ熱可塑性重合体組成物を充填して成形するインサート成形による接着体の製造方法であって、
芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)1〜100質量部、極性基含有オレフィン系共重合体(C)5〜100質量部および軟化剤(D)0.1〜300質量部とを含有する熱可塑性重合体組成物を用い、かつインサート成形時のインサート部品の温度を30〜150℃にする、接着体の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性重合体組成物において、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、成分(B)の含有量が10〜70質量部、成分(C)の含有量が10〜70質量部、成分(D)の含有量が1〜200質量部である、請求項1に記載の接着体の製造方法。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂(B)が、平均重合度100〜4,000のポリビニルアルコールをアセタール化して得られるものであって、アセタール化度が55〜88モル%である、請求項1または2に記載の接着体の製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂(B)が、ポリビニルブチラールである、請求項1〜3のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項5】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)が、オレフィン系共重合性単量体と極性基含有共重合性単量体とを重合させてなるオレフィン系共重合体である、請求項1〜4のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項6】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)の190℃、荷重2.16kg(21.18N)の条件下におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分である、請求項5に記載の接着体の製造方法。
【請求項7】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)のビカット軟化点が40〜100℃である、請求項1〜6のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項8】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)の極性基含有共重合性単量体に由来する構造単位の割合が1〜50質量%である、請求項5〜7のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項9】
極性基含有オレフィン系共重合体(C)が、オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体である、請求項5〜8のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項10】
前記インサート部品として、金属およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項11】
インサート部品の温度を発熱体によって制御する、請求項1〜10のいずれかに記載の接着体の製造方法。
【請求項12】
発熱体が、電気ヒーター、電磁誘導加熱ヒーターまたは熱媒体である、請求項11に記載の接着体の製造方法。
【請求項13】
インサート成形時にホットランナーを用いる、請求項1〜12に記載の接着体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94997(P2013−94997A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238018(P2011−238018)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】