説明

接着剤組成物および熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板

熱可塑性エラストマとガラス物品との接着に用いられる、塩素化ポリオレフィン、エポキシ基含有化合物およびシランカップリング剤を含む本発明の接着剤組成物は、初期接着性に優れるとともに耐久性にも優れ、熱可塑性エラストマ製モールディングと窓ガラスの接着に充分な接着強度を発現する。また、該接着剤組成物を用いてなる熱可塑性エラストマ製モールディングガラス板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマとガラス物品との接着性に優れた接着剤組成物、およびその接着剤組成物を用いた熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板に関する。
【背景技術】
自動車の窓用ガラス板には、ガラス板と車体との間に介在し、ガラス板と車体との間をシーリングし、必要に応じて装飾機能等の機能をも有する、樹脂製またはゴム製の部材が一体化されている。こうした機能を有する部材は、モールディング、枠材、ガスケット、モール等の種々の名称で呼ばれているが、本明細書では統一してモールディングという。
従来、モールディング用材料としては、耐擦傷性および成形性に優れることから、ポリ塩化ビニルが多用されてきた。しかし、近年、環境保護の観点から、熱可塑性ポリオレフィン等に代表される熱可塑性エラストマを用いることが提案されている。
しかし、熱可塑性エラストマは、表面の接着性や極性に乏しいことから、ガラスとの接着が容易でない。そのため、従来から使用されている接着剤は、ガラスと熱可塑性エラストマとの接着に適さないことがあった。接着剤の能力を図る尺度として、初期接着強度、また、耐温水性、耐熱性、耐薬品性等の耐久接着強度がある。特に、自動車用部品に用いられる接着剤については、使用環境の厳しさに対応する多くの耐久試験がある。しかし、ガラスと熱可塑性エラストマとを接着する場合、従来の接着剤では耐久接着強度を測定する以前に初期段階で充分な接着強度が得られなかった。
【発明の開示】
特許第3,142,985号公報(以下、「985号公報」という。)には、オルガノシラン助剤および分子量1,000〜300,000の塩素化ポリオレフィンを基礎とする組成物を用いてガラスと熱可塑性樹脂とを接着することが記載され、特に、塩素化ポリオレフィンとして無水マレイン酸でグラフト化したアイソタクチック塩素化ポリプロピレン、オルガノシラン助剤としてエポキシシランを使用することで、ガラスと熱可塑性樹脂との接着性を良好にできる、と記載されている。
しかし、985号公報等に記載の技術内容に準じてガラス物品と熱可塑性エラストマとの接着を試みると、熱間で自然剥離を生じるので初期熱間強度が乏しく、ガラス物品と熱可塑性エラストマとの接着剤として不充分なものであった。
そこで、本発明の目的は、初期接着強度に優れるとともに、耐久性にも優れ、自動車の熱可塑性エラストマ製モールディングと窓ガラスの接着に用いて充分な接着強度を発現する接着剤組成物、およびその接着剤組成物を用いた熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を提供することにある。
本発明は、熱可塑性エラストマとガラス物品との接着に用いられる接着剤組成物であって、塩素化ポリオレフィン、エポキシ基含有化合物およびシランカップリング剤を含む接着剤組成物(以下、「本発明の組成物」という。)を提供する。
また、本発明は、ガラス板と、該ガラス板の周縁部に、本発明の組成物から形成された接着剤層を介して一体化された熱可塑性エラストマ製モールディングとを有する熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板の一例を示す概略断面図である。
図2は、射出成形による熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板の製造例の説明図である。
図3は、押出成形による熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板の製造例の説明図である。
図4は、評価試験(せん断応力試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する上面図である。
図5は、評価試験(せん断応力試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する概略断面図である。
図6は、評価試験(剥離強度試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の組成物の必須成分である塩素化ポリオレフィンは、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンコポリマー、プロピレン−ブテンコポリマー、プロピレン−エチレン−ブテンコポリマー等のポリオレフィンを塩素化したものである。ポリオレフィンは、50モル%以上のプロピレンに基づく単位を含むものが好ましく、特に結晶性を有するものが好ましい。プロピレンに基づく単位を50モル%以上含むポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンを用いることによって、本発明の組成物は凝集力に優れ、また熱可塑性エラストマとの接着強度にも優れる。
塩素化は、ガラスライニングされた圧力反応缶の中で、ポリオレフィンを、(1)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤およびイオン交換水を含む水性混合溶媒中で加温して溶解した後、または(2)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤中で加温し溶解し、ラジカル発生剤を加えた後、塩素ガスを所定塩素含有量になるように吹き込み、反応終了後、脱溶剤する方法で行うことができる。
本発明の塩素化ポリオレフィンは、以下の物性を有するのが好ましい。
塩素化ポリオレフィン中の塩素含有量は15〜35質量%であることが好ましい。塩素含有量が15質量%以上であれば、有機溶媒に対する充分な溶解性が得られ、溶液安定化できる。塩素含有量が35質量%以下であれば、塩素化ポリオレフィンに充分な凝集力が得られ、充分な接着強度が得られる。
本発明において、塩素化ポリオレフィンとして、異なる塩素含有量の塩素化ポリオレフィン成分を2つ以上含むものを用いると、高温化での凝集効果が得られることから、および、さらにせん断接着強さに優れる接着特性を発現できることから、好ましい。例えば、塩素含有量が25質量%以上35質量%以下の範囲の塩素化ポリオレフィン成分(以下、「高塩素含有量成分」という。)1種以上と、塩素含有量が15質量%以上25質量%未満の範囲の塩素化ポリオレフィン成分(以下、「低塩素含有量成分」という。)1種以上とからなる塩素化ポリオレフィンを用いると、低塩素含有量成分に特徴的な高い凝集力と高塩素含有量成分に特徴的なエポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との相溶性に優れる点で、より好ましい。また、該凝集力と該相溶性とをより高い水準で両立できる点で、塩素含有量が18〜22質量%で、重量平均分子量が180,000〜210,000である塩素化ポリオレフィン(低塩素含有量成分)1種以上と、塩素含有量が25〜29質量%で、重量平均分子量が100,000〜170,000である塩素化ポリオレフィン(高塩素含有量成分)1種以上とを用いることがより好ましい。これらの場合において、高塩素含有量成分に対する低塩素含有量成分の割合(低塩素含有量成分/高塩素含有量成分)が、質量比で5/1〜25/1の割合である塩素化ポリオレフィンが、特に高温下での凝集力に優れる特性と、特に有機溶媒への溶解性およびエポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との相溶性に優れる特性とをあわせ持つ接着剤にできるため、好ましい。
塩素化ポリオレフィン中の塩素含有量の測定方法としては電位差滴定法等が挙げられる。
塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、40,000〜250,000が好ましい。重量平均分子量が40,000以上であれば、充分な凝集力が得られ充分な接着強度が得られる。重量平均分子量が250,000以下であれば、エポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との良好な相溶性が得られ、有機溶媒への溶解性に優れ、さらに接着剤を塗布するにあたっての良好な作業性を得るための室温での流動性にも優れる。
重量平均分子量の測定方法は、特に限定されず、例えば、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation chromatographyl(GPC))による測定方法(標準ポリスチレン換算)等が挙げられる。
塩素化ポリオレフィンの結晶化度は、10〜50%が好ましい。結晶化度が10%以上であれば充分な凝集力が得られ充分な接着強度が得られる。結晶化度が50%以下であれば、有機溶媒の溶解性に優れ、塗布時の良好な作業性が得られる室温での流動性にも優れ、低温での保管も可能となる。さらに、結晶化度が50%以下であれば、エポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との均一な混合が容易になる。
結晶化度の測定方法としてはX線回析による透過法等が挙げられる。
本発明におけるエポキシ基含有化合物は、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多官能性エポキシド、あるいは、パラ・ターシャルブチルフェニルグリシジルエーテル等の1官能性エポキシド等が挙げられる。
また、エポキシ当量が100〜800g/eqであるものが好ましく、特に、活性水素化合物との反応性および単体での流動性が良好であることから、エポキシ当量が130〜250g/eqであるものがより好ましい。
エポキシ基含有化合物の具体例として、商品名:デナコールEX−146(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:225g/eq)、商品名:エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量:184〜194g/eq)、商品名:エポライト100MF(共栄社化学(株)製、エポキシ当量:135〜145g/eq)等の市販品が挙げられる。
本発明の組成物は、エポキシ基含有化合物を必須成分とすることにより、耐熱性に優れる。この理由として、本発明の組成物が加熱された場合に、組成物中の塩素化ポリオレフィンから脱離する塩化水素をエポキシ基含有化合物が捕捉し、塩化水素の増加を抑制できるためと考えられる。エポキシ基含有化合物を含有させることにより、特にオレフィン系の熱可塑性エラストマ接着における耐熱性を向上させることができる。
本発明の組成物における塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物の含有割合は、塩素化ポリオレフィン100質量部に対してエポキシ基含有化合物0.1〜28質量部の割合であることが好ましい。塩素化ポリオレフィン100質量部に対して、エポキシ基含有化合物を0.1質量部以上にすると接着剤組成物は加熱耐久性に優れ、過剰のエポキシ基含有化合物は接着性を低下させるため、28質量部以下にすることで熱可塑性エラストマとの接着を安定化できる。熱可塑性エラストマとの接着をより安定化できる点で、上記含有割合は、0.1〜25質量部の割合であることがより好ましい。
さらに、塩素化ポリオレフィンとして、重量平均分子量が40,000〜170,000の上記した高塩素含有量成分を用いるときには、上記塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物の含有割合を、塩素化ポリオレフィン100質量部に対してエポキシ基含有化合物0.1〜30質量部の割合にすることが好ましい。該含有割合がこの範囲にあると、接着強度が低下することがない。
本発明の組成物の必須成分であるシランカップリング剤としては、グリシジル基、ビニル基、チオール基、アミノ基等の官能基を末端に有するものが挙げられる。特に、塩素化ポリオレフィンと充分相溶し、かつ配合するエポキシ基含有化合物の硬化触媒にもなることで、初期接着強度、耐温水試験後、耐熱試験後の接着強度を良好にできる、アミノ基を末端に有するアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤は、塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物との合計100質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で含有することが好ましい。0.5質量部以上の割合であるとガラスとの接着性に優れる。シランカップリング剤が多すぎるとシランカップリング剤同士が結合し、熱可塑性エラストマとの接着性が低下する。
本発明の組成物には、前記塩素化ポリオレフィン、エポキシ基含有化合物およびシランカップリング剤以外に、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、カーボンブラック等、その他接着剤に必要に応じて添加される各種の添加剤等が挙げられる。
本発明の組成物には、上記した添加剤の中でも、紫外線吸収剤と光安定剤とを組合せて含有させるのが、耐紫外線特性、耐温水特性および耐熱水特性等に優れるので好ましい。
紫外線吸収剤としては、通常使用されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、フェニルヒドロキシトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、具体的には、例えば、チバスペシャリティケミカル(株)製のチヌビン384、400等が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いられるが、紫外線の中でも長波長成分を吸収する紫外線吸収剤と短長波長成分を吸収する紫外線吸収剤とを併用するのが、波長の長短に係わらず紫外線を効果的に吸収できる点で、好ましい。
光安定剤としては、通常使用されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられ、具体的には、例えば、チバスペシャリティケミカル(株)製のチヌビン292等が挙げられる。光安定剤は1種単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
上記紫外線吸収剤と光安定剤は、上記改善効果に優れる点で、塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物との合計100質量部に対して、合計0.5〜10質量部の割合で添加することが好ましい。上記改善効果により優れる点で、4〜9質量部の割合で添加することが特に好ましい。
本発明の組成物は、塩素化ポリオレフィン、エポキシ基含有化合物およびシランカップリング剤、ならびにその他必要に応じて添加される成分とを有機溶媒に溶解して調製されるのが好ましい。用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン等が挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
このとき、塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物との合計が、濃度5〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることがより好ましい。濃度が5質量%以上であれば2度塗りが不要となるため塗布工程を簡素化できる。濃度が30質量%以下であれば、有機溶媒に溶解して接着剤溶液を調製することができる。
本発明の組成物は、熱可塑性エラストマとガラスとを接着するための接着剤として好適であり、本発明はこの接着剤組成物を用いた熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を提供する。以下、図1〜3に基づいて、本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板について詳細に説明する。
図1は、本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板の一例を示す要部概略断面図である。図1において、1は熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板(以下、単に「モールディング付きガラス板」という場合がある。)、2はガラス板、2Aは裏面、2Bは表面、3は熱可塑性エラストマ製モールディングおよび4は接着剤層である。モールディング付きガラス板1は、表面2Bと裏面2Aを持つガラス板2と熱可塑性エラストマ製モールディング3とが、接着剤層4を介して一体化されたものである。
熱可塑性エラストマ製モールディング3は、射出成形や押出成形等の樹脂成形法により成形されることが好ましい。射出成形による方法としては、例えば、熱可塑性エラストマ製モールディング3の形状に概略一致した彫り込みを有する成形型にガラス板2を配置し型締めして、彫り込みとガラス板2の周縁部とでキャビティ空間を形成し、成形型のキャビティ空間内に樹脂材料を射出する射出一体成形により、熱可塑性エラストマ製モールディング3をガラス板2の周縁部に一体的に成形する方法を採用することができる。この場合、ガラス板2を成形型に配置する前に、熱可塑性エラストマ製モールディング3が一体化されるガラス板2の周縁部に予め本発明の組成物を塗布し、接着剤層4を形成しておく。
ここで、熱可塑性エラストマ製モールディングを形成する熱可塑性エラストマは、特に限定されず、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、ポリアミド系熱可塑性エラストマ、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマ、塩化ビニル系熱可塑性エラストマ等が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマが本発明の組成物との接着性に優れる点で好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマとしては、例えば、サントプレーン、ミラストマー、住友TPE、ケーモラン、オレフレックス、ミラプレーン、PER、出光TPOおよびザーリング等の市販品が挙げられる。
なお、上記熱可塑性エラストマには、一般に用いられる各種添加剤等を配合してもよい。
また、熱可塑性エラストマ製モールディング3を、一旦、射出成形にて、ガラス板の全周に接着できるようにループ状にまたはガラス板の全周でなくその一部、例えば、3辺に接着できるようにコの字状に成形し、成形された熱可塑性エラストマ製モールディング3をガラス板2に押し付けて、熱可塑性エラストマ製モールディング3をガラス板2に一体化させる方法も採用できる。この場合、熱可塑性エラストマ製モールディング3をガラス板2の周縁部に押し付ける前に、ガラス板2の周縁部に本発明の組成物を塗布する、あるいは熱可塑性エラストマ製モールディング3のガラス板2に対向する面に本発明の組成物を塗布してもよい。
図2は、熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を射出成形を利用して製造する他の方法を示す。図2において、2はガラス板、2Aは裏面、2Bは表面、5は保持機、6は吸盤、7は第1型、8は熱可塑性エラストマ製モールディング、9aおよび9bはシリンダ、10は昇降部材、11a、11b、11c、11dおよび11eはストッパ、12a、12b、12c、12dおよび12eは突出ピン、ならびに、13はキャビティ壁である。
図2に示す方法においては、ガラス板2の裏面2Aの周縁部に沿って、予め本発明の組成物を塗布して接着剤層を形成するとともに、ガラス板2を予熱した後、保持機5の吸盤6にガラス板2の表面2Bを吸着させてガラス板2を保持しておく。一方、下側の第1型7と、上側の第2型(図示せず)とで形成されるキャビティ内に溶融熱可塑性エラストマを射出して熱可塑性エラストマ製モールディング8を成形した後、型開きして上側の第2型を脱型し、熱可塑性エラストマ製モールディング8の接着面を外部露出させるとともに、保持機5を作動させてガラス板2の裏面2Aを熱可塑性エラストマ製モールディング8に対して対面配置させる。
次いで、各シリンダ9a、9bを同期して駆動させ、昇降部材10を上昇させる。昇降部材10は、各ストッパ11a、11b、11c、11dおよび11eを介してそれぞれ突出ピン12a、12b、12c、12dおよび12eを上昇させ、第1型7のキャビティ壁13から突出ピン12a、12b、12c、12dおよび12eの先端を突出させる。これにより、熱可塑性エラストマ製モールディング8は、ガラス板2の裏面2Aに向かって突き出され、ガラス板2の端縁全域に対して同時に押し付けられて仮接着される。
次に、保持機5により、仮接着されたガラス板2および熱可塑性エラストマ製モールディング8を、本接着用テーブルに移動させ、熱可塑性エラストマ製モールディング8を本接着用テーブルの圧接面上に載置し、保持機5により一定圧力で一定時間押圧し、モールディング付きガラス板を得ることができる。こうした方法としては、例えば特開2000−79626号公報に開示された方法を例示できる。
モールディングを押出成形にて成形する方法としては、モールディングの断面形状に概略一致した開口を有する押出成形ダイから樹脂材料を押出し、成形する方法が挙げられる。このとき、(a)押出成形ダイから押出された直後に熱可塑性エラストマ製モールディングをガラス板の周縁部に押し付けて一体化する、あるいは(b)押出成形ダイから直接ガラス板の周縁部に熱可塑性エラストマ製モールディングを押出して一体化してもよい。いずれの方法においても、ガラス板の周縁部に、予め本発明の組成物を塗布し接着剤層を形成しておく方法を採用することができる。
(a)押出成形ダイから押出された直後に熱可塑性エラストマ製モールディングをガラス板の周縁部に押し付けて一体化する方法の具体例として、図3に概略を示す方法が挙げられる。図3において、2はガラス板、4は接着剤層、14は吸着保持板、15はロボットアーム、16は押出機、17は押出成形ダイ、18は熱可塑性エラストマ製モールディング、19は冷却水槽、20は冷却スプレ、21は冷却水、22は保持ローラ、23は加熱装置および24は圧着部材である。図3に示す方法において、ガラス板2の周縁部には、予め本発明の組成物が塗布され乾燥されて接着剤層4が形成される。接着剤層4が形成されたガラス板2は、ロボット(吸着保持板14およびロボットアーム15を備える)で保持され、所定の移動を可能とされている。押出機16の先端には、熱可塑性エラストマ製モールディング18の断面形状に概略一致した開口を有する押出成形ダイ17が備えられている。
押出成形ダイ17から押出された熱可塑性エラストマ製モールディング18は、冷却水(19は冷却水槽、20は冷却スプレ、21は冷却水を示す)により冷却される。冷却された熱可塑性エラストマ製モールディング18は、保持ローラ22を経て、加熱装置23によりガラス板2に対向する面が加熱され、圧着部材24に挿入される。圧着部材24は、熱可塑性エラストマ製モールディング18とガラス板2の周縁部とが挿入される空洞部を有するとともに、ガラス板2の周縁部と熱可塑性エラストマ製モールディング18とがこの空洞部を通過することで熱可塑性エラストマ製モールディング18をガラス板2に押し付け圧着できるようになっている。ガラス板2は、ガラス板2の周縁部に圧着部材24が沿うように、ロボットの駆動により圧着部材24に対し相対移動される。こうして、熱可塑性エラストマ製モールディング18がガラス板2の周縁部に一体化された熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を製造できる。こうした製造方法は特開2002−240122号公報(特願2001−45029号明細書)でさらに詳説されている。
本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板におけるガラス板は、無機系の単板ガラス板、複数枚のガラス板が中間膜を介して積層された合わせガラス、強化処理が施された強化ガラス、熱線遮蔽性コーティング等の各種の表面処理が施されたガラス板等、種々のガラス板が使用可能である。また、有機ガラスと呼ばれる透明樹脂板を使用することもできる。
熱可塑性エラストマ製モールディングの形状は、要求性能やデザインの仕様等にあわせて、適宜決定できる。例えば、ループ状やコの字状等の形状が挙げられ、ガラス板の周縁全周にわたって同一の断面形状を有するものでも、部位に応じて異なる断面形状を有するものでもよい。また、ガラス板の周縁全周にわたって一体化されていても、ガラス板のある特定の辺または部分に一体化されていてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板には、図示を省略したが、例えば、図1において、ガラス板2の周縁部の接着剤層4が形成される領域には、暗色セラミックペーストの焼成体が設けられることがある。暗色セラミックペーストの焼成体により、接着剤層4が車外側から隠蔽され、紫外線の車内側への透過を防止できる。熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板は、通常ウレタン系接着剤にて車体(図示せず)に固定されるので、暗色セラミックペーストの焼成体は、ウレタン系接着剤の紫外線による劣化を防止できる。また、紫外線吸収剤と光安定剤とを組合わせて含有させ、紫外線耐久性を充分に付加した本発明の組成物であれば、接着剤層4に顔料や染料等を添加し、車体との接着のための接着剤に対する紫外線照射を防止する隠蔽層として機能させることもできる。
これらのような本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板を、自動車の窓として使用することは有益である。その理由は、自動車は、特に夏場の駐車時において高温となるので、本発明の組成物から得られる耐熱性や耐久性に優れた接着剤の効果が発揮されることが有益だからである。
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
<塩素化ポリプロピレンの製造>
(製造例1)
アイソタクチックポリプロピレン(MI:メルトインデックス15)10kg、クロロホルム167kgを、耐圧性グラスライニングされた反応缶に入れ、加熱、溶解させた後、ジクミルパーオキサイド0.1kgを添加し、塩素ガスを7.4kg吹き込み、反応させた。次に、クロロホルム除去後、固形化した塩素化アイソタクチックポリプロピレン(以下「CPP−1」という)が得られた。このCPP−1の塩素含有量は25.9質量%、GPCによる重量平均分子量は140,000〜150,000、結晶化度は12%であった。
(製造例2)
吹き込む塩素ガスの量を7.0kgとした以外は製造例1と同様にして、塩素化アイソタクチックポリプロピレン(以下「CPP−2」という)を製造した。このCPP−2の塩素含有量は22質量%、GPCによる重量平均分子量は190,000〜200,000、結晶化度は42%であった。
(製造例3)
吹き込む塩素ガスの量を6.2kgとした以外は製造例1と同様にして、塩素化アイソタクチックポリプロピレン(以下「CPP−3」という)を製造した。このCPP−3の塩素含有量は20質量%、GPCによる重量平均分子量は190,000〜200,000、結晶化度は44%であった。
(製造例4)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン10kg、クロロホルム94kgを耐圧性グラスライニングされた反応缶に入れ、加熱、溶解させた後、塩素ガスを5.5kg吹き込み、クロロホルム除去後、固化して、無水マレイン酸変性塩素化アイソタクチックポリプロピレン(以下、「MCPP」という)を製造した。このMCPPの塩素含有量は20質量%、GPCによる重量平均分子量は80,000〜90,000、結晶化度17%であった。
(塩素含有量測定)
得られた塩素化ポリオレフィンの塩素含有量の測定は電位差滴定法により行った。
(分子量測定)
得られた各塩素化アイソタクチックポリプロピレンの重量平均分子量をゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPC装置はShodex GPC SYSTEM−21H(昭和電工(株)製)、溶媒はテトラヒドロフランを用いて、測定温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
(結晶化度測定)
得られた各塩素化アイソタクチックポリプロピレンを乾燥後、厚さ1mmのフィルムに成形し、X線回析装置(RINT2550、理学電機(株)製)を用いて、透過法により測定した。
<接着剤の製造>
(例1〜13)
塩素化ポリオレフィン(CPO)としてCPP−1、CPP−2、CPP−1およびCPP−3、またはMCPP、エポキシ基含有化合物(EPO)としてトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄化学社製、エポライト100MF、エポキシ当量:135〜145g/eq)またはビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:184〜194g/eq)とを、表1に示す組成および質量比で、キシレン400質量部に溶解し、表2に示す固形分濃度のキシレン溶液を作製した。この溶液100質量部に、シランカップリング剤(SC)としてγ−アミノプロピルトリメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメトキシシランとの混合シランカップリング剤(両者の質量比は1:2)またはエポキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を表1に示す質量比((CPO+EPO)/SC)で添加して充分攪拌し、接着剤を作製した。
<モールディング付きガラス板の製造1>
例1〜13で得られた接着剤を、それぞれ樹脂換算で15g/m(接着剤層の乾燥後の厚さ約10〜20μm)になるように、ガラス板(縦25×横150×厚さ5:単位mm)の横方向端部から50mmまでおよび縦方向の中心部約20mmに塗布し、接着剤を送風乾燥して、図4および図5に示す接着剤層34が形成されたガラス板32を用意した。
図3に示す方法により、図4および図5に示す熱可塑性エラストマ製モールディング38の断面形状に概略一致した開口を有する押出成形ダイから、オレフィン系熱可塑性エラストマ材料(サントプレーン121−58W175、アドバンスト・エラストマー・システムズ社製)を押出し、押出し直後の所定断面を有する熱可塑性エラストマ製モールディング38に冷水を吹き付けた後、熱可塑性エラストマ製モールディング38のガラス板32に対向する面に加熱空気を吹き付けた。加熱直後の熱可塑性エラストマ製モールディング38が圧着部材の空洞部に挿入されるとともに、ロボットに保持されたガラス板32をモールディング38の接着部に圧着部材が沿うように相対移動させる(ガラス板が横方向に移動させられる)ことで、熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板が得られた。
なお、圧着時のガラス温度を表2に示す温度とした。ガラス板32と熱可塑性エラストマ製モールディング38の接着部の幅(縦方向)は5mm、熱可塑性エラストマ製モールディング38の厚さは3mmであった。ガラス板面における接着部分を、横方向に端部から50mm、縦方向に5mmとし、横方向に端部から50mm突出させて熱可塑性エラストマ製モールディング38を切断した。
このようにして得られた熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板は、具体的には、図4および図5に示すものである。図4は、評価試験(せん断応力試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する上面図であり、図5は、評価試験(せん断応力試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する概略断面図である。図5において、接着剤層34はその厚さが厚めに記載されている。図4および図5において、32はガラス板であり、34は接着剤層、38は熱可塑性エラストマ製モールディングである。
<モールディング付きガラス板の製造2>
上記モールディング付きガラス板の製造1と同様にして、ガラス板面における接着部分を、横方向に端部から70mm、縦方向に5mmとし、横方向の全域に熱可塑性エラストマ製モールディング38を接着させて、熱可塑性エラストモールディング付きガラス板を得た。
このようにして得られた熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板は、具体的には、図6に示すものである。図6は、評価試験(剥離強度試験)に用いた試験片の形状および寸法を説明する概略断面図である。図6において、接着剤層34はその厚さが厚めに記載されている。図6において、32はガラス板であり、34は接着剤層、38は熱可塑性エラストマ製モールディングである。
<評価>
得られた各熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板(試験片)を、下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
(初期接着強度(初期剥離強度、80℃初期熱間(剥離)強度および90℃初期熱間せん断応力)の測定)
1)初期剥離強度および80℃初期熱間(剥離)強度
モールディング付きガラス板の製造2で得られた各試験片を、室温下に24時間放置した後、室温下および80℃の雰囲気下で、それぞれJIS K6854に規定された浮動ローラー法剥離試験に準拠してクロスヘッドの移動速度を300mm/分として90度剥離試験を行い、それぞれ初期剥離強度(N/cm)および80℃初期熱間(剥離)強度(N/cm)を測定した。
2)90℃初期熱間せん断応力
モールディング付きガラス板の製造1で得られた各試験片を、室温下に24時間放置した後、90℃の雰囲気下で、JIS K6850に規定された引張せん断接着強さ試験に準拠して、クロスヘッドの移動速度10mm/分としてせん断剥離試験を行い、90℃初期熱間せん断応力(KPa)を測定した。
なお、各試験において、「準拠して」の意味は試験片の形状や温度条件が異なるからであり、本例における初期剥離強度および80℃初期熱間(剥離)強度用の試験片では接着部分が70×5(mm)となり(図6参照)、本例における90℃初期熱間せん断応力用の試験片では接着部分が50×5(mm)となる(図4および図5参照)。初期剥離強度および80℃初期熱間(剥離)強度試験では、ガラス板に接着されていない部分を90度屈曲させ(図6において矢印Aの方向、JIS K6854に対応)、また、90℃初期熱間せん断応力試験では、せん断方向に引っぱり測定した(図5において矢印Aの方向、JIS K6850に対応)。
なお、表2中の「90℃初期熱間せん断応力」試験の欄の「−」は未測定であることを示す。
(耐久性(耐熱試験))
モールディング付きガラス板の製造2で得られた各試験片を室温下に24時間放置した後、90℃で240時間加熱した後、室温下にJIS K6854に準拠して90度剥離試験を行い、熱間強度(N/cm)を測定した(耐熱試験)。


表1および表2中、例1〜5、7および9〜13は本発明の実施例であり、例6および8は本発明の比較例である。特に、例6および8はエポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物を用いた例であり、例6は上記985号公報に開示された接着剤を用いた例に相当する。
表2に示す評価結果から、エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物を用いた例である例6および8は80℃初期熱間強度が低く、特に例6では80℃初期熱間強度の試験において熱可塑性エラストマの自然剥離が生じ、耐熱性に劣ることがわかる。
また、塩素含有量25.9%の高塩素含有量成分(CPP−1)と塩素含有量20.0%の低塩素含有量成分(CPP−3)とからなる塩素化ポリオレフィンを用いた例9〜13は、CPP−1のみを塩素化ポリオレフィンとして用いた例3に比べて90℃初期熱間せん断応力が高く、せん断接着性に優れることが分かる。
【実施例2】
上記<<実施例1>>の例9に示した組成を有する本発明の組成物に、さらに、紫外線吸収剤としてチヌビン384およびチヌビン400、ならびに、光安定剤としてチヌビン292(いずれもチバスペシャリティケミカル(株)製)を、塩素化ポリオレフィン(CPO)とエポキシ基含有化合物(EPO)との合計100質量部に対して、それぞれ順に、3.5質量部、3.5質量部、1.5質量部加えて、接着剤を作製した。
上記接着剤と、暗色セラミックペーストの焼成体を形成させていないガラス板とを用いて、上記<モールディング付きガラス板の製造2>と同様にして各熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板(試験片)を得た。得られた試験片を、下記の方法により評価した。結果を表3に示す。
<評価>
(初期剥離強度)
得られた試験片を、室温下に24時間放置した後、室温下で、上記<<実施例1>>の90度剥離試験と同様にして、初期剥離強度(N/cm)を測定した。
(耐紫外線特性)
得られた試験片を用いて、以下の1)〜5)の工程を1サイクルとし、合計9サイクル行った後、室温下に試験片を24時間放置し、室温下で、上記<<実施例1>>の90度剥離試験と同様にして、紫外線照射後の剥離強度(耐紫外線特性、N/cm)を測定した。
1)50℃、湿度95RH%の条件下、80mW/cmの照射量で4時間、試験片に紫外線を照射した。なお、照射装置はダイプラ社製メタルウェザ(KU−R4CI−A)、ランプはダイプラ社製メタルハライドランプ(MW−60W)、フィルタはダイプラ社製KF−2を用いた。
2)試験片を50℃、湿度95RH%の条件下、紫外線を照射せずに4時間放置した。
3)試験片に10秒間、水をシャワさせた。
4)試験片を50℃、湿度95RH%の条件下、紫外線を照射せずに4時間放置した。
5)試験片に10秒間、水をシャワさせた。
(耐久性(耐熱試験))
得られた試験片を用いて、上記<<実施例1>>の(耐久性(耐熱試験))と同様にして熱間強度(N/cm)を測定した(耐熱試験)。
(耐湿試験)
得られた試験片を室温下に24時間放置した後、50℃、湿度95RH%の条件下、240時間放置し、さらに、室温下で24時間放置し、上記<<実施例1>>の90度剥離試験と同様にして剥離強度(N/cm)を測定した(耐湿試験)。
(耐温水試験)
得られた試験片を室温下に24時間放置した後、40℃の温水に240時間浸漬し、さらに、室温下で24時間放置し、上記<<実施例1>>の90度剥離試験と同様にして剥離強度(N/cm)を測定した(耐温水試験)。
(耐熱水試験)
得られた試験片を室温下に24時間放置した後、80℃の熱水に96時間浸漬し、さらに、室温下で24時間放置し、上記<<実施例1>>の90度剥離試験と同様にして剥離強度(N/cm)を測定した(耐熱水試験)。

一般に、暗色セラミックペーストの成体を形成させていないガラス板を用いると、接着剤層が紫外線に暴露されるため、劣化し接着力が弱くなることが知られている。しかし、表3に示す評価結果から、本発明の組成物に紫外線吸収剤と光安定剤とを組合せて用いると、紫外線照射後の剥離強度(耐紫外線特性)が向上した。さらに、紫外線吸収剤または光安定剤をそれぞれ単独で用いるよりも、耐紫外線特性を向上できる上、温水に浸漬させた後の剥離強度(耐温水試験)および熱水に浸漬させた後の剥離強度(耐熱水試験)を飛躍的に改善できた。
【産業上の利用可能性】
本発明の接着剤組成物は、初期接着強度に優れるとともに、耐久性にも優れ、熱可塑性エラストマとガラスとの接着に充分な接着強度を発現する。そのため、従来、ガラスとの接着が容易でなかった熱可塑性エラストマの接着性を改善し、特に、厳しい使用環境下に曝される自動車の熱可塑性エラストマ製モールディングと窓ガラスとの強い接着力を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板は、本発明の接着剤組成物を用いて熱可塑性エラストマ製モールディングをガラス板の周縁部に接着することにより、高い接着強度と優れた耐久性を有する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマとガラス物品との接着に用いられる接着剤組成物であって、塩素化ポリオレフィン、エポキシ基含有化合物およびシランカップリング剤を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物の質量比(塩素化ポリオレフィン/エポキシ基含有化合物)が100/0.1〜100/25である請求の範囲1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物の質量比(塩素化ポリオレフィン/エポキシ基含有化合物)が100/0.1〜100/28である請求の範囲1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量(GPCポリスチレン換算)が40,000〜170,000で塩素含有量が25〜35質量%であり、かつ、前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物の質量比(塩素化ポリオレフィン/エポキシ基含有化合物)が100/0.1〜100/30である請求の範囲1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物の合計100質量部に対して、前記シランカップリング剤を0.5〜10質量部の割合で含む請求の範囲1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基含有化合物のエポキシ当量が100〜800g/eqである請求の範囲1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、アミノ基含有シランカップリング剤である請求の範囲1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量が40,000〜250,000で塩素含有量が15〜35質量%であり、かつ、結晶化度が10〜50%である請求の範囲1〜7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記塩素化ポリオレフィンが、塩素含有量が異なる2種以上の塩素化ポリオレフィンを含む請求の範囲1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記塩素含有量が異なる2種以上の塩素化ポリオレフィンが、塩素含有量が15質量%以上25質量%未満である塩素化ポリオレフィン(低塩素含有量成分)1種以上と、塩素含有量が25質量%以上35質量%以下である塩素化ポリオレフィン(高塩素含有量成分)1種以上とを含む請求の範囲9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記塩素含有量が異なる2種以上の塩素化ポリオレフィンが、重量平均分子量が180,000〜210,000で塩素含有量が18〜22質量%である塩素化ポリオレフィン(低塩素含有量成分)1種以上と、重量平均分子量が100,000〜170,000で塩素含有量が25〜29質量%である塩素化ポリオレフィン(高塩素含有量成分)1種以上とを含む請求の範囲9に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記低塩素含有量成分と前記高塩素含有量成分の質量比(低塩素含有量成分/高塩素含有量成分)が5/1〜25/1である請求の範囲10または11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物との合計100質量部に対して、さらに、紫外線吸収剤と光安定剤とを合計0.5〜10質量部の割合で含む請求の範囲1〜12のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項14】
有機溶媒をさらに含み、前記塩素化ポリオレフィンと前記エポキシ基含有化合物との合計が、濃度5〜30質量%である請求の範囲1〜13のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項15】
ガラス板と、
該ガラス板の周縁部に、請求項1〜14のいずれかに記載の接着剤組成物から形成された接着剤層を介して一体化された熱可塑性エラストマ製モールディングとを有することを特徴とする熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板。
【請求項16】
前記熱可塑性エラストマ製モールディングが押出成形により成形されたものである請求の範囲15に記載の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板。
【請求項17】
前記熱可塑性エラストマ製モールディングが射出成形により成形されたものである請求の範囲15に記載の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板。
【請求項18】
前記ガラス板が自動車の窓用ガラス板である請求の範囲15〜17のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ製モールディング付きガラス板。

【国際公開番号】WO2004/024843
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535889(P2004−535889)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011084
【国際出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】