説明

接着剤の製造方法、家具及び家具製造方法

【課題】自然環境にも人体にも優しい天然素材の米糊を使った接着剤の製造方法及びその接着剤を塗布して製造される、自然環境にも人体にも優しい家具、ならびに当該家具を製造する方法を提供する。
【解決手段】接着剤の製造方法は、天然素材の糯米を加熱攪拌機で攪拌しながら糊化するステップと、前記糊化ステップで作られた米糊に、天然の香辛料を混合させるステップとを具備することを特徴とする。 また、家具は、第1の木材と、第2の木材と、前記第1の木材及び第2の木材を接合するための接着剤とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば接着剤の製造方法、家具及び家具製造方法に係り、特に害虫忌避効果を有する接着剤の製造方法、及び、その接着剤を用いて製造された家具、並びに当該家具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家具の組み立てや住宅の建材等では、化学接着剤や金属の釘が用いられている。
今までの化学接着剤は、その製造自体が自然環境に悪影響を与える上、化学接着剤を家具、建材に利用することにより、室内空気を汚染するので、住居人がアレルギー反応、化学物質過敏症を発症するという問題もある。
また、家具の組立ての際に金属の釘を用いるが、釘により金属アレルギー症状を訴える人が多く見うけられる。
さらに、そのような家具を廃棄する際、釘という金属の廃棄物が発生するので、自然環境に悪影響を及ぼす原因にもなる。
これらの問題の対処方法として、接着剤に天然素材の米糊を使用する方法もあるが、米の糖分により様々な生物、カビが発生するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、自然環境にも人体にも優しい天然素材の米糊を使った接着剤の製造方法及びその接着剤を塗布して製造される、自然環境にも人体にも優しい家具、ならびに当該家具を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる本発明の課題を解決するために、本発明に係る接着剤の製造方法は、天然素材の糯米を加熱攪拌機で攪拌しながら糊化するステップと、前記糊化ステップで作られた米糊に、天然の香辛料を混合させるステップとを具備することを特徴とする。
このような構成によれば、原料が天然素材の糯米であり、糯米が持っている粘度と粘性を利用し、粘度と粘性を損なうことなく、接着力を発揮する糯米が糊化され、この糊化工程で作られた米糊に、腐敗を遅らせ、長期保存させるための天然の香辛料、例えば、唐辛子・わさび、しょうが、また脱臭作用のある茶の葉を混合させるため、米糊自体に害虫忌避効果および脱臭作用を有する接着剤の製造方法が提供される。
また、本発明に係る家具は、第1の木材と、第2の木材と、請求項1記載の方法により製造され、前記第1の木材及び第2の木材を接合するための接着剤とを具備することを特徴とする。
【0005】
かかる構成を備える本発明によれば、米糊自体に害虫忌避効果および脱臭作用を有する接着剤によって第1の木材と第2の木材とが接合されるので、自然環境にも人体にも優しい家具が提供可能となる。
【0006】
さらに、本発明に係る家具製造方法は、所定の寸法に形成した第1の木材の表面を処理するステップと、所定の寸法に形成した第2の木材の表面を処理するステップと、請求項1記載の方法により製造された接着剤を前記表面処理された第1の木材の所定面と第2の木材と所定面との間に塗布するステップと、前記塗布された接着剤が乾くまで養生するステップとを具備することを特徴とする。
【0007】
かかる構成を備える本発明によれば、人手によろうとも、工場の機械生産によろうとも、自然環境にも人体にも優しい家具を製造する方法が、正確に提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の米糊接着剤を家具・インテリアを製造する際に用いることにより、人体に悪影響を及ぼすこともなく、廃棄の際には、自然界にあるもののみを使用しているため、環境に負荷をかけることなく、自然の土に返すことが可能になり、廃棄物による土壌環境を画期的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る接着剤の製造方法、特に米糊を製造するために糊化させる工程方法を説明する。
<第一の工程(米糊の製造方法)>
まず、加熱用攪拌機に原料である国産内地糯米粉あるいはタイ米、新潟産姫糊、一部若干の塩分と、これらと同程度の水を注入し、固めの状況で攪拌しながら徐々に水を添加し原料に対し、1.3倍程度にする。
次に、攪拌をおよそ20分程度行い、塊(マナコ)が無くなるのを確認し、攪拌を行いながら、加熱を開始し温度を80℃に上げ10分間続行する。
その後、加熱温度を60℃〜70℃以下にならないよう保ち、50分間、攪拌加熱し糊化を終了完成させる。
この場合、澱粉系糊料であるため、腐敗は避けられず、防腐剤を使用するが、過去の経緯から使用最低量で最も効果のある数量500PPM即ち0.05%を使用し、防腐剤には、例えば、シントーファイン株式会社製のネオシントール5087を使用している。
<第二の工程(糊と天然香辛料の混合工程)>
通常であれば、米は糖分で虫は発生しやすいため、防虫、殺菌作用のある唐辛子、わさび、しょうが、脱臭作用のある茶の葉のうちの少なくとも一つを上記第一の工程によって製造された米糊に混入する。
<第三の工程(接着剤を家具・インテリアに塗布する工程)>
家具・インテリアに塗布するためには、強度な接着力が必要である。また、部位ではなく、広範囲に塗布する必要がある一方、米糊は塊(マナコ)状であるため、塗布する際は、適宜、水分調整を行う。
塗布に際し、米糊接着剤を入れる容器は、空気の接触を避けるため自社開発し、容器の定期消毒も行い、さらに、米糊を塗るハケも、微粒子にあわせ、目の細かい豚毛のものを使用し、塗布する。
【0010】
以上説明したように、本実施形態によれば、糊自体が伸び易いものとなり、粒子が細かくすることができるため、家具材、板材の木の接合部分(セルロース)にも浸透しやすく、接着力を発揮することができる。
また、通常の米糊は24時間程度で腐敗が始まるが、香辛料を使うことにより、容器の滅菌、15度以下の部屋で保管することにより、3ヶ月は保存することが可能になる。
【0011】
次に、このように製造される接着剤を用いた家具及びその製造方法について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係り、家具を形成すべき下板に本発明に係る米糊接着剤を塗布し、家具を形成すべき上板を接合する前の状態を示す図である。
【0013】
同図に示されるように、本発明に係る家具の一部は、上板100と、下板101と、上板100及び下板101間に塗布される米糊接着剤102とを具備して構成される。ここで、上板100及び下板101は同図に示す形状に必ずしも限定される必要はなく、また、平面形状である必要も必ずしもない。米糊接着剤102を介して接着される面が係合しあう形状を形成していればよい。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係り、家具を形成すべき上板と下板とを米糊接着剤で接着した後の状態に係る家具の一部についての断面図である。
【0015】
図1に示した上板100及び下板101が米糊接着剤102を間に挟んでたとえば図2でいう上下方向(上板100及び下板101を挟む方向)から押圧される。
【0016】
この押圧を加えながら、もしくはこの押圧を加えてそれを取り除いた後に、図2の状態で、一定温度、湿度環境下で、養生し、乾燥させる。
【0017】
このような工程を経て生成される家具は、木材の接合に化学剤を使用することなく、天然の材料のみを用いて製造されているから、アトピー等のアレルギー体質者等の感覚敏感な者にとっても、アレルギーを呼び起こすことのない、自然環境にも人体にも優しい天然素材製の家具が提供されることになる。
【0018】
またこの際、木材の接合に用いる接着剤は、腐敗を遅らせ、長期保存させるための天然の香辛料、例えば、唐辛子・わさび、しょうが、また脱臭作用のある茶の葉を混合させて製造されているため、害虫忌避効果および脱臭作用を発揮でき、長持ちする家具を提供することが可能となる。
また、家具製造方法としては、十分表面処理を行った後に、害虫忌避効果および脱臭作用を有する天然素材接着剤によって木材を接合し、かかる接合を施された組み立て材が養生によって十分乾燥されるので、人手によっても、工場の機械的生産によっても、本発明に係る家具を正確に製造することが可能となる。また、この製造方法によれば、糊自体が伸び易いものとなり、粒子が細かくすることができるため、家具材、板材の木の接合部分(セルロース)にも浸透しやすく、接着力を発揮することができる。
【0019】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、その技術思想の同一及び等価に及ぶ範囲において上述した実施形態への様々な変形、追加、置換、拡大、縮小等を許容するものである。
【0020】
さらに、上述したものは本願に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、ほかの実施形態でも本願に係る技術思想を適用することが可能である。
【0021】
また、本願発明を用いて生産される装置、方法がその2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本願発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明の米糊接着剤を家具・インテリアを製造する際に用いることにより、人体に悪影響を及ぼすこともなく、廃棄の際には、自然界にあるもののみを使用しているため、環境に負荷をかけることなく、自然の土に返すことが可能になり、廃棄物による土壌環境を画期的に改善することができることから、家具製造産業を初めとして、各種産業にとって有用かつ利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係り、家具を形成すべき下板に本発明に係る米糊接着剤を塗布し、家具を形成すべき上板を接合する前の状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係り、家具を形成すべき上板と下板とを米糊接着剤で接着した後の状態に係る家具の一部についての断面図である。
【符号の説明】
【0024】
100上板
101下板
102米糊接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材の糯米を加熱攪拌機で攪拌しながら糊化するステップと、
前記糊化ステップで作られた米糊に、天然の香辛料を混合させるステップと
を具備することを特徴とする接着剤の製造方法。
【請求項2】
前記天然の香辛料として、唐辛子・わさび、しょうが、茶の葉の少なくとも一つを用いることを特徴とする請求項1記載の接着剤の製造方法。
【請求項3】
第1の木材と、第2の木材と、
請求項1記載の方法により製造され、前記第1の木材及び第2の木材を接合するための接着剤と
を具備することを特徴とする家具。
【請求項4】
所定の寸法に形成した第1の木材の表面を処理するステップと、
所定の寸法に形成した第2の木材の表面を処理するステップと、
請求項1記載の方法により製造された接着剤を前記表面処理された第1の木材の所定面と第2の木材と所定面との間に塗布するステップと、
前記塗布された接着剤が乾くまで養生するステップと
を具備することを特徴とする家具製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−214517(P2008−214517A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54946(P2007−54946)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(506324334)株式会社タヌマ (1)
【Fターム(参考)】