説明

接着剤塗布装置

【課題】小さな圧力で加圧タンク内の接着剤を円滑に吐出させると共に、塗布する接着剤の吐出、停止の切換を迅速に行なえるようにする。
【解決手段】接着剤を充填させた変形可能な密閉容器6、密閉容器を収容する加圧タンク1、加圧タンクの外側に配備した吐出部11と密閉容器とを連結するホース10、加圧タンク内への加圧装置4とからなる接着剤塗布装置において、密閉容器6に水性接着剤を充填し、密閉容器6に連結したホース10の先端をスプレーガン11に連結させ、密封容器6のホース取り付け部の外側の壁面に収縮時の変形を規制する鍔状の補強部8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を充填させた変形可能な密閉容器、密閉容器を収容する加圧タンク、加圧タンクの外側に配備した吐出部と密閉容器とを連結するホース、加圧タンク内への加圧装置とからなる接着剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の接着剤塗布装置としては、特許文献1に開示された装置がある。
この公知の塗布装置は、加圧タンク内の空気に圧力を加えることによって密閉容器を収縮変形させ密閉容器に充填しているゴム系の接着剤を吐出し、塗布ノズルからスピーカーなどの小型の部品に精度よく定量の接着剤を塗布せんとしたものである。
【0003】
しかしながら、この装置は、密閉容器に粘度の高いゴム系の接着剤を充填し、加圧タンク内の気体を加圧することによってこの容器を変形収縮させることを予定しているため、加圧タンク内の圧力を極めて高くする必要があり、それに対応してタンク強度を高めなければならないことになる。
出願人は、厚さ0.04mmのポリエチレン製の袋に(a)低粘度の接着剤(100mPa・s)を充填したものと(b)高粘度の接着剤(9000mPa・s)を充填したものとを用意し、これらを特許文献1の図1に示したように、加圧タンク内の底部に収容してホースを連結させた後、タンク内に0.2メガパスカル(MPa)の圧力を付与して接着剤の吐出実験を行なった。
しかしながら、(a)については接着剤の吐出がみられたもののその吐出量は少量で吐出力も弱いものであった(後述の表−1の比較例5参照)。また、(b)については接着剤をタンク外へ吐出させることはできなかった(表−1の比較例12参照)。
【0004】
また、この公知技術では、加圧タンク内に圧力を付与すると、変形可能な容器が均等に自在に変形するとしている。しかしながら、容器はタンクの底部に置かれていて、しかも接着剤の自重が容器に掛かるため、容器の変形が上部側から生じることは明らかで、不均一とならざるを得ない。
上記の(a)についての実験において、タンク内に0.1MPaの圧力を付与すると同時にホースの先端側から0.2MPaの圧力で吸引をしたところ、接着剤は当初円滑に吐出したものの、しばらくして袋のホース取付け部近傍の膜体がホースとの連結部を閉塞し吐出不能となった。
この実験結果は、タンク内に圧力を加えても容器に対して均等に圧力が掛からないことを示している。
【0005】
仮に、高い圧力を付与して接着剤が吐出できたとしても、この塗布方式は、小型の部品など、小面積への塗布には適しているものの、合板などの広い面積に接着剤を塗布するには不向きである。しかも、接着剤の吐出量は圧力やバルブの切換によってある程度調整できるものの、停止と吐出との切換を迅速に行なえない不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−215628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接着剤を充填させた変形可能な密閉容器、密閉容器を収容する加圧タンク、加圧タンクの外側に配備した吐出部と密閉容器とを連結するホース、加圧タンク内への加圧装置とからなる接着剤塗布装置において、小さな圧力で加圧タンク内の接着剤を円滑に吐出させると共に、塗布する接着剤の吐出、停止の切換を迅速に行なえるようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するための第一の技術的手段は、イ)密閉容器に水性接着剤を充填し、(ロ)密閉容器に連結したホースの先端をスプレーガンに連結させ、(ハ)密封容器のホース取り付け部の外側の壁面に収縮時の変形を規制する鍔状の補強部を設けたこと、である。
第二の技術的手段は、ホースと密閉容器及び/又はスプレーガンとを継手を介して着脱容易に取り付けたことであり、第三の技術的手段は、密閉容器壁のホース取付け部の外側に取付け部の中心軸と平行又は斜め方向に線状の補強部を形成したことである。
第四の技術的手段は、密閉容器をボックス型となし、補強部が対面する少なくとも一対の側壁の対角線上を通過するリング状のもので形成したことである。
【0009】
第一の技術的手段において、密閉容器に充填された水性接着剤は、空気との接触が遮断されゲル化させることなく最後まで液状のまま使用することができる。密閉容器に連結したホースの先端にはスプレーガンが連結されているから、加圧タンクの加圧とスプレーガンの吸引とが相乗的に働き、タンク内への加圧を小さくしても密閉容器からスプレーガンへの接着剤の吐出を円滑に行なわせることができる。しかも加圧と吐出とを同調して行なえるため、吐出及び停止の切換を迅速に行なうことができる。
密封容器のホース取り付け部の外側の壁面には鍔状の補強部が設けられていて、容器が収縮してもその部分の変形が規制されるから、容器は他の部分から変形を開始する。したがって、ホースの取付け部が変形した容器壁によって閉塞されず、接着剤は円滑に吐出することになる。
【0010】
第二の技術的手段においては、密閉容器とスプレーガンのいずれか又はその双方に対し、継手を利用してホースを着脱容易に取り付けているから、接着剤の補充や交換、スプレーガンを取り替え或いは洗浄する際の作業を簡単に行なうことができる。
第三の技術的手段においては、密閉容器壁のホース取付け部の外側に取付け部の中心軸に対して平行又は斜め方向に線状の補強部が形成されているから、接着剤の吐出に伴なって生じる密閉容器の変形が補強部以外の部分から始まることになる。したがって、容器壁がホースの取付け部側へ撓んでホースの開口部を閉塞するのが防止され、容器内の接着剤のほぼ全量を吐出させることができる。
この場合、密閉容器をボックス型となし、対面する少なくとも一対の側壁の対角線上を通過するリング状の補強部を形成しておくと、上記の作用を奏する他、密閉容器のタンク内での据わりがよい。この容器をバッグインボックスタイプにしておくと、容器を外箱に入れたまま取り扱うことができ、加圧タンク内への出し入れが容易となる利点がある。
【0011】
密閉容器は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの柔軟な樹脂で形成したものを好適に使用することができる。また、容器の肉厚は、材料にもよるが0.04〜0.4mmのものを使用することによって低圧でも容易に収縮変形させることができる。
密閉容器は袋状であってもボックス型であってもよい。後者の場合に、図3に示したように容器壁の一部を内側へ凹ませて壁同志を重合させておくことによって、容器内の空気の滞留をなくせるから、接着剤を充填する際に接着剤の空気との接触をほとんど生じさせない利点がある。
鍔状の補強部や線状の補強部は、容器の肉厚を変化させることによって容易に形成することができる。また、線状の補強部は、容器の形状、鍔状の補強部の位置などを勘案して配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
小さな圧力で加圧タンク内の接着剤を円滑に吐出させられる結果、加圧タンクを大掛かりなものにする必要はなく、従来使用されていたタンクをそのまま転用することができる利点がある。
また、塗布する接着剤の吐出、停止の切換を迅速に行なえるため、スプレーガンを用いた接着剤の塗布作業を円滑に行なうことができ、作業効率を高められる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る接着剤塗布装置の概要説明図
【図2】密閉容器の実施例における正面図
【図3】密閉容器を凹ませた状態図
【符号の説明】
【0014】
1加圧タンク、 2加圧タンクの蓋体、 3、13コンプレッサーの空気供給管、 4コンプレッサー、 5圧力計、 6、16接着剤充填用密閉容器、 7、12継手、 8鍔状補強部、 10ホース、 11スプレーガン、17容器の線状補強
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る装置の概要説明図である。
金属製の加圧タンク1はその上部開口部に蓋体2を配置し、図示しない公知の固定機構によってタンク本体1に固定するようにしている。
タンク1内には、コンプレッサー4から供給管3によって空気が供給され、タンク内の圧力は圧力計5によって確認できるようにしている。
【0016】
この実施例ではボックス型の密閉容器6に水性接着剤を充填し、タンク1の底部に置いてあり、その上部には継手7を固定すると共にその周囲に設けた鍔状の補強板8を容器6に固着させて一体としている。
タンク1の外に配備したスプレーガン11は、その先端側に継手12が固定してあって、継手7、12の間をホース10で連結している。また、スプレーガン11の後端側は、前記のコンプレッサー4に連結している。本実施例では、タンク1とスプレーガン11とは同じコンプレッサー4の供給管3、13から圧縮空気の供給を受けるようにしているが、互いに異なるコンプレッサーから空気の供給を受けるようにしてもよいのは勿論である。
【0017】
表−1は、図1に示した装置を使用し、密閉容器内に(a)低粘度の接着剤(100mPa・s)を充填したものと(b)高粘度の接着剤(9000mPa・s)を充填したものとを用意し、それぞれタンク1内の圧力とスプレーガンに供給する圧縮空気の圧力を変化させて実験をした結果を示したものである。
接着剤のスプレーガンまでの到達欄において、○はスムーズに到達、△は到達するが時間が掛かる、□はなんとか到達するがスプレー作業は不能、×は到達できないことを示している。
また、接着剤の容器からの吐出欄において、○はスムーズにほぼ全量吐出、△はほぼ全量吐出するが吐出が度々中断、×は全量吐出不能を示している。
この実験結果から、加圧タンク内の圧力を小さくしても、スプレーガンと併用することによって容器内の接着剤を円滑に吐出させることが理解できる。
【0018】
(表−1)

【0019】
図2は、請求項4に係る発明において使用する密閉容器16の正面図である。容器タンクに対する線状の補強部は、正面及び背面における対角線を通過し、その上部は下面の左稜線で、下部は底面側の右稜線で連続したものとなっている。
この密閉容器は、接着剤が吐出されると、補強線のない部分、すなわち図2における左右の側面から変形を開始し、次いで正面、背面及び上面及び底面へと変形が拡大し、各稜線から補強部分へと変形し、接着剤は最終的にほぼ全量吐出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を充填させた変形可能な密閉容器、密閉容器を収容する加圧タンク、加圧タンクの外側に配備した吐出部と密閉容器とを連結するホース、加圧タンク内への加圧装置とからなる接着剤塗布装置において、密閉容器に水性接着剤を充填し、密閉容器に連結したホースの先端をスプレーガンに連結させ、密封容器のホース取り付け部の外側の壁面に収縮時の変形を規制する鍔状の補強部を設けた接着剤塗布装置。
【請求項2】
ホースと密閉容器及び/又はスプレーガンとを継手を介して着脱容易に取り付けた請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
密閉容器壁のホース取付け部の外側に取付け部の中心軸と平行又は斜め方向に線状の補強部を形成した請求項1又は2に記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
密閉容器をボックス型となし補強部が対面する少なくとも一対の側壁の対角線上を通過するリング状のものとした請求項3に記載の接着剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247073(P2010−247073A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99590(P2009−99590)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】